JP2005095166A - 炎症性腸疾患の疾患マーカーおよびその利用 - Google Patents

炎症性腸疾患の疾患マーカーおよびその利用 Download PDF

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Kosei Watanabe
孝正 渡邉
Kaoru Kikuchi
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Abstract

【課題】 炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; IBD)を反映する疾患マーカー、該疾患マーカーを利用したIBDの検出方法、該疾患の改善に有用な薬物のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】 IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドを、IBDの疾患マーカーとして利用する。
【選択図】 なし。

Description

本発明は炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; 以下「IBD」と略する場合もある)の診断に有用な疾患マーカーに関する。より詳細には、本発明は、炎症性腸疾患(IBD)の診断においてプライマーまたは検出プローブとして有効に利用できる疾患マーカー、およびかかる疾患マーカーを利用したIBDの検出方法(診断方法)に関する。
また本発明は、上記疾患マーカーを利用して、IBDの改善薬または治療薬として有効な物質をスクリーニングする方法、並びに該方法によって得られる上記物質を有効成分とするIBDの改善薬または治療薬に関する。
腸は、生体の生命活動に必須である栄養分・水分を消化吸収する器官である。一方で病原体などの異物を排除するための免疫防御機能も備えており相反する性質をバランスよく制御することで生命の維持を担っている器官でもある。しかしこれら機能バランスに異常が生じると、この動的平衡状態が破綻し様々な腸疾患が引き起こされることが知られている。特に近年患者数が増加してきている炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; IBDと略される)は、スルファサラジン等の5−アミノサリチル酸製剤やステロイド等の薬物療法では満足できる治療効果が得られておらず、そのため腸切除手術、白血球除去等で治療している状態であり、よりよい薬物が必要とされている。
炎症性腸疾患(IBD)は、その病態から潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis; UCと略される)とクローン病(Crohn's disease; CDと略される)とに分類されている。近年、抗TNF抗体などのタンパク製剤がクローン病の治療剤として有効であることが知られている(非特許文献1)。しかしながら高価な薬剤でありステロイド耐性の患者のみの適応であり、また潰瘍性大腸炎に対する効果も弱いことから、未だ満足できる医療状況に無いのが現状である。
さらに、個々の患者によって薬物療法への反応が異なっており、現在用いられている治療薬すべてにおいて薬物療法に反応しない炎症性腸疾患(IBD)患者が存在している。また、遺伝子多型と疾患感受性の解析からインターロイキン−1の多型やNOD2遺伝子の多型が疾患原因遺伝子と考えられるケースがあり、基礎医学的な研究においても個々の患者による病態発症の遺伝的背景に差異のあることが明らかになりつつある(非特許文献2)。
最近の医療現場では、炎症性腸疾患(IBD)に限らず、個々の患者の症状に合わせて治療法を的確に選択することが望まれるようになってきている。高齢化社会でのQOL(Quality of life)向上の必要性が認識されてきた近年では、特に、万人に共通した治療ではなく、個々の患者の症状に合わせて適切な治療が施されることが強く求められている。このような所謂テイラーメイド治療を行うためには、個々の疾患について患者の症状やその原因(遺伝的背景)を的確に反映する疾患マーカーが有用であり、その探索並びに開発を目指した研究が精力的に行われているのが現状である。
Lancet. 342, 173-174, 1993 Current Opinion in Anti-inflammatory & Immunomodulatory Investigational Drugs. 2, 272-274, 2000
本発明は、炎症性腸疾患の診断及び治療に有用な疾患マーカーを提供することを目的とする。より詳細には、本発明は炎症性腸疾患を特異的に反映した疾患マーカーを提供することを目的とする。さらに本発明は該疾患マーカーを利用した炎症性腸疾患の検出方法(遺伝子診断方法)、該疾患の改善または治療に有用な薬物をスクリーニングする方法、並びに該疾患の改善または治療に有用な薬物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行っていたところ、従来は炎症性腸疾患(IBD)との関連が明らかではなかった以下の遺伝子:IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子が、炎症性腸疾患(IBD)惹起性細胞において炎症性腸疾患(IBD)非惹起性細胞と比較して有意に発現上昇しており、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子が、炎症性腸疾患(IBD)惹起性細胞においてIBD非惹起性細胞と比較して有意に発現下降していることを見出した。実施例に記載のように、炎症性腸疾患(IBD)惹起細胞とは正常動物に移入することでIBDを引き起こす能力を有する細胞集団を、炎症性腸疾患(IBD)非惹起細胞とは正常動物に移入してもIBDを引き起こさない細胞集団を意味する。具体的には、炎症性腸疾患(IBD)惹起細胞とはIBD発症マウス由来リンパ系細胞をStaphyloccocal enterotoxin Bで刺激培養した細胞であり、IBD非惹起細胞とは、IBD発症マウス由来リンパ系細胞を無刺激培養、あるいはIBD惹起能を抑制する活性が知られている特開2002−161084の化合物である3-chloro-2-[1-(4-morpholin-4-ylphenyl)cyclobutyl]-4,5,6,7-tetrahydropyrazolo[1,5-a]pyrimidine(以下、「化合物A」と略する場合もある。)の存在下でSEBにて刺激培養した細胞が挙げられる。
これらのことから、本発明者らは、これらIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子、若しくはこれらの発現産物(タンパク質)が、炎症性腸疾患(IBD)の優れた疾患マーカーであるとの知見を得た。さらに、これら遺伝子の発現制御、または当該遺伝子によりコードされるタンパク質の発現制御や機能(活性)制御を指標としたスクリーニング系は、新たなメカニズムに基づく炎症性腸疾患(IBD)の予防、改善または治療薬の探索に有効であるとの知見を得た。
本発明はかかる知見を基礎にして完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、下記に掲げるものである:
(1) IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; 以下IBD)の疾患マーカー、
(2) Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、IBDの疾患マーカー、
(3) IBDの検出においてプローブまたはプライマーとして使用される前記(1)記載の疾患マーカー、
(4) IBDの検出においてプローブまたはプライマーとして使用される前記(2)記載の疾患マーカー、
(5) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、IBDの検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと前記(1)〜(4)いずれかに記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、IBDの罹患を判断する工程、
(6) 工程(a)で用いる疾患マーカーが前記(1)または(3)に記載の疾患マーカーであり、工程(c)におけるIBDの罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として行われる、前記(5)に記載のIBDの検出方法、
(7) 工程(a)で用いる疾患マーカーが前記(2)または(4)に記載の疾患マーカーであり、工程(c)におけるIBDの罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が減少していることを指標として行われる、前記(5)に記載のIBDの検出方法、
(8) IL-17、IL-9、TCR Vγ4またはCDw40を認識する抗体を含有する、IBDの疾患マーカー、
(9) Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1またはPaired-Ig-like receptor A1を認識する抗体を含有する、IBDの疾患マーカー、
(10) IBDの検出においてプローブとして使用される前記(8)記載の疾患マーカー、
(11) IBDの検出においてプローブとして使用される前記(9)記載の疾患マーカー、
(12) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むIBDの検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質と前記(8)〜(11)いずれかに記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、IBDの罹患を判断する工程、
(13) 工程(a)で用いる疾患マーカーが前記(8)または(10)に記載の疾患マーカーであり、工程(c)におけるIBDの罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として行われる前記(12)記載のIBDの検出方法、
(14) 工程(a)で用いる疾患マーカーが前記(9)または(11)に記載の疾患マーカーであり、工程(c)におけるIBDの罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が減少していることを指標として行われる前記(12)記載のIBDの検出方法、
(15) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現を減少させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現量を減少させる被験物質を選択する工程、
(16) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現を増加させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現量を増加させる被験物質を選択する工程、
(17) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量を減少させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とIL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるIL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応するタンパク質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量を減少させる被験物質を選択する工程、
(18) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの発現量を増加させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応するタンパク質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの発現量を増加させる被験物質を選択する工程、
(19) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの機能または活性を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質をIL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかに接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるIL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの機能または活性を測定し、該機能または活性を被験物質を接触させない場合の前記に対応するタンパク質の機能または活性と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの機能または活性を抑制する被験物質を選択する工程、
(20) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの機能または活性を亢進する物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質をLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかに接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの機能または活性を測定し、該機能または活性を被験物質を接触させない場合の前記に対応するタンパク質の機能または活性と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの機能または活性を亢進する被験物質を選択する工程、
(21) IL-17の機能または活性が、IL-17受容体結合活性であることを特徴とする、前記(19)記載のスクリーニング方法、
(22) IL-17の機能または活性が、破骨細胞分化促進活性であることを特徴とする、前記(19)記載のスクリーニング方法、
(23) IL-17受容体発現細胞である骨芽細胞を用いることを特徴とする前記(21)または(22)記載のスクリーニング方法、
(24) IL-9の機能または活性が、IL-9受容体結合活性であることを特徴とする、前記(19)記載のスクリーニング方法、
(25) IL-9の機能または活性が、IgE産生促進活性であることを特徴とする、前記(19)記載のスクリーニング方法、
(26) IL-9受容体発現細胞であるB細胞あるいは脾臓細胞をもちいることを特徴とする前記(24)または(25)記載のスクリーニング方法、
(27) Lymphotoxinαの機能または活性が、Lymphotoxinα受容体結合活性であることを特徴とする、前記(20)記載のスクリーニング方法、
(28) Lymphotoxinαの機能または活性が、細胞障害活性であることを特徴とする、前記(20)記載のスクリーニング方法、
(29) Lymphotoxinα受容体発現細胞である腫瘍細胞を用いることを特徴とする前記(27)または(28)記載のスクリーニング方法、
(30) IL-10 receptor betaの機能または活性が、IL-10活性であることを特徴とする、前記(20)記載のスクリーニング方法、
(31) IL-10 receptor betaの機能または活性が、インターフェロンγ産生抑制活性であることを特徴とする、前記(20)記載のスクリーニング方法、
(32) IL-10 receptor beta発現細胞であるT細胞をもちいることを特徴とする前記(30)または(31)記載のスクリーニング方法、
(33) DAP12の機能または活性が、ヒトkiller cell immunoglobulin-like receptor(KIR)、ヒトsignal regulatory protein(SIRP) beta1、ヒトやマウスのmyeloid DAP12-associating lectin(MDL)-1あるいはtriggering receptor expressed on myeloid cells(TREM)結合活性であることを特徴とする、前記(20)記載のスクリーニング方法、
(34) DAP12の機能または活性が、ケモカイン・サイトカイン産生促進活性であることを特徴とする、前記(20)記載のスクリーニング方法、
(35) DAP12発現細胞である単球、マクロファージ、樹状細胞あるいはナチュラルキラー細胞を用いることを特徴とする前記(33)または(34)記載のスクリーニング方法、
(36) TCRVγ4の機能または活性が、ツベルクリン結合活性であることを特徴とする、前記(19)記載のスクリーニング方法、
(37) TCRVγ4の機能または活性が、細胞増殖促進活性であることを特徴とする、前記(19)記載のスクリーニング方法、
(38) TCRVγ4発現細胞であるT細胞を用いることを特徴とする前記(36)または(37)記載のスクリーニング方法、
(39) Integrinβ1の機能または活性が、コラーゲンあるいはラミニン結合活性であることを特徴とする、前記(20)記載のスクリーニング方法、
(40) Integrinβ1の機能または活性が、細胞接着活性であることを特徴とする、前記(20)記載のスクリーニング方法、
(41) Integrinβ1発現細胞であるリンパ球、血球系細胞等を用いることを特徴とする前記(39)または(40)記載のスクリーニング方法、
(42) CDw40の機能または活性が、B細胞増殖促進活性であることを特徴とする、前記(19)記載のスクリーニング方法、
(43) CDw40発現細胞であるB細胞を用いることを特徴とする前記(42)記載のスクリーニング方法、
(44) Paired-Ig-like receptor A1の機能または活性が、細胞賦活活性であることを特徴とする、前記(20)記載のスクリーニング方法、
(45) Paired-Ig-like receptor A1発現細胞である単球、マクロファージ、肥満細胞、B細胞あるいは樹状細胞を用いることを特徴とする前記(44)記載のスクリーニング方法、
(46) IBDの改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、前記(15)乃至(45)のいずれかに記載のスクリーニング方法、
(47) IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現を減少させる物質を有効成分とする、またはLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現を増加させる物質を有効成分とする、IBDの改善または治療剤、
(48) IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現を減少させる物質、またはLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現を増加させる物質が前記(15)または(16)記載のスクリーニング法により得られるものである、前記(47)記載のIBDの改善または治療剤、
(49) IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量、機能または活性を抑制する物質、またはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの発現量、機能または活性を亢進する物質を有効成分とする、IBDの改善または治療剤、ならびに
(50) IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量、機能または活性を抑制する物質、またはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの発現量、機能または活性を亢進する物質が、前記(17)乃至(45)に記載のスクリーニング法により得られるものである、前記(49)記載のIBDの改善または治療剤。
上記のように、本発明によれば、炎症性腸疾患(IBD)の疾患マーカー、該疾患の検出系、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子の発現を減少させる物質のスクリーニング系、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現を増加させる物質のスクリーニング系、IL-17、IL-9、TCR Vγ4またはCDw40の発現、機能もしくは活性を抑制する物質のスクリーニング系、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1またはPaired-Ig-like receptor A1の発現、機能もしくは活性を亢進する物質のスクリーニング系、およびこれらの物質を有効成分とする炎症性腸疾患(IBD)の改善および治療剤が提供される。
本発明は、前述するように、炎症性腸疾患(IBD)非惹起性細胞と比較して、炎症性腸疾患(IBD)惹起性細胞において、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子の発現が増大し、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現が減少していることを見出したことに基づくものである。
従って、これらの遺伝子及びその発現産物〔タンパク質、(ポリ)(オリゴ)ペプチド〕は、炎症性腸疾患(IBD)の解明、診断、予防及び治療に有効に利用することができ、かかる利用によって医学並びに臨床学上、有用な情報や手段を得ることができる。さらに、個体(生体組織)における、上記遺伝子の発現またはその発現産物の検出、または該遺伝子の変異またはその発現異常の検出は、炎症性腸疾患の解明や診断に有効に利用することができる。
また、これらの遺伝子およびその発現産物並びにそれらからの派生物(例えば、遺伝子断片、抗体など)は、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子の発現を減少させる物質、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現を増加させる物質、IL-17、IL-9、TCR Vγ4またはCDw40の発現、機能もしくは活性を抑制する物質、およびLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1またはPaired-Ig-like receptor A1の発現、機能もしくは活性を増強する物質のスクリーニングに有用であり、該スクリーニングによって得られる物質は、炎症性腸疾患の予防、改善および治療薬として有効である。更に、これらの遺伝子のアンチセンス核酸(アンチセンスヌクレオチド)は炎症性腸疾患の予防、改善および治療薬として有用である。
なお、IL-17(インターロイキン−17)は、20〜30kDaのホモ2量体サイトカインであり、T細胞より産生される。該IL-17は、IL-1β、IL-6、IL-8、TNFα、G-CSF、GRO-α、PGE2、MCP-1を繊維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、内皮細胞から分泌促進する活性、ICAM-1の発現誘導、T細胞の増殖、好中球分化活性等を有することが知られている(Francois Fossiez等、Intern. Rev. Immunol. 16: 541-551, 1997)。IL-17は炎症性腸疾患患者の炎症粘膜部と血清中に発現増強していることが報告されているが(Fujino S等、 Gut. 52:65-70, 2003)、病態の発症、形成および進展にどのように寄与しているかは分かっていない。
IL-9(インターロイキン−9)は、T細胞、肥満細胞、好酸球から産生されるサイトカインであり、IFN-γ産生CD4 T細胞からのリンホカイン産生抑制、CD8 T細胞増殖促進、B細胞からのIgE産生促進、気管粘膜上皮細胞から粘液、ケモカイン産生を誘発し、肥満細胞増殖をもたらすサイトカインであり、アレルギー性喘息に重要な役割を果たしていると考えられている(Abdelilah Soussi-Gounni等、J Allergy Clin Immunol 107:575-582, 2001)。しかるに、IL-9が炎症性腸疾患(IBD)と関連することについては、今まで何らわかっておらず、かかる関連を示唆する報文も皆無である。
Lymphotoxinα(リンホトキシン アルファ)は、別名、腫瘍壊死因子(Tumor necrosis factor:TNF)-βとも称され、抗原特異的な刺激で主にT細胞より産生されるが、リンパ球系細胞、星状細胞からも産生され、B細胞に対して増殖促進効果を示すサイトカインである。TNF-αが炎症性腸疾患(IBD)と関連することが知られているため、TNFの遺伝子多系とIBDとの関連が調べられているが、感受性遺伝子の可能性は低いとされている(Hampe J等、Am J of Hu Gene. 65:1647-55, 1999)。TNF-αとTNF-βは、約30%のホモロジーがあり、同じ受容体に作用する。TNF-αがマクロファージ、顆粒球、リンパ球、肥満細胞、NK細胞、繊維芽細胞等々の種々の細胞から分泌される一方で、TNF-βは抗原刺激されたT細胞から主に産生されることが知られている。しかるに、TNF-αと異なり、TNF-βが炎症性腸疾患(IBD)と関連することについては、今まで何らわかっておらず、かかる関連を示唆する報文も皆無である。
IL-10 receptorβは、IL-10 receptorαと共にIL-10 receptor (IL-10R)を形成し、IL-10と結合してIL-10による作用を発現させる。IL-10の作用としては、T細胞からのIFN-γ産生の抑制、T細胞増殖、B細胞増殖、単球から抗体依存性細胞性細胞傷害反応の誘発、単球/マクロファージのモノカイン産生抑制を示す。炎症性腸疾患(IBD)動物モデルとしてIL-10ノックアウトマウスが知られているが、IL-10の受容体IL-10βの発現異常がIBDと関連することは知られていない。
DAP12は、NK細胞、マクロファージ、単球、顆粒球などの骨髄性細胞に発現している膜貫通分子である。膜貫通部に陰性荷電をもつアスパラギン酸を含み、膜貫通部に陽性荷電を持つNK活性化リセプター、Myeloid DAP12-associating lectin-1、Signal regulatory protein、Triggering receptor expressed on myeloid cells(TREM)-1,2,3と会合し細胞内に刺激情報伝達を行う分子である。DAP12は、自然免疫、獲得免疫に重要な役割を示すと考えられているが、炎症性腸疾患(IBD)と関連することについては、今まで何らわかっておらず、かかる関連を示唆する報文も皆無である。
T細胞表面にあり抗原認識部位であるT細胞受容体(TCR)には可変領域(Variable region)であるTCR Vにはαβ型とγδ型がある。TCRは遺伝子再構成により様々なレパートリーの型を有するT細胞が発生する。TCRVγ4は、その中の1種類のTCRであり、ある特定のT細胞の表面に発現している。しかるに、TCRVγ4陽性T細胞が炎症性腸疾患(IBD)に増加している、あるいは関与しているとの知見は無く、炎症性腸疾患(IBD)と関連することについては、今まで何らわかっておらず、かかる関連を示唆する報文も皆無である。
Integrinβ1は、VLA(very late activation antigen)1-6を構成するサブユニットであり、白血球上に発現しており接着のみならず、リンパ球の活性化シグナル伝達にも関与している分子である。炎症性腸疾患(IBD)との関連は知られていない。
CDw40は、B細胞表面や腫瘍細胞に発現しているリン酸化タンパクであり、B細胞に対して強力な増殖刺激を伝達する分子である。しかるに、CDw40が炎症性腸疾患(IBD)と関連することについては、今まで何らわかっておらず、かかる関連を示唆する報文も皆無である。
Paired-Ig-like receptor A1は、23アミノ酸のシグナルペプチドを含む680アミノ酸のタイプIトランスメンブレンタンパクで、膜貫通領域にはアルギニンを含み、FcRγ鎖などのITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)が結合し、活性化シグナルに関与していると考えられる。しかるに、Paired-Ig-like receptor A1が炎症性腸疾患(IBD)と関連することについては、今まで何らわかっておらず、かかる関連を示唆する報文も皆無である。
本発明によって、炎症性腸疾患(IBD)惹起性細胞において、IBD非惹起性細胞と比較して特異的に発現増大している遺伝子(IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、CDw40遺伝子)と発現減少している遺伝子(Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子、Paired-Ig-like receptor A1遺伝子)が明らかになった。かかる遺伝子は炎症性腸疾患の遺伝子診断に用いられるマーカー遺伝子(プローブ、プライマー)として有用である。かかるマーカー遺伝子によれば炎症性腸疾患であるかどうかを明らかにすることができ(診断精度が向上)、これによりより適切な治療を施すことが可能となる。すなわち、炎症性腸疾患の適切な治療のためのツールとして利用することができる。
また、上記遺伝子の発現と炎症性腸疾患(IBD)との関連性から、これら遺伝子の発現の制御(抑制/亢進)、または当該遺伝子がコードするタンパク質の発現や機能(活性)の制御(抑制/亢進)を指標とすることによって、炎症性腸疾患の治療薬となり得る候補薬をスクリーニングし選別することが可能である。本発明は、このような炎症性腸疾患治療薬の開発技術をも提供する。
以下、本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、および当該分野における慣用記号に従う。
本明細書において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。また当該「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩基配列(配列番号:1〜9)で示される「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば同族体(ホモログやスプライスバリアントなど)、変異体及び誘導体)をコードする「遺伝子」または「DNA」が包含される。かかる同族体、変異体または誘導体をコードする「遺伝子」または「DNA」としては、具体的には、後述の(1-1)項に記載のストリンジェントな条件下で、前記の配列番号:1〜9で示されるいずれかの特定塩基配列の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「遺伝子」または「DNA」を挙げることができる。
例えばヒト由来のタンパク質のホモログをコードする遺伝子としては、当該タンパク質をコードするヒト遺伝子に対応するマウスやラットなど他生物種の遺伝子が例示でき、これらの遺伝子(ホモログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定ヒト塩基配列をBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E-valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUniGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。結果として得られた他生物種遺伝子とヒト遺伝子との遺伝子ホモログの相関を示したリストから、特定の塩基配列で示されるヒト遺伝子に対応する遺伝子(ホモログ)としてマウスやラットなど他生物種の遺伝子を選抜することができる。
なお、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
従って、本明細書において「IL-17遺伝子」または「IL-17のDNA」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号1)で示されるヒトIL-17遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:1に記載のIL-17遺伝子(GenBank Accession No.NM_002190)や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
また、本明細書において「IL-9遺伝子」または「IL-9のDNA」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号2)で示されるヒトIL-9遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:2に記載のヒトIL-9遺伝子(GenBank Accession No.NM_000590)や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「Lymphotoxinα遺伝子」または「LymphotoxinαのDNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号3)で示されるヒトLymphotoxinα遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:3に記載のヒトLymphotoxinα遺伝子(GenBank Accession No.NM_000595)や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「IL-10 receptor β遺伝子」または「IL-10 receptor βのDNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号4)で示されるヒトIL-10 receptor β遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:4に記載のヒトIL-10 receptor β遺伝子(GenBank Accession No.NM_000628)や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「DAP12遺伝子」または「DAP12のDNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号5)で示されるヒトDAP12遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:5に記載のヒトDAP12遺伝子(GenBank Accession No.NM_003332)や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「TCR Vγ4遺伝子」または「TCR Vγ4のDNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号6)で示されるヒトTCR Vγ4遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:6に記載のヒトTCR Vγ4遺伝子(GenBank Accession No.X13354)や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「Integrinβ1遺伝子」または「Integrinβ1のDNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号7)で示されるヒトIntegrinβ1遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:7に記載のヒトIntegrinβ1遺伝子(GenBank Accession No.NM_133376)や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「CDw40遺伝子」または「CDw40のDNA」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号8)で示されるヒトCDw40遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:8に記載のヒトCDw40遺伝子(GenBank Accession No.X60592)や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「Paired-Ig-like receptor A1遺伝子」または「Paired-Ig-like receptor A1」といった用語を用いる場合も、特に言及しない限り、特定塩基配列(配列番号9)で示されるヒトPaired-Ig-like receptor A1遺伝子(DNA)や、その同族体、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:9に記載のヒトPaired-Ig-like receptor A1遺伝子(GenBank Accession No.NM_011087)や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNAおよびDNAのいずれをも包含する趣旨で用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
本明細書において「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」には、特定のアミノ酸配列(配列番号10〜18)で示される「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」だけでなく、これらと生物学的機能が同等であることを限度として、その同族体(ホモログやスプライスバリアント)、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などが包含される。ここでホモログとしては、ヒトのタンパク質に対応するマウスやラットなど他生物種のタンパク質が例示でき、これらはHomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定された遺伝子の塩基配列から演繹的に同定することができる。また変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加および挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、上記変異体としては、変異のないタンパク質または(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。またアミノ酸修飾体には、天然に存在するアミノ酸修飾体、天然に存在しないアミノ酸修飾体が包含され、具体的にはアミノ酸のリン酸化体が挙げられる。
従って、本明細書において「IL-17タンパク質」または単に「IL-17」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号10)で示されるヒトIL-17やその同族体、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:10(GenBank Accession No.NP_002181)に記載のアミノ酸配列を有するヒトIL-17や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
また、本明細書において「IL-9タンパク質」または単に「IL-9」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号11)で示されるヒトIL-9やその同族体、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:11(GenBank Accession No.NP_00581)に記載のアミノ酸配列を有するヒトIL-9や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「Lymphotoxinαタンパク質」または単に「Lymphotoxinα」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号12)で示されるヒトLymphotoxinαやその同族体、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:12(GenBank Accession No.NP_000586)に記載のアミノ酸配列を有するヒトLymphotoxinαや、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「IL-10 receptor βタンパク質」または単に「IL-10 receptor β」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号13)で示されるヒトIL-10 receptor βやその同族体、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:13(GenBank Accession No.NP_000619)に記載のアミノ酸配列を有するヒトIL-10 receptor βや、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「DAP12タンパク質」または単に「DAP12」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号14)で示されるヒトDAP12やその同族体、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:14(GenBank Accession No.AAD09437)に記載のアミノ酸配列を有するヒトDAP12や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「TCR Vγ4タンパク質」または単に「TCR Vγ4」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号15)で示されるヒトTCR Vγ4やその同族体、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:15(GenBank Accession No.CAA31730)に記載のアミノ酸配列を有するヒトTCR Vγ4や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「Integrinβ1タンパク質」または単に「Integrinβ1」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号16)で示されるヒトIntegrinβ1やその同族体、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:16(GenBank Accession No.NP_596867)に記載のアミノ酸配列を有するヒトIntegrinβ1や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「CDw40タンパク質」または単に「CDw40」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号17)で示されるヒトCDw40やその同族体、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:17(GenBank Accession No.CAA43045)に記載のアミノ酸配列を有するヒトCDw40や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書において「Paired-Ig-like receptor A1タンパク質」または単に「Paired-Ig-like receptor A1」といった用語を用いる場合、特に言及しない限り、特定アミノ酸配列(配列番号18)で示されるヒトPaired-Ig-like receptor A1やその同族体、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などを包含する趣旨で用いられる。具体的には、配列番号:18(GenBank Accession No.NP_035217)に記載のアミノ酸配列を有するヒトPaired-Ig-like receptor A1や、そのマウスホモログおよびラットホモログなどが包含される。
本明細書でいう「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、またはFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
本明細書における「IBD」とはinflammatory bowel diseaseの略であり、日本では炎症性腸疾患と呼ばれる。炎症性腸疾患は、病態から潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UCと略される)とクローン病(Crohn's disease:CDと略される)に分類されている。
さらに本明細書において「疾患マーカー」とは、炎症性腸疾患(IBD)の罹患の有無、罹患の程度若しくは改善の有無や改善の程度を診断するために、また炎症性腸疾患(IBD)の予防、改善または治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接または間接的に利用されるものをいう。これには、炎症性腸疾患(IBD)の罹患に関連して生体内、特に大腸組織において、発現が変動する遺伝子またはタンパク質を特異的に認識し、また結合することのできる(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチドまたは抗体が包含される。これらの(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチドおよび抗体は、上記性質に基づいて、生体内、組織や細胞内などで発現した上記遺伝子及びタンパク質を検出するためのプローブとして、また(オリゴ)ヌクレオチドは生体内で発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
さらに本明細書において診断対象となる「生体組織」とは、炎症性腸疾患(IBD)に伴い本発明のIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子の発現が上昇する組織、あるいはLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現が降下(低下)する組織を指す。具体的には大腸組織及びその周辺組織などを指す。
以下、IL-17遺伝子(ポリヌクレオチド)、IL-9遺伝子(ポリヌクレオチド)、Lymphotoxinα遺伝子(ポリヌクレオチド)、IL-10 receptor β遺伝子(ポリヌクレオチド)、DAP12遺伝子(ポリヌクレオチド)、TCR Vγ4遺伝子(ポリヌクレオチド)、Integrinβ1遺伝子(ポリヌクレオチド)、CDw40遺伝子(ポリヌクレオチド)、Paired-Ig-like receptor A1遺伝子(ポリヌクレオチド)(以下これらの遺伝子を併せて「本発明遺伝子」と称する場合がある)、並びにこれらの発現産物(IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40およびPaired-Ig-like receptor A1。以下これらのタンパク質を併せて「本発明タンパク質」と称する場合がある)、およびそれらの派生物について、具体的な用途を説明する。
(1)炎症性腸疾患(IBD)の疾患マーカーおよびその応用
(1-1) ポリヌクレオチド
本発明における IL-17遺伝子は、インターロイキン−17(Interleukin-17)遺伝子、もしくは細胞傷害性Tリンパ球抗原8(Cytotoxic T lymphocytes antigen 8)遺伝子とも呼ばれる公知遺伝子である。例えばヒト由来のIL-17遺伝子としては、配列番号1に示すポリヌクレオチドが知られており(GenBank Accession No. NM_002190)、その取得方法についてもYao,Z ら, J. Immunol., 155, 5483-5486, 1995に記載されるように公知である。
本発明における IL-9遺伝子は、インターロイキン−9(Interleukin-9)遺伝子とも呼ばれる公知遺伝子である。例えばヒト由来のIL-9遺伝子としては、配列番号2に示すポリヌクレオチドが知られており(GenBank Accession No. NM_000590)、その取得方法についてもKelleher K ら, Blood., 77, 1436-1441, 1991に記載されるように公知である。
本発明における Lymphotoxinα遺伝子は、リンフォトキシンアルファ遺伝子、もしくは腫瘍壊死因子β(Tumor necrosis factor β)遺伝子とも呼ばれる公知遺伝子である。例えばヒト由来のLymphotoxinα遺伝子としては、配列番号3に示すポリヌクレオチドが知られており(GenBank Accession No. NM_000595)、その取得方法についてもURL(http://pga.mbt.washington.edu)に記載されるように公知である。
本発明における IL-10 receptor βタンパク質遺伝子は、インターロイキン−10受容体β遺伝子とも呼ばれる公知遺伝子である。例えばヒト由来のIL-10 receptor βタンパク質遺伝子としては、配列番号4に示すポリヌクレオチドが知られており(GenBank Accession No. NM_000628)、その取得方法についてもLiu Y ら, J. Immunol., 152, 1821-1829, 1994に記載されるように公知である。
本発明における DAP12遺伝子は、DNAX activation protein 12遺伝子、TYRO protein tyrosine kinase binding protein遺伝子、もしくはKARAP(killer cell activating receptor-associated protein)遺伝子とも呼ばれる公知遺伝子である。例えばヒト由来のDAP12遺伝子としては、配列番号5に示すポリヌクレオチドが知られており(GenBank Accession No. AF019563)、その取得方法についてもLanier LL ら, Nature., 391, 703-7, 1998に記載されるように公知である。
本発明における TCR Vγ4遺伝子は、T細胞受容体変異部位γ4遺伝子とも呼ばれる公知遺伝子である。例えばヒト由来のTCR Vγ4遺伝子としては、配列番号6に示すポリヌクレオチドが知られており(GenBank Accession No. X13354 M36285)、その取得方法についてもMARIE PIERRE FONT ら, J. Exp. Med., 168, 1383-1394, 1988に記載されるように公知である。なお、本遺伝子は未分化胚細胞遺伝子(germ line遺伝子)からT細胞成熟化の過程で遺伝子再構成され、TCRVγ4の存在するV領域の遺伝子セグメントとC領域の遺伝子セグメント、J領域の遺伝子セグメントと結合しTCR遺伝子を構築する。結合様式は種々異なり、TCRVγ4 germ line遺伝子の特定されない部分が遺伝子再構成に用いられるために配列表にはgerm line遺伝子の配列を載せている。
本発明における Integrinβ1遺伝子は、インテグリンベータ1遺伝子とも呼ばれる公知遺伝子である。例えばヒト由来のIntegrinβ1遺伝子としては、配列番号7に示すポリヌクレオチドが知られており(GenBank Accession No. NM_133376)、その取得方法についてもFioreUa Balzac ら, J. Cell. Biol., 127, 557-565, 1994に記載されるように公知である。
本発明における CDw40遺伝子は、Tumour necrosis factor receptor superfamily, member5遺伝子とも呼ばれる公知遺伝子である。例えばヒト由来のCDw40遺伝子としては、配列番号8に示すポリヌクレオチドが知られており(GenBank Accession No. X60592)、その取得方法についてもStamenkovic I ら, EMBO J., 8, 1403-1410, 1989に記載されるように公知である。
本発明における Paired-Ig-like receptor A1遺伝子は、公知遺伝子である。例えばヒト由来のPaired-Ig-like receptor A1遺伝子としては、配列番号9に示すポリヌクレオチドが知られており(GenBank Accession No. NM_011087)、その取得方法についてもKubagawa H ら, Proc Natl Acad Sci USA, 94, 5261-5266, 1997に記載されるように公知である。
本発明は、前述するように、炎症性腸疾患(IBD)惹起性細胞において、IBD非惹起性細胞に比して、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子が特異的に発現上昇し、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子が特異的に発現減少しているという知見を発端に、これらの遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって上記炎症性腸疾患(IBD)の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという知見に基づくものである。
上記ポリヌクレオチドは、従って、被験者における上記遺伝子の発現の有無またはその程度を検出することによって、該被験者が炎症性腸疾患(IBD)に罹患しているか否かまたはその罹患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用である。
また上記ポリヌクレオチドは、後述の(3-1)項に記載するような炎症性腸疾患(IBD)の予防、改善または治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
本発明の疾患マーカーは、前記IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなることを特徴とするものである。
具体的には、本発明の疾患マーカーは、配列番号1に記載のIL-17遺伝子の塩基配列、配列番号2に記載のIL-9遺伝子の塩基配列、配列番号3に記載のLymphotoxinα遺伝子の塩基配列、配列番号4に記載のIL-10 receptor β遺伝子の塩基配列、配列番号5に記載のDAP12遺伝子の塩基配列、配列番号6に記載のTCR Vγ4遺伝子の塩基配列、配列番号7に記載のIntegrinβ1遺伝子の塩基配列、配列番号8に記載のCDw40遺伝子の塩基配列または配列番号9に記載のPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなるものを挙げることができる。
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、前記IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、または該塩基配列において少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:TおよびG:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
ここで、正鎖側のポリヌクレオチドには、前記IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の塩基配列、またはその部分配列を有するものだけでなく、上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関係にある塩基配列からなる鎖を含めることができる。
さらに上記正鎖のポリヌクレオチド及び相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されてもよい。
本発明の炎症性腸疾患(IBD)の疾患マーカーは、具体的には、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の塩基配列(全長配列)からなるポリヌクレオチドであってもよいし、その相補配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。またこれら前記本発明遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチドを選択的に(特異的に)認識するものであれば、上記全長配列またはその相補配列の部分配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、部分配列としては、上記全長配列またはその相補配列の塩基配列から任意に選択される少なくとも15個の連続した塩基長を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンブロット法においては、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子、Paired-Ig-like receptor A1遺伝子、またはこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に検出できること、またRT-PCR法においては、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子、Paired-Ig-like receptor A1遺伝子、またはこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に生成されることを意味するが、それに限定されることなく、当業者が上記検出物または生成物がこれらの遺伝子に由来するものであると判断できるものであればよい。
本発明の疾患マーカーは、例えば配列番号1で示されるIL-17遺伝子の塩基配列、配列番号2で示されるIL-9遺伝子の塩基配列、配列番号3で示されるLymphotoxinα遺伝子の塩基配列、配列番号4で示されるIL-10 receptor β遺伝子の塩基配列、配列番号5で示されるDAP12遺伝子の塩基配列、配列番号6で示されるTCR Vγ4遺伝子の塩基配列、配列番号7で示されるIntegrinβ1遺伝子の塩基配列、で示されるの塩基配列、配列番号8で示されるCDw40遺伝子の塩基配列または配列番号9で示されるPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の塩基配列をもとに、例えばprimer 3(http://www.genome.wi.mit.edu/cgi-bin/primer/primer3.cgi)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。具体的には前記本発明遺伝子の塩基配列を primer 3またはベクターNTIのソフトウエアにかけて得られる、プライマーまたはプローブの候補配列、若しくは少なくとも該配列を一部に含む配列をプライマーまたはプローブとして使用することができる。
本発明の疾患マーカーは、上述するように連続する少なくとも15塩基の長さを有するものであればよいが、具体的にはマーカーの用途に応じて、長さを適宜選択し設定することができる。
(1-2)プローブまたはプライマーとしてのポリヌクレオチド
本発明において炎症性腸疾患(IBD)の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に大腸組織等におけるIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子から選ばれるいずれかの遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。この場合、上記本発明の疾患マーカーは、上記遺伝子の発現によって生じたRNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、または該RNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。
本発明疾患マーカーを炎症性腸疾患(IBD)の検出(遺伝子診断)においてプライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を有するものが例示できる。
本発明の疾患マーカーは、ノーザンブロット法、RT-PCR法、in situハイブリダーゼーション法などといった、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマーまたはプローブとして利用することができる。該利用によって炎症性腸疾患(IBD)におけるIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することができる。
測定対象試料としては、使用する検出方法の種類に応じて、被験者の大腸組織の一部をバイオプシ等で採取するか、若しくは腸管洗浄液等から回収し、そこから常法に従って調製したtotal RNAを用いてもよいし、さらに該RNAをもとにして調製される各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
また、生体組織におけるIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の遺伝子発現レベルは、DNAチップを利用して検出あるいは定量することができる。この場合、本発明の疾患マーカーは当該DNAチップのプローブとして使用することができる(例えば、アフィメトリックス社の Gene Chip Human Genome U95 A,B,C,D,Eの場合、25bpの長さのポリヌクレオチドプローブとして用いられる)。かかるDNAチップを、生体組織から採取したRNAをもとに調製される標識DNAまたはRNAとハイブリダイズさせ、該ハイブリダイズによって形成された上記プローブ(本発明疾患マーカー)と標識DNAまたはRNAとの複合体を、該標識DNAまたはRNAの標識を指標として検出することにより、生体組織中での本発明遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)が評価できる。
上記DNAチップは、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかと結合し得る1種または2種以上の本発明疾患マーカーを含んでいれば良い。複数の疾患マーカーを含むDNAチップの利用によれば、ひとつの生体試料について、同時に複数の遺伝子の発現の有無または発現レベルの評価が可能である。
本発明の疾患マーカーは、炎症性腸疾患(IBD)の診断、検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。具体的には、該疾患マーカーを利用した炎症性腸疾患(IBD)の診断は、被験者の生体組織と正常者の生体組織におけるIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの遺伝子の遺伝子発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。この場合、遺伝子発現レベルの違いには、発現のある/なしの違いだけでなく、被験者の生体組織と正常者の生体組織の両者ともに発現がある場合でも、両者間の発現量の格差が2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。
具体的にはIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子が、炎症性腸疾患(IBD)惹起性細胞において、IBD非惹起性細胞と比較して有意に発現上昇しているので、被験者の生体組織で発現しており、該発現量が正常者の生体組織の発現量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多ければ、被験者について炎症性腸疾患(IBD)の罹患が疑われる。また、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子が、IBD惹起性細胞において、IBD非惹起性細胞と比較して有意に発現下降しているので、被験者の生体組織で発現が減少または消失しており、該発現量が正常者の生体組織の発現量と比べて1/2以下、好ましくは1/3以下に減少していれば、被験者について炎症性腸疾患(IBD)の罹患が疑われる。
(1-3)抗体
本発明は、炎症性腸疾患(IBD)の疾患マーカーとして、IL-17遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「IL-17」ともいう)、IL-9遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「IL-9」ともいう)、Lymphotoxinα遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「Lymphotoxinα」ともいう)、IL-10 receptor β遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「IL-10 receptor β」ともいう)、DAP12遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「DAP12」ともいう)、TCR Vγ4遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「TCR Vγ4」ともいう)、Integrinβ1遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「Integrinβ1」ともいう)、CDw40遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「CDw40」ともいう)またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「Paired-Ig-like receptor A1」ともいう)、を特異的に認識することのできる抗体を提供する。
当該抗体として、具体的には、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有するIL-17タンパク質、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有するIL-9タンパク質、配列番号12に記載のアミノ酸配列を有するLymphotoxinαタンパク質、配列番号13に記載のアミノ酸配列を有するIL-10 receptor βタンパク質、配列番号14に記載のアミノ酸配列を有するDAP12タンパク質、配列番号15に記載のアミノ酸配列を有するTCR Vγ4タンパク質、配列番号16に記載のアミノ酸配列を有するIntegrinβ1タンパク質、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するCDw40タンパク質または配列番号18に記載のアミノ酸配列を有するPaired-Ig-like receptor A1タンパク質を特異的に認識することのできる抗体を挙げることができる。
本発明は、前述するように、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子が、IBD惹起性細胞においてIBD非惹起性細胞と比較して有意に発現上昇しており、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子が、IBD惹起性細胞においてIBD非惹起性細胞と比較して有意に発現下降しているという知見を発端に、これらの遺伝子の発現産物(タンパク質)の有無やその発現の程度を検出することによって上記炎症性腸疾患(IBD)の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという発想に基づくものである。
上記抗体は、従って、被験者における上記タンパク質の発現の有無またはその程度を検出することによって、該被験者が炎症性腸疾患(IBD)に罹患しているか否かまたはその疾患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用である。
また上記抗体は、後述の(3-2)項に記載するような炎症性腸疾患(IBD)の予防、改善または治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、IL-17、IL-9、TCR Vγ4、CDw40、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
前記のように、ヒト由来のIL-17は公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Yao, Z. ら, J Immunol., 155, 5483-5486, 1995)に記載されるように公知である。
また、ヒト由来のIL-9も公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(STAFFAN PAULIE ら, Blood, 75, 2271-2275, 1990)に記載されるように公知である。
ヒト由来のLymphotoxinαも公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(STAFFAN PAULIE ら, J Immunol, 138, 3319-3324, 1987)に記載されるように公知である。
ヒト由来のIL-10 receptor βも公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(STAFFAN PAULIE ら, J Biol Chem, 276, 2725-2732, 2001)に記載されるように公知である。
ヒト由来のDAP12も公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(Lanier LL ら, Nature., 391, 703-7, 1998)に記載されるように公知である。
ヒト由来のTCR Vγ4も公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(MARIE PIERRE FONT ら, J. Exp. Med., 168, 1383-1394, 1988)に記載されるように公知である。
ヒト由来のIntegrinβ1も公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(FioreUa Balzac ら, J. Cell. Biol., 127, 557-565, 1994)に記載されるように公知である。
ヒト由来のCDw40も公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(STAFFAN PAULIE. ら, J Immunol, 142, 590-595, 1989)に記載されるように公知である。
ヒト由来のPaired-Ig-like receptor A1も公知のタンパク質であり、その取得方法についても文献(STAFFAN PAULIE ら, J Exp Med, 188, 991-995, 1998)に記載されるように公知である。
本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかを免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよい。さらにこれら本発明タンパク質のアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current Protocol in Molecular Biology, Chapter 11.12〜11.13(2000))。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製したIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1を用いて、あるいは常法に従ってこれら本発明タンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製したIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1、あるいはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
抗体の作製に免疫抗原として使用されるIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1は、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号:1〜9)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
具体的には、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって、本発明抗体の製造のための免疫抗原としてのタンパク質を得ることができる。また、これらIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1の部分ペプチドは、本発明により提供されるアミノ酸配列の情報(配列番号:10〜18)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。
なお、本発明のIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1には、配列番号:10〜18のいずれかに示す各アミノ酸配列に関わるタンパク質のみならず、その相同物も包含される。該相同物としては、上記配列番号:10〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ改変前の元のタンパク質と免疫学的に同等の活性を有するタンパク質を挙げることができる。
ここで同等の免疫学的活性を有するタンパク質としては、適当な動物あるいはその細胞において特定の免疫反応を誘発し、かつIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1に対する抗体と特異的に結合する能力を有するタンパク質を挙げることができる。
なお、タンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その免疫学的活性が保持される限り制限はない。免疫学的活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また置換されるアミノ酸は、置換後に得られるタンパク質がIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1と同等の免疫学的活性を保持している限り、特に制限されないが、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
本発明抗体は、また、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを用いて調製されるものであってよい。かかる抗体の製造のために用いられるオリゴ(ポリ)ペプチドは、機能的な生物活性を有することは要しないが、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1と同様な免疫原特性を有するものであることが望ましい。好ましくはこの免疫原特性を有し、且つIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1のアミノ酸配列において少なくとも連続する8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるオリゴ(ポリ)ペプチドを例示することができる。
かかるオリゴ(ポリ)ペプチドに対する抗体の製造は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム-パルヴムなどのヒトアジュバントが含まれる。
本発明の抗体は、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現した上記タンパク質を特異的に検出することができる。すなわち、当該抗体は被験者の組織内におけるIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1のタンパク発現の有無を検出するためのプローブとして有用である。
具体的には、被験者の大腸組織の一部をバイオプシ等で採取、もしくは腸管洗浄液等から回収し、そこから常法に従って調製した組織抽出物やタンパク質を用いて、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、本発明抗体を常法に従ってプローブとして使用することによって、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1を検出することができる。
炎症性腸疾患(IBD)の診断に際しては、被験者の生体組織におけるIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれか少なくとも一つと正常な生体組織におけるこれらのタンパク質との量の違いを判定すればよい。この場合、タンパク量の違いには、タンパクのある/なし、あるいはタンパク量の違いが2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的には、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子が、IBD惹起性細胞においてIBD非惹起性細胞と比較して発現が増加しているので、被験者の前記生体組織においてIL-17、IL-9、TCR Vγ4またはCDw40が存在しており、該量が正常な生体組織での量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多いことが判定されれば、炎症性腸疾患(IBD)の罹患が疑われる。また、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子が、IBD惹起性細胞においてIBD非惹起性細胞と比較して発現が減少(抑制)しているので、被験者の前記生体組織においてLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1またはPaired-Ig-like receptor A1の発現量が、正常な生体組織での量と比べて1/2倍以下、好ましくは1/3倍以下であることが判定されれば、炎症性腸疾患(IBD)の罹患が疑われる。
(2)炎症性腸疾患(IBD)の検出方法(診断方法)
本発明は、前述した本発明疾患マーカーを利用した炎症性腸疾患(IBD)の検出方法(診断方法)を提供するものである。
具体的には、本発明の検出方法(診断方法)は、被験者の大腸組織の一部をバイオプシ等で採取するか、もしくは腸管洗浄液等から回収し、そこに含まれる炎症性腸疾患(IBD)に関連するIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、およびこれらの遺伝子に由来するタンパク質(IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40、Paired-Ig-like receptor A1)を検出し、その発現量またはそのタンパク質量を測定することにより、炎症性腸疾患(IBD)の罹患の有無またはその程度を検出(診断)するものである。また本発明の検出(診断)方法は、例えば炎症性腸疾患(IBD)患者において、該疾患の改善のために治療薬を投与した場合における、該疾患の改善の有無またはその程度を検出(診断)することもできる。
本発明の検出方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含むものである:
(a) 被験者の生体試料と本発明の疾患マーカーを接触させる工程、
(b) 生体試料中のIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、またはIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1のタンパク質の量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c) (b)の結果をもとに、炎症性腸疾患(IBD)の罹患を判断する工程。
ここで用いられる生体試料としては、被験者の生体組織(大腸組織及びその周辺組織など)から調製される試料を挙げることができる。具体的には、該組織から調製されるRNA含有試料、若しくはそれからさらに調製されるポリヌクレオチドを含む試料、または上記組織から調製されるタンパク質を含む試料を挙げることができる。かかるRNA、ポリヌクレオチドまたはタンパク質を含む試料は、被験者の大腸組織の一部をバイオプシ等で採取するか、もしくは腸管洗浄液等から回収し、そこから常法に従って調製することができる。
本発明の診断方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて、具体的には下記のようにして実施される。
(2-1) 測定対象の生体試料としてRNAを利用する場合
測定対象物としてRNAを利用する場合、炎症性腸疾患(IBD)の検出は、具体的に下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと、前記本発明の疾患マーカー(IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド)とを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、炎症性腸疾患(IBD)の罹患を判断する工程。
測定対象物としてRNAを利用する場合は、本発明の検出方法(診断方法)は、該RNA中のIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現レベルを検出し、測定することによって実施される。具体的には、前述のポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカー(IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はその相補的なポリヌクレオチド)をプライマーまたはプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT-PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプローブとして用いることによって、RNA中のIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、本発明の疾患マーカー(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された疾患マーカー(DNA)とRNAとの二重鎖を、疾患マーカーの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS-1800II、富士フィルム社製)または蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System (Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて、該プロトコールに従って疾患マーカー(プローブDNA)を標識し、被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、疾患マーカーの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
RT-PCR法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプライマーとして用いることによって、RNA中のIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現の有無や発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、被験者の生体組織由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製して、これを鋳型として標的のIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の疾患マーカーから調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した疾患マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT-PCR Reagents (Applied Biosystems 社製)で該プロトコールに従ってRT-PCR反応液を調製し、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems 社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをDNAプローブ(1本鎖または2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに被験者の生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAとハイブリダイズさせて、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明の疾患マーカーから調製される標識プローブと結合させて検出する方法を挙げることができる。また、上記DNAチップとして、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベルの検出、測定が可能なDNAチップを用いることもできる。かかる遺伝子の発現レベルを検出、測定することができるDNAチップとしては、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A, B,C, D, Eを挙げることができる。かかるDNAチップを用いた、被験者RNA中のIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベルの検出、測定については、実施例において詳細に説明する。
(2-2) 測定対象の生体試料としてタンパク質を用いる場合
測定対象物としてタンパク質を用いる場合は、本発明の炎症性腸疾患(IBD)の検出方法(診断方法)は、生体試料中のIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかを検出し、その量を測定することによって実施される。具体的には下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質と抗体に関する本発明の疾患マーカー(IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1を認識する抗体)とを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、炎症性腸疾患(IBD)の罹患を判断する工程。
より具体的には、抗体に関する本発明の疾患マーカーとして抗体(IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1を認識する抗体)を用いて、ウエスタンブロット法などの公知方法で、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかを検出、定量する方法を挙げることができる。
ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシターゼ(HRP)などの酵素等で標識した標識抗体(一次抗体に結合する抗体)を用い、得られる標識化合物の放射性同位元素、蛍光物質などに由来するシグナルを放射線測定器(BAS-1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System (アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
なお、上記において測定対象とするIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40およびPaired-Ig-like receptor A1の機能または活性は、既に知られており、該タンパク質の量と機能乃至活性とは一定の相関関係を有している。従って、上記タンパク質の量の測定に代えて、該タンパク質の機能または活性の測定を行うことによっても、本発明の炎症性腸疾患(IBD)の検出(診断)を実施することができる。すなわち本発明は、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1の公知の機能または活性を指標として、これを公知の方法(具体的には後述の(3-3)項を参照)に従って測定、評価することからなる、炎症性腸疾患(IBD)の検出(診断)方法をも包含する。
(2-3)炎症性腸疾患(IBD)の診断
炎症性腸疾患(IBD)の診断は、被験者の生体組織(大腸組織など)におけるIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、もしくはこれらの遺伝子の発現産物であるタンパク質(IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1)の量、機能若しくは活性(以下これらを合わせて「タンパク質レベル」ということがある)を、正常な生体組織(大腸組織など)における当該遺伝子発現レベルまたは当該タンパク質レベルと比較し、両者の違いを判定することによって行うことができる。
この場合、正常な生体組織から採取調製した生体試料(RNAまたはタンパク質を含む試料)が必要であるが、これらは炎症性腸疾患(IBD)に罹患していない人の生体組織(大腸組織など)をバイオプシ等で採取するか、もしくは腸管洗浄液等から回収することによって取得することができる。なお、ここでいう「炎症性腸疾患(IBD)に罹患していない人」とは、少なくとも炎症性腸疾患(IBD)の自覚症状がなく、好ましくは他の検査方法、例えば内視鏡検査や、注腸X腺検査、消化管の生検などの結果、炎症性腸疾患(IBD)でないと診断された人をいう。なお、当該「炎症性腸疾患(IBD)に罹患していない人」を以下、本明細書では単に正常者という場合もある。
被験者の生体組織と正常な生体組織(炎症性腸疾患(IBD)に罹患していない人の生体組織)との遺伝子発現レベルまたはタンパク質の量(レベル)の比較は、被験者の生体試料と正常者の生体試料を対象とした測定を並行して行うことで実施できる。並行して行わない場合は、複数(少なくとも2つ、好ましくは3以上、より好ましくは5以上)の正常な生体組織を用いて均一な測定条件で測定して得られたIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、若しくはこれらの遺伝子の発現産物であるタンパク質(IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1)の量(レベル)の平均値または統計的中間値を、正常者の遺伝子発現レベル若しくはタンパク質の量として、比較に用いることができる。
被験者が炎症性腸疾患(IBD)であるかどうかの判断は、該被験者の生体組織におけるIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子の遺伝子発現レベル、またはその発現産物であるタンパク質レベルが、正常者のそれらのレベルと比較して2倍以上、好ましくは3倍以上多いことを指標として、あるいは、該被験者の生体組織におけるのLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子発現レベル、またはその発現産物であるタンパク質レベルが、正常者のそれらのレベルと比較して1/2以下、好ましくは1/3以下と少ないことを指標として行うこともできる。
また、被験者のIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子の遺伝子発現レベルまたはタンパク質レベルが、正常者のそれらのレベルに比べて多ければ、あるいは、被験者のLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子発現の遺伝子発現レベルまたはタンパク質レベルが、正常者のそれらのレベルに比べて少なければ、該被験者は炎症性腸疾患(IBD)であると判断できるか、該疾患の罹患が疑われる。
(3)候補薬のスクリーニング方法
(3-1) 遺伝子発現レベルを指標とするスクリーニング方法
本発明は、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現を減少させる物質のスクリーニング方法と、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝のいずれかの発現を増加させる物質のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)被験物質とIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
あるいは、本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)被験物質とLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
かかるスクリーニングに用いられる細胞としては、内在性および外来性を問わず、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかを発現する培養細胞全般を挙げることができる。これら本発明遺伝子の発現は、公知のノーザンブロット法やRT-PCR法にてこれらの遺伝子発現を検出することにより、容易に確認することができる。当該スクリーニングに用いられる細胞としては、具体的には、例えば、(A)炎症性腸疾患(IBD)の動物モデルより単離、調製した腸管組織やリンパ系組織由来の細胞、(B)種々の刺激剤で処理又は未処理の腸管組織やリンパ系組織由来の細胞、(C)本発明遺伝子のいずれかを導入した細胞を挙げることができる。
ここで前記(A)の炎症性腸疾患(IBD)の動物モデルとしては、炎症性腸疾患(IBD)の動物モデルとして周知であるれば如何なる動物モデルをもよく、具体的には、自然発症IBDモデル(C3H/HeJBirマウス、Cotton top tamarins等)、化学物質誘発モデル(ジニトロクロロベンゼン誘発モデル(ラット)、酢酸モデル(ラット)、トリニトロスルホン酸誘発モデル(マウス、ラット、ウサギ)、デキストラン硫酸誘発モデル(マウス、ラット、ハムスター)、カラゲナン誘発モデル(ラット、モルモット)、インドメタシン誘発モデル(ラット)等)、トランスジェニック/ミュータント(IL-2ノックアウトマウス、IL-10ノックアウトマウス、TCRノックアウトマウス等)、または移入モデル(CD45RBhi移入SCIDマウス等)等を挙げることができる。また腸管組織由来の細胞としては、好ましくは大腸(結腸)由来の初代培養細胞などを挙げることができる。
前記(B)の腸管組織由来の細胞としては、大腸(結腸)由来の株化細胞が好ましく、具体的には Caco-2細胞(ヒト結腸腺癌由来、ATCC株番号HTB-37)、HT-29細胞(ヒト結腸腺癌由来、ATCC株番号HTB-38)またはCOLO 205 細胞(ヒト結腸腺癌由来、ATCC株番号CCL-222)等を挙げることができる。またリンパ系組織由来の細胞としては、リンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球およびそれらの株化細胞が好ましく、具体的にはRAW 264.7細胞(マウス単球由来、ATCC株番号TIB-71)、U-937細胞(ヒト組織球性リンパ腫由来、ATCC株番号CRL-1593.2)、THP-1細胞(ヒト単球由来、ATCC株番号TIB-202)またはJurkat細胞(ヒトT細胞リンパ腫由来、ATCC株番号TIB-152)等を挙げることができる。刺激剤は、具体的にはリポポリサッカライド(Lipopolysaccharide :LPS)、ホルボールエステル(PMA等)、カルシウムイオノフォア、サイトカイン(IL-1、IL−6、IL-12、IL-18、TNFα、IFNγ等)等を挙げることができる。これら刺激剤で刺激することにより、細胞は炎症部位の環境により近い活性化状態になることが知られている。
前記(C)の本発明遺伝子導入細胞としては、前記(A)(B)の細胞の他、通常遺伝子導入に用いられる宿主細胞、すなわちL-929(結合組織由来、ATCC株番号CCL-1)、C127I(乳癌組織由来、ATCC株番号CRL-1616)、Sp2/0-Ag14(骨髄腫由来、ATCC株番号CRL-1581)、NIH3T3(胎児組織由来、ATCC株番号CRL-1658)等のマウス由来細胞、ラット由来細胞、BHK-21(シリアンハムスター仔腎組織由来、ATCC株番号CCL-10)、CHO-K1(チャイニーズハムスター卵巣由来、ATCC株番号CCL-61)等のハムスター由来細胞、COS1(アフリカミドリザル腎組織由来、ATCC株番号CRL-1650)、CV1(アフリカミドリザル腎組織由来、ATCC株番号CCL-70)、Vero(アフリカミドリザル腎組織由来、大日本製薬株式会社)等のサル由来細胞、HeLa(子宮けい部癌由来、大日本製薬株式会社)、293(胎児腎由来、ATCC株番号CRL-1573)等のヒト由来細胞、およびSf9(Invitrogen Corporation)、Sf21(Invitrogen Corporation)等の昆虫由来細胞などを挙げることができる。
さらに、本発明のスクリーニング方法に用いられる細胞には、細胞の集合体である組織なども含まれる。
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸(本発明遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含む)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質またはこれらを含む試料(被験試料)を上記細胞および/または組織と接触させることにより行われる。かかる被験試料としては、被験物質を含む細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
また本発明スクリーニングに際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つ本発明遺伝子を発現できる培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
実施例に示すように、炎症性腸疾患(IBD)惹起性細胞において、炎症性腸疾患(IBD)非惹起性細胞に比して、特異的にIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子が発現上昇し、またLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子が発現下降している。この知見から、これら本発明遺伝子の発現変動は炎症性腸疾患(IBD)と関連していると考えられる。よって本発明のスクリーニング方法には、本発明遺伝子のいずれかの発現レベルを指標として、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現を減少させる物質、または、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現を増加させる物質を探索する方法が包含される。このスクリーニング方法によって、炎症性腸疾患(IBD)の緩和/抑制作用を有する(IBDに対して改善/治療効果を発揮する)候補物質を提供することができる。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現を減少させる物質、またはLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現を増加させる物質を探索することによって、炎症性腸疾患(IBD)の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
候補物質の選別は、具体的には、被験物質を添加した細胞のIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子の発現レベルが、被験物質を添加しない細胞のそのレベルに比して低くなること、あるいはLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現レベルが、被験物質を添加しない細胞のそのレベルに比して高くなることを指標にして行うことができる。また、これらIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質[例えばリポポリサッカライド(Lipopolysaccharide:LPS)、ホルボールエステル(PMA等)、カルシウムイオノフォア、サイトカイン(IL-1、IL−6、IL-12、IL-18、TNFα、IFNγ等)等]の存在下において誘導される発現が候補物質の存在によって制御されること、すなわち発現誘導条件下で候補物質を接触させた細胞のIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子の発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して低くなることを指標として、あるいは発現誘導条件下で候補物質を接触させた細胞のLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して高くなることをもって、行うことができる。
このような本発明のスクリーニング方法における遺伝子発現レベルの検出及び定量は、前記細胞から調製したRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドと本発明の疾患マーカーとを用いて、前記(2-1)項に記述したように、ノーザンブロット法、RT-PCR法など公知の方法、あるいはDNAチップなどを利用する方法に従って実施できる。指標とする遺伝子発現レベルの変動(抑制、減少)の程度は、被験物質(候補物質)を接触させた細胞におけるIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現が、被験物質(候補物質)を接触させない対照細胞における発現量と比較して10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の低下(抑制、減少)を例示することができる。また、指標とする遺伝子発現レベルの変動(促進、増加)の程度は、被験物質(候補物質)を接触させた細胞におけるLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現が、被験物質(候補物質)を接触させない対照細胞における発現量と比較して10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の上昇(促進、増加)を例示することができる。
またIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現レベルの検出及び定量は、これら本発明遺伝子の発現を制御する遺伝子領域(発現制御領域)に、例えばルシフェラーゼ遺伝子などのマーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した細胞株を用いて、マーカー遺伝子由来のタンパク質の活性を測定することによっても実施できる。本発明のIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現制御物質のスクリーニング方法には、かかるマーカー遺伝子の発現量を指標として標的物質を探索する方法も包含されるものであり、この意味において、請求項15、請求項22および請求項23に記載する「IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子」、ならびに請求項16、請求項22および請求項23に記載する「Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子」の概念には、これら本発明遺伝子の発現制御領域とマーカー遺伝子との融合遺伝子が含まれる。
なお、上記マーカー遺伝子としては、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が好ましい。具体的には、上記のルシフェラーゼ遺伝子のほか、分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、及びエクオリン遺伝子などのレポーター遺伝子を例示できる。
また、ここで本発明遺伝子の発現制御領域は、例えば該遺伝子の転写開始部位上流約1kb、好ましくは約2kbを用いることができる。本発明遺伝子の発現制御領域は、例えば(i)5'-RACE法(例えば、5'full Race Core Kit(宝酒造社製)等を用いて実施される)、オリゴキャップ法、S1プライマーマッピング等の通常の方法により、5'末端を決定するステップ;(ii)Genome Walker Kit(クローンテック社製)等を用いて5'-上流領域を取得し、得られた上流領域について、プロモーター活性を測定するステップ;を含む手法等により同定することができる。また融合遺伝子の作成、およびマーカー遺伝子由来の活性測定は公知の方法で行うことができる。
本発明のスクリーニング方法により選別される物質は、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子および/又はCDw40遺伝子の遺伝子発現抑制剤、あるいはLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子および/又はPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の遺伝子発現促進剤として位置づけることができる。これらの物質は、本発明遺伝子の発現を制御することによって、大腸組織障害の発症、進行を抑制し、よって、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補物質となる。
(3-2)タンパク質の発現量を指標とするスクリーニング方法
本発明は、IL-17(IL-17タンパク質)、IL-9(IL-9タンパク質)、TCR Vγ4(TCR Vγ4タンパク質)およびCDw40(CDw40タンパク質)のいずれかの発現を減少させる物質、あるいはLymphotoxinα(Lymphotoxinαタンパク質)、IL-10 receptor β(IL-10 receptor βタンパク質)、DAP12(DAP12タンパク質)、Integrinβ1(Integrinβ1タンパク質)およびPaired-Ig-like receptor A1(Paired-Ig-like receptor A1タンパク質)のいずれかの発現を増加させる物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明スクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含む:
(a)被験物質とIL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるIL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応するタンパク質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
あるいは、本発明スクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)および(c)を含む:
(a)被験物質とLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応するタンパク質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
本発明スクリーニングに用いられる細胞は、内在性および外来性を問わず、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかを発現し、発現産物としてのIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかを有する培養細胞全般を挙げることができる。IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1の発現は、遺伝子産物であるタンパク質を公知のウエスタン法にて検出することにより、容易に確認することができる。該細胞としては、具体的には、前記(3−1)項に記載したような細胞などが挙げられる。また当該細胞には、その細胞膜画分、細胞質画分、細胞核画分なども含まれる。
実施例に示すように、炎症性腸疾患(IBD)惹起性細胞では、IBD非惹起性細胞に比して、特異的にIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子が発現上昇し、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子が発現下降している。これらの知見から、これら本発明遺伝子の発現は炎症性腸疾患(IBD)と関連していると考えられる。よって本発明のスクリーニング方法には、本発明遺伝子のタンパク発現レベルを指標として、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量を減少させる物質、またはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの発現量を増加させる物質を探索する方法が包含される。このスクリーニング方法によって、炎症性腸疾患(IBD)の緩和/抑制作用を有する(IBDに対して改善/治療効果を発揮する)候補物質を提供することができる。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量を減少させる物質、またはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの発現量を増加させる物質を探索することによって、炎症性腸疾患(IBD)の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
候補物質の選別は、具体的にはIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかを発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞におけるIL-17、IL-9、TCR Vγ4またはCDw40のタンパク量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して低くなることを指標として、あるいは、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1またはPaired-Ig-like receptor A1のタンパク量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して高くなることを指標として、行うことができる。また、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの発現産生に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質[例えばリポポリサッカライド(Lipopolysaccharide:LPS)、ホルボールエステル(PMA等)、カルシウムイオノフォア、サイトカイン(IL-1、IL−6、IL-12、IL-18、TNFα、IFNγ等)等]によって誘導される当該タンパクの産生が被験物質の存在によって制御されること、すなわち発現誘導物質の存在下で被験物質を接触させた細胞のIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して低くなることを指標として、または、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して高くなることを指標として、選別を行うことができる。
本発明のスクリーニング方法にかかるIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの産生量は、前述したように、例えば本発明疾患マーカーなどの抗体(例えばヒトIL-17タンパク質、ヒトIL-9タンパク質、ヒトLymphotoxinαタンパク質、ヒトIL-10 receptor βタンパク質、ヒトDAP12タンパク質、ヒトTCR Vγ4タンパク質、ヒトIntegrinβ1タンパク質、ヒトCDw40タンパク質、ヒトPaired-Ig-like receptor A1タンパク質、もしくはそのホモログを認識する抗体)を用いたウエスタンブロット法などの公知方法に従って定量できる。ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシターゼ(HRP)などの酵素等で標識した一次抗体に結合する抗体を用いて標識し、これら標識物質由来のシグナルを放射線測定器(BAS-1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System (アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を利用して、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸(本発明遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含む)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質またはこれらを含む試料(被験試料)を上記細胞や細胞膜画分と接触させることにより行われる。かかる被験試料としては、被験物質を含む細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
(3-3) タンパク質の機能(活性)を指標とするスクリーニング方法
本発明は、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの機能(活性)を抑制する物質、または、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの機能(活性)を亢進する物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)被験物質をIL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかに接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるIL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの機能または活性を測定し、該機能または活性を被験物質を接触させない場合の前記に対応するタンパク質の機能または活性と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの機能または活性を抑制する被験物質を選択する工程。
または、本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)被験物質をLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかに接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの機能または活性を測定し、該機能または活性を被験物質を接触させない場合の前記に対応するタンパク質の機能または活性と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの機能または活性を亢進する被験物質を選択する工程。
本発明のスクリーニング方法おいては、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1の公知の機能・活性に基づく如何なる機能・活性測定方法をも利用することができる。すなわち、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1の公知の機能・活性測定系に被験物質を添加し、当該IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの公知の機能・活性を抑制・阻害する被験物質、あるいはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの公知の機能・活性を亢進・促進する被験物質を、炎症性腸疾患(IBD)に対して改善/治療効果を有する候補物質として選択するスクリーニング方法であれば、本発明のスクリーニング方法の範疇に含まれる。
前記本発明のスクリーニングは、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分と、被験物質とを接触させることにより行うことができる。ここでIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1を含む水溶液としては、例えばIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1を含む通常の水溶液の他、これらのタンパク質を含む細胞溶解液、細胞破砕液、核抽出液あるいは細胞の培養上清などを例示することができる。
また、本発明のスクリーニング方法に用いられる細胞としては、内在性及び外来性を問わず、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1を発現し得る細胞を挙げることができる。該細胞としては、具体的には、前記(3−1)項に示されるような細胞などを用いることができる。また細胞画分とは、上記細胞に由来する各種の画分を意味し、これには、例えば細胞膜画分、細胞質画分、細胞核画分などが含まれる。
前記スクリーニングにおいて用いられるIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40およびPaired-Ig-like receptor A1は、いずれも公知のタンパク質であり、例えば、前記(1-3)に記述したように、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号1〜9)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換細胞の培養、および必要に応じて培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
実施例に示すように、炎症性腸疾患(IBD)惹起性細胞では、IBD非惹起性細胞に比して、特異的にIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子が発現上昇し、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子が発現下降している。この知見から、これらの遺伝子の発現産物(タンパク質)の機能(活性)亢進あるいは抑制は、炎症性腸疾患(IBD)と関連していると考えられる。よって本発明のスクリーニング方法には、本発明タンパク質の機能(活性)を指標として、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの機能または活性を抑制する物質、あるいはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの機能または活性を亢進する物質を探索する方法が包含される。本発明スクリーニング方法によれば、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの機能または活性を抑制する物質、あるいはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの機能または活性を亢進する物質を探索でき、かくして炎症性腸疾患(IBD)の緩和/抑制作用を有する(IBDに対して改善/治療効果を発揮する)候補物質が提供される。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの機能または活性を抑制する物質、あるいはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの機能または活性を亢進する物質を探索することによって、炎症性腸疾患(IBD)の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
候補物質の選別は、具体的には、IL-17、IL-9、TCR Vγ4またはCDw40タンパク質の機能(活性)を抑制(低下)させる物質の探索は、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分に被験物質を接触させた場合に得られる上記の少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)が、被験物質を添加しない対照の水溶液、細胞または細胞画分の上記対応するタンパク質の機能(活性)に比して低くなることを指標として行うことができる。またLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1またはPaired-Ig-like receptor A1タンパク質の機能(活性)を亢進(上昇、増加)させる物質の探索は、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子mたはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子を含む水溶液、細胞または該細胞から調製した細胞画分に被験物質を接触させた場合に得られる上記の少なくとも1つのタンパク質の機能(活性)が、被験物質を添加しない対照の水溶液、細胞または細胞画分の上記対応するタンパク質の機能(活性)に比して高くなることを指標として行うことができる。
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸、ペプチド、蛋白質(IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質またはこれらを含む試料(被験試料)を上記水溶液、細胞または細胞画分と接触させることにより行われる。被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
本発明の各タンパク質の機能または活性に基づくスクリーニング方法について、以下に「I.結合阻害活性を指標とするスクリーニング」および「II.それ以外の機能または活性を指標とするスクリーニング」で具体的に例示する。
I.結合阻害活性を指標とするスクリーニング
本発明タンパク質のうち、IL-17、IL-9およびLymphotoxinαはリガンド(受容体結合物質)であり、それらの受容体としては、IL-17の受容体であるIL-17受容体、IL-9の受容体であるIL-9受容体、Lymphotoxinαの受容体であるTumor necrosis factor(腫瘍壊死因子)受容体)が知られている。IL-10 receptor βは受容体であり、そのリガンドIL-10が知られている。TCR Vγ4、Integrinβ1は細胞表面分子であり、その結合物質としては、TCR Vγ4の結合物質である結核菌・ツベルクリン、Integrinβ1の結合物質であるコラーゲン・ラミニンが知られている。DAP12は細胞膜貫通分子であり、KAR分子群、ヒトsignal regulatory protein(SIRP) beta1、ヒトやマウスのmyeloid DAP12-associating lectin(MDL)-1およびtriggering receptor expressed on myeloid cells(TREM)と会合することが知られている。
従って、これらの公知の性質に基づいて、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、TCR Vγ4、Integrinβ1またはDAP12の機能または活性の変動をもたらす被験物質(候補物質)のスクリーニングを行うことができる。すなわち、本発明タンパク質であるIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、TCR Vγ4、Integrinβ1またはDAP12と、これら本発明タンパクに結合する物質(IL-17受容体、IL-9受容体、Tumor necrosis factor(腫瘍壊死因子)受容体、IL-10、ツベルクリン、ラミニン、フィブロネクチン、triggering receptor expressed on myeloid cells(TREM)、以下「本発明タンパク質の結合物質」と称する場合がある)との結合を指標として行うことができる。この場合、具体的には、IL-17、IL-9またはTCR Vγ4の場合は当該タンパク質と結合物質との結合を阻害する被検物質を、また、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、Integrinβ1またはDAP12の場合は当該タンパク質と結合物質との結合を増強する被検物質を、候補物質として選択することができる。
すなわち結合阻害活性に基づく本発明のスクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a) 被験物質の存在下で、IL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、TCR Vγ4、Integrinβ1またはDAP12と、それに対応する結合物質とを接触させる工程、
(b) 上記反応の結果生じた結合量を測定し、当該結合量を、被験物質非存在下で上記(a)を行うことによって生じる結合量(対照結合量)と比較する工程、
(c) 上記(b)の結果に基づいて、対照結合量に比して結合量を変動させる被験物質を選択する工程。
この場合、結合物質と本発明タンパク質との結合阻害あるいは増強は、(1)結合物質に結合することによって、本発明タンパク質と結合物質の結合を阻害あるいは増強する態様のもの、(2)本発明タンパク質に結合することによって、本発明タンパク質と結合物質の結合を阻害あるいは増強する態様のもの、を例示することができるが、結合を阻害あるいは増強するものであれば特に限定されない。但し、とりわけ(1)の態様の場合は、前記結合物質に結合しても前記本発明タンパク質と同じ作用を発揮しない被験物質を選択することが必要である。このため、上記のスクリーニング方法で選別された被験物質は更に、上記(c)で選択された被験物質の中から、更に前記本発明タンパク質と同じ作用を有する被験物質、又は前記本発明タンパク質の作用を拮抗する被験物質を選択する工程、に供することが好ましい。この(d)の工程としては、例えば後述する、「II.それ以外の機能(活性)を指標とするスクリーニング」の項に記載された方法を挙げることができる。
本発明スクリーニングに用いる受容体は、精製物(単離物)であっても良いし、当該受容体を含有する細胞またはその細胞画分(細胞膜画分など)の形態等であっても良い。当該受容体を含有する細胞は、具体的には、当該受容体を天然に発現している細胞、または当該受容体をコードする遺伝子を細胞に導入して作製した形質転換細胞などが挙げられる。
当該形質転換細胞は、Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等の基本書に従い、当業者にとって公知の方法で調製することができる。例えば、前記受容体のcDNAをpCAGGS(Gene 108, 193-199(1991))、pcDNA1.1、pcDNA3.1誘導体(インビトロジェン社)などの公知の発現ベクターに挿入する。その後、適当な宿主に導入し、培養することにより、導入した受容体のDNAに対応するタンパク質を発現させた形質転換細胞を作製することができる。宿主としては、一般的に広く普及している、CHO細胞、C127細胞、BHK21細胞、COS細胞などを用いることができるが、これに限定されることなく、酵母、細菌、昆虫細胞などを用いることもできる。
受容体タンパク質のcDNAを有する発現ベクターの宿主細胞への導入方法としては、公知の発現ベクターの宿主細胞への導入方法であれば、どのような方法でもよく、例えばリン酸カルシウム法(J. Virol., 52, 456-467(1973))、LT-1(Panvera社製)を用いる方法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin;Gibco−BRL社製)を用いる方法などが挙げられる。
細胞膜を用いる場合は、例えば、細胞に低張バッファーを添加し、細胞を低張破壊した後、ホモジナイズし、遠心分離することにより細胞膜画分の沈殿物を得る。そしてこの沈殿物をバッファーに懸濁することにより、受容体を含有する細胞膜画分を得ることができる。得られた細胞膜画分は、抗体を結合させたカラム等により常法で精製することもできる。
本発明スクリーニングで用いられる前記本発明タンパク質、具体的にはIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、TCR Vγ4、Integrinβ1およびDAP12も、同様の手法で調製された形質転換細胞から、常法により組換えタンパクを回収することにより得ることができる。さらに、前記天然結合物質(本発明の結合物質)のかわりに、アゴニスト活性を有する結合物質を用いることもできる。
本発明タンパクは、そのままで用いても良いし、任意の標識物質で標識されたものを用いることもできる。ここで標識物質としては、放射性同位体(3H、14C、35S、125I等)、蛍光物質(Molecular Probes社Alexa Protein Labeling Kits等)、化学発光物質(Assay Designs社Chemiluminescence Labeling Kit等)、ビオチン(Pierce社EZ-Link Biotinylation Kits等)、マーカータンパク質、またはペプチドタグなどを例示することができる。マーカータンパク質としては、例えばアルカリフォスファターゼ(Cell, 63,185-194,1990)、抗体のFc領域(Genbank accession number M87789)、またはHRP(Horse radish peroxidase)などの従来公知のマーカータンパク質を挙げることができる。またペプチドタグとしては、例えばMycタグ、Hisタグ、FLAGタグなどの従来公知のペプチドタグを挙げることができる。
受容体結合阻害活性の測定は、具体的には、以下の方法が例示される。すなわち、前記受容体を含有する水溶液(通常緩衝液が用いられる)、前記細胞若しくは細胞膜画分に、10-3〜10-10Mの適当な濃度に調製した被験化合物溶液(通常溶媒には水もしくは緩衝液が用いられるが、溶解度に応じてエタノールやDMSOを添加することもできる)を加えた後、標識した前記リガンドを加え、一定時間(通常、10分〜2時間)反応させる。その後遠心分離等により上清を単離して放射活性を測定し、上清中に含まれる標識したリガンド量を計測することができる。あるいは、形質転換細胞もしくは細胞膜画分を含む沈殿物を界面活性剤、塩基を含む溶液に溶解し、その放射活性を測定し、沈殿物に含まれる標識リガンド量を計測することもできる。
上記の数値を、被験化合物の代わりに溶媒をブランクとして用いて実施した場合の値(対照結合量)と比較することにより、被験化合物が、受容体と標識リガンドの結合を阻害するか否かを評価することができる。すなわち候補物質のスクリーニングは、被験物質存在下での結合量が、被験物質非存在下での結合量に比して、変動するか否かを指標にして行うことができる。
具体的な阻害率(%)については、例えば、以下の式:
{1-(被験物質を添加した場合に本発明タンパク質と結合した標識結合物質量)/(被験物質非添加時における本発明タンパク質と結合した標識アゴニスト活性を有する結合物質量)}X100
で算出することによって求めることができる。
II.それ以外の機能または活性を指標とするスクリーニング
(A)IL−17の機能(活性)を指標とするスクリーニング方法
IL−17はT 細胞由来の新規なサイトカインであり、骨芽細胞等と骨髄細胞との共培養系において破骨細胞への分化促進作用を示す。つまりIL−17の破骨細胞形成シグナル伝達を阻害する物質をスクリーニングすることで、IL−17の機能を阻害する薬剤をスクリーニングできる(特開2000−186046)。
IL−17による破骨細胞形成は、IL−17が骨芽細胞/骨芽細胞様ストローマ細胞に作用し、プロスタグランジンE2(PGE2) を産生し、このPGE2によるシグナルをprotein kinase Aを介して再び骨芽細胞/骨芽細胞様ストローマ細胞が受け取り、その細胞表面に破骨細胞形成分化誘導因子、OBM を発現し、破骨細胞形成を促進させることによって形成される。従って、骨芽細胞又は骨芽細胞様ストローマ細胞と骨髄細胞の共培養系において、破骨細胞への分化抑制を指標として、IL−17活性の抑制または中和する物質及び又はIL−17による破骨細胞形成誘導シグナル伝達を阻害する物質をスクリーニングすることが可能である。この場合、候補物質は、具体的には例えば被検物質(候補物質)の存在下で、骨芽細胞又は骨芽細胞様ストローマ細胞と骨髄細胞の共培養系における破骨細胞への分化が、被検物質(候補物質)の非存在下における破骨細胞への分化と比して減少する(抑制される)場合に、選択することができる。
すなわちIL−17の破骨細胞分化促進活性に基づくスクリーニング方法としては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a) 被験物質の存在下で、IL−17受容体発現細胞とIL−17を接触させる工程、
(b) 上記(a)におけるTRAP活性あるいはカルシトニン受容体の発現を測定し、当該活性あるいは発現量を、被験物質非存在下で前記細胞及びIL−17を接触させることによって得られる活性あるいは産生量(対照活性あるいは産生量)と比較する工程、
(c) 上記(b)の結果に基づいて、対照活性あるいは産生量に比して活性あるいは産生量を増加させる被験物質を選択する工程。
ここで用いられるIL−17受容体発現細胞としては、骨芽細胞または骨芽細胞様ストローマ細胞等が挙げられる。
具体的には、新生児マウスの頭骸骨由来の初代培養骨芽細胞とマウス骨髄細胞、あるいはマウス脾臓細胞とマウス骨芽細胞様ストローマ細胞株、ST2 との共培養系におけるIL−17による破骨細胞形成誘導活性(酒石酸耐性酸性フォスファターゼ活性: TRAP活性、又はカルシトニン受容体の発現)を指標とし、この培養系に被検物質を添加して培養を行い、上記のTRAP活性、又はカルシトニン受容体の発現を測定するか、より直接的には破骨細胞の形成を観察して、目的のIL−17活性を中和または、抑制する物質、及び又はIL−17による破骨細胞形成誘導シグナル伝達を阻害する物質をスクリーニングすることができる。尚、TRAP活性及びカルシトニン受容体の発現は、いずれも市販のイムノアッセイキット並びに125I標識サケカルシトニン(Amersham製)を用いて容易に高感度測定が可能である。このスクリーニング系で陽性を示す物質は、IL−17活性を阻害、IL−17による骨芽細胞/骨芽細胞様ストローマ細胞株への破骨細胞形成促進活性シグナルを阻害する物質、あるいはPGE2産生を阻害する物質が検出される。
(B)IL−9の機能(活性)を指標とするスクリーニング方法
IL−9(インターロイキン−9)、別名P40あるいはCTGFIIIは、ヘルパーT細胞クローンおよび粘膜肥満細胞の成長を支援する能力を含めて多くの性質を有している。後者はタイプIの過敏性反応の調整に関与していることが知られている。またIL−9は、IgGおよびIgE生産の刺激に対してIL−4が有する影響力を増強する作用を示す。すなわち、IL−9の公知の性質であるIgE産生増強活性の測定等を用いて、IL−9の機能(活性)を制御する制御物質または候補物質をスクリーニングすることができる。具体的には、例えば公開特許公報:特開2001−253835に記載の方法を参考にしてIL−9のIL−4およびIL−9応答細胞に対するIgE産生促進(増強)活性を測定する方法が挙げられる。この場合、候補物質は、具体的には例えば被検物質(候補物質)の存在下で、IL-9受容体発現細胞とIL−9を反応させて産生されたIgE量が、被検物質(候補物質)の非存在下で産生されたIgE量に比して減少する(抑制される)する場合に、選択することができる。
すなわちIL−9のIgE産生促進活性に基づくスクリーニング方法としては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a) 被験物質の存在下で、IL−4存在下でIL−9受容体発現細胞とIL−9を接触させる工程、
(b) 上記(a)における、IgE量を測定し、当該産生量を、被験物質非存在下で前記細胞及びIL−9を接触させることによって得られるIgE産生量(対照産生量)と比較する工程、
(c) 上記(b)の結果に基づいて、対照産生量に比してIgE産生量を増加させる被験物質を選択する工程。
ここで用いられるIL−9受容体発現細胞としては、IL−4にもIL−9にも応答する細胞であるヒト末梢血リンパ球等を挙げることができる。
(C)Lymphotoxinα(LTα)の機能(活性)を指標とするスクリーニング方法
LTαは、別名Tumor necrosis factorβとも称され、抗原刺激されたT細胞やリンパ球系細胞あるいは星状細胞から産生されるサイトカインである。LTα遺伝子欠損動物の研究からリンパ器官の形成に必須であることが知られている。この作用は、LTαが脾臓間質の濾胞領域からB lymphocyte chemoattractant(BLC)の産生を誘導しCXCR5を発現するB細胞を引き寄せることでB細胞濾胞を形成したり(Gunn MD et al. Nature 391:799(1998)、Forster R et al. Cell 87:1037(1996))、脾臓やリンパ節のT細胞領域の間質とT細胞領域に存在する樹状細胞からSecondary lymphoid tissue chemokine(SLC)やEpstein-Barr virus-induced molecule 1 ligand chemokine(ELC)の産生を誘導しナイーブT細胞をT細胞領域に引き寄せることでリンパ器官の形成を促す(Nagira M et al. J Biol Chem 272:19518(1997)、Yoshida R et al.J Biol Chem 272:13803(1997)、Ngo VN et al.J Exp Med 188:181(1998))。また、LTαは細胞傷害活性があることが知れている(Carolyn A C et al. J Immunol 161:6853-6860,1998)。
従って、LTαの公知の性質である細胞障害活性を測定することによって、LTαの機能(活性)を増強する候補物質をスクリーニングすることができる。この場合、候補物質は、具体的には例えば被検物質(候補物質)の存在下で、LTαに対して応答性を有する細胞とLTαを接触させることによる細胞障害活性が、被検物質(候補物質)の非存在下での細胞障害活性に比して増加する(亢進される)場合に、選択することができる。
すなわちLymphotoxinαの細胞障害活性に基づくスクリーニング方法としては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a) 被験物質の存在下で、LTα受容体発現細胞とLTαを接触させる工程、
(b) 上記(a)における、細胞傷害活性を測定し、当該活性値を、被験物質非存在下で前記細胞とLTαを接触させることによって得られる活性値(対照活性値)と比較する工程、
(c) 上記(b)の結果に基づいて、対照活性値に比して活性値を増加させる被験物質を選択する工程。
ここで用いられるLTα受容体発現細胞とは、線維腫細胞等をあげることができる。
また、細胞障害活性は、例えば、細胞生存率をMTT法により求めることができる(J Immunol, 1998, 161: 68536860)。
(D)IL-10 receptor beta(IL-10Rβ)の機能(活性)を指標とするスクリーニング方法
IL-10Rβは、IL-10R2とも称され、JAK1、Tyk2、STATsと細胞内で会合してIL-10と結合することでIL-10の作用を発現する受容体である。IL-10はT細胞、B細胞、マクロファージ、肥満細胞、ケラチノサイトから産生されるサイトカインであり、T細胞からのインターフェロンγ産生の抑制、T細胞増殖、B細胞増殖、単球の抗体依存性細胞傷害活性の増強、単球・マクロファージのモノカイン産生抑制などの機能を有している(Hsu DH et al. Science 250:830-832, 1990、Fiorentino DF et al. J Exp Med 170:2081-2095, 1989、Fiorentino DF et al. J Immunol 147:3815-3822, 1991、Macneil IA et al. J Immunol 145:4167-4173, 1990、Go NF et al. J Exp Med 172:1625-1631, 1990)。
従って、IL-10の公知の性質であるインターフェロンγ産生抑制活性を測定することによって、IL-10Rβの機能(活性)を促進する候補物質をスクリーニングすることができる。この場合、候補物質は、具体的には例えば被検物質(候補物質)の存在下で、IL-10を接触させることによるIL-10Rβ発現細胞のインターフェロンγ産生活性が、被検物質(候補物質)の非存在下でIL-10を接触させることによるIL-10Rβ発現細胞のインターフェロンγ産生活性に比して増加する(亢進される)場合に、選択することができる。
すなわちIL-10 receptor betaのインターフェロンγ産生活性に基づくスクリーニング方法としては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a)被験物質の存在下で、IL-10Rβ発現細胞とIL-10を接触させる工程、
(b) 上記(a)における、インターフェロンγ産生量を測定し、当該インターフェロンγ産生量を、被験物質非存在下で前記細胞とIL-10を接触させることによって得られるインターフェロンγ産生量(対照活性値)と比較する工程、
(c) 上記(b)の結果に基づいて、対照インターフェロンγ産生量に比してインターフェロンγ産生量を増加させる被験物質を選択する工程。
ここで用いられるIL-10Rβ発現細胞とは、IL-10に対して応答性を有する細胞であればよく、ヒト末梢血単核球等が挙げられる。
また、インターフェロンγ産生量は、公知のELISA法を用いて測定することにより容易に求めることができる。
(E)DAP12の機能(活性)を指標とするスクリーニング方法
DAP12(DNAX activation protein 12)は活性化モチーフITAMを有する膜貫通タンパク質であり、リン酸化によりZAP-70やSykと結合することが示唆されており、ヒトにおいて19q13.1に位置する1コピー遺伝子にコードされ、マウスにおいても存在することが知られている。かかるDAP12のmRNAは単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞などに多く発現され、DAP12は単にKAR群の活性化シグナリングに関与するだけではなく、ヒトsignal regulatory protein(SIRP) beta1、ヒトやマウスのmyeloid DAP12-associating lectin(MDL)-1、triggering receptor expressed on myeloid cells(TREM)と会合することも知られている。また、DAP12がCD94/NKG2Cなど、Cタイプレクチンファミリーに属するKAR分子とも会合し、機能していることが報告されている(Immunity 8, 693-701, 1998、J. Immunol.161, 7-10, 1998、J. Immunol. 160, 4148-52, 1998)。
DAP12は、TREMを介した刺激を好中球、マクロファージに伝達しケモカイン、サイトカインを産生誘導することから、この公知の性質である活性を測定することで、DAP12の機能を増強する候補物質をスクリーニングすることができる(J. Immunol. 164, 4991-4995, 2000)。この場合、候補物質は、具体的には例えば被検物質(候補物質)の存在下で、抗TREM抗体を接触させることによるIL-8、TNF-αまたはMCP-1産生量が、被検物質(候補物質)の非存在下で抗TREM抗体を接触させることによるIL-8、TNF-αまたはMCP-1産生量に比して増加する(亢進される)場合に、選択することができる。
すなわちDAP12のケモカイン、サイトカインを産生促進活性に基づくスクリーニング方法としては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a) 被験物質の存在下で、DAP12発現細胞と抗TREM抗体を接触させる工程、
(b) 上記(a)における、IL-8、TNF-αまたはMCP-1産生量を測定し、当該産生量を、被験物質非存在下で前記細胞と抗TREM抗体を接触させることによって得られる産生量(対照産生量)と比較する工程、
(c) 上記(b)の結果に基づいて、対照産生量に比して産生量を増加させる被験物質を選択する工程。
ここで用いられる抗TREM抗体は、TREM-1と免疫グロブリンGのFc部分とのFusion proteinをマウスに免疫して作製できる。TREM-1-Fcは、TREM-1をGenBankのExpressed sequence tagged databaseを調べてTREM-1 cDNA fragmentを合成し、細胞外部分をPCR増幅後にヒトIgG1のヒンジ部、CH2部、CH3部のExonを含む発現ベクターでクローニングして得られる。
また、抗TREM抗体に対して応答性を有する細胞とは、単球または好中球等を挙げることが出来る。
なお、IL-8、TNF-αまたはMCP-1産生量は、公知のELISA法で測定することにより容易に求めることができる。
(F)TCR Vγ4の機能(活性)を指標とするスクリーニング方法
T細胞受容体(TCR)はαβTCRとγδTCRの2種類がある。γδTCR T細胞は脾臓、リンパ節、胸腺、末梢血、腸管・表皮・肺・舌・乳腺の上皮に分布しているが、その機能は不明な点が多いが、結核菌、ツベルクリン等と反応してサイトカイン産生および増殖をすることが知られている。これらの反応はγδTCR T細胞に特徴的な反応であり、損傷を受けた上皮を除去したり、自己免疫疾患等の病態に関与することとも関連付けられる。さらにγδTCR T細胞は自己反応性B細胞あるいはIgE産生を補助する作用があり、これらB細胞との相互作用が病態との関連に重要との報告もある。つまりTCRVγ4陽性γδT細胞は、自己および細菌のストレスタンパク等を認識し、自己免疫疾患等の病態に関与していると考えられる。
従って、γδTCR T細胞の公知の性質であるツベルクリン反応性を測定することによって、TCRVγ4のγδTCR T細胞の機能(活性)を抑制する候補物質をスクリーニングすることができる。この場合、候補物質は、具体的には例えば被検物質(候補物質)の存在下で、ツベルクリンを接触させることによるTCRVγ4陽性γδT細胞の細胞増殖促進活性が、被検物質(候補物質)の非存在下でツベルクリンを接触させることによるTCRVγ4陽性γδT細胞の細胞増殖促進活性に比して減少する(抑制される)場合に、選択することができる。
すなわちTCR Vγ4のツベルクリン反応性に基づくスクリーニング方法としては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a) 被験物質の存在下で、TCRVγ4陽性γδT細胞とツベルクリンを接触させる工程、
(b) 上記(a)における、細胞増殖促進活性を測定し、当該活性値を、被験物質非存在下で前記細胞とツベルクリンを接触させることによって得られる活性値(対照活性値)と比較する工程、
(c) 上記(b)の結果に基づいて、対照活性値に比して活性値を減少させる被験物質を選択する工程。
ここで用いられるTCRVγ4陽性γδT細胞は、BCG(Bacillus Calmette-Guerin)を接種した健常人の末梢血単核球等を挙げることが出来る。
また、細胞増殖活性はチミジンの取り込みなど公知の方法で容易に測定することができる。
(G)Integrinβ1の機能(活性)を指標とするスクリーニング方法
細胞接着分子は、その類似した構造的特徴から5種類のファミリーに分類されている。その中の1つであるインテグリンファミリーは細胞外マトリックス(ECM)の受容体の1つであり、ECMと細胞内部にある細胞骨格とを連結する膜貫通型の糖タンパク質である。このインテグリンファミリーはαおよびβポリペプチド鎖が非共有結合によって結合したヘテロダイマーであり、β鎖の相違に基づいてさらに3つのサブファミリー(β1、β2、β3)に大別される。即ち、それぞれのサブファミリーの構成員は、異なるα鎖と共通のβ鎖を有している。β1サブファミリーはVLA(very late activation antigen)とも呼ばれ、互いにホモロジーを有するが異なっているα鎖(α1〜α6)と共通のβ1鎖からなる(VLA−1〜VLA−6)。VLA-1はα1鎖とβ1鎖からなるβ1サブファミリーのインテグリンであり、ECMの構成成分であるコラーゲンおよびラミニンの受容体である。リンパ球に発現しているVLA−1は、そのリガンドであるコラーゲンまたはラミニンと相互作用を行うことにより、動物胚発生における細胞の遊走、分化、増殖、さらには、創傷治癒、癌細胞転移、または、関節リウマチ患者の関節滑膜ECMへの炎症性細胞の遊走などの機能を担う分子である。すなわち、VLA−1の機能はECMであるラミニンへの結合活性で測定することが出来る。
従って、Integrinβ1の公知の性質であるラミニン接着活性を測定することによって、Integrinβ1の機能(活性)を増強(促進)する候補物質をスクリーニングすることができる。この場合、候補物質は、具体的には例えば被検物質(候補物質)の存在下で、ラミニンに対して接着する細胞とラミニンの細胞接着活性が、被検物質(候補物質)の非存在下でのラミニンに対して接着する細胞とラミニンの細胞接着活性に比して増加する(亢進される)場合に、選択することができる。
すなわちIntegrinβ1の細胞接着活性に基づくスクリーニング方法としては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a) 被験物質の存在下で、Integrinβ1発現細胞とラミニンを接触させる工程、
(b) 上記(a)における、細胞接着活性を測定し、当該活性値を、被験物質非存在下で前記細胞と細胞を接触させることによって得られる活性値(対照活性値)と比較する工程、
(c) 上記(b)の結果に基づいて、対照活性値に比して活性値を増加させる被験物質を選択する工程。
ここで用いられるIntegrinβ1発現細胞とは、赤血球以外の広範な細胞を挙げられる。またラミニンは、市販品のラミニン(GIBCO社製)を購入することにより入手できる。
なお、細胞接着活性については、特開平8−131185に記載の方法を参考にして容易に測定することができる。
(H)CDw40の機能(活性)を指標とするスクリーニング方法
CDw40はB細胞および癌関連の表面抗原であり、12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetateあるいは、抗イムノグロブリンμ鎖刺激したB細胞の増殖を強く増強する作用を示す(Staffan P and et al. J Immunol 142:590-595, 1989)。
従って、CDw40の公知の性質であるB細胞増殖促進活性を測定することによって、CDw40の機能(活性)を抑制する候補物質をスクリーニングすることができる。この場合、候補物質は、具体的には例えば被検物質(候補物質)の存在下で、CDw40発現細胞と抗CDw40抗体を接触させることによるB細胞増殖促進活性が、被検物質(候補物質)の非存在下でCDw40発現細胞と抗CDw40抗体を接触させることによるB細胞増殖促進活性に比して減少する(抑制される)場合に、選択することができる。
すなわちCDw40のB細胞増殖促進活性に基づくスクリーニング方法としては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a) 被験物質の存在下で、CDw40発現細胞と抗CDw40抗体を接触させる工程、
(b) 上記(a)における、B細胞増殖促進活性を測定し、当該活性値を、被験物質非存在下で前記細胞と抗CDw40抗体を接触させることによって得られる活性値(対照活性値)と比較する工程、
(c) 上記(b)の結果に基づいて、対照活性値に比して活性値を減少させる被験物質を選択する工程。
ここで用いられる抗CDw40抗体は、ウサギに精製CDw40抗原を免疫して得ることが出来る(J Immunol. 142:590-595, 1989)。また、CDw40発現細胞としては、B細胞等を挙げることができる。
B細胞増殖促進活性は、チミジンの取り込みを測定する公知の方法によって、容易にスクリーニングできる。
(I)Paired-Ig-like receptor A1(PIRA1)の機能(活性)を指標とするスクリーニング方法
PIRA1は、mRNAレベルではマクロファージ、マスト細胞、B細胞に発現しており(Hayami K et al. J Biol Chem 272:7320(1997)、Proc Natl Acad Sci USA 94:5261(1997)、Yamashita Y et al. J Biochem 123:358(1998))、モノクローナル抗体を用いた検討では顆粒球、B細胞、マスト細胞、樹状細胞、単球/マクロファージ表面での発現が確認されている(Kubagawa H et al. J Exp Med 189:309(1999))。PIRAと免疫グロブリンG受容体(FcRγ)を発現している細胞でPIRAを刺激すると細胞内カルシウム濃度が増加することから活性化シグナルに繋がると考えられている。PIRAは、マウス遺伝子のみが同定されており、ヒトについては未知であるため、スクリーニングはマウスPIRAで行う。
従って、PIRA1の公知の性質である細胞内カルシウム濃度増加活性を測定することによって、PIRA1の機能(活性)を増強する候補物質をスクリーニングすることができる。この場合、候補物質は、具体的には例えば被検物質(候補物質)の存在下で、PIRA1を発現している細胞とPIRA1に刺激を与える物質を接触させることによる細胞内カルシウム濃度が、被検物質(候補物質)の非存在下での細胞内カルシウム濃度に比して増加する(亢進される)場合に、選択することができる。
すなわちPaired-Ig-like receptor A1の細胞賦活活性に基づくスクリーニング方法としては、次の工程(a)、(b)及び(c)を含むものが例示される:
(a) 被験物質の存在下で、PIRA1発現細胞とPIRA1に刺激を与える物質とを接触させる工程、
(b) 上記(a)における、細胞内カルシウム濃度を測定し、被験物質非存在下で前記細胞とPIRA1に刺激を与える物質とを接触させることによって得られるカルシウム濃度(対照値)と比較する工程、
(c) 上記(b)の結果に基づいて、対照値に比してカルシウム濃度を増加させる被験物質を選択する工程。
ここで用いられるPIRA1を発現している細胞は公知文献(Yamashita Y and et al. J Immunol 161:4042-4047(1998))を参考に、FcgRIIB-PIR-Aキメラを細胞導入して作製することが出来る。
また、PIRA1に刺激を与える物質としては、抗マウスFcgRII/IIIモノクローナル抗体(ファルマシア)を用いることができる。
細胞内カルシウム濃度は、510nm放射波長と340nmと360nmの励起波長をflu-orescence spectrophotometer (model F-4500, Hitachi, Tokyo, Japan).でモニターして測定する方法など、公知の方法で容易に測定することができる。
かくして選抜取得される被験物質は、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補となる。
上記(3-1)〜(3-3)に記載する本発明のスクリーニング方法によって選別された候補物質は、さらに炎症性腸疾患(IBD)のモデル動物である(1)自然発症IBDモデル(C3H/HeJBirマウス、Cotton top tamarins等)、(2)化学物質誘発モデル(ジニトロクロロベンゼン誘発モデル(ラット)、酢酸モデル(ラット)、トリニトロスルホン酸誘発モデル(マウス、ラット、ウサギ)、デキストラン硫酸誘発モデル(マウス、ラット、ハムスター)、カラゲナン誘発モデル(ラット、モルモット)、インドメタシン誘発モデル(ラット)等)、(3)トランスジェニック、ミュータント(IL-2ノックアウトマウス、IL-10ノックアウトマウス、TCRノックアウトマウス等)、または(4)移入モデル(CD45RBhi移入SCIDマウス等)を用いた薬効試験、安全性試験、さらに炎症性腸疾患(IBD)患者への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的な炎症性腸疾患(IBD)の改善または治療薬を取得することができる。このようにして選別された物質は、さらにその構造解析結果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができる。
上記動物モデルはいずれも当業者にとって公知であり、例えば「In vivo models of Inflammation」D.W.Morganら編(1999、Birkhauser Verlag Basel/Switzerland)に記載された動物モデルを用いることができる。具体的には、自然発症IBDモデル(C3H/HeJBirマウス、Cotton top tamarins等)は、Gastroenterology、107巻、1726-1735頁(1994)等に記載の方法により作製することができる。また、化学物質(2,4,6-ニトロベンゼンスルホン酸等が用いられる。)誘発モデルは、Gastroenterology、96巻、795-803頁(1989)等に記載の方法により作製することができる。
なお、上記(3-1)〜(3-3)に記載するスクリーニング方法は、炎症性腸疾患(IBD)の改善または治療薬の候補物質を選別するのみならず、炎症性腸疾患(IBD)の改善または治療薬(候補薬)が、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現を減少させるか否か、あるいはLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現を増加させるか否かを評価、確認するためにも用いることができる。また、本発明のスクリーニング方法は、炎症性腸疾患(IBD)の改善または治療薬の候補物質を選別するのみならず、炎症性腸疾患(IBD)の改善または治療薬(候補薬)が、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現若しくは機能・活性を抑制するか否か、あるいはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの発現若しくは機能・活性を亢進するか否かを評価、確認するためにも用いることができる。すなわち本発明のスクリーニング方法の範疇には、候補物質の探索のみならず、このような評価あるいは確認を目的とするものも含まれる。
(4)炎症性腸疾患(IBD)の改善・治療剤
本発明は、炎症性腸疾患(IBD)の改善・治療剤を提供するものである。
本発明はIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子、Paired-Ig-like receptor A1遺伝子及びこれらの遺伝子によりコードされるタンパク質が、炎症性腸疾患(IBD)と関係しているという新たな知見から、これら本発明遺伝子の発現を制御する物質、あるいは、本発明タンパク質の発現若しくは機能(活性)を制御する物質が、上記疾患の改善または治療に有効であるという考えに基づくものである。すなわち、本発明の炎症性腸疾患(IBD)の改善・治療剤は、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子の発現を抑制する物質、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現を亢進する物質、IL-17、IL-9、TCR Vγ4またはCDw40の発現若しくは機能(活性)を抑制する物質、あるいはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1またはPaired-Ig-like receptor A1の発現若しくは機能(活性)を亢進する物質を有効成分とするものである。
当該有効成分となるIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子の発現を抑制する物質、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現を亢進する物質、IL-17、IL-9、TCR Vγ4またはCDw40の発現若しくは機能(活性)を抑制する物質、あるいはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1またはPaired-Ig-like receptor A1の発現若しくは機能(活性)を亢進する物質は、上記のスクリーニング方法を利用して選別されたもののみならず、選別された物質に関する情報に基づいて常法に従って工業的に製造されたものであってもよい。
IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子の発現抑制物質、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現亢進物質、IL-17、IL-9、TCR Vγ4またはCDw40の発現若しくは機能(活性)抑制物質、あるいはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1またはPaired-Ig-like receptor A1の発現若しくは機能(活性)亢進物質は、そのままもしくは自体公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤などが含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤などの非経口投与剤)等に応じて経口投与または非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象または患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できないが、通常、1日投与用量として、数mg〜2g程度、好ましくは数十mg程度を、1日1〜数回にわけて投与することができる。
また、上記の物質がDNAによりコードされるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組み込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。更に、上記有効成分物質がIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかに対するアンチセンスヌクレオチドの場合は、そのままもしくは遺伝子治療用ベクターにこれを組込むことにより、遺伝子治療を行うこともできる。これらの場合も、遺伝子治療用組成物の投与量、投与方法は患者の体重、年齢、症状などにより変動し、当業者であれば適宜選択することが可能である。
上記アンチセンスヌクレオチドを利用する遺伝子治療につき詳述すれば、該遺伝子治療は、通常のこの種の遺伝子治療と同様にして、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体を直接患者の体内に投与することにより目的遺伝子の発現を制御する方法、もしくはアンチセンスRNAを患者の標的細胞に導入することにより該細胞による目的遺伝子の発現を制御する方法により実施できる。
ここで「アンチセンスヌクレオチド」には、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の少なくとも8塩基以上の部分に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、アンチセンスDNAなどが含まれる。具体的には、配列番号:1〜9のいずれかに記載の塩基配列の少なくとも8塩基以上の部分に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、アンチセンスDNAなどが含まれる。
また、その化学修飾体には、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホトリエステル、アルキルホスホナート、アルキルホスホアミデートなどの、細胞内への移行性または細胞内での安定性を高め得る誘導体("Antisense RNA and DNA" WILEY-LISS刊、1992年、pp.1-50、J. Med. Chem. 36, 1923-1937(1993))が含まれる。これらは常法に従い合成することができる。
アンチセンスヌクレオチドまたはその化学的修飾体は、細胞内でセンス鎖mRNAに結合して、目的遺伝子の発現、即ちIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の発現を制御することができ、かくしてIL-17、IL-9、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、TCR Vγ4、Integrinβ1、CDw40またはPaired-Ig-like receptor A1の機能(活性)を制御することができる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体を直接生体内に投与する方法において、用いられるアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学修飾体は、好ましくは5-200塩基、さらに好ましくは8-25塩基、最も好ましくは12-25塩基の長さを有するものとすればよい。その投与に当たり、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその化学的修飾体は、通常慣用される安定化剤、緩衝液、溶媒などを用いて製剤化され得る。
アンチセンスRNAを患者の標的細胞に導入する方法において、用いられるアンチセンスRNAは、好ましくは100塩基以上、より好ましくは300塩基以上、さらに好ましくは500塩基以上の長さを有するものとすればよい。また、この方法は、生体内の細胞にアンチセンス遺伝子を導入するin vivo法および一旦体外に取り出した細胞にアンチセンス遺伝子を導入し、該細胞を体内に戻すex vivo法を包含する(日経サイエンス, 1994年4月号, 20-45頁、月刊薬事, 36 (1), 23-48 (1994)、実験医学増刊, 12 (15), 全頁 (1994)など参照)。この内ではin vivo法が好ましく、これには、ウイルス的導入法(組換えウイルスを用いる方法)と非ウイルス的導入法がある(前記各文献参照)。
上記組換えウイルスを用いる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルスなどのウイルスゲノムにアンチセンスヌクレオチドを組込んで生体内に導入する方法が挙げられる。この中では、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスなどを用いる方法が特に好ましい。非ウイルス的導入法としては、リポソーム法、リポフェクチン法などが挙げられ、特にリポソーム法が好ましい。他の非ウイルス的導入法としては、例えばマイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法なども挙げられる。
遺伝子治療用製剤組成物は、上述したアンチセンスヌクレオチドまたはその化学修飾体、これらを含む組換えウイルスおよびこれらウイルスが導入された感染細胞などを有効成分とするものである。該組成物の患者への投与形態、投与経路などは、治療目的とする疾患、症状などに応じて適宜決定できる。例えば注射剤などの適当な投与形態で、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することができ、また患者の疾患対象部位に直接投与、導入することもできる。in vivo法を採用する場合、遺伝子治療用組成物は、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含む注射剤などの投与形態の他に、例えばIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含有するウイルスベクターをリポソームまたは膜融合リポソームに包埋した形態(センダイウイルス(HVJ)-リポソームなど)とすることができる。これらのリポソーム製剤形態には、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤などが含まれる。また、遺伝子治療用組成物は、上記IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含有するベクターを導入されたウイルスで感染された細胞培養液の形態とすることもできる。これら各種形態の製剤中の有効成分の投与量は、治療目的である疾患の程度、患者の年齢、体重などにより適宜調節することができる。通常、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子に対するアンチセンスヌクレオチドの場合は、患者成人1人当たり約0.0001-100mg、好ましくは約0.001-10mgが数日ないし数カ月に1回投与される量とすればよい。アンチセンスヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの場合は、レトロウイルス力価として、1日患者体重1kg当たり約1×103pfu-1×1015pfuとなる量範囲から選ぶことができる。アンチセンスヌクレオチドを導入した細胞の場合は、1×104細胞/body-1×1015細胞/body程度を投与すればよい。
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
炎症性腸疾患(IBD)病態惹起性細胞の調製
2,4,6-Trinitrobenzene sulphonic acid (TNBS)誘発IBD動物モデルはGastroenterology、96巻、795-803頁(1989)等に記載の方法を参考にして作製することができる。
(1)感作液の作成
0.5g卵白アルブミン(Sigma社製)と0.5g K2CO3(ナカライテスク社製)を25ml注射用蒸留水に溶解した(卵白アルブミン溶液)。25mlの0.1M K2CO3に0.5g TNBS(ナカライテスク社製)を溶解した(TNBS溶液)。卵白アルブミン溶液とTNBS溶液を混合し、室温で一晩攪拌した。攪拌した溶液を透析膜(Spectra/Por Membrane MWCO:10,000、Spectrum Medical Industries Inc.社製)で0.01M NaHCO3(ナカライテスク社製)に透析した。透析した溶液をBCA Protein Assay Reagent(Pierce社製)でタンパク定量した。2mg/ml溶液を感作液として冷凍保存し使用時に溶解して用いた。
(2)TNBS誘発炎症性腸疾患モデル
4−6週齢のSJL/Jマウス(日本チャールズリバー社製)背部に完全フロイントアジュバント(CFA:Difco社製)と2mg/ml感作液を乳化液として、0.1ml/headで皮下注射(感作)した。感作7日後に10mg/ml TNBS 50%エタノール(ナカライテスク社製)溶液をエーテル麻酔下で直腸内投与(0.2ml/headを肛門より3cmまでゾンデを挿入して注入:チャレンジ)し大腸炎症状は便の状態(正常便(スコアー:0)、軟便(スコアー:1)、下痢(スコアー:2))でスコアー判定し、大腸炎を発症しているマウスをチャレンジ6日後に安楽死させ、脾臓と腸間膜リンパ節を摘出した。
(3)細胞培養
腸間膜リンパ節細胞と溶血剤処理した脾臓細胞を培養フラスコ(75Tフラスコ;岩城硝子社製)に10%胎児牛血清(BIOWHITTAKER社製)、1%Antibiotic-antimycotic含有D-MEM(Invitrogen社製)中で108個播種し、以下の3種類の条件下で48時間細胞培養した。細胞培養は5%CO2、37℃でCO2インキュベーター内で行い、培養後の細胞を回収し、TRIzol(LIFE TECHNOLOGIE社製)で溶解し−80℃で保存した。なお、化合物Aとは、IBD動物モデルに投与して大腸炎を治癒する活性とIBD惹起能を抑制する活性を有する化合物で特開2002−161084に記載の化合物、3-chloro-2-[1-(4-morpholin-4-ylphenyl)cyclobutyl]-4,5,6,7-tetrahydropyrazolo[1,5-a]pyrimidineである。
A:添加剤なし
B:0.2μg/ml Staphyloccocal enterotoxin B(Sigma社製)添加
C:0.2μg/ml Staphyloccocal enterotoxin B(Sigma社製)と化合物A10μM添加
条件AとCの細胞は、正常マウスに移入しても、正常マウスが腸炎症状を引き起こさない炎症性腸疾患(IBD)非惹起細胞であるが、条件Bの細胞は、正常マウスに移入する事で腸炎症状を引き起こす炎症性腸疾患(IBD)惹起細胞である。
つまり、A、Cの細胞に対するBの細胞の遺伝子変化を検出することで大腸炎の病態を惹起する原因因子を見出すことが出来る。
炎症性腸疾患(IBD)惹起細胞およびIBD非惹起細胞のDNAチップ利用による遺伝子発現解析
(1) トータルRNAからcDNAの調製
実施例1で得られたTRIZOl抽出液から添付プロトコールに従いトータルRNAを調製した。このトータルRNAをRNeasy Mini Kit(キアゲン社製)で精製した後に、以下のcDNA合成を行った。500 ngのトータルRNAからSuperScript Choice System(インビトロジェン社製)を利用してcDNAを合成した。ただし、プライマーには100 pmolのT7-(24)dTプライマー(アマシャムファルマシアバイオテック社製)を用いた。合成したcDNAをDNA精製カラム(キアゲン社製)で精製し、エタノール沈殿で濃縮した後、当該cDNAを鋳型にin vitro転写(MEGAscript T7 Kit:アンビオン社製)によりcRNAを合成した。cRNAをRNeasy Mini Kit(キアゲン社製)で精製し、このcRNAをもとに再度SuperScript Choice System(インビトロジェン社製)を利用してcDNAを合成した。この2回目のcDNA合成では、ファーストストランド(センス)合成時のプライマーにランダムヘキサマーを、セカンドストランド(アンチセンス)合成時にT7-(24)dTプライマーを用いた(注:cRNA=アンチセンス)。合成したcDNAをDNA精製カラムで精製後、濃度を測定した。以上の操作により実施例1で調製した各トータル RNAから、各cDNAを取得した。
(2) cDNAからラベル化cRNAの調製
各cDNA 200 ng相当量に、DEPC処理水を加え22μLとし、BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社製)に含まれる10×HY Reaction Buffer 4μL、該キットに含まれる10×Biotin Labeled Ribonucleotides 4μL、該キットに含まれる10×DTT 4μL、該キットに含まれる10×RNase Inhibitor Mix 4μL、該キットに含まれる20×T7 RNA Polymerase 2μLを混合し、37℃で5時間反応させて、ラベル化cRNAを調製した。反応後、該反応液にDEPC処理水60μLを加えたのち、RNeasy Mini Kit(GIAGEN社製)を用いて添付プロトコールに従い、調製したラベル化cRNAを精製した。
(3) ラベル化cRNAのフラグメント化
各ラベル化cRNA 20μgを含む溶液に、5×Fragmentation Buffer(200mMトリス−酢酸 pH8.1(Sigma社製)、 500mM酢酸カリウム(Sigma社製)、150mM酢酸マグネシウム(Sigma社製))8μLを加えた反応液40μLを、94℃で35分間加熱した後、氷中に置いた。これによって、ラベル化cRNAをフラグメント化した。
(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ
各フラグメント化cRNA 40μLに、5nM Control Oligo B2(Amersham社製)4μL、100×Control cRNA Cocktail 4μL、Herring sperm DNA(Promega社製)40μg、Acetylated BSA(Gibco-BRL社製)200μg、2×MES Hybridization Buffer(200mM MES、2M [Na+], 40mM EDTA、0.02% Tween20 (Pierce社製)、pH6.5〜6.7) 200μL、及びDEPC処理水144μLを混合し、400μLのハイブリカクテルを得た。得られた各ハイブリカクテルを99℃で5分間加熱し、更に45℃で5分間加熱した。加熱後、室温で14,000rpm、5分間遠心分離し、ハイブリカクテル上清を得た。
一方、1×MESハイブリダイゼーションバッファーで満たしたHuman genome U95プローブアレイ(Affymetrix社製)を、ハイブリオーブン内で、45℃、60rpmで10分間回転させた後、1×MESハイブリダイゼーションバッファーを除去してプローブアレイを調製した。上記で得られたハイブリカクテル上清200μLを該プローブアレイにそれぞれ添加し、ハイブリオーブン内で45℃、60rpmで16時間回転させ、フラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを得た。
(5) プローブアレイの染色
上記で得られたハイブリダイズ済みプローブアレイそれぞれからハイブリカクテルを回収除去した後、Non-Stringent Wash Buffer(6×SSPE(20×SSPE(ナカライテスク社製)を希釈)、0.01%Tween20、0.005%Antifoam0-30(Sigma社製))で満たした。次にNon-Stringent Wash BufferおよびStringent Wash Buffer(100mM MES、0.1M NaCl、0.01%Tween20)をセットしたGeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置にフラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを装着した。その後染色プロトコールEuKGE-WS2に従って、1次染色液(10μg/mL Streptavidin Phycoerythrin (SAPE)(MolecμLar Probe社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl(Ambion社製)、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0-30)、 2次染色液(100μg/mL Goat IgG (Sigma社製)、3μg/mL Biotinylated Anti-Streptavidin antibody (Vector Laboratories社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0-30)により染色した。
(6) プローブアレイのスキャン、及び (7) 遺伝子発現量解析
染色した各プローブアレイをHP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)に供し、染色パターンを読み取った。染色パターンをもとにGeneChip Workstation System(Affymetrix社製)によってプローブアレイ上の遺伝子の発現を解析した。次に、解析プロトコールに従ってNormalizationを行ったのち、各サンプルにおける各プローブ(各遺伝子)の発現量(average difference)を算出した。同一のプローブにつき、サンプルの種類ごとに遺伝子発現量の平均値を求め、さらに各サンプル種類間における発現量の変化率を求めた。
発現変動解析
実施例2で行ったDNAチップ解析による遺伝子発現の解析結果から、Staphyloccocal enterotoxin B(以下「SEB」ともいう)を添加しない炎症性腸疾患(IBD)非惹起細胞に比べて、SEBを添加した炎症性腸疾患(IBD)惹起細胞において発現が増加あるいは減少しているプローブセットを最初に選び出した。
その中から、SEBで刺激したIBD惹起細胞と比して、SEBと化合物Aを添加したIBD非惹起細胞で発現が減少あるいは増加している486プローブを選択した。
次にこれら486プローブの中から、より病態との関連性の高いプローブを選択する目的で、免疫・炎症関連遺伝子、細胞表面分子、成長因子遺伝子である56プローブを選び出した。さらにこれら56プローブの中からIBDの病態に関与し、解析した細胞の中に含まれる細胞集団の変動に限局することで薬剤ターゲットとなる機能を有する遺伝子を選別した。
その結果、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CD81遺伝子、CDw40遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の、計10遺伝子が選択された(表1)。
無刺激で培養したIBD非惹起細胞は、SEB刺激をすることにより病態惹起能が亢進してIBD惹起細胞となるが、このIBD惹起細胞に化合物Aを添加すると病態惹起能が抑制されてIBD非惹起細胞となる。そのため、SEB刺激で遺伝子発現量が増加し、当該化合物を添加することにより遺伝子発現量が減少したIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、CD81遺伝子およびCDw40遺伝子は(表1)、炎症性腸疾患を反映した疾患マーカーとして応用可能な遺伝子であると考えられ、これらの遺伝子の発現あるいはこれらの遺伝子によりコードされるタンパクの発現や機能(活性)を減少させることで炎症性腸疾患の発症や病態の進行を抑制あるいは改善することができると考えられた。また、SEB刺激で遺伝子発現量が減少し、当該化合物を添加することにより遺伝子発現量が増加したLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子についても(表1)、炎症性腸疾患を反映した疾患マーカーとして応用可能な遺伝子であると考えられ、これらの遺伝子の発現あるいはこれらの遺伝子によりコードされるタンパクの発現や機能(活性)を増加させることで炎症性腸疾患の発症や病態の進行を抑制あるいは改善することができると考えられた。表中において、「Cont」は添加剤なしの細胞、「SEB」はSEB添加した細胞、「SEB+化合物」はSEBと化合物Aを添加した細胞のGene chip解析結果を表わしている。
Figure 2005095166
IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、Integrinβ1遺伝子、CDw40遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子発現制御剤のスクリーニング
Jurkat細胞(ヒトT細胞リンパ腫由来)、NC-37細胞(ヒト末梢リンパ芽球由来、ATCC株番号CCL-214)、CCRF-SB細胞(ヒト急性リンパ芽球性白血病B細胞由来、ATCC株番号CCL-120)、CCRF-CEM細胞(ヒト急性リンパ芽球性白血病T細胞由来、ATCC株番号CCL-119)、MOLT-3細胞(ヒト急性リンパ芽球性白血病T細胞由来、ATCC株番号CRL-1552)、CCRF-HSB-2細胞(ヒト急性リンパ芽球性白血病T細胞由来、ATCC株番号CCL-120.1)、IM-9細胞(ヒト末梢リンパ芽球由来、ATCC株番号CCL-159)、EB-3細胞(ヒトバーキットリンパ腫由来、ATCC株番号CCL-85)、CA46細胞(ヒトバーキットリンパ腫由来、ATCC株番号CRL-1648)、Daudi細胞(ヒトバーキットリンパ腫由来、ATCC株番号CCL-213)、Namalwa細胞(ヒトバーキットリンパ腫由来、ATCC株番号CRL-1432)、Raji細胞(ヒトバーキットリンパ腫由来、ATCC株番号CCL-86)、Ramos(RA1)細胞(ヒトバーキットリンパ腫由来、ATCC株番号CCL-1596)、RPMI 1788細胞(ヒト末梢リンパ球由来、ATCC株番号CCL-156)、RPMI 6666細胞(ヒトホジキン病リンパ芽球由来、ATCC株番号CCL-113)、U-937細胞(ヒト組織球性リンパ腫由来、ATCC株番号CRL-1593)、B-ATL1細胞(ヒト成人T細胞白血病患者B細胞由来)、B-ATL2細胞(ヒト成人T細胞白血病患者B細胞由来)、B-ATL7細胞(ヒト成人T細胞白血病患者B細胞由来)、B-ATL8細胞(ヒト成人T細胞白血病患者B細胞由来)、OKM-2T細胞(ヒト成人T細胞白血病患者T細胞由来)またはOKM-3T細胞(ヒト成人T細胞白血病患者T細胞由来)(いずれも大日本製薬株式会社から購入することができる)、あるいはヒト末梢血リンパ球を、10% 不活性化牛胎児血清、2mMグルタミン、50IU/mlペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン含有Dulbecco's Modified Eagle培地を用い、37℃、CO2濃度5%の条件下で培養する。
計数した細胞を24穴組織培養プレートに0.6-1.2x105 cells/cm2で播種し、37℃、CO2濃度5%で培養する。これらの細胞に対して刺激剤(ホルボール12−ミリステート13アセテート、コンカナバリン、リポポリサッカライド、サイトカイン(インターフェロン類、Tumor necrosis factor、インターロイキン類)、抗T細胞表面抗原抗体、抗B細胞表面絵抗原抗体、あるいはButyrate)の存在下で被験物質含有溶液(100 μM、10 μM、および 1 μMの各濃度の被験物質を含む溶液)を添加する。ここで対照実験として、被験物質無添加の細胞についても同様の培養を行う(コントロール)。
これらの各培養細胞より抽出したRNAを用いて実施例2に記載された方法で遺伝子発現量を解析する。その結果、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現を、被験物質(候補物質)を接触させない対照細胞における発現量と比較して10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の低下(抑制、減少)させる被験物質を、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。あるいは、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現を、被験物質(候補物質)を接触させない対照細胞における発現量と比較して10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の上昇(促進、増加)をさせる被験物質を、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。
IL-17の機能(活性)抑制剤のスクリーニング
特開2000−186046を参考に、IL-17 の破骨細胞形成抑制活性を阻害する物質を以下の方法により調べる。即ち、骨芽細胞と骨髄細胞との共培養系において、破骨細胞形成誘導因子としてIL-17 (1ng/ml 、遺伝子組み換え品、PeproTech EC社製)、活性ビタミンD3(1 α,25(OH)2D3、10-8M 、和光純薬社製)、PTH (200ng/ml、旭化成社製)、あるいはIL-1β(10 ng/ml、Genzyme 社製)を添加し、IL-17 添加培養系には、IL-17(遺伝子組換え品 Pepro Tech EC社製) によって免疫したヤギ血清より得たIL-17 に対するポリクローナル中和抗体を2.5 μg/ml、また活性ビタミンD3、PTH 、あるいはPGE2の添加培養系には5μg/mlのIL-17 に対するポリクローナル中和抗体を添加する。破骨細胞形成は、6日間培養後に各well中の接着細胞を固定後、TRAP染色しTRAP陽性破骨細胞数を計測することにより評価する。
TRAP染色に際しては、接着細胞を10%ホルムアルデヒドで3分間固定し、各wellの表面を風乾させ、次いで基質として0.01% AS-MSリン酸塩(Sigma社) 及び50mMの酒石酸ナトリウム存在中での反応生成物に対する色素として0.03% red violet LB塩を含む酢酸バッファー中、室温で10分間インキュベートする。TRAP細胞は黒っぽい赤色として出現する。3つ以上の核を含むTRAP陽性多核細胞を破骨細胞として計数する。又、これらの細胞が破骨細胞であることを確認するために、カルシトニン受容体の発現を125I標識したサケカルシトニン (Amersham社製) を用いて、Udagawa らの方法(Udagawa et al.:Proc.Natl.Acad. Sci. USA.87, 7260-7264(1990)) によるオートラジオグラフィーで確認したところ、破骨細胞であることが確認される。このスクリーニング系で陽性を示す物質は、IL-17 活性を阻害する物質が検出される。
被験物質の破骨細胞分化誘導活性の制御率は、以下の式:
|(被験物質非存在下での破骨細胞分化誘導活性)−(被験物質存在下での破骨細胞分化誘導活性)|/(被験物質非存在下での破骨細胞分化誘導活性)
で表される。
破骨細胞分化誘導活性の阻害率が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50% 以上変動した系に添加していた被験物質を、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。
IL-9の機能(活性)抑制剤のスクリーニング
特開2001−253835に記載の方法を参考にしてIL−9の機能を制御する物質を以下の方法により調べる。即ち、末梢ヒト血液リンパ球(PBLs)が健康なドナーのヘパリン添加された血液から分離される。単核細胞がFicoll/Hypaque勾配法を使って分離され、J.Immunol.誌139号:1563頁(1987年)のRichard, et al.の記事にしたがって、PBLsを血清RPMI培地中で5mMのLーロイシンーメチル−エステル(LME)とともに室温にて45分間温置(incubate:インキュベート)することによって、単球が除去される。かくして処理された集団(population)は2度洗浄され、以下”LME処理したPBLs”またはLME処理E-細胞と名付けられる。半精製されたBリンパ球(以下”E- 細胞”)は、37℃にて1時間プラスチック粘着の後、ノイラミニダーゼ処理したヒツジ赤血球と一旦ロゼッティングすることによって得られる。LME処理したPBLsが使われた場合はプラスチック粘着は不要である。
IgE生産を起こさせるために、45%のCD20+ ,35%のCD3+ ,および10%のCD14+ 細胞を含んだE- 細胞、または、55%のCD20+ ,40%のCD3+および1%以下のCD14+ 細胞を含んだLEM処理E-細胞が、2×106 細胞/mlの濃度にて、完全培地(10%の熱失括処理したFCS、2mMのグルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンおよび20mMのHEPESを追加されたRPMI1640培地)中で、5%CO2 加湿された炭酸ガス培養装置内で37℃にて、様々な用量のインターロイキン4(30または300U/ml)および/または組み換えヒト或いは組み換えマウスIL−9(ヒト種には1/100−1/10,000v/v、マウス形態の1から1000U/ml)を使いながら温置する。9−10日の培養の後、細胞を含まない上澄みが採取され、遠心分離(500g,10分間)され−20℃で保管する。
細胞上澄み液中のIgE量は、例えばELISAで測定することができる。すなわち、平底マイクロタイタープレートに、重炭酸塩緩衝液(pH9.6)中で1:2000に希釈して4℃で一晩温置したウサギ抗IgEをコートする。この後、プレートは燐酸緩衝された塩類液/0.05%Tweenで4回洗浄し、RPMI1640/10%FCSとともに室温にて1時間温置されることによって、タンパク質結合サイトを飽和させる。洗浄後プレートに細胞培養物上澄み液とIgEスタンダードのPBS−Tween 0.05%中の希釈物が添加された。2時間の温置後、プレートは洗浄され、200μlの希釈アルカリ性フォスファターゼ−抗IgE複合体(1:250)を添加する。室温にて2時間温置した後にプレートはジエタノールアミン緩衝液中のp−ニトロフェニールフォスフェート200μlを添加する。プレートは37℃にて温置され、オートリーダーで405nmにて光学密度を測定する。
被験物質のIgE産生活性の阻害率は、以下の式:
|(被験物質非存在下でのIgE産生量)−(被験物質存在下でのIgE産生量)|/(被験物質非存在下でのIgE産生量)
で表される。
IgE産生活性の阻害率が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50% 以上変動した系に添加していた被験物質を、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。
Lymphotoxin(LT)αの機能(活性)賦活剤のスクリーニング
WEHI-164(線維腫細胞由来、ATTC株番号CRL-1751、大日本製薬株式会社)を96穴培養プレートに3x103cells/0.1ml/wellで播種し、ヒトLTα(精製品はIntergen Company、リコンビナント品はGenzyme-Techneで購入可能)を約1pg/ml添加して、37℃、5%CO2条件下で48時間培養する。約1pg/ml LTαは50%の細胞傷害活性を示す量を想定できる。培養44時間目に0.025ml/wellの5mg/ml MTT(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5,diphenyl tetrazolium bromide)を添加し4時間後にIsopropanolに溶解した0.04M HClを0.15ml/wellで細胞を融解する。24時間後に650nmを対照として570nmの吸光度をVmax plate reader (MolecularDevices, Menlo Park, CA)で測定しMTT取り込み量を測定する。
被験物質の細胞傷害活性の阻害率は、以下の式:
[(被験物質存在下、LTα存在下での吸光度)−(被験物質非存在下、LTα存在下での吸光度)]/[(被験物質非存在下、LTα非存在下での吸光度)−(被験物質非存在下、LTα存在下での吸光度)]x100%で表される。
細胞傷害活性の阻害率が-10%、好ましくは-30%、特に好ましくは-50% 以上減少した系に添加していた被験物質を、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。
IL-10 receptor βの機能(活性)賦活剤のスクリーニング
健常人の末梢血単核球をFicoll/Hypaque(Sigma)の密度勾配遠心で調製し、フィトヘマグルチニン(PHA)あるいは抗CD3抗体で72〜96時間刺激培養する。培養細胞にIL-10を1〜1000U/ml添加した。培養終了後に上清を分取し、培養上清中のIFN-γをELISAで測定する。
被験物質のIL-10Rβの賦活率は、以下の式:
[(被験物質存在下、IL-10添加でのIFN-γ産生量)−(被験物質非存在下、IL-10添加でのIFN-γ産生量)]/[(被験物質非存在下、IL-10非添加でのIFN-γ産生量)−(被験物質非存在下、IL-10添加でのIFN-γ産生量)]x100%
で表される。
IL-10Rβの賦活率が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50% 以上増加させた系に添加していた被験物質を、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。
DAP12の機能(活性)賦活剤のスクリーニング
ヒト血液に10%容量で0.9%NaCl中に溶解した3%Dextran T-500(ファルマシア)を添加し、上清をLymphocyte Separation Medium(ICN Biomedicals/Cappel, Aurora, OH)で密度勾配遠心し末梢血単核球と好中球を分離する。末梢血単核球からCD14 MicroBeads(Miltenyi, Bergish Gladbach, Germany)で単球を分離する。96穴培養プレートに5μg/ml F(ab')2ヒツジ抗マウスIgGを吸着させた後に、マウス抗TREM抗体を吸着させる。1μg/mlリポポリサッカライド存在下あるいは非存在下で単球あるいは好中球を5x104cells/wellで播種し、24時間培養後の上清を分取する。上清からIL-8、MCP-1、TNF-αのいずれかをELISA(Pharmingen)で測定する。
被験物質のサイトカイン産生促進活性は、以下の式:
{[(被験物質存在下でのサイトカイン産生量)−(被験物質非存在下でのサイトカイン産生量)]/(被験物質非存在下でのサイトカイン産生量)}x100%で表される。
サイトカイン産生促進活性が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50% 以上増加した系に添加していた被験物質を、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。
TCR Vγ4の機能(活性)抑制剤のスクリーニング
既報(Nature 340:309-312,1989)を参考にスクリーニングを行う。BCG(Bacillus Calmette-Guerin)を接種した健常人の末梢血単核球をFicoll/Hypaque(Sigma)の密度勾配遠心で調製し、抗CD4抗体と抗CD8抗体で反応させた後に抗マウス免疫グロブリン結合ラテックスビーズでTCRVγ4陽性T細胞を精製する。96穴培養平底プレートにプレート結合性の末梢血単核球と10mg/ml PPD(ツベルクリン抗原)とTCRVγ4T細胞を添加し数週間培養する。経代培養後の細胞を最終刺激1週間後に96穴培養プレートに播種し、被験物質、10mg/ml PPD、培養プレート結合性の末梢血単核球を添加し72〜96時間培養する。培養終了12時間前に1μCiの[3H]チミジンを添加し、チミジンの取り込みを測定する。
被験物質の細胞分裂阻害率は、以下の式:
[(被験物質非存在下での3H-チミジン取り込み量)−(被験物質存在下での3H-チミジン取り込み量)]/(被験物質非存在下での3H-チミジン取り込み量)
x100%で表される。
細胞分裂阻害率が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50% 以上の系に添加していた被験物質を、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。
Integrinβ1の機能(活性)賦活剤のスクリーニング
ラミニンをコートするため、96ウェルプレートIMMULON2(ダイナテック社製)に、10μg/mlのラミニン(GIBCO社製)を50μl/ウェルで分注し、37℃で2時間インキュベートする。次いで200μl/ウェルの1%BSA/PBSで37℃、2時間のインキュベートによりブロッキングを行い、PBSで3回洗浄する。マウスニューロブラスト−マ細胞(C1300)を無血清培地AIM−V(GIBCO社製)で懸濁して1×107細胞/mlとし、10μmol/LのBCECF−AM[2',7'−ビス(2−カルボキシエチル)カルボキシフルオレセイン テトラアセトキシメチルエステル](和光純薬製)とともに37℃で30分間インキュベートすることにより細胞内を蛍光ラベルした後、PBSで3回洗浄する。蛍光ラベルしたC1300に適当な濃度の被験物質溶液100μlを加え、37℃で30分間プレインキュベートする。ラミニンをコートしたプレートにプレインキュベートした細胞を1×105細胞/50μl(AIM−V)/ウェルで蒔き、37℃で30分間インキュベートし、ラミニンにC1300を接着させる。接着しなかった細胞を取り除き、1%NP40/PBSを100μl/ウェルで加え、接着した細胞を溶解し、フルオロスキャンII(ラボシステムズ社製)で蛍光強度を測定する。
被験物質の細胞接着活性の賦活率は、以下の式:
{[(被験物質存在下での蛍光強度)−(被験物質非存在下での蛍光強度)]/(被験物質非存在下での蛍光強度)}x100%で表される。
細胞接着活性の賦活率が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50% 以上変動した系に添加していた被験物質を、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。
CDw40の機能(活性)抑制剤のスクリーニング
CDw40の機能(活性)制御剤は、B細胞の増殖増強作用を測定することによって、スクリーニングできる(STAFFAN P and et al. J Immunol 142:590-595, 1989)。扁桃腺から調製したB細胞を5x105個の休止細胞を10%胎児牛血清含有RPMI倍地中に調製し0.2ml/wellで96穴培養プレートに播種する。細胞を適当な濃度の被験物質および抗CDw40抗体(0.08-50μg/ml)存在下で、12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetateあるいは、プレートに固相化した抗イムノグロブリンμ鎖で72時間刺激する。その後、[3H]チミジンを1μCi/well添加し12〜18時間後のチミジンの取り込みを測定する。
被験物質の細胞分裂促進活性の阻害率は、以下の式:
{[(被験物質非存在下での3H-チミジン取り込み量)−(被験物質存在下での3H-チミジン取り込み量)]/(被験物質非存在下での3H-チミジン取り込み量)}x100%で表される。
細胞分裂促進活性の阻害率が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50% 以上変動した系に添加していた被験物質を、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。
Paired-Ig-like receptor A(PIRA)1の機能(活性)賦活剤のスクリーニング
PIRAのスクリーニングは公知文献(Yamashita Y and et al. J Immunol 161:4042-4047(1998))を参考に実施することが出来る。PIRAのcDNAクローンはB10.AマウスcDNAライブラリーからスクリーニングして得た。PIRA cDNAは、pUC19あるいはpBluescript(Stratagene)にサブクローニングし、Cy5 AutoRead sequencing kitとALFexpress DNA sequencer (ファルマシア)でシークエンシングした。FcgRIIB-PIR-Aキメラ作成のためにPIRA cDNAをペアプライマー(配列番号19; GenBank accession no.AF055896と配列番号20)で合成し、FcgRIIBの制限酵素切断部分ApaIにライゲーションして作製する。ラット好塩基球Leukemia cell lineであるRBL-2H3を日本癌研究Resources bankから入手しL-glutamine、20μM 2−メルカプトエタノール、ストレプトマイシン、ペニシリン、8%胎児牛血清含有ダルベッコ修飾イーグル培地で培養する。RBL-2H3細胞にエレクトロポレーション法(250V/975 mF)で20mg FcgRIIB-PIR-AキメラとpSV2-neo (1mg)を導入し、100 mg/ml of G418 (Life Technologies)を用いた限界希釈法でクローン化する。
5x106 RBL-2H3細胞を2 mM fura-2/acetoxymethyl esterとビオチン化抗TNP IgE 抗体で30分間37℃でインキュベーションし、ビオチン化抗マウスFcgRII/IIIモノクローナル抗体(ファルマシア)あるいは抗ラットMHC class Iで10分間、室温でインキュベーションする。洗浄した細胞(1.5x106)を1 mM CaCl2、1 mM
MgCl2含有2ml PBSあるいは1 mM EGTA含有HEPES-buffered salineで懸濁し、10 mgストレプトアビジンで刺激する。Ca2+の動員は510nm放射波長と340nmと360nmの励起波長をflu-orescence spectrophotometer (model F-4500, Hitachi, Tokyo, Japan).でモニターして測定する。
被験物質の細胞内カルシウム流入量の増加率は、以下の式:
{[(被験物質存在下での細胞内カルシウム流入量)−(被験物質非存在下での細胞内カルシウム流入量)]/(被験物質非存在下での細胞内カルシウム流入量)}x100%で表される。
細胞内カルシウム流入量の増加率が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50% 以上変動した系に添加していた被験物質を、炎症性腸疾患(IBD)を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。
本発明によって、炎症性腸疾患(IBD)惹起性細胞において、IBD非惹起性細胞と比較して特異的に発現増大している遺伝子(IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子、CDw40遺伝子)と発現減少している遺伝子(Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子、Paired-Ig-like receptor A1遺伝子)が明らかになった。かかる遺伝子は炎症性腸疾患の遺伝子診断に用いられるマーカー遺伝子(プローブ、プライマー)として有用であり、かかるマーカー遺伝子によれば炎症性腸疾患であるかどうかを明らかにすることができ(診断精度が向上)、これによりより適切な治療を施すことが可能となる。
また、上記遺伝子の発現と炎症性腸疾患(IBD)との関連性から、これら遺伝子の発現の制御(抑制/亢進)、または当該遺伝子がコードするタンパク質の発現や機能(活性)の制御(抑制/亢進)を指標とすることによって、炎症性腸疾患の治療薬となり得る候補薬をスクリーニングし選別することが可能である。

Claims (25)

  1. IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子またはCDw40遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; 以下IBD)の疾患マーカー。
  2. Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子またはPaired-Ig-like receptor A1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、IBDの疾患マーカー。
  3. IBDの検出においてプローブまたはプライマーとして使用される請求項1記載の疾患マーカー。
  4. IBDの検出においてプローブまたはプライマーとして使用される請求項2記載の疾患マーカー。
  5. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、IBDの検出方法:
    (a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと請求項1〜4いずれかに記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
    (b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
    (c)上記(b)の測定結果に基づいて、IBDの罹患を判断する工程。
  6. 工程(a)で用いる疾患マーカーが請求項1または3に記載の疾患マーカーであり、工程(c)におけるIBDの罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として行われる、請求項5に記載のIBDの検出方法。
  7. 工程(a)で用いる疾患マーカーが請求項2または4に記載の疾患マーカーであり、工程(c)におけるIBDの罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が減少していることを指標として行われる、請求項5に記載のIBDの検出方法。
  8. IL-17、IL-9、TCR Vγ4またはCDw40を認識する抗体を含有する、IBDの疾患マーカー。
  9. Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1またはPaired-Ig-like receptor A1を認識する抗体を含有する、IBDの疾患マーカー。
  10. IBDの検出においてプローブとして使用される請求項8記載の疾患マーカー。
  11. IBDの検出においてプローブとして使用される請求項9記載の疾患マーカー。
  12. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むIBDの検出方法:
    (a)被験者の生体試料から調製されたタンパク質と請求項8〜11いずれかに記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
    (b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
    (c)上記(b)の測定結果に基づいて、IBDの罹患を判断する工程。
  13. 工程(a)で用いる疾患マーカーが請求項8または10に記載の疾患マーカーであり、工程(c)におけるIBDの罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として行われる請求項12記載のIBDの検出方法。
  14. 工程(a)で用いる疾患マーカーが請求項9または11に記載の疾患マーカーであり、工程(c)におけるIBDの罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が減少していることを指標として行われる請求項12記載のIBDの検出方法。
  15. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現を減少させる物質のスクリーニング方法:
    (a)被験物質とIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
    (b)被験物質を接触させた細胞におけるIL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
    (c)上記(b)の比較結果に基づいて、IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
  16. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現を増加させる物質のスクリーニング方法:
    (a)被験物質とLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
    (b)被験物質を接触させた細胞におけるLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
    (c)上記(b)の比較結果に基づいて、Lymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
  17. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量を減少させる物質のスクリーニング方法:
    (a)被験物質とIL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
    (b)被験物質を接触させた細胞におけるIL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応するタンパク質の発現量と比較する工程、
    (c)上記(b)の比較結果に基づいて、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
  18. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの発現量を増加させる物質のスクリーニング方法:
    (a)被験物質とLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
    (b)被験物質を接触させた細胞におけるLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応するタンパク質の発現量と比較する工程、
    (c)上記(b)の比較結果に基づいて、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
  19. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの機能または活性を抑制する物質のスクリーニング方法:
    (a)被験物質をIL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかに接触させる工程、
    (b)上記(a)の工程に起因して生じるIL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの機能または活性を測定し、該機能または活性を被験物質を接触させない場合の前記に対応するタンパク質の機能または活性と比較する工程、
    (c)上記(b)の比較結果に基づいて、IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの機能または活性を抑制する被験物質を選択する工程。
  20. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの機能または活性を亢進する物質のスクリーニング方法:
    (a)被験物質をLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかに接触させる工程、
    (b)上記(a)の工程に起因して生じるLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの機能または活性を測定し、該機能または活性を被験物質を接触させない場合の前記に対応するタンパク質の機能または活性と比較する工程、
    (c)上記(b)の比較結果に基づいて、Lymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor A1のいずれかの機能または活性を亢進する被験物質を選択する工程。
  21. IBDの改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、請求項15乃至20のいずれかに記載のスクリーニング方法。
  22. IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現を減少させる物質、またはLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現を増加させる物質を有効成分とする、IBDの改善または治療剤。
  23. IL-17遺伝子、IL-9遺伝子、TCR Vγ4遺伝子およびCDw40遺伝子のいずれかの発現を減少させる物質、またはLymphotoxinα遺伝子、IL-10 receptor β遺伝子、DAP12遺伝子、Integrinβ1遺伝子およびPaired-Ig-like receptor A1遺伝子のいずれかの発現を増加させる物質が請求項15または請求項16記載のスクリーニング法により得られるものである、請求項22記載のIBDの改善または治療剤。
  24. IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量、機能または活性を抑制する物質、またはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor のいずれかの発現量、機能または活性を亢進する物質を有効成分とする、IBDの改善または治療剤。
  25. IL-17、IL-9、TCR Vγ4およびCDw40のいずれかの発現量、機能または活性を抑制する物質、またはLymphotoxinα、IL-10 receptor β、DAP12、Integrinβ1およびPaired-Ig-like receptor のいずれかの発現量、機能または活性を亢進する物質が、請求項17〜20のいずれかに記載のスクリーニング法により得られるものである、請求項24記載のIBDの改善または治療剤。

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