JP2005095079A - C末端欠損タンパク質の合成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 可溶化タンパク質の作製を簡便にするための手段を提供すること。
【解決手段】 RNA転写を停止させる物質を含む基質を用いて、RNAポリメラーゼによる鋳型DNAからのRNA転写反応を行い、得られる3’末端欠失RNAを翻訳することによりC末端欠損タンパク質を得ることを特徴とする、C末端欠損タンパク質の合成方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 RNA転写を停止させる物質を含む基質を用いて、RNAポリメラーゼによる鋳型DNAからのRNA転写反応を行い、得られる3’末端欠失RNAを翻訳することによりC末端欠損タンパク質を得ることを特徴とする、C末端欠損タンパク質の合成方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、C末端欠損タンパク質の合成方法、及び可溶化タンパク質の作製方法に関する。具体的には、本発明は、C末端アミノ酸配列をランダムに欠損させたタンパク質の集合体を合成する方法に関する。
タンパク質を遺伝子工学的に製造する方法としては、遺伝子DNAから細胞を用いてタンパク質を製造する方法(非特許文献1)や、遺伝子DNAから無細胞的にタンパク質を製造する方法(非特許文献2及び3)が知られている。
また、遺伝子DNAから3’側をランダムに欠損したDNAの集合体を合成する方法(非特許文献4)が公知であり、この方法はDNAの塩基配列決定に用いられている。
また、遺伝子DNAから3’側をランダムに欠損したDNAの集合体を合成する方法(非特許文献4)が公知であり、この方法はDNAの塩基配列決定に用いられている。
一般的な生化学・分子生物学等の研究分野においては、可溶化タンパク質及び可溶化しうるタンパク質のドメインペプチドを得ることは、そのタンパク質・ペプチドの機能を解析・利用する上で極めて重要である。しかし、タンパク質の合成においてはしばしば目的とするタンパク質が不溶性になることが知られている。例えば、大腸菌などの細胞を用いた系においては、外来タンパク質は封入体に封じ込められることが多い(例えば非特許文献5に概説されている)。
タンパク質の可溶化ドメインをバイオインフォマティクスに基づいて予測する方法(非特許文献6及び7)も公知である。これにより、予測した可溶化ドメインを発現するように実験を設計することによって、予測を行うことなく可溶性タンパク質を作製しようとする場合よりも効率的に可溶性タンパク質を作製することが可能である。しかしながら、予測した可溶化ドメインが実際に可溶化するかどうかは実験してみないとわからないという問題点がある。
細胞を用いないタンパク質発現系(無細胞系)においても、タンパク質のアミノ酸配列、アミノ酸組成によってはほぼ完全に沈澱することがしばしばある。このような場合、塩酸グアニジンや尿素などを加えることによってタンパク質を変性させ、構造を回復させることで活性のある可溶化タンパク質を得る方法(非特許文献8〜10)が知られているが、これらの方法はタンパク質ごとに条件を検討するなど相当の労力を要し、また一般的には収量も低い。
そのため、特に可溶化しにくいタンパク質については、可溶化しうるドメイン領域を発見することは重要な意義があり、またタンパク質を可溶化させるための手法も望まれている。
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そこで、本発明は、上述した実状に鑑み、可溶化タンパク質の作製を簡便にするための手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、C末端側のアミノ酸配列をランダムに欠損した変異タンパク質を集合体として合成し、その集合体の中から目的とする可溶性タンパク質を選択することによって、効率的かつ簡便に可溶化ドメインを決定し、可溶性タンパク質を作製することができると考え、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、RNA転写を停止させる物質を含む基質を用いて、RNAポリメラーゼによる鋳型DNAからのRNA転写反応を行い、得られる3’末端欠失RNAを翻訳することによりC末端欠損タンパク質を得ることを特徴とする、C末端欠損タンパク質の合成方法である。
上記方法において、RNA転写を停止させる物質は、例えば3’−dATP、3’−dGTP、3’−dCTP、3’−dUTPからなる群より選択される少なくとも1つの3’−dNTPである。また、基質中の3’−dNTPとNTPの混合比率は、1〜10:100、好ましくは1〜3:100とすることができる。
上記方法において、RNA転写を停止させる物質は、例えば3’−dATP、3’−dGTP、3’−dCTP、3’−dUTPからなる群より選択される少なくとも1つの3’−dNTPである。また、基質中の3’−dNTPとNTPの混合比率は、1〜10:100、好ましくは1〜3:100とすることができる。
また本発明は、DNA増幅を停止させる物質を含む基質を用いて、DNAポリメラーゼによる鋳型DNAからのDNA増幅反応を行い、得られるDNA増幅産物を鋳型としてRNAポリメラーゼによるRNA転写反応を行い、得られる3’末端欠失RNAを翻訳することによりC末端欠損タンパク質を得ることを特徴とする、C末端欠損タンパク質の合成方法である。
上記方法において、DNA増幅を停止させる物質は、例えば2’−3’−ddATP、2’−3’−ddGTP、2’−3’−ddCTP、及び2’−3’−ddTTPからなる群より選択される少なくとも1つの2’−3’−ddNTPである。
上記方法は、その転写反応及び/又は翻訳反応を、無細胞タンパク質合成系において行うことが好ましい。
上記方法において、DNA増幅を停止させる物質は、例えば2’−3’−ddATP、2’−3’−ddGTP、2’−3’−ddCTP、及び2’−3’−ddTTPからなる群より選択される少なくとも1つの2’−3’−ddNTPである。
上記方法は、その転写反応及び/又は翻訳反応を、無細胞タンパク質合成系において行うことが好ましい。
さらに本発明は、上記合成方法のいずれかにより合成されたC末端欠損タンパク質から可溶性タンパク質を選択することを特徴とする、可溶性タンパク質の作製方法である。
またさらに本発明は、上記合成方法のいずれかにより合成されたC末端欠損タンパク質から可溶性タンパク質を選択することを特徴とする、可溶化ドメインの決定方法である。
本発明により、一度の反応で迅速かつ簡便に、C末端側のアミノ酸残基がランダムな位置で欠損したタンパク質の集合体を合成することができる。かかるC末端欠損タンパク質の集合体は、目的とするタンパク質の特定領域の機能などを調べるために有効であり、例えば、可溶性タンパク質を作製したり、可溶化ドメインを決定するために用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、C末端欠損タンパク質を作製する方法に関し、
(1)RNA転写を停止させる物質を含む基質を用いて、RNAポリメラーゼによる鋳型DNAからのRNA転写反応を行い、3’末端が欠失したRNAの集合体を作製するか、又は
(2)DNA増幅を停止させる物質を含む基質を用いて、DNAポリメラーゼによる鋳型DNAからのDNA増幅反応を行い、得られるDNA増幅産物を鋳型としてRNAポリメラーゼによるRNA転写反応を行い、3’末端が欠失したRNAの集合体を作製し、
その後、上記3’末端欠失RNAを翻訳することによりC末端欠損タンパク質を作製する。これにより、C末端側のアミノ酸残基がランダムな位置で欠損したタンパク質の集合体が得られる。
本発明は、C末端欠損タンパク質を作製する方法に関し、
(1)RNA転写を停止させる物質を含む基質を用いて、RNAポリメラーゼによる鋳型DNAからのRNA転写反応を行い、3’末端が欠失したRNAの集合体を作製するか、又は
(2)DNA増幅を停止させる物質を含む基質を用いて、DNAポリメラーゼによる鋳型DNAからのDNA増幅反応を行い、得られるDNA増幅産物を鋳型としてRNAポリメラーゼによるRNA転写反応を行い、3’末端が欠失したRNAの集合体を作製し、
その後、上記3’末端欠失RNAを翻訳することによりC末端欠損タンパク質を作製する。これにより、C末端側のアミノ酸残基がランダムな位置で欠損したタンパク質の集合体が得られる。
本発明における「C末端欠損タンパク質」とは、あるタンパク質のC末端側のアミノ酸残基が欠損しているタンパク質を指す。また、「C末端欠損タンパク質の集合体」とは、あるタンパク質のC末端側のアミノ酸残基がランダムな位置で欠損しているタンパク質の集合体を指す。
また本発明は、上記のように得られたC末端欠損タンパク質の集合体の中から可溶性タンパク質を選択することによって、タンパク質の可溶化ドメインを決定し、可溶性タンパク質を作製するものである。
1.3’末端欠失RNAの集合体の作製
本発明においては、まずC末端欠損タンパク質を作製しようとするタンパク質に対応する3’末端欠失RNAの集合体を作製する。このタンパク質は、特に限定されるものではなく、C末端欠損タンパク質を作製しようとするものであればよい。例えば、可溶化することが望まれるタンパク質(ヒトSIIT1、ヒトP53、ヒトHSPC189など)等が挙げられる。
本発明においては、まずC末端欠損タンパク質を作製しようとするタンパク質に対応する3’末端欠失RNAの集合体を作製する。このタンパク質は、特に限定されるものではなく、C末端欠損タンパク質を作製しようとするものであればよい。例えば、可溶化することが望まれるタンパク質(ヒトSIIT1、ヒトP53、ヒトHSPC189など)等が挙げられる。
本発明においては、上記タンパク質をコードする遺伝子(二本鎖DNA)から、以下に記載するようにRNA転写又はDNA増幅を利用することによって、そのタンパク質に対応する3’末端欠失RNAの集合体を作製する。
(1)RNA転写を利用した3’末端欠失RNAの集合体の作製
本発明においては、その1つの方法として、RNA転写を利用して3’末端欠失RNAの集合体を作製し、C末端欠損タンパク質の集合体を作製する。この方法の概要を図1に示す。
本発明においては、その1つの方法として、RNA転写を利用して3’末端欠失RNAの集合体を作製し、C末端欠損タンパク質の集合体を作製する。この方法の概要を図1に示す。
まず、鋳型の二本鎖DNA(四角)からのRNA転写反応を行う。この二本鎖DNAにおいて、「T7promoter」及び「T7terminator」とは、それぞれT7プロモーター配列及びT7ターミネーター配列を示す。また、斜線部分はリンカー配列を示す。この鋳型二本鎖DNAを鋳型として、T7 RNAポリメラーゼ(楕円)が、RNA転写基質を利用して転写反応を行い、RNAが合成される。
本発明においては、このRNA転写反応の基質中に、通常の基質であるNTP(ATP,CTP,GTP,UTP)に加えて、RNA転写を停止させる物質(例えばコルジセピン−5’−三リン酸;3’−dATP)を混入させる。これにより、RNA転写停止物質を取り込んだ後、RNA転写反応は停止する。この停止により、その後のRNA合成が進まなくなるため、得られるRNA転写産物はその3’末端が欠失したものとなる。また、転写反応の停止は、RNA転写停止物質を取り込んだ時点で起こるため、その停止の起こる位置によって3’末端の欠失位置も異なり、結果として、3’末端がランダムに欠失したRNA転写産物の集合体が得られることとなる(図1参照)。
RNA転写反応は、当技術分野で周知であり、当業者であれば反応条件、反応溶液などを適宜選択して行うことができる。また、後述する無細胞タンパク質合成系を利用してRNA転写反応を行うことも可能である。ここで、通常のRNA転写反応を行う際に、使用する基質に対し、RNA転写を停止させる物質を添加する。RNA転写停止物質は、RNAの合成反応中に取り込まれ、かつRNAの転写反応を停止させる物質であれば特に限定されるものではない。そのような物質としては、例えば3’−NTP(3’−dATP、3’−dGTP、3’−dCTP、3’−dUTP)などが挙げられ、本発明においては3’−dATPが好ましく使用される。
基質に対するRNA転写停止物質の量は、RNA転写反応を完全に阻害する量でなければ特に限定されるものではない。本発明の意図するC末端欠損タンパク質の集合体を得る目的から、基質中のRNA転写停止物質の量は、全転写産物の50〜95%程度である。例えばRNA転写停止物質として3’−dATPを用いる場合には、基質中の3’−dATPとATPとの混合比率は、約1〜10:100、好ましくは約1〜3:100である。
(2)DNA増幅を利用した3’末端欠失RNAの集合体の作製
本発明においては、別の方法として、DNA増幅を利用して3’末端欠失RNAの集合体を作製し、C末端欠損タンパク質の集合体を作製する。この方法の概要を図2に示す。
本発明においては、別の方法として、DNA増幅を利用して3’末端欠失RNAの集合体を作製し、C末端欠損タンパク質の集合体を作製する。この方法の概要を図2に示す。
まず、鋳型の二本鎖DNA(四角)からのRNA転写反応を行う。この鋳型二本鎖DNAを鋳型として、DNAポリメラーゼ(楕円)が、デオキシリボ核酸基質を利用して増幅反応を行い、DNAが合成される。
本発明においては、このDNA増幅反応の基質中に、通常の基質であるdNTP(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)に加えて、2’−3’−ddNTP(Nは、A/G/C/Tのいずれかを表す)を混入させる。これにより、2’−3’−ddNTP基質を取り込んだ後、DNA増幅反応は停止する。この停止により、その後のDNA伸長が進まなくなるため、得られるDNA増幅産物はその末端が欠失したものとなる。また、増幅反応の停止は、2’−3’−ddNTPを取り込んだ時点で起こるため、その停止の起こる位置によって末端の欠失位置も異なり、結果として、末端がランダムに欠失したDNA増幅産物の集合体が得られることとなる(図2参照)。
DNA増幅反応は、当技術分野で周知であり、当業者であれば反応条件、反応溶液などを適宜選択して行うことができる。ここで、通常のDNA増幅反応を行う際に、使用する基質に対し、DNA増幅を停止させる物質を添加する。DNA増幅停止物質は、DNAの合成反応中に取り込まれ、かつDNAの増幅反応を停止させる物質であれば特に限定されるものではない。そのような物質としては、例えば2’−3’−ddNTP(2’−3’−ddATP、2’−3’−ddTTP、2’−3’−ddGTP、2’−3’−ddCTP)が挙げられる。
基質に対するDNA増幅停止物質の量は、DNA増幅反応を完全に阻害する量でなければ特に限定されるものではない。
続いて、末端がランダムに欠失したDNA増幅産物の集合体を用いて、RNA転写反応を行う。図2に示すように、鋳型となるDNA増幅産物はその末端が欠失しているため、転写されるRNAもその3’末端が欠失したものとなる。このようにして、末端がランダムに欠失したDNA増幅産物の集合体を用いたRNA転写反応を行うことによって、3’末端がランダムに欠失したRNA転写産物の集合体が得られる。
以上のように3’末端欠失RNAの集合体は、理論的には一度の反応で網羅的に調製することが可能であり、簡便かつ効率的に作製することができる。
2.3’末端欠失RNAの集合体からのタンパク質翻訳
前項「1.3’末端欠失RNAの集合体の作製」に記載のようにして作製された3’末端欠失RNAから翻訳を行うことにより、C末端欠損タンパク質を得ることができる。
前項「1.3’末端欠失RNAの集合体の作製」に記載のようにして作製された3’末端欠失RNAから翻訳を行うことにより、C末端欠損タンパク質を得ることができる。
RNAからのタンパク質翻訳は、当技術分野で公知の手法を利用して行うことができる。好ましくは、RNAからのタンパク質翻訳は、後述する無細胞タンパク質合成系を利用して行う。
合成したC末端欠損タンパク質は、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、C末端欠損タンパク質を単離精製することができる。例えば、アフィニティー精製法を利用する場合には、RNA転写又はDNA増幅反応を行う際に、鋳型DNAに精製を容易にするためのタグを付加してもよい。例えば、ヒスチジンタグがタンパク質のN末端に付加されるように反応を行うことによって、得られるC末端欠損タンパク質の精製が容易になる。
C末端欠損タンパク質が得られたか否かは、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)等により確認することができる。本発明の方法により得られるC末端欠損タンパク質は、ランダムな位置でC末端を欠損したタンパク質の集合体として、SDS−PAGE上で広範囲に分布して(スメア状に)可視化されることになる。
さらに、得られたタンパク質の理化学的性質又は機能を調べるため、種々の試験を行うことができる(例えば、X線結晶解析、CDスペクトル解析、NMR解析等)。
C末端欠損タンパク質が得られたか否かは、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)等により確認することができる。本発明の方法により得られるC末端欠損タンパク質は、ランダムな位置でC末端を欠損したタンパク質の集合体として、SDS−PAGE上で広範囲に分布して(スメア状に)可視化されることになる。
さらに、得られたタンパク質の理化学的性質又は機能を調べるため、種々の試験を行うことができる(例えば、X線結晶解析、CDスペクトル解析、NMR解析等)。
3.無細胞タンパク質合成系における反応
本発明の方法は、その簡便性及び迅速性の点から、無細胞タンパク質合成系において実施することが好ましい。
本発明の方法は、その簡便性及び迅速性の点から、無細胞タンパク質合成系において実施することが好ましい。
本発明における「無細胞タンパク質合成系」とは、DNAを鋳型としてRNAを合成する無細胞転写系とmRNAの情報を読み取ってリボソーム上でタンパク質を合成する無細胞翻訳系の両者を包含する。
本発明の無細胞タンパク質合成系によるC末端欠損タンパク質製造は従来から知られる無細胞タンパク質合成のための材料、すなわち無細胞タンパク質合成用細胞抽出液、目的タンパク質をコードする鋳型となる核酸、エネルギー源(ATP、GTP、クレアチンホスフェート等の高エネルギーリン酸結合含有物)等を用いて行うことができる。
本発明の無細胞タンパク質合成系によるC末端欠損タンパク質製造は従来から知られる無細胞タンパク質合成のための材料、すなわち無細胞タンパク質合成用細胞抽出液、目的タンパク質をコードする鋳型となる核酸、エネルギー源(ATP、GTP、クレアチンホスフェート等の高エネルギーリン酸結合含有物)等を用いて行うことができる。
「無細胞タンパク質合成用細胞抽出液」とは、リボソーム、tRNAなどのタンパク質インビボ合成に関与する翻訳系又は転写系/翻訳系に必要な成分を含む植物細胞、動物細胞、真菌細胞、細菌細胞からの抽出液をいう。具体的には、大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網赤血球、マウスL−細胞、エールリッヒ腹水癌細胞、Hela細胞、CHO細胞、出芽酵母等の抽出液が挙げられる。細胞抽出液の調製は、例えばPratt, J.M.ら、Transcription and trasnlation-a practical approach(1984)、pp.179-209に記載の方法に従い、上記細胞をフレンチプレスやグラスビーズにて破砕し、タンパク質成分やリボソームを可溶化するための数種類の塩を含有する緩衝液を加えてホモジナイズし、遠心分離にて不溶成分を沈殿させることによって行うことができる。
好ましい細胞抽出液としては大腸菌S30細胞抽出液を例示することができる。
当該S30細胞抽出液は、大腸菌A19株(rna,met)、BL21 star、BL21 codon plus等から既知の方法(Zubayら(1973)Ann.Rev.Genet.7:267-287)により調製することができ、また市販品(Promega社やNovagen社からも入手可能)を用いてもよい。
当該S30細胞抽出液は、大腸菌A19株(rna,met)、BL21 star、BL21 codon plus等から既知の方法(Zubayら(1973)Ann.Rev.Genet.7:267-287)により調製することができ、また市販品(Promega社やNovagen社からも入手可能)を用いてもよい。
前記「1.3’末端欠失RNAの集合体の作製」に記載のようにして作製された3’末端欠失RNAの集合体の無細胞タンパク質合成用反応液(以下、反応液ともいう)への添加濃度は、無細胞タンパク質合成用細胞抽出液のタンパク質合成活性、合成するタンパク質の種類等によって適宜設定することができるが、例えば、通常0.1〜10nM程度とされる。
上記無細胞タンパク質合成系におけるエネルギー源は、生体内でエネルギー源として利用される物質であれば特に限定はされないが、好ましくはATP,GTP,クレアチンリン酸等の高エネルギーリン酸結合を有する物質が挙げられる。また、当該エネルギー源の反応液への添加濃度は、無細胞タンパク質合成用細胞抽出液のタンパク質合成活性、合成するタンパク質の種類等によって適宜設定することができる。
上記反応液には、必要に応じて、ATP再生に関与する酵素(例えば、ホスホエノールピルベートとピルビン酸キナーゼの組み合わせ又はクレアチンホスフェートとクレアチンキナーゼの組み合わせ)、各種のRNAポリメラーゼ(T7、T3、及びSP6 RNA polymerase等)、タンパク質の三次元構造を形成する働きを持つシャペロンタンパク質類(例えば、DnaJ、DnaK、GroE、GroEL、GroES及びHSP70等)を添加してもよい。
また、上記反応液には、必要に応じて、非タンパク質性成分を補強することができる。非タンパク質性成分とは、もともと無細胞タンパク質合成用細胞抽出液中に含まれている成分であるが、別途添加することでタンパク質合成能を向上させることができる成分であり、例えばtRNAが挙げられる。
さらに、上記反応液は、必要に応じて、タンパク質やRNAの保護及び/又は安定化のための各種の添加剤を含有させてもよい。当該添加剤としては、例えば、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)阻害剤(胎盤RNaseインヒビター等);還元剤(ジチオトレイトール等);RNA安定化剤(スペルミジン等);プロテアーゼ阻害剤(フェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)等)などが挙げられる。これらの反応液への添加濃度は、使用する無細胞タンパク質合成用細胞抽出液のタンパク質合成活性、合成する目的タンパク質の種類等に応じて適宜設定すればよい。
無細胞タンパク質合成には、従来から知られているバッチ法、透析法のいずれの方法を用いてもよい。
例えば、バッチ法を用いる場合、反応液には3’末端欠失RNAの集合体、無細胞タンパク質合成用細胞抽出液、目的タンパク質の構成材料となるアミノ酸混合物、LM mixture(ATP、GTP、CTP、UTP)、緩衝液、塩類、RNアーゼ阻害剤、抗菌剤のほか、必要によりT7 RNAポリメラーゼなどのRNAポリメラーゼ(DNAを鋳型として用いる場合)、tRNAなどを含むことができる。また、本発明においては、RNA転写反応における基質中にRNA転写を停止させる物質(例えば3’−dNTP)を添加してもよい。その他、ATP再生系としてホスホエノールピルベートとピルビン酸キナーゼの組み合わせ又はクレアチンホスフェートとクレアチンキナーゼの組み合わせ、ポリエチレングリコール(例えば#8000)、3’,5’−cAMP、葉酸類、還元剤(例えばジチオトレイトール)などを含むことができる。
ここで、緩衝液としては、例えばHepes−KOH、Tris−OAcのような緩衝剤が使用できる。塩類としては、例えば酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、塩化カルシウムなどを用いることができ、抗菌剤としては、例えばアジ化ナトリウム、アンピシリンなどを用いることができる。
反応条件は、使用する無細胞タンパク質合成用細胞抽出液、合成する目的タンパク質等によって適宜設定すればよいが、温度は通常20〜40℃、好ましくは23〜37℃であり、時間は通常1〜5時間、好ましくは3〜4時間である。
また、透析法を用いて連続的に目的タンパク質を製造する場合、上記バッチ式の反応液を透析内液とし、反応液の5〜10倍容量の透析外液に対して透析を行い、生成した目的タンパク質を透析内液又は透析外液から回収する。透析外液は、透析内液組成から無細胞タンパク質合成用細胞抽出液、RNアーゼ阻害剤、鋳型DNA、RNAポリメラーゼを除いたものが使用できる。従って、透析外液は、例えば、緩衝液、LM mixture(ATP、GTP、CTP、UTP)、塩類、目的タンパク質の構成材料となるアミノ酸混合物、ATP再生系としてホスホエノールピルベートとピルビン酸キナーゼ、抗菌剤などを含んでいればよい。
透析内液と透析外液を隔てる透析膜の分画分子量は、3,500〜100,000、好ましくは10,000〜50,000である。透析は、通常20〜40℃、好ましくは23〜37℃にて攪拌しつつ行い、定期的(通常24時間毎)に新しい外液と交換する。また、新たな核酸(好ましくはmRNA)を定期的(通常24時間毎)に反応液に補給してもよい。透析外液は反応速度が低下した時点で新鮮なものと交換することが望ましい。
透析は、透析膜を介して内液と外液とを隔離して含む振とう若しくは攪拌(回転攪拌など)可能な透析装置を用いて行うことができる。小スケール反応用装置としては、例えばDispoDialyzer(登録商標)(Spectrum社製)やSlidealyzer(登録商標)(Pierce社製)等を用いることができる。また、大スケール反応用装置としては、Spectra/Por(登録商標)透析用チューブ(Spectrum社製)等を用いることができる。また、振とう速度若しくは攪拌速度は低速、例えば100〜200rpmとし、反応時間は目的タンパク質の生成を監視しながら適当に選択することができる。
合成したタンパク質の精製は、生細胞からの分離と比べて混在する汚染物質の量及び種類が格段に少ないため、比較的容易に行うことができる。精製法としては、例えば硫酸アンモニウム若しくはアセトン沈殿、酸抽出、アニオン若しくはカチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト、等電点クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング等が挙げられ、精製はこれらの方法を当該タンパク質の性質に応じて単独に又は適宜組み合わせて行うことができる。また、当該タンパク質に付加したタグを特異的に認識し吸着することを利用したアフィニティー精製法を用いることができる。
合成したタンパク質の精製は、生細胞からの分離と比べて混在する汚染物質の量及び種類が格段に少ないため、比較的容易に行うことができる。精製法としては、例えば硫酸アンモニウム若しくはアセトン沈殿、酸抽出、アニオン若しくはカチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト、等電点クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング等が挙げられ、精製はこれらの方法を当該タンパク質の性質に応じて単独に又は適宜組み合わせて行うことができる。また、当該タンパク質に付加したタグを特異的に認識し吸着することを利用したアフィニティー精製法を用いることができる。
4.可溶性タンパク質の作製
上述のようにして得られたC末端欠損タンパク質は、ランダムな位置でC末端を欠損するタンパク質の集合体として得られるため、その集合体の中には種々の変異タンパク質が含まれることとなる。従って、当該集合体の中から、可溶性タンパク質を選択することも可能である。
タンパク質の集合体の中から可溶性タンパク質を選択する手法については特に制限されないが、具体的には後述する実施例に示すように、遠心分離操作を利用する方法が挙げられる。すなわち、合成したタンパク質溶液を滅菌蒸留水と混合し、これを遠心分離して上清画分を得、これにアセトン等を加えて再び遠心分離して沈殿画分を得る。そしてこの沈殿画分をSDS−PAGE法による電気泳動解析を行うことにより、可溶性タンパク質を同定することができる。さらに、質量分析やアミノ酸配列解析の手法を併用すれば、可溶性タンパク質における可溶化ドメインペプチドの領域をアミノ酸レベルで決定することが可能である。
可溶化ドメインの決定方法としては、例えば質量分析の場合、用いたタンパク質のアミノ酸配列はすでにわかっているので、可溶化ドメインのC末端のアミノ酸部位が分子量解析により特定できる。これにより、可溶化ドメインの始めのアミノ酸及び終わりのアミノ酸の位置を知ることができる。
また、C末端欠損タンパク質の集合体は、種々の変異タンパク質を含むため、結合アッセイと、電気泳動、質量分析などの方法を併用することにより、この集合体の中から、特定の分子(タンパク質・薬剤など)と特異的に相互作用する変異タンパク質を見出すことも可能である。またそのような変異タンパク質から、相互作用に関与するドメインを見出すことも可能である。そのような相互作用を検出する方法(アッセイ)は、特に限定されるものではなく、当業者に公知の方法を使用することができる。
上述のようにして得られたC末端欠損タンパク質は、ランダムな位置でC末端を欠損するタンパク質の集合体として得られるため、その集合体の中には種々の変異タンパク質が含まれることとなる。従って、当該集合体の中から、可溶性タンパク質を選択することも可能である。
タンパク質の集合体の中から可溶性タンパク質を選択する手法については特に制限されないが、具体的には後述する実施例に示すように、遠心分離操作を利用する方法が挙げられる。すなわち、合成したタンパク質溶液を滅菌蒸留水と混合し、これを遠心分離して上清画分を得、これにアセトン等を加えて再び遠心分離して沈殿画分を得る。そしてこの沈殿画分をSDS−PAGE法による電気泳動解析を行うことにより、可溶性タンパク質を同定することができる。さらに、質量分析やアミノ酸配列解析の手法を併用すれば、可溶性タンパク質における可溶化ドメインペプチドの領域をアミノ酸レベルで決定することが可能である。
可溶化ドメインの決定方法としては、例えば質量分析の場合、用いたタンパク質のアミノ酸配列はすでにわかっているので、可溶化ドメインのC末端のアミノ酸部位が分子量解析により特定できる。これにより、可溶化ドメインの始めのアミノ酸及び終わりのアミノ酸の位置を知ることができる。
また、C末端欠損タンパク質の集合体は、種々の変異タンパク質を含むため、結合アッセイと、電気泳動、質量分析などの方法を併用することにより、この集合体の中から、特定の分子(タンパク質・薬剤など)と特異的に相互作用する変異タンパク質を見出すことも可能である。またそのような変異タンパク質から、相互作用に関与するドメインを見出すことも可能である。そのような相互作用を検出する方法(アッセイ)は、特に限定されるものではなく、当業者に公知の方法を使用することができる。
以下、実施例を用いて本方法をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕3’−dNTP存在下におけるRNA転写
本実施例においては、RNA転写反応における3’−dNTP(3’−dATP)の存在がRNA転写産物の末端欠失に及ぼす影響を検討した。
本実施例においては、RNA転写反応における3’−dNTP(3’−dATP)の存在がRNA転写産物の末端欠失に及ぼす影響を検討した。
配列番号1に示すT7プロモーター配列の下流に配列番号2に示すクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子のDNAを結合したプラスミド(pCAT)を用いて、3’−dATPを含む又は含まない反応液を用いて種々の条件下にて転写実験を行った。反応は37℃で、1〜3時間行った。
また、反応後は、1.5%アガロースゲル電気泳動を100V定圧で約30分間行い、同ゲルをエチジウムブロマイドで染色した後UV照射にてDNAを可視化した。可視化した像を図3に示す。図3における各レーンの反応条件は、以下の通りである。
レーン1:DNA分子量マーカー
レーン2:プラスミドの代わりに滅菌蒸留水を用いて1時間反応させたサンプル(対照)。反応液Aを使用して反応は37℃で1時間行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン3:レーン2と同じ組成で3時間反応させたサンプル(対照)。反応液Aを使用して行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン4:プラスミドpCATのみを泳動した(対照)
レーン5:3’−dATPを加えず反応を行わせたサンプル(対照)。反応液Aに最終濃度10ng/μlのプラスミドpCATを添加し、反応は37℃で1時間行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン6:3’−dATPとATPの混合比率を0.3:100で反応を行わせたサンプル。反応液Aに最終濃度10ng/μlのプラスミドpCAT及び最終濃度1.5nMの3’−dATPを添加し、反応は37℃で1時間行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン7:3’−dATPとATPの混合比率を1:100で反応を行わせたサンプル。反応液Aに最終濃度10ng/μlのプラスミドpCAT及び最終濃度5nMの3’−dATPを添加し、反応は37℃で1時間行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン8:3’−dATPとATPの混合比率を3:100で反応を行わせたサンプル。反応液Aに最終濃度10ng/μlのプラスミドpCAT及び最終濃度15nMの3’−dATPを添加し、反応は37℃で1時間行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン9:3’−dATPとATPの混合比率を10:100で反応を行わせたサンプル。反応液Aに最終濃度10ng/μlのプラスミドpCAT及び最終濃度50nMの3’−dATPを添加し、反応は37℃で1時間行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン2:プラスミドの代わりに滅菌蒸留水を用いて1時間反応させたサンプル(対照)。反応液Aを使用して反応は37℃で1時間行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン3:レーン2と同じ組成で3時間反応させたサンプル(対照)。反応液Aを使用して行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン4:プラスミドpCATのみを泳動した(対照)
レーン5:3’−dATPを加えず反応を行わせたサンプル(対照)。反応液Aに最終濃度10ng/μlのプラスミドpCATを添加し、反応は37℃で1時間行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン6:3’−dATPとATPの混合比率を0.3:100で反応を行わせたサンプル。反応液Aに最終濃度10ng/μlのプラスミドpCAT及び最終濃度1.5nMの3’−dATPを添加し、反応は37℃で1時間行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン7:3’−dATPとATPの混合比率を1:100で反応を行わせたサンプル。反応液Aに最終濃度10ng/μlのプラスミドpCAT及び最終濃度5nMの3’−dATPを添加し、反応は37℃で1時間行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン8:3’−dATPとATPの混合比率を3:100で反応を行わせたサンプル。反応液Aに最終濃度10ng/μlのプラスミドpCAT及び最終濃度15nMの3’−dATPを添加し、反応は37℃で1時間行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
レーン9:3’−dATPとATPの混合比率を10:100で反応を行わせたサンプル。反応液Aに最終濃度10ng/μlのプラスミドpCAT及び最終濃度50nMの3’−dATPを添加し、反応は37℃で1時間行った。反応液20μlのうち5μlを泳動した
反応スケールは全て20μlで行った。
その結果、図3のレーン5〜8に示されるように、3’−dATPとATPの混合比率が1〜3:100で反応を行った場合に、種々の長さのRNA転写産物が広範囲に分布し、スメア状に広がることが判明した。従って、3’−dATPの存在下においてRNA転写を行うことによって、ランダムな位置で3’末端が欠失したRNA転写産物が得られることがわかった。
〔実施例2〕2’−3’−ddNTP存在下におけるDNA増幅
本実施例においては、可溶性タンパク質であり、配列番号3に示すアミノ酸配列を有するヒトSIIT1タンパク質(Umeharaら、Gene、167、297-302(1995))のC末端欠損集合体を得ることを目的として、遺伝子DNAを鋳型とした増幅反応における2’−3’−ddNTPの影響を調べた。
本実施例においては、可溶性タンパク質であり、配列番号3に示すアミノ酸配列を有するヒトSIIT1タンパク質(Umeharaら、Gene、167、297-302(1995))のC末端欠損集合体を得ることを目的として、遺伝子DNAを鋳型とした増幅反応における2’−3’−ddNTPの影響を調べた。
(1)ヒスチジンタグの付加
配列番号3に示すヒトSIIT1タンパク質のアミノ酸配列のN末端側にヒスチジンタグを付加したペプチドのC末端欠損集合体を得ることを目的として、配列番号4に示すヒトSIIT1遺伝子のDNAを含むプラスミドを用いて、下記の表2の反応組成と表3のPCRサイクル条件により、1段階目のPCR反応を行った。このPCR反応においては、以下に示す2種類のプライマーを使用した。
配列番号3に示すヒトSIIT1タンパク質のアミノ酸配列のN末端側にヒスチジンタグを付加したペプチドのC末端欠損集合体を得ることを目的として、配列番号4に示すヒトSIIT1遺伝子のDNAを含むプラスミドを用いて、下記の表2の反応組成と表3のPCRサイクル条件により、1段階目のPCR反応を行った。このPCR反応においては、以下に示す2種類のプライマーを使用した。
5’側プライマー:CCAGCGGCTCCTCGGGAATGATGGGCAAGGAAGAG(配列番号5)
3’側プライマー:GGGCGGGGATCAATCAATCATTATCAGCAGAACTTCCAGCG(配列番号6)
3’側プライマー:GGGCGGGGATCAATCAATCATTATCAGCAGAACTTCCAGCG(配列番号6)
次に、配列番号7に示すT7P−Nhis−NL1プライマー、配列番号8に示すT7T−DT2プライマー、及び配列番号9に示すU2プライマーを用いて、下記表4の反応組成と上記表3のPCRサイクルに従い、2段階目のPCRを行った。
1段階目のPCR産物の配列は、配列番号5に示すDNA断片の5’末端から16塩基よりなる配列、及び配列番号6に示すDNA断片の5’末端から22塩基よりなる配列のリンカー配列を含むことから、PCRにより配列番号7及び配列番号8の配列と連結することができる。また得られるPCR産物は、配列番号1に示すT7プロモーター配列を有するため、これをT7RNAポリメラーゼと混合・保温することにより、ポリメラーゼによるRNA転写の活性化が可能となる。またこのPCR産物は、配列番号10に示すT7ターミネーター配列を有することから、この産物を鋳型とするRNAの転写反応はこの配列において終結する。さらに合成されるタンパク質のN末端側には配列番号11に示すアミノ酸配列が付加されることから、ニッケルやコバルトと結合したアガロースなどを用いることによって合成されたタンパク質を容易にアフィニティー精製できることになる。
なお、本実施例で用いた1本鎖DNAプライマー配列は、下記の基準を満たすように設計した:
・Tm=2×(A+T)+4×(G+C)で計算されるTm値が78以上であること
・配列中の(G+C)の割合が33.3%以上であること
・プライマーの3’末端のヌクレオチドがC又はGとなること。
・Tm=2×(A+T)+4×(G+C)で計算されるTm値が78以上であること
・配列中の(G+C)の割合が33.3%以上であること
・プライマーの3’末端のヌクレオチドがC又はGとなること。
(2)2’−3’−ddNTP存在下におけるDNA増幅
上述の通り得られたPCR産物の4μlに対し、0.16μMのU2プライマー(配列番号9)、及び最終濃度が40%になるようにBig Dye Terminator pre−mixture溶液(Applied Biosystems社のロット030263を使用)を加えて希釈し、反応量10μlとした。この反応液を用いて、PCR反応(96℃10秒、50℃5秒、60℃4分)を25サイクル行った。ここで用いたBig Dye Terminator pre−mixture溶液は、通常のDNAの基質(dATP、dTTP、dCTP、dGTP)以外に2’−3’−ddNTPを微量含んでいる。
上述の通り得られたPCR産物の4μlに対し、0.16μMのU2プライマー(配列番号9)、及び最終濃度が40%になるようにBig Dye Terminator pre−mixture溶液(Applied Biosystems社のロット030263を使用)を加えて希釈し、反応量10μlとした。この反応液を用いて、PCR反応(96℃10秒、50℃5秒、60℃4分)を25サイクル行った。ここで用いたBig Dye Terminator pre−mixture溶液は、通常のDNAの基質(dATP、dTTP、dCTP、dGTP)以外に2’−3’−ddNTPを微量含んでいる。
この増幅反応の結果を図4に示す。レーン1の泳動パターンは、2’−3’−ddNTP存在下における反応の結果を示す。またレーン2は、この反応液にマングマメのヌクレアーゼを最終濃度が5%になるように混合し、37℃1時間保温して反応させた結果である。いずれの場合も、種々の長さのDNAが増幅され、スメア状に展開されたことが確認できた。従って、2’−3’−ddNTP存在下にてDNA増幅反応を行うことによって、ランダムに末端が欠失したDNAが集合体として形成されることがわかった。
〔実施例3〕末端欠失DNAの集合体を用いたタンパク質合成
本実施例においては、実施例3において得られたDNA増幅産物を用いてタンパク質合成を行った。具体的には、Invitorgen社のTOPO TA cloning kit(cat.K4500−01)を用いてpCR2.1−TOPOに連結し、このプラスミドを大腸菌DH5α株に形質転換した。この形質転換体を培養した後、VIOGENE社のプラスミド抽出キットを用いてプラスミドを純化した。
上記のように調製したプラスミドを用いて、透析法による無細胞タンパク合成を行った。
本実施例においては、実施例3において得られたDNA増幅産物を用いてタンパク質合成を行った。具体的には、Invitorgen社のTOPO TA cloning kit(cat.K4500−01)を用いてpCR2.1−TOPOに連結し、このプラスミドを大腸菌DH5α株に形質転換した。この形質転換体を培養した後、VIOGENE社のプラスミド抽出キットを用いてプラスミドを純化した。
上記のように調製したプラスミドを用いて、透析法による無細胞タンパク合成を行った。
タンパク質合成の反応液(透析内液)の組成を表5に示す。また、タンパク質合成基質溶液(透析外液)の組成は表6に示す。表5及び表6中、LMCPYとは、1.8mlの1M HEPES−KOH(pH7.5)、3.14mlの40%(w/v)PEG8000、5.62mgのチロシン、2.09mlの3Mグルタミン酸カリウム、0.1mlの0.55M DTT、0.11mlの100mM ATP、0.27mlのNTPs混合液(各100mM)、0.4mlの2.7mg/ml フォリン酸カルシウム、0.2mlの100mM cAMP・Na、0.39mlの2.2M 酢酸アンモニウム、2.51mlの1Mクレアチンホスフェート、0.27mlの滅菌蒸留水からなる溶液(総量11.28ml)である。また、S30バッファーは、10mlの6M酢酸カリウム、10mlの1M Tris−OAc(pH8.2)、10mlの1.4M酢酸マグネシウム、154.25mgのDTT、970mlの滅菌蒸留水からなる溶液(総量1000ml)である。
30μlの透析内液を入れたDispo/Dialyzer CE(分子量限界10000もしくは50000,Spectrum社製)を、1000〜1500μlの透析外液の入った24穴平底(またはU底)プレート内に固定し、透析膜が透析外液に常時接するようにする。試験管用振とう培養器で30℃、200〜500rpmで振とうすることによりタンパク質合成を行った。
合成したタンパク質溶液(透析内液の約30μl)は、60μlの滅菌蒸留水と混合し、そのうち15μlを分注した。残りのサンプルは、5300rpm×10分の遠心分離操作を行い、その上清15μlを別に分注した。それぞれの溶液に30μlのアセトンを混合し、氷上で5分冷却した後、5300rpm×30分の遠心分離操作で沈澱画分を取得した。この沈澱画分を60〜65℃で10分乾燥した後、下記の組成で示すSDSサンプルバッファー(20〜30μl)で沈澱物を完全に溶解した。この溶液を100℃で3〜5分熱処理した後、5〜10μlを用いてSDS−PAGE法による電気泳動解析を行った。
SDSサンプルバッファー:
0.5M Tris−HCl(pH6.8):20ml
SDS:4g
グリセロール:20ml
β−メルカプトエタノール:12ml
ブロモフェノールブルー:100mg
滅菌蒸留水:48ml
0.5M Tris−HCl(pH6.8):20ml
SDS:4g
グリセロール:20ml
β−メルカプトエタノール:12ml
ブロモフェノールブルー:100mg
滅菌蒸留水:48ml
以上のタンパク質発現実験の結果を図5に示す。タンパク質発現を、実施例3のようにDNA増幅停止物質(2’−3’−dNTP)の存在下におけるDNA増幅産物を用いて行った場合(+)と、通常のDNA鋳型を用いて行った場合(−)のタンパク質の発現・可溶性・部分精製の状態をSDS−PAGE法によって検出した。SDS−PAGEゲルはSYPROオレンジにより染色し、FUJI LAS−1000を用いた蛍光強度観察により発現タンパク質の質と量を検出した。
図5中のTは、無細胞タンパク質合成で得られた反応後の画分を示す。Sは、このTの画分を5300rpm×10分で4℃にて遠心分離して得られた上清画分を示す。Eは、Sの画分をTALONコバルトアガロースと混合し、そのコバルトアガロースを溶液(750mM NaCl,50mM NaPi)で洗浄後、イミダゾールを含む溶液(500mMイミダゾール、300mM NaCl,50mM NaPi)で溶出した画分を示す。Mは分子量マーカーを示し、各バンドの分子量はゲルの左側に示した。電気泳動に用いたタンパク質の量は基本的には1/10量であるが、増幅を試みた場合のE(最も右のレーン)だけは全量を電気泳動解析した。
この実験により、2’−3’−ddNTPを用いた反応においてコバルトアガロースに吸着・解離する特異的なバンドが複数本確認することができた。ヒスチジンタグはこれらのタンパク質のN末端側にのみ存在するよう設計されていることから、コバルトアガロースに新たに吸着したペプチドはN末端にヒスチジンタグ配列を有し、C末端側領域の配列を欠損するヒトSIIT1タンパク質の部分的なペプチドであると結論づけられた。
以上の結果から、2’−3’−ddNTPを含む基質を用いたDNA増幅反応の工程を加えることにより、本来のサイズ(約42kDaに検出されている)よりも低分子量側(下側)にC末端領域を欠損したタンパク質とみられるペプチドが複数、特異的に溶出されたことが確認できる。従って、本発明の方法により、C末端がランダムに欠損したタンパク質の集合体が得られることがわかった。
本発明により、一度の反応で迅速かつ簡便に、C末端側のアミノ酸残基がランダムな位置で欠損したタンパク質の集合体を合成することができる。かかるC末端欠損タンパク質の集合体は、目的とするタンパク質の特定領域の機能などを調べるために有効であり、例えば、可溶性タンパク質を作製したり、可溶化ドメインを決定するために用いることができる。
配列番号1:合成オリゴヌクレオチド
配列番号2:合成遺伝子
配列番号5〜10:合成オリゴヌクレオチド
配列番号11:合成ペプチド
配列番号2:合成遺伝子
配列番号5〜10:合成オリゴヌクレオチド
配列番号11:合成ペプチド
Claims (9)
- RNA転写を停止させる物質を含む基質を用いて、RNAポリメラーゼによる鋳型DNAからのRNA転写反応を行い、得られる3’末端欠失RNAを翻訳することによりC末端欠損タンパク質を得ることを特徴とする、C末端欠損タンパク質の合成方法。
- RNA転写を停止させる物質が、3’−dATP、3’−dGTP、3’−dCTP、3’−dUTPからなる群より選択される少なくとも1つの3’−dNTPである、請求項1記載の方法。
- 基質中の3’−dNTPとNTPの混合比率が1〜10:100である、請求項2記載の方法。
- 基質中の3’−dNTPとNTPの混合比率が1〜3:100である、請求項3記載の方法。
- DNA増幅を停止させる物質を含む基質を用いて、DNAポリメラーゼによる鋳型DNAからのDNA増幅反応を行い、得られるDNA増幅産物を鋳型としてRNAポリメラーゼによるRNA転写反応を行い、得られる3’末端欠失RNAを翻訳することによりC末端欠損タンパク質を得ることを特徴とする、C末端欠損タンパク質の合成方法。
- DNA増幅を停止させる物質が、2’−3’−ddATP、2’−3’−ddGTP、2’−3’−ddCTP、及び2’−3’−ddTTPからなる群より選択される少なくとも1つの2’−3’−ddNTPである、請求項5記載の方法。
- 転写反応及び/又は翻訳反応を無細胞タンパク質合成系において行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により合成されたC末端欠損タンパク質から可溶性タンパク質を選択することを特徴とする、可溶性タンパク質の作製方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により合成されたC末端欠損タンパク質から可溶性タンパク質を選択することを特徴とする、可溶化ドメインの決定方法。
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---|---|---|---|---|
JP2012506499A (ja) * | 2008-10-23 | 2012-03-15 | ヘクセル ランフォルセマン | 複合部品の作製に適した新規な補強材料 |
-
2003
- 2003-09-25 JP JP2003333932A patent/JP2005095079A/ja active Pending
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