JP2005083932A - 伝搬シミュレーション装置、伝搬シミュレーション方法、および伝搬シミュレーションプログラム - Google Patents

伝搬シミュレーション装置、伝搬シミュレーション方法、および伝搬シミュレーションプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】 処理効率を高める。
【解決手段】 対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション装置において、設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線につき、当該供給源からの距離が近い座標から順番に、前記物理作用の少なくとも振幅の計算を含む所定の音線経路計算を実行する音線経路計算部と、当該振幅の値を、所定の基準振幅値と比較し、当該振幅の値が基準振幅値よりも小さくなった場合には、その時点で、当該音線に関する音線経路計算を中止させる計算制御部と、前記音線経路計算部が実行した音線経路計算の結果に基づき、前記物理作用の伝搬特性を計算する第1の伝搬計算部とを備る。
【選択図】 図1

Description

本発明は伝搬シミュレーション装置、伝搬シミュレーション方法、および伝搬シミュレーションプログラムに関し、例えば、ガウシアンビームを利用して水中の音波伝搬特性を計算する場合などに適用して好適なものである。
海洋中の音波の伝搬は、水中での音の屈折や海面、海底での反射によって、複雑な特性を示す。これらの現象を模擬し、水中の音波伝搬特性を計算する代表的なモデルとしては、音線モデル、ノーマルモードモデル、放物型方程式(Parabolic Equation、以下PEと略す)モデル等がある。
PEモデルは波動理論を用いたモデルであるため、高周波において多大な計算量を必要とする。これに対し音線モデル(音線理論)は、高周波でも有効なものである。当該音線モデルの一種としてガウシアンビームモデルがある。
ガウシアンビームモデルによれば、古典音線モデルが持つ欠点、すなわち、回折効果が計算できない点、焦線領域で音圧が∞(無限大)となってしまう点、影領域で音圧が0になってしまう点などを解決することができる。ガウシアンビームに関する技術としては、下記の非特許文献1、2に記載されたものがある。
図2に示すように、音源AS1から角周波数ω(=2πf、ここでfは周波数)、放射角αで放射された音波は、受波点RW1において、次の式(1)で示される音場Uを生成する。この音場Uは、音線経路長sと、音線AL1と受波点RW1との距離nに依存する。
Figure 2005083932
ここで、Σは、音線毎の加算を表し、c0は基準音速、c(s)は座標(s,0)における音速、τは伝搬時間、RS、RBはそれぞれ、海面、海底の反射係数、mS、mBはそれぞれの反射回数を示す。
また、前記式(1)において、δαは音線の放射間隔であり、α1〜α2にN本の音線を発生させるとき、次の式(2)が成り立つ。
Figure 2005083932
さらに、前記式(1)において、p(s)、q(s)のあいだには、次の式(3)および(4)の関係が成立する。
Figure 2005083932
Figure 2005083932
式(4)におけるcnnは音速c(s,n)のnに関する2階微分を表す。
また、s=0のときのp(0)、q(0)の値は、次の式(5)、(6)に示す通りである。
Figure 2005083932
Figure 2005083932
ここで、式(6)におけるεは、
Figure 2005083932
である。音速c0の一様媒質中においては、式(5)および(6)を初期条件として式(3)および(4)を解くことにより、次の式(8)および(9)が得られる。
Figure 2005083932
Figure 2005083932
一般には、水中の媒質は一様でなく、関数p(s)、q(s)はさらに複雑な形になるが、音線の近傍で局所的に一様と見なし、q(s)を音線経路上の音速c(s)を用いて、次の式(10)で与えれば、ある程度妥当な解が得られることが前記非特許文献2に記載されている。
Figure 2005083932
以後、簡単のため、一様媒質を例にとり、説明する。
音線が海面反射する場合、海面反射前のp、q、τと海面反射後のp’、q’、τ’の関係は次の式(11)〜(13)によって示される。
Figure 2005083932
Figure 2005083932
Figure 2005083932
ここで、Nは音速cの水平距離rに関する1階微分と深度zに関する1階微分で記述される式となるが、一様媒質ではN=0となる。式(11)〜(13)を前記式(1) に代入することにより、海面反射後の音場が計算できる。
また、式(1)の加算項はn=0、すなわち、音線の軸を中心にガウス分布関数で重み付けされた複素関数となっており、一様媒質では式(11)〜(13)を式(1)に代入することによって分散σが計算でき、
Figure 2005083932
となる。ここで、この式(14)の右辺第1項は、音線経路長sの2乗に比例して音が発散して行く成分であり、1本の音線が影響を及ぼす空間が伝搬距離とともに広がっていくことを意味する。これは、点音源から音が発散して行く現象を表しているものと解釈できる。一方、第2項は、周波数と音線の放射間隔に依存する成分であり、音線の放射間隔の開口を持つ2次音源から放射される音波の指向性を計算している項と解釈できる。この項はsには依存しないため、音源近傍で支配的であり、遠方へ行くにつれて第1項が支配的になる。
M. B. Porter and H. P. Bucker, "Gaussian beam tracing for computing acoustic fields," J. Acoust. Soc. Am. 82, 1349-1359(1987). 石渡恒夫、森下到、尾崎俊二、"簡易型ガウシアンビーム伝搬モデルの提案"、信学技報、US2000-110、47-52 (2001).
ところで、上記の方法には、以下のような問題点(1)、(2)があった。
(1) 計算精度を向上させるためには細かい角度(小さな放射間隔)で多くの音線を発生させる必要があり、全ての音線経路上の音場を計算すると多大な計算時間を要し、処理の効率が低い。
(2) 音源から一定の角度間隔(放射間隔)で音線を発生させているため、遠方へ行くと音線間隔がまばらになり、多くの計算時間を要する割に計算精度が低いという意味で、処理の効率が低い。
かかる課題を解決するために、第1の本発明では、対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション装置において、(1)設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線につき、当該供給源からの距離が近い座標から順番に、前記物理作用の少なくとも振幅の計算を含む所定の音線経路計算を実行する音線経路計算部と、(2)当該振幅の値を、所定の基準振幅値と比較し、当該振幅の値が基準振幅値よりも小さくなった場合には、その時点で、当該音線に関する音線経路計算を中止させる計算制御部と、(3)前記音線経路計算部が実行した音線経路計算の結果に基づき、前記物理作用の伝搬特性を計算する第1の伝搬計算部とを備えたことを特徴とする。
また、第2の本発明では、対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション装置において、設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線の放射間隔をD、前記対象媒質における前記物理作用の基準となる伝搬速度をV、波としての前記物理作用の角周波数をω、前記音線に沿った座標をP、この座標Pに直交する座標をQ、座標(P,Q)=(P,0)の点における前記物理作用の伝搬速度をV(P)、座標(P,Q)の点における前記物理作用の伝搬速度V(P,Q)の前記Qに関する2階微分をVQQとし、前記座標Pの関数B(P)とC(P)のあいだに、dB/dP=V(P)C(P)およびdC/dP=−VQQ×B(P)/V(P)の関係が成立する場合、前記物理作用の広がりの2乗にあたる広がり指数を、D+(2V /ω )または、−1/Im[ω1{B(P)/C(P)}]をもとに計算し、前記物理作用を受け取る受作用点と音線との距離を、前記座標Qを用いて表現するとき、前記広がり指数を基準とする判定処理により、その距離が所定の広がり基準距離より短いと判定された場合に、当該音線の経路からの寄与による受作用点での前記物理作用の伝搬特性を計算する第2の伝搬計算部を備えたことを特徴とする。
さらに、第3の本発明では、対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション装置において、(1)前記対象媒質が、伝搬特性の異なる媒質との境界面で規制された形状を有する場合、当該対象媒質中に設定された前記物理作用の供給源から、伝搬特性を求める受作用点までの当該境界面に沿った距離を、所定の基準距離と比較する距離比較部と、(2)当該距離比較部による比較結果が、前記境界面に沿った受作用点までの距離のほうが所定の基準距離より短いことを示す場合、当該境界面に平行な方向との角度が所定の放射基準角度より大きい放射角度の音線を含む1または複数の音線である第1の音線群を、所定の基準放射間隔より大きい放射間隔で生成し、反対に、前記境界面に沿った受作用点までの距離のほうが当該基準距離より長いことを示す場合には、当該境界面に平行な方向との角度が所定の放射基準角度より小さい放射角度の1または複数の音線である第2の音線群を、所定の基準放射間隔より小さい放射間隔で生成する音線生成部と、(3)当該音線生成部が生成した第1の音線群または第2の音線群からの寄与による受作用点での物理作用の伝搬特性を計算する第3の伝搬計算部を備えたことを特徴とする。
第4の本発明では、対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション方法において、(1)音線経路計算部が、設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線につき、当該供給源からの距離が近い座標から順番に、前記物理作用の少なくとも振幅の計算を含む所定の音線経路計算を実行し、(2)計算制御部が、当該振幅の値を、所定の基準振幅値と比較し、当該振幅の値が基準振幅値よりも小さくなった場合には、その時点で、当該音線に関する音線経路計算を中止させ、(3)前記音線経路計算部が実行した音線経路計算の結果に基づき、第1の伝搬計算部が、前記物理作用の伝搬特性を計算することを特徴とする。
また、第5の本発明では、対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション方法において、設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線の放射間隔をD、前記対象媒質における前記物理作用の基準となる伝搬速度をV、波としての前記物理作用の角周波数をω、前記音線に沿った座標をP、この座標Pに直交する座標をQ、座標(P,Q)=(P,0)の点における前記物理作用の伝搬速度をV(P)、座標(P,Q)の点における前記物理作用の伝搬速度V(P,Q)の前記Qに関する2階微分をVQQとし、前記座標Pの関数B(P)とC(P)のあいだに、dB/dP=V(P)C(P)およびdC/dP=−VQQ×B(P)/V(P)の関係が成立する場合、第2の伝搬計算部が、前記物理作用の広がりの2乗にあたる広がり指数を、D+(2V /ω )または、−1/Im[ω1{B(P)/C(P)}]をもとに計算し、前記物理作用を受け取る受作用点と音線との距離を、前記座標Qを用いて表現するとき、前記広がり指数を基準とする判定処理により、その距離が所定の広がり基準距離より短いと判定された場合に、当該音線の経路からの寄与による受作用点での前記物理作用の伝搬特性を計算することを特徴とする。
さらに、第6の本発明では、対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション方法において、(1)前記対象媒質が、伝搬特性の異なる媒質との境界面で規制された形状を有する場合、距離比較部は、当該対象媒質中に設定された前記物理作用の供給源から、伝搬特性を求める受作用点までの当該境界面に沿った距離を、所定の基準距離と比較し、(2)音線生成部は、当該距離比較部による比較結果が、前記境界面に沿った受作用点までの距離のほうが所定の基準距離より短いことを示す場合、当該境界面に平行な方向との角度が所定の放射基準角度より大きい放射角度の音線を含む1または複数の音線である第1の音線群を、所定の基準放射間隔より大きい放射間隔で生成し、反対に、前記境界面に沿った受作用点までの距離のほうが当該基準距離より長いことを示す場合には、当該境界面に平行な方向との角度が所定の放射基準角度より小さい放射角度の1または複数の音線である第2の音線群を、所定の基準放射間隔より小さい放射間隔で生成し、(3)第3の伝搬計算部は、当該音線生成部が生成した第1の音線群または第2の音線群からの寄与による受作用点での物理作用の伝搬特性を計算することを特徴とする。
第7の本発明では、対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーションプログラムにおいて、コンピュータに、(1)設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線につき、当該供給源からの距離が近い座標から順番に、前記物理作用の少なくとも振幅の計算を含む所定の音線経路計算を実行する音線経路計算機能と、(2)当該振幅の値を、所定の基準振幅値と比較し、当該振幅の値が基準振幅値よりも小さくなった場合には、その時点で、当該音線に関する音線経路計算を中止させる計算制御機能と、(3)前記音線経路計算機能が実行した音線経路計算の結果に基づき、前記物理作用の伝搬特性を計算する第1の伝搬計算機能とを実現させることを特徴とする。
また、第8の本発明では、対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーションプログラムにおいて、設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線の放射間隔をD、前記対象媒質における前記物理作用の基準となる伝搬速度をV、波としての前記物理作用の角周波数をω、前記音線に沿った座標をP、この座標Pに直交する座標をQ、座標(P,Q)=(P,0)の点における前記物理作用の伝搬速度をV(P)、座標(P,Q)の点における前記物理作用の伝搬速度V(P,Q)の前記Qに関する2階微分をVQQとし、前記座標Pの関数B(P)とC(P)のあいだに、dB/dP=V(P)C(P)およびdC/dP=−VQQ×B(P)/V(P)の関係が成立する場合、コンピュータに、前記物理作用の広がりの2乗にあたる広がり指数を、D+(2V /ω )または、−1/Im[ω1{B(P)/C(P)}]をもとに計算し、前記物理作用を受け取る受作用点と音線との距離を、前記座標Qを用いて表現するとき、前記広がり指数を基準とする判定処理により、その距離が所定の広がり基準距離より短いと判定された場合に、当該音線の経路からの寄与による受作用点での前記物理作用の伝搬特性を計算する第2の伝搬計算機能を実現させることを特徴とする。
さらに、第9の本発明では、対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーションプログラムにおいて、コンピュータに、(1)前記対象媒質が、伝搬特性の異なる媒質との境界面で規制された形状を有する場合、当該対象媒質中に設定された前記物理作用の供給源から、伝搬特性を求める受作用点までの当該境界面に沿った距離を、所定の基準距離と比較する距離比較機能と、(2)当該距離比較機能による比較結果が、前記境界面に沿った受作用点までの距離のほうが所定の基準距離より短いことを示す場合、当該境界面に平行な方向との角度が所定の放射基準角度より大きい放射角度の音線を含む1または複数の音線である第1の音線群を、所定の基準放射間隔より大きい放射間隔で生成し、反対に、前記境界面に沿った受作用点までの距離のほうが当該基準距離より長いことを示す場合には、当該境界面に平行な方向との角度が所定の放射基準角度より小さい放射角度の1または複数の音線である第2の音線群を、所定の基準放射間隔より小さい放射間隔で生成する音線生成機能と、(3)当該音線生成機能が生成した第1の音線群または第2の音線群からの寄与による受作用点での物理作用の伝搬特性を計算する第3の伝搬計算機能とを実現させることを特徴とする。
本発明によれば、伝搬シミュレーション装置、伝搬シミュレーション方法、および伝搬シミュレーションプログラムの処理の効率を高めることができる。
(A)実施形態
以下、ガウシアンビームを用いて水中における音波の伝搬特性を解析する場合を例に、本発明にかかる伝搬シミュレーション装置、伝搬シミュレーション方法、および伝搬シミュレーションプログラムの実施形態について説明する。
第1の実施形態は、損失の大きい音線については、損失が大きいことが判明した時点でその計算を打ち切ることを特徴とする。これにより、上述した問題点(1)の解消をはかるものである。
損失の大きい音線は、受波音場にほとんど寄与しないため、その計算を途中で打ち切ってもシミュレーションの結果に対する悪影響はほとんど発生しない。
(A−1)第1の実施形態の構成
本実施形態にかかる音波伝搬シミュレーションシステム1の全体構成例を図1に示す。
図1において、当該音波伝搬シミュレーションシステム1は、入力装置2と、水温/塩分計測装置3と、風速計4と、音速分布計算装置5と、海底地形計算装置6と、海面反射係数計算装置7と、海底反射係数計算装置8と、音波伝搬シミュレーション装置9と、表示装置10と、海底地形DB(海底地形データベース)11と、統計水温/塩分DB12と、海底反射損失DB13とを備えている。
このうち入力装置2は、当該音波伝搬シミュレーションシステム1を操作する操作者が操作する装置で、具体的には、マウス等のポインティングデバイスやキーボードなどによって構成されるものであってよい。
この入力装置2からシステム1内の各部へ供給される入力情報は、シミュレーション装置9の周辺装置5〜8へ供給される入力情報PIと、直接、シミュレーション装置9に供給される入力情報CIに分けることができる。入力情報PIには、例えば、計算を行う解析断面の始点と終点の緯度、経度と、シミュレーションを実施する月、周波数などが含まれる。また、入力情報CIには、音源深度、受波深度、音線の放射角の上下限値と角度間隔などが含まれる。ここで角度間隔とは、隣接する音線のあいだの角度(放射間隔)のことである。
なお、このような入力情報PI、CIは、ネットワーク経由で入力されるものであってもよいし、操作者ではなく、情報処理装置が入力するものであってもよい。
前記水温/塩分計測装置3は水中の深度に対する水温、塩分を計測する装置で、その計測結果S3は音速分布計算装置5へ供給する。
風速計4は風速を計測する装置で、その計測結果S4を海面反射係数計算装置7へ供給する装置である。風速の計測結果S4は、海面反射係数計算装置7の計算によって得られる海面の反射係数に影響を与える。風速計4から出力される計測結果S4の替わりに、擬似的な(あるいは、統計的に得られた)風速情報を入力情報PIの一部として入力装置2から与えることができるようにしてもよいことは当然である。
海面反射係数計算装置7は様々な式を用いて海面反射係数を計算することが可能であるが、例えば、次の式(16)に示すBeckmann and Spizzichinoの式を用いて計算することもできる。
Figure 2005083932
ここで、RSは海面反射係数、wは風速[kt]、fは周波数[Hz]である。
音速分布計算装置5は深度、水温、塩分から音速を計算する装置である。深度、水温、塩分のうち水温と塩分は、基本的に、前記水温/塩分計測装置3の計測結果S3として供給されるものであり、深度は、前記入力情報CIのなかの音源深度や受波深度に対応するものである。音速分布計算装置5の計算結果S5は、音波伝搬シミュレーション装置9に供給される。
水温/塩分計測装置3の計測結果S3の替わりに、統計水温/塩分DB12から水温と塩分に関する情報を得るようにしてもよい。統計水温/塩分DB12は、例えば、図4に示すような構造を有し、緯度および経度によって指定される実際の場所における月毎の統計的な水温、塩分の分布(深度方向の分布)を示すデータを格納したデータベースである。したがって音速分布計算装置5は、経度、緯度、月、深度を検索キーとして指定すれば、当該統計水温/塩分DB12から水温と塩分に関する情報を得ることができる。
当該音速分布計算装置5が音速を計算するための式としては様々なものを用いることが可能であるが、例えば、次の式(15)に示すMacKenzieの式を用いることもできる。
Figure 2005083932
ここで、cは音速[m/s]、zは深度[m]、Tは水温[°]、Sは塩分 [ppt]を示す。深度、水温、塩分は船から水中に投下または吊下して深度毎の水温、塩分を計測する水温/塩分計測装置3で計測した計測結果S3を使用し、水温/塩分計測装置3で計測可能な深度より深い部分については、統計水温/塩分DB12から検索したデータを使用することも望ましい。また、シミュレーションを実施する海域における計測が不可能な場合でも、統計水温/塩分DB12からとり出した深度、水温、塩分を用いて音速分布を計算することが可能である。
海底地形計算装置6は緯度、経度毎の水深から水平距離毎の水深を計算する装置である。この計算に際し、当該海底地形計算装置6は、前記入力情報PIのなかの解析断面の始点と終点の緯度、経度を検索キーとして海底地形DB11を検索する。
ここで、解析断面とは、通常、海面に垂直な海水の断面(鉛直方向の断面)のことで、例えば、図6に示す解析断面AN1はその一例である。また、解析断面の始点は例えば図6のST1を指し、終点はET1を指す。なお、この解析断面AN1の一部を平面的に図示したものが、例えば、上述した図2であってよい。
前記海底地形DB11には、図3に示すように、経度および緯度によって指定される場所における実際の海底の地形(水深)に関する情報が格納されており、経度および緯度を検索キーとして検索することによってその情報を検索することができるようになっている。
実際にその場所に音波を出力する送波器や、送波器から出力された音波を受信する受波器などを設置して、実測によって伝搬特性を計測することも可能であるが、本実施形態のようなシミュレーションを用いることによって、伝搬特性を取得するためのコストや時間を大幅に削減することができる。
海底地形DB11に格納されている経度および緯度の密度を高めることには限界があるので、必要ならば海底地形計算装置6は、不足する密度を補うように、海底地形DB11に格納されていない場所(経度、緯度)における水深を求める。
例えば図7の場合、海底地形DB11に格納されている水深は、経度2〜4を示す経線と、緯度2〜4を示す緯線の交わる位置の水深だけであるため、前記解析断面AN1の始点ST1と終点ET1が図示したように設定されたとすると、当該解析断面AN1上に位置する位置D33`やD34`における水深は、海底地形計算装置6が計算によって求めることになる。この計算では、前記経線と緯線の交わる位置のなかから、水深を求めようとする位置(例えば、当該位置D33`、D34`)に最も近い位置(ここではD33,D34)を特定し、その位置D33,D34の水深をそのまま、D33`、D34`の水深とするものであってもよい。あるいは、水深を求めようとする位置(例えば、D33`)の近傍に位置する経線と緯線が交わる点の水深から、線形的な予測を行うこと等によって、当該位置D33`の水深を求めるようにしてもよい。
海底反射係数計算装置8は、海底反射係数を計算する装置である。この海底反射係数計算装置8が海底反射係数を計算する場合、海底反射損失DB13の格納内容を利用する。
海底反射損失DB13には、図5に示すように、緯度、経度、周波数、海底への入射角毎の海底反射損失が格納されているため、海底反射係数計算装置8は、これらを検索キーとして海底反射損失DB13を検索することにより、海底反射損失に関する情報を得ることができる。
ここでも、上述した海底地形計算装置6で行ったものと同様、海底反射損失DB13に格納されている経度および緯度の密度を補うように、海底反射損失DB13に格納されていない場所(経度、緯度)における海底反射損失を求めるために、海底反射係数計算装置8が計算を行うことになる。
海底反射係数計算装置8が海底反射係数を計算するための式としては様々なものを用いることが可能であるが、例えば、次の式(17)〜(19)を用いて計算することもできる。例えば、解析断面ST1−ET1の中でD33の領域に含まれるL1からL2の間については、海底反射損失DB13から海底反射損失の、周波数、入射角、損失で構成されるデータセットをとり出し、該当する周波数f、入射角θの海底反射係数RBを補間によって計算するものである。入射角fは例えば、fm-1≦f≦fm、θn-1≦θ≦θnとしている。
Figure 2005083932
Figure 2005083932
Figure 2005083932
ここで、fm、θn、(fm, θn)はそれぞれ、前記海底反射損失DB13に保存された海底反射損失の周波数、入射角、損失値を示す。
前記音波伝搬シミュレーション装置9は、音波伝搬シミュレーションを実行するための計算装置である。音波伝搬シミュレーション装置9の内部には、音線発生装置9Aと、音場計算装置9Bと、加算器9Cとが含まれている。
このうち音線発生装置9Aは、基本的に音線を生成し、音線経路(伝搬距離)を求める装置であるが、音場計算装置9Bで使用される各種の情報も、この音線発生装置9Aの内部で生成される。ここで、音線経路とは、前記式(1)におけるsに対応する概念である。1つの音源(AS1)に対する音線は、例えば、図2に示すAL1とAL2のように、放射間隔αを置いて、放射状に複数が生成される。
例えば、図2の音線AL1などのように、音線自体を表示装置10に画面表示する場合には、表示装置10に対し、音線AL1に対応する情報が音線発生装置9Aから供給される。
当該表示装置10には、一例として、当該音線発生装置9Aから出力された情報S9Aに基づいて図10に示すような音線経路が画面表示される。また、例えば、図11に示すような伝搬損失量も表示され得る。
前記音線発生装置9Aにはまた、しきい値TH1が供給されている。このしきい値TH1は、後述する音線の振幅Aray-iが大きいか否かを検査する際の基準となるものである。本実施形態では、振幅Aray-iが当該しきい値TH1未満となった時点でその音線に関する計算を打ち切ることによって、音波伝搬シミュレーション装置9の処理能力を節約し、処理の効率を高める。
音場計算装置9Bは、前記音線発生装置9Aが生成した音線をもとに、各音線から生成される音場を計算する装置である。音場の計算では、前記式(1)に応じた計算が実行される。ただしこの段階ではまだ、前記Σに相当する音線ごとの加算は実行されておらず、加算前の各音線による音場が計算されるだけである。この加算を実行するのが、加算器9Cである。
加算器9Cが、前記Σに相当する音線ごとの加算を実行し、加算結果S9Cを出力する装置である。この加算では、複数の音線から生成される音場が、ある位置(s,n)において加算される。前記式(1)からも明らかなように、最終的にはこの加算結果が、その位置(s,n)における音場となる。
加算器9Cから出力される加算結果S9Cが表示装置10に供給されると、表示装置10が、その加算結果S9Cに応じた画面表示を行う。
表示装置10は、例えば、液晶表示装置などによって構成され、必要な画面表示を行う装置である。前記入力装置2とともにこの表示装置10は、前記操作者にとってのユーザインタフェースを構成する。
ただし、加算結果S9Cの画面表示などを行わず、例えば、DVD−RAMなどの記憶媒体に加算結果S9Cを書き込むだけで処理を終える場合などには、当該表示装置10は省略可能である。また、必要ならば、加算結果S9Cをネットワーク経由で送信するようにしてもよい。
以下、上記のような構成を有する本実施形態の動作について、図9のフローチャートを参照しながら、図2および図6の場合を例に説明する。
図9のフローチャートは、前記音線発生装置9Aの内部で行われる処理を示しており、P10〜P18の各ステップから構成されている。
(A−2)実施形態の動作
まず最初に、前記入力装置2から各周辺装置5〜8へ入力情報PIを供給するとともに、シミュレーション装置9へ入力情報CIを供給する。このうち入力情報CIには、上述したように、音線の放射角の上下限値(放射角範囲)が含まれている。例えば、図2の例では、音源AS1に対する音線(その1つがAL1)の放射角の上限値はα1で、下限値はα2であるから、以降の処理では、各音線がこの放射角範囲内の放射角で生成されることになる。
また、このとき入力情報CIとして音線の数を指定し、その数に対応する放射間隔を自動的に決定するようにしてもよいが、反対に、入力情報CIとして放射間隔を指定することにより、前記放射角範囲のなかに生成できる音線の数を自動的に決定するようにしてもよい。いずれにしても、ステップP11の処理を開始する時点では、生成する音線の数が決定されている。
なお、図2の場合、音線AL1とAL2の放射間隔であるδαが、この放射間隔となる。図示しない音線(AL1、AL2以外の音線)のあいだでも、当該放射間隔δαが適用される。
このときまた、前記周辺装置5〜8から各計算結果S5〜S8が音線発生装置9Aに供給される。
図9において、前記放射角範囲で放射角を決定すると(P10,P11)、その放射角に対応する1つの音線の処理が開始されることになる。例えば、放射角としてαを決定すると、図2に示す音線AL1の処理が開始される。
次に、決定された当該音線AL1に関し、音源AS1から一定距離離れた場所における当該音線AL1の位置を計算する(P12)。この計算では基本的に、音線(ここでは、AL1)の図2における水平距離rと、深度zを求めるので、音線(ここでは、AL1)の経路を求めることに等しい。
加えて、このステップP12の計算では、音線経路長(音線の経路に沿った長さ)s、伝搬時間τを計算し、さらに、前記式(7)のε、音源AS1の位置における音速c0と式(10)のq(0)、音線経路上の点における音速c(s)と式(10)のq(s)を用いて、次の式(20)で振幅Aray-iを計算する。
Figure 2005083932
ここで、添え字ray-iは、前記AL1,AL2などの各音線を識別するための番号である。
当該ステップP12につづくステップP13では、前記式(20)で求めた振幅Aray-iの損失の大小を検査する。この検査は、振幅Aray-iの絶対値が、予め定めたしきい値TH1以上であるか否かを調べる。振幅Aray-iの絶対値が、予め定めたしきい値TH1以上である場合には損失が小さく音波(音)の品質が高いので、当該ステップP13はNO側に分岐してその音線に関する処理を継続する。
振幅Aray-iの絶対値がしきい値TH1以上で、ステップP13はNO側に分岐すると、音源AS1からの距離が予め定めた最大距離に達するまでステップP14がNO側への分岐を繰り返すので、ステップP12、P13,P14,P17によって構成されるループが繰り返し処理される。
このうちステップP17では、予め定めた距離ステップを更新する。この更新のたびに、距離は長くなり、その音線(例えば、AL1)について音源AS1から遠い場所が処理される。
前記最大距離はどのように定めてもかまわないが、基本的に、前記解析断面AN1の始点ST1と終点ET1の距離に依存して決まるものである。
なお、前記しきい値TH1の具体値としては様々な値を用いることが可能であるが、例えば、10-7としてもよい。この場合、振幅が10-7より大きければ(損失が140dB未満であれば)、その音線に関する計算を継続することになる。
ただし、音源AS1からの距離が予め定めた最大距離に達すると、ステップP14はYES側に分岐して、ステップP15に進む。当該ステップP15では、前記ステップP11の処理を開始する時点で決定されていた、生成する音線の数に対応するすべての音線の処理がすでに終了しているか否かを検査する。この検査の結果、すべての音線の処理が終了していないことが判明すれば当該ステップP15はNO側に分岐して次の音線(例えば、AL2。ここで、音線の相違は放射角の相違に対応する)の処理を開始し(P18)、終了していることが判明すればYES側に分岐して音線発生装置9Aの処理を終了する(P16)。
一方、前記ステップP13の検査の結果、振幅Aray-iの絶対値がしきい値TH1未満であることが判明した場合には、損失が大きく音波(音)の品質が低いことを示すので、ステップP13はYES側に分岐して、処理を前記ステップP15に進める。
これは、音の品質が低い音線については、それ以上、音源AS1から離れた場所について計算を行っても品質はさらに低下する傾向を有し、いたずらに処理能力を浪費するだけで、最終的な伝搬特性の計算結果にはほとんど寄与しないことが予想できるから、しきい値TH1未満であることが判明した時点で、その音線(例えば、AL1)に関する計算を打ち切るためである。
したがって、振幅Aray-iの絶対値がしきい値TH1未満であることが判明した場合には、その音線は、その時点の距離が前記最大距離に達するまえであっても、処理を打ち切られることになる。
このように音線発生装置9A内の処理で得られた音線経路と他の計算値(前記振幅Aray-iなど)は、音場計算装置9Bに供給される。
音場計算装置9Bは、次の式(21)を用いて個々の音線による音場を計算する。
Figure 2005083932
この式(21)から明らかなように、この式(21)には、前記式(20)で計算した振幅Aray-iも利用されている。
次に、当該音場計算装置9Bから、当該式(21)の計算結果である各音線に関する音場が前記加算器9Cに供給され、加算器9Cは、次の式(22)にしたがって各音線に関する音場を加算する。
Figure 2005083932
この式(22)は、式の意味自体は前記式(1)に等しいが、必ずしも前記放射角範囲のなかに生成できるすべての音線の全経路が反映されているわけではない点で前記式(1)と実質的に相違する。前記ステップP13がYES側に分岐した音線に関しては、その分岐の直前までの距離に関する振幅しか、当該式(22)の音場に反映されないからである。
前記加算結果S9Cも含め、各種の情報が表示装置10に供給されると、表示装置10には、例えば、図11のような伝搬損失量を示す画面が表示され得る。図11中、許容伝搬損失量AP1は、受波器などの機器が許容する損失量のことである。この許容伝搬損失量AP1は、前記しきい値TH1(振幅が10-7以下(損失が140dB以上))よりもはるかに絶対値の小さな損失量に相当する。
音波伝搬シミュレーションシステム1の操作者は、表示装置10に表示される図11に示す画面をみることによって、例えば受波器の許容伝搬損失量AP1が85dBであるとき、水平距離60km付近で音波を受波することが可能であるということが把握できる。
また、前記音線発生装置9Aから供給される計算結果S9Aなどの情報をもとに表示装置10は例えば図10に示す音線経路の画面を表示するが、前記操作者は、この画面を見ることにより、深度200mに受波器を置いた場合に音波の到達する概略位置が楕円OB1で囲われた領域であることを把握することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、図11のように損失量がおおよそ100dB以内であるような伝搬音場において、しきい値TH1を仮に10-7と設定しても、損失が140dB以上となる音線付近の音場が無視されるだけであり、100dB程度の伝搬音場にはほとんど影響を及ぼさないことがわかる。また、損失140dB以上となる音線付近の音場計算が省略されるため、その分、計算時間の削減を図ることができる。
(A−3)実施形態の効果
以上のように、本実施形態によれば、損失の大きい音線については損失が大きいことが判明した時点でその計算を打ち切ることにより、音波伝搬シミュレーション装置(9)の処理能力を節約し、処理の効率を高めることができる。
損失の大きい音線は、受波音場にほとんど寄与しないため、その計算を途中で打ち切ってもシミュレーションの結果に対する悪影響はほとんど発生しない。
(B)第2の実施形態
以下では、本実施形態が第1の実施形態と相違する点についてのみ説明する。
本実施形態が第1の実施形態と相違するのは、音場計算装置9Bの処理内容に関する点に限られる。
(B−1)第2の実施形態の構成および動作
本実施形態の音場計算装置9Bの動作を図12のフローチャートに示す。
図12のフローチャートは、P20〜P28の各ステップから構成されている。
図12において、音場計算装置9Bは、まず最初に音線−受波器間距離を計算する(P20,P21)。
ここで、音線−受波器間距離とは、図13に示す線分RL11,RL12の長さn1,n2のことである。各線分RL11、RL12は、図13に示す音線(AL1とする)に点s1,s2で直交し、受波点RW11,RW12を通るものである。
次のステップP22では、この音線−受波器間距離が、所定値よりも大きいか否か、すなわち、所定の条件を満たすか否かを検査する。この条件は例えば次の不等式(23)で示されるものである。
Figure 2005083932
一様媒質の場合、音波の広がりは前記式(14)で与えられる分散を持つから、距離の2乗が分散の9倍より大きい場所、すなわち、この式(23)の不等式が成立する場所では、音線の中心の約1/100以下の音圧レベルとなる。
そこで、この条件を満たす場所については、ステップP22をNO側に分岐させ、音場計算を行うステップP23を処理することなくステップP24の検査を行う。
反対に前記不等式(23)が成立しない場所に関しては、ステップP22がNO側に分岐するため、ステップP23の音場計算を実行した上で処理をステップP24に進める。
ステップP24では、予め定めた最大距離か否かが検査され、最大距離に達していなければ距離ステップを更新して処理を前記ステップP21に戻し(P27)、達していれば、すべての音線(AL1はその1つ)に関する処理が終了したか否かを検査する(P25)。
ステップP25の検査の結果、残っている音線があれば、処理する音線を更新して、処理をステップP21に戻し、逐次、その処理を行う(P25,P28)。
上述した一様媒質ではなく不均質媒質の場合には、基準音速c0を音源深度の音速、水中の平均音速等を用いて実現できる。関数p(s)、q(s)を厳密に計算すると、前記式(23)は次の式(24)に置き換えることができる。
Figure 2005083932
なお、ここでは、一例として距離の2乗のしきい値が分散の9倍より大きいことを条件としたが、その他の値に設定することももちろん可能である。
(B−2)第2の実施形態の効果
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果と同等な効果を得ることができる。
加えて、本実施形態では、音線の中心から遠い点における音場計算が省略されるため、処理の効率をいっそう高めることができる。
なお、このような音場計算の省略を行っても、音線の中心に対して1/100以下(損失量が音線の中心より40dB大)となる音場が無視されるだけであり、全体の伝搬音場にはほとんど影響を及ぼさず、シミュレーションの品質を高く維持することが可能である。
(C)第3の実施形態
以下では、本実施形態が第1、第2の実施形態と相違する点についてのみ説明する。
図14に示すように、ある音源AS1から様々な放射角で放射される音波(音線)のうち、放射角が大きく海面SF1に対する俯仰角が大きい音波(例えば、AC12)は、単位水平距離あたり、海面SF1や海底BT1で反射される頻度が高いのに対し、放射角が小さく海面SF1に対する俯仰角が小さい音波(例えば、AC11)は、単位水平距離あたり、海面SF1や海底BT1で反射される頻度が低い。一般に、海面SF1や海底BT1で反射すると、そのたびに損失(前記海底反射損失DB13の格納内容などに依存して損失の値自体は異なるものの)が発生し音波の振幅が減衰する。
一方、音線は遠方へ行くほど広がる(隣接する音線間の間隔が長くなる)が、前記式(1)の音場は音線からの距離nが大きいほど誤差が大きくなるため、遠方で精度良く計算を行うためには音線の放射間隔を細かくする必要がある。したがって、近距離では音線の放射間隔を粗く放射角範囲を広くし、遠距離では放射間隔を細かく放射角範囲を狭くすることで、効率的で精度の良いシミュレーションが実現できる。
本実施形態は、これらの点に配慮して処理の効率を高めるものである。
(C−1)第3の実施形態の構成および動作
本実施形態の音波伝搬シミュレーションシステム1は、第1、第2の実施形態の音波伝搬シミュレーションシステム1と比べ、音波伝搬シミュレーション装置9の内部構成が相違する。
本実施形態の音波伝搬シミュレーション装置9の内部構成例を図15に示す。
図15において、当該音波伝搬シミュレーション装置9は、音線発生装置9A1,9A2と、音場計算装置9B1、9B2と、加算器9C1,9C2と、重み付け加算器9Dとを備えている。
このうち音線発生装置9A1,9A2は前記音線発生装置9Aに対応し、音場計算装置9B1、9B2は前記音場計算装置9Bに対応し、加算器9C1,9C2は前記加算器9Cに対応するので、その詳しい説明は省略する。
ただし音線発生装置9A1と、音場計算装置9B1と、加算器9C1の系統は主として、前記音源AS1からの水平方向の距離rが短い場所における伝搬特性のシミュレーションに寄与する系統である。したがって、当該音線発生装置9A1は、前記音線AC12なども含む広い放射角範囲(広い俯仰角範囲)αBの音線を、比較的大きな放射間隔で発生させる。
これに対し音線発生装置9A2と、音場計算装置9B2と、加算器9C2の系統は主として、前記音源AS1からの水平方向の距離rが遠い場所における伝搬特性のシミュレーションに寄与する系統である。したがって、当該音線発生装置9A2は、水平方向に近い狭い放射角範囲(狭い俯仰角範囲)αNの音線を、比較的小さな放射間隔で発生させる。このため当該音線発生装置9A2は、例えば前記音線AC11は発生させるものの、前記音線AC12などは発生させない。
前記式(1)の音場が音線からの距離nが大きいほど誤差が大きくなる点からも明らかなように、当該音線発生装置9A2が小さな放射間隔で音線を発生させることは、遠方におけるシミュレーションの精度を高めることに寄与する。しかも音線の放射角は狭い放射角範囲αNに限定しているため、遠方におけるシミュレーションにあまり寄与しない音線に関する計算は省略できて、効率が高い。
なお、通常は、図14に示すように、前記狭い放射角範囲αNは広い放射角範囲αBに完全に包含されるが、本実施形態の構成上、少なくとも、狭い放射角範囲αNと広い放射角範囲αBの一部がオーバーラップすることが望ましい。
前記重み付け加算器9Dは、図16(A)〜(C)に示すような重み付け加算を実行する部分である。
図16(A)に示すように、加算器9C1が出力する広い放射角範囲αBの音線に対応する音場は、水平距離rが長くなると急速に伝搬損失PLの値が大きくなるが、加算器9C2が出力する狭い放射角範囲αNの音線に対応する音場では、水平距離rが長くなると伝搬損失PLの値は緩やかに大きくなる。
このような各加算器9C1,9C2の出力に対し、重み付け加算器9Dは、図16(B)に示す重み関数WF1、WF2を適用して重み付け加算による音場9DSを出力する。重み関数WF1は、前記加算器9C1の出力に対して適用され、水平方向の距離rが短い範囲に高い重みを付与し、重み関数WF2は、前記加算器9C2の出力に対して適用され、水平方向の距離rが遠い範囲に高い重みを付与する。重み関数WF1とWF2は図示したように一部がオーバーラップしている。
図16(A)に示す各加算器9C1,9C2の出力に、図16(B)に示す重み関数WF1,WF2による重み付け加算を実行した結果、図16(C)に示す加算結果(音場)9DSが出力される。
(C−3)第3の実施形態の効果
本実施形態によれば、第1の実施形態とほぼ同等な効果を得ることができる。
加えて、本実施形態では、音源(AS1)からの水平方向の距離(r)が近い場所では、放射角範囲が広く大きな放射間隔の音線による音場を重視し、反対に、音源(AS1)からの水平方向の距離(r)が遠い場所では、放射角範囲が狭く小さな放射間隔の音線による音場を重視するので、高精度のシミュレーションを効率的に行うことが可能である。
(D)他の実施形態
上記第3の実施形態では、音線発生装置9A1と、音場計算装置9B1と、加算器9C1からなる系統と、音線発生装置9A2と、音場計算装置9B2と、加算器9C2からなる系統の2系統を設けたが、系統の数は、例えば、図17に示すように、3つ以上であってもよい。この場合、各系統は、音源AS1からの距離に応じて、近距離用、中距離用、遠距離用などとすることができる。
また、図18に示すように、各系統の音線発生装置を、1つの音線発生装置9ANに統合し、当該音線発生装置9ANが、近距離用、中距離用、遠距離用など、すべての放射角範囲、すべての放射間隔の音線を発生するようにしてもよい。近距離用や中距離用などの相違があっても、音線を生成する機能自体はほとんど同じであるから、音線発生装置を1つに統合することによって各種資源を節約できる可能性が高い。
さらに、第3の実施形態では、音源AS1からの距離が広い範囲で変化しても(例えば、近距離から遠距離まで変化しても)対応することのできるものであったが、特定の距離にのみ対応できる構成としてもよいことは当然である。
これは、上述した複数の系統のうち、いずれか1つの系統だけを備えるものに等しい。
例えば、遠距離にのみ対応できる音波伝搬シミュレーションシステムであれば、音線発生装置として、水平に近い狭い放射角範囲で、小さな放射間隔の音線を発生するものを用意するだけでよい。
なお、上記第2、第3の実施形態では、第1の実施形態の特徴に各実施形態の特徴を追加したものとして説明したが、本発明の構成上、このような追加は必ずしも必須ではない。第1〜第3の実施形態の特徴は、それぞれ、単独でも有効なものだからである。
また、第1〜第3の実施形態で説明しなかった組み合わせで、各実施形態の特徴を組み合わせてもよいことは当然である。例えば、第2の実施形態の特徴と第3の実施形態の特徴を組み合わせたり、第1〜第3の実施形態すべての特徴を1つの音波伝搬シミュレーションシステム上で組み合わせるようにしてもよい。
なお、上記第1〜第3の実施形態では、ガウシアンビームモデルを例に説明したが、本発明は、音線モデル(音線理論)に属する伝搬特性解析用のモデルであれば、ガウシアンビームモデル以外にも適用することが可能である。
また、上記第1〜第3の実施形態では、海水中を音波が伝搬するケースのシミュレーションを例に取ったが、伝搬用の媒質は必ずしも海水である必要はない。また、媒質中を伝搬する物理作用は必ずしも音波である必要はない。
以上の説明では主としてハードウエア的に本発明を実現したが、本発明はソフトウエア的に実現することも可能である。
第1の実施形態にかかる音波伝搬シミュレーションシステムの全体構成例を示す概略図である。 ガウシアンビームの概略説明図である。 第1〜第3の実施形態で使用する海底地形DBの構成例を示す概略図である。 第1〜第3の実施形態で使用する統計水温/塩分DBの構成例を示す概略図である。 第1〜第3の実施形態で使用する海底反射損失DBの構成例を示す概略図である。 解析断面の概略説明図である。 第1〜第3の実施形態の動作説明図である。 第1〜第3の実施形態の動作説明図である。 第1の実施形態の動作例を示すフローチャートである。 第1〜第3の実施形態における画面表示例を示す概略図である。 第1〜第3の実施形態における画面表示例を示す概略図である。 第2の実施形態の動作例を示すフローチャートである。 第2の実施形態の動作説明図である。 第3の実施形態の動作説明図である。 第3の実施形態にかかる音波伝搬シミュレーションシステムで使用する音波伝搬シミュレーション装置の概略図である。 第3の実施形態の動作説明図である。 第3の実施形態にかかる音波伝搬シミュレーションシステムで使用する音波伝搬シミュレーション装置の変形例を示す概略図である。 第3の実施形態にかかる音波伝搬シミュレーションシステムで使用する音波伝搬シミュレーション装置の変形例を示す概略図である。
符号の説明
1…音波伝搬シミュレーションシステム、2…入力装置、3…水温/塩分計測装置、4…風速計、5…音速分布計算装置、6…海底地形計算装置、7…海面反射係数計算装置、8…海底反射係数計算装置、9…音波伝搬シミュレーション装置、10…表示装置、11…海底地形DB(海底地形データベース)、12…統計水温/塩分DB、13…海底反射損失DB、AL1、AL2…音線。

Claims (11)

  1. 対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション装置において、
    設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線につき、当該供給源からの距離が近い座標から順番に、前記物理作用の少なくとも振幅の計算を含む所定の音線経路計算を実行する音線経路計算部と、
    当該振幅の値を、所定の基準振幅値と比較し、当該振幅の値が基準振幅値よりも小さくなった場合には、その時点で、当該音線に関する音線経路計算を中止させる計算制御部と、
    前記音線経路計算部が実行した音線経路計算の結果に基づき、前記物理作用の伝搬特性を計算する第1の伝搬計算部とを備えたことを特徴とする伝搬シミュレーション装置。
  2. 対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション装置において、
    設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線の放射間隔をD、前記対象媒質における前記物理作用の基準となる伝搬速度をV、波としての前記物理作用の角周波数をω、前記音線に沿った座標をP、この座標Pに直交する座標をQ、座標(P,Q)=(P,0)の点における前記物理作用の伝搬速度をV(P)、座標(P,Q)の点における前記物理作用の伝搬速度V(P,Q)の前記Qに関する2階微分をVQQとし、
    前記座標Pの関数B(P)とC(P)のあいだに、
    dB/dP=V(P)C(P)
    および
    dC/dP=−VQQ×B(P)/V(P)
    の関係が成立する場合、
    前記物理作用の広がりの2乗にあたる広がり指数を、
    +(2V /ω
    または、
    −1/Im[ω1{B(P)/C(P)}]
    をもとに計算し、
    前記物理作用を受け取る受作用点と音線との距離を、前記座標Qを用いて表現するとき、前記広がり指数を基準とする判定処理により、その距離が所定の広がり基準距離より短いと判定された場合に、当該音線の経路からの寄与による受作用点での前記物理作用の伝搬特性を計算する第2の伝搬計算部を備えたことを特徴とする伝搬シミュレーション装置。
  3. 対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション装置において、
    前記対象媒質が、伝搬特性の異なる媒質との境界面で規制された形状を有する場合、当該対象媒質中に設定された前記物理作用の供給源から、伝搬特性を求める受作用点までの当該境界面に沿った距離を、所定の基準距離と比較する距離比較部と、
    当該距離比較部による比較結果が、前記境界面に沿った受作用点までの距離のほうが所定の基準距離より短いことを示す場合、当該境界面に平行な方向との角度が所定の放射基準角度より大きい放射角度の音線を含む1または複数の音線である第1の音線群を、所定の基準放射間隔より大きい放射間隔で生成し、反対に、前記境界面に沿った受作用点までの距離のほうが当該基準距離より長いことを示す場合には、当該境界面に平行な方向との角度が所定の放射基準角度より小さい放射角度の1または複数の音線である第2の音線群を、所定の基準放射間隔より小さい放射間隔で生成する音線生成部と、
    当該音線生成部が生成した第1の音線群または第2の音線群からの寄与による受作用点での物理作用の伝搬特性を計算する第3の伝搬計算部を備えたことを特徴とする伝搬シミュレーション装置。
  4. 請求項3の伝搬シミュレーション装置において、
    前記第3の伝搬計算部は、
    前記境界面に沿った供給源からの距離が、前記基準距離より短い範囲では、前記第1の音線群からの寄与による物理作用の伝搬特性が大きくなり、反対に、前記基準距離より長い範囲では、前記第2の音線群からの寄与による物理作用の伝搬特性が大きくなるように重み付けを行った上で、第1、第2の音線群からの寄与による伝搬特性を加算する重み付け加算部を備えたことを特徴とする伝搬シミュレーション装置。
  5. 対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション方法において、
    音線経路計算部が、設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線につき、当該供給源からの距離が近い座標から順番に、前記物理作用の少なくとも振幅の計算を含む所定の音線経路計算を実行し、
    計算制御部が、当該振幅の値を、所定の基準振幅値と比較し、当該振幅の値が基準振幅値よりも小さくなった場合には、その時点で、当該音線に関する音線経路計算を中止させ、
    前記音線経路計算部が実行した音線経路計算の結果に基づき、第1の伝搬計算部が、前記物理作用の伝搬特性を計算することを特徴とする伝搬シミュレーション方法。
  6. 対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション方法において、
    設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線の放射間隔をD、前記対象媒質における前記物理作用の基準となる伝搬速度をV、波としての前記物理作用の角周波数をω、前記音線に沿った座標をP、この座標Pに直交する座標をQ、座標(P,Q)=(P,0)の点における前記物理作用の伝搬速度をV(P)、座標(P,Q)の点における前記物理作用の伝搬速度V(P,Q)の前記Qに関する2階微分をVQQとし、
    前記座標Pの関数B(P)とC(P)のあいだに、
    dB/dP=V(P)C(P)
    および
    dC/dP=−VQQ×B(P)/V(P)
    の関係が成立する場合、
    第2の伝搬計算部が、前記物理作用の広がりの2乗にあたる広がり指数を、
    +(2V /ω
    または、
    −1/Im[ω1{B(P)/C(P)}]
    をもとに計算し、
    前記物理作用を受け取る受作用点と音線との距離を、前記座標Qを用いて表現するとき、前記広がり指数を基準とする判定処理により、その距離が所定の広がり基準距離より短いと判定された場合に、当該音線の経路からの寄与による受作用点での前記物理作用の伝搬特性を計算することを特徴とする伝搬シミュレーション方法。
  7. 対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーション方法において、
    前記対象媒質が、伝搬特性の異なる媒質との境界面で規制された形状を有する場合、距離比較部は、当該対象媒質中に設定された前記物理作用の供給源から、伝搬特性を求める受作用点までの当該境界面に沿った距離を、所定の基準距離と比較し、
    音線生成部は、当該距離比較部による比較結果が、前記境界面に沿った受作用点までの距離のほうが所定の基準距離より短いことを示す場合、当該境界面に平行な方向との角度が所定の放射基準角度より大きい放射角度の音線を含む1または複数の音線である第1の音線群を、所定の基準放射間隔より大きい放射間隔で生成し、反対に、前記境界面に沿った受作用点までの距離のほうが当該基準距離より長いことを示す場合には、当該境界面に平行な方向との角度が所定の放射基準角度より小さい放射角度の1または複数の音線である第2の音線群を、所定の基準放射間隔より小さい放射間隔で生成し、
    第3の伝搬計算部は、当該音線生成部が生成した第1の音線群または第2の音線群からの寄与による受作用点での物理作用の伝搬特性を計算することを特徴とする伝搬シミュレーション方法。
  8. 請求項7の伝搬シミュレーション方法において、
    前記第3の伝搬計算部内の重み付け加算部は、
    前記境界面に沿った供給源からの距離が、前記基準距離より短い範囲では、前記第1の音線群からの寄与による物理作用の伝搬特性が大きくなり、反対に、前記基準距離より長い範囲では、前記第2の音線群からの寄与による物理作用の伝搬特性が大きくなるように重み付けを行った上で、第1、第2の音線群からの寄与による伝搬特性を加算することを特徴とする伝搬シミュレーション方法。
  9. 対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーションプログラムにおいて、コンピュータに、
    設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線につき、当該供給源からの距離が近い座標から順番に、前記物理作用の少なくとも振幅の計算を含む所定の音線経路計算を実行する音線経路計算機能と、
    当該振幅の値を、所定の基準振幅値と比較し、当該振幅の値が基準振幅値よりも小さくなった場合には、その時点で、当該音線に関する音線経路計算を中止させる計算制御機能と、
    前記音線経路計算機能が実行した音線経路計算の結果に基づき、前記物理作用の伝搬特性を計算する第1の伝搬計算機能とを実現させることを特徴とする伝搬シミュレーションプログラム。
  10. 対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーションプログラムにおいて、
    設定された前記物理作用の供給源を始点とする各音線の放射間隔をD、前記対象媒質における前記物理作用の基準となる伝搬速度をV、波としての前記物理作用の角周波数をω、前記音線に沿った座標をP、この座標Pに直交する座標をQ、座標(P,Q)=(P,0)の点における前記物理作用の伝搬速度をV(P)、座標(P,Q)の点における前記物理作用の伝搬速度V(P,Q)の前記Qに関する2階微分をVQQとし、
    前記座標Pの関数B(P)とC(P)のあいだに、
    dB/dP=V(P)C(P)
    および
    dC/dP=−VQQ×B(P)/V(P)
    の関係が成立する場合、コンピュータに、
    前記物理作用の広がりの2乗にあたる広がり指数を、
    +(2V /ω
    または、
    −1/Im[ω1{B(P)/C(P)}]
    をもとに計算し、
    前記物理作用を受け取る受作用点と音線との距離を、前記座標Qを用いて表現するとき、前記広がり指数を基準とする判定処理により、その距離が所定の広がり基準距離より短いと判定された場合に、当該音線の経路からの寄与による受作用点での前記物理作用の伝搬特性を計算する第2の伝搬計算機能を実現させることを特徴とする伝搬シミュレーションプログラム。
  11. 対象媒質中を所定の物理作用が伝搬する際の伝搬特性を、音線理論を用いて計算する伝搬シミュレーションプログラムにおいて、コンピュータに、
    前記対象媒質が、伝搬特性の異なる媒質との境界面で規制された形状を有する場合、当該対象媒質中に設定された前記物理作用の供給源から、伝搬特性を求める受作用点までの当該境界面に沿った距離を、所定の基準距離と比較する距離比較機能と、
    当該距離比較機能による比較結果が、前記境界面に沿った受作用点までの距離のほうが所定の基準距離より短いことを示す場合、当該境界面に平行な方向との角度が所定の放射基準角度より大きい放射角度の音線を含む1または複数の音線である第1の音線群を、所定の基準放射間隔より大きい放射間隔で生成し、反対に、前記境界面に沿った受作用点までの距離のほうが当該基準距離より長いことを示す場合には、当該境界面に平行な方向との角度が所定の放射基準角度より小さい放射角度の1または複数の音線である第2の音線群を、所定の基準放射間隔より小さい放射間隔で生成する音線生成機能と、
    当該音線生成機能が生成した第1の音線群または第2の音線群からの寄与による受作用点での物理作用の伝搬特性を計算する第3の伝搬計算機能とを実現させることを特徴とする伝搬シミュレーションプログラム。
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