JP2005083873A - バイオセンサ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 アモルファス炭素および結晶が一方向に配向した結晶性炭素とを含む炭素基材の端面に存在する多数のOH基などの反応性残基を利用して、塩化シアヌルなどの結合分子を介して、または吸着により直接、蛋白質または電子メディエータなどを固定化する。
【選択図】 図1
Description
(実施例1)
(実施例2)
(実施例3)
3−1 チロシナーゼ固定化炭素基材の作製
A:PFCへのチロシナーゼの固定化
PFC電極の前処置(前処理1)
実施例1で得られた直径3mm、長さ50mmの炭素基材(PFC電極棒)の端面と両端面から長さ10mmの範囲の側面をエメリーペーパー(600番)で研磨し蒸留水中で5分間超音波洗浄し、100℃のドライオーブンで5分間乾燥させた後、以下に示す5種類の方法でチロシナーゼを固定化した。
1)塩化シアヌル法
前処理1を行ったPFC棒をトルエン中で10分間超音波洗浄した。次に50mMの塩化シアヌル/トルエン溶液に所定時間、室温にて浸漬させることによりPFCエッジ面のOH基を活性化した。再びトルエン中で超音波洗浄を2分間行った後、窒素気流下室温で10分間乾燥させた。このPFC棒を5mlのチロシナーゼ(ポリフェノールオキシダーゼ、EC.1.14.18.1,>2500units/mg、マッシュルーム由来)水溶液(0.25mg/ml蒸留水)に室温にて24時間浸漬することによりチロシナーゼ固定化PFCを得た。固定化の概略図を図1に示す。この方法は酵素(蛋白質)表面のリジン残基のε−アミノ基あるいは蛋白質表面に存在する糖鎖の水酸基を介して蛋白質を化学修飾するものである。
2)APTES−グルタルアルデヒド法(APTES−GA法−1)
前処理1を行ったPFC棒をγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)原液5mlに室温で1h浸漬させることによりPFC表面をアミノシリル化した。トルエンで5分間超音波洗浄し吸着種を除いた。窒素気流下で10分間乾燥させた後、1%グルタルアルデヒド(GA)水溶液に所定時間浸した。蒸留水で洗浄し吸着種を除去した後、5mlのチロシナーゼ水溶液(0.25mg/ml蒸留水)に室温にて24時間浸漬することによりチロシナーゼ固定化PFCを得た。固定化の概略図を図2に示す。この方法は酵素(蛋白質)表面のリジン残基のε−アミノ基および電極表面に修飾したAPTES末端のアミノ基同士をGAにより架橋することにより蛋白質を化学修飾するものである。
3)カルボジイミド脱水縮合法(WSC脱水縮合法)
前処理1を行ったPFC棒を15%の熱硝酸溶液で15分間処理し電極表面官能基を酸化しCOOH密度を増大させた。50mMの水溶性カルボジイミド(WSC)[正式名称:1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸]水溶液に所定時間浸漬し(o−アシルイソ尿素中間体)を形成させた。WSC活性化PFCを蒸留水で洗浄した後、5mlのチロシナーゼ水溶液(0.25mg/ml蒸留水)に室温にて24時間浸漬することによりチロシナーゼ固定化PFCを得た。固定化の概略図を図3に示す。この方法は酵素(蛋白質)表面のリジン残基のε−アミノ基と電極表面のCOOH基から脱水縮合剤(WSC)によりアミド結合を形成させ蛋白質を化学修飾するものである。
4)塩化チオニル法
前処理1を行ったPFC棒を15%の熱硝酸溶液で15分間処理し電極表面官能基を酸化しCOOH密度を増大させた。50mMの塩化チオニル/トルエン溶液に24時間浸漬しCOOH基を修飾した。トルエンで5分間超音波洗浄し吸着種を除いた後、窒素気流下で10分間乾燥させた。5mlのチロシナーゼ0.25mg/ml水溶液(蒸留水)に室温にて24時間浸漬することによりチロシナーゼ固定化PFCを得た。固定化の概略図を図4に示す。この方法は炭素表面のCOOHから酸塩化物を形成させた後、酵素(蛋白質)表面のリジン残基と反応させ、アミド結合を介して蛋白質を化学修飾するものである。
5)吸着法
前処理1を行ったPFC棒を5mlのチロシナーゼ水溶液(0.25mg/ml蒸留水)に室温にて24時間浸漬することによりチロシナーゼ吸着PFCを得た。
B:ガラス状炭素(GC)へのチロシナーゼの固定化
ガラス状炭素(GC)電極(直径3mm)(ビー.エー.エス(株)製 CV用GCEグラッシーカーボン電極)は炭素の周りの絶縁性高分子をエッジングして炭素部分を2mm露出させたものを用いた。定法に従いGC端面をアルミナ研磨し蒸留水中で超音波処理した後、窒素気流下で乾燥させた。
1−2 カテコールの電気化学増幅検出
それぞれの固定化法の電気化学応答を比較する前に、測定に先立ち図5に示すようにPFC棒の端面と側面の上下10mmを残して残りの側面(30mm)をパラフィルムで覆い絶縁した。
2−1 グルコースオキシダーゼ固定化炭素基材の作製
A:PFCへのグルコースオキシダーゼの固定化(APTES−GA法−2)
前処理1を行ったPFC棒をγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)原液5mlに室温で1h浸漬させることによりPFC表面をアミノシリル化した。トルエンで5分間超音波洗浄し吸着種を除いた後、窒素気流下で10分間乾燥させた。APTES処理したPFC端面を上に向けて5μlのグルコースオキシダーゼ(GOD;EC1.1.3.4,from aspergillus niger,>180units/mg)溶液(10mg/ml)と5μlの1%グルタルアルデヒド(GA)を混合した溶液(計10μl)をPFC端面に載せ、500mlのビーカーをかぶせ室温で8h放置した。これによりPFC表面のアミノ基とGODおよびGOD同士を架橋させPFC表面に酵素層を形成させた。図12に表面の模式図を示す。図2のAPTES−GA法−1と異なる点は、酵素とGA混合液をAPTES処理したPFC上で架橋させることにより、酵素同士の架橋反応が生じ多層の酵素層が電極上に形成される点である。得られた酵素固定化PFC電極を注意深く純水で洗浄した後、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)に浸し4℃で保存した。
B:GCへのグルコースオキシダーゼの固定化(APTES−GA法−2)
GC電極(直径3mm)は炭素の周りの絶縁性高分子をエッジングして炭素部分を2mm露出させたものを用いた。定法に従いGC端面をアルミナ研磨し蒸留水中で超音波処理した後、窒素気流下で乾燥させた。
2−2 電気化学測定
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定は図7の電気化学セルで行った。作用極12には炭素電極(PFCおよびGC)を用いた。図6に示すようにPFC、GC共に炭素端面(直径3mm)のみを露出させ、それ以外の炭素側面はPFC棒の上部10mm(端子として利用)を除きパラフィルムで絶縁した。電解液には1mMのハイドロキノン(HQ)を含むpH6.0の0.1Mリン酸緩衝液10mlを用いた。窒素ガスを20分間電解液に吹き込み電解液中の溶存酸素を完全に除去した。CV測定条件は下記の通りである。
図13には表面状態の異なるPFC電極のサイクリックボルタモグラムを示す。AおよびBは未処理(研磨のみ)およびAPTES処理後のPFC電極のボルタモグラムである。ベンゾキノン/HQの可逆な酸化還元波が0.1V近傍に観察される。APTES処理により若干ピーク電流値が減少するもののピーク電位は変化していないことからAPTES処理後もPFC電極本来の良好な電子移動特性が保たれていることがわかる。一方、CはAPTES−GA−2法により酵素多重層を形成させた後のボルタモグラムである。Bに比べピーク電流がやや減少しピーク間電位差も広がり酸化還元波がやや不可逆な形状に変化している。図12に示すように、GODの蛋白質多重層が電極表面に形成されることによりヒドロキノンの電極表面への拡散が抑制されるためと考えられる。DはC測定後電解液にグルコース12mMを添加し10秒間溶液を攪拌した後に攪拌を止め測定したサイクリックボルタモグラムである。ベンゾキノン→HQに由来する還元波がほぼ完全に消失し、HQ→ベンゾキノンに伴う酸化波が著しく増大した。これは下記に示すHQ/ベンゾキノンを電子メディエーターとするグルコースオキシダーゼ反応が電極表面で生じたことを示している。すなわち電極反応で生じた1,4−ベンゾキノン(式1)が、グルコースオキシダーゼ反応で生じた還元型酵素(GOD−FADH2)(式2)と反応して酵素を酸化再生させ自身はHQに変化し(式3)、生じたHQが再び1,4−ベンゾキノンに酸化されることでこの酵素触媒サイクルが繰り返されることになる。
グルコース+GOD−FAD(酵素酸化型)→
グルコノラクトン+GOD−FADH2(酵素還元型) (2)
GOD−FADH2(酵素還元型)+1,4−ベンゾキノン→
GOD−FAD(酵素酸化型)+HQ (3)
次にこの結果に基づき、+0.3Vで定電位アンペロメトリーを行った。結果を図14に示す。電解液0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)10mlをマグネティックスターラーで一定速度で攪拌し電位を印加した後バックグランド電流が一定になったところで0.2mMのHQを添加すると式1に基づく酸化電流が生じた。定常値に達したところで1mMのグルコースを10回添加すると階段状の電流応答が得られた。応答時間は30秒から2分である。実施例3に比べ比較的長時間を要する理由は、図11に示すようにAPTES−GA法−2では酵素同士の架橋によりAPTES層の上部に酵素多重層が形成されるため、実施例3の各方法に比べ酵素膜層が厚くなっているためである。グルコースに対する電流応答はHQ濃度に依存し、概してHQ濃度が高くなるほどグルコース応答も増大した。図15には1mMのHQを電子メディエーターとするグルコースの検量線をPFCとGCで比較して示す。この測定条件ではGCではほとんど応答を得ることができなかった。GOD固定化GCのCV測定より、HQ→ベンゾキノンへの酸化が+0.3Vよりも高電位値(ピーク電位:+0.5V)にシフトしていること、APTESはエッジ面のOHに対して結合するためPFCとGCのエッジ官能基の違いにより酵素修飾量が異なることなどが要因として考えられる。以上の結果は、エッジ官能基を高密度に有するPFCが化学修飾による高機能バイオセンサの作製に極めて有利であることを裏付ける結果である。
(実施例5)
1)電子メディエーター吸着炭素基材の作製
PFC端面(直径3mm)をエメリーペーパー(2000番)で研磨した後、純水中で5分間超音波洗浄した。100℃のドライオーブンで5分間乾燥させた後、図16に示す6種類の電子メディエーターの2mMエタノール溶液5μlをPFC電極(直径3mm)の端面に載せ、500mlビーカーをかぶせ室温で6h乾燥させた後、蒸留水で洗浄した。GC電極を定法に従ってアルミナ研磨し、蒸留水中で超音波洗浄し室温で風乾した後、PFCと同様に処理して電子メディエーター吸着GC電極を作製した。
2)電気化学測定
2−1 電子メディエーター吸着PFCの電気化学特性
電気化学測定は図7に示す1室型セルで行った。電解液には0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)10mlを用い、作製した電子メディエーター吸着電極を作用極、対極には白金線、参照極にはAg/AgCl電極を用いた。測定の前に窒素ガスを20分間バブリングして電解液中の溶存酸素を除去した。図17にDCPIP吸着電極およびMPMS吸着電極についてPFCとGCのサイクリックボルタモグラムを比較して示す。
電位スキャン速度:20mV/s
MPMS 初期電位:−0.5V 折り返し電位:+0.1V
電位スキャン速度:20mV/s
DCPIP、MPMSいずれもPFCで明らかに可逆な電子移動反応に基づく酸化還元波が得られたのに対し、GCでははっきりとした酸化還元波は得られなかった。これらの酸化還元波は電子スキャン50回繰り返しても減衰せず、安定に固定化されていることがわかった。グラファイト結晶のベーサル面にメチレンブルーなどの多環芳香族化合物が吸着することが既に報告されている。PFCはグラファイトエッジの表面密度が高くそれが同一面に整列していることなどがこれらの色素(電子メディエーター)の強い吸着の要因と考えられる。図18には電子スキャン速度を変えたときのチオニン吸着PFC電極のサイクリックボルタモグラムを示し、図19にはピーク電流とスキャン速度の関係を示す。ピーク電流は電位スキャン速度に比例して増大し、この応答が吸着電気活性種のものであることを支持している。表2に6種の電子メディエーター吸着PFCの電気化学特性をまとめて示す。ピーク間電位差はメルドラブルーを除き概ね26mVから42mV程度で表面密度は1.08(×10-10)mol/cm2〜2.99(×10-10)mol/cm2であった。
NADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド還元型)は300種を超えるデヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)の基質型補酵素であり、迅速簡便なNADH定量法はデヒドロゲナーゼ基質測定の観点から食品分析・医療計測の分野で重要なテーマである。一般にNADHを電解酸化する場合には比較的高い印加電圧を必要とする。例えばpH7のリン酸緩衝液中において100mV/sで電位wをスキャンさせた場合、NADHの酸化ピーク電位はGCでは+0.5V(vs.Ag/AgCl)、PFCでは+0.3V(vs.Ag/AgCl)程度である。この電位領域では実試料に存在する被酸化性物質も酸化されるため、これらの妨害が問題となる。そこで各種電子メディエーターを電解触媒として用いることにより検出電位を低電位側にシフトさせる試みが行われている。今回作製した電子メディエーター吸着PFC電極を用いてNADHの電解触媒応答を測定した。
MPMS(還元型) → MPMS(酸化型)+2H+ + 2e- (5)
同一の電解セルを用いて溶液を一定速度で攪拌し、−0.1Vで定電位アンペロメトリーを行い、NADHの検量線を作製した。NADH標準溶液の所定量を電解液に添加するとほぼ1分程度で定常値に達した。図21に示すように検量線はNADH濃度10μMから120μMの範囲で直線性を示し、5nAを出力限界として見積もった検出限界は1.22μMであった。さらに実施例3および実施例4の方法を組み合わせて電子メディエーターと共にデヒドロゲナーゼを固定化すれば、各種デヒドロゲナーゼ基質計測用センサの作製も可能である。
Claims (5)
- 液不透過性を有する炭素基材と、
該炭素基材に、該炭素基材の表面に存在する反応性残基を介し、金属層または高分子層を介さずに固定された生体由来分子または生体分子とを具備するバイオセンサ。 - 前記炭素基材は、アモルファス炭素および該アモルファス炭素中に分散し結晶が実質的に一方向に配向した結晶性炭素とを含む請求項1記載のバイオセンサ。
- 前記生体由来分子または生体分子は、前記炭素基材表面の反応性残基に化学的に結合した低分子量の結合分子を介して炭素基材に固定される請求項1または2記載のバイオセンサ。
- 前記生体由来分子または生体分子は、前記炭素基材に直接固定される請求項1または2記載のバイオセンサ。
- 前記生体由来分子または生体分子は、酵素及び/又は該酵素の電極反応を促進する電子移動メディエータである請求項1〜5のいずれか1項記載のバイオセンサ。
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