JP2005071653A - 非水二次電池用正極活物質及びその製造方法並びにこれを用いた非水二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】非水二次電池の電池容量を殆ど低下させずに、正極活物質と電解液との反応性のみを低下させる。また高価な耐熱性を有する材料を用いずにリフロー炉による自動はんだ付けを可能とする。
【解決手段】非水二次電池10の正極活物質として、リチウム、マンガン及び酸素からなるリチウムマンガン酸化物が用いられる。このリチウムマンガン酸化物の結晶構造はスピネル構造であり、リチウムとマンガンとのモル比Li/Mnは0.5以上であって0.7未満であり、更にLi4Mn5O12で表される。また非水二次電池10の正極活物質は、電解液と接触させた状態で230〜280℃に10〜60秒間熱処理したときに発火しないように構成される。
【選択図】 図1
【解決手段】非水二次電池10の正極活物質として、リチウム、マンガン及び酸素からなるリチウムマンガン酸化物が用いられる。このリチウムマンガン酸化物の結晶構造はスピネル構造であり、リチウムとマンガンとのモル比Li/Mnは0.5以上であって0.7未満であり、更にLi4Mn5O12で表される。また非水二次電池10の正極活物質は、電解液と接触させた状態で230〜280℃に10〜60秒間熱処理したときに発火しないように構成される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池等の非水二次電池に用いられる正極活物質及びその製造方法と、この正極活物質を用いた非水二次電池に関するものである。なお、この非水二次電池は電圧が数Vであるボタン型電池(コイン型電池)に適する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の二次電池として、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、溶媒及び支持塩を含む電解液と、セパレータと、ガスケット等の部材からなる有機電解液二次電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。この有機電解液二次電池では、正極活物質としてマンガン酸リチウム、負極にリチウムアルミ合金が用いられる。また電解液の溶媒として常圧での沸点が250℃以上のスルホランを主成分とする溶媒系が用いられ、電解液の支持塩としてフッ素を含有するトリフルオロメタンスルホン酸リチウム等が用いられる。更にセパレータ及びガスケットとして熱変形温度が250℃以上のポリフェニレンスルフィド等の樹脂(ガラス繊維等のフィラー添加)が用いられる。
【0003】
このように構成された有機電解液二次電池では、電解液、セパレータ及びガスケットに高い耐熱性を有する材料をそれぞれ用いたので、リフロー炉による自動はんだ付けを行っても、高い耐熱性を有しており、従って二次電池の急激な膨張が生じずに、有機電解液二次電池を効率良く製造できるようになっている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−40525号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に示された有機電解液二次電池では、リフロー炉による自動はんだ付けを行うときに、電解液とリチウムアルミ合金とが反応して、二次電池の内部が高圧になるため、ガスケットを大型化してガスケットの機械的強度を確保しなければならない。このため、上記特許文献1に示された有機電解液二次電池では、はんだこてを用いてはんだ付けを行う二次電池と比較して、ガスケットの占める割合が大きくなるので、電池容量が低下してしまう不具合があった。
本発明の目的は、電池容量を殆ど低下させずに、リフロー炉による自動はんだ付け時の正極活物質と電解液の反応性のみを低減することができる、非水二次電池用正極活物質及びその製造方法並びにこれを用いた非水二次電池を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、リチウム、マンガン及び酸素からなるリチウムマンガン酸化物を用いた非水二次電池用正極活物質の改良である。
その特徴ある構成は、リチウムマンガン酸化物の結晶構造がスピネル構造であり、リチウムとマンガンとのモル比Li/Mnが0.5以上であって0.7未満であり、更にLi4Mn5O12で表されるところにある。
この請求項1に記載された非水二次電池用正極活物質では、リチウムとマンガンとのモル比Li/Mnを0.5以上であって0.7未満の範囲にずらすことにより、好ましくはリチウムマンガン酸化物の粒子内部に存在する未反応金属Liが所定の濃度のまま、リチウムマンガン酸化物の粒子表面に存在する未反応金属Liのみを低濃度にすることにより、正極活物質が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、正極活物質が電解液と反応しない。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に電解液と接触させた状態で230〜280℃に10〜60秒間熱処理したときに発火しないことを特徴とする。
この請求項2に記載された非水二次電池用正極活物質では、この正極活物質を電解液と接触させた状態でリフロー炉による自動はんだ付けを行っても、即ち二次電池をリフロー炉に収容して230〜280℃に10〜60秒間保持しても、正極活物質は電解液と反応しない。
【0008】
請求項3に係る発明は、マンガン化合物とリチウム化合物を混合する工程と、混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPaの圧力で350〜600℃に加熱して3〜10時間保持して焼成し、平均粒径5〜50μmの正極活物質粉末を作製する工程と、正極活物質粉末を規定度0.0001N〜0.1Nの硫酸、塩酸又は硝酸に10分間〜1秒間接触させる工程とを含む非水二次電池用正極材料の製造方法である。
この請求項3に記載された非水二次電池用正極材料の製造方法では、正極活物質粉末の各粒子表面に存在する未反応金属Liを硫酸、塩酸又は硝酸により溶かして除去することにより、リチウムマンガン酸化物粉末の各粒子に存在するリチウムやマンガンが所定の濃度のまま、リチウムマンガン酸化物粉末の各粒子表面に存在する未反応金属Liが低濃度となるため、リフロー炉による自動はんだ付け時に、正極活物質が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、正極活物質は電解液と反応しない。
【0009】
またマンガン化合物は一酸化マンガン、二酸化マンガン、三酸化二マンガン、四酸化三マンガン、炭酸マンガン又は硝酸マンガンであることが好ましい。
更に上記請求項1又は2に記載された正極活物質を用いて、或いは請求項3又は4に記載された方法で製造された正極活物質を用いて、非水二次電池を製造することにより、リフロー炉による自動はんだ付け時に正極活物質が電解液と反応せず、二次電池内部の圧力が上昇しないので、ガスケットを大型化しなくても機械的強度を確保できる。また製造直後に電池が放電されるため、正極活物質粉末の各粒子表面にLiが取込まれ、各粒子表面におけるリチウムとマンガンとのモル比Li/Mnが増大する。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、非水二次電池10は、正極11と、負極12と、正極11及び負極12間に介装されたセパレータ13とを備える。上記正極11、負極12及びセパレータ13は正極ケース14a及び負極ケース14bを有する電池ケース14内に収容される。また正極11は正極集電板16を介して正極ケース14aに電気的に接続され、負極12は負極集電板17を介して負極ケース14bに電気的に接続され、正極ケース14aの周縁は負極ケース14bの周縁に対して電気絶縁性を有するガスケット18により電気的に絶縁される。更に正極ケース14aの周縁はガスケット18を介して負極ケース14bの周縁にかしめられ、これにより電池ケース14の内部が封止される。
【0011】
正極11は正極活物質と導電剤と結着剤を含む。正極活物質としてはリチウム、マンガン及び酸素からなるリチウムマンガン酸化物が用いられ、導電剤としてはアセチレンブラック、カーボン、グラファイト等の炭素材料系の導電剤が用いられ、結着剤としてはポリビニリデンフルオライド(PVDF)、N−メチルピロリドン等が用いられる。また負極12は負極活物質と結着剤を含む。負極活物質としてはカーボン、グラファイト等のが用いられ、結着剤としてはポリビニリデンフルオライド(PVDF)、N−メチルピロリドン等が用いられる。
【0012】
セパレータ13はポリフェニレンスルフィド等の不織布により微多孔膜に形成され、このセパレータには有機溶媒に溶質としてリチウム塩を溶解した非水電解液が含浸される。有機溶媒としてはプロピレンカーボネート(PC)やγ−ブチロラクトン(GBL)等が挙げられ、リチウム塩としてはLiBF4、LiClO4等が挙げられる。また正極集電板16はアルミ箔により形成され、負極集電板17は銅箔により形成される。更にガスケットはポリプロピレンやポリフェニレンスルフィド等により形成される。
【0013】
上記正極活物質として用いられるリチウムマンガン酸化物の結晶構造はスピネル構造である。リチウムとマンガンとのモル比Li/Mnは0.5以上であって0.7未満、好ましくは0.6以上であって0.7未満である。また上記リチウムマンガン酸化物はLi4Mn5O12で表される。ここで、モル比Li/Mnを0.5以上であって0.7未満の範囲に限定したのは、0.5未満ではLi欠損量が多くなり充放電に寄与するリチウムイオンが不足するため十分な放電容量が得られず、0.7以上では電解液と正極活物質の反応を十分に抑止できないからである。
【0014】
一方、上記正極活物質は、電解液と接触させた状態で230〜280℃、好ましくは250〜280℃に、10〜60秒間、好ましくは30〜60秒間熱処理したときに発火しないように構成される。ここで、正極活物質を電解液と接触させた状態で発火しない温度を230〜280℃の範囲に限定したのは、二次電池をリフロー炉に入れて自動はんだ付けを行うときに正極活物質が電解液と反応させないためである。また正極活物質を電解液と接触させた状態で230〜280℃に保持する時間を10〜60秒間の範囲に限定したのは、リフロー炉に入れて自動はんだ付けを行う時間に対応させるためである。
【0015】
このように構成された正極活物質の製造方法を説明する。
先ず、マンガン化合物とリチウム化合物を所定の割合で混合する。ここで所定の割合とは、リチウムとマンガンとのモル比Li/Mnが0.5以上であって0.7未満、好ましくは0.6以上であって0.7未満となる割合である。またマンガン化合物は、一酸化マンガン、二酸化マンガン、三酸化二マンガン、四酸化三マンガン、炭酸マンガン又は硝酸マンガンである。リチウム化合物は、硝酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム又は酢酸リチウムである。
【0016】
次いで上記混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPa、好ましくは0.1〜0.5MPaの圧力で、350〜600℃、好ましくは400〜450℃に加熱して、3〜10時間、好ましくは5〜10時間保持して焼成する。ここで、焼成時の圧力を0.1〜1MPaの範囲に限定したのは、0.1MPa未満では酸素不足により酸素欠損構造となり容量不足となるからであり、1MPaを越えると特別な圧力容器が必要となるからである。焼成温度を350〜600℃の範囲に限定したのは、350℃未満では十分に反応が進行せず所望の化合物が得られないからであり、600℃を越えると高温相になってLi2MnO3やLiMn2O4が形成されてしまうからである。焼成時間を3〜10時間の範囲に限定したのは、3時間未満では未反応物質が残るからであり、10時間を越えても反応が全体的に進んでこれ以上効果が得られない。
【0017】
また正極活物質粉末の平均粒径を5〜50μmの範囲に限定したのは、5μm未満では表面積増加により電極ペーストの作製が困難になるからであり、50μmを越えると充填密度が低下し単位体積当りの容量が低下する。更に上記正極活物質粉末を規定度0.0001N〜0.1N、好ましくは0.001〜0.01Nの硫酸、塩酸又は硝酸に、10分間〜1秒間、好ましくは3分間〜30秒間接触させる。ここで、上記硫酸等の規定度0.0001N〜0.1Nの範囲に限定し、接触時間を10分間〜1秒間の範囲に限定したのは、正極活物質粉末の各粒子内部の未反応金属Liを溶かすことなく、正極活物質粉末の各粒子表面のみの未反応金属Liを溶かして除去するためである。
【0018】
なお、硫酸等の規定度を多くすると接触時間は短くする、即ち硫酸等の規定度が0.0001Nであるとき接触時間を10分間とし、規定度が大きくなるに従って接触時間を短くし、硫酸等の規定度が0.1Nであるとき接触時間を1秒間とする。また上記正極活物質粉末を硫酸等に浸漬してもよく、濾紙上に置いた正極活物質粉末に硫酸等を注いでもよい。更に正極活物質粉末の各粒子表面にLi2CO3が存在する場合には、上記硫酸等により正極活物質粉末の各粒子表面の未反応金属Liのみならず、このLi2CO3も溶けて除去される。
【0019】
このように製造された正極活物質では、正極活物質粉末の各粒子表面に存在する未反応金属Liが硫酸等により溶かされて除去されるので、リチウムマンガン酸化物粉末の各粒子内部に存在する未反応金属Liが所定の濃度のまま、リチウムマンガン酸化物粉末の各粒子表面に存在する未反応金属Liが低濃度となる。これにより正極活物質が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、正極活物質は電解液と反応しないので、発火することはない。
【0020】
このため、上記正極活物質を用いた二次電池では、リフロー炉による自動はんだ付けを行っても、電池内部の圧力が上昇しないので、ガスケットを大型化しなくても機械的強度を確保できる。またこの二次電池では、製造直後に電池が充電されるため、正極活物質粉末の各粒子表面にLiが取込まれ、各粒子表面におけるリチウムとマンガンとのモル比Li/Mnが増大する。従って、電池容量を殆ど低下させることなく、二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けすることができるとともに、従来のはんだこてを用いたはんだ付け作業より工数を低減できるので、二次電池の製造コストを低減できる。
【0021】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず化学合成二酸化マンガン粉末(平均粒径20μmのMnO2)と、硝酸リチウム粉末(平均粒径50μmのLiNO3)とを、モル比Li/Mnが0.68となるようにそれぞれ秤量した後に混合した。次いで上記混合物を酸素雰囲気下0.1MPaの圧力で450℃に10時間保持して焼成し、平均粒径20μmのリチウムマンガン酸化物(Li4Mn5O12)からなる正極活物質粉末を作製した。更にこの正極活物質粉末を濾紙上に置き、この正極活物質粉末に規定度0.01Nの硫酸を注いで、正極活物質粉末を硫酸に30秒間接触させた。この正極活物質粉末を実施例1とした。
【0022】
<実施例2>
モル比Li/Mnが0.63となるようにそれぞれ秤量したことを除いて、実施例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。この正極活物質粉末を実施例2とした。
<実施例3>
モル比Li/Mnが0.55となるようにそれぞれ秤量したことを除いて、実施例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。この正極活物質粉末を実施例3とした。
【0023】
<比較例1>
先ず化学合成二酸化マンガン粉末(平均粒径20μmのMnO2)と、硝酸リチウム粉末(平均粒径50μmのLiNO3)とを、モル比Li/Mnが0.75となるようにそれぞれ秤量した後に混合した。次に上記混合物を酸素雰囲気下0.1MPaの圧力で400℃に10時間保持して焼成し、平均粒径20μmのリチウムマンガン酸化物(Li4Mn5O12)からなる正極活物質粉末を作製した。この正極活物質粉末を比較例1とした。
【0024】
<比較例2>
モル比Li/Mnが0.85となるようにそれぞれ秤量したことを除いて、比較例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。この正極活物質粉末を比較例2とした。
<比較例3>
モル比Li/Mnが1.1となるようにそれぞれ秤量したことを除いて、比較例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。この正極活物質粉末を比較例3とした。
【0025】
<比較試験1及び評価>
実施例1〜3及び比較例1〜3の正極活物質粉末10mgに1mlの電解液を混合した。この電解液の有機溶媒としてはエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの比が1:1の溶液を用い、リチウム塩としてはLiPF6を用いた。この電解液に接触させた実施例1〜3及び比較例1〜3の正極活物質を室温(25℃)から230℃まで徐々に加熱して所定温度上昇毎に正極活物質粉末の重量変化を熱重量分析(Thermogravimetric Analysis)法により測定した。その結果を図2に示す。なお、重量変化は室温での重量を100%とする百分率で示した。また、図2に示す参考例は電解液のみに対して熱重量分析を行ったときのデータである。
【0026】
図2から明らかなように、比較例1〜3では温度上昇とともに重量が急激に減少したのに対し、実施例1〜3及では温度上昇による重量の変化が比較的緩やかであり、参考例に近かった。また比較例1及び2では230℃において重量の低下が約55%と大きかったのに対し、実施例1〜3では230℃において重量の低下が約40%と小さかった。この結果、実施例1〜3の正極活物質は比較例1〜3の正極活物質より発火し難くかつ燃焼速度が遅いため、耐熱性に優れていることが判った。
【0027】
<比較試験2及び評価>
実施例1〜3及び比較例1〜3の正極活物質粉末を用いて非水二次電池を作製し、これらの二次電池の放電容量の変化に対する放電電圧の変化を測定した。この結果を図3に示す。
図3から明らかなように、実施例1〜3の二次電池の放電容量・電圧特性は比較例1〜3の二次電池の放電容量・電圧特性と同程度であることが判った。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、スピネル構造でありかつLi4Mn5O12で表されるリチウムマンガン酸化物のリチウムとマンガンとのモル比Li/Mnを0.5以上であって0.7未満の範囲にずらすことにより、好ましくはリチウムマンガン酸化物の粒子内部に存在する未反応金属Liが所定の濃度のまま、リチウムマンガン酸化物の粒子表面に存在する未反応金属Liのみを低濃度にすることにより、正極活物質が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、正極活物質が電解液と反応しない。この結果、この正極活物質を用いた二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けすることができる。
また非水二次電池用正極活物質を電解液と接触させた状態で230〜280℃に10〜60秒間熱処理したときに発火しないように構成すれば、二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けしても、正極活物質は電解液と反応しないので、二次電池のリフロー炉による自動はんだ付けが可能となり、二次電池の製造コストを低減できる。
【0029】
またマンガン化合物とリチウム化合物を混合し、この混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPaの圧力で350〜600℃に加熱して3〜10時間保持して焼成し、平均粒径5〜50μmの正極活物質粉末を作製し、更に正極活物質粉末を規定度0.0001N〜0.1Nの硫酸、塩酸又は硝酸に10分間〜1秒間接触させれば、正極活物質粉末の各粒子表面に存在する未反応金属Li及びLi2CO3を硫酸、塩酸又は硝酸により溶かされて除去される。このため、リチウムマンガン酸化物粉末の各粒子内部に存在する未反応金属Li及びLi2CO3が高濃度のまま、リチウムマンガン酸化物粉末の各粒子表面に存在する未反応金属Li及びLi2CO3が低濃度となるため、リフロー炉による自動はんだ付け時に、正極活物質が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、正極活物質は電解液と反応しない。従って、二次電池内部の圧力が上昇せず、ガスケットを大型化しなくても機械的強度を確保できるので、電池容量を小さくすることなく、二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けすることができる。
【0030】
更に上記正極活物質を用いたリチウム二次電池、或いは上記方法で製造された正極活物質を用いたリチウム二次電池であれば、リフロー炉による自動はんだ付け時に正極活物質が電解液と反応せず、二次電池内部の圧力が上昇しないので、ガスケットを大型化しなくても機械的強度を確保できるとともに、製造直後の電池の充電により正極活物質粉末の各粒子表面にLiが取込まれてモル比Li/Mnが増大する。このため電池容量を殆ど低下させることなく、二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けすることができる。従って、本発明では、従来のはんだこてを用いたはんだ付け作業より工数を低減できるので、二次電池の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施形態の非水二次電池の縦断面図。
【図2】実施例1〜3及び比較例1〜3の正極活物質の温度変化に伴う重量変化を示す図。
【図3】実施例1〜3及び比較例1〜3の正極活物質粉末を用いて作製した非水二次電池の放電容量・電圧特性を示す図。
【符号の説明】
10 非水二次電池
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池等の非水二次電池に用いられる正極活物質及びその製造方法と、この正極活物質を用いた非水二次電池に関するものである。なお、この非水二次電池は電圧が数Vであるボタン型電池(コイン型電池)に適する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の二次電池として、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、溶媒及び支持塩を含む電解液と、セパレータと、ガスケット等の部材からなる有機電解液二次電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。この有機電解液二次電池では、正極活物質としてマンガン酸リチウム、負極にリチウムアルミ合金が用いられる。また電解液の溶媒として常圧での沸点が250℃以上のスルホランを主成分とする溶媒系が用いられ、電解液の支持塩としてフッ素を含有するトリフルオロメタンスルホン酸リチウム等が用いられる。更にセパレータ及びガスケットとして熱変形温度が250℃以上のポリフェニレンスルフィド等の樹脂(ガラス繊維等のフィラー添加)が用いられる。
【0003】
このように構成された有機電解液二次電池では、電解液、セパレータ及びガスケットに高い耐熱性を有する材料をそれぞれ用いたので、リフロー炉による自動はんだ付けを行っても、高い耐熱性を有しており、従って二次電池の急激な膨張が生じずに、有機電解液二次電池を効率良く製造できるようになっている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−40525号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に示された有機電解液二次電池では、リフロー炉による自動はんだ付けを行うときに、電解液とリチウムアルミ合金とが反応して、二次電池の内部が高圧になるため、ガスケットを大型化してガスケットの機械的強度を確保しなければならない。このため、上記特許文献1に示された有機電解液二次電池では、はんだこてを用いてはんだ付けを行う二次電池と比較して、ガスケットの占める割合が大きくなるので、電池容量が低下してしまう不具合があった。
本発明の目的は、電池容量を殆ど低下させずに、リフロー炉による自動はんだ付け時の正極活物質と電解液の反応性のみを低減することができる、非水二次電池用正極活物質及びその製造方法並びにこれを用いた非水二次電池を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、リチウム、マンガン及び酸素からなるリチウムマンガン酸化物を用いた非水二次電池用正極活物質の改良である。
その特徴ある構成は、リチウムマンガン酸化物の結晶構造がスピネル構造であり、リチウムとマンガンとのモル比Li/Mnが0.5以上であって0.7未満であり、更にLi4Mn5O12で表されるところにある。
この請求項1に記載された非水二次電池用正極活物質では、リチウムとマンガンとのモル比Li/Mnを0.5以上であって0.7未満の範囲にずらすことにより、好ましくはリチウムマンガン酸化物の粒子内部に存在する未反応金属Liが所定の濃度のまま、リチウムマンガン酸化物の粒子表面に存在する未反応金属Liのみを低濃度にすることにより、正極活物質が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、正極活物質が電解液と反応しない。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に電解液と接触させた状態で230〜280℃に10〜60秒間熱処理したときに発火しないことを特徴とする。
この請求項2に記載された非水二次電池用正極活物質では、この正極活物質を電解液と接触させた状態でリフロー炉による自動はんだ付けを行っても、即ち二次電池をリフロー炉に収容して230〜280℃に10〜60秒間保持しても、正極活物質は電解液と反応しない。
【0008】
請求項3に係る発明は、マンガン化合物とリチウム化合物を混合する工程と、混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPaの圧力で350〜600℃に加熱して3〜10時間保持して焼成し、平均粒径5〜50μmの正極活物質粉末を作製する工程と、正極活物質粉末を規定度0.0001N〜0.1Nの硫酸、塩酸又は硝酸に10分間〜1秒間接触させる工程とを含む非水二次電池用正極材料の製造方法である。
この請求項3に記載された非水二次電池用正極材料の製造方法では、正極活物質粉末の各粒子表面に存在する未反応金属Liを硫酸、塩酸又は硝酸により溶かして除去することにより、リチウムマンガン酸化物粉末の各粒子に存在するリチウムやマンガンが所定の濃度のまま、リチウムマンガン酸化物粉末の各粒子表面に存在する未反応金属Liが低濃度となるため、リフロー炉による自動はんだ付け時に、正極活物質が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、正極活物質は電解液と反応しない。
【0009】
またマンガン化合物は一酸化マンガン、二酸化マンガン、三酸化二マンガン、四酸化三マンガン、炭酸マンガン又は硝酸マンガンであることが好ましい。
更に上記請求項1又は2に記載された正極活物質を用いて、或いは請求項3又は4に記載された方法で製造された正極活物質を用いて、非水二次電池を製造することにより、リフロー炉による自動はんだ付け時に正極活物質が電解液と反応せず、二次電池内部の圧力が上昇しないので、ガスケットを大型化しなくても機械的強度を確保できる。また製造直後に電池が放電されるため、正極活物質粉末の各粒子表面にLiが取込まれ、各粒子表面におけるリチウムとマンガンとのモル比Li/Mnが増大する。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、非水二次電池10は、正極11と、負極12と、正極11及び負極12間に介装されたセパレータ13とを備える。上記正極11、負極12及びセパレータ13は正極ケース14a及び負極ケース14bを有する電池ケース14内に収容される。また正極11は正極集電板16を介して正極ケース14aに電気的に接続され、負極12は負極集電板17を介して負極ケース14bに電気的に接続され、正極ケース14aの周縁は負極ケース14bの周縁に対して電気絶縁性を有するガスケット18により電気的に絶縁される。更に正極ケース14aの周縁はガスケット18を介して負極ケース14bの周縁にかしめられ、これにより電池ケース14の内部が封止される。
【0011】
正極11は正極活物質と導電剤と結着剤を含む。正極活物質としてはリチウム、マンガン及び酸素からなるリチウムマンガン酸化物が用いられ、導電剤としてはアセチレンブラック、カーボン、グラファイト等の炭素材料系の導電剤が用いられ、結着剤としてはポリビニリデンフルオライド(PVDF)、N−メチルピロリドン等が用いられる。また負極12は負極活物質と結着剤を含む。負極活物質としてはカーボン、グラファイト等のが用いられ、結着剤としてはポリビニリデンフルオライド(PVDF)、N−メチルピロリドン等が用いられる。
【0012】
セパレータ13はポリフェニレンスルフィド等の不織布により微多孔膜に形成され、このセパレータには有機溶媒に溶質としてリチウム塩を溶解した非水電解液が含浸される。有機溶媒としてはプロピレンカーボネート(PC)やγ−ブチロラクトン(GBL)等が挙げられ、リチウム塩としてはLiBF4、LiClO4等が挙げられる。また正極集電板16はアルミ箔により形成され、負極集電板17は銅箔により形成される。更にガスケットはポリプロピレンやポリフェニレンスルフィド等により形成される。
【0013】
上記正極活物質として用いられるリチウムマンガン酸化物の結晶構造はスピネル構造である。リチウムとマンガンとのモル比Li/Mnは0.5以上であって0.7未満、好ましくは0.6以上であって0.7未満である。また上記リチウムマンガン酸化物はLi4Mn5O12で表される。ここで、モル比Li/Mnを0.5以上であって0.7未満の範囲に限定したのは、0.5未満ではLi欠損量が多くなり充放電に寄与するリチウムイオンが不足するため十分な放電容量が得られず、0.7以上では電解液と正極活物質の反応を十分に抑止できないからである。
【0014】
一方、上記正極活物質は、電解液と接触させた状態で230〜280℃、好ましくは250〜280℃に、10〜60秒間、好ましくは30〜60秒間熱処理したときに発火しないように構成される。ここで、正極活物質を電解液と接触させた状態で発火しない温度を230〜280℃の範囲に限定したのは、二次電池をリフロー炉に入れて自動はんだ付けを行うときに正極活物質が電解液と反応させないためである。また正極活物質を電解液と接触させた状態で230〜280℃に保持する時間を10〜60秒間の範囲に限定したのは、リフロー炉に入れて自動はんだ付けを行う時間に対応させるためである。
【0015】
このように構成された正極活物質の製造方法を説明する。
先ず、マンガン化合物とリチウム化合物を所定の割合で混合する。ここで所定の割合とは、リチウムとマンガンとのモル比Li/Mnが0.5以上であって0.7未満、好ましくは0.6以上であって0.7未満となる割合である。またマンガン化合物は、一酸化マンガン、二酸化マンガン、三酸化二マンガン、四酸化三マンガン、炭酸マンガン又は硝酸マンガンである。リチウム化合物は、硝酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム又は酢酸リチウムである。
【0016】
次いで上記混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPa、好ましくは0.1〜0.5MPaの圧力で、350〜600℃、好ましくは400〜450℃に加熱して、3〜10時間、好ましくは5〜10時間保持して焼成する。ここで、焼成時の圧力を0.1〜1MPaの範囲に限定したのは、0.1MPa未満では酸素不足により酸素欠損構造となり容量不足となるからであり、1MPaを越えると特別な圧力容器が必要となるからである。焼成温度を350〜600℃の範囲に限定したのは、350℃未満では十分に反応が進行せず所望の化合物が得られないからであり、600℃を越えると高温相になってLi2MnO3やLiMn2O4が形成されてしまうからである。焼成時間を3〜10時間の範囲に限定したのは、3時間未満では未反応物質が残るからであり、10時間を越えても反応が全体的に進んでこれ以上効果が得られない。
【0017】
また正極活物質粉末の平均粒径を5〜50μmの範囲に限定したのは、5μm未満では表面積増加により電極ペーストの作製が困難になるからであり、50μmを越えると充填密度が低下し単位体積当りの容量が低下する。更に上記正極活物質粉末を規定度0.0001N〜0.1N、好ましくは0.001〜0.01Nの硫酸、塩酸又は硝酸に、10分間〜1秒間、好ましくは3分間〜30秒間接触させる。ここで、上記硫酸等の規定度0.0001N〜0.1Nの範囲に限定し、接触時間を10分間〜1秒間の範囲に限定したのは、正極活物質粉末の各粒子内部の未反応金属Liを溶かすことなく、正極活物質粉末の各粒子表面のみの未反応金属Liを溶かして除去するためである。
【0018】
なお、硫酸等の規定度を多くすると接触時間は短くする、即ち硫酸等の規定度が0.0001Nであるとき接触時間を10分間とし、規定度が大きくなるに従って接触時間を短くし、硫酸等の規定度が0.1Nであるとき接触時間を1秒間とする。また上記正極活物質粉末を硫酸等に浸漬してもよく、濾紙上に置いた正極活物質粉末に硫酸等を注いでもよい。更に正極活物質粉末の各粒子表面にLi2CO3が存在する場合には、上記硫酸等により正極活物質粉末の各粒子表面の未反応金属Liのみならず、このLi2CO3も溶けて除去される。
【0019】
このように製造された正極活物質では、正極活物質粉末の各粒子表面に存在する未反応金属Liが硫酸等により溶かされて除去されるので、リチウムマンガン酸化物粉末の各粒子内部に存在する未反応金属Liが所定の濃度のまま、リチウムマンガン酸化物粉末の各粒子表面に存在する未反応金属Liが低濃度となる。これにより正極活物質が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、正極活物質は電解液と反応しないので、発火することはない。
【0020】
このため、上記正極活物質を用いた二次電池では、リフロー炉による自動はんだ付けを行っても、電池内部の圧力が上昇しないので、ガスケットを大型化しなくても機械的強度を確保できる。またこの二次電池では、製造直後に電池が充電されるため、正極活物質粉末の各粒子表面にLiが取込まれ、各粒子表面におけるリチウムとマンガンとのモル比Li/Mnが増大する。従って、電池容量を殆ど低下させることなく、二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けすることができるとともに、従来のはんだこてを用いたはんだ付け作業より工数を低減できるので、二次電池の製造コストを低減できる。
【0021】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず化学合成二酸化マンガン粉末(平均粒径20μmのMnO2)と、硝酸リチウム粉末(平均粒径50μmのLiNO3)とを、モル比Li/Mnが0.68となるようにそれぞれ秤量した後に混合した。次いで上記混合物を酸素雰囲気下0.1MPaの圧力で450℃に10時間保持して焼成し、平均粒径20μmのリチウムマンガン酸化物(Li4Mn5O12)からなる正極活物質粉末を作製した。更にこの正極活物質粉末を濾紙上に置き、この正極活物質粉末に規定度0.01Nの硫酸を注いで、正極活物質粉末を硫酸に30秒間接触させた。この正極活物質粉末を実施例1とした。
【0022】
<実施例2>
モル比Li/Mnが0.63となるようにそれぞれ秤量したことを除いて、実施例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。この正極活物質粉末を実施例2とした。
<実施例3>
モル比Li/Mnが0.55となるようにそれぞれ秤量したことを除いて、実施例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。この正極活物質粉末を実施例3とした。
【0023】
<比較例1>
先ず化学合成二酸化マンガン粉末(平均粒径20μmのMnO2)と、硝酸リチウム粉末(平均粒径50μmのLiNO3)とを、モル比Li/Mnが0.75となるようにそれぞれ秤量した後に混合した。次に上記混合物を酸素雰囲気下0.1MPaの圧力で400℃に10時間保持して焼成し、平均粒径20μmのリチウムマンガン酸化物(Li4Mn5O12)からなる正極活物質粉末を作製した。この正極活物質粉末を比較例1とした。
【0024】
<比較例2>
モル比Li/Mnが0.85となるようにそれぞれ秤量したことを除いて、比較例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。この正極活物質粉末を比較例2とした。
<比較例3>
モル比Li/Mnが1.1となるようにそれぞれ秤量したことを除いて、比較例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。この正極活物質粉末を比較例3とした。
【0025】
<比較試験1及び評価>
実施例1〜3及び比較例1〜3の正極活物質粉末10mgに1mlの電解液を混合した。この電解液の有機溶媒としてはエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの比が1:1の溶液を用い、リチウム塩としてはLiPF6を用いた。この電解液に接触させた実施例1〜3及び比較例1〜3の正極活物質を室温(25℃)から230℃まで徐々に加熱して所定温度上昇毎に正極活物質粉末の重量変化を熱重量分析(Thermogravimetric Analysis)法により測定した。その結果を図2に示す。なお、重量変化は室温での重量を100%とする百分率で示した。また、図2に示す参考例は電解液のみに対して熱重量分析を行ったときのデータである。
【0026】
図2から明らかなように、比較例1〜3では温度上昇とともに重量が急激に減少したのに対し、実施例1〜3及では温度上昇による重量の変化が比較的緩やかであり、参考例に近かった。また比較例1及び2では230℃において重量の低下が約55%と大きかったのに対し、実施例1〜3では230℃において重量の低下が約40%と小さかった。この結果、実施例1〜3の正極活物質は比較例1〜3の正極活物質より発火し難くかつ燃焼速度が遅いため、耐熱性に優れていることが判った。
【0027】
<比較試験2及び評価>
実施例1〜3及び比較例1〜3の正極活物質粉末を用いて非水二次電池を作製し、これらの二次電池の放電容量の変化に対する放電電圧の変化を測定した。この結果を図3に示す。
図3から明らかなように、実施例1〜3の二次電池の放電容量・電圧特性は比較例1〜3の二次電池の放電容量・電圧特性と同程度であることが判った。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、スピネル構造でありかつLi4Mn5O12で表されるリチウムマンガン酸化物のリチウムとマンガンとのモル比Li/Mnを0.5以上であって0.7未満の範囲にずらすことにより、好ましくはリチウムマンガン酸化物の粒子内部に存在する未反応金属Liが所定の濃度のまま、リチウムマンガン酸化物の粒子表面に存在する未反応金属Liのみを低濃度にすることにより、正極活物質が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、正極活物質が電解液と反応しない。この結果、この正極活物質を用いた二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けすることができる。
また非水二次電池用正極活物質を電解液と接触させた状態で230〜280℃に10〜60秒間熱処理したときに発火しないように構成すれば、二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けしても、正極活物質は電解液と反応しないので、二次電池のリフロー炉による自動はんだ付けが可能となり、二次電池の製造コストを低減できる。
【0029】
またマンガン化合物とリチウム化合物を混合し、この混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPaの圧力で350〜600℃に加熱して3〜10時間保持して焼成し、平均粒径5〜50μmの正極活物質粉末を作製し、更に正極活物質粉末を規定度0.0001N〜0.1Nの硫酸、塩酸又は硝酸に10分間〜1秒間接触させれば、正極活物質粉末の各粒子表面に存在する未反応金属Li及びLi2CO3を硫酸、塩酸又は硝酸により溶かされて除去される。このため、リチウムマンガン酸化物粉末の各粒子内部に存在する未反応金属Li及びLi2CO3が高濃度のまま、リチウムマンガン酸化物粉末の各粒子表面に存在する未反応金属Li及びLi2CO3が低濃度となるため、リフロー炉による自動はんだ付け時に、正極活物質が電解液と接触した状態で230〜280℃の高温に曝されても、正極活物質は電解液と反応しない。従って、二次電池内部の圧力が上昇せず、ガスケットを大型化しなくても機械的強度を確保できるので、電池容量を小さくすることなく、二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けすることができる。
【0030】
更に上記正極活物質を用いたリチウム二次電池、或いは上記方法で製造された正極活物質を用いたリチウム二次電池であれば、リフロー炉による自動はんだ付け時に正極活物質が電解液と反応せず、二次電池内部の圧力が上昇しないので、ガスケットを大型化しなくても機械的強度を確保できるとともに、製造直後の電池の充電により正極活物質粉末の各粒子表面にLiが取込まれてモル比Li/Mnが増大する。このため電池容量を殆ど低下させることなく、二次電池をリフロー炉にて自動はんだ付けすることができる。従って、本発明では、従来のはんだこてを用いたはんだ付け作業より工数を低減できるので、二次電池の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施形態の非水二次電池の縦断面図。
【図2】実施例1〜3及び比較例1〜3の正極活物質の温度変化に伴う重量変化を示す図。
【図3】実施例1〜3及び比較例1〜3の正極活物質粉末を用いて作製した非水二次電池の放電容量・電圧特性を示す図。
【符号の説明】
10 非水二次電池
Claims (6)
- リチウム、マンガン及び酸素からなるリチウムマンガン酸化物を用いた非水二次電池用正極活物質において、
前記リチウムマンガン酸化物の結晶構造がスピネル構造であり、
前記リチウムと前記マンガンとのモル比Li/Mnが0.5以上であって0.7未満であり、
更にLi4Mn5O12で表される
ことを特徴とする非水二次電池用正極活物質。 - 電解液と接触させた状態で230〜280℃に10〜60秒間熱処理したときに発火しないことを特徴とする請求項1記載の非水二次電池用正極活物質。
- マンガン化合物とリチウム化合物を混合する工程と、
前記混合物を酸素雰囲気下0.1〜1MPaの圧力で350〜600℃に加熱して3〜10時間保持して焼成し、平均粒径5〜50μmの正極活物質粉末を作製する工程と、
前記正極活物質粉末を規定度0.0001N〜0.1Nの硫酸、塩酸又は硝酸に10分間〜1秒間接触させる工程と
を含む非水二次電池用正極材料の製造方法。 - マンガン化合物が一酸化マンガン、二酸化マンガン、三酸化二マンガン、四酸化三マンガン、炭酸マンガン又は硝酸マンガンである請求項3記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の正極活物質を用いたリチウム二次電池。
- 請求項3又は4に記載の方法で製造された正極活物質を用いたリチウム二次電池。
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JP2008098131A (ja) * | 2006-09-13 | 2008-04-24 | Sanyo Electric Co Ltd | 非水電解質二次電池およびその製造方法 |
JP2012204155A (ja) * | 2011-03-25 | 2012-10-22 | Seiko Instruments Inc | 非水電解質二次電池 |
-
2003
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