JP2005069448A - 真空断熱パネルとその製造方法およびそれを用いた冷蔵庫 - Google Patents

真空断熱パネルとその製造方法およびそれを用いた冷蔵庫 Download PDF

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Abstract

【課題】断熱性能を良好に保持するとともに、コア材とするグラスウールの嵩を小さく、且つ表面の平面度を良好にして、原材料の運搬や取り扱いを容易にした真空断熱パネルとその製造方法、および真空断熱パネルを用いた冷蔵庫を提供する。
【解決手段】短繊維グラスウールをニードリング加工してマット状に形成したコア材5aをガスバリア容器5b内に収納し、内部を真空排気してパネル体5としたことを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、グラスウールをコア材とした真空断熱パネルとその製造方法、およびその真空断熱パネルを用いた冷蔵庫に関する。
従来、冷蔵庫における断熱キャビネットの断熱材としては、熱伝導率が低く、発泡充填によりキャビネットを構成する外箱や内箱と一体化して剛性を有するポリウレタンフォームを使用することが主流であったが、近年、冷蔵庫キャビネットの断熱性能をさらに向上させて熱漏洩を防ぐことで消費電力量を低減させたり、あるいは断熱壁厚を薄くして冷蔵庫としての容積効率の向上をはかるため、断熱材としての真空断熱パネルが一部で実用化されている。
冷蔵庫への採用例として、図6に基本構成を示す真空断熱パネル(55)は、材料コストを抑え、排気や真空度の維持を容易にして長期信頼性を得る比較的高い内部圧力で機能させるため、微小空間を形成して大気圧下で形態を保持することができる連通気泡構造の樹脂フォームや無機質の微粉末、繊維をコア材(55a)に用いて、このコア材(55a)を合成樹脂とアルミニウム箔とのラミネートフィルム製のガスバリア容器(55b)で覆い、容器(55b)内を真空引きした後、開口をヒートシール(55c)して密封した構成である。
また、コア材(55a)から発生するアウトガス、およびガスバリア容器(55b)のシール面や表面から内部に侵入する透過ガス等による内圧上昇に起因する経時劣化を抑えて真空度を維持するために、チタン、マグネシウム等の金属、バリウム・リチウム等の合金、酸化コバルト、酸化カルシウム、ゼオライト等の酸化物、活性炭等であって、水分、酸素、窒素等の空気成分、水素等のガスを吸着する物質からなるゲッター剤(55e)を封入するのが一般的である。
断熱性能については、図7に示すように、パーライト等無機質の微粉末をコア材としたものは、微粉末固体自体の壁厚が大きく断熱のための空間容積が少ないことから、また、連続気泡の樹脂フォームをコア材としたものは、気泡セルの大きさに強度的限界があるため、真空断熱パネルとしての熱伝導率は、0.005〜0.007W/mK程度が限界である。それ以下の熱伝導率を得ることができる材料としてはグラスウールがあり、繊維径が数μm以下のグラスウールをコア材とした場合には小空間を多数形成できるため、0.002W/mK程度の低い熱伝導率を実現することができる。
このように、極細のグラスウール繊維をコア材とした真空断熱パネルは、断熱性能に優れている長所がある反面、真空パック前のグラスウール原材料の厚み寸法は真空パック後の10倍程度もあって嵩高いものであり、また不定形であることから、原材料状態での運搬や製造時の荷扱いが非常に煩雑になる欠点があった。
また、グラスウールの密度や圧縮強度の分布ムラが避けられず、真空引き後のパネル表面に凹凸や反りが発生する等して平面度が悪くなるだけでなく、変形を生じ易いものであった。
上記問題を解決するため、ガスバリア容器内に入れるコア部材を、無アルカリ長繊維グラスウールを重ね合わせた後、このグラスウールにニードリング加工を施してマット状に固めた断熱体とすることで、真空引きした後の容器の変形を抑えるとともに粉塵の発生を抑えた真空断熱材が考えられていた。(例えば、特許文献1参照)
また、無機質短繊維の綿を開繊してこれに加湿溶融性の無機粉体を混合し、次いで無機粉体を加湿溶融して加熱および加圧成形することにより、固化させた成形体の無機質短繊維をランダムな配向とした真空断熱材用芯材が発明されている。(例えば、特許文献2参照)
特開平7−96563号公報 特開平8−28776号公報
しかしながら、特許文献1記載の構成の場合は、グラスウールの繊維長が長いために、繊維自体を伝って熱伝導してしまう現象が発生するとともに、繊維の方向が偏ってランダム配向性が低下し、また繊維径も6〜25μmと比較的大きいため断熱空間比率が少なくなり、良好な断熱性能を得ることができない問題がある。
また、特許文献2記載の構成では、断熱性能の確保や形状維持に対して有効であるが、無機バインダーの付着や固化工程に高温処理が必要であること。また、バインダーには未反応のものが残ることから、真空パック後の時間経過とともに、アウトガスの発生が懸念されることや、明細書記載のケイ酸ナトリウム等のアルカリバインダーでは長期的にはガラスの劣化が生じる等の問題があった。
本発明は上記点を考慮してなされたものであり、断熱性能を良好に保持するとともに、コア材とするグラスウールの嵩を小さく、且つ表面の平面度を良好にして、原材料の運搬や取り扱いを容易にした真空断熱パネルとその製造方法、および真空断熱パネルを用いた冷蔵庫を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の真空断熱パネルは、短繊維グラスウールをニードリング加工してマット状に形成したコア材をガスバリア容器内に収納し、内部を真空排気してパネル体としたことを特徴とするものである。
この構成によって、グラスウールのマット状コア材の厚みを低減し、表面を平滑にすることができ、真空断熱パネルを形成する際の取り扱いを容易にすることができる。
また、前記真空断熱パネルを冷蔵庫における断熱壁中の外箱あるいは内箱面に貼り付け、残余の空間にポリウレタンフォームを発泡充填して埋設することにより、良好なパネル表面度によってウレタンフォームの注入発泡作用に支障がなく、外箱あるいは内箱に確実に密着固定できるとともに、良好な断熱性能によって消費電力量が少なく、且つ、断熱壁厚を薄くして容積効率の高い冷蔵庫を得ることができる。
以下、図面に基づき本発明の1実施形態につき、真空断熱パネルを冷蔵庫に用いた例について説明する。図1は本発明に係る冷蔵庫の概略断面図であり、本体の外形を形成する鋼板からなる外箱(2)と貯蔵室を形成する内箱(3)との間に断熱空間を設けて冷蔵庫本体(1)を構成している。
前記断熱空間を形成する外箱(2)の内面には、断熱体として詳細を後述する真空断熱パネル(5)を貼り付け、残余の内箱(3)との間隙には、ポリウレタンフォームからなる発泡断熱材(6)の原液を注入し、発泡充填して前記内外箱(2)(3)と真空断熱パネル(5)とを一体に接着固化し、剛性のある断熱キャビネットを形成している。
しかして、前記真空断熱パネル(5)は、図2およびパネルの真空引き状態を示す図3に示すように、細いガラス繊維の綿状物であるグラスウールをコア材(5a)とし、これをマット状に形成するとともに、このコア材(5a)を、アルミニウム箔と合成樹脂のラミネートフィルムを製袋した厚みが70〜120μmのガスバリア容器(5b)に挿入したものであり、コア材の挿入後に、容器(5b)をベース(7a)上に配置した真空チャンバー(7)内に設けた2段式のステージ(7b)上に設置し、真空ポンプ(7c)によって0.03〜30Pa程度で真空排気した後、容器の開口を20〜50mmの綴じ代を設けて閉塞し、綴じ代の10mm幅に亙ってヒートシール(5c)することで、容器内部を真空減圧状態に保持したパネル状に形成する。
グラスウールのコア材(5a)は、繊維径については、一般に真空断熱パネルとしての断熱性能が良好とされる10μm以下のものを選択するが、本実施例では2〜6μm径のものを採用し、繊維長については、50mm以上の長い繊維体も混入したが、10mm程度の短繊維を主体とした。さらに短繊維材には通常おこなわないニードリング加工を施すことを特徴としている。
ニードリング加工は、側面に小さな釣り針状のハーブを複数備えたニードルを積層したグラスウールに対して厚み方向に高速で抜き刺しすることで、ハーブの引っ掛かりにより繊維同士を絡めて一体化するものである。
短繊維グラスウールへのニードリングは、長繊維に比べて繊維の絡みがほぐれ易い欠点があって有効ではないとされており、一般的には採用されない方法であったが、発明者らは、短繊維グラスウールが保有する良好な断熱性能や形状維持特性に着目して、これにニードリングを施す研究をおこなった。
その結果、厚さ50mmの原綿マットに対してニードリングをおこなうとともに、ニードリング加工後の所定サイズのカットや水分除去のための乾燥工程等を手早くおこなうことで、所定サイズのグラスウールマットを形成することに成功した。
そして、前記繊維径と繊維長により、グラスウール繊維のランダム配向は維持され、ニードリング加工により繊維が厚み方向で絡まり合うことで、厚み方向の熱伝導率が低くなって断熱効果が大きくなり、原綿状態で50mmの厚みのものが10〜20mm程度の厚みに圧縮されて表面も平滑になり、さらにマットとして弾力や粘りのある、いわゆる腰の強いマット状コア材(5a)を得ることができた。
上記のように形成したマット状コア材(5a)は、所定の大きさに切断され、あるいは最終的に必要な厚みになるよう適宜マットを重ねた上で、前記ガスバリア容器(5b)に挿入されるものであるが、従来に比較してその厚みは数分の1に薄くなっており、そのうえ腰が強いため、容器(5b)への挿入作業が容易にできるとともに、嵩高い従来マット形状に比べてガスバリア容器(5b)自体の大きさを小さくできることで、真空パネル形成前のマットとしての待機スペースも削減でき、さらにマットを収納する真空チャンバー(7)自体の大きさも縮小することができるものである。
また、パネル表面も凹凸の少ない良好な平滑度が得られるので、真空排気後の形状修正が不要となり、あるいは最小の修正で良くなる。
そして、コア材(5a)を挿入したガスバリア容器(5b)は真空チャンバー(7)内で真空引きされた後にその開口部をヒートシール(5c)され、その後チャンバー(7)内を大気圧に開放することによる気圧差によってコア材(5a)はさらに2分の1程度に圧縮され、最終的に厚みを10〜12mmにした真空断熱パネル(5)が形成されるものであり、真空断熱パネル(5)は、ヒンジ部(7d)を支軸としてチャンバー外套(7e)を上方の矢印方向に回動させ、同様に上下動するヒートシールバー(7f)の開放させた開口から摺動して取り出す。
なお、ニードリング加工による繊維の絡まりと壁厚の短縮で密度が増加したことによるグラスウール熱伝導率の変化はきわめてわずかであり、同一条件でニードリングに有無のみの違いによる熱伝導率は、原綿状態のグラスウールが0.0016W/mKであったのに対し、ニードリング加工したものは0.0018W/mKで問題となるレベルではなかった。
また、本発明の1実施例におけるグラスウールコア材は、バインダーを使用しないことを特徴としている。バインダーは断熱性能の確保や形状維持に対して有効である反面、コア材への付着や固化工程に高温処理が必要であったが、本実施例においてはバインダーを使用しないために前記処理を必要とせず、当然真空パック後のアウトガスの発生もきわめて少なくなる。
上記については、真空排気前のコア材の充分な乾燥が必要であることは言うまでもないが、アウトガスの発生を抑えることによって、初期断熱性能を確保できるだけでなく、内圧上昇による断熱性能の経時劣化を最小限に抑えることができ、さらに、ゲッター剤の量を低減したり、より安価なゲッター剤を採用でき、コストの低減をはかることができる。
本発明におけるコア材であるグラスウールは、繊維長が10mm程度の短繊維材を50%以上用い、その他30mm以上の繊維長のものも混入させて使用している。繊維長を短くするには、開繊したり、切断する方法が開示されているが、本発明では、ガラスを溶融して綿菓子と同じ原理で、遠心力によってノズルから噴出させて固化させる方法により形成する。これは「遠心紡糸法」として超極細繊維を製造する際に採用されている方法であるが、極細の短繊維グラスウールを効率的に形成する方法として有効であり、この遠心紡糸法による短繊維材、ノーバインダー、およびマット状コア材へのニードリング加工によって形成したグラスウール製コア材により、好適な真空断熱パネルを得ることができるものである。
次に、さらに具体的な真空断熱パネルの製造方法について、図4を参照して説明する。前記と同一部分に同一符号を附した本実施例の場合は、前述のごとく、ニードリング加工した短繊維グラスウールのコア材(5a)をガスバリア容器(5b)内に収納し、真空チャンバー(7)内で真空排気し、次いでヒートシール(5c)した後に、油圧シリンダーで上下する平板状の押さえ板(8)でパネル表面を押圧し、その厚み寸法を大気圧に相当するまで圧縮してさらに半減させることを特徴とする。
そして、前記押さえ板(8)の押圧による圧縮とともにパネル表面を整形するものであり、押圧状態のままで真空チャンバー(7)内を大気圧に開放することによって、アルミニウム箔と樹脂とのラミネートフィルムであるガスバリア容器(5b)の表面への気圧差による応力を規制して、凹凸やしわ、反りやうねり等の発生を効果的に防止ことができ、表面の平坦な真空断熱パネル(5´)を得ることができる。
また、図5に示すように、真空パック終了後の真空断熱パネル(5″)を、パネル厚より少許狭い所定の間隙を設定して配置した上下のロール(9a)(9b)間を通過させ、表面の形態を補正することで、表面平滑性の良好な真空断熱パネルを形成することができる。
このとき、ロール(9a)(9b)駆動時のガスバリア容器(5b″)への負荷圧力が大きすぎるとラミネートフィルムの破損によって真空性能が維持できなくなる可能性があり、ロール間隔や回転速度の調整、およびガスバリア容器のシール構成への影響を考慮する必要がある。
以上のように構成した真空断熱パネル(5)(5´)(5″)は、図1に示すように、冷蔵庫本体(1)の外箱(2)の両側壁内面や天井面、さらには必要に応じて背面などにに、所定のパネル間隔を形成してホットメルト接着剤(10)や両面テープで所定位置に貼り付けるものであり、貼り付け後の真空断熱パネル(5)(5´)(5″)と内箱(3)との空間には、現場発泡方式によりポリウレタンフォーム断熱材(6)の原液を注入発泡し、充填固化することでパネル(5)と内箱(3)、外箱(2)とを一体化し、50mm〜65mmの断熱壁厚にしている。
このとき、真空断熱パネル(5)の表面には凹凸や反りが少なく平滑であるため、外箱(2)面への固定もボイドを生じることなく確実に、且つ容易におこなうことができるものであるが、特に背面下部の機械室近傍への配設に際しては、複雑化している構造部品との緩衝を避けた位置に設置するようにする。
また空間部に対するウレタンフォーム断熱材(6)の充填発泡作用も支障なくスムーズにおこなうことができるため、発泡断熱材(6)と内箱(3)や外箱(2)、および真空断熱パネル(5)(5´)(5″)との密着も強固になってキャビネット剛性も充分強度の大きなものとすることができ、本体外表面の変形を生じることなく、良好な断熱性能を得ることができる。
なお、上記実施例においては、真空断熱パネル(5)(5´)(5″)を外箱(2)の内面に貼り付けた例で説明したが、内箱(3)の内面や図示しない扉の内面に配設しても同様の効果を奏することはいうまでもない。また、冷蔵庫も家庭用に限定されるものではなく、業務用やショーケース、自動販売機等の断熱キャビネット構成に対しても同様に適用できるものである。
本発明によれば、グラスウールのマット状コア材の厚みを低減し、表面を平滑にした真空断熱パネルおよびその製造方法に使用することができる。
また、前記真空断熱パネルを断熱壁中の外箱あるいは内箱面に貼り付け、残余の空間にポリウレタンフォームを発泡充填して埋設することで、ウレタンフォームの注入発泡作用に支障がなく、外箱あるいは内箱に確実に且つ容易に密着固定して、良好な断熱性能を有して消費電力量が少なく、あるいは断熱壁厚を薄くして容積効率の高い冷蔵庫に利用することができる。
本発明の1実施形態を示す冷蔵庫の概略断面図である。 図1に設置した真空断熱パネルの断面詳細図である。 図2の真空断熱パネルの真空引き状態を示す概略図である。 本発明の他の実施例を示す真空断熱パネル製造方法の概略図である。 本発明のさらに他の実施例を示す真空断熱パネル製造方法の概略図である。 真空断熱パネルの基本構造を示す断面図である。 コア材による真空度と熱伝導率との差を示す比較グラフである。
符号の説明
1 冷蔵庫本体
2 外箱
3 内箱
5、5´、5″ 真空断熱パネル
5a マット状コア材
5b ガスバリア容器
5c ヒートシール
6 ウレタンフォーム断熱材
7 真空チャンバー
7a ベース
7b ステージ
7c 真空ポンプ
7d ヒンジ軸
7e チャンバー外套
7f ヒートシールバー
8 押さえ板
9a 上ロール
9b 下ロール
10 ホットメルト

Claims (6)

  1. 短繊維グラスウールをニードリング加工してマット状に形成したコア材をガスバリア容器内に収納し、内部を真空排気してパネル体としたことを特徴とする真空断熱パネル。
  2. ニードリング加工によりバインダーを使用しないことを特徴とする請求項1記載の真空断熱パネル。
  3. 繊維径が10μm以下で繊維長が30mm未満の短繊維グラスウールを用いてパネル体の厚みを20mm以下にしたことを特徴とする請求項1または2記載の真空断熱パネル。
  4. 真空チャンバー内において真空排気し、ガスバリア容器の開口をシールした後に、パネル面を平板間に押さえ込んだ状態で大気圧に戻すようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の真空断熱パネルの製造方法。
  5. 真空排気してガスバリア容器の開口部をシールした状態の真空断熱パネルを所定間隔に配置したロール間を通過させて平面度を補正するようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の真空断熱パネルの製造方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の構成あるいは方法により製造した真空断熱パネルを断熱壁中の外箱あるいは内箱面に貼り付け、残余の空間にポリウレタンフォームを発泡充填して埋設したことを特徴とする冷蔵庫。
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