JP2005069003A - 内燃機関のオーバーラン防止装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関のオーバーラン状態を適切に判定してスロットル弁の閉側への制御を行い、不用意なスロットル弁の閉側への制御を行わず、内燃機関への悪影響を抑制することができる内燃機関のオーバーラン防止装置を提供する。
【解決手段】ECUが実行するディーゼルエンジンのオーバーラン状態の判定処理は、燃料噴射量が0であると判定されると、エンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差が基準回転速度偏差ΔNE0より大きいか否かが判定される(ステップ110)。肯定判定されると、オーバーラン状態であると判定され、スロットル弁のシャットオフ制御が実行される(ステップ120)。また、ステップ110で否定判定されると、オーバーラン状態でないと判定され、スロットル弁のシャットオフ制御は実行されない。
【選択図】 図3
【解決手段】ECUが実行するディーゼルエンジンのオーバーラン状態の判定処理は、燃料噴射量が0であると判定されると、エンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差が基準回転速度偏差ΔNE0より大きいか否かが判定される(ステップ110)。肯定判定されると、オーバーラン状態であると判定され、スロットル弁のシャットオフ制御が実行される(ステップ120)。また、ステップ110で否定判定されると、オーバーラン状態でないと判定され、スロットル弁のシャットオフ制御は実行されない。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関のオーバーラン防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関の吸気通路に駆動手段によって開閉駆動される電子制御スロットル弁が設けられ、アクセル操作量に基づいて該内燃機関に供給される燃料量が設定されるものが提案されている。このような内燃機関において、機関回転速度がオーバーラン(燃料噴射弁の開故障による燃料供給過多や潤滑油の燃焼により意図していない状況で機関回転速度が上昇する)になると、内燃機関を構成する部品が破損する等の不都合が生じる。そのため、このような内燃機関においてはアクセル操作がなされていないときにはスロットル弁を閉側に制御して吸入空気量を絞り、内燃機関の燃焼を行わせず、オーバーランを防止するようになっている。
【0003】
なお、特許文献1には、エンジンが駆動軸に連結されておらず、かつアクセル操作量が基準値よりも小さい場合に、エンジン回転速度が基準回転速度以上に上昇したときに、吸気マニホルドに配設したスロットル弁を閉じることでエンジンを停止させる技術が提案されている。
【0004】
【特許文献1】
実公平5−36997号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記内燃機関において、アクセル操作がなされていないときには、スロットル弁を閉側に制御して吸入空気量を絞っているため、特に内燃機関の高回転時にはシリンダ内が過剰に低い圧力となる。その結果、シリンダ内を往復動するピストンに設けられているピストンリングによるシリンダの損傷を招く。また、内燃機関が吸入空気を過給するターボチャージャを備えたものである場合には、高過給状態から急激な負圧になることによるターボチャージャへの損傷を招いたり、過給された吸入空気がターボチャージャの内部を逆流することにより溜息音が発生したりするという問題がある。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内燃機関のオーバーラン状態を適切に判定してスロットル弁の閉側への制御を行い、不用意なスロットル弁の閉側への制御を行わず、内燃機関への悪影響を抑制することができる内燃機関のオーバーラン防止装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関の各気筒に燃焼用空気を導く吸気通路に、駆動手段によって開閉駆動されるスロットル弁が設けられた内燃機関において、前記内燃機関のそのときどきの回転速度を検出する検出手段と、各気筒の膨張行程において検出される前記内燃機関の最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いを算出する算出手段と、前記算出手段によって算出される乖離度合いが、前記各気筒に供給される燃料量に応じて決まる基準乖離度合いよりも大きい場合には前記内燃機関がオーバーラン状態であると判定する判定手段と、前記判定手段によってオーバーラン状態であると判定されたとき、前記スロットル弁を閉側に制御する制御手段と、を備える内燃機関のオーバーラン防止装置を要旨とする。
【0008】
内燃機関の各気筒における燃焼は間欠的に行われるため、内燃機関の回転速度は常に変動している。そして、膨張行程における回転速度の変動幅は燃焼の程度、すなわち燃焼の有無、更には燃焼する燃料の量、及び潤滑油の燃焼の発生等によっても変化する。このため、燃料供給過多や潤滑油の燃焼等が発生した場合には、膨張行程における最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いが変化することとなる。
【0009】
この点、上記構成によれば、各気筒の膨張行程において検出された最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いが燃料量に応じて決まる基準乖離度合いよりも大きい場合には内燃機関のオーバーラン状態であると判定され、スロットル弁が閉側に制御される。ここで、基準乖離度合いとは、燃料供給過多や潤滑油の燃焼等が発生していない通常の燃焼状態において燃料量に応じて決まる最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いをいう。また、内燃機関のオーバーラン状態とは、燃料噴射弁の開故障による燃料供給過多や潤滑油の燃焼により意図していない状況で機関回転速度が上昇した状態をいう。
【0010】
逆に、各気筒の膨張行程において検出された最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いが燃料量に応じた基準乖離度合い以下の場合には内燃機関のオーバーラン状態ではないと判定され、スロットル弁が閉側に制御されることはない。そのため、特に内燃機関が高回転時であっても、内燃機関がオーバーラン状態でないと判定されるとスロットル弁が閉側に制御されることはないため、シリンダ内が過剰に低い圧力となることはなくなり、内燃機関への悪影響を抑制することができる。
【0011】
また、内燃機関の最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いとしては、例えば請求項2に記載の発明によるように、各気筒の膨張行程において検出される内燃機関の最大回転速度と最小回転速度との回転速度偏差を用いることができる。この場合、平均回転速度の算出処理が不要になるため、制御を実行するにあたって電子制御装置等の演算負荷についてもこれを軽減することができるようになる。なお、内燃機関の最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いとしては、他にも各気筒の膨張行程において検出される内燃機関の最大回転速度と最小回転速度との回転速度比を用いることもできる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、内燃機関の各気筒に燃焼用空気を導く吸気通路に、駆動手段によって開閉駆動されるスロットル弁が設けられた内燃機関において、前記内燃機関のそのときどきの回転速度を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出されたそのときどきの機関回転速度に基づいて平均回転速度を算出し、各気筒の膨張行程において検出される前記内燃機関の最大回転速度又は最小回転速度と該平均回転速度との回転速度偏差を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出される回転速度偏差が、前記各気筒に供給される燃料量に応じて決まる基準回転速度偏差よりも大きい場合には前記内燃機関がオーバーラン状態であると判定する判定手段と、前記判定手段によってオーバーラン状態であると判定されたとき、前記スロットル弁を閉側に制御する制御手段と、を備える内燃機関のオーバーラン防止装置を要旨とする。
【0013】
従って、上記構成によれば、各気筒の膨張行程において検出された最大回転速度又は最小回転速度と平均回転速度との回転速度偏差が燃料量に応じて決まる基準回転速度偏差よりも大きい場合には内燃機関のオーバーラン状態であると判定され、スロットル弁が閉側に制御される。逆に、各気筒の膨張行程において検出された最大回転速度又は最小回転速度と平均回転速度との回転速度偏差が燃料量に応じた基準回転速度偏差以下の場合には内燃機関のオーバーラン状態ではないと判定され、スロットル弁が閉側に制御されることはない。そのため、特に内燃機関が高回転時であっても、内燃機関がオーバーラン状態でないと判定されるとスロットル弁が閉側に制御されることはないため、シリンダ内が過剰に低い圧力となることはなくなり、内燃機関への悪影響を抑制することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の内燃機関のオーバーラン防止装置において、前記判定手段は、前記算出手段によって算出された回転速度偏差又は前記燃料量に応じた基準回転速度偏差を前記内燃機関の温度に基づいて補正するものである。
【0015】
従って、上記構成によれば、内燃機関の温度に基づいて回転速度偏差又は基準回転速度偏差を補正するようにしているので、内燃機関のオーバーラン状態をより正確に判定することができるようになる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関のオーバーラン防止装置において、前記判定手段は、前記算出手段によって算出された回転速度偏差又は前記燃料量に応じた基準回転速度偏差をそのときの平均回転速度に基づいて補正するものである。
【0017】
従って、上記構成によれば、内燃機関の平均回転速度に基づいて回転速度偏差又は基準回転速度偏差を補正するようにしているので、内燃機関のオーバーラン状態をより正確に判定することができるようになる。
【0018】
請求項6に記載の発明のように、内燃機関を、ディーゼルエンジンとすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を、ディーゼルエンジンに具体化した第1実施形態について説明する。
【0020】
車両には、図1に示すように、蓄圧式ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)11が搭載されている。エンジン11は、シリンダヘッド12と、複数の気筒(シリンダ)13を有するシリンダブロック14とを備えている。各シリンダ13内にはピストン15が往復動可能に収容されている。各ピストン15はコネクティングロッド16を介し、エンジン11の出力軸であるクランク軸17に連結されている。各ピストン15の往復運動は、コネクティングロッド16によって回転運動に変換された後、クランク軸17に伝達される。クランク軸17の回転は図示しない変速機等を介して自動車の車輪に伝達される。
【0021】
エンジン11には、シリンダ13毎に燃焼室18が設けられている。各燃焼室18には、吸気通路19及び排気通路20が接続されている。シリンダヘッド12には、シリンダ13毎に吸気弁21及び排気弁22が設けられている。これらの吸・排気弁21,22は、クランク軸17の回転に連動して往復動することにより、吸・排気通路19,20を開閉する。
【0022】
吸気通路19には、エアクリーナ23、スロットル弁24等が配置されている。そして、基本的にはエンジン11の吸気行程において、排気弁22が閉じられ、吸気弁21が開かれた状態でピストン15が下降すると、シリンダ13内の気圧が外気より低い値(負圧)になり、同エンジン11の外部の空気が吸気通路19の各部を順に通過して燃焼室18に取込まれる。
【0023】
スロットル弁24は、吸気通路19内に回動可能に支持されており、同スロットル弁24に連結されたステップモータ等のアクチュエータ25により駆動される。吸気通路19を流れる空気の量(吸入空気量)は、スロットル弁24の開き具合(開度)に応じて変化する。
【0024】
シリンダヘッド12には、各燃焼室18に燃料を噴射する燃料噴射ノズル26が取付けられている。各燃料噴射ノズル26は電磁弁(図示略)を備えており、この電磁弁により、燃料噴射ノズル26から燃焼室18への燃料噴射が制御される。燃料噴射ノズル26は、蓄圧装置(共通の蓄圧配管)であるコモンレール27に接続されており、電磁弁が開いている間、コモンレール27内の燃料が燃料噴射ノズル26から対応する燃焼室18に噴射される。コモンレール27には、燃料噴射圧に相当する比較的高い圧力が蓄積されている。この蓄圧を実現するために、コモンレール27は、燃料ポンプであるサプライポンプ28に接続されている。
【0025】
サプライポンプ28は燃料タンク(図示略)から燃料を吸入するとともに、エンジン11の回転に同期するカムによってプランジャを往復動させ、燃料を所定圧に高めてコモンレール27に供給する。
【0026】
そして、吸気通路19を通ってシリンダ13内に導入され、かつピストン15により圧縮された高温かつ高圧の吸入空気に対し、燃料噴射ノズル26から燃料が噴射される。この噴射燃料は自己着火して燃焼する。このときに生じた燃焼ガスによりピストン15が往復動され、クランク軸17が回転されて、エンジン11の駆動力(出力トルク)が得られる。燃焼ガスは、排気通路20に設けられた触媒29等を通ってエンジン11の外部へ排出される。
【0027】
エンジン11には、過給機の一形態である可変ノズルターボチャージャ30が設けられている。可変ノズルターボチャージャ30は、排気通路20を流れる排気ガスによって回転するタービンホイール31と、吸気通路19に配置され、かつロータシャフト32を介してタービンホイール31に連結されたコンプレッサホイール33とを備えている。可変ノズルターボチャージャ30では、タービンホイール31に排気ガスが吹付けられて同ホイール31が回転する。この回転は、ロータシャフト32を介してコンプレッサホイール33に伝達される。その結果、エンジン11では、ピストン15の移動にともなって燃焼室18内に発生する負圧によって空気が燃焼室18に送り込まれるだけでなく、その空気がコンプレッサホイール33の回転によって強制的に燃焼室18に送り込まれる(過給される)。このようにして、燃焼室18への空気の充填効率が高められる。
【0028】
また、可変ノズルターボチャージャ30では、タービンホイール31の外周を囲うように、そのホイール31の回転方向に沿って排気ガス経路が形成され、排気ガスは排気ガス経路を通過し、タービンホイール31の軸線に向かって吹付けられる。排気ガス経路には、リング状のノズルバックプレート34に対して複数のノズルベーン(可変ノズル)35を回動可能に設けた可変ノズル機構が設けられている。可変ノズル機構は、DCモータ等のアクチュエータ36の作動により全ノズルベーン35が同期した状態で開閉動作させることで、排気ガス経路の排気ガス流通面積を変更し、タービンホイール31に吹付けられる排気ガスの流速を可変とする。このように排気ガスの流速を可変とすることで、タービンホイール31の回転速度が調整され、ひいては燃焼室18への吸入空気が所定の過給圧にて供給される。
【0029】
エンジン11には、排気通路20を流れる排気ガスの一部を、吸気通路19に還流させる排気還流(以下「EGR」という)装置40が設けられている。EGR装置40は、還流にともなって吸入空気に混合される排気ガス(EGRガス)により、混合気中の不活性ガスの割合を増やして燃焼最高温度を下げ、大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)の発生を低減させるためのものである。
【0030】
EGR装置40は、EGR通路41及びEGR弁42を備えている。EGR通路41は、排気通路20と、吸気通路19においてスロットル弁24よりも下流側の箇所とをつないでいる。EGR弁42はEGR通路41の途中、例えば、EGR通路41の吸気通路19との接続箇所に取付けられている。EGR通路41を流れるEGRガスの流量は、EGR弁42の開き具合(開度)に応じて変化する。
【0031】
上記のように構成されたディーゼルエンジン11の制御を行うために電子制御装置(以下、ECUという)50が設けられている。ECU50はディーゼルエンジン11における燃料噴射量制御及び燃料噴射時期制御といった燃料噴射制御を行う。この燃料噴射量制御に付随してECU50はコモンレール27内の燃料の噴射圧力制御及び可変ノズルターボチャージャ30による過給圧制御を行う。又、ECU50はEGR弁42の開度制御及びスロットル弁24の開度制御を行う。
【0032】
ECU50には、以下に示される各種信号が入力される。
・ 自動車の運転者によって操作されるアクセルペダル43の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ44からの検出信号。
【0033】
・ クランク軸17の回転に対応した信号を出力するクランクポジションセンサ45からの検出信号。
・ ディーゼルエンジン11の冷却水温を検出する水温センサ46からの検出信号。
【0034】
ディーゼルエンジン11においては、ECU50による燃料噴射量制御によって出力トルクが調整される。こうした燃料噴射量制御は、アクセル踏込量ACCP及びエンジン回転速度NE等から算出される燃料噴射量指令値Qfinに基づき燃料噴射ノズル26を駆動制御することによって行われる。なお、アクセル踏込量ACCPはアクセルポジションセンサ44からの検出信号に基づき求められ、エンジン回転速度NEはクランクポジションセンサ45からの検出信号に基づき求められる。
【0035】
上記のようにECU50を通じて燃料噴射ノズル26を駆動制御することにより、燃料噴射量指令値Qfinに対応した量の燃料が各燃焼室18内に噴射されてディーゼルエンジン11の出力トルクが調整されるようになる。燃料噴射量指令値Qfinの算出に用いられるアクセル踏込量ACCPは、運転者による自動車への走行要求、言い換えればディーゼルエンジン11への出力要求を表すパラメータである。従って、燃料噴射量指令値Qfinに基づき燃料噴射量を制御することで、運転者から要求される出力トルクが得られるようディーゼルエンジン11の出力トルクが調整されることとなる。
【0036】
また、ECU50は、サプライポンプ28の吐出量を制御することによってコモンレール27内の燃圧、すなわち噴射圧力を制御する。この噴射圧力については、噴射圧力を増加させるほど燃料噴射ノズル26から噴射される燃料の微粒化を促進することができる。ただし、燃料噴射量が多い場合には噴射圧力が増加するように設定され、噴射された燃料の微粒化を促進して燃料粒子の燃え残りをなくして煤を主成分とする微粒子(パティキュレート)の生成を抑制するようにしている。
【0037】
また、ECU50は、ディーゼルエンジン11での燃焼状態が最適化されるように、燃料噴射量に応じて噴射時期を調整するようになっている。この噴射時期については、噴射時期を進角させるほど燃焼の開始時期を早めることができる。
【0038】
更に、ECU50は、ディーゼルエンジン11での燃焼状態が最適化されるように、アクチュエータ36を駆動してノズルベーン35の開度VNTを調整することによって可変ノズルターボチャージャ30による過給圧を制御する。
【0039】
また、ECU50は、クランクポジションセンサ45によって検出されるディーゼルエンジン11のエンジン回転速度NEに基づいてディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であるかどうかを判定し、オーバーラン状態であると判定したときにはスロットル弁24を閉側に制御するシャットオフ制御を行う。
【0040】
このオーバーラン状態の判定は、ディーゼルエンジン11のエンジン回転速度NEを微視的に検出し、燃焼が影響しているかどうかを判定することによって行われる。
【0041】
すなわち、図2はエンジン回転速度NEとクランク角パルスとの状態を示している。エンジン回転速度NEは微視的に見ると、各気筒の膨張行程における圧縮上死点TDCにて最小回転速度となり、圧縮上死点TDC後90度にて最大回転速度NEATDC90となる。
【0042】
図4は燃料噴射が行われておらず、燃焼がない場合のエンジン回転速度NEの状況を示している。車両は坂道等を降坂していて、エンジン回転速度NEは上昇している状態である。エンジン回転速度NEが最大となる圧縮上死点TDC後90度における最大回転速度NEATDC90と圧縮上死点TDCにおける最小回転速度との平均によりディーゼルエンジン11の平均回転速度NEAVEが算出される。この状況では、最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEはわずかであることが分かる。
【0043】
それに対し、図5は意図しない燃焼がある場合のエンジン回転速度NEの状況を示している。車両は意図しない燃焼により、エンジン回転速度NEは上昇している状態である。この状況では、エンジン回転速度NEが最大となる圧縮上死点TDC後90度における最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEは大きいことが分かる。
【0044】
従って、ECU50は、各気筒の膨張行程における前記回転速度偏差ΔNEと、燃料噴射量が「0」であるときの平均回転速度に対応する基準回転速度偏差ΔNE0との比較結果に基づいて、ディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であるか否かを判定する。すなわち、燃料噴射量が「0」であって、かつ、回転速度偏差ΔNEが、そのときの平均回転速度NEAVEに対応する基準回転速度偏差ΔNE0よりも大きいときには、ディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であると判定される。また、燃料噴射量が「0」であって、かつ、回転速度偏差ΔNEがそのときの平均回転速度NEAVEに対応する基準回転速度偏差ΔNE0以下であるときには、ディーゼルエンジン11がオーバーラン状態でないと判定される。
【0045】
図3は、ECU50を通じて実行されるオーバーラン状態の判定手順である。このルーチンは、ECU50を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0046】
本ルーチンにおいて、ステップ100において燃料噴射量が0であるか否かが判定される。燃料噴射量が0でないと判定されると(ステップ100:NO)、本処理を一旦終了する。逆に、燃料噴射量が0であると判定されると(ステップ100:YES)、ステップ110に進む。
【0047】
次に、クランクポジションセンサ45にて検出されるエンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEがそのときの基準回転速度偏差ΔNE0より大きいか否かが判定される。この基準回転速度偏差ΔNE0はECU50に予め記憶された図6に示す基準回転速度偏差のマップに基づいて算出される。この基準回転速度偏差ΔNE0はそのときの平均回転速度NEAVEとディーゼルエンジン11の冷却水温(エンジン温度)とに基づいて算出される。
【0048】
ここで、エンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEが基準回転速度偏差ΔNE0より大きいと判定されると(ステップ110:YES)、処理はステップ120に進む。ステップ120ではディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であると判定され、スロットル弁24を閉じる又は全閉とする等のシャットオフ制御が実行される。
【0049】
また、エンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEが基準回転速度偏差ΔNE0以下であると判定されると(ステップ110:NO)、オーバーラン状態でないと判定され、スロットル弁24のシャットオフ制御は実行されず、本ルーチンが終了する。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1) 各シリンダ13の膨張行程における回転速度偏差ΔNEが、燃料噴射量0であるときの基準回転速度偏差ΔNE0よりも大きい場合にはディーゼルエンジン11のオーバーラン状態であると判定され、スロットル弁24のシャットオフ制御が行われる。その結果、ディーゼルエンジン11のオーバーランが防止される。逆に、回転速度偏差ΔNEが燃料噴射量0であるときの基準回転速度偏差ΔNE0以下の場合にはディーゼルエンジン11のオーバーラン状態ではないと判定され、スロットル弁24のシャットオフ制御は行われない。そのため、特にディーゼルエンジン11の高回転時であっても、スロットル弁24が閉側に制御されることはないため、シリンダ13内が過剰に低い圧力となることはなくなり、ピストン15のピストンリングによるシリンダ13の損傷を抑制することができる。また、可変ノズルターボチャージャ30の高過給状態から急激な負圧になることによるターボチャージャ30の損傷を招いたり、過給された吸入空気がターボチャージャ30内を逆流することによる溜息音の発生を抑制することができ、ディーゼルエンジン11への悪影響を抑制することができる。
【0051】
(2) また、本実施形態においては、ディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であるか否かを判定するための基準回転速度偏差ΔNE0を平均回転速度NEAVEとディーゼルエンジン11の温度に基づいて補正するようにしている。そのため、ディーゼルエンジン11のオーバーラン状態をより正確に判定することができるようになる。
【0052】
(3) また、車両の減速時等のアクセルOFF時においてディーゼルエンジン11がオーバーラン状態でないと判定されるとスロットル弁24のシャットオフ制御が行われないため、吸気が絞られることによって増大するポンピングロスを低減することもできる。これにより、原動機としてエンジンと電動モータとを備えたハイブリッドシステム車両等の回生ブレーキをより効率良く行うことができるようになる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図7〜図9に従って説明する。
上記第1実施形態においては、ディーゼルエンジン11のオーバーラン状態の判定を燃料噴射量が0である場合に実施するようにしたが、ディーゼルエンジン11のオーバーラン状態は燃料噴射量が0でない場合、例えばアイドル運転状態のような場合にも起こりうる。
【0054】
そこで本実施形態では、燃料噴射量に応じてディーゼルエンジン11のオーバーラン状態を判定する制御を実行する。本実施形態において、ディーゼルエンジン11及びその制御装置のシステム構成は第1実施形態と同様である。
【0055】
本実施形態においてECU50が実行するオーバーラン状態の判定制御処理を図7に示すフローチャートを参照して説明する。このルーチンは、ECU50を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0056】
本ルーチンにおいて、ステップ200において所定の燃料噴射量に対して、ディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であるか否かを判定するための基準回転速度偏差ΔNE0が算出される。この基準回転速度偏差ΔNE0は、ECU50に予め記憶された図8に示す回転速度の基準偏差のマップに基づいて算出される基準偏差と、図9に示す補正係数のマップに基づいて算出される補正係数とに基づいて算出される。図8のマップから求められる基準偏差はそのときの燃料噴射量に応じた気筒の膨張行程において検出される最大回転速度と平均回転速度との回転速度偏差である。図9のマップから求められる補正係数はそのときの平均回転速度NEAVEとディーゼルエンジン11の冷却水温(エンジン温度)とに基づいて算出される。
【0057】
次に、クランクポジションセンサ45にて検出されるエンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEが前記ステップ200において算出された基準回転速度偏差ΔNE0より大きいか否かが判定される。
【0058】
ここで、エンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEが基準回転速度偏差ΔNE0より大きいと判定されると(ステップ210:YES)、処理はステップ220に進む。ステップ220ではディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であると判定され、スロットル弁24を閉じる又は全閉とする等のシャットオフ制御が実行される。
【0059】
また、エンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEが基準回転速度偏差ΔNE0以下であると判定されると(ステップ210:NO)、オーバーラン状態でないと判定され、スロットル弁24のシャットオフ制御は実行されず、本ルーチンが終了する。
【0060】
従って、本実施形態によれば、上記第1実施形態に記載の特徴に加えて、以下の効果が得られる。
(3)所定の燃料噴射量の運転状態において、ディーゼルエンジン11のオーバーラン状態を判定することができ、その判定結果に基づいてスロットル弁24を閉じる又は全閉とする等のシャットオフ制御を実行することができる。
【0061】
なお、実施の形態は上記に限定されるものではなく、次のように変更してもよい。
・ 上記各実施形態では、燃料量に応じた基準回転速度偏差ΔNE0を平均回転速度NEAVEとディーゼルエンジン11の温度に基づいて補正するようにした。これに代えて、クランクポジションセンサ45によって検出された最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEを平均回転速度NEAVEとディーゼルエンジン11の温度に基づいて補正するようにしてもよい。
【0062】
・ 上記各実施形態では、クランクポジションセンサ45によって検出された最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEを基準回転速度偏差ΔNE0と比較することによりディーゼルエンジン11のオーバーラン状態を判定するようにした。これに代えて、クランクポジションセンサ45によって検出された最小回転速度と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差を基準回転速度偏差ΔNE0と比較することによりディーゼルエンジン11のオーバーラン状態を判定するようにしてもよい。あるいは、クランクポジションセンサ45によって検出された最大回転速度NEATDC90と最小回転速度との回転速度偏差を基準回転速度偏差と比較するようにすることもできる。この場合には、基準回転速度偏差として、最大回転速度NEATDC90と最小回転速度との回転速度偏差に対応するものを用いればよい。このようにしてもディーゼルエンジン11のオーバーラン状態を適切に判定することができる。しかも、平均回転速度NEAVEの算出処理が不要になるため、電子制御装置の演算負荷についてもこれを軽減することができるようになる。また、クランクポジションセンサ45によって検出された最大回転速度NEATDC90と最小回転速度との回転速度比をこれに対応する基準回転速度比と比較するようにしてもよい。要するに、ディーゼルエンジン11の各気筒において燃料供給過多や潤滑油の燃焼等が発生した場合には、最大回転速度NEATDC90と最小回転速度との乖離度合い(偏差及び比)が変化する。このため、この乖離度合いがそれに対応する基準乖離度合いよりも大きい場合には、ディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であると判定することができる。なお、最大回転速度NEATDC90と最小回転速度との乖離度合いには、他にも最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度比、及び最小回転速度と平均回転速度NEAVEとの回転速度比等も含まれる。
【0063】
・ 上記各実施形態では、内燃機関としてディーゼルエンジン11に具体化したが、アクセル操作量に基づいて吸入空気量が調整され、その吸入空気量を含む機関運転状態に基づいて燃料量が設定されるガソリンエンジンに具体化してもよい。この場合にも、上記各記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
次に、上記各実施形態から把握できる他の技術的思想を、以下に記載する。
・ 請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関のオーバーラン防止装置において、前記内燃機関は、前記アクセル操作量に基づいて吸入空気量が調整され、その吸入空気量を含む機関運転状態に基づいて供給される燃料量が設定されるガソリンエンジンである。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のオーバーラン防止装置が適用されるディーゼルエンジン全体を示す略図。
【図2】エンジン回転速度を微視的に見た状態を示すタイムチャート。
【図3】第1実施形態におけるオーバーラン状態の判定手順を示すフローチャート。
【図4】燃料噴射が行われておらず、燃焼がない場合のエンジン回転速度NEを微視的に見た状態を示すタイムチャート。
【図5】燃料噴射が行われておらず、燃焼がある場合のエンジン回転速度NEを微視的に見た状態を示すタイムチャート。
【図6】第1実施形態において、基準回転速度偏差の算出に用いられるマップ。
【図7】第2実施形態におけるオーバーラン状態の判定手順を示すフローチャート。
【図8】第2実施形態における回転速度基準偏差の算出に用いられるマップ。
【図9】第2実施形態における回転速度基準偏差の補正値算出に用いられるマップ。
【符号の説明】
11…ディーゼルエンジン、13…気筒(シリンダ)、15…ピストン、16…コネクティングロッド、17…クランク軸、18…燃焼室、19…吸気通路、20…排気通路、24…スロットル弁、26…燃料噴射ノズル、27…コモンレール(蓄圧装置)、30…可変ノズルターボチャージャ(過給機)、43…アクセルペダル、44…アクセルポジションセンサ、45…検出手段としてのクランクポジションセンサ、50…算出手段、判定手段及び制御手段としての電子制御装置(ECU)、NEAVE…平均回転速度、NEATDC90…最大回転速度、ΔNE…回転速度偏差、ΔNE0…基準回転速度偏差。
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関のオーバーラン防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関の吸気通路に駆動手段によって開閉駆動される電子制御スロットル弁が設けられ、アクセル操作量に基づいて該内燃機関に供給される燃料量が設定されるものが提案されている。このような内燃機関において、機関回転速度がオーバーラン(燃料噴射弁の開故障による燃料供給過多や潤滑油の燃焼により意図していない状況で機関回転速度が上昇する)になると、内燃機関を構成する部品が破損する等の不都合が生じる。そのため、このような内燃機関においてはアクセル操作がなされていないときにはスロットル弁を閉側に制御して吸入空気量を絞り、内燃機関の燃焼を行わせず、オーバーランを防止するようになっている。
【0003】
なお、特許文献1には、エンジンが駆動軸に連結されておらず、かつアクセル操作量が基準値よりも小さい場合に、エンジン回転速度が基準回転速度以上に上昇したときに、吸気マニホルドに配設したスロットル弁を閉じることでエンジンを停止させる技術が提案されている。
【0004】
【特許文献1】
実公平5−36997号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記内燃機関において、アクセル操作がなされていないときには、スロットル弁を閉側に制御して吸入空気量を絞っているため、特に内燃機関の高回転時にはシリンダ内が過剰に低い圧力となる。その結果、シリンダ内を往復動するピストンに設けられているピストンリングによるシリンダの損傷を招く。また、内燃機関が吸入空気を過給するターボチャージャを備えたものである場合には、高過給状態から急激な負圧になることによるターボチャージャへの損傷を招いたり、過給された吸入空気がターボチャージャの内部を逆流することにより溜息音が発生したりするという問題がある。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内燃機関のオーバーラン状態を適切に判定してスロットル弁の閉側への制御を行い、不用意なスロットル弁の閉側への制御を行わず、内燃機関への悪影響を抑制することができる内燃機関のオーバーラン防止装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関の各気筒に燃焼用空気を導く吸気通路に、駆動手段によって開閉駆動されるスロットル弁が設けられた内燃機関において、前記内燃機関のそのときどきの回転速度を検出する検出手段と、各気筒の膨張行程において検出される前記内燃機関の最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いを算出する算出手段と、前記算出手段によって算出される乖離度合いが、前記各気筒に供給される燃料量に応じて決まる基準乖離度合いよりも大きい場合には前記内燃機関がオーバーラン状態であると判定する判定手段と、前記判定手段によってオーバーラン状態であると判定されたとき、前記スロットル弁を閉側に制御する制御手段と、を備える内燃機関のオーバーラン防止装置を要旨とする。
【0008】
内燃機関の各気筒における燃焼は間欠的に行われるため、内燃機関の回転速度は常に変動している。そして、膨張行程における回転速度の変動幅は燃焼の程度、すなわち燃焼の有無、更には燃焼する燃料の量、及び潤滑油の燃焼の発生等によっても変化する。このため、燃料供給過多や潤滑油の燃焼等が発生した場合には、膨張行程における最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いが変化することとなる。
【0009】
この点、上記構成によれば、各気筒の膨張行程において検出された最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いが燃料量に応じて決まる基準乖離度合いよりも大きい場合には内燃機関のオーバーラン状態であると判定され、スロットル弁が閉側に制御される。ここで、基準乖離度合いとは、燃料供給過多や潤滑油の燃焼等が発生していない通常の燃焼状態において燃料量に応じて決まる最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いをいう。また、内燃機関のオーバーラン状態とは、燃料噴射弁の開故障による燃料供給過多や潤滑油の燃焼により意図していない状況で機関回転速度が上昇した状態をいう。
【0010】
逆に、各気筒の膨張行程において検出された最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いが燃料量に応じた基準乖離度合い以下の場合には内燃機関のオーバーラン状態ではないと判定され、スロットル弁が閉側に制御されることはない。そのため、特に内燃機関が高回転時であっても、内燃機関がオーバーラン状態でないと判定されるとスロットル弁が閉側に制御されることはないため、シリンダ内が過剰に低い圧力となることはなくなり、内燃機関への悪影響を抑制することができる。
【0011】
また、内燃機関の最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いとしては、例えば請求項2に記載の発明によるように、各気筒の膨張行程において検出される内燃機関の最大回転速度と最小回転速度との回転速度偏差を用いることができる。この場合、平均回転速度の算出処理が不要になるため、制御を実行するにあたって電子制御装置等の演算負荷についてもこれを軽減することができるようになる。なお、内燃機関の最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いとしては、他にも各気筒の膨張行程において検出される内燃機関の最大回転速度と最小回転速度との回転速度比を用いることもできる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、内燃機関の各気筒に燃焼用空気を導く吸気通路に、駆動手段によって開閉駆動されるスロットル弁が設けられた内燃機関において、前記内燃機関のそのときどきの回転速度を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出されたそのときどきの機関回転速度に基づいて平均回転速度を算出し、各気筒の膨張行程において検出される前記内燃機関の最大回転速度又は最小回転速度と該平均回転速度との回転速度偏差を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出される回転速度偏差が、前記各気筒に供給される燃料量に応じて決まる基準回転速度偏差よりも大きい場合には前記内燃機関がオーバーラン状態であると判定する判定手段と、前記判定手段によってオーバーラン状態であると判定されたとき、前記スロットル弁を閉側に制御する制御手段と、を備える内燃機関のオーバーラン防止装置を要旨とする。
【0013】
従って、上記構成によれば、各気筒の膨張行程において検出された最大回転速度又は最小回転速度と平均回転速度との回転速度偏差が燃料量に応じて決まる基準回転速度偏差よりも大きい場合には内燃機関のオーバーラン状態であると判定され、スロットル弁が閉側に制御される。逆に、各気筒の膨張行程において検出された最大回転速度又は最小回転速度と平均回転速度との回転速度偏差が燃料量に応じた基準回転速度偏差以下の場合には内燃機関のオーバーラン状態ではないと判定され、スロットル弁が閉側に制御されることはない。そのため、特に内燃機関が高回転時であっても、内燃機関がオーバーラン状態でないと判定されるとスロットル弁が閉側に制御されることはないため、シリンダ内が過剰に低い圧力となることはなくなり、内燃機関への悪影響を抑制することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の内燃機関のオーバーラン防止装置において、前記判定手段は、前記算出手段によって算出された回転速度偏差又は前記燃料量に応じた基準回転速度偏差を前記内燃機関の温度に基づいて補正するものである。
【0015】
従って、上記構成によれば、内燃機関の温度に基づいて回転速度偏差又は基準回転速度偏差を補正するようにしているので、内燃機関のオーバーラン状態をより正確に判定することができるようになる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関のオーバーラン防止装置において、前記判定手段は、前記算出手段によって算出された回転速度偏差又は前記燃料量に応じた基準回転速度偏差をそのときの平均回転速度に基づいて補正するものである。
【0017】
従って、上記構成によれば、内燃機関の平均回転速度に基づいて回転速度偏差又は基準回転速度偏差を補正するようにしているので、内燃機関のオーバーラン状態をより正確に判定することができるようになる。
【0018】
請求項6に記載の発明のように、内燃機関を、ディーゼルエンジンとすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を、ディーゼルエンジンに具体化した第1実施形態について説明する。
【0020】
車両には、図1に示すように、蓄圧式ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)11が搭載されている。エンジン11は、シリンダヘッド12と、複数の気筒(シリンダ)13を有するシリンダブロック14とを備えている。各シリンダ13内にはピストン15が往復動可能に収容されている。各ピストン15はコネクティングロッド16を介し、エンジン11の出力軸であるクランク軸17に連結されている。各ピストン15の往復運動は、コネクティングロッド16によって回転運動に変換された後、クランク軸17に伝達される。クランク軸17の回転は図示しない変速機等を介して自動車の車輪に伝達される。
【0021】
エンジン11には、シリンダ13毎に燃焼室18が設けられている。各燃焼室18には、吸気通路19及び排気通路20が接続されている。シリンダヘッド12には、シリンダ13毎に吸気弁21及び排気弁22が設けられている。これらの吸・排気弁21,22は、クランク軸17の回転に連動して往復動することにより、吸・排気通路19,20を開閉する。
【0022】
吸気通路19には、エアクリーナ23、スロットル弁24等が配置されている。そして、基本的にはエンジン11の吸気行程において、排気弁22が閉じられ、吸気弁21が開かれた状態でピストン15が下降すると、シリンダ13内の気圧が外気より低い値(負圧)になり、同エンジン11の外部の空気が吸気通路19の各部を順に通過して燃焼室18に取込まれる。
【0023】
スロットル弁24は、吸気通路19内に回動可能に支持されており、同スロットル弁24に連結されたステップモータ等のアクチュエータ25により駆動される。吸気通路19を流れる空気の量(吸入空気量)は、スロットル弁24の開き具合(開度)に応じて変化する。
【0024】
シリンダヘッド12には、各燃焼室18に燃料を噴射する燃料噴射ノズル26が取付けられている。各燃料噴射ノズル26は電磁弁(図示略)を備えており、この電磁弁により、燃料噴射ノズル26から燃焼室18への燃料噴射が制御される。燃料噴射ノズル26は、蓄圧装置(共通の蓄圧配管)であるコモンレール27に接続されており、電磁弁が開いている間、コモンレール27内の燃料が燃料噴射ノズル26から対応する燃焼室18に噴射される。コモンレール27には、燃料噴射圧に相当する比較的高い圧力が蓄積されている。この蓄圧を実現するために、コモンレール27は、燃料ポンプであるサプライポンプ28に接続されている。
【0025】
サプライポンプ28は燃料タンク(図示略)から燃料を吸入するとともに、エンジン11の回転に同期するカムによってプランジャを往復動させ、燃料を所定圧に高めてコモンレール27に供給する。
【0026】
そして、吸気通路19を通ってシリンダ13内に導入され、かつピストン15により圧縮された高温かつ高圧の吸入空気に対し、燃料噴射ノズル26から燃料が噴射される。この噴射燃料は自己着火して燃焼する。このときに生じた燃焼ガスによりピストン15が往復動され、クランク軸17が回転されて、エンジン11の駆動力(出力トルク)が得られる。燃焼ガスは、排気通路20に設けられた触媒29等を通ってエンジン11の外部へ排出される。
【0027】
エンジン11には、過給機の一形態である可変ノズルターボチャージャ30が設けられている。可変ノズルターボチャージャ30は、排気通路20を流れる排気ガスによって回転するタービンホイール31と、吸気通路19に配置され、かつロータシャフト32を介してタービンホイール31に連結されたコンプレッサホイール33とを備えている。可変ノズルターボチャージャ30では、タービンホイール31に排気ガスが吹付けられて同ホイール31が回転する。この回転は、ロータシャフト32を介してコンプレッサホイール33に伝達される。その結果、エンジン11では、ピストン15の移動にともなって燃焼室18内に発生する負圧によって空気が燃焼室18に送り込まれるだけでなく、その空気がコンプレッサホイール33の回転によって強制的に燃焼室18に送り込まれる(過給される)。このようにして、燃焼室18への空気の充填効率が高められる。
【0028】
また、可変ノズルターボチャージャ30では、タービンホイール31の外周を囲うように、そのホイール31の回転方向に沿って排気ガス経路が形成され、排気ガスは排気ガス経路を通過し、タービンホイール31の軸線に向かって吹付けられる。排気ガス経路には、リング状のノズルバックプレート34に対して複数のノズルベーン(可変ノズル)35を回動可能に設けた可変ノズル機構が設けられている。可変ノズル機構は、DCモータ等のアクチュエータ36の作動により全ノズルベーン35が同期した状態で開閉動作させることで、排気ガス経路の排気ガス流通面積を変更し、タービンホイール31に吹付けられる排気ガスの流速を可変とする。このように排気ガスの流速を可変とすることで、タービンホイール31の回転速度が調整され、ひいては燃焼室18への吸入空気が所定の過給圧にて供給される。
【0029】
エンジン11には、排気通路20を流れる排気ガスの一部を、吸気通路19に還流させる排気還流(以下「EGR」という)装置40が設けられている。EGR装置40は、還流にともなって吸入空気に混合される排気ガス(EGRガス)により、混合気中の不活性ガスの割合を増やして燃焼最高温度を下げ、大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)の発生を低減させるためのものである。
【0030】
EGR装置40は、EGR通路41及びEGR弁42を備えている。EGR通路41は、排気通路20と、吸気通路19においてスロットル弁24よりも下流側の箇所とをつないでいる。EGR弁42はEGR通路41の途中、例えば、EGR通路41の吸気通路19との接続箇所に取付けられている。EGR通路41を流れるEGRガスの流量は、EGR弁42の開き具合(開度)に応じて変化する。
【0031】
上記のように構成されたディーゼルエンジン11の制御を行うために電子制御装置(以下、ECUという)50が設けられている。ECU50はディーゼルエンジン11における燃料噴射量制御及び燃料噴射時期制御といった燃料噴射制御を行う。この燃料噴射量制御に付随してECU50はコモンレール27内の燃料の噴射圧力制御及び可変ノズルターボチャージャ30による過給圧制御を行う。又、ECU50はEGR弁42の開度制御及びスロットル弁24の開度制御を行う。
【0032】
ECU50には、以下に示される各種信号が入力される。
・ 自動車の運転者によって操作されるアクセルペダル43の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ44からの検出信号。
【0033】
・ クランク軸17の回転に対応した信号を出力するクランクポジションセンサ45からの検出信号。
・ ディーゼルエンジン11の冷却水温を検出する水温センサ46からの検出信号。
【0034】
ディーゼルエンジン11においては、ECU50による燃料噴射量制御によって出力トルクが調整される。こうした燃料噴射量制御は、アクセル踏込量ACCP及びエンジン回転速度NE等から算出される燃料噴射量指令値Qfinに基づき燃料噴射ノズル26を駆動制御することによって行われる。なお、アクセル踏込量ACCPはアクセルポジションセンサ44からの検出信号に基づき求められ、エンジン回転速度NEはクランクポジションセンサ45からの検出信号に基づき求められる。
【0035】
上記のようにECU50を通じて燃料噴射ノズル26を駆動制御することにより、燃料噴射量指令値Qfinに対応した量の燃料が各燃焼室18内に噴射されてディーゼルエンジン11の出力トルクが調整されるようになる。燃料噴射量指令値Qfinの算出に用いられるアクセル踏込量ACCPは、運転者による自動車への走行要求、言い換えればディーゼルエンジン11への出力要求を表すパラメータである。従って、燃料噴射量指令値Qfinに基づき燃料噴射量を制御することで、運転者から要求される出力トルクが得られるようディーゼルエンジン11の出力トルクが調整されることとなる。
【0036】
また、ECU50は、サプライポンプ28の吐出量を制御することによってコモンレール27内の燃圧、すなわち噴射圧力を制御する。この噴射圧力については、噴射圧力を増加させるほど燃料噴射ノズル26から噴射される燃料の微粒化を促進することができる。ただし、燃料噴射量が多い場合には噴射圧力が増加するように設定され、噴射された燃料の微粒化を促進して燃料粒子の燃え残りをなくして煤を主成分とする微粒子(パティキュレート)の生成を抑制するようにしている。
【0037】
また、ECU50は、ディーゼルエンジン11での燃焼状態が最適化されるように、燃料噴射量に応じて噴射時期を調整するようになっている。この噴射時期については、噴射時期を進角させるほど燃焼の開始時期を早めることができる。
【0038】
更に、ECU50は、ディーゼルエンジン11での燃焼状態が最適化されるように、アクチュエータ36を駆動してノズルベーン35の開度VNTを調整することによって可変ノズルターボチャージャ30による過給圧を制御する。
【0039】
また、ECU50は、クランクポジションセンサ45によって検出されるディーゼルエンジン11のエンジン回転速度NEに基づいてディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であるかどうかを判定し、オーバーラン状態であると判定したときにはスロットル弁24を閉側に制御するシャットオフ制御を行う。
【0040】
このオーバーラン状態の判定は、ディーゼルエンジン11のエンジン回転速度NEを微視的に検出し、燃焼が影響しているかどうかを判定することによって行われる。
【0041】
すなわち、図2はエンジン回転速度NEとクランク角パルスとの状態を示している。エンジン回転速度NEは微視的に見ると、各気筒の膨張行程における圧縮上死点TDCにて最小回転速度となり、圧縮上死点TDC後90度にて最大回転速度NEATDC90となる。
【0042】
図4は燃料噴射が行われておらず、燃焼がない場合のエンジン回転速度NEの状況を示している。車両は坂道等を降坂していて、エンジン回転速度NEは上昇している状態である。エンジン回転速度NEが最大となる圧縮上死点TDC後90度における最大回転速度NEATDC90と圧縮上死点TDCにおける最小回転速度との平均によりディーゼルエンジン11の平均回転速度NEAVEが算出される。この状況では、最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEはわずかであることが分かる。
【0043】
それに対し、図5は意図しない燃焼がある場合のエンジン回転速度NEの状況を示している。車両は意図しない燃焼により、エンジン回転速度NEは上昇している状態である。この状況では、エンジン回転速度NEが最大となる圧縮上死点TDC後90度における最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEは大きいことが分かる。
【0044】
従って、ECU50は、各気筒の膨張行程における前記回転速度偏差ΔNEと、燃料噴射量が「0」であるときの平均回転速度に対応する基準回転速度偏差ΔNE0との比較結果に基づいて、ディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であるか否かを判定する。すなわち、燃料噴射量が「0」であって、かつ、回転速度偏差ΔNEが、そのときの平均回転速度NEAVEに対応する基準回転速度偏差ΔNE0よりも大きいときには、ディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であると判定される。また、燃料噴射量が「0」であって、かつ、回転速度偏差ΔNEがそのときの平均回転速度NEAVEに対応する基準回転速度偏差ΔNE0以下であるときには、ディーゼルエンジン11がオーバーラン状態でないと判定される。
【0045】
図3は、ECU50を通じて実行されるオーバーラン状態の判定手順である。このルーチンは、ECU50を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0046】
本ルーチンにおいて、ステップ100において燃料噴射量が0であるか否かが判定される。燃料噴射量が0でないと判定されると(ステップ100:NO)、本処理を一旦終了する。逆に、燃料噴射量が0であると判定されると(ステップ100:YES)、ステップ110に進む。
【0047】
次に、クランクポジションセンサ45にて検出されるエンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEがそのときの基準回転速度偏差ΔNE0より大きいか否かが判定される。この基準回転速度偏差ΔNE0はECU50に予め記憶された図6に示す基準回転速度偏差のマップに基づいて算出される。この基準回転速度偏差ΔNE0はそのときの平均回転速度NEAVEとディーゼルエンジン11の冷却水温(エンジン温度)とに基づいて算出される。
【0048】
ここで、エンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEが基準回転速度偏差ΔNE0より大きいと判定されると(ステップ110:YES)、処理はステップ120に進む。ステップ120ではディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であると判定され、スロットル弁24を閉じる又は全閉とする等のシャットオフ制御が実行される。
【0049】
また、エンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEが基準回転速度偏差ΔNE0以下であると判定されると(ステップ110:NO)、オーバーラン状態でないと判定され、スロットル弁24のシャットオフ制御は実行されず、本ルーチンが終了する。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1) 各シリンダ13の膨張行程における回転速度偏差ΔNEが、燃料噴射量0であるときの基準回転速度偏差ΔNE0よりも大きい場合にはディーゼルエンジン11のオーバーラン状態であると判定され、スロットル弁24のシャットオフ制御が行われる。その結果、ディーゼルエンジン11のオーバーランが防止される。逆に、回転速度偏差ΔNEが燃料噴射量0であるときの基準回転速度偏差ΔNE0以下の場合にはディーゼルエンジン11のオーバーラン状態ではないと判定され、スロットル弁24のシャットオフ制御は行われない。そのため、特にディーゼルエンジン11の高回転時であっても、スロットル弁24が閉側に制御されることはないため、シリンダ13内が過剰に低い圧力となることはなくなり、ピストン15のピストンリングによるシリンダ13の損傷を抑制することができる。また、可変ノズルターボチャージャ30の高過給状態から急激な負圧になることによるターボチャージャ30の損傷を招いたり、過給された吸入空気がターボチャージャ30内を逆流することによる溜息音の発生を抑制することができ、ディーゼルエンジン11への悪影響を抑制することができる。
【0051】
(2) また、本実施形態においては、ディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であるか否かを判定するための基準回転速度偏差ΔNE0を平均回転速度NEAVEとディーゼルエンジン11の温度に基づいて補正するようにしている。そのため、ディーゼルエンジン11のオーバーラン状態をより正確に判定することができるようになる。
【0052】
(3) また、車両の減速時等のアクセルOFF時においてディーゼルエンジン11がオーバーラン状態でないと判定されるとスロットル弁24のシャットオフ制御が行われないため、吸気が絞られることによって増大するポンピングロスを低減することもできる。これにより、原動機としてエンジンと電動モータとを備えたハイブリッドシステム車両等の回生ブレーキをより効率良く行うことができるようになる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図7〜図9に従って説明する。
上記第1実施形態においては、ディーゼルエンジン11のオーバーラン状態の判定を燃料噴射量が0である場合に実施するようにしたが、ディーゼルエンジン11のオーバーラン状態は燃料噴射量が0でない場合、例えばアイドル運転状態のような場合にも起こりうる。
【0054】
そこで本実施形態では、燃料噴射量に応じてディーゼルエンジン11のオーバーラン状態を判定する制御を実行する。本実施形態において、ディーゼルエンジン11及びその制御装置のシステム構成は第1実施形態と同様である。
【0055】
本実施形態においてECU50が実行するオーバーラン状態の判定制御処理を図7に示すフローチャートを参照して説明する。このルーチンは、ECU50を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0056】
本ルーチンにおいて、ステップ200において所定の燃料噴射量に対して、ディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であるか否かを判定するための基準回転速度偏差ΔNE0が算出される。この基準回転速度偏差ΔNE0は、ECU50に予め記憶された図8に示す回転速度の基準偏差のマップに基づいて算出される基準偏差と、図9に示す補正係数のマップに基づいて算出される補正係数とに基づいて算出される。図8のマップから求められる基準偏差はそのときの燃料噴射量に応じた気筒の膨張行程において検出される最大回転速度と平均回転速度との回転速度偏差である。図9のマップから求められる補正係数はそのときの平均回転速度NEAVEとディーゼルエンジン11の冷却水温(エンジン温度)とに基づいて算出される。
【0057】
次に、クランクポジションセンサ45にて検出されるエンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEが前記ステップ200において算出された基準回転速度偏差ΔNE0より大きいか否かが判定される。
【0058】
ここで、エンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEが基準回転速度偏差ΔNE0より大きいと判定されると(ステップ210:YES)、処理はステップ220に進む。ステップ220ではディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であると判定され、スロットル弁24を閉じる又は全閉とする等のシャットオフ制御が実行される。
【0059】
また、エンジン回転速度NEの最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEが基準回転速度偏差ΔNE0以下であると判定されると(ステップ210:NO)、オーバーラン状態でないと判定され、スロットル弁24のシャットオフ制御は実行されず、本ルーチンが終了する。
【0060】
従って、本実施形態によれば、上記第1実施形態に記載の特徴に加えて、以下の効果が得られる。
(3)所定の燃料噴射量の運転状態において、ディーゼルエンジン11のオーバーラン状態を判定することができ、その判定結果に基づいてスロットル弁24を閉じる又は全閉とする等のシャットオフ制御を実行することができる。
【0061】
なお、実施の形態は上記に限定されるものではなく、次のように変更してもよい。
・ 上記各実施形態では、燃料量に応じた基準回転速度偏差ΔNE0を平均回転速度NEAVEとディーゼルエンジン11の温度に基づいて補正するようにした。これに代えて、クランクポジションセンサ45によって検出された最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEを平均回転速度NEAVEとディーゼルエンジン11の温度に基づいて補正するようにしてもよい。
【0062】
・ 上記各実施形態では、クランクポジションセンサ45によって検出された最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差ΔNEを基準回転速度偏差ΔNE0と比較することによりディーゼルエンジン11のオーバーラン状態を判定するようにした。これに代えて、クランクポジションセンサ45によって検出された最小回転速度と平均回転速度NEAVEとの回転速度偏差を基準回転速度偏差ΔNE0と比較することによりディーゼルエンジン11のオーバーラン状態を判定するようにしてもよい。あるいは、クランクポジションセンサ45によって検出された最大回転速度NEATDC90と最小回転速度との回転速度偏差を基準回転速度偏差と比較するようにすることもできる。この場合には、基準回転速度偏差として、最大回転速度NEATDC90と最小回転速度との回転速度偏差に対応するものを用いればよい。このようにしてもディーゼルエンジン11のオーバーラン状態を適切に判定することができる。しかも、平均回転速度NEAVEの算出処理が不要になるため、電子制御装置の演算負荷についてもこれを軽減することができるようになる。また、クランクポジションセンサ45によって検出された最大回転速度NEATDC90と最小回転速度との回転速度比をこれに対応する基準回転速度比と比較するようにしてもよい。要するに、ディーゼルエンジン11の各気筒において燃料供給過多や潤滑油の燃焼等が発生した場合には、最大回転速度NEATDC90と最小回転速度との乖離度合い(偏差及び比)が変化する。このため、この乖離度合いがそれに対応する基準乖離度合いよりも大きい場合には、ディーゼルエンジン11がオーバーラン状態であると判定することができる。なお、最大回転速度NEATDC90と最小回転速度との乖離度合いには、他にも最大回転速度NEATDC90と平均回転速度NEAVEとの回転速度比、及び最小回転速度と平均回転速度NEAVEとの回転速度比等も含まれる。
【0063】
・ 上記各実施形態では、内燃機関としてディーゼルエンジン11に具体化したが、アクセル操作量に基づいて吸入空気量が調整され、その吸入空気量を含む機関運転状態に基づいて燃料量が設定されるガソリンエンジンに具体化してもよい。この場合にも、上記各記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
次に、上記各実施形態から把握できる他の技術的思想を、以下に記載する。
・ 請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関のオーバーラン防止装置において、前記内燃機関は、前記アクセル操作量に基づいて吸入空気量が調整され、その吸入空気量を含む機関運転状態に基づいて供給される燃料量が設定されるガソリンエンジンである。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のオーバーラン防止装置が適用されるディーゼルエンジン全体を示す略図。
【図2】エンジン回転速度を微視的に見た状態を示すタイムチャート。
【図3】第1実施形態におけるオーバーラン状態の判定手順を示すフローチャート。
【図4】燃料噴射が行われておらず、燃焼がない場合のエンジン回転速度NEを微視的に見た状態を示すタイムチャート。
【図5】燃料噴射が行われておらず、燃焼がある場合のエンジン回転速度NEを微視的に見た状態を示すタイムチャート。
【図6】第1実施形態において、基準回転速度偏差の算出に用いられるマップ。
【図7】第2実施形態におけるオーバーラン状態の判定手順を示すフローチャート。
【図8】第2実施形態における回転速度基準偏差の算出に用いられるマップ。
【図9】第2実施形態における回転速度基準偏差の補正値算出に用いられるマップ。
【符号の説明】
11…ディーゼルエンジン、13…気筒(シリンダ)、15…ピストン、16…コネクティングロッド、17…クランク軸、18…燃焼室、19…吸気通路、20…排気通路、24…スロットル弁、26…燃料噴射ノズル、27…コモンレール(蓄圧装置)、30…可変ノズルターボチャージャ(過給機)、43…アクセルペダル、44…アクセルポジションセンサ、45…検出手段としてのクランクポジションセンサ、50…算出手段、判定手段及び制御手段としての電子制御装置(ECU)、NEAVE…平均回転速度、NEATDC90…最大回転速度、ΔNE…回転速度偏差、ΔNE0…基準回転速度偏差。
Claims (6)
- 内燃機関の各気筒に燃焼用空気を導く吸気通路に、駆動手段によって開閉駆動されるスロットル弁が設けられた内燃機関において、
前記内燃機関のそのときどきの回転速度を検出する検出手段と、
各気筒の膨張行程において検出される前記内燃機関の最大回転速度と最小回転速度との乖離度合いを算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出される乖離度合いが、前記各気筒に供給される燃料量に応じて決まる基準乖離度合いよりも大きい場合には前記内燃機関がオーバーラン状態であると判定する判定手段と、
前記判定手段によってオーバーラン状態であると判定されたとき、前記スロットル弁を閉側に制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関のオーバーラン防止装置。 - 内燃機関の各気筒に燃焼用空気を導く吸気通路に、駆動手段によって開閉駆動されるスロットル弁が設けられた内燃機関において、
前記内燃機関のそのときどきの回転速度を検出する検出手段と、
各気筒の膨張行程において検出される前記内燃機関の最大回転速度と最小回転速度との回転速度偏差を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出される回転速度偏差が、前記各気筒に供給される燃料量に応じて決まる基準回転速度偏差よりも大きい場合には前記内燃機関がオーバーラン状態であると判定する判定手段と、
前記判定手段によってオーバーラン状態であると判定されたとき、前記スロットル弁を閉側に制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関のオーバーラン防止装置。 - 内燃機関の各気筒に燃焼用空気を導く吸気通路に、駆動手段によって開閉駆動されるスロットル弁が設けられた内燃機関において、
前記内燃機関のそのときどきの回転速度を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出されたそのときどきの機関回転速度に基づいて平均回転速度を算出し、各気筒の膨張行程において検出される前記内燃機関の最大回転速度又は最小回転速度と該平均回転速度との回転速度偏差を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出される回転速度偏差が、前記各気筒に供給される燃料量に応じて決まる基準回転速度偏差よりも大きい場合には前記内燃機関がオーバーラン状態であると判定する判定手段と、
前記判定手段によってオーバーラン状態であると判定されたとき、前記スロットル弁を閉側に制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関のオーバーラン防止装置。 - 請求項2又は3に記載の内燃機関のオーバーラン防止装置において、 前記判定手段は、前記算出手段によって算出された回転速度偏差又は前記燃料量に応じた基準回転速度偏差を前記内燃機関の温度に基づいて補正する内燃機関のオーバーラン防止装置。
- 請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関のオーバーラン防止装置において、
前記判定手段は、前記算出手段によって算出された回転速度偏差又は前記燃料量に応じた基準回転速度偏差をそのときの平均回転速度に基づいて補正する内燃機関のオーバーラン防止装置。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関のオーバーラン防止装置において、
前記内燃機関は、ディーゼルエンジンである内燃機関のオーバーラン防止装置。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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