JP2005068157A - 調節性炎症性シクロオギシゲナーゼを発現する安定に形質転換された哺乳動物細胞 - Google Patents
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Abstract
【課題】
【解決手段】 染色体が組み込まれた組換えDNAを有する、哺乳類形質転換細胞系を提供する。このDNAは哺乳類グルココルチコイド調節性炎症性プロスタグランジンG/Hシンターゼ(griPGHS)を発現する。このDNAは構成PGHSを発現しない。この細胞系は内在性のPGHS活性を発現しない。
【選択図】 図1
【解決手段】 染色体が組み込まれた組換えDNAを有する、哺乳類形質転換細胞系を提供する。このDNAは哺乳類グルココルチコイド調節性炎症性プロスタグランジンG/Hシンターゼ(griPGHS)を発現する。このDNAは構成PGHSを発現しない。この細胞系は内在性のPGHS活性を発現しない。
【選択図】 図1
Description
[発明の背景]
本発明は、米国立衛生研究所(NIH)より与えられた助成金(No.DK16177)の下、政府援助を受けて行われた。政府は本発明の権利を持つ。
本発明は、米国立衛生研究所(NIH)より与えられた助成金(No.DK16177)の下、政府援助を受けて行われた。政府は本発明の権利を持つ。
(PGE2、PGD2、PGF2a、PGI2および他の関連化合物を含む)プロスタグランジン類は、脂肪酸代謝由来のオートクリン群およびパラクリンホルモン群の1つで、天然エイコサノイド(プロスタグランジン類、トロンボキサン類およびロイコトリエン類)に属する。エイコサノイドそれ自体は細胞内に貯えられていることはなく、アラキドン酸(細胞膜リン脂質の分解に由来する炭素数20個の脂肪酸)から、必要に応じて生合成される。正常状況下のエイコサノイド産生は微量だが、細胞の種類によって大きく異なる多数の細胞機能の重要な情報伝達物質(メディエーター)として作用する。しかし、プロスタグランジン類は病態生理学においても極めて重要な役割を果たしている。特に炎症の開始とその維持は、少なくとも部分的には、損傷を受けた細胞内でプロスタグランジン類が過剰に産生されることによる。プロスタグランジン類が炎症で果たす中心的役割は、多くの病的炎症状態の治療において最も効果的であるアスピリン様非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDS)が、プロスタグランジンの合成を阻害することですべて作用しているという事実によって強調される。残念ながら、非ステロイド性抗炎症剤は正常細胞内のプロスタグランジン類も減少させ、正常な生理の維持に必要なオートクリンおよびパラクリン機能が損なわれる結果生じる副作用(消化管出血、潰瘍、腎不全など)のため、その使用が限られてしまうことが多い。他の細胞内でのプロスタグランジン産生を変化させずに、炎症細胞内のプロスタグランジン類のみを減少させることによって、さらに特異的に作用する新薬を開発することは、今後の薬物治療の大きな目標の1つである。
プロスタグランジン類合成経路の第1段階はシクロオキシゲナーゼ反応である。まず、プロスタグランジンG/Hの合成作用を有する酵素(PGHS)が、アラキドン酸をエンドペルオキシドPGG2に変換すると、これが分解してPGH2になる(この2つの反応は1つの酵素が触媒する)。続いて、PGH2は1つもしくは複数のプロスタグランジン合成酵素(PGE2シンターゼ、PGD2シンターゼなど)によって代謝され、最終産物である「2つのシリーズ」、すなわちプロスタグランジンシリーズ(PGE2、PGD2、PGF2a、PGI2)、およびトロンボキサン(TXA2)のような他のシリーズを生成する。第1段階(PGHS)はプロスタグランジン合成の律速段階である。それはさておき、PGHSの触媒反応は抗炎症剤作用の主要な標的である。そして、NSAIDS(アスピリン、インドメサシン、ナプロキセン、およびa)炎症細胞中のプロスタグランジン類の過剰産生を抑制する(望ましい治療目標)と同時に、b)非炎症細胞中のプロスタグランジン類の正常な産生も減少させる(好ましくない副作用を生じる)ようなその他の抗炎症剤)の薬理作用は、主にPGHS作用の阻害による。
炎症に関連する異常な変化以外にも、複数の因子が実験条件下でプロスタグランジン産生に影響を及ぼすことが知られている。これには成長因子、cAMP、発癌プロモーター、がん遺伝子srcの活性化、インターロイキン1および2などが含まれるが、これらすべての因子は全細胞のPGHS活性を亢進させる。副腎グルココルチコイドホルモンおよびこれに関連する合成抗炎症ステロイドもプロスタグランジンの合成を阻害するが、これらの代謝作用部位はあまり明らかではない。
ヒト、ヒツジ、ネズミの各cDNAがPGHS−1用にクローンされている。これらの配列は互いに似ており、ノーザンブロット法で2.8〜3.0キロベース(kb)のmRNAとハイブリッドを形成する。しかし、最近幾つかの研究グループが、PGHS−1に関連があると報告されているタンパク質の配列をある方法で同定し推測した。1990年にJ.S.Hanらは、『PNAS USA』87巻3373頁(1990年5月)において、BALB/c 3T3線維芽細胞がラウス肉腫ウイルスの温度感受性突然変異株LA90に感染した後に、ポリペプチドpp60V−srcによって生じるタンパク質合成の変化について報告した(非特許文献1参照)。巨大2次元ゲル電気泳動の結果、抗シクロオキシゲナーゼ抗体で確認可能な、72〜74キロダルトン(kDa)の1対のタンパク質が検出された。このタンパク質の合成は、血小板由来の成長因子の暴露によっても一時的に促進され、またデキサメサゾン治療によって阻害された。このようなタンパク質合成の変化は、シクロオキシゲナーゼ活性の変化と密接に関係していた。対になっているタンパク質は、マウスC127線維芽細胞でも認められた。この線維芽細胞でのタンパク質合成は、血清およびデキサメサゾンによって調節されていることが判明し、またシクロオキシゲナーゼ活性と関連があった。『J.Biol.Chem.』266巻23261頁(1991年12月5日)掲載のM.K.O'Banionらの報告を参照のこと(非特許文献2参照)。
W. Xieらは、pp60V−srcに相当する1組のcDNA(直ちに誘発可能な、ニワトリ胚線維芽細胞中の初期遺伝子)の分離を過去に報告しているが、CEF−147と呼ばれる遺伝子がPGHS−1に関連するタンパク質をコード化していることを、『PNAS USA』88巻2692頁(1991年4月)で報告した(非特許文献3参照)。彼らはこのpp60V−srcを、有糸分裂促進因子(ミトゲン)を誘発できるPGHSchickenという意味で、誘発型「miPGHSch」と名付けた。Xieらは、プロスタグランジン合成がsrc産生媒介性細胞形質転換において、ある役割を果たしているのだろうと推測したが、miPGHSchをもう1つのシクロオキシゲナーゼとして、あるいは単にヒツジPGHS−1である「PGHSov」のニワトリの同族体として、実験で識別することはできなかった。
他の1連の実験において、D.A.Kujubuらは、有糸分裂促進因子に応答するSwiss 3T3細胞(TIS10)をクローンした1次応答遺伝子の1つが、3'側に長い非翻訳領域を持っており、マウスPGHS−1と約60%同じである66kDaの「推測」タンパク質をコード化していることを、『J.Biol.Chem.』266巻12866頁(1991年)で報告した(非特許文献4参照)。この推測上のタンパク質の配列は、Xieらのタンパク質配列と本質的に同じであった。配列の類似性から、Kujubuらは、TIS10遺伝子がコード化しているタンパク質の酵素活性は、他の哺乳類のPGHS−1の酵素活性とおそらく同じだろうと推測した。彼らは、『しかし、この推測の証明には、発現可能なプラスミドからのこの遺伝子産生の非相同発現と、トランスフェクションされた細胞あるいはTIS10タンパク質の精製製剤またはその両者におけるシクロオキシゲナーゼ活性の直接的な測定が必要である』と結論づけた。
J.S.Hanら、PNAS USA、1990年5月、87巻、p.3373
M.K.O'Banionら、J.Biol.Chem.、1991年12月5日、266巻、p.23261
W.Xieら、PNAS USA、1991年4月、88巻、p.2692
D.A.Kujubuら、J.Biol.Chem.、1991年、266巻、p.12866
プロスタグランジン合成経路の活動の評価方法および調節方法の開発の重要性が増している。前述したとおり、アスピリンやインドメサシンのような非ステロイド性抗炎症剤は、アラキドン酸をPGG2およびPGH2に変換するシクロオキシゲナーゼを阻害する。したがって、分子レベルで、従来の抗炎症剤の効果の調査方法、および潜在的な抗炎症剤の効果の評価方法を改良する必要があると同時に、このような方法で使用する試薬が必要である。
[発明の概要]
本発明は、染色体に組み込まれた組換えDNA配列を有する哺乳類細胞系を提供する。このDNA配列は哺乳類、特にヒトのグルココルチコイド調節性炎症性PGHSを発現する。この細胞系は自己のPGHS−1またはPGHS−2活性を発現しない。ここでは簡単に、グルココルチコイド調節性炎症性PGHSを「griPGHS」または「PGHS−2」と呼び、2.8〜3.0kbのmRNA(EC1.14.99.1)がコード化し、技術者が認識している哺乳類PGHSを「構成シクロオキシゲナーゼ」または「構成PGHS」または「PGHS−1」と呼ぶ。「自己のPGHS−1またはPGHS−2活性」が存在しないという記述は、組換えDNA配列が発現するPGHS活性は別にして、細胞系がPGHS活性を発現不可能であることに関連している。自己のPGHSは「内在性」PGHS活性と技術者の間で呼ばれることもある。
本発明は、染色体に組み込まれた組換えDNA配列を有する哺乳類細胞系を提供する。このDNA配列は哺乳類、特にヒトのグルココルチコイド調節性炎症性PGHSを発現する。この細胞系は自己のPGHS−1またはPGHS−2活性を発現しない。ここでは簡単に、グルココルチコイド調節性炎症性PGHSを「griPGHS」または「PGHS−2」と呼び、2.8〜3.0kbのmRNA(EC1.14.99.1)がコード化し、技術者が認識している哺乳類PGHSを「構成シクロオキシゲナーゼ」または「構成PGHS」または「PGHS−1」と呼ぶ。「自己のPGHS−1またはPGHS−2活性」が存在しないという記述は、組換えDNA配列が発現するPGHS活性は別にして、細胞系がPGHS活性を発現不可能であることに関連している。自己のPGHSは「内在性」PGHS活性と技術者の間で呼ばれることもある。
本発明は、Hanらが報告した72〜74kDAのシクロオキシゲナーゼ、Xieらが報告したmiPGHSch、およびKujubuらが報告したTIS10タンパク質が本質的にどれも同一のものであること、そしてこれらは別のシクロオキシゲナーゼであることを、我々が発見した結果である。このシクロオキシゲナーゼは、グルココルチコイドによる阻害の主要な標的であり、また非ステロイド性抗炎症剤による阻害の標的でもある。
1991年12月、我々は、マウスの4KbのmRNAを経て、C127マウス線維芽細胞中の70kDaのタンパク質の合成を報告し、得られたアミノ酸の配列を発表した。4kbのmRNAがコード化しているタンパク質は、そのアミノ酸の80%が配列の決定した240塩基領域において、既知のマウスPGHS−1タンパク質産物と同一である。『J.Biol.Chem.』35巻23261頁(1991年12月5日発行)掲載のM.Kerry O'Banionらの報告を参照のこと。
幾つかのアッセイにより、ここでgriPGHSまたはPGHS−2と呼ぶ70kDaのタンパク質が、シクロオキシゲナーゼの分離型であることが判明した。このタンパク質は抗PGHS血清で沈殿した。このタンパク質の合成および同時に生じるシクロオキシゲナーゼの濃度は、血清によって急速に誘発されるが、この誘発はデキサメサゾンによって阻害される。PGHS−2合成の調節は、2.8kbのPGHS−1 mRNAの濃度変化ではなく、4kbのmRNA種の濃度変化の結果行われていることが明らかになった。後者のmRNA種は、血清処理細胞中の2.8kbのPGHS−1 DNAプローブではほとんど検出不可能だが、シクロヘキシミドまたはイオノホアカルシウム処理細胞中でかなりの濃度まで蓄積する。これとは対照的に、血清、デキサメサゾン、シクロヘキシミドの各処理で、「構成PGHS」すなわちPGHS−1をコード化している2.8kbのmRNAの濃度に変化は認められなかった。我々はハイブリダイゼーション分析により、4kbのmRNAが、2.8kbのmRNAを生じる遺伝子とは異なる遺伝子の産物であったことを証明した。
これらの観察結果は、シクロオキシゲナーゼ遺伝子が2種類存在することを示している。1つは構造的に2.8kbのmRNAとして発現されるもので、もう一方はPGHS−2をコード化する4kbの成長因子調節性およびグルココルチコイド調節性mRNAを生じるものである。後者の4kbのmRNAの発現およびこれと同時に生じるPGHS−2濃度の上昇が、炎症の多くの副作用を直接的または間接的に引き起こすプロスタグランジン合成促進の、すべてではないにしても、主な原因であると信じられている。
本PGHS−2合成形質転換細胞系は、炎症性シクロオキシゲナーゼに対する潜在的生物活性剤の作用を評価するのに有用である。なぜならば、炎症の主要な証明であると共に、炎症の多くの副作用の原因であるプロスタグランジン類の濃度の上昇は、構成的に発現したシクロオキシゲナーゼすなわちPGHS−1の変化ではなく、むしろPGHS−2濃度の上昇によるからである。
本発明は、染色体を組み込んだ組換えDNA配列を有する、別の哺乳類形質転換細胞系も提供する。このDNA配列は哺乳類(特にヒト)PGHS−1を発現するが、PGHS−2は発現しない。また、この細胞系は自己のPGHS−1またはPGHS−2活性も発現しない。この別の細胞系も、霊長類、ネズミ、ヒトの細胞系である。
したがって、本発明は、PGHS−1に対してPGHS−2を選択的に阻害する結果、PGHS−2は上昇しているが構成PGHS−1は上昇していない、哺乳類(特にヒト)の炎症組織や哺乳類(特にヒト)宿主の他の生理的または病的状態において、亢進したプロスタグランジン合成を特異的に阻害する化合物の相対的阻害作用を評価する方法も提供する。このアッセイでは、適当な培地または緩衝液中で本PGHS−2発現形質転換細胞系または小胞体抽出物を、予め選択した量の被験化合物と接触させ、ここにアラキドン酸を加える。そして、この細胞系または前記小胞体抽出物を、前記被験化合物の非存在下の対照細胞系または小胞体抽出物の1部と比較して、PGHS媒介性アラキドン酸代謝産物の合成、すなわちトロンボキサン合成、プロスタグランジン(例:PGE2)合成、その他のシクロオキシゲナーゼ経路固有の代謝産物の合成のレベルを測定する。本PGHS−2発現細胞系の代わりにPGHS−1発現形質転換細胞系を用いて、前記操作手順を行う別のアッセイにより、化合物のPGHS−1またはPGHS−2に対する選択的阻害力を評価できる。
より詳細には、本発明は、哺乳類細胞中でPGHS−2またはPGHS−1が触媒するプロスタグランジン合成の阻害化合物の作用を測定する方法を提供する。この方法は以下のとおりである。
(a)まず、予め選択した量の前記被験化合物を培地内の第1の哺乳類形質転換細胞系に加える。この細胞系は染色体を組み込んだ組換えDNA配列を持っており、このDNA配列は哺乳類PGHS−2を発現するが、PGHS−1は発現しない。また、この細胞系は自己のPGHS−1またはPGHS−2活性を発現しない。
(b)アラキドン酸をこの培地に加える。
(c)前記の細胞系によって合成された、PGHS媒介性アラキドン酸代謝産物の濃度を測定する。
(d)この濃度を、前記被験化合物の非存在下で前記第1の細胞系が合成した前記代謝産物の濃度と比較する。
(e)予め選択した第2の前記被験化合物を、培地内の(a)とは異なる哺乳類形質転換細胞系に加える。この細胞系は染色体を組み込んだ組換えDNA配列を持っており、このDNA配列は哺乳類PGHS−1を発現するが、PGHS−2は発現しない。また、この細胞系は自己のPGHS−1またはPGHS−2活性を発現しない。
(f)アラキドン酸をステップ(e)の前記培地に加える。
(g)前記第2の(e)の細胞系によって合成された、PGHS媒介性アラキドン酸代謝産物の濃度を測定する。
(h)この濃度を、前記被験化合物の非存在下で前記第2の細胞系が合成した前記代謝産物の濃度と比較する。
(a)まず、予め選択した量の前記被験化合物を培地内の第1の哺乳類形質転換細胞系に加える。この細胞系は染色体を組み込んだ組換えDNA配列を持っており、このDNA配列は哺乳類PGHS−2を発現するが、PGHS−1は発現しない。また、この細胞系は自己のPGHS−1またはPGHS−2活性を発現しない。
(b)アラキドン酸をこの培地に加える。
(c)前記の細胞系によって合成された、PGHS媒介性アラキドン酸代謝産物の濃度を測定する。
(d)この濃度を、前記被験化合物の非存在下で前記第1の細胞系が合成した前記代謝産物の濃度と比較する。
(e)予め選択した第2の前記被験化合物を、培地内の(a)とは異なる哺乳類形質転換細胞系に加える。この細胞系は染色体を組み込んだ組換えDNA配列を持っており、このDNA配列は哺乳類PGHS−1を発現するが、PGHS−2は発現しない。また、この細胞系は自己のPGHS−1またはPGHS−2活性を発現しない。
(f)アラキドン酸をステップ(e)の前記培地に加える。
(g)前記第2の(e)の細胞系によって合成された、PGHS媒介性アラキドン酸代謝産物の濃度を測定する。
(h)この濃度を、前記被験化合物の非存在下で前記第2の細胞系が合成した前記代謝産物の濃度と比較する。
当然のことながら、ステップ(d)および(h)で測定したように、代謝産物すなわちプロスタグランジンの合成を阻害する化合物の相対的作用を比較することにより、PGHS−2およびPGHS−1の各阻害に関して、化合物の選択性を直接測定することが可能である。
したがって、炎症細胞モデルにおいてPGHS−2濃度が上昇することから、またシクロオキシゲナーゼ活性を阻害する薬剤の副作用は、PGHS−1の減少によって生じると信じられていることから、本特許請求の範囲の方法を用いてPGHS−2およびPGHS−1に対する各薬剤の作用を評価する必要があるだろう。過去のin vitroアッセイに基づいた、薬剤候補の抗炎症作用の評価は誤解を招くかもしれない。なぜならば、構成および炎症性シクロオキシゲナーゼの各活性を区別していなかったからである。2.8kbのmRNAがコード化している構成シクロオキシゲナーゼまたは4kbのmRNAがコード化している誘発シクロオキシゲナーゼのどちらか一方を発現する、本発明の安定した細胞系を使用し、各細胞系の用量反応曲線を分析すれば、PGHS−1またはPGHS−2に対する薬剤の特異性を決定できるだろう。PGHS−1またはPGHS−2に対する薬剤作用の比較研究は、様々な非ステロイド性抗炎症剤の独特な臨床利用を明らかにしていくだろう。また、PGHS−2活性を阻害する薬剤用量の滴定を考慮し、他のシクロオキシゲナーゼ活性を保持するだろう。本発明の細胞系の利用は、PGHS−2の特異的阻害剤の発見または開発あるいはその両方に必要なメカニズムを提供する。このような薬剤は、プロスタグランジン生合成の全面阻害によって生じると思われる重大な副作用を引き起こすことなく、従来の薬剤が持つ重要な抗炎症作用を有すると予測される。
本発明はまた、生物学的活性のあるヒトPGHS−2をコード化する分離DNA配列(遺伝子)と、これによってコードされた、本質的に純粋な分離ヒトPGHS−2から成る。
本発明は、構成および炎症性シクロオキシゲナーゼの両方に対する薬剤作用のスクリーニング用に、簡単なin vitroシステムを提供する。これは、構成プロスタグランジン産生阻害による副作用を引き起こさずに、選択的に炎症を阻害する薬剤の開発に有用だろう。生きている哺乳類細胞(体内の血清薬剤濃度の作用に近い)に、または培養した細胞系から生成した小胞体抽出物に、本アッセイを行える。小胞体抽出物を用いた研究は、薬剤と酵素との直接的な相互作用のさらに正確な測定を可能にする。
[発明の詳細な説明]
本発明は、組換えDNA配列、好ましくは染色体を組み込んだ組換えDNA配列を有する形質転換細胞系に関するものである。このDNA配列は調節性炎症性シクロオキシゲナーゼであるgriPGHSすなわち「PGHS−2」をコード化する遺伝子から成る。さらに、この細胞系は組換えDNA配列がコード化するPGHS−1またはPGHS−2以外に、自己のPGHS−1またはPGHS−2を発現しない。組換えDNAも構成PGHS−1(EC1.14.99.1)をコード化してしない。
本発明は、組換えDNA配列、好ましくは染色体を組み込んだ組換えDNA配列を有する形質転換細胞系に関するものである。このDNA配列は調節性炎症性シクロオキシゲナーゼであるgriPGHSすなわち「PGHS−2」をコード化する遺伝子から成る。さらに、この細胞系は組換えDNA配列がコード化するPGHS−1またはPGHS−2以外に、自己のPGHS−1またはPGHS−2を発現しない。組換えDNAも構成PGHS−1(EC1.14.99.1)をコード化してしない。
本発明の一実施例は、染色体を組み込んだ、遺伝子操作された(「組換え」)DNA配列を有する哺乳類形質転換細胞系である。このDNA配列は哺乳類(特にヒト)PGHS−2を発現するが、哺乳類構成PGHS−1を発現しない。また、この細胞系は自己のPGHS−1またはPGHS−2を発現しない。この細胞系は、例証されたサル腎臓COS細胞系のようにヒトまたは霊長類由来であるが、ニワトリやハムスター、ネズミ、ヒツジなど、他の種由来の細胞系も利用できる。
ここでいう「形質転換」には、組換えDNA配列の存在によって変化した遺伝子型である、あらゆる細胞または細胞系が含まれる。このようなDNA配列は、遺伝子工学の技術において、「非相同DNA」、「外来性DNA」、「遺伝子操作された」あるいは「異質DNA」と呼ばれている。遺伝子工学の技術により、前記DNAは細胞または細胞系の遺伝子型またはゲノムに導入された。
ここで使用したように、「組換えDNA配列」は、あらゆる生物から由来あるいは分離され、その後化学的に変化され、哺乳類細胞に導入されたDNA配列のことである。ある生物「由来の」組換えDNA配列の例は、ある特定の生物中で有用な断片として同定されるDNA配列である。同定後、これは本質的に純粋な形態で化学的に合成される。ある生物から「分離された」組換えDNA配列の例は、化学的方法(例:制限エンドヌクレーゼの利用)によって、その生物から除去または切除される有用なDNA配列であり、その結果、遺伝子工学の方法論により、発明中の利用目的でさらに操作を加える(例:増幅する)ことができる。
したがって、「組換えDNA配列」には、完全合成DNA、半合成DNA、生物から分離したDNA、導入RNA由来のDNAがある。一般に、組換えDNA配列は、DNA配列の受け手(レシピエント)である遺伝子型に本来備わっていないか、あるいは備わっていても発現されない。
ここで形質転換に使用された分離組換えDNA配列は環状または直線状、1本鎖または2本鎖である。一般に、DHA配列はキメラの直線状DNAであるか、またはプラスミドあるいはウイルス発現ベクター中に存在する。これらは、結果として生じる細胞系の組換えDNAの発現を促進する調節配列に接するコード領域も持つことができる。例えば、組換えDNA配列は、哺乳類の細胞内で活性のあるプロモーターから成ることもあれば、形質転換の標的である遺伝子型に既に存在するプロモーターを利用することもある。このようなプロモーターには、SV40後期プロモーターやレトロウイルスのLTRs(長い末端反復要素)の他に、図4に示したCMVプロモーターがある。
標的細胞の形質転換が可能な組換えDNAを生成する一般的な方法は、技術に熟練している者にはよく知られており、ここで有用なDNAを生成するのに、同様な組成および生成方法を利用できる。例えば、J.Sambrookらは『Molecular Cloning:A Laboratory Manual』(Cold Spring Harbor Laboratory Press第2版、1989年)の中で、適切な生成方法を紹介している。
PGHS−1やPGHS−2、その他の部分用の転写単位として作用する組換えDNA配列の他に、組換えDNAの1部が転写されずに、調節または構造的機能を果たすことがある。
細胞内に導入される組換えDNA配列は、一般に、形質転換細胞の選択および同定を促進する、選択可能な標識遺伝子またはレポーター遺伝子、あるいはその両方を含んでいる。代わりに、選択標識が別のDNAに存在して、これを一緒に形質転換過程に利用することがある。選択標識およびレポーター遺伝子は適当な調節配列に接して、哺乳類の細胞での発現を可能にしている。有用な選択標識は技術者によく知られており、例えば抗生物質および除草剤抵抗性遺伝子がある。
本発明で有用なDNA配列の製造源には哺乳類細胞のポリA RNAがある。griPGHSをコード化する約4kbのmRNAがこれに由来し、技術者に知られている方法で、相当するcDNAの合成に用いられる。このような製造源には、『J.Biol.Chem.』266巻23261頁(1991年)でM.K.O'Banionらが述べているように、血清およびシクロヘキシミドで処理したC127ネズミ線維芽細胞から分離し、大きさで分けたポリA RNAのラムダZAPII(Stratagene)ライブラリーがある。Xieらは、『PNAS USA』88巻2692頁(1991年)で述べているとおり、ニワトリのgriPGHSをコード化するmRNAを入手した。griPGHSをコード化するヒトmRNAの製造源には、M.K.O'Banionらの『PNAS USA』89巻4688頁(1992年6月)によると、インターロイキン−1およびシクロヘキシミドで処理したヒト単球由来のRNAがある。PGHS−1をコード化するヒトmRNAの製造源も技術者によく知られている。殺菌性化合物に対する抵抗性を伝える酵素をコード化する選択標識遺伝子を、下の表1にまとめる。
レポーター遺伝子は、潜在的な形質転換細胞の同定および調節配列の機能性の評価に用いられる。簡単にアッセイ可能な標識タンパク質をコード化するレポーター遺伝子は、技術者によく知られている。一般に、レポーター遺伝子は、宿主生物または組織に存在しないか、存在しても発現されない遺伝子であり、簡単に検出可能な何らかの性質(例:酵素活性)によって発現が証明されるタンパク質をコード化している。優先遺伝子には、大腸菌のTn9由来のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(cat)、大腸菌のuidA座のβ-グルクロニダーゼ遺伝子(gus)、ホタルのPhotinus pyralis由来のルシフェラーゼ遺伝子がある。レポーター遺伝子の発現は、DNAを宿主細胞に導入した後、適当な時間を置いてからアッセイする。
イントロンやエンハンサー、ポリアデニル化配列のような他の要素も、時に組換えDNA配列の1部分となる。これらの要素はDNA機能に必要なこともあれば、必要でないこともあるが、mRNAの安定性や転写などに影響を及ぼすことでDNAの発現を亢進させることがある。細胞内でDNAを最大限に形質転換させる目的で、これらの要素はDNAに含まれることがある。
組換えDNA配列は、ウイルス発現ベクターのような発現ベクターを用いてトランスフェクションすることにより、標的細胞に容易に導入できる。発現ベクターは、リン酸カルシウム沈降法の変法(C.Chenら:Mol.Cell.Biol., 7;2745, 1987)により、griPGHSすなわちPGHS−1をコード化するcDNAから成る。トランスフェクションは、リポフェクション法を始め、市販のキット(例:BRL提供のキット)を用いた他の方法でも可能である。
次に詳細な例を参照して本発明をさらに詳しく説明する。
例1 ネズミPGHS−2遺伝子の分離、クローニングおよびシークエンシング
A.細胞および細胞培養
Peter Howley氏(NIH)よりC127マウス線維芽細胞を入手し、ブドウ糖含有量の多いダルベッコ変法イーグル培地に、抗生物質を含まない10%ウシ胎児血清(HyClone Laboratories)を加えて増殖させた。D.R.Lowyらの『J.Viol.』26巻291頁(1978年)を参照のこと。培養は、T.R.Chenの方法(Exp.Cell Res., 104;255, 1977)に従い、マイコプラズマ混入についてHoechst 33258染色でモニターした。
例1 ネズミPGHS−2遺伝子の分離、クローニングおよびシークエンシング
A.細胞および細胞培養
Peter Howley氏(NIH)よりC127マウス線維芽細胞を入手し、ブドウ糖含有量の多いダルベッコ変法イーグル培地に、抗生物質を含まない10%ウシ胎児血清(HyClone Laboratories)を加えて増殖させた。D.R.Lowyらの『J.Viol.』26巻291頁(1978年)を参照のこと。培養は、T.R.Chenの方法(Exp.Cell Res., 104;255, 1977)に従い、マイコプラズマ混入についてHoechst 33258染色でモニターした。
幾何級数的に増殖する亜集密(60〜80%)細胞単層(35mmの層)を、メチオニンを含まないダルベッコ変法イーグル培地(GIBCO)で、200μCi/mlのTran35Sの標識(>1,000Ci/mmol;ICN)を15〜30分間加えて、標識を行った。ウシ胎児血清(10%)が標識中に存在した例もあった。200μlのA8緩衝液(9.5M尿素、2%(w/v)Nonidet P−40、2%(w/v)アンホリン(LKB、1.6%pH5〜8、04%pH3.5〜10)、5%(w/v)2−メルカプトエタノール)での溶解の前に、メチオニンを含む氷冷ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で単層を2回すすいだ。タンパク質への標識取り込みはトリクロロ酢酸沈降で測定した。デキサメサゾン(Sigma)をリン酸緩衝塩類溶液(PBS)で新たに調製し(250nnで1.5×104l/mol/cmのモル消失係数に基づく株濃度)、1μMまで加えた。イオノホアカルシウムA23187(Calbiochem)を、エタノール中で2.5mM株から5μMの濃度で使用した。シクロヘキシミド(Sigma)を、水で100×株から25μMの濃度で使用した。この濃度は15分以内に97%以上タンパク質合成を阻害する。対照培養には適切な量の溶剤を与えた。
外因性アラキドン酸基質(30μM37℃15分間)を加えることにより、培地でシクロオキシゲナーゼ活性を測定した後、プロスタグランジンE〓産物をメチルオキシメート型に変換した。続いて、この2環式誘導体をラジオイムノアッセイ(Amersham社のキット)で定量した。
B.RNAの生成
イソチオシアン酸グアニジン溶解を用いて、total RNAを15cmの平板から分離した後、塩化セシウムクッションで遠心分離を行った(J.M.Chirgwinら:Biochemistry, 18;5294, 1979)。H.Avivらが『PNAS USA』69巻1408頁(1972年)に発表したように、ポリ(A)RNAをオリゴ(dT)セルロースカラムによる2経路で生成した。RNAを260nmの吸光度測定で定量した。
イソチオシアン酸グアニジン溶解を用いて、total RNAを15cmの平板から分離した後、塩化セシウムクッションで遠心分離を行った(J.M.Chirgwinら:Biochemistry, 18;5294, 1979)。H.Avivらが『PNAS USA』69巻1408頁(1972年)に発表したように、ポリ(A)RNAをオリゴ(dT)セルロースカラムによる2経路で生成した。RNAを260nmの吸光度測定で定量した。
C.cDNA合成
J.Sambrookらが前記雑誌に発表したように、血清およびシクロヘキシミド(25μM)で2時間半処理したC127細胞のRNAを多く含むポリA50μgを、10mMのCH3HgOH存在下に10〜30%ショ糖勾配で分画した。他のすべての分画について、任意プライミングで標識した1.6kbのヒツジPGHS cDNAの5'末端(Oxford Biomedical Research社から入手)を用いて、4kbのmRNAの存在をノーザンブロット法でアッセイした。RNAサンプルおよび分子量マーカー(3μg;Bethesda Research Laboratories RNAラダー)について、ホルムアルデヒドアガロースゲル電気泳動を行った後(J.Sambrookら:前述に引用したMolecular Cloning;7.30〜7.32)、10×SSC(1×SSCは0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム)での一晩毛細管転移により、ナイロン膜(Duralon,Stratagene)にブロットした。
J.Sambrookらが前記雑誌に発表したように、血清およびシクロヘキシミド(25μM)で2時間半処理したC127細胞のRNAを多く含むポリA50μgを、10mMのCH3HgOH存在下に10〜30%ショ糖勾配で分画した。他のすべての分画について、任意プライミングで標識した1.6kbのヒツジPGHS cDNAの5'末端(Oxford Biomedical Research社から入手)を用いて、4kbのmRNAの存在をノーザンブロット法でアッセイした。RNAサンプルおよび分子量マーカー(3μg;Bethesda Research Laboratories RNAラダー)について、ホルムアルデヒドアガロースゲル電気泳動を行った後(J.Sambrookら:前述に引用したMolecular Cloning;7.30〜7.32)、10×SSC(1×SSCは0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム)での一晩毛細管転移により、ナイロン膜(Duralon,Stratagene)にブロットした。
cDNAは、オリゴ(dT)プライミングにより4kbのmRNAに富む分画から生成し(U.Gublerら:Gene (Amst.), 25;263, 1988)、λ−ZAP IIに結合させた((J.M.Shortら:Nucleic Acid Res., 16;7583, 1988)Stratagene)。緊縮性が低下した状態下で(30%ホルマミド、ハイブリダイゼーション温度を42℃まで低下、55℃で2×SSC+0.1%SDSで洗浄したフィルター)、25万個のプラークがヒツジPGHSプローブでスクリーニングされた。T7 DNAポリメラーゼを用いて、欠失サブクローンを組み込んだExo IIIの2本鎖ジデオキシターミネーションシークエンシングを、両方向に行った。Heinikoffの『Gene』28巻351頁(1984年)およびG.Del Salらの『Bio-Techniques』7巻514頁(1989年)を参照のこと。
D.in vitroでの転写・翻訳、免疫沈降、プライマー伸長
Bluescriptベクター(Stratagene)中のcDNA1μgを、3'末端でXho Iで直線状にし、キャップ形成剤m7G(5')ppp(5')G(Stratageneのキット)を含む反応中でT3 RNAポリメラーゼで転写した。精製後、転写されたRNAの5分の1と、前記ようにシクロヘキシミドおよび血清処理C127細胞から精製したポリA RNA2.5μgを、製造元(Promega)が述べたとおり35S−メチオニンを含む別のin vitro反応中で翻訳した。ただし、RNAはあらかじめ3.5mMのCH3HgOHで、室温で10分間インキュベーションした。反応を修正RIPA緩衝液で希釈し、多クローン性抗PGHS血清(Oxford Biomedical Research社)で沈降させた。あるいは、50μl/mlタンパク質A−セファロース(Pharmacia LKB Biotechnology社;50%(v/v))で30分間インキュベーションすることにより、あらかじめまず安全を証明した。0.01の分量の抗血清またはウサギ血清を溶解産物に加え、4℃で2時間インキュベーションした後、タンパク質A−セファロースで沈降させた。ペレット状ビーズを免疫沈降緩衝液で4回洗浄し、室温で30分間Laemmli溶解緩衝液に再び懸濁した。免疫沈降産物を標準10%SDS−PAGEで分解し、蛍光間接撮影法により視覚化した。
Bluescriptベクター(Stratagene)中のcDNA1μgを、3'末端でXho Iで直線状にし、キャップ形成剤m7G(5')ppp(5')G(Stratageneのキット)を含む反応中でT3 RNAポリメラーゼで転写した。精製後、転写されたRNAの5分の1と、前記ようにシクロヘキシミドおよび血清処理C127細胞から精製したポリA RNA2.5μgを、製造元(Promega)が述べたとおり35S−メチオニンを含む別のin vitro反応中で翻訳した。ただし、RNAはあらかじめ3.5mMのCH3HgOHで、室温で10分間インキュベーションした。反応を修正RIPA緩衝液で希釈し、多クローン性抗PGHS血清(Oxford Biomedical Research社)で沈降させた。あるいは、50μl/mlタンパク質A−セファロース(Pharmacia LKB Biotechnology社;50%(v/v))で30分間インキュベーションすることにより、あらかじめまず安全を証明した。0.01の分量の抗血清またはウサギ血清を溶解産物に加え、4℃で2時間インキュベーションした後、タンパク質A−セファロースで沈降させた。ペレット状ビーズを免疫沈降緩衝液で4回洗浄し、室温で30分間Laemmli溶解緩衝液に再び懸濁した。免疫沈降産物を標準10%SDS−PAGEで分解し、蛍光間接撮影法により視覚化した。
プライマー伸長分析については、血清およびシクロヘキシミドで2時間処理したC127細胞由来のポリA RNAの2μgを、配列決定された4.1kbのcDNAのヌクレオチド(nt)55〜75に相補的な32P末端標識オリゴヌクレオチドを用いて、C.C.Bakerらが『EMBO J.』6巻1027頁(1987年)で述べたとおり、M−MuLV逆転写酵素(BRL)で逆転写した。同じプライマーを利用するBluescriptベクター中のcDNAの35S標識ジデオキシシークエンシング反応と並行し、反応産物を標準シークエンシングゲルで電気泳動した。
E.cDNA発現およびPGE測定
4.1kbのmRNAがシクロオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質をコード化しているか否かを調べるために、cDNAをSV40後期プロモーター発現ベクター(SVL、(R.Breatnachら:Nucleic Acid Res., 11:7119,(1983)))に挿入した。D.L.DeWittらが『J.Biol.Chem.』265巻5192頁(1990年)に報告したように、COS細胞は自己のオキシゲナーゼ活性をほとんどあるいは全く持たない。したがって、この細胞に、2.5または5μgのベクター単独あるいは4.1kbのcRNAを有するベクターをトランスフェクションした。トランスフェクション細胞由来の35S標識タンパク質の2次元ゲル電気泳動の結果、4.1kbのcDNA発現細胞中に、タンパク質対(72/74kDa、pl7.5)が認められた。このタンパク質対は、合成が成長因子で促進し、グルココルチコイドホルモンで抑制されるC127マウス線維芽細胞で認められた、免疫沈降シクロオキシゲナーゼタンパク質対に正確に一致する。
4.1kbのmRNAがシクロオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質をコード化しているか否かを調べるために、cDNAをSV40後期プロモーター発現ベクター(SVL、(R.Breatnachら:Nucleic Acid Res., 11:7119,(1983)))に挿入した。D.L.DeWittらが『J.Biol.Chem.』265巻5192頁(1990年)に報告したように、COS細胞は自己のオキシゲナーゼ活性をほとんどあるいは全く持たない。したがって、この細胞に、2.5または5μgのベクター単独あるいは4.1kbのcRNAを有するベクターをトランスフェクションした。トランスフェクション細胞由来の35S標識タンパク質の2次元ゲル電気泳動の結果、4.1kbのcDNA発現細胞中に、タンパク質対(72/74kDa、pl7.5)が認められた。このタンパク質対は、合成が成長因子で促進し、グルココルチコイドホルモンで抑制されるC127マウス線維芽細胞で認められた、免疫沈降シクロオキシゲナーゼタンパク質対に正確に一致する。
トランスフェクション細胞のシクロオキシゲナーゼ活性もアッセイした。4.1kbのcDNAを発現するCOS細胞は、対照細胞よりも約2等級多くプロスタグランジンE2を産生した(表2)。さらに、プロスタグランジン産生は、トランスフェクションされたDNAの量に応じて増加した。これらの結果は、4.1kbのmDNAが、「グルココルチコイド調節性炎症性PGHS(griPGHS)」と名付けられた活性シクロオキシゲナーゼをコード化していることを明らかに示している。
COS細胞中の4.1kbのcDNAが発現されると、プロスタグランジンが合成される。2重になっている60mmの平板中の亜集密COS A.2細胞に、指示された量の発現ベクター単独(SVL)または4.1kbのcDNAを有する発現ベクター(SVL-4.1)をトランスフェクションし、PGE産生について2日後にアッセイした。
PGE2産生アッセイのため、あらかじめ暖めたDMEMで細胞を1回すすぎ、30μMのアラキドン酸を含むDMEMを1ml加えた。10〜15分後に上澄みを採取し、短時間の遠心分離でこれを清浄化し、メチルオキシメート型に変換後、ラジオイムノアッセイでPGE2をアッセイした(Amersham社のキット)。単層は0.5N水酸化ナトリウムで可溶化し、1N塩酸で中和し、遠心分離で清浄化してから、タンパク質濃度を測定した。
F.ノーザンブロット分析
C127細胞由来のRNA(2.5μg)に富むポリAをホルムアルデヒドアガロースゲル電気泳動で分画に分け、膜(Duralon, Stratagene)に転移させた。A.P.Feinbergらが『Anal Biochem.』132巻6頁(1983年)に発表したように、任意プライミングにより32Pで標識した4.1kbのcDNAの1.2kbの5'EcoRl断片を用いて、M.K.O'Banionらが『J.Virol.』65巻3481頁(1991年)で述べたようにハイブリダイゼーションを行った。2.8kbのヒツジPGHS cDNA(Oxford Biomedical Research社)を同様に標識した断片(1.6kbの5'末端)と、β−チューブリンに相補的な末端標識40−mer(Oncor)で、もう1度後で膜のハイブリダイゼーションを行った。RNA分子量マーカー(SRL)を臭化エチジウム染色で視覚化した。同様の分析を、グアニジニウム酸フェノール抽出法(P.Chomezynskiら:Anal.Biochem., 162;156, 1987)で、ヒト単球から分離したtotal RNA(5μg/lane)についても行った。
C127細胞由来のRNA(2.5μg)に富むポリAをホルムアルデヒドアガロースゲル電気泳動で分画に分け、膜(Duralon, Stratagene)に転移させた。A.P.Feinbergらが『Anal Biochem.』132巻6頁(1983年)に発表したように、任意プライミングにより32Pで標識した4.1kbのcDNAの1.2kbの5'EcoRl断片を用いて、M.K.O'Banionらが『J.Virol.』65巻3481頁(1991年)で述べたようにハイブリダイゼーションを行った。2.8kbのヒツジPGHS cDNA(Oxford Biomedical Research社)を同様に標識した断片(1.6kbの5'末端)と、β−チューブリンに相補的な末端標識40−mer(Oncor)で、もう1度後で膜のハイブリダイゼーションを行った。RNA分子量マーカー(SRL)を臭化エチジウム染色で視覚化した。同様の分析を、グアニジニウム酸フェノール抽出法(P.Chomezynskiら:Anal.Biochem., 162;156, 1987)で、ヒト単球から分離したtotal RNA(5μg/lane)についても行った。
G.結果
方向をクローンしたcDNAライブラリーは、4kbのmRNAに富むショ糖勾配分画由来のλ−ZAP IIで作成され、緊縮性の低い状態下で、2.8kbのPGHS cDNAの放射性ラベルをした断片でスクリーニングした。陽性プラークを幾つか分離かつ分析した。長さ約4.1kbのプラークについて、完全にシークエンシングを行った。このクローンは、抗シクロオキシゲナーゼ血清で特異的に沈降する、70kDaのタンパク質をコード化しており、in vitroで翻訳されたポリA−mRNA由来の免疫沈降タンパク質産物と同じ移動をする。配列のnt 75から始まる20−merを利用したプライマー伸長分析の結果、転写はcDNAクローンの24塩基上流で始まることが明らかになった。4.1kbの配列(図1)を、以前にクローンした2.8kbのマウスPGHS cDNAの配列(ヒツジおよびヒト組織からクローンした配列と非常に類似している)と比較した結果、2.8kbのPGHS cDNAがコード化するタンパク質と64%同一のアミノ酸を持つ、1つのオープンリーディングフレーム(読み枠)が明らかになった。推定タンパク質配列は同一直線上にある。ただし、4.1kbのcDNAのアミノ末端は短く、カルボキシ末端は長い。完全な配列はGenBankに寄託してあり、受託番号はM88242号である。
方向をクローンしたcDNAライブラリーは、4kbのmRNAに富むショ糖勾配分画由来のλ−ZAP IIで作成され、緊縮性の低い状態下で、2.8kbのPGHS cDNAの放射性ラベルをした断片でスクリーニングした。陽性プラークを幾つか分離かつ分析した。長さ約4.1kbのプラークについて、完全にシークエンシングを行った。このクローンは、抗シクロオキシゲナーゼ血清で特異的に沈降する、70kDaのタンパク質をコード化しており、in vitroで翻訳されたポリA−mRNA由来の免疫沈降タンパク質産物と同じ移動をする。配列のnt 75から始まる20−merを利用したプライマー伸長分析の結果、転写はcDNAクローンの24塩基上流で始まることが明らかになった。4.1kbの配列(図1)を、以前にクローンした2.8kbのマウスPGHS cDNAの配列(ヒツジおよびヒト組織からクローンした配列と非常に類似している)と比較した結果、2.8kbのPGHS cDNAがコード化するタンパク質と64%同一のアミノ酸を持つ、1つのオープンリーディングフレーム(読み枠)が明らかになった。推定タンパク質配列は同一直線上にある。ただし、4.1kbのcDNAのアミノ末端は短く、カルボキシ末端は長い。完全な配列はGenBankに寄託してあり、受託番号はM88242号である。
4つの潜在的なN−糖鎖形成部位のうち3つは2分子間で保存され、推定軸状ヘム結合ドメイン周囲の領域(アミノ酸273−342)、および推定アスピリン修飾セリン516周囲の領域(アミノ酸504−550)に特に高い類似性がある。2つのcDNAにおけるはるかに大きい相違は、4.1kbのcDNAにある2.1kbの3'非翻訳領域の存在である。この領域は、多くのサイトカインおよびプロトオンコジーンmRNAの安定性低下に関連のある5'-AUUUA-3'モチーフに富んでいる。このようなモチーフの存在は、シクロヘキシミドによる4.1kbのmRNAの大きな重複誘発性に一致しているが、これは2.8kbのmRNAでは認められない。
ネズミ2.8および4.1kbのmRNAをコード化するシクロオキシゲナーゼのcDNAおよびタンパク質配列を図2で比較する。ネズミC127細胞からクローンした4.1kbのcDNA構造およびネズミの2.8kbのcDNA(D.L.Dewittら:J.Biol.Chem., 265;5192,(1990))構造を、図の上部および下部に太い直線で示す。4.1kbのcDNAはプライマー伸長データに基づいて番号を付けてある。2.8kbのマウスmRNAの5'末端が決定されていないため、翻訳開始部位および終了部位に番号は付けられていない。他のcDNAクローンから確立されたもう1つのポリアデニル化部位を「A」で示し、5'-AUUUnA-3'モチーフを配列の下に点で明確にした。このモチーフは2.8kbのcDNAでは認められない。推定タンパク質配列を、ギャップ(4.1kbのmRNA産物のアミノ末端の17aaおよび2.8kbのmRNA産物のカルボキシ末端の18 aa)を付け、線で結んで同一直線上に示す。2.8kbのPGHSの26番目のアミノ酸(aa)リーダー配列を示す。この伸長は正確には判明していないが、18番目のアミノ酸のN末端を持つgriPGHS用の、非相同性の短いリーダー配列が存在するようである。潜在的なN糖鎖形成部位(NXS/T,“N”)および保存されたアスピリン修飾セリンが、各分子に認められる。各分子中央付近のハッチ領域は、前記DeWittらが提案したように、推定軸状ヘム結合部位(TIWLREHNRV(SEQ ID NO:7)、2分子間で同一)および遠位ヘム結合部位(KALGH(SEQ ID NO:8/RGLGH(SEQ ID NO:9))を含む。図中央の配列は、2つのマウスPGHSタンパク質(非保存N末端およびC末端は省略)の間の類似性を、20個のアミノ酸グループの同一残基のパーセンテージで示している。配列枠内の斜線の密度が大きくなるにつれて、各々40〜55%(斜線なし)、60〜75%、80〜95%、100%の同一性を表す。全体の同一性は64%で、保存的変化を伴う類似性指数は79%である。
例2 ヒト単球におけるgriPGHSの発現
N.J.Robertsらが『J.Immunol.』121巻1052頁(1978年)で述べたように、健康供与者から分離された粘着ヒト単球を、血清を含まないM199培地に1×106細胞/ml懸濁させた。5mlポリプロピレン製チューブ中の1mlアリコットを、ゆるい栓を付けて時々振りながら、37℃の5%CO2中でインキュベーションした。図3Aに示したオートラジオグラフを得るため、P.Chomczynskiらが前記雑誌で述べた方法でtotal RNAを分離する前に、デキサメサゾン(1μM;Sigma)の存在下または非存在下で、単球を4時間インキュベーションした。M.K.O'Banionらが『J.Biol.Chem.』34巻23261頁(1991年)で述べたように、1×109cpm/μg以上の比活性まで任意プライミング(Boehringer-Mannheim社のキット)で標識した指定のプローブを用いて、5μgのRNAにノーザンブロット分析を行った。図3Bに示したオートラジオグラフを得るため、total RNAを分離する前に、デキサメサゾン(1μM)およびIL−1β(10半最高単位;Collaborative Research)またはそのどちらか一方で単球を指示された時間処理した。サイトカインまたはホルモンを加える15分前に、1組のインキュベーションにシクロヘキシミド(25μM;Sigma)を加えた。
N.J.Robertsらが『J.Immunol.』121巻1052頁(1978年)で述べたように、健康供与者から分離された粘着ヒト単球を、血清を含まないM199培地に1×106細胞/ml懸濁させた。5mlポリプロピレン製チューブ中の1mlアリコットを、ゆるい栓を付けて時々振りながら、37℃の5%CO2中でインキュベーションした。図3Aに示したオートラジオグラフを得るため、P.Chomczynskiらが前記雑誌で述べた方法でtotal RNAを分離する前に、デキサメサゾン(1μM;Sigma)の存在下または非存在下で、単球を4時間インキュベーションした。M.K.O'Banionらが『J.Biol.Chem.』34巻23261頁(1991年)で述べたように、1×109cpm/μg以上の比活性まで任意プライミング(Boehringer-Mannheim社のキット)で標識した指定のプローブを用いて、5μgのRNAにノーザンブロット分析を行った。図3Bに示したオートラジオグラフを得るため、total RNAを分離する前に、デキサメサゾン(1μM)およびIL−1β(10半最高単位;Collaborative Research)またはそのどちらか一方で単球を指示された時間処理した。サイトカインまたはホルモンを加える15分前に、1組のインキュベーションにシクロヘキシミド(25μM;Sigma)を加えた。
図3に総単球RNAのノーザンブロットを示す。これは、4.8kbのmRNA種がマウスgriPGHS 4.1kbのプローブで検出されることを示している。β−チューブリンのハイブリダイゼーションシグナル単位当たり、griPGHS mRNA濃度はデキサメサゾンで4時間で下方調節される(本例で5倍)が、2.8kbのPGHS mRNA濃度は影響を受けない。この実験で、4時間のインキュベーション後、上澄み中に蓄積されたPGE2濃度は、デキサメサゾンにより104単球当たり122.5pgから52.5pgに低下した。別の実験で、IL−1βで処理した単球では、griPGHS mRNA濃度は4時間後(対照の2.5倍)および12時間後(14倍)に上昇した(図3)。デキサメサゾンが存在する時、この上昇は有意に小さかった。さらに、IL−1βの誘発および豊富なgriPGHS mRNAのデキサメサゾン抑制は、シクロヘキシミドの存在下で生じ、4.8kbのmRNAの重複誘発が明らかに著明であった(図3)。これとは対照的に、2.8kbのmRNA濃度は、IL−1β、デキサメサゾン、シクロヘキシミドの各処理により、β−チューブリンに関して有意な変化はなかった。
例3 griPGHSトランスフェクタントを用いた薬剤アッセイ
A.発現ベクターの構築
J.M.Shortらが『Nucleic Acids Res.』16巻7583頁(1988)で述べた方法論に従い、4.1 griPGHS cDNAクローンをin vivoで、λ−ZAP IIベクターおよびアンピシリン平板上で分離したgriPGHS−Bluescript構築から切除した。Acc Iでの消化、Klenow補充およびNot Iでの消化により、pRC/CMV発現ベクター(Invitrogen)への定方向サブクローニング用のgriPGHSを生成した。cDNA末端から50塩基上流のNot I部位からnt1947まで伸びるこの断片を、ゲル電気泳動で分離した。そして、これは5'-AUUUA-3' mRNA不安定化領域の直前で切断された完全コード領域を含む。pRC/CMVベクターDNAをまずXba Iで消化し、Klenowを補充し、続いてNot Iで消化した。さらに、これを子ウシの腸のアルカリホスファターゼで処理した。受容能力を持つDH5α細胞(Library Efficiency;Life Science Technologies)への形質転換後、結合させたpRc/CMV−griPGHS組換え体をアンピシリン平板から分離し、DNAミニ標本の制限分析で確認した。構築を図4に示す。
A.発現ベクターの構築
J.M.Shortらが『Nucleic Acids Res.』16巻7583頁(1988)で述べた方法論に従い、4.1 griPGHS cDNAクローンをin vivoで、λ−ZAP IIベクターおよびアンピシリン平板上で分離したgriPGHS−Bluescript構築から切除した。Acc Iでの消化、Klenow補充およびNot Iでの消化により、pRC/CMV発現ベクター(Invitrogen)への定方向サブクローニング用のgriPGHSを生成した。cDNA末端から50塩基上流のNot I部位からnt1947まで伸びるこの断片を、ゲル電気泳動で分離した。そして、これは5'-AUUUA-3' mRNA不安定化領域の直前で切断された完全コード領域を含む。pRC/CMVベクターDNAをまずXba Iで消化し、Klenowを補充し、続いてNot Iで消化した。さらに、これを子ウシの腸のアルカリホスファターゼで処理した。受容能力を持つDH5α細胞(Library Efficiency;Life Science Technologies)への形質転換後、結合させたpRc/CMV−griPGHS組換え体をアンピシリン平板から分離し、DNAミニ標本の制限分析で確認した。構築を図4に示す。
B.安定した細胞系の樹立およびトランスフェクション
60mm平板の亜集密COS A2細胞は、自己のシクロオキシゲナーゼをほとんどあるいは全く持たない。これを1または2.5μgの精製pRC/CMV−griPGHS、あるいはベクター単独に、製造元(Life Science Technologies)の指示に従って23時間のリポフェクション法によりトランスフェクションした。正常培地(DMEM+10%ウシ胎児血清)で2日間増殖させた後、COS細胞にとって有毒であることがすでに判明している濃度、800μg/mlのGeneticin(G418、活性成分657μg/ml;Life Science Technologies)を含む培地にトランスフェクション細胞を移した。培地は3日毎に交換した。2週間後、組換え体またはベクター単独をトランスフェクションした培地には、多くの独立したコロニーが認められたが、トランスフェクションDNAを含まない培地には認められなかった。36個のpRC/CMV−griPGHSトランスフェクションコロニーおよび12個のベクタートランスフェクションコロニーを、クローニングシリンダーを用いて分離した。これらの大部分は、クローン細胞系増殖中、800μg/mlのG418での連続選択でも生存した。樹立された培養は、400μg/mlのG418と共に、DMEM+10%ウシ胎児血清中で維持する。
60mm平板の亜集密COS A2細胞は、自己のシクロオキシゲナーゼをほとんどあるいは全く持たない。これを1または2.5μgの精製pRC/CMV−griPGHS、あるいはベクター単独に、製造元(Life Science Technologies)の指示に従って23時間のリポフェクション法によりトランスフェクションした。正常培地(DMEM+10%ウシ胎児血清)で2日間増殖させた後、COS細胞にとって有毒であることがすでに判明している濃度、800μg/mlのGeneticin(G418、活性成分657μg/ml;Life Science Technologies)を含む培地にトランスフェクション細胞を移した。培地は3日毎に交換した。2週間後、組換え体またはベクター単独をトランスフェクションした培地には、多くの独立したコロニーが認められたが、トランスフェクションDNAを含まない培地には認められなかった。36個のpRC/CMV−griPGHSトランスフェクションコロニーおよび12個のベクタートランスフェクションコロニーを、クローニングシリンダーを用いて分離した。これらの大部分は、クローン細胞系増殖中、800μg/mlのG418での連続選択でも生存した。樹立された培養は、400μg/mlのG418と共に、DMEM+10%ウシ胎児血清中で維持する。
C.薬剤試験
プロスタグランジンアッセイを前記とおり行った。薬剤試験については、細胞を無血清DMEM中で様々な濃度の薬剤に30分間曝露し、DMEM中の25×株から直接、アラキドン酸を加えた。15分後、上澄みを採取した。対照は、最高濃度の賦形剤(1%メタノールまたはエタノール)で処理したウェルおよび薬剤を含まない。各薬剤はSigma社から入手し、200mM株溶液として(アセトアミノフェンおよびイブプロフェンはメタノールで、インドメタシンはエタノールで、ナプロキセンは水で)調製した。
プロスタグランジンアッセイを前記とおり行った。薬剤試験については、細胞を無血清DMEM中で様々な濃度の薬剤に30分間曝露し、DMEM中の25×株から直接、アラキドン酸を加えた。15分後、上澄みを採取した。対照は、最高濃度の賦形剤(1%メタノールまたはエタノール)で処理したウェルおよび薬剤を含まない。各薬剤はSigma社から入手し、200mM株溶液として(アセトアミノフェンおよびイブプロフェンはメタノールで、インドメタシンはエタノールで、ナプロキセンは水で)調製した。
D.結果
1.発現ベクターの選択
pRC/CMV真核生物発現ベクター(図4)は、我々の目的に明らかに有利な性質を幾つか提供する。細菌宿主でも真核生物宿主でも選択しやすいことに加え、我々のクローン化したcDNAの発現は強力なCMVプロモーターで生じる。また、このベクターは、griPGHS 3'非翻訳配列を含まない(翻訳終止コドンから12塩基対(bp)で終わる)ために必要であるポリAシグナルも提供する。急速なmRNAの分解用のシグナル(5'-AUUUA-3')をin vivoで提供するため、これらの配列の除去は重要である。そして、このベクターは、自己のシクロオキシゲナーゼ活性をほとんどあるいは全く持たないCOS細胞での使用に非常に適している。
1.発現ベクターの選択
pRC/CMV真核生物発現ベクター(図4)は、我々の目的に明らかに有利な性質を幾つか提供する。細菌宿主でも真核生物宿主でも選択しやすいことに加え、我々のクローン化したcDNAの発現は強力なCMVプロモーターで生じる。また、このベクターは、griPGHS 3'非翻訳配列を含まない(翻訳終止コドンから12塩基対(bp)で終わる)ために必要であるポリAシグナルも提供する。急速なmRNAの分解用のシグナル(5'-AUUUA-3')をin vivoで提供するため、これらの配列の除去は重要である。そして、このベクターは、自己のシクロオキシゲナーゼ活性をほとんどあるいは全く持たないCOS細胞での使用に非常に適している。
2.細胞系の特徴づけ
36個のgriPGHS−pRc/CMVクローンネオマイシン抵抗性コロニーおよび12個のベクター単独クローンネオマイシン抵抗性コロニーのうち、各々29個および9個のPGE2産生について調べた。全例で、ベクター単独トランスフェクタントのPGE2産生は、1アッセイ当たり8pg未満であった(数字は、20μlの収集した培地で10〜15分後に分泌されたPGE2の量を反映している)。しかし、griPGHSトランスフェクションクローンは、幅広いプロスタグランジン産生を示した。これらのうち、11個のプロスタグランジン産生クローンおよび2個のベクター単独含有クローンをさらに増殖させ、再試験を行った。
36個のgriPGHS−pRc/CMVクローンネオマイシン抵抗性コロニーおよび12個のベクター単独クローンネオマイシン抵抗性コロニーのうち、各々29個および9個のPGE2産生について調べた。全例で、ベクター単独トランスフェクタントのPGE2産生は、1アッセイ当たり8pg未満であった(数字は、20μlの収集した培地で10〜15分後に分泌されたPGE2の量を反映している)。しかし、griPGHSトランスフェクションクローンは、幅広いプロスタグランジン産生を示した。これらのうち、11個のプロスタグランジン産生クローンおよび2個のベクター単独含有クローンをさらに増殖させ、再試験を行った。
griPGHS構造を持つクローンが分泌したPGE2の量は、10.6〜72.2pg/μg細胞タンパク質であった(表3)。
表右側の値は、30μMアラキドン酸に10分間曝露させた時のプロスタグランジンの分泌量を示し、総回収細胞タンパク質当たりで表してある。細胞系A2およびA5はベクターのみを含み、他の細胞系にはgriPGHS−pRc/CMVをトランスフェクションした。ベクターのみを有する細胞以上にPGE2産生が上昇しなかった細胞系が、1つだけあった(F14;星印2個(**)付き)。
cyropreservation用に各細胞系を増殖させ、培養の簡単さおよび有意なPGE2産生で、1種類(E9)の細胞系を選び、これをさらなる研究に使用した。この細胞系のサンプルは、ブダペスト条約の規定の下、American Type Culture Collection(米国メリーランド州ロックヴィル)に受託番号ATCC11119号で寄託してある。
3.PGE 産生の安定性
E9細胞系でのシクロオキシゲナーゼ活性発現の安定性について、PGE2産生を最低5代の細胞系に渡って比較して調べた。これらの細胞は、6週間後も高濃度のPGE2を産生した。タンパク質測定による細胞数の標準化を行わなかった例もあるため、数字を直接比較することはできないが、この標準アッセイでのE9細胞系のPGE2分泌量は(20μlアッセイ培地当たり)35〜90pgであった。さらに、実験の範囲内で、E9細胞系のPGE2産生濃度はウェル毎に非常に一定していた。例えば、調べた12の上澄みで、PGE2濃度は48.4=3.5pg/20μl(平均±SEM)であった。
E9細胞系でのシクロオキシゲナーゼ活性発現の安定性について、PGE2産生を最低5代の細胞系に渡って比較して調べた。これらの細胞は、6週間後も高濃度のPGE2を産生した。タンパク質測定による細胞数の標準化を行わなかった例もあるため、数字を直接比較することはできないが、この標準アッセイでのE9細胞系のPGE2分泌量は(20μlアッセイ培地当たり)35〜90pgであった。さらに、実験の範囲内で、E9細胞系のPGE2産生濃度はウェル毎に非常に一定していた。例えば、調べた12の上澄みで、PGE2濃度は48.4=3.5pg/20μl(平均±SEM)であった。
4.薬剤試験
我々の細胞系の薬剤試験での有用性を証明するため、E9細胞の重複ウェルをある範囲の用量(0.2μM〜2mM)の4種類の非ステロイド性抗炎症剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン)に曝露させた。薬剤を含む無血清培地に細胞を30分間置いた後、(培地に直接加えた)アラキドン酸に15分間曝露させた。次に、合成されたPGE2を、我々の標準ラジオイムノアッセイで上澄みから定量した。結果を図5に示す。この結果から、各薬剤について特異的な用量反応曲線が明らかになった。griPGHS活性に対する作用は、インドメタシンが最も大きく、アセトアミノフェンが最も小さかった。各例における最大阻害(ただし、完全阻害には2mMでも明らかに不十分であったアセトアミノフェンは除く)は、ベクターのみを有するCOS細胞(3〜8pg)でみられた阻害と同じであった。低用量の各薬剤は、未処理対照の値(平均48.4pg)に相当するレベルを示した。対照では、1%賦形剤(メタノールまたはエタノール;2mM薬剤条件での曝露に匹敵する)の有無によるPGE2産生の違いはなかった。
我々の細胞系の薬剤試験での有用性を証明するため、E9細胞の重複ウェルをある範囲の用量(0.2μM〜2mM)の4種類の非ステロイド性抗炎症剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン)に曝露させた。薬剤を含む無血清培地に細胞を30分間置いた後、(培地に直接加えた)アラキドン酸に15分間曝露させた。次に、合成されたPGE2を、我々の標準ラジオイムノアッセイで上澄みから定量した。結果を図5に示す。この結果から、各薬剤について特異的な用量反応曲線が明らかになった。griPGHS活性に対する作用は、インドメタシンが最も大きく、アセトアミノフェンが最も小さかった。各例における最大阻害(ただし、完全阻害には2mMでも明らかに不十分であったアセトアミノフェンは除く)は、ベクターのみを有するCOS細胞(3〜8pg)でみられた阻害と同じであった。低用量の各薬剤は、未処理対照の値(平均48.4pg)に相当するレベルを示した。対照では、1%賦形剤(メタノールまたはエタノール;2mM薬剤条件での曝露に匹敵する)の有無によるPGE2産生の違いはなかった。
例4 小胞体抽出物の生成およびin vitroでのシクロオキシゲナーゼ活性試験
小胞体抽出物の生成および細胞シクロオキシゲナーゼ活性の測定は、基本的にA.Razらが『J.Biol.Chem.』263巻3022頁(1989年)および『PNAS USA』86巻1657頁(1989年)に述べたとおりに行った。細胞を氷冷PBS(pH=7.4)で1回すすぎ、使い捨てのプラスチック製スクレーパー(Gibco)でディッシュから剥がし、1.5ml滅菌チューブに氷冷PBSと共に入れ、遠心分離(800×gで8分間)によりペレット状にする。上澄みを除去し、細胞ペレットをPBSですすぐ。この時点で、細胞ペレットは−70℃で保存可能である。
小胞体抽出物の生成および細胞シクロオキシゲナーゼ活性の測定は、基本的にA.Razらが『J.Biol.Chem.』263巻3022頁(1989年)および『PNAS USA』86巻1657頁(1989年)に述べたとおりに行った。細胞を氷冷PBS(pH=7.4)で1回すすぎ、使い捨てのプラスチック製スクレーパー(Gibco)でディッシュから剥がし、1.5ml滅菌チューブに氷冷PBSと共に入れ、遠心分離(800×gで8分間)によりペレット状にする。上澄みを除去し、細胞ペレットをPBSですすぐ。この時点で、細胞ペレットは−70℃で保存可能である。
抽出物を得るため、ペレットを可溶化緩衝液(50mM Tris、1mMジエチルジチオカルバミド酸(ナトリウム塩)、10mMEDTA、1%(v/v)ツウィーン20、0.2mg/mlα2-マクログロブリン(pH=8.0))に再び懸濁した後、音波処理(5×10秒バースト、低出力設定)を行う。抽出物を4℃で遠心分離(16,000×gで20分間)で清浄化する。タンパク質測定用にアリコットを取り、100mM塩化ナトリウム、20mMホウ酸ナトリウム、1.5mMEDTA、1.5mMEGTA、0.3mMPMSF、10mMNEM、0.5%BSA、0.5%TritonX−100、1mMエピネフリンおよび1mMフェノール(pH9.0)を含む溶液で、50μlアリコットを500μlに希釈する。
前記緩衝液中のアラキドン酸を100μMの小胞体抽出物に加えて反応させ、37℃で30分間インキュベーションする。その結果生じたPGE2を、RIAキット製造元(Amersham社)の指示どおりメチルオキメート型に定量変換した後、RIAで測定する。非ステロイド性抗炎症化合物の効果を調べるため、アラキドン酸との反応の5分前に、薬剤を様々な用量で加える。
例5 ヒトPGHS−1およびヒトPGHS−2cDNAクローンの生成
RNAは、血清およびシクロオキシゲナーゼで4時間処理したヒト線維芽細胞系(W138)から分離した。total RNAは、グアニジニウム溶解の後、塩化セシウムクッション遠心分離により分離した(J.M.Chirgwinら:Biochem., 18;5294, 1977)。ヒトPGHS−1およびPGHS−2に特異的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーを生成し、1転写または他のコード領域を増幅させた(表4)。続いて行うクローニング用に、5'末端プライマーにはHindIII制限部位が、3'末端プライマーにはNot I制限部位がある。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)は、E.S.Kawasakiが『PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications』(M.A.Innisら編集、Academic Press、ニューヨーク、1990年)で述べているとおり、2kbの特異的プライマー生成PCR産物を用いて行った。
RNAは、血清およびシクロオキシゲナーゼで4時間処理したヒト線維芽細胞系(W138)から分離した。total RNAは、グアニジニウム溶解の後、塩化セシウムクッション遠心分離により分離した(J.M.Chirgwinら:Biochem., 18;5294, 1977)。ヒトPGHS−1およびPGHS−2に特異的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーを生成し、1転写または他のコード領域を増幅させた(表4)。続いて行うクローニング用に、5'末端プライマーにはHindIII制限部位が、3'末端プライマーにはNot I制限部位がある。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)は、E.S.Kawasakiが『PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications』(M.A.Innisら編集、Academic Press、ニューヨーク、1990年)で述べているとおり、2kbの特異的プライマー生成PCR産物を用いて行った。
例6 配列決定およびトランスフェクション用プラスミド構築の生成
Hind IIIおよびNot Iでの消化および精製の後、2つのPCR産物をpRC/CMVベクター(Invitrogen社)に各々結合させた(図4参照)。受容能力を持つDH5a細胞(BRL)への形質転換後、結合させたpRC/CMV−PGHS組換えプラスミドを、アンピシリン平板から分離した。制限地図生成により、PGHS挿入の有無についてクローンをスクリーニングした。
Hind IIIおよびNot Iでの消化および精製の後、2つのPCR産物をpRC/CMVベクター(Invitrogen社)に各々結合させた(図4参照)。受容能力を持つDH5a細胞(BRL)への形質転換後、結合させたpRC/CMV−PGHS組換えプラスミドを、アンピシリン平板から分離した。制限地図生成により、PGHS挿入の有無についてクローンをスクリーニングした。
3つのPGHS−2クローンについて、Applied Biosystems製自動シークエンサー(Model#373A)で両方向にシークエンシングを行った。トランスフェクションには、図6に示したPGHS−2遺伝子配列から成るクローンを選択した。HlaおよびNeilsonが『PNAS』89巻7384頁(1992)で発表したように、この配列はヒトPGHS−2配列とは異なる。PGHS−2遺伝子産物の165番目のアミノ酸が、グリシン(w)ではなくグルタミン酸(E)である(図7)。PGHS−2遺伝子配列は、別のPCR法から得られた他の2つのhPGHS−2クローンの配列の同一性を確立することで確認した。その結果、観察された相違はPCRアーチファクトではないことが判明している。さらに、図1に示すように、マウスPGHS−2も同じ位置にグルタミン酸を持っている。PGHS−1クローンを同様にスクリーニングし、PGHS−1遺伝子配列および酵素が、C.Tokoyamaらが『Biochem. Biophys. Res. Commun.』165巻888頁(1989年)に発表し、図2に示したもの(SEQ ID NO:6)と同一であることが確認された。T. Hlaの『Prostaglandins』32巻829頁(1986年)も参照のこと。
例7 安定トランスフェクション哺乳類細胞系の生成
60mm平板の50%集密COS−A2(サル)細胞には、シクロオキシゲナーゼ活性がほとんどまたは全くない。これに1〜2.5μgの精製pRC/CMV;hPGHS−2プラスミド、pRC/CMV;hPGHS−2プラスミド、あるいはpRC/CMVベクター単独を、リン酸カルシウム沈降法(Chenら:Mol.Cell.Biol., 7;2745,(1987))でトランスフェクションした。35℃、3%CO2で24時間、平板を正常培地(ダルベッコ変法イーグル培地(DMED)+10%ウシ胎児血清)でインキュベーションした。暖めたDMEMで2回すすいだ後、平板を37℃、5%CO2中に移し、さらに24時間インキュベーションした。続いて、COS細胞にとって有毒な濃度に相当する800μgのGeneticin(active component G418, 657μg/ml, Life Science Technologies)を含む正常培地で、選択を開始した。3日毎に培地を交換した。2週間後、組換えPGHSベクターまたはベクターのみをトランスフェクションしたディッシュに、多くの独立したコロニーが認められた。しかし、トランスフェクションDNAを含まないディッシュには、コロニーは認められなかった。各トランスフェクションから12〜24個のコロニーを、クローニングシリンダーで分離した。これらの大部分は、クローン細胞系の増殖中、連続G418選択でも存在し続けた。樹立された培養は、400μg/mlのG418と共に、DMEM+10%ウシ胎児血清中で維持する。
60mm平板の50%集密COS−A2(サル)細胞には、シクロオキシゲナーゼ活性がほとんどまたは全くない。これに1〜2.5μgの精製pRC/CMV;hPGHS−2プラスミド、pRC/CMV;hPGHS−2プラスミド、あるいはpRC/CMVベクター単独を、リン酸カルシウム沈降法(Chenら:Mol.Cell.Biol., 7;2745,(1987))でトランスフェクションした。35℃、3%CO2で24時間、平板を正常培地(ダルベッコ変法イーグル培地(DMED)+10%ウシ胎児血清)でインキュベーションした。暖めたDMEMで2回すすいだ後、平板を37℃、5%CO2中に移し、さらに24時間インキュベーションした。続いて、COS細胞にとって有毒な濃度に相当する800μgのGeneticin(active component G418, 657μg/ml, Life Science Technologies)を含む正常培地で、選択を開始した。3日毎に培地を交換した。2週間後、組換えPGHSベクターまたはベクターのみをトランスフェクションしたディッシュに、多くの独立したコロニーが認められた。しかし、トランスフェクションDNAを含まないディッシュには、コロニーは認められなかった。各トランスフェクションから12〜24個のコロニーを、クローニングシリンダーで分離した。これらの大部分は、クローン細胞系の増殖中、連続G418選択でも存在し続けた。樹立された培養は、400μg/mlのG418と共に、DMEM+10%ウシ胎児血清中で維持する。
例8 G418抵抗性細胞系試験およびPGHS−2活性とPGHS−1活性の安定発現
12穴のプレートに置いたトランスフェクションCOS細胞をほぼ集密になるまで増殖させ、暖めた無血清培地で2回すすいだ後、300μlの30μMアラキドン酸(ナトリウム塩;Sigma)で被った。15分後、上澄みを氷上のEppendorfチューブに入れて、15,000×gで2分間遠心分離し、メチルオキシメート型に変換後、イムノアッセイでPGE2産生を調べた(Amersham社のキット)。
12穴のプレートに置いたトランスフェクションCOS細胞をほぼ集密になるまで増殖させ、暖めた無血清培地で2回すすいだ後、300μlの30μMアラキドン酸(ナトリウム塩;Sigma)で被った。15分後、上澄みを氷上のEppendorfチューブに入れて、15,000×gで2分間遠心分離し、メチルオキシメート型に変換後、イムノアッセイでPGE2産生を調べた(Amersham社のキット)。
BioRadの薬品を用いてタンパク質濃度を測定するため(Bradford変法アッセイ)、細胞単層を0.5M水酸化ナトリウムで可溶化し、1M塩酸で中和した。PGHS活性を発現する細胞系をさらに増殖させ、10%DMSOを加えた培地で凍結させた。
PGHS−2を発現する細胞系4B4およびPGHS−1を発現する細胞系H17A5を、1993年3月5日にAmerican Type Culture Collection(米国メリーランド州ロックヴィル)に寄託した(細胞系4B4はATCC受託番号CRL11284号、細胞系H17A5はATCC CRL 11283号とした)。
安定トランスフェクション細胞系でのPGHS発現レベルは、表5のデータに示すように、PGHS−1細胞系のほうがPGHS−2細胞系よりもはるかに高かった。
数カ月の培養後も、これらの細胞系は高いレベルのPGHS発現を続けている。例えば、細胞系4B4を5カ月に渡って6回調べた結果、発現は50〜60pg PGE2/μg細胞タンパク質である。細胞系のPGHS−1またはPGHS−2の排他的存在は、Northern analysesにより、PGHS−1またはPGHS−2に特異的なハイブリッド形成プローブを使って確認された。
例9 安定ヒトPGHS−1およびPGHS−2細胞系に対する非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)の研究
PGHS−1およびPGHS−2細胞系(4B4とH17A5を含む)を、血清を含まないDMEM中で様々な濃度のNSAIDに30分間さらした。DMEM中の25xストックから直接アラキドン酸を加え、15分後に上澄み液を採取した。対照は、薬剤処理なしのものと、最高濃度の賦形剤(1%メタノールまたはエタノール)で処理した細胞とからなるものとした。薬剤はSigma Chem.社から入手し、200mM株溶液として(アスピリンおよびイブプロフェンはメタノールで、インドメタシンはエタノールで、ナプロキセンは水で)調製した。シクロオキシゲナーゼ活性は前記方法で測定した。用量反応曲線は薬剤間で明らかに異なっており、PGHS−1およびPGHS−2に各々特徴的であった。特に図8および図9に示したインドメタシンおよびアスピリンのように、阻害に必要な薬剤濃度はPGHS−1発現細胞およびPGHS−2発現細胞間で異なっていた(図8および図9)。
PGHS−1およびPGHS−2細胞系(4B4とH17A5を含む)を、血清を含まないDMEM中で様々な濃度のNSAIDに30分間さらした。DMEM中の25xストックから直接アラキドン酸を加え、15分後に上澄み液を採取した。対照は、薬剤処理なしのものと、最高濃度の賦形剤(1%メタノールまたはエタノール)で処理した細胞とからなるものとした。薬剤はSigma Chem.社から入手し、200mM株溶液として(アスピリンおよびイブプロフェンはメタノールで、インドメタシンはエタノールで、ナプロキセンは水で)調製した。シクロオキシゲナーゼ活性は前記方法で測定した。用量反応曲線は薬剤間で明らかに異なっており、PGHS−1およびPGHS−2に各々特徴的であった。特に図8および図9に示したインドメタシンおよびアスピリンのように、阻害に必要な薬剤濃度はPGHS−1発現細胞およびPGHS−2発現細胞間で異なっていた(図8および図9)。
すべての出版物、特許および特許出版は、あたかも参考文献が各々を特異的かつ独立的に組み入れているように、参照により文献として本文である程度組み入れてある。
付属の請求の範囲の意図または範囲からはずれることなく、本発明で多くの変形および変更が可能であることは、当業者には明らかであろう。
配列リスト
(1)一般情報
(i)出願人:ドナルド・エイ・ヤング
エム・ケリー・オーバニオン
ヴァージニア・ディー・ウィン
(ii)発明の名称
調節性炎症性シクロオキシゲナーゼを発現する安定に形質転換された哺乳動物細胞
(iii)配列数:13
(iv)連絡用住所
(A)宛名人:マーチャント・アンド・グールド
(B)街区:ノーウェスト・センター3100
(C)市:ミネアポリス市
(D)州:ミネソタ州
(E)国:アメリカ合衆国
(F)郵便番号:55402
(v)コンピュータ可読形式
(A)媒体タイプ:フロッピー・ディスク
(B)コンピュータ:IBM PC互換機
(C)オペレーティング・システム:PC−DOS/MS−DOS
(D)ソフトウェア:PatentIn リリース#1.0、
バージョン#1.25
(vi)現出願データ
(A)出願番号
(B)出願日
(C)分類
(viii)弁理士/代理人情報
(A)氏名:ウォレン・ディー・ウェスナー
(B)登録番号:30,440
(C)参照/整理番号:9840.20−US−01
(ix)通信情報
(A)電話:612−332−5300
(B)テレファックス:612−332−9081
(2)SEQ ID NO:1に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:1200塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:Murine gri PGHS
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:1
(2)SEQ ID NO:2に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:アミノ酸604個
(B)タイプ:アミノ酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:蛋白
(vi)採取源
(A)対象生物:Murine gri PGHSのアミノ酸配列
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:2
(2)SEQ ID NO:3に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:1834塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−2
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:3
(2)SEQ ID NO:4に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:アミノ酸604個
(B)タイプ:アミノ酸
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:蛋白
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−2のアミノ酸配列
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:4
(2)SEQ ID NO:5に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:アミノ酸604個
(B)タイプ:アミノ酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:蛋白
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−2のアミノ酸配列
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:5
(2)SEQ ID NO:6に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:1819塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−1遺伝子
(ix)特徴
(A)名前/キー:CDS
(B)場所:8..1804
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:6
(2)SEQ ID NO:7に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:アミノ酸10個
(B)タイプ:アミノ酸
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:ペプチド
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:7
(2)SEQ ID NO:8に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:アミノ酸5個
(B)タイプ:アミノ酸
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:ペプチド
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:8
(2)SEQ ID NO:9に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:アミノ酸5個
(B)タイプ:アミノ酸
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:ペプチド
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:9
(2)SEQ ID NO:10に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:28塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−1 PCRプライマー
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:10
(2)SEQ ID NO:11に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:28塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−1 PCRプライマー
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:11
(2)SEQ ID NO:12に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:29塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−2 PCRプライマー
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:12
(2)SEQ ID NO:13に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:29塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−2 PCRプライマー
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:13
(1)一般情報
(i)出願人:ドナルド・エイ・ヤング
エム・ケリー・オーバニオン
ヴァージニア・ディー・ウィン
(ii)発明の名称
調節性炎症性シクロオキシゲナーゼを発現する安定に形質転換された哺乳動物細胞
(iii)配列数:13
(iv)連絡用住所
(A)宛名人:マーチャント・アンド・グールド
(B)街区:ノーウェスト・センター3100
(C)市:ミネアポリス市
(D)州:ミネソタ州
(E)国:アメリカ合衆国
(F)郵便番号:55402
(v)コンピュータ可読形式
(A)媒体タイプ:フロッピー・ディスク
(B)コンピュータ:IBM PC互換機
(C)オペレーティング・システム:PC−DOS/MS−DOS
(D)ソフトウェア:PatentIn リリース#1.0、
バージョン#1.25
(vi)現出願データ
(A)出願番号
(B)出願日
(C)分類
(viii)弁理士/代理人情報
(A)氏名:ウォレン・ディー・ウェスナー
(B)登録番号:30,440
(C)参照/整理番号:9840.20−US−01
(ix)通信情報
(A)電話:612−332−5300
(B)テレファックス:612−332−9081
(2)SEQ ID NO:1に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:1200塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:Murine gri PGHS
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:1
(2)SEQ ID NO:2に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:アミノ酸604個
(B)タイプ:アミノ酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:蛋白
(vi)採取源
(A)対象生物:Murine gri PGHSのアミノ酸配列
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:2
(2)SEQ ID NO:3に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:1834塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−2
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:3
(2)SEQ ID NO:4に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:アミノ酸604個
(B)タイプ:アミノ酸
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:蛋白
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−2のアミノ酸配列
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:4
(2)SEQ ID NO:5に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:アミノ酸604個
(B)タイプ:アミノ酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:蛋白
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−2のアミノ酸配列
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:5
(2)SEQ ID NO:6に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:1819塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−1遺伝子
(ix)特徴
(A)名前/キー:CDS
(B)場所:8..1804
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:6
(2)SEQ ID NO:7に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:アミノ酸10個
(B)タイプ:アミノ酸
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:ペプチド
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:7
(2)SEQ ID NO:8に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:アミノ酸5個
(B)タイプ:アミノ酸
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:ペプチド
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:8
(2)SEQ ID NO:9に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:アミノ酸5個
(B)タイプ:アミノ酸
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:ペプチド
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:9
(2)SEQ ID NO:10に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:28塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−1 PCRプライマー
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:10
(2)SEQ ID NO:11に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:28塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−1 PCRプライマー
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:11
(2)SEQ ID NO:12に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:29塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−2 PCRプライマー
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:12
(2)SEQ ID NO:13に関する情報
(i)配列特性
(A)長さ:29塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖:一本
(D)形状:直線
(ii)分子タイプ:cDNA
(vi)採取源
(A)対象生物:ヒトPGHS−2 PCRプライマー
(xi)配列の記述:SEQ ID NO:13
Claims (6)
- PGHS−2活性を選択的に阻害するのに有効な量で非ステロイド性化合物を、このような処置の必要なヒト宿主に投与することを含む、ヒト宿主のPGHS−2活性を選択的に阻害する方法。
- PGHS−1の活性が阻害されないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記非ステロイド性化合物が抗炎症性薬剤であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
- PGHS−2活性を選択的に阻害するのに有効な量で非ステロイド性化合物を、このような処置の必要なヒト宿主に投与することを含む、ヒト宿主のPGHS−2活性を選択的に阻害する方法であって、ヒト宿主において前記非ステロイド性化合物の活性が著しい毒性副作用を起こさない阻害方法。
- PGHS−2活性を選択的に阻害するのに有効な量で非ステロイド性化合物を、このような処置の必要なヒト宿主に投与することを含む、ヒト宿主のPGHS−2活性を選択的に阻害する方法であって、
PGHS−2遺伝子産生物の活性を選択的に阻害する前記非ステロイド性化合物の阻害力が、
(a)ヒトPGHS−2を発現し、かつヒトPGHS−1を発現しない遺伝子改変された細胞を前記非ステロイド性化合物に30分間接触させ、前記細胞を所定量のアラキドン酸に晒す段階と、
(b)ヒトPGHS−1を発現し、かつヒトPGHS−2を発現しない遺伝子改変された細胞を前記非ステロイド性化合物に30分間接触させ、前記細胞を所定量のアラキドン酸に晒す段階と、
(c)プロスタグランジン代謝産物に対するアラキドン酸の転化率を測定する段階と、
(d)前記非ステロイド性化合物に晒された各細胞によって転化されたアラキドン酸量を、前記非ステロイド性化合物に晒されていないコントロール細胞によって転化されたアラキドン酸量と比較して、PGHS−2活性を阻害しかつPGHS−1活性を阻害しない前記非ステロイド性化合物を見出す段階と、によって判定される阻害方法。 - 炎症を処置するために用いられる、請求項1、4及び5のいずれか一項に記載の方法。
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