JP2005063944A - 電解質膜・電極構造体 - Google Patents

電解質膜・電極構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】炭化水素系固体高分子電解質膜を使用した、信頼性や耐久性を高めた、電解質膜・電極構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、炭化水素系固体高分子電解質膜を一対の電極で挟んでなる電解質膜・電極構造体を、最適な条件でのホットプレスにより提供するものであり、使用される電解質膜の乾燥状態におけるガラス転移温度が160℃以上であり、かつ電解質膜が電解質膜の重量に対して、10%から120%の範囲で水分を保持しうる電解質膜からなることを特徴とする電解質膜・電極構造体である。

Description

本発明は、炭化水素系固体高分子電解質膜の両側に一対の電極を挟んでなる電解質膜・電極構造体に関するものである。
近年、エネルギー効率や環境性に優れた新しい発電技術が注目を集めている。中でも固体高分子電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池はエネルギー密度が高く、また、他の方式の燃料電池に比べて運転温度が低いため起動、停止が容易であるなどの特徴を有し、電気自動車や分散発電等の電源装置としての開発が進んできている。このような固体高分子電解質膜としては、例えば米国デュポン社製ナフィオン(商品名)に代表されるようなスルホン酸基を導入したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜が知られている。
燃料電池の基本素子である電解質膜・電極構造体は、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜の両側に一対の電極、即ち負極触媒層膜および正極触媒層膜がそれぞれ接合した状態で構成されている。たとえば負極触媒層膜および正極触媒層膜は、いずれも触媒である例えば白金微粒子や白金ルテニウム微粒子を表面に分散させたカーボン粉末とプロトン伝導性を有するパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを混合させて作製した層からなる。
ここで一般的な電解質膜・電極構造体の作製方法としては、フィルム状の基材の上に、白金を担持させたカーボンや、白金とルテニウムの合金を担持させたカーボンとパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーの均一な混合層を形成させたものを作製し、これをパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー電解質膜の上に熱転写することにより作製する。
この際には、温度・圧力・時間をコントロールすることで、デバイス性能に悪影響のない好条件で、触媒層と固体高分子電解質膜を接合している。具体的には、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜のガラス転移温度付近、たとえばナフィオンの場合130℃〜140℃で4〜10MPaの圧力下、1〜5分間プレスすることによって良好な電解質膜・電極構造体を形成させることが可能である。
このような電解質膜・電極構造体における電解質膜、即ちパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜は、ポリマー中に含まれるスルホン酸基の酸性度が高いため、比較的少ないスルホン酸基量で良好な電池性能を引き出せることと、フッ素がもたらす化学的安定性のために最も広く用いられているが、モノマーのコストが高く、またポリマー合成にかかる制御が困難であることと設備に使用される材料が制限されることにより、非常に高価となるため、普及への障害となる。また燃料として液体燃料、たとえばメタノールを用いるダイレクトメタノール型燃料電池に応用する場合には、フッ素とメタノールの親和性が強いために、メタノール透過性が高く、性能を引き出せないという欠点を持つ。従って、より安価でメタノール透過性の低い、炭化水素系固体高分子電解質膜を作製しようと動きが活発化している。
非フッ素系芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入した炭化水素系の高分子電解質膜が種々検討されている。ポリマー骨格としては、耐熱性や化学的安定性を考慮すると、芳香族ポリアリーレンエーテルケトン類や芳香族ポリアリーレンエーテルスルホン類などの、芳香族ポリアリーレンエーテル化合物を有望な構造としてとらえることができ、ポリアリールエーテルスルホンをスルホン化したもの(例えば、非特許文献1参照。)、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化したもの(例えば、特許文献1参照。)、スルホン化ポリスチレン等が報告されている。また、電子吸引性芳香環上にスルホン酸基を導入したモノマーを用いて重合することで、より熱的に安定性の高いスルホン化ポリアリールエーテルスルホン系化合物が報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながらこうした耐熱性や化学的安定性を高めた芳香族系の炭化水素系ポリマーにおいては、前述したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜で一般的に行われているガラス転移温度付近の温度で電極と熱接着するという手法は困難となる。例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの場合、ガラス転移温度は、導入するスルホン酸基量によりことなるが、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜よりも大幅に高い(非特許文献2参照)。このような、スルホン酸基等の酸性官能基が導入された炭化水素系ポリマーにおいては、ガラス転移温度が高いことから、耐熱性は改善される反面、電解質膜の接着性が低いために、良好な電解質膜・電極構造体を作製するのが困難である。また、より温度を上げて接合させた場合、ポリマーの劣化が促進されるため、電解質膜・電極構造体とした時の耐久性が低下する。一方、炭化水素系ポリマーに導入するスルホン酸基量を増やした場合、ガラス転移温度は低下されるが、それでも十分ではなく、さらにガラス転移温度自身の影響に加えて、ポリマーが電極と接合する際にひずみが発生しやすく変形するので、良好な電解質膜・電極構造体の作製をさらに困難化する。さらには、本質的に炭化水素ポリマーは、フッ素系ポリマーに比較して化学的安定性に劣るものであることから、電極との接合に伴う条件を厳しくすると、膜特性の劣化が進行し、燃料電池としたときの信頼性・耐久性が低下する。
特開平6−93114号公報(第15−17頁) 米国特許出願公開第2002/0091225号明細書(第1−2頁) ジャーナル・オブ・メンブラン・サイエンス(Journal of Membrane Science)、(オランダ)1993年、83巻、P.211−220 ジャーナル・オブ・メンブラン・サイエンス(Journal of Membrane Science)173(2000)17−34
本発明は、炭化水素系固体高分子電解質膜を使用した、信頼性や耐久性を高めた、電解質膜・電極構造体を良好に提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、炭化水素系固体高分子電解質膜を一対の電極で挟んでなる電解質膜・電極構造体において、使用される電解質膜の乾燥状態におけるガラス転移温度が160℃以上であり、かつ電解質膜が電解質膜の重量に対して、10%から120%の範囲で水分を保持しうる電解質膜からなることを特徴とする電解質膜・電極構造体である。
また、本発明は、炭化水素系固体高分子電解質膜を一対の電極で挟んでなる電解質膜・電極構造体の製造方法において、炭化水素系固体高分子電解質膜と一対の電極を接合する方法であり、炭化水素系固体高分子電解質膜中に含まれる水分量が、前記炭化水素系固体高分子電解質膜が含有可能な最大水分量の10〜70%の範囲にある状態において、前記電極とホットプレスにより接合することを特徴とする、炭化水素系固体高分子電解質膜と一対の電極の接合方法であって、本手法により、本質的にガラス転移温度が高い芳香族系の炭化水素系固体高分子電解質膜を、比較的温和な条件で電極と接合することが可能となり、信頼性・耐久性に優れた電解質膜・電極構造体を提供する。
この発明によると、炭化水素系固体高分子電解質膜中に含浸された水分が、ポリマーの分子運動を活発化し、膜の柔軟性を向上させるため、電極との接合性が改善され、炭化水素系固体高分子電解質に対する負荷が比較的少ない条件で、電解質膜・電極構造体を作製できるため、膜の耐久性が向上される。
また、前記記載の炭化水素系固体高分子電解質膜と一対の接合方法において、炭化水素系固体高分子電解質膜を、湿度および/または温度が管理された雰囲気下に保持することによって炭化水素系固体高分子電解質膜に水分を付与することを特徴とする炭化水素系固体高分子電解質膜と一対の電極の接合方法である。本発明によると、均等に水分を炭化水素系固体高分子電解質膜に導入できるため、膜全体を接合するのに適した良好な状態に加湿することが可能となり、良好に接合された電解質膜・電極構造体を再現性良く得ることが可能となる。
またさらに本発明は、前記一対の電極の周縁部が、シール部材で形成されていることを特徴とする電解質膜・電極構造体であって、電極端面から燃料がクロスオーバーするのを防止することが可能であり、本質的に安定性の低い炭化水素系固体高分子電解質膜の耐久性を高めることができる。
また本発明は、前記炭化水素系固体高分子電解質膜を形成する有機高分子として、一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含むことを特徴とするポリアリーレンエーテル系化合物を用いた電解質膜・電極構造体であり、炭化水素系固体高分子電解質膜の耐久性をさらに高めることができる。
Figure 2005063944
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
Figure 2005063944
ただし、Ar’は2価の芳香族基を示す。
本発明の電解質膜・電極構造体により、信頼性・耐久性に優れた炭化水素系電解質膜を用いた燃料電池を提供できる。
以下本発明について詳細に説明する。
従来のパーフルオロスルホン酸系固体高分子電解質膜よりも優れた熱的安定性を有する電解質膜の候補として、高いガラス転移温度を有する炭化水素系のポリマー電解質膜の研究が行われており、同時にそのような炭化水素系ポリマー電解質膜を使用した電解質膜・電極構造体の研究がなされている。ここでいう炭化水素系ポリマー電解質としては、耐熱性や化学的安定性を考慮すると、例えば芳香族ポリアリーレンエーテル化合物を有望と考えることができる。ここで耐熱性を向上させるという意味では、高温におけるポリマーの変形を抑止させるために、より高いガラス転移温度を有するポリマーが好ましいという観点から、ポリマーが乾燥状態において160℃以上のガラス転移温度を有していることが好ましく、より良好には200℃以上である。
一方、燃料電池を良好に動かすためには、電解質膜中をプロトンが移動しやすい電解質膜である方が好ましいわけであるが、プロトンは、電解質膜中に存在する酸性官能基を利用して、ホッピングや水と水和した形で移動することから、酸性官能基量を増やした電解質膜が好適に利用できる。詳細は後述するが、例えば酸性官能器がスルホン酸基である場合、電解質膜中のスルホン酸基含有量が0.3〜3.5meq/gの範囲にあることが好ましい。0.3meq/gよりも少ない場合には、イオン伝導膜として使用したときに十分なイオン伝導性を示さない傾向があり、3.5meq/gよりも大きい場合にはイオン伝導膜を高温高湿条件においた場合に膜膨潤が大きくなりすぎて使用に適さなくなる傾向がある。
このような電解質膜においては、酸性官能基が水を保持するため、電解質膜が保水性を示す。プロトンが移動する際には水が有効に作用するため、前述の酸性官能基の存在と並べて水を保持する特性は重要な性質である。この際、本発明の電解質膜・電極構造体を作製する際の、電解質膜としては、電解質膜の重量に対して水の保持可能な量は、10%〜120%の範囲にあることが好ましい。10%よりも少ない場合は、電解質膜として使用した時に十分な水分量が保持できていないため、イオン伝導性を示さない傾向にあり、120%よりも大きい場合には、膜の膨潤が大きくなりすぎて使用に適さなくなる。
しかしながら、このようなガラス転移温度が160℃以上の炭化水素系電解質膜を用いて本発明の電解質膜・電極接合体を作製することを考えた場合、電解質膜の耐熱性が高い反面、従来から行われているガラス転移温度近傍でホットプレスすることにより良好な接合体を形成することは困難であり、単純に熱で接合した場合には、燃料電池とした際の耐久性が低い。その傾向は特に、電解質膜が電解質膜の重量に対して、10%から45%の範囲と70%から120%で水分を保持しうる電解質膜を使用する際に困難となる。即ち、保持可能な水の量が10%から45%の範囲にある電解質膜においては、電解質膜が硬く、電極を寄せ付けない傾向にあり、一部接合できた場合でも、時間が経つと電極が剥がれるという問題があり、無理に、より高温で接着した場合には、膜の変色や膜が脆くなるといった劣化が観察され、耐久性の低い電解質膜・電極構造体となる。一方保持可能な水の量が50%から65%の範囲にある電解質膜においては、酸性官能基が存在する影響により、若干電極との接着性が緩和される傾向にあり、温度を幾分上げる必要のあることと、耐久性が少し低下するといったデメリットはあるものの比較的良好な電解質膜・電極構造体を作製可能である。さらに、保持可能な水の量が70%から120%の範囲にある電解質膜においては、酸性官能基がより多く存在することと、水分を保持可能な空間が多いことが災いして、電解質膜の変形が発生するため、電解質膜が電極をはじき、電極を単純にホットプレスにより接合することは困難である。
このような事情により、本発明の信頼性と耐久性に優れる炭化水素系固体高分子電解質膜を一対の電極で挟んでなる電解質膜・電極構造体において、使用される電解質膜の乾燥状態におけるガラス転移温度が160℃以上であり、かつ電解質膜が電解質膜の重量に対して、10%から120%の範囲で水分を保持しうる電解質膜からなることを特徴とする電解質膜・電極構造体の発明に至る、炭化水素系固体高分子電解質膜と一対の電極を接合する方法も発明した。
即ち、炭化水素系固体高分子電解質膜中に含まれる水分量が、前記炭化水素系固体高分子電解質膜が含有可能な最大水分量の10〜70%の範囲にある状態で、電極とホットプレスにより接合することを特徴としている。より好ましくは、10〜50%の範囲にある。前述のように芳香族炭化水素系固体高分子電解質膜においては、ガラス転移温度が高いために、膜が乾燥状態にあると、ホットプレスにより電極との接合体を形成することが困難であり、ホットプレスしても電極が接合しない場合が多く、また接合後に電極が剥がれるといった現象が現れる。そこで、この問題を解決する為に、膜中に微量の水分を添加し、ポリマーの分子運動を活発化させることによって、ホットプレス時の接合性を改善させることで、より信頼性・耐久性に優れた電解質膜・電極構造体を発明した。
ここで電解質膜中に存在する水分量が10%未満である場合は、ポリマーの分子運動が十分に活発化されていないため、接合状態が不十分であることと、電解質膜に添加した水分の気化により電解質膜の収縮が発生する際に、電解質膜と電極の接合部に発生する応力のため歪が発生するので、ホットプレスにより電極が接合されない場合が多く、またホットプレス直後は上手く電解質膜・電極構造体を形成できているように見えても、この場合も時間が経過すると電解質膜から電極が剥離する現象が発生する。一方、電解質膜が含有可能な最大水分量の70%以上の水分を電解質膜に付与した状態からホットプレスを行うと、電解質膜が水でかなり膨潤した状態からの接合となるので、電解質膜が膨らんだ状態で電極と接合されるため、電解質膜に対する負荷が大きく、燃料電池とした時の耐久性が低下すると共に、ガスリークが発生しやすい電解質膜・電極構造体となってしまう。ここで50%から70%の範囲にある場合も特性的には良好な電解質膜・電極構造体を作製可能である。しかしながら部分的に電解質膜の変形が発生するため、幾分品位に優れない電解質膜・電極構造体となる可能性がある。なお、単純にホットプレス時の温度や圧力を上昇させることにより接合する手法で作製した電解質膜・電極構造体と比較すると、本発明による水分を含浸させたのちホットプレスする手法により作製した電解質膜・電極構造体は、性能・耐久性共に優れている。
本発明における電解質膜・電極構造体の作製方法において、固体高分子電解質膜に特定量の水分を含ませる手法は特に限定されるものではなく、スプレー等を用いて水分を吹き付ける手法や湿度や温度を制御した雰囲気に固体高分子電解質膜を保持して湿らせる方法などが良好に用いられる。中でも湿度と温度を制御した雰囲気に固体高分子電解質膜を保持する方法は、均質かつ定量的に水分を付与することが可能であるため特に好ましい方法であり、この手法によると、たとえばスプレーで水分を付与する場合に問題となる再現性の少なさや、面方向や厚み方向での水分の分布を極めて低減でき、電極との接合状態が一様である優れた電解質膜・電極構造体を再現性良く作製することが可能となる。膜を加湿するための雰囲気としては特に制限されるものではなく、膜の種類や特性に応じて任意に選出できる。
また燃料電池では、フィルム状の基板上に、白金微粒子または白金―ルテニウム微粒子を担持した炭素粒子とイオン交換ポリマーからなる触媒層を均一な膜厚で形成した触媒層シートを、電解質膜と重ね合わせた後、熱転写するため、触媒層を多少の取り扱いでも剥がれないようにある程度の付着力を持たせつつ、一方、電解質膜へは触媒層のみを移動させなければならない。この際には、触媒層とフィルム状基板材とのバランスを制御することが困難である。特に単純に温度を上昇させて電解質膜・電極構造体を作製すると、触媒層シートのフィルムと触媒層の接着力が強くなる為、フィルムをはがす際に、フィルム面に一部の触媒層が残った状態ではがされるという問題も発生し、均質な電解質膜・電極構造体を作製できない。熱転写時の温度としては150℃以下が好ましく、より好ましくは140℃以下である。
本発明における電極の形態は特に制限されるものではない。例えば電極中に含まれる触媒の種類やイオン交換ポリマーの種類や量は限定されない。例えばイオン交換ポリマーは、パーフルオロスルホン酸ポリマーでも炭化水素系ポリマーでも、部分的にフッ素化された炭化水素系ポリマーであっても良い。
また本発明は、前記電解質膜・電極構造体の一対の電極の周縁部が、シール部材で形成された電解質膜・電極構造体であり、本質的に安定性の低い炭化水素系固体高分子電解質膜の耐久性を高めることができる。即ち、電極の周辺部においては、電解質膜が露出されていることから、電解質膜を通したガスまたは液透過による燃料のクロスオーバーが発生しやすく、例えば水素/空気型の燃料電池において、カソード反応ガスである酸素ガスが電極周辺部に存在する炭化水素系固体高分子電解質膜を通ってアノードに流れ込むと、過酸化水素が発生し、電解質膜の劣化を促進する。このような燃料電池における副反応に対する耐性は、炭化水素系ポリマーの場合、フッ素系ポリマーに比して低いため、シール部材で電極周辺部を被覆することにより、燃料電池の信頼性・耐久性をより向上できる。
シール剤の材質としては特に限定されるものでは無く、接着剤のように、電解質膜・電極構造体に塗布後、硬化させて効果を発揮するものは好適に使用可能であり、また固体状態のシール剤であり、反応ガスが電極の周辺部に到達しにくくなるようガス流路を妨げるようにシール可能なものであっても良い。
また本発明の電解質膜・電極構造体は、炭化水素系電解質膜を使用することを特徴としているが、特に、芳香環上にスルホン酸を導入したポリアリーレンエーテル系化合物により、耐熱性、加工性、イオン伝導性にすぐれたイオン伝導膜として有用な、炭化水素系固体高分子電解質膜を用いた電解質膜・電極構造体を提供できる。以下に本発明によるところのポリアリーレンエーテル系化合物に関して詳細に述べる。
すなわち、電子吸引性の芳香環上にスルホン酸基を導入したモノマーとして、3,3’−ジスルホ−4,4‘−ジクロロジフェニルスルホン誘導体を用いてポリアリーレンエーテルを合成することにより、高温でもスルホン酸基が脱離しにくいポリマーであるとともに、3,3’−ジスルホ−4,4‘−ジクロロジフェニルスルホン誘導体とともに2,6−ジクロロベンゾニトリルを併用していることにより、重合性の低い3,3’−ジスルホ−4,4‘−ジクロロジフェニルスルホン誘導体を使用していても高重合度のポリアリーレンエーテル化合物が得られる特徴も有しているポリアリーレンエーテルである。
すなわち、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、下記一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含むことを特徴とする。
Figure 2005063944
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
Figure 2005063944
ただし、Ar’は2価の芳香族基を示す。
また、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合部においては上記一般式(1)および一般式(2)で示される以外の構造単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記一般式(2)または一般式(3)で示される以外の構造単位は本発明のスルホン酸を導入したポリアリーレンエーテルの50重量%以下であることが好ましい。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物としては、スルホン酸基含有量が0.3〜3.5meq/gの範囲にあることが好ましい。0.3meq/gよりも少ない場合には、イオン伝導膜として使用したときに十分なイオン伝導性を示さない傾向があり、3.5meq/gよりも大きい場合にはイオン伝導膜を高温高湿条件においた場合に膜膨潤が大きくなりすぎて使用に適さなくなる傾向がある。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物としては、下記一般式(3)とともに一般式(4)で示される構成成分を含むものが特に好ましい。ビフェニレン構造を有していることにより高温高湿条件での寸法安定性に優れるとともに、フィルムの強靱性も高いものとなる。
Figure 2005063944
Figure 2005063944
ただし、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、下記一般式(5)および一般式(6)で表される化合物をモノマーとして含む芳香族求核置換反応により重合することができる。一般式(5)で表される化合物の具体例としては、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、およびそれらのスルホン酸基が1価カチオン種との塩になったものが挙げられる。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。一般式(6)で表される化合物としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリルを挙げることができる。
Figure 2005063944
Figure 2005063944
ただし、Yはスルホン基またはケトン基、Xは1価のカチオン種、Zは塩素またはフッ素を示す。
上述の芳香族求核置換反応において、上記一般式(5)、(6)で表される化合物とともに各種活性化ジフルオロ芳香族化合物やジクロロ芳香族化合物をモノマーとして併用することもできる。これらの化合物例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
また、上述の一般式(1)で表される構成成分中のArおよび上述の一般式(2)で表される構成成分中のAr’は、一般には芳香族求核置換重合において上述の一般式(5)、(6)で表される化合物とともに使用される芳香族ジオール成分モノマーよりより導入される構造である。このような芳香族ジオールモノマーの例としては、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン等があげられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオールを使用することもできる。これら芳香族ジオールは、単独で使用することができるが、複数の芳香族ジオールを併用することも可能である。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物を芳香族求核置換反応により重合する場合、上記一般式(5)および一般式(6)で表せる化合物を含む活性化ジフルオロ芳香族化合物及び/またはジクロロ芳香族化合物と芳香族ジオール類を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。
また、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物のポリマー対数粘度は、0.5g/dlの濃度でN−メチルピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて測定した時に0.1以上であることが好ましい。対数粘度が0.1よりも小さいと、イオン伝導膜として成形したときに、膜が脆くなりやすくなる。還元比粘度は、0.3以上であることがさらに好ましい。一方、還元比粘度が5を超えると、ポリマーの溶解が困難になるなど、加工性での問題が出てくるので好ましくない。なお、対数粘度を測定する溶媒としては、一般にN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒を使用することができるが、これらに溶解性が低い場合には濃硫酸を用いて測定することもできる。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、単体として使用することができるが、他のポリマーとの組み合わせによる樹脂組成物として使用することもできる。これらのポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン12などのポリアミド類、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル類、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸エステル類などのアクリレート系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやジエン系ポリマーを含む各種ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアリレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールなどの芳香族系ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などの熱硬化性樹脂等、特に制限はない。ポリベンズイミダゾールやポリビニルピリジンなどの塩基性ポリマーとの樹脂組成物は、ポリマー寸法性の向上のために好ましい組み合わせと言える。これらの塩基性ポリマー中に、さらにスルホン酸基を導入しておくと、より好ましいものとなる。これら樹脂組成物を電解質膜として使用する場合には、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、樹脂組成物全体の50質量%以上100質量%未満含まれていることが好ましい。より好ましくは70質量%以上100質量%未満である。本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物の含有量が樹脂組成物全体の50重量%未満の場合には、この樹脂組成物を含むイオン伝導膜のスルホン酸基濃度が低くなり良好なイオン伝導性が得られない傾向にあり、また、スルホン酸基を含有するユニットが非連続相となり伝導するイオンの移動度が低下する傾向にある。なお、本発明の組成物は、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、ラジカル防止剤などの各種添加剤や、電解質膜の特性をコントロールするための無機化合物や無機―有機のハイブリッド化合物、などを含んでいても良く、さらには電解質膜内に触媒粒子などを含んでいても良い。
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物およびその樹脂組成物は、押し出し、圧延またはキャストなど任意の方法で電解質膜へと加工とすることができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。この溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなどの非プロトン性極性溶媒や、メタノール、エタノール等のアルコール類から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。溶液中の化合物濃度は0.1〜50重量%の範囲であることが好ましい。溶液中の化合物濃度が0.1重量%未満であると良好な成形物を得るのが困難となる傾向にあり、50重量%を超えると加工性が悪化する傾向にある。溶液から成形体を得る方法は従来から公知の方法を用いて行うことができる。たとえば、加熱、減圧乾燥、化合物を溶解する溶媒と混和することができる化合物非溶媒への浸漬等によって、溶媒を除去し成形体を得ることができる。溶媒が、有機溶媒の場合には、加熱又は減圧乾燥によって溶媒を留去させることが好ましい。この際、必要に応じて他の化合物と複合された形で成形することもできる。溶解挙動が類似する化合物と組み合わせた場合には、良好な成形ができる点で好ましい。このようにして得られた成形体中のスルホン酸基はカチオン種との塩の形のものを含んでいても良いが、必要に応じて酸処理することによりフリーのスルホン酸基に変換することもできる。
また、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物およびその樹脂組成物から電解質膜を作製する場合、最も好ましいのは、溶液からのキャストであり、キャストした溶液から上記のように溶媒を除去してイオン伝導膜を得ることができる。溶媒の除去は、乾燥によることがイオン伝導膜の均一性からは好ましい。また、化合物や溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜1000μmであることが好ましい。より好ましくは50〜500μmである。溶液の厚みが10μmよりも薄いとイオン伝導膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、1000μmよりも厚いと不均一な高分子電解質膜ができやすくなる傾向にある。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。本発明のイオン伝導膜は目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、イオン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましい。具体的には5〜200μmであることが好ましく、5〜50μmであることがさらに好ましく、5〜20μmであることが最も好ましい。イオン伝導膜の厚みが5μmより薄いとイオン伝導膜の取扱が困難となり燃料電池を作製した場合に短絡等が起こる傾向にあり、200μmよりも厚いとイオン伝導膜の電気抵抗値が高くなり燃料電池の発電性能が低下する傾向にある。イオン伝導膜として使用する場合、膜中のスルホン酸基は金属塩になっているものを含んでいても良いが、適当な酸処理によりフリーのスルホン酸に変換することもできる。この場合、硫酸、塩酸、等の水溶液中に加熱下あるいは加熱せずに得られた膜を浸漬処理することで行うことも効果的である。また、イオン伝導膜のイオン伝導率は1.0x10-3S/cm以上であることが好ましい。イオン伝導率が1.0x10-3S/cm以上である場合には、そのイオン伝導膜を用いた燃料電池において良好な出力が得られる傾向にあり、1.0x10-3S/cm未満である場合には燃料電池の出力低下が起こる傾向にある。
上述したイオン伝導膜からなる電解質膜に関して、電解質膜・電極構造体を作製することにより、特に信頼性・耐久性の改善された炭化水素系固体高分子燃料電池を提供することができる。
[実施例]
以下本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
<電解質膜の乾燥重量の測定法>5×5cmの大きさの電解質膜を50℃の真空乾燥機中で6時間真空乾燥した後、デシケータ中で室温にまで冷却し、その後直ちに測定した重量を、膜の乾燥重量(Wd)とした。
<電解質膜の含水率>特定の水分状態にある電解質膜の含水率(Ws)は、電解質膜の表面を軽くキムパイプでふき取ることで、膜表面に付着している水を取り除いた後、直ちに測定した重量をWiとするとき、下記式から算出した。
Ws=(Wi−Wd)/Wd×100(%)
<電解質膜の最大含水率>まず乾燥重量(Wd)測定後のサンプルを、25℃の超純水中に8時間、時々攪拌しながら浸漬させた後取り出し、膜表面に付着する水滴をキムワイプでふき取った。その後すぐに測定した重量(Ww)から、膜の最大含水率(Wm)は、下記式より算出した。
Wm =(Ww−Wd)/Wd×100(%)
<ガラス転移温度>イオン交換膜のガラス転移温度は次のようにして測定した。幅5mmの短冊状の試料をユービーエム社製動的粘弾性測定装置(型式名:Rheogel−E4000)にチャック間距離14mmとなるようにセットし、乾燥窒素気流下で試料を4時間乾燥させた後、引っ張りモードで周波数10Hz、歪み0.7%、窒素気流中、測定温度範囲25℃〜200℃、昇温速度2℃/分、2℃毎の測定ステップで測定した際に得られたターンデルタのピーク温度とした。
<プロトン導電率>自作測定用プローブ(テフロン(R)製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃95%RHの恒温・恒湿オーブン(株式会社ナガノ科学機械製作所、LH−20−01)中に試料を保持し、白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした導電率を算出した。
導電率[S/cm]=1/膜幅[cm]x膜厚[cm]x抵抗極間勾配[Ω/cm]
<発電試験>電解質膜・電極構造体をElectrochem社製評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んでセル温度80℃で、アノードおよびカソードにそれぞれ75℃の超純水で加湿した水素と空気を供給し、電流密度0.5A/cm2の放電試験を行った。測定は8時間連続運転後の電圧を読み取った。
<耐久性評価>電解質膜・電極構造体の耐久性試験は、前述の発電試験後、そのまま発電試験を継続し、性能が低下(ガスリークによる電圧低下など)した時の時間から求めた。
実施例1
実施例1の電解質膜・電極構造体における電解質膜は次の方法により作製した。即ち、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(略号:S−DCDPS)5.2335g(0.0106mole)、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)2.3323g(0.013559mole)、4,4‘−ビフェノール4.5086g(0.02421mole)、炭酸カリウム3.8484g(0.02784mole)とモリキュラーシーブ2.61gを100ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。35mlのNMPを入れて、148℃で一時間撹拌した後、反応温度を195−200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約5時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰させた超純水中で1時間洗浄した後、乾燥した。ポリマーの対数粘度はせ1.25を示した。ポリマー1gをNMP5mlに溶解し、ホットプレート上ガラス板に約200μm厚にキャストし、フィルム状になるまでNMPを留去した後、水中に一晩以上浸漬した。得られたフィルムは、2リットルの1mol/l硫酸水溶液中で1時間沸騰水処理して塩をはずした後、超純水でさらに3回、1時間煮沸することで酸成分を除去した。その後、フィルムを固定した状態で、室温にて乾燥させた。一方、実施例1の電解質膜・電極構造体に使用した電極は次の方法により作製した。まず、デュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液(品番:SE−20192)に、触媒担持カーボン(カーボン:Cabot社製ValcanXC−72、白金触媒担持量:40重量%)を、触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.7:1になるように加え、撹拌して触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、撥水加工を施した東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が0.4mg/cm2になるように塗布、乾燥して、電極(触媒層付きガス拡散層)を作製した。上記のように作製した電解質膜と電極の接着方法としては、電解質膜にエアーブラシを用いて超純水を均一に軽く吹き付けることで水分を付与した後、触媒層を電解質膜側に向けた電極に挟み込み、130℃、8MPaで3分間ホットプレスを施すことにより作製した。
実施例2
電解質膜に含ませる水分量のみを替えたことを除いて、実施例1と同様の手法を用いて電解質膜・電極構造体を作製した。
実施例3
実施例1においてS−DCDPSとDCBNの比率が23対77で合成した電解質膜を用いて実施例1と同様の手法を用いて電解質膜・電極構造体を作製した。
実施例4
実施例1においてS−DCDPSとDCBNの比率が62対38で合成した電解質膜を用いて実施例1と同様の手法を用いて電解質膜・電極構造体を作製した。
実施例5
実施例1と同様の手法で電解質膜・電極構造体を作製した後、電極の周辺部分をシール剤(株式会社スリーボンド TB1152)を用いてシールした。
実施例6
実施例において電解質膜を加湿する際、エアスプレーで水分を直接塗布する替わりに、20℃90RH%の環境下に20時間電解質膜をさらすことにより、均一に電解質膜を加湿したことを除いて、実施例1と同様の手法を用いて電解質膜・電極構造体を作製した。電解質膜・電極接合体を8組作製し比較した所、再現性良く水分量を制御できることを確認した。実施例1〜5で行ったエアスプレーによる加湿では、再現性良く水分量を制御することはできていない。また本実施例によると、エアスプレーで水分を付与した電解質膜・電極構造体に比較して、良好な耐久性を示した。電解質膜が均質に加湿されているため、接合状態も均質となったことが原因と考えられる。
比較例1
エアーブラシを用いて電解質膜に水分を含ませないことを除いて、実施例1と同様の手法を用いて電解質膜・電極構造体を作製しようと試みたが、電解質膜と電極の接着性が悪く、電解質膜・電極構造体を作製することはできなかった。
比較例2
185℃、8MPaで3分間ホットプレスしたことを除いて比較例1の手法で電解質膜・電極構造体を作製した。電解質膜・電極構造体を作製することはできたが、膜の変色が確認された。発電試験の性能は、実施例1・2・5のものに比べて低く、かつ耐久性も悪いものであった。なお、170℃でホットプレスする手法も試したが、その場合、電解質膜・電極構造体を作製することはできなかった。
比較例3
電解質膜を超純水に浸漬した事を除いて、実施例4の手法で電解質膜・電極構造体を作製した。電解質膜の変形が大きかった。発電試験を実施したところ、1時間経過した時点でガスリークが発生し評価できなかった。
実施例1〜6および比較例1〜3における、電解質膜の組成・電解質膜の特性・電極との接合条件および電解質膜・電極構造体としたときの特性を表1に示す。
Figure 2005063944
本発明の電解質膜・電極構造体により、信頼性・耐久性に優れた炭化水素系電解質膜を用いた燃料電池を提供できる。
本発明の電解質膜・電極構造体により、信頼性・耐久性に優れた炭化水素系電解質膜・電極構造体を提供でき、燃料電池の信頼性・耐久性を向上可能となる。

Claims (5)

  1. 炭化水素系固体高分子電解質膜を一対の電極で挟んでなる電解質膜・電極構造体において、使用される電解質膜の乾燥状態におけるガラス転移温度が160℃以上であり、かつ電解質膜が電解質膜の重量に対して、10%から120%の範囲で水分を保持しうる電解質膜からなることを特徴とする電解質膜・電極構造体。
  2. 一対の電極の周縁部が、シール部材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電解質膜・電極構造体。
  3. 炭化水素系固体高分子電解質膜を形成する有機高分子として、一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含むことを特徴とするポリアリーレンエーテル系化合物を用いた、請求項1乃至2いずれかに記載の電解質膜・電極構造体。
    Figure 2005063944
    ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
    Figure 2005063944
    ただし、Ar’は2価の芳香族基を示す。
  4. 炭化水素系固体高分子電解質膜と一対の電極を接合する方法であり、炭化水素系固体高分子電解質膜中に含まれる水分量が、前記炭化水素系固体高分子電解質膜が含有可能な最大水分量の10〜70%の範囲にある状態において、前記電極とホットプレスにより接合することを特徴とする、請求項1に記載の電解質膜・電極構造体の製造法。
  5. 炭化水素系固体高分子電解質膜を、湿度および/または温度が管理された雰囲気下に保持することによって炭化水素系固体高分子電解質膜に水分を付与することを特徴とする、請求項4の範囲の電解質膜・電極構造体の製造法。
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