JP2005060850A - 原着ポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペット - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、染色によって生ずる捲縮糸の強度や捲縮特性の低下と、それによるカ−ペットとしての嵩高性の欠如、耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性が改善された原着ポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットを提供せんとするものである。
【解決手段】本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、単繊維が異型断面形状を有する、相対粘度(ηr)8〜30のポリ乳酸捲縮糸であって、着色剤を100〜30000ppm含有し、かつ、下記(1)〜(5)の特性を満足することを特徴とするものである。
(1)強度=1.3.〜3.5cN/dtex
(2)捲縮伸長率=5〜25%
(3)捲縮潜在化率=75〜95%
(4)交絡数=3〜25ケ/m
(5)交絡点強度=0.05〜2.0cN/dtex
また、本発明のカーペットは、かかる原着ポリ乳酸捲縮糸を用いたことを特徴とするものである。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、単繊維が異型断面形状を有する、相対粘度(ηr)8〜30のポリ乳酸捲縮糸であって、着色剤を100〜30000ppm含有し、かつ、下記(1)〜(5)の特性を満足することを特徴とするものである。
(1)強度=1.3.〜3.5cN/dtex
(2)捲縮伸長率=5〜25%
(3)捲縮潜在化率=75〜95%
(4)交絡数=3〜25ケ/m
(5)交絡点強度=0.05〜2.0cN/dtex
また、本発明のカーペットは、かかる原着ポリ乳酸捲縮糸を用いたことを特徴とするものである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原着ポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットに関する。詳しくは、嵩高性および捲縮耐久性に優れ、かつ高強度で耐摩耗性に優れた原着ポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたボリュ−ム感と風合いに優れ、かつ耐捲縮ヘタリ性および耐摩耗性に優れたカ−ペットに関する。そして、従来のポリ乳酸カ−ペットの致命的とも言える上記特性を改良したことにより、ポリ乳酸捲縮糸の特徴である生分解性、非石油系原料であること、および独特の感触や風合い、特異な光沢等を活かした新しいカ−ペットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリ乳酸繊維は、生分解性を有し、かつ非石油系原料から得られる繊維として、衣料用およびインテリア用繊維として有用されつつある。特に、従来のナイロンやポリプロピレン繊維捲縮糸のような捲縮特性が得られれば、カ−ペット用途に広く展開できる素材として期待されている。
【0003】
しかしながら、従来のポリ乳酸繊維捲縮糸をカ−ペットに用いると、嵩高性に劣り、摩耗し易くかつヘタリ易いという欠点があり、限られた用途にしか実用できなかった。これは、ポリ乳酸捲縮糸の強度や捲縮特性がナイロンやポリプロピレン繊維捲縮糸に比べ劣ることに加え、更に染色時に大幅な強力低下や捲縮特性が低下するためであった。そして、タフトされたカーペットは嵩高性に劣り、摩耗し易くかつヘタリ易い等、耐久性に劣るものであった。
【0004】
ポリ乳酸繊維の染色は、通常のポリエステル繊維と同様100℃以上、通常は110〜130℃での加圧高温染色が適用される。この染色工程で、ポリ乳酸捲縮糸の強度および捲縮特性が大幅に低下してしまい、かかるポリ乳酸捲縮糸をタフティングしたカ−ペットは、一層ボリュ−ム感が低下し、捲縮がヘタリ易くかつ耐摩耗性も低下してしまった。そのため、目付を増やしたり、耐久性があまり要求されない家庭用ラグや装飾用マット等、限定された用途にしか適用できず、ポリ乳酸繊維の特徴を活かすことができなかった。
【0005】
従来、ポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットとその製造法に関して、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4等が開示されている。
【0006】
特許文献1は、「カ−マットやカ−ペットへの使用に適した嵩高性を有し、かつ生分解性能を有する、嵩高性を有する生分解性繊維及びその製造方法」を課題とし、その解決手段として、「各単繊維がランダム方向に屈曲、あるいは互いに絡み合い、ル−プやタルミを有し、かつ単繊維の捲縮率が5〜20%の嵩高性を有する生分解繊維、およびその製造法」を開示しており、特に、延伸条件、および捲縮糸の加工条件等を特定した製造法について述べている。
【0007】
特許文献2は、「高光沢、高発色性で、触感に優れ、かつ自然環境中で容易に分解する、カ−ペット用に好適なポリエステルマルチフィラメント捲縮糸とカ−ペットを提供すること」を課題とし、その解決手段として、「融点が130℃以上の脂肪族ポリエステルからなるマルチフィラメント捲縮糸であって、該マルチフィラメント捲縮糸の沸騰水処理後の捲縮伸長率が3〜35%、平均単糸繊度が3〜35デシテックス、単糸横断面が4〜8葉断面である脂肪族ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸と、該マルチフィラメント捲縮糸から構成されるカ−ペット」について開示している。
【0008】
特許文献3は、「バルキ−性と耐摩耐久性に優れ、かつ良好なカバ−リング性によって軽量化を可能としたカ−ペットを与え得る脂肪族ポリエステル糸、およびこの脂肪族ポリエステル糸をフェ−スヤ−ンとして用いてなるカ−ペット等、特に自動車用としての優れた性能を有するカ−ペットを提供すること」を課題とし、解決手段として、「融点145℃以上の脂肪族ポリエステルを溶融紡糸してなる中空断面単糸の集合体であって、総繊度が500〜5000デシテックスの脂肪族ポリエステルマルチフィラメントより構成され、前記中空断面単糸は、その外輪郭と中空部輪郭との間隔よりなる厚さが3μ以上であることを特徴とするカ−ペット用脂肪族ポリエステル糸フェ−スヤ−ンとして用いるカ−ペット」とするとを開示している。
【0009】
特許文献4は、「環境と調和した、生分解性を有するカ−ペットを提供すること」を課題とし、解決手段として、「カ−ペットの使用に適した嵩高性を有し、かつ生分解性能を有する生分解性繊維をパイルとして用い、さらに基布とバッキング材に生分解性を有する素材を使用したカ−ペット」とすることを述べている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献3の技術には、従来のポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットの欠点、特に染色によって生ずる捲縮糸の強度や捲縮特性の低下と、それによるカ−ペットとしての嵩高性の欠如、耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性の改善については何も言及されてない。しかも、該技術によって得られるカ−ペットは、その主力用途であって、嵩高性、耐ヘタリ性および耐摩耗性が必要とされる、例えばタイルカ−ペット、家庭用ロ−ルカ−ペット、自動車用ラインマット、自動車用オプションマット等用として満足される品質レベルにはなかった。
【0011】
また、特許文献3の技術は、特殊な4〜8葉断面捲縮糸とすることによって、高光沢および好触感を有する高捲縮伸長率のポリ乳酸捲縮糸が得られるものの、耐久性の改善に関しては3.0デシテックス以上の単糸繊度とすること、嵩高性およびバルキ−性の改善に関しては、沸騰水処理後の捲縮伸長率を3.0%以上とする以外具体的な提案はなされていない。そのため、耐久性や嵩高性の改善に関しては、従来のポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットに比べ、著しい改善は得られなかった。
【0012】
一方、特許文献4の技術は、バルキ−性と摩耗耐久性に優れ、かつ良好なカバ−リング性を有するカ−ペット用脂肪族ポリエステル糸および該糸をフェ−スヤ−ンとして用いたカ−ペットであって、その好ましい態様として、着色剤、特にカ−ボンブラック系着色剤を含有せしめた原着脂肪族ポリエステル捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットについて開示している。確かに原着脂肪族ポリエステル捲縮糸とすることによって、染色時の強力低下や捲縮特性の低下等は防げるものの、原着脂肪族ポリエステル捲縮糸自身の強力および捲縮特性が充分でないこと、およびカ−ペットとしての意匠性、審美性を確保するのにカ−ボンブラック系着色剤を中心とする該特許記載の着色剤では充分とは言えなかった。
【0013】
【特許文献1】特開2002−105752号公報
【0014】
【特許文献2】特開2002−180340号公報
【0015】
【特許文献3】特開2002−227036号公報
【0016】
【特許文献4】特開2002−248047号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、染色によって生ずる捲縮糸の強度や捲縮特性の低下と、それによるカ−ペットとしての嵩高性の欠如、耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性が改善された原着ポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットを提供せんとするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、単繊維が異型断面形状を有する、相対粘度(ηr)8〜30のポリ乳酸捲縮糸であって、着色剤を100〜30000ppm含有し、かつ、下記(1)〜(5)の特性を満足することを特徴とするものである。
(1)強度=1.3.〜3.5cN/dtex
(2)捲縮伸長率=5〜25%
(3)捲縮潜在化率=75〜95%
(4)交絡数=3〜25ケ/m
(5)交絡点強度=0.05〜2.0cN/dtex
また、本発明のカーペットは、かかる原着ポリ乳酸捲縮糸を用いたことを特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、つまり染色によって生ずる捲縮糸の強度や捲縮特性の低下と、それによるカ−ペットとしての嵩高性の欠如、耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性が改善された原着ポリ乳酸捲縮糸について、鋭意検討し、単繊維そのものの断面形状や構成ポリマの相対粘度などを特定なものを選択し、かつ、予め着色剤を含有させた形にし、さらに、強度、捲縮伸長率、捲縮潜在化率などの繊維特性に加えて、交絡数や交絡点強度 などの糸特性を特定なものを選択してみたところ、前記課題を一挙に解決するポリ乳酸捲縮糸を提供することができたものである。
【0020】
かかるポリ乳酸捲縮糸によれば、ポリ乳酸捲縮糸の特長である生分解性、非石油系素材であることおよび独特の感触や風合いを活かした新しいカ−ペットを提供することができる。
【0021】
かかる原着ポリ乳酸捲縮糸は、ポリ乳酸ポリマを製糸して捲縮加工処理した捲縮糸である。
【0022】
かかるポリ乳酸捲縮糸の原料とするポリ乳酸ポリマは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とする乳酸を重合してなるポリ乳酸である。ここでL−乳酸を主成分とするとは、構成成分の60重量%以上がL−乳酸よりなっていることを意味しており、40重量%を超えない範囲でD−乳酸を含有するポリエステルである。D−乳酸の場合も同様である。更には、構成するポリマの分子鎖の全繰返し単位の80重量%以上、特に90重量%以上、より好ましくは95重量%以上が乳酸であるポリ乳酸であり、本発明の構成要件および目的を損なわない範囲であれば他のポリマのブレンド、共重合、添加物を含んでいても良い。
【0023】
また、本発明にかかるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸のほかにエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。あるいは、溶融粘度を低減させるため、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマーを可塑剤として用いることができる。
【0024】
かかるポリ乳酸ポリマには、通常合成繊維に用いられる艶消し剤、難燃剤、耐熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加することができる。
【0025】
しかし、本発明のポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットは、ポリ乳酸繊維の生分解性および非石油系原料であるという特徴を活かし、環境に優しい製品として好ましい用途に用いるため、石油系ポリマのブレンド、該成分の共重合等は極力避けるのが好ましく、したがって各種添加剤も、重金属化合物や環境ホルモン物質は勿論、現時点でその懸念が予想される化合物の一切を用いないのが好ましい。
【0026】
本発明のカ−ペットとは、タフティングの前または後で染色することなく商品として用いられるカ−ペットである。
【0027】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、単繊維が異型断面形状を有する、相対粘度(ηr)8〜30のポリ乳酸捲縮糸であって、着色剤を100〜30000ppm含有し、下記(1)〜(5)の特性を満足することを特徴とするものである。
(1)強度=1.3〜3.5cN/dtex
(2)捲縮伸長率=5〜25%
(3)捲縮潜在化率=75〜95%
(4)交絡数=3〜25ケ/m
(5)交絡点強度=0.05〜2.0cN/dtex
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸に用いられる着色剤は、ポリ乳酸捲縮糸に適切な特定の無機、有機顔料および染料である。具体的には、鉛、クロムおよびカドミウムを除く酸化物系無機顔料、フェロシアン化物無機顔料、珪酸塩無機顔料、炭酸塩無機顔料、燐酸塩無機顔料、カ−ボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉およびチタン粉末被覆雲母等の無機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、イソイントセリノン系有機顔料等の有機顔料、および複素環系染料、ヘリノン系染料、ペリレン系染料およびチオインジオ系染料等から選ばれた2種以上を組み合わせたものである。
【0028】
例えば、無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、チタンイエロ−、亜鉛−鉄系ブラウン、チタン・コバルト系グリ−ン、コバルトグリ−ン、コバルトブル−、銅−鉄系ブラック等の酸化物、紺青のようなフェロシアン化物、郡青のような珪酸塩、炭酸カルシウムのような炭酸塩、マンガンバイオレットのような燐酸塩、カ−ボンブラック、アルミニウム粉やブロンズ粉、およびチタン粉末被覆雲母等が用いられ、鉛、クロムおよびカドミウム等の重金属を含む無機顔料は用いない。 また、有機顔料としては、銅フタロシアニンブル−、銅フタロシアニングリ−ンおよび臭素化銅フタロシアニングリ−ン等のフタロシアニン系、ペリレンスカ−レット、ペリレンレァ、ペリレンマル−ン等のペリレン系、イソインドリノン系等が用いられる。
【0029】
また、染料としては、アンスラキノン系、例えば、Solvent R.50、Solvent R.111、Solvent B.94、Solvent V.50、Solvent G.3、複素環系、例えば、Solvent Y.33、Solvent Y.111、Solvent Y.54、ヘリノン系、例えば、Solvent O.60、Solvent R.135、Solvent R.179、ペリレン系、例えば、Solvent G.5、チオインジオ系、例えばVat R. 1が用いられる。
【0030】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸に用いられる着色剤は、上記無機顔料、有機顔料および染料から選ばれた2種以上を組み合わせて用いる。特に、上記着色剤は2種以上用いて調整することが重要であり、1種類の着色剤のみでは従来の染色タイプのポリ乳酸捲縮糸に対抗できる微妙な色調を出せず、カ−ペットとした時の意匠性、審美性を満足させることができない。
【0031】
かかる着色剤の添加濃度は、染料の種類によって変化するが、ポリマ重量当たり、着色剤の全量として、色濃度の上から、100〜30000ppm、好ましくは500〜10000ppmであるのがよい。また、着色剤は通常用いられる分散剤を併用して用いることもできる。
【0032】
本発明のポリ乳酸捲縮糸は、各単繊維の断面形状は異型断面である。即ち、Y型、△型、扁平型を基本とし、それぞれの断面に突起がついたものや一部が欠けたもの、あるいは中空部を1以上有する異型断面糸等であって、従来から知られているものから選ぶことができる。特に、本発明に適した断面形状は、Y型および△形状、およびそれらの中空であって、単糸断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した変形度が1.5〜5.5の範囲の断面形状が好ましい。また、上記異なった種類の異型断面捲縮糸や円断面捲縮糸を混合した捲縮糸を用いることもできる。
【0033】
本発明の黒原着ポリ乳酸捲縮糸の相対粘度は、25℃で、3%オルソクロロフェノ−ル溶液(0.3g/10ml)で測定した値であるが、8〜30、好ましくは10〜20である。相対粘度が8未満では、カ−ペット用途に適した強度や耐摩耗性等を付与することができない。一方、30を越える高粘度の場合は、強度や耐摩耗性等の向上は飽和し、むしろ溶融粘度が高くなりすぎ、製糸し難くなるというマイナスが生じる。
【0034】
本発明の上記原着ポリ乳酸捲縮糸は強度が1.3〜3.5cN/dtex、好ましくは2.0〜3.0cN/dtexである。強度が1.3cN/dtex未満であると、カ−ペットにした時に耐摩耗性が劣り、使用時に捲縮糸の一部がすり切れてしまうことがある。強度は高いほど好ましいが、3.5cN/dtex越える強度は現在の技術では達成できていない。
【0035】
また、捲縮伸長率は、詳細な測定法は後述するが、捲縮糸の嵩高性を示すパラメ−タであり、捲縮糸を沸騰水処理して捲縮を発現させ、その捲縮の程度を示した値である。この捲縮伸長率は5〜25%である。5%未満であると捲縮が不十分であり、カ−ペットとしての嵩高性が不足し、かつ耐ヘタリ性が劣り、カ−ペット使用時に荷重が繰り返し、又は長時間かかった部分が寝てしまうという問題を生ずる。一方、25%を越える捲縮伸長率は現在の技術では得にくいが、得られたとしてもそれを用いたカーペットはフェルトライクとなり、好ましいカ−ペットが得られない。
【0036】
そして、捲縮潜在化率は75〜95%、好ましくは80〜%である。捲縮潜在化率が75%未満の場合は、タフティング後の熱セット工程を通った後の嵩高性が少なく、ボリュ−ム感のないカ−ペットとなるため好まれず、一方、潜在化率が95%を超えるとタフティング後の熱セット工程を通った後も潜在したままの捲縮が残り、本来有する捲縮特性が活かされないことになる。
【0037】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、染色工程を経ることなく、カ−ペットを製造することが特徴であり、捲縮潜在化率は通常の染色工程を経てカ−ペットとする捲縮糸に比べ、低めであることを特徴とする。捲縮糸段階で潜在化している捲縮は、タフティング後の熱セット工程、通常は乾熱処理および/またはスチ−ミングによって発現させる。
【0038】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、糸条を集束するために交絡を付与されている。交絡数は3〜25ケ/m、好ましくは8〜18であり、また、該交絡の交絡点強度は0.05〜2.0cN/dtex、好ましくは、0.08 〜1.5cN/dtexである。本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸に付与される交絡は、タフティング工程を通過するまでは充分な集束性を保持し、タフティング後、特にシャ−リング工程を経た時には交絡は実質的にゼロとなることが好ましい。通常のタフティング工程を通過するまでに捲縮糸が受ける張力に耐える集束性を有し、かつ、シャ−リング工程で受ける張力によって実質的に解きほぐされる交絡として、上記交絡数と交絡点強度が特定される。
【0039】
上記特定された本発明ポリ乳酸捲縮糸は、捲縮糸の強度および捲縮特性に優れ、この捲縮糸を用いたタフティングカ−ペットは優れた嵩高性、ポリュ−ム感に溢れたカ−ペットとなる。また、耐摩耗性や耐ヘタリ性等、耐久性が大幅に改善されたカ−ペットが得られる。そして、従来のポリ乳酸カ−ペットの致命的とも言える欠点が除かれたことにより、ポリ乳酸捲縮糸の特徴である生分解性、非石油系原料であること、および独特の感触や風合い、特異な光沢等を活かして、新しいカ−ペットを提供することができる。
【0040】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、ロ−ルカ−ペット、タイルカ−ペット、自動車用ラインマットおよびオプションマット、家庭用ラグ、玄関マット等本発明のカ−ペットの特性が活かせる多くの用途に用いることができる。また、パイルの形態もル−プパイル、カットパイルいずれでも良く、タフティングカ−ペットだけでなく、織物や編み物あるいは刺繍された敷物等を意味する。
【0041】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットは以下の方法で製造することができる。
【0042】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸の製造のために用いるポリ乳酸ポリマは、25℃で、3%オルソクロロフェノ−ル溶液(0.3g/10ml)で測定した相対粘度が、10〜22、好ましくは14〜18を用いる。本発明のカ−ペット用途では、捲縮糸の強度、耐摩耗性が要求されるため、高分子量のポリマ、即ち上記特定した相対粘度のポリ乳酸ポリマが必要である。
【0043】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸の着色剤として用いる無機顔料、有機顔料および染料は、前記特定した化合物から選ばれた2種を組み合わせて用いる。また、着色剤のポリマ中への分散をよくするため、オレフィン系化合物などの分散剤を用いることもできるし、さらに着色剤をポリ乳酸ポリマーに添加してマスターチップとしてから、製糸することもできる。
【0044】
ポリ乳酸ポリマは、ポリマ中の水分が0.1重量%以下として溶融紡糸に供するため、通常100〜130℃で約5時間以上乾燥して水分を除去したものを使用するのが好ましい。
【0045】
上記ポリ乳酸ポリマと着色剤を含んだポリ乳酸ポリマーを混合機を介して一定割合で混合したものを、エクストル−ダ−型押し出し機に供給して、210〜240℃の温度で溶融し、紡糸パックを通して濾過し、口金細孔から紡糸する。
【0046】
口金孔は種々の異型断面形状の捲縮糸が得られるよう異型断面孔を有するの口金を用いる。口金孔の形状および寸法は、ポリ乳酸ポリマの溶融粘度、紡糸温度、紡糸後の冷却固化条件等を考慮し、目的とする断面が得られるよう設計したものを用いる。
【0047】
本発明ポリ乳酸捲縮糸の断面は、Y型および△形状、およびそれらの中空であって、単糸断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した変形度が1.5〜5.5の範囲のものが好ましい。
【0048】
次いで、紡糸された糸条は冷風または温風を吹きつけられ冷却固化される。風の温度は10〜80℃、好ましくは15〜60℃である。
【0049】
冷却固化された糸条に油剤を付与した後、所定の速度で回転する引き取りロ−ルに捲回して引き取る。
【0050】
かかる油剤としては、平滑剤を主成分とし、界面活性剤、制電剤、極圧剤成分等を含むが、ポリ乳酸繊維に活性な成分を除いた油剤組成とすることが必要である。例えば、例えば、水エマルジョンに含まれる乳化成分は、ポリ乳酸繊維の繊維構造を変化させる作用があり、捲縮糸を製造した後に経時的に繊維構造が変化し、強度が低下してしまうという現象が起こることがある。
【0051】
従って、好ましい油剤組成は、例えば、平滑剤としてアルマルエ−テルエステル、界面活性剤として高級アルコ−ルのアルキレンオキサイド付加物、極圧剤として有機ホスフェ−ト塩等を用いることが好ましい。
【0052】
上記引き取りロ−ルの速度は300〜3000m/minである。
【0053】
本発明にかかる捲縮糸の製造方法は1ステップで捲縮糸を製造する直接紡糸延伸・捲縮加工プロセスを特徴とするため、上記引き取り速度が好ましい。300m/minでも本発明にかかる捲縮糸は得られるが、生産効率が低いため好ましくない。引き取り速度が3000m/minを超えると、直接紡糸延伸・捲縮加工プロセスにおいて、延伸速度および捲縮加工速度が高速となり過ぎ、特に捲縮加工速度が4000m/minを超えると、現在の実用プロセスでは製造が困難である。
【0054】
引き取られた未延伸糸は連続して延伸されるが、1段または2段の多段熱延伸が採用される。特に、本発明ポリ乳酸捲縮糸の高強度および高捲縮率特性およびカ−ペットとして用いた時の優れた嵩高性、耐摩耗を得るためには、2段延伸を行い、十分に配向させたポリ乳酸繊維を捲縮加工することが重要である。延伸倍率は2〜5倍の範囲である。
【0055】
熱延伸が終了した糸条は連続して捲縮加工プロセスで、加熱流体捲縮付与装置に導入して捲縮が付与される。加熱流体捲縮付与装置は加熱高圧流体を糸条に噴射して単糸をランダムに交絡させ、3次元ル−プやタルミを形成させる加熱流体噴射ノズル装置、上記捲縮糸を更に加熱流体の下に圧縮熱処理を行うための圧縮熱処理装置、および捲縮加工された糸条を加熱と共に噴き出させ、該糸条を冷却するための回転移送装置からなる。加熱流体は過熱蒸気または加熱空気を用いる。加熱流体の温度は130〜200℃が好ましく、加熱流体の乾き度、圧力、流量、および処理するポリ乳酸繊維の繊度、処理速度等に応じて適切な条件を選択する。また、圧縮熱処理装置は薄いリングを一定の間隙を持たせて積層した環状の装置であり、リング間の間隙より流体は吸引される。該圧縮熱処理装置内の糸条は折り畳まれ、積層されながら一定時間滞留して熱処理された後、回転移送装置上へ噴出される。回転移送装置上に噴出された捲縮糸条はプラグ状であるが、回転移送装置表面のパンチング孔で吸引されされながら移送される。
【0056】
次に、回転移送装置上の捲縮糸条は該装置上から順次引き取られ、回転速度の異なる2対のネルソンタイプロ−ルまたはセバレ−ト型ロ−ルに捲回されて捲縮を解きほぐされる。この間のストレッチは3〜10%で行い、糸条の温度が40〜60℃で行う。3%未満では捲縮が完全に解れないことがあり、一方、10%を越えると捲縮が潜在化し過ぎ、嵩高性が得にくくなる。通常、この時のストレッチ張力を張力計で連続して測定し、常時モニタリングして品質管理を行う。このストレッチ張力は前記捲縮加工プロセスにおける捲縮加工前の原糸の特性、捲縮処理条件および捲縮を解きほぐす条件等と密接に関係し、本発明に係る捲縮糸の特性、特に捲縮伸長率や捲縮潜在化率に影響を与え、結果として本発明効果である捲縮糸の嵩高性、耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性の改善にかかわっている。好ましいストレッチ張力は、例えば、6%伸長した時のストレッチ張力が0.05〜0.2cN/dtexであり、更に好ましくは0.08〜0.15cN/dtexである。
【0057】
次に該捲縮糸には交絡ノズルを通して交絡処理をする。該交絡ノズルは通常2〜6孔を備え、走行捲縮糸条に対し略直角方向から0.1〜0.6Pa高圧空気を噴射させて交絡処理する。交絡数および交絡の強さは、交絡ノズルの性能、高圧圧空の圧力および流量、走行糸条の繊度および張力等によって変化するが、交絡数および交絡の強さが前記本発明で特定した範囲となるよう交絡条件を設定して製造する。
【0058】
次いで、捲縮糸条は巻き取り機にチ−ズ状に巻取られる。巻取り張力は通常0.1cN/dtex以下の低張力で行う。
【0059】
得られた原着ポリ乳酸捲縮糸は次にカ−ペットとしてタフティングされるが、基布としては通常のポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン製の不織布、経糸および緯糸ともにポリプロピレンのスプリット糸またはフラットテープを用いたもの等を用いることができる。最も好ましい基布はポリ乳酸繊維の不織布であり、タフト糸と合わせポリ乳酸繊維からなるカ−ペットが得られ好ましい。
【0060】
また、基布として上記通常の繊維を用いた場合でも、基布とタフト糸が製品使用後簡単に分離できるようにしておけば、同様に環境に優しい好ましいカ−ペットとなる。
【0061】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸を2本または3本用い、下撚り、上撚りを施し撚り捲縮糸とした後、100〜125℃で蒸気処理をして、撚り止めと捲縮糸の嵩高性および耐摩耗性や耐へたり性等を更に改善した捲縮糸となし、それをタフトして高級カ−ペットとして製造することもできる。
【0062】
なお、上記得られたカ−ペットは、必要に応じて、途中にスチーミング工程、ブラッシング工程、スプレー工程、シャーリング工程およびポリシャー工程などの加工工程を付加して、それぞれの処理をすることも可能である。
【0063】
かくして、前記本発明の先染めカ−ペット用捲縮糸およびそれを用いた先染めカ−ペットが得られる。
【0064】
以下に明細書本文および実施例に用いた特性の定義および測定法は次の通りである。
【0065】
[相対粘度]
オストワルド粘度計を用いて、オルソクロルフェノール10mlに対し、試料0.3gを溶解した溶液の相対粘度ηrを25℃で測定した。測定は、n=2の平均値とした。
【0066】
ηr=t/t0
t:溶液の落下秒数
t0:溶媒(オルソクロルフェノールのみ)の落下秒数
[強度]
オリエンテック社製テンシロン引張り試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/分の条件で強力を測定した。
【0067】
強度は強力を測定したサンプルに対応するそれぞれの総繊度で除した値である。
【0068】
[捲縮伸長率]
温度20℃、相対湿度65%の雰囲気中に24時間以上放置されていたチ−ズパッケージから解舒した捲縮糸を、無荷重状態で30分間沸騰水で浸漬処理した後、平衡水分率まで乾燥し、これを沸騰水処理後捲縮糸の試料とする。この試料糸に表示dtex×0.0176mN(1.8mg/dtex)の張力を与える初荷重をかけ30秒経過した後に、試料長50cm(L1)にマーキングをする。次いで、同試料に表示dtex×0.882mN(90mg/dtex)の張力を与える定荷重をかけて30秒経過後に、伸びた試料長(L2)を測定する。次いで、下記式により、捲縮伸長率(%)を求める。
【0069】
捲縮伸長率(%)=[(L2−L1)/L1]×100
[捲縮潜在化率]
上記捲縮伸長率において沸騰水処理前の捲縮伸長率をL1、処理後の捲縮伸長率L2をとして、下記式により、捲縮潜在化率(%)を求めた。
【0070】
捲縮潜在化率(%)=[(L2−L1)/L2]×100
[交絡数]
LAWSON−HEPHILL社(米)製EUIB−Eを用いた。
【0071】
糸条の総繊度をA(dtex)とすると、A/100(cN)の張力を与えた状態で、糸条の直径を5mm間隔で長手方向に連続して100m測定する。こうして得られた20001点の糸条直径の平均値から、先ず平均直径B(mm)を求める。
【0072】
次に、平均直径Bを求めるのに用いた100mの糸条に対して改めてA/100(cN)の張力を与えた状態で、糸条の直径を連続して測定し、直径が0.7B以下の節部分を交絡部として、交絡数を測定した。
[交絡点強度]2対のセパレ−トロ−ル間に糸条を走行させ、給糸ロ−ルの速度を50m/分とし、ストレッチロ−ルの速度を変更して糸条に所定張力をかけて巻き取り、交絡が0となる張力を求めた。該張力を総繊度で除して、交絡点強度とした。
【0073】
[繊 度]
JIS L 1090により測定した。
【0074】
[変形度]
単糸を切断後、光学顕微鏡を用いて単糸断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)を測定し、次式によりn=5にて求めた。
【0075】
変形度=(B)/(A)。
【0076】
[嵩高性]
カーペットを真上から見たときに表糸の隙間から基布が最も見えにくいものを良好(◎)、やや見えにくいものをやや良好(○)、やや見えるものをやや不良(△)、最も見やすいものを不良(×)とする官能評価により、3段階に区分した。
【0077】
[耐摩耗性]
カ−ペットの摩耗性評価は、テーバ型摩耗試験機(JIS L 1096の6.17.3に規定)に基づいて、H−18摩耗輪を使用し、それぞれの摩耗輪に1kgの荷重をかけ試験台を300回回転して試験片を摩耗させた後、その摩耗状態を目視評価により、最良(◎)、良好(○)、若干不良(△)および不良(×)の4段階に区分した。
【0078】
[色 調]
光沢があり、深みのある色調から順に、最も良好(◎)、やや良好(○)、やや不良(△)、不良(×)とし、不良のものは、光沢および深みに欠ける色調のものである。
【0079】
[タフト性]
タフト規格1/10ゲージ、ステッチ15mm、パイル高さ7mm、速度500rpmの速度でタフトを行い、1時間当たりにタフト機が停止した回数により、良好(1回以下)、やや不良(1〜3回)、不良(4回以上)として評価した。
【0080】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明する。
【0081】
[実施例1〜9 、および比較例1〜9]
重量平均分子量が149000のポリ乳酸のチップに、顔料Aを予め同じポリ乳酸ポリマに2.0重量%の濃度となるよう混練して作製したマスタ−チップをブレンドして、エクストルダー型紡糸機で溶融紡糸した。マスタ−チップの顔料組成は表1に示した。ベ−ススチップとマスタ−チツプのブレンド比率は、ポリ乳酸繊維中の全顔料濃度が500ppmとなるよう計量してエクストルター前に設置してある混合機でブレンドした。
【0082】
紡糸温度は220℃とし、紡糸パック中で20μの金属不織布フィルタ−で濾過した後、Y型孔を有する68ホールの口金を通して紡糸した。口金直下の冷却条件を制御して、変形度3.8のY型断面のポリ乳酸マルチフィラメントを得た。
【0083】
紡糸糸条は冷却固化後、低粘度鉱物油で希釈した25重量%の油剤液を付与した後、速度700m/分で回転する引取りロ−ル(FR)に捲回して引き取った。FRはネルソンタイプロ−ルで、ロ−ル温度は80℃とした。次いで、該糸条は連続して100℃に加熱した第1延伸ロ−ル(1DR:ネルソンタイプロ−ル)との間で1段目の延伸を行い、更に1DRと、120℃に加熱した第2延伸ロ−ル(2DR:ネルソンタイプロ−ル)との間で2段目の延伸を行った。総延伸倍率は2.5倍とした。次に、延伸糸条を捲縮加工装置に導き、160℃、5MPaの加熱圧空によって捲縮加工し、回転移送装置上に噴出させ、冷却した。次に、プラグ状の捲縮糸を2対のセパレ−トロ−ル間で6%のストレッチを掛け、捲縮を解した。該ストレッチ中の走行糸条の温度は50℃であった。次いで、該捲縮糸に、交絡数が15ケ/m、交絡強度が0.8cN/dtexとなるように交絡処理を施した後、0.05cN/dtexの巻き取り張力をかけてチ−ズ状に巻き取った。
【0084】
かくして得られたポリ乳酸捲縮糸は、1170dtexー68filで、相対粘度が11.4であった。表2の実施例1に示した物性を有していた。また、本サンプルを用いて、目付:800g/m3、ゲージ:1/10G、ステッチ13mmの規格で作製したカ−ペットの特性は、嵩高性、耐摩耗性の優れたものが得られた。
【0085】
実施例2および実施例3は、それぞれA顔料の代わりにB顔料およびC顔料を用いた以外は実施例1と同様の方法で作成した
実施例3〜8は、実施例2をベ−スとし、製糸条件を変えて製造した本発明で特定した範囲の原着ポリ乳酸捲縮糸である。以上の実施例によって得られた捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットの特性を表2に示した。
【0086】
比較例1は、原着捲縮糸でなく、先染め染色を130℃で加圧染色して製造したポリ乳酸捲縮糸である。また、比較例2は、顔料としてカ−ボンブラックのみを添加した黒原着ポリ乳酸捲縮糸である。比較例3〜8は、実施例2をベ−スとして、製糸条件を変更して得られた、本発明で特定した範囲外の特性を有する原着ポリ乳酸の例である。
【0087】
以上の比較例によって得られた捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットの特性を表3に示した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
表1〜3から明らかなように、実施例のものは、いずれも本発明で特定した捲縮糸の特性を満足し、その結果、嵩高性、耐摩耗性および色調の優れたカ−ペットが、タフト加工性良く得ることができた。一方、比較例は、本発明で特定した捲縮糸特性を満足せず、その結果、カ−ペットとした時に、嵩高性、耐摩耗性および色調等の何れかで劣るものとなった。
【0092】
【発明の効果】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は強度および捲縮特性に優れ、この捲縮糸を用いたタフティングカ−ペットは優れた嵩高性、ボリュ−ム感に溢れたカ−ペットとなる。また、耐摩耗性や耐ヘタリ性等、耐久性が大幅に改善されたカ−ペットが得られる。そして、従来のポリ乳酸カ−ペットの致命的とも言える欠点が除かれたことにより、ポリ乳酸捲縮糸の特徴である生分解性、非石油系原料であること、および独特の感触や風合い、特異な光沢等を活かして、新しいカ−ペットを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、原着ポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットに関する。詳しくは、嵩高性および捲縮耐久性に優れ、かつ高強度で耐摩耗性に優れた原着ポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたボリュ−ム感と風合いに優れ、かつ耐捲縮ヘタリ性および耐摩耗性に優れたカ−ペットに関する。そして、従来のポリ乳酸カ−ペットの致命的とも言える上記特性を改良したことにより、ポリ乳酸捲縮糸の特徴である生分解性、非石油系原料であること、および独特の感触や風合い、特異な光沢等を活かした新しいカ−ペットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリ乳酸繊維は、生分解性を有し、かつ非石油系原料から得られる繊維として、衣料用およびインテリア用繊維として有用されつつある。特に、従来のナイロンやポリプロピレン繊維捲縮糸のような捲縮特性が得られれば、カ−ペット用途に広く展開できる素材として期待されている。
【0003】
しかしながら、従来のポリ乳酸繊維捲縮糸をカ−ペットに用いると、嵩高性に劣り、摩耗し易くかつヘタリ易いという欠点があり、限られた用途にしか実用できなかった。これは、ポリ乳酸捲縮糸の強度や捲縮特性がナイロンやポリプロピレン繊維捲縮糸に比べ劣ることに加え、更に染色時に大幅な強力低下や捲縮特性が低下するためであった。そして、タフトされたカーペットは嵩高性に劣り、摩耗し易くかつヘタリ易い等、耐久性に劣るものであった。
【0004】
ポリ乳酸繊維の染色は、通常のポリエステル繊維と同様100℃以上、通常は110〜130℃での加圧高温染色が適用される。この染色工程で、ポリ乳酸捲縮糸の強度および捲縮特性が大幅に低下してしまい、かかるポリ乳酸捲縮糸をタフティングしたカ−ペットは、一層ボリュ−ム感が低下し、捲縮がヘタリ易くかつ耐摩耗性も低下してしまった。そのため、目付を増やしたり、耐久性があまり要求されない家庭用ラグや装飾用マット等、限定された用途にしか適用できず、ポリ乳酸繊維の特徴を活かすことができなかった。
【0005】
従来、ポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットとその製造法に関して、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4等が開示されている。
【0006】
特許文献1は、「カ−マットやカ−ペットへの使用に適した嵩高性を有し、かつ生分解性能を有する、嵩高性を有する生分解性繊維及びその製造方法」を課題とし、その解決手段として、「各単繊維がランダム方向に屈曲、あるいは互いに絡み合い、ル−プやタルミを有し、かつ単繊維の捲縮率が5〜20%の嵩高性を有する生分解繊維、およびその製造法」を開示しており、特に、延伸条件、および捲縮糸の加工条件等を特定した製造法について述べている。
【0007】
特許文献2は、「高光沢、高発色性で、触感に優れ、かつ自然環境中で容易に分解する、カ−ペット用に好適なポリエステルマルチフィラメント捲縮糸とカ−ペットを提供すること」を課題とし、その解決手段として、「融点が130℃以上の脂肪族ポリエステルからなるマルチフィラメント捲縮糸であって、該マルチフィラメント捲縮糸の沸騰水処理後の捲縮伸長率が3〜35%、平均単糸繊度が3〜35デシテックス、単糸横断面が4〜8葉断面である脂肪族ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸と、該マルチフィラメント捲縮糸から構成されるカ−ペット」について開示している。
【0008】
特許文献3は、「バルキ−性と耐摩耐久性に優れ、かつ良好なカバ−リング性によって軽量化を可能としたカ−ペットを与え得る脂肪族ポリエステル糸、およびこの脂肪族ポリエステル糸をフェ−スヤ−ンとして用いてなるカ−ペット等、特に自動車用としての優れた性能を有するカ−ペットを提供すること」を課題とし、解決手段として、「融点145℃以上の脂肪族ポリエステルを溶融紡糸してなる中空断面単糸の集合体であって、総繊度が500〜5000デシテックスの脂肪族ポリエステルマルチフィラメントより構成され、前記中空断面単糸は、その外輪郭と中空部輪郭との間隔よりなる厚さが3μ以上であることを特徴とするカ−ペット用脂肪族ポリエステル糸フェ−スヤ−ンとして用いるカ−ペット」とするとを開示している。
【0009】
特許文献4は、「環境と調和した、生分解性を有するカ−ペットを提供すること」を課題とし、解決手段として、「カ−ペットの使用に適した嵩高性を有し、かつ生分解性能を有する生分解性繊維をパイルとして用い、さらに基布とバッキング材に生分解性を有する素材を使用したカ−ペット」とすることを述べている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献3の技術には、従来のポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットの欠点、特に染色によって生ずる捲縮糸の強度や捲縮特性の低下と、それによるカ−ペットとしての嵩高性の欠如、耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性の改善については何も言及されてない。しかも、該技術によって得られるカ−ペットは、その主力用途であって、嵩高性、耐ヘタリ性および耐摩耗性が必要とされる、例えばタイルカ−ペット、家庭用ロ−ルカ−ペット、自動車用ラインマット、自動車用オプションマット等用として満足される品質レベルにはなかった。
【0011】
また、特許文献3の技術は、特殊な4〜8葉断面捲縮糸とすることによって、高光沢および好触感を有する高捲縮伸長率のポリ乳酸捲縮糸が得られるものの、耐久性の改善に関しては3.0デシテックス以上の単糸繊度とすること、嵩高性およびバルキ−性の改善に関しては、沸騰水処理後の捲縮伸長率を3.0%以上とする以外具体的な提案はなされていない。そのため、耐久性や嵩高性の改善に関しては、従来のポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットに比べ、著しい改善は得られなかった。
【0012】
一方、特許文献4の技術は、バルキ−性と摩耗耐久性に優れ、かつ良好なカバ−リング性を有するカ−ペット用脂肪族ポリエステル糸および該糸をフェ−スヤ−ンとして用いたカ−ペットであって、その好ましい態様として、着色剤、特にカ−ボンブラック系着色剤を含有せしめた原着脂肪族ポリエステル捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットについて開示している。確かに原着脂肪族ポリエステル捲縮糸とすることによって、染色時の強力低下や捲縮特性の低下等は防げるものの、原着脂肪族ポリエステル捲縮糸自身の強力および捲縮特性が充分でないこと、およびカ−ペットとしての意匠性、審美性を確保するのにカ−ボンブラック系着色剤を中心とする該特許記載の着色剤では充分とは言えなかった。
【0013】
【特許文献1】特開2002−105752号公報
【0014】
【特許文献2】特開2002−180340号公報
【0015】
【特許文献3】特開2002−227036号公報
【0016】
【特許文献4】特開2002−248047号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、染色によって生ずる捲縮糸の強度や捲縮特性の低下と、それによるカ−ペットとしての嵩高性の欠如、耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性が改善された原着ポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットを提供せんとするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、単繊維が異型断面形状を有する、相対粘度(ηr)8〜30のポリ乳酸捲縮糸であって、着色剤を100〜30000ppm含有し、かつ、下記(1)〜(5)の特性を満足することを特徴とするものである。
(1)強度=1.3.〜3.5cN/dtex
(2)捲縮伸長率=5〜25%
(3)捲縮潜在化率=75〜95%
(4)交絡数=3〜25ケ/m
(5)交絡点強度=0.05〜2.0cN/dtex
また、本発明のカーペットは、かかる原着ポリ乳酸捲縮糸を用いたことを特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、つまり染色によって生ずる捲縮糸の強度や捲縮特性の低下と、それによるカ−ペットとしての嵩高性の欠如、耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性が改善された原着ポリ乳酸捲縮糸について、鋭意検討し、単繊維そのものの断面形状や構成ポリマの相対粘度などを特定なものを選択し、かつ、予め着色剤を含有させた形にし、さらに、強度、捲縮伸長率、捲縮潜在化率などの繊維特性に加えて、交絡数や交絡点強度 などの糸特性を特定なものを選択してみたところ、前記課題を一挙に解決するポリ乳酸捲縮糸を提供することができたものである。
【0020】
かかるポリ乳酸捲縮糸によれば、ポリ乳酸捲縮糸の特長である生分解性、非石油系素材であることおよび独特の感触や風合いを活かした新しいカ−ペットを提供することができる。
【0021】
かかる原着ポリ乳酸捲縮糸は、ポリ乳酸ポリマを製糸して捲縮加工処理した捲縮糸である。
【0022】
かかるポリ乳酸捲縮糸の原料とするポリ乳酸ポリマは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とする乳酸を重合してなるポリ乳酸である。ここでL−乳酸を主成分とするとは、構成成分の60重量%以上がL−乳酸よりなっていることを意味しており、40重量%を超えない範囲でD−乳酸を含有するポリエステルである。D−乳酸の場合も同様である。更には、構成するポリマの分子鎖の全繰返し単位の80重量%以上、特に90重量%以上、より好ましくは95重量%以上が乳酸であるポリ乳酸であり、本発明の構成要件および目的を損なわない範囲であれば他のポリマのブレンド、共重合、添加物を含んでいても良い。
【0023】
また、本発明にかかるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸のほかにエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。あるいは、溶融粘度を低減させるため、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマーを可塑剤として用いることができる。
【0024】
かかるポリ乳酸ポリマには、通常合成繊維に用いられる艶消し剤、難燃剤、耐熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加することができる。
【0025】
しかし、本発明のポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットは、ポリ乳酸繊維の生分解性および非石油系原料であるという特徴を活かし、環境に優しい製品として好ましい用途に用いるため、石油系ポリマのブレンド、該成分の共重合等は極力避けるのが好ましく、したがって各種添加剤も、重金属化合物や環境ホルモン物質は勿論、現時点でその懸念が予想される化合物の一切を用いないのが好ましい。
【0026】
本発明のカ−ペットとは、タフティングの前または後で染色することなく商品として用いられるカ−ペットである。
【0027】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、単繊維が異型断面形状を有する、相対粘度(ηr)8〜30のポリ乳酸捲縮糸であって、着色剤を100〜30000ppm含有し、下記(1)〜(5)の特性を満足することを特徴とするものである。
(1)強度=1.3〜3.5cN/dtex
(2)捲縮伸長率=5〜25%
(3)捲縮潜在化率=75〜95%
(4)交絡数=3〜25ケ/m
(5)交絡点強度=0.05〜2.0cN/dtex
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸に用いられる着色剤は、ポリ乳酸捲縮糸に適切な特定の無機、有機顔料および染料である。具体的には、鉛、クロムおよびカドミウムを除く酸化物系無機顔料、フェロシアン化物無機顔料、珪酸塩無機顔料、炭酸塩無機顔料、燐酸塩無機顔料、カ−ボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉およびチタン粉末被覆雲母等の無機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、イソイントセリノン系有機顔料等の有機顔料、および複素環系染料、ヘリノン系染料、ペリレン系染料およびチオインジオ系染料等から選ばれた2種以上を組み合わせたものである。
【0028】
例えば、無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、チタンイエロ−、亜鉛−鉄系ブラウン、チタン・コバルト系グリ−ン、コバルトグリ−ン、コバルトブル−、銅−鉄系ブラック等の酸化物、紺青のようなフェロシアン化物、郡青のような珪酸塩、炭酸カルシウムのような炭酸塩、マンガンバイオレットのような燐酸塩、カ−ボンブラック、アルミニウム粉やブロンズ粉、およびチタン粉末被覆雲母等が用いられ、鉛、クロムおよびカドミウム等の重金属を含む無機顔料は用いない。 また、有機顔料としては、銅フタロシアニンブル−、銅フタロシアニングリ−ンおよび臭素化銅フタロシアニングリ−ン等のフタロシアニン系、ペリレンスカ−レット、ペリレンレァ、ペリレンマル−ン等のペリレン系、イソインドリノン系等が用いられる。
【0029】
また、染料としては、アンスラキノン系、例えば、Solvent R.50、Solvent R.111、Solvent B.94、Solvent V.50、Solvent G.3、複素環系、例えば、Solvent Y.33、Solvent Y.111、Solvent Y.54、ヘリノン系、例えば、Solvent O.60、Solvent R.135、Solvent R.179、ペリレン系、例えば、Solvent G.5、チオインジオ系、例えばVat R. 1が用いられる。
【0030】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸に用いられる着色剤は、上記無機顔料、有機顔料および染料から選ばれた2種以上を組み合わせて用いる。特に、上記着色剤は2種以上用いて調整することが重要であり、1種類の着色剤のみでは従来の染色タイプのポリ乳酸捲縮糸に対抗できる微妙な色調を出せず、カ−ペットとした時の意匠性、審美性を満足させることができない。
【0031】
かかる着色剤の添加濃度は、染料の種類によって変化するが、ポリマ重量当たり、着色剤の全量として、色濃度の上から、100〜30000ppm、好ましくは500〜10000ppmであるのがよい。また、着色剤は通常用いられる分散剤を併用して用いることもできる。
【0032】
本発明のポリ乳酸捲縮糸は、各単繊維の断面形状は異型断面である。即ち、Y型、△型、扁平型を基本とし、それぞれの断面に突起がついたものや一部が欠けたもの、あるいは中空部を1以上有する異型断面糸等であって、従来から知られているものから選ぶことができる。特に、本発明に適した断面形状は、Y型および△形状、およびそれらの中空であって、単糸断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した変形度が1.5〜5.5の範囲の断面形状が好ましい。また、上記異なった種類の異型断面捲縮糸や円断面捲縮糸を混合した捲縮糸を用いることもできる。
【0033】
本発明の黒原着ポリ乳酸捲縮糸の相対粘度は、25℃で、3%オルソクロロフェノ−ル溶液(0.3g/10ml)で測定した値であるが、8〜30、好ましくは10〜20である。相対粘度が8未満では、カ−ペット用途に適した強度や耐摩耗性等を付与することができない。一方、30を越える高粘度の場合は、強度や耐摩耗性等の向上は飽和し、むしろ溶融粘度が高くなりすぎ、製糸し難くなるというマイナスが生じる。
【0034】
本発明の上記原着ポリ乳酸捲縮糸は強度が1.3〜3.5cN/dtex、好ましくは2.0〜3.0cN/dtexである。強度が1.3cN/dtex未満であると、カ−ペットにした時に耐摩耗性が劣り、使用時に捲縮糸の一部がすり切れてしまうことがある。強度は高いほど好ましいが、3.5cN/dtex越える強度は現在の技術では達成できていない。
【0035】
また、捲縮伸長率は、詳細な測定法は後述するが、捲縮糸の嵩高性を示すパラメ−タであり、捲縮糸を沸騰水処理して捲縮を発現させ、その捲縮の程度を示した値である。この捲縮伸長率は5〜25%である。5%未満であると捲縮が不十分であり、カ−ペットとしての嵩高性が不足し、かつ耐ヘタリ性が劣り、カ−ペット使用時に荷重が繰り返し、又は長時間かかった部分が寝てしまうという問題を生ずる。一方、25%を越える捲縮伸長率は現在の技術では得にくいが、得られたとしてもそれを用いたカーペットはフェルトライクとなり、好ましいカ−ペットが得られない。
【0036】
そして、捲縮潜在化率は75〜95%、好ましくは80〜%である。捲縮潜在化率が75%未満の場合は、タフティング後の熱セット工程を通った後の嵩高性が少なく、ボリュ−ム感のないカ−ペットとなるため好まれず、一方、潜在化率が95%を超えるとタフティング後の熱セット工程を通った後も潜在したままの捲縮が残り、本来有する捲縮特性が活かされないことになる。
【0037】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、染色工程を経ることなく、カ−ペットを製造することが特徴であり、捲縮潜在化率は通常の染色工程を経てカ−ペットとする捲縮糸に比べ、低めであることを特徴とする。捲縮糸段階で潜在化している捲縮は、タフティング後の熱セット工程、通常は乾熱処理および/またはスチ−ミングによって発現させる。
【0038】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、糸条を集束するために交絡を付与されている。交絡数は3〜25ケ/m、好ましくは8〜18であり、また、該交絡の交絡点強度は0.05〜2.0cN/dtex、好ましくは、0.08 〜1.5cN/dtexである。本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸に付与される交絡は、タフティング工程を通過するまでは充分な集束性を保持し、タフティング後、特にシャ−リング工程を経た時には交絡は実質的にゼロとなることが好ましい。通常のタフティング工程を通過するまでに捲縮糸が受ける張力に耐える集束性を有し、かつ、シャ−リング工程で受ける張力によって実質的に解きほぐされる交絡として、上記交絡数と交絡点強度が特定される。
【0039】
上記特定された本発明ポリ乳酸捲縮糸は、捲縮糸の強度および捲縮特性に優れ、この捲縮糸を用いたタフティングカ−ペットは優れた嵩高性、ポリュ−ム感に溢れたカ−ペットとなる。また、耐摩耗性や耐ヘタリ性等、耐久性が大幅に改善されたカ−ペットが得られる。そして、従来のポリ乳酸カ−ペットの致命的とも言える欠点が除かれたことにより、ポリ乳酸捲縮糸の特徴である生分解性、非石油系原料であること、および独特の感触や風合い、特異な光沢等を活かして、新しいカ−ペットを提供することができる。
【0040】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は、ロ−ルカ−ペット、タイルカ−ペット、自動車用ラインマットおよびオプションマット、家庭用ラグ、玄関マット等本発明のカ−ペットの特性が活かせる多くの用途に用いることができる。また、パイルの形態もル−プパイル、カットパイルいずれでも良く、タフティングカ−ペットだけでなく、織物や編み物あるいは刺繍された敷物等を意味する。
【0041】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットは以下の方法で製造することができる。
【0042】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸の製造のために用いるポリ乳酸ポリマは、25℃で、3%オルソクロロフェノ−ル溶液(0.3g/10ml)で測定した相対粘度が、10〜22、好ましくは14〜18を用いる。本発明のカ−ペット用途では、捲縮糸の強度、耐摩耗性が要求されるため、高分子量のポリマ、即ち上記特定した相対粘度のポリ乳酸ポリマが必要である。
【0043】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸の着色剤として用いる無機顔料、有機顔料および染料は、前記特定した化合物から選ばれた2種を組み合わせて用いる。また、着色剤のポリマ中への分散をよくするため、オレフィン系化合物などの分散剤を用いることもできるし、さらに着色剤をポリ乳酸ポリマーに添加してマスターチップとしてから、製糸することもできる。
【0044】
ポリ乳酸ポリマは、ポリマ中の水分が0.1重量%以下として溶融紡糸に供するため、通常100〜130℃で約5時間以上乾燥して水分を除去したものを使用するのが好ましい。
【0045】
上記ポリ乳酸ポリマと着色剤を含んだポリ乳酸ポリマーを混合機を介して一定割合で混合したものを、エクストル−ダ−型押し出し機に供給して、210〜240℃の温度で溶融し、紡糸パックを通して濾過し、口金細孔から紡糸する。
【0046】
口金孔は種々の異型断面形状の捲縮糸が得られるよう異型断面孔を有するの口金を用いる。口金孔の形状および寸法は、ポリ乳酸ポリマの溶融粘度、紡糸温度、紡糸後の冷却固化条件等を考慮し、目的とする断面が得られるよう設計したものを用いる。
【0047】
本発明ポリ乳酸捲縮糸の断面は、Y型および△形状、およびそれらの中空であって、単糸断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した変形度が1.5〜5.5の範囲のものが好ましい。
【0048】
次いで、紡糸された糸条は冷風または温風を吹きつけられ冷却固化される。風の温度は10〜80℃、好ましくは15〜60℃である。
【0049】
冷却固化された糸条に油剤を付与した後、所定の速度で回転する引き取りロ−ルに捲回して引き取る。
【0050】
かかる油剤としては、平滑剤を主成分とし、界面活性剤、制電剤、極圧剤成分等を含むが、ポリ乳酸繊維に活性な成分を除いた油剤組成とすることが必要である。例えば、例えば、水エマルジョンに含まれる乳化成分は、ポリ乳酸繊維の繊維構造を変化させる作用があり、捲縮糸を製造した後に経時的に繊維構造が変化し、強度が低下してしまうという現象が起こることがある。
【0051】
従って、好ましい油剤組成は、例えば、平滑剤としてアルマルエ−テルエステル、界面活性剤として高級アルコ−ルのアルキレンオキサイド付加物、極圧剤として有機ホスフェ−ト塩等を用いることが好ましい。
【0052】
上記引き取りロ−ルの速度は300〜3000m/minである。
【0053】
本発明にかかる捲縮糸の製造方法は1ステップで捲縮糸を製造する直接紡糸延伸・捲縮加工プロセスを特徴とするため、上記引き取り速度が好ましい。300m/minでも本発明にかかる捲縮糸は得られるが、生産効率が低いため好ましくない。引き取り速度が3000m/minを超えると、直接紡糸延伸・捲縮加工プロセスにおいて、延伸速度および捲縮加工速度が高速となり過ぎ、特に捲縮加工速度が4000m/minを超えると、現在の実用プロセスでは製造が困難である。
【0054】
引き取られた未延伸糸は連続して延伸されるが、1段または2段の多段熱延伸が採用される。特に、本発明ポリ乳酸捲縮糸の高強度および高捲縮率特性およびカ−ペットとして用いた時の優れた嵩高性、耐摩耗を得るためには、2段延伸を行い、十分に配向させたポリ乳酸繊維を捲縮加工することが重要である。延伸倍率は2〜5倍の範囲である。
【0055】
熱延伸が終了した糸条は連続して捲縮加工プロセスで、加熱流体捲縮付与装置に導入して捲縮が付与される。加熱流体捲縮付与装置は加熱高圧流体を糸条に噴射して単糸をランダムに交絡させ、3次元ル−プやタルミを形成させる加熱流体噴射ノズル装置、上記捲縮糸を更に加熱流体の下に圧縮熱処理を行うための圧縮熱処理装置、および捲縮加工された糸条を加熱と共に噴き出させ、該糸条を冷却するための回転移送装置からなる。加熱流体は過熱蒸気または加熱空気を用いる。加熱流体の温度は130〜200℃が好ましく、加熱流体の乾き度、圧力、流量、および処理するポリ乳酸繊維の繊度、処理速度等に応じて適切な条件を選択する。また、圧縮熱処理装置は薄いリングを一定の間隙を持たせて積層した環状の装置であり、リング間の間隙より流体は吸引される。該圧縮熱処理装置内の糸条は折り畳まれ、積層されながら一定時間滞留して熱処理された後、回転移送装置上へ噴出される。回転移送装置上に噴出された捲縮糸条はプラグ状であるが、回転移送装置表面のパンチング孔で吸引されされながら移送される。
【0056】
次に、回転移送装置上の捲縮糸条は該装置上から順次引き取られ、回転速度の異なる2対のネルソンタイプロ−ルまたはセバレ−ト型ロ−ルに捲回されて捲縮を解きほぐされる。この間のストレッチは3〜10%で行い、糸条の温度が40〜60℃で行う。3%未満では捲縮が完全に解れないことがあり、一方、10%を越えると捲縮が潜在化し過ぎ、嵩高性が得にくくなる。通常、この時のストレッチ張力を張力計で連続して測定し、常時モニタリングして品質管理を行う。このストレッチ張力は前記捲縮加工プロセスにおける捲縮加工前の原糸の特性、捲縮処理条件および捲縮を解きほぐす条件等と密接に関係し、本発明に係る捲縮糸の特性、特に捲縮伸長率や捲縮潜在化率に影響を与え、結果として本発明効果である捲縮糸の嵩高性、耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性の改善にかかわっている。好ましいストレッチ張力は、例えば、6%伸長した時のストレッチ張力が0.05〜0.2cN/dtexであり、更に好ましくは0.08〜0.15cN/dtexである。
【0057】
次に該捲縮糸には交絡ノズルを通して交絡処理をする。該交絡ノズルは通常2〜6孔を備え、走行捲縮糸条に対し略直角方向から0.1〜0.6Pa高圧空気を噴射させて交絡処理する。交絡数および交絡の強さは、交絡ノズルの性能、高圧圧空の圧力および流量、走行糸条の繊度および張力等によって変化するが、交絡数および交絡の強さが前記本発明で特定した範囲となるよう交絡条件を設定して製造する。
【0058】
次いで、捲縮糸条は巻き取り機にチ−ズ状に巻取られる。巻取り張力は通常0.1cN/dtex以下の低張力で行う。
【0059】
得られた原着ポリ乳酸捲縮糸は次にカ−ペットとしてタフティングされるが、基布としては通常のポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン製の不織布、経糸および緯糸ともにポリプロピレンのスプリット糸またはフラットテープを用いたもの等を用いることができる。最も好ましい基布はポリ乳酸繊維の不織布であり、タフト糸と合わせポリ乳酸繊維からなるカ−ペットが得られ好ましい。
【0060】
また、基布として上記通常の繊維を用いた場合でも、基布とタフト糸が製品使用後簡単に分離できるようにしておけば、同様に環境に優しい好ましいカ−ペットとなる。
【0061】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸を2本または3本用い、下撚り、上撚りを施し撚り捲縮糸とした後、100〜125℃で蒸気処理をして、撚り止めと捲縮糸の嵩高性および耐摩耗性や耐へたり性等を更に改善した捲縮糸となし、それをタフトして高級カ−ペットとして製造することもできる。
【0062】
なお、上記得られたカ−ペットは、必要に応じて、途中にスチーミング工程、ブラッシング工程、スプレー工程、シャーリング工程およびポリシャー工程などの加工工程を付加して、それぞれの処理をすることも可能である。
【0063】
かくして、前記本発明の先染めカ−ペット用捲縮糸およびそれを用いた先染めカ−ペットが得られる。
【0064】
以下に明細書本文および実施例に用いた特性の定義および測定法は次の通りである。
【0065】
[相対粘度]
オストワルド粘度計を用いて、オルソクロルフェノール10mlに対し、試料0.3gを溶解した溶液の相対粘度ηrを25℃で測定した。測定は、n=2の平均値とした。
【0066】
ηr=t/t0
t:溶液の落下秒数
t0:溶媒(オルソクロルフェノールのみ)の落下秒数
[強度]
オリエンテック社製テンシロン引張り試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/分の条件で強力を測定した。
【0067】
強度は強力を測定したサンプルに対応するそれぞれの総繊度で除した値である。
【0068】
[捲縮伸長率]
温度20℃、相対湿度65%の雰囲気中に24時間以上放置されていたチ−ズパッケージから解舒した捲縮糸を、無荷重状態で30分間沸騰水で浸漬処理した後、平衡水分率まで乾燥し、これを沸騰水処理後捲縮糸の試料とする。この試料糸に表示dtex×0.0176mN(1.8mg/dtex)の張力を与える初荷重をかけ30秒経過した後に、試料長50cm(L1)にマーキングをする。次いで、同試料に表示dtex×0.882mN(90mg/dtex)の張力を与える定荷重をかけて30秒経過後に、伸びた試料長(L2)を測定する。次いで、下記式により、捲縮伸長率(%)を求める。
【0069】
捲縮伸長率(%)=[(L2−L1)/L1]×100
[捲縮潜在化率]
上記捲縮伸長率において沸騰水処理前の捲縮伸長率をL1、処理後の捲縮伸長率L2をとして、下記式により、捲縮潜在化率(%)を求めた。
【0070】
捲縮潜在化率(%)=[(L2−L1)/L2]×100
[交絡数]
LAWSON−HEPHILL社(米)製EUIB−Eを用いた。
【0071】
糸条の総繊度をA(dtex)とすると、A/100(cN)の張力を与えた状態で、糸条の直径を5mm間隔で長手方向に連続して100m測定する。こうして得られた20001点の糸条直径の平均値から、先ず平均直径B(mm)を求める。
【0072】
次に、平均直径Bを求めるのに用いた100mの糸条に対して改めてA/100(cN)の張力を与えた状態で、糸条の直径を連続して測定し、直径が0.7B以下の節部分を交絡部として、交絡数を測定した。
[交絡点強度]2対のセパレ−トロ−ル間に糸条を走行させ、給糸ロ−ルの速度を50m/分とし、ストレッチロ−ルの速度を変更して糸条に所定張力をかけて巻き取り、交絡が0となる張力を求めた。該張力を総繊度で除して、交絡点強度とした。
【0073】
[繊 度]
JIS L 1090により測定した。
【0074】
[変形度]
単糸を切断後、光学顕微鏡を用いて単糸断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)を測定し、次式によりn=5にて求めた。
【0075】
変形度=(B)/(A)。
【0076】
[嵩高性]
カーペットを真上から見たときに表糸の隙間から基布が最も見えにくいものを良好(◎)、やや見えにくいものをやや良好(○)、やや見えるものをやや不良(△)、最も見やすいものを不良(×)とする官能評価により、3段階に区分した。
【0077】
[耐摩耗性]
カ−ペットの摩耗性評価は、テーバ型摩耗試験機(JIS L 1096の6.17.3に規定)に基づいて、H−18摩耗輪を使用し、それぞれの摩耗輪に1kgの荷重をかけ試験台を300回回転して試験片を摩耗させた後、その摩耗状態を目視評価により、最良(◎)、良好(○)、若干不良(△)および不良(×)の4段階に区分した。
【0078】
[色 調]
光沢があり、深みのある色調から順に、最も良好(◎)、やや良好(○)、やや不良(△)、不良(×)とし、不良のものは、光沢および深みに欠ける色調のものである。
【0079】
[タフト性]
タフト規格1/10ゲージ、ステッチ15mm、パイル高さ7mm、速度500rpmの速度でタフトを行い、1時間当たりにタフト機が停止した回数により、良好(1回以下)、やや不良(1〜3回)、不良(4回以上)として評価した。
【0080】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明する。
【0081】
[実施例1〜9 、および比較例1〜9]
重量平均分子量が149000のポリ乳酸のチップに、顔料Aを予め同じポリ乳酸ポリマに2.0重量%の濃度となるよう混練して作製したマスタ−チップをブレンドして、エクストルダー型紡糸機で溶融紡糸した。マスタ−チップの顔料組成は表1に示した。ベ−ススチップとマスタ−チツプのブレンド比率は、ポリ乳酸繊維中の全顔料濃度が500ppmとなるよう計量してエクストルター前に設置してある混合機でブレンドした。
【0082】
紡糸温度は220℃とし、紡糸パック中で20μの金属不織布フィルタ−で濾過した後、Y型孔を有する68ホールの口金を通して紡糸した。口金直下の冷却条件を制御して、変形度3.8のY型断面のポリ乳酸マルチフィラメントを得た。
【0083】
紡糸糸条は冷却固化後、低粘度鉱物油で希釈した25重量%の油剤液を付与した後、速度700m/分で回転する引取りロ−ル(FR)に捲回して引き取った。FRはネルソンタイプロ−ルで、ロ−ル温度は80℃とした。次いで、該糸条は連続して100℃に加熱した第1延伸ロ−ル(1DR:ネルソンタイプロ−ル)との間で1段目の延伸を行い、更に1DRと、120℃に加熱した第2延伸ロ−ル(2DR:ネルソンタイプロ−ル)との間で2段目の延伸を行った。総延伸倍率は2.5倍とした。次に、延伸糸条を捲縮加工装置に導き、160℃、5MPaの加熱圧空によって捲縮加工し、回転移送装置上に噴出させ、冷却した。次に、プラグ状の捲縮糸を2対のセパレ−トロ−ル間で6%のストレッチを掛け、捲縮を解した。該ストレッチ中の走行糸条の温度は50℃であった。次いで、該捲縮糸に、交絡数が15ケ/m、交絡強度が0.8cN/dtexとなるように交絡処理を施した後、0.05cN/dtexの巻き取り張力をかけてチ−ズ状に巻き取った。
【0084】
かくして得られたポリ乳酸捲縮糸は、1170dtexー68filで、相対粘度が11.4であった。表2の実施例1に示した物性を有していた。また、本サンプルを用いて、目付:800g/m3、ゲージ:1/10G、ステッチ13mmの規格で作製したカ−ペットの特性は、嵩高性、耐摩耗性の優れたものが得られた。
【0085】
実施例2および実施例3は、それぞれA顔料の代わりにB顔料およびC顔料を用いた以外は実施例1と同様の方法で作成した
実施例3〜8は、実施例2をベ−スとし、製糸条件を変えて製造した本発明で特定した範囲の原着ポリ乳酸捲縮糸である。以上の実施例によって得られた捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットの特性を表2に示した。
【0086】
比較例1は、原着捲縮糸でなく、先染め染色を130℃で加圧染色して製造したポリ乳酸捲縮糸である。また、比較例2は、顔料としてカ−ボンブラックのみを添加した黒原着ポリ乳酸捲縮糸である。比較例3〜8は、実施例2をベ−スとして、製糸条件を変更して得られた、本発明で特定した範囲外の特性を有する原着ポリ乳酸の例である。
【0087】
以上の比較例によって得られた捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットの特性を表3に示した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
表1〜3から明らかなように、実施例のものは、いずれも本発明で特定した捲縮糸の特性を満足し、その結果、嵩高性、耐摩耗性および色調の優れたカ−ペットが、タフト加工性良く得ることができた。一方、比較例は、本発明で特定した捲縮糸特性を満足せず、その結果、カ−ペットとした時に、嵩高性、耐摩耗性および色調等の何れかで劣るものとなった。
【0092】
【発明の効果】
本発明の原着ポリ乳酸捲縮糸は強度および捲縮特性に優れ、この捲縮糸を用いたタフティングカ−ペットは優れた嵩高性、ボリュ−ム感に溢れたカ−ペットとなる。また、耐摩耗性や耐ヘタリ性等、耐久性が大幅に改善されたカ−ペットが得られる。そして、従来のポリ乳酸カ−ペットの致命的とも言える欠点が除かれたことにより、ポリ乳酸捲縮糸の特徴である生分解性、非石油系原料であること、および独特の感触や風合い、特異な光沢等を活かして、新しいカ−ペットを提供することができる。
Claims (4)
- 単繊維が異型断面形状を有する、相対粘度(ηr)8〜30のポリ乳酸捲縮糸であって、着色剤を100〜30000ppm含有し、かつ、下記(1)〜(5)の特性を満足することを特徴とする原着ポリ乳酸捲縮糸。
(1)強度=1.3.〜3.5cN/dtex
(2)捲縮伸長率=5〜25%
(3)捲縮潜在化率=75〜95%
(4)交絡数=3〜25ケ/m
(5)交絡点強度=0.05〜2.0cN/dtex - 前記単繊維の断面形状がY型であり、該単繊維断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した変形度が1.5〜5.5であることを特徴とする請求項1記載の原着ポリ乳酸捲縮糸。
- 前記着色剤が、鉛、クロムおよびカドミウムを除く、酸化物系無機顔料、フェロシアン化物無機顔料、珪酸塩無機顔料、炭酸塩無機顔料、燐酸塩無機顔料、カ−ボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉およびチタン粉末被覆雲母等の無機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、イソイントセリノン系有機顔料等の有機顔料、および複素環系染料、ヘリノン系染料、ペリレン系染料およびチオインジオ系染料等から選ばれた2種以上を組み合わせたものであることを特徴とする請求項1または2記載の原着ポリ乳酸捲縮糸。
- 前記請求項1〜3のいずれかに記載の原着ポリ乳酸捲縮糸を用いたことを特徴とするカ−ペット。
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2003
- 2003-08-11 JP JP2003207054A patent/JP2005060850A/ja active Pending
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