JP2005058496A - 保温材 - Google Patents
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Abstract
【課題】発熱材とマイクロカプセルからなる保温材において、マイクロ波を長時間照射した場合でもマイクロカプセルの過熱による変質や熱分解を防止し、保温性も向上させる。
【解決手段】保温材の構成が、1.発熱材層、2.蓄熱材層、及び/または3.断熱層からなり、1.の発熱材層が、マイクロ波を照射して発熱する素材で、2.の蓄熱材層が蓄熱材を内包するマイクロカプセル固形物からなる。1.の発熱材層が、相対湿度50%の雰囲気下での吸水率が1%〜60%の吸水性顔料が好ましく、3.の断熱層がポリオレフィン系材料が好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】保温材の構成が、1.発熱材層、2.蓄熱材層、及び/または3.断熱層からなり、1.の発熱材層が、マイクロ波を照射して発熱する素材で、2.の蓄熱材層が蓄熱材を内包するマイクロカプセル固形物からなる。1.の発熱材層が、相対湿度50%の雰囲気下での吸水率が1%〜60%の吸水性顔料が好ましく、3.の断熱層がポリオレフィン系材料が好ましい。
【選択図】 なし
Description
本発明は、電気又は燃料等によるエネルギーを連続的に用いることなく対象物を加熱及び保温することが可能な保温材に関するものである。本発明の保温材は電子レンジを用いてマイクロ波を照射して一旦加熱すると長時間保温効果が持続する保温材に関するものである。
電気や燃料のエネルギーを使用しないで暖をとるための保温材として、カイロ、行火、湯たんぽ等が挙げられる。カイロは最近では鉄粉の酸化反応を利用した使い捨て化学カイロがその簡便さと安価さが受け入れられ大きな市場へと成長を遂げているが再利用や細かな温度調節が出来ないという問題がある。
本発明者は、マイクロ波で加熱可能な材料(以降、発熱材という。)と蓄熱材を内包するマイクロカプセル(以降、マイクロカプセルという。)を混合した粉体、造粒物を包材に充填したものにマイクロ波を照射することにより加熱と保温が可能な材料を提案した。(例えば特許文献1〜3参照)
特開2001−288458号公報
特開2001−303032号公報
特開2002−045385号公報
これらの手法のように発熱材とマイクロカプセルを接触させて存在させることにより保温時間が大幅に向上し、しかも希望する適温が長時間持続する効果が得られるようになった。マイクロ波を照射する時間は、発熱材と蓄熱材の質量と希望する最高到達温度によって決められ、安全な使い方がその注意書きなどに明記されてあり、その範囲内の加熱時間であれば温度は上がり過ぎるようなことはなく問題は発生しないことになっている。しかしながら誤ってマイクロ波の照射時間が安全とされる規定の時間より長くなると発熱材は極めて高い温度まで上昇し、ひいてはマイクロカプセルの耐熱温度を上回るとマイクロカプセルが着色または変質し、場合によっては異臭が発生することもあった。
本発明の課題は、発熱材とマイクロカプセルからなる保温材において、マイクロ波を長時間照射した場合でもマイクロカプセルの過熱による変質や熱分解を防止することと、保温性を向上させることである。
本発明の課題は、マイクロ波を照射して加熱する保温材において、1.発熱材層、2.蓄熱材層、及び/または3.断熱層を別々に有する層構成からなる保温材を得ることにより達成される。
本発明で示される保温材を構成する材料として、発熱材層、蓄熱材層、及びまたは断熱材層を別々の層構成とすることにより、過度にマイクロ波等で長時間または強加熱しても何れの素材も変色、変質等が生ずることなく安全に使用可能な保温材を供給しうる。
本発明の保温剤は1.発熱材層、2.蓄熱材層、及び/または3.断熱層からなる。1.の発熱層にはマイクロ波を照射することにより加熱可能な材料が用いられ、分子構造が極性を有するものであれば使用可能で無機系、有機系何れの材料でも使用可能である。有機系材料としては、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及びこれらの素材に吸水させたものが使用可能であり、比較的熱軟化点が高いものをビーズ状またはペレット状に加工した形態のものが使用される。無機系の材料としては可燃性や爆発性を有さない天然物由来の鉱物系材料が使用可能であるが、水分子が配位した吸水性顔料が好ましい材料として挙げられる。吸水性顔料とは空気中の水分を比較的容易かつ多量に吸収し、吸収した後でも潮解性を示さずに粒状の形態を維持し得る固形粒子であり、吸水率が1%〜60%、好ましくは3%〜40%の顔料を示す。尚、本発明で述べる吸水率とは、以下の計算式により導かれる。
吸水率が1%以下の材料で、尚かつ分子構造に極性が乏しいものであればマイクロ波を照射しても充分な温度まで上昇しないため好ましくなく、また60%以上の顔料になるとべたつきが生じ粉体混合物が固まりやすくなるため好ましくない。
本発明で用いられる吸水性顔料としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム等の多水塩を形成しうる無機塩類やベントナイト、カオリン、フラーズアース、酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、アタパルガイト、セピオライト、ハロイサイト、パイロフィライト、セリサイト、バーミキュライト、クロライト、アロフェン等の粘土鉱物顔料、天然鉱物などが用いられるが、好ましくはシリカゲル、活性アルミナ、珪酸マグネシウム、ゼオライト等の高吸水性の顔料が好ましく、これらは単一または2種以上を組み合わせて用いられる。
2.の蓄熱材層を構成するマイクロカプセルの製法として物理的方法と化学的方法が知られているが、特に潜熱蓄熱材をマイクロカプセル化する方法としては、複合エマルジョン法によるカプセル化法(特開昭62−1452号公報)、蓄熱材粒子の表面に熱可塑性樹脂を噴霧する方法(特開昭62−45680号公報)、蓄熱材粒子の表面に液中で熱可塑性樹脂を形成する方法(特開昭62−149334公報)、蓄熱材粒子の表面でモノマーを重合させ被覆する方法(特開昭62−225241公報)、界面重縮合反応によるポリアミド皮膜マイクロカプセルの製法(特開平2−258052公報)等に記載されている方法が用いられる。
マイクロカプセルの膜材としては、界面重合法、インサイチュー(in-situ)法等の手法で得られるポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリウレタン、アミノプラスト樹脂、またはゼラチンとカルボキシメチルセルロース若しくはアラビアゴムとのコアセルベーション法を利用した合成あるいは天然の樹脂が用いられるが、物理的、化学的に安定なインサイチュー法によるメラミンホルマリン樹脂皮膜、尿素ホルマリン樹脂皮膜を用いたマイクロカプセルを使用することが特に好ましい。
保温剤として使用される蓄熱材の融点は、約20〜80℃の範囲に設定されることが好ましく、具体的な蓄熱材としては、C16〜C40の範囲のワックス類や、無機系共晶物および無機系水和物、パルミチン酸やステアリン等の脂肪酸類、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル等のエステル化合物が挙げられ、好ましくは融解熱量が約80kJ/kg以上の化合物で、化学的、物理的に安定でしかも安価なものが用いられる。これらは混合して用いても良いし、必要に応じ過冷却防止剤、比重調節剤、劣化防止剤等を添加することが出来る。
一般にマイクロカプセルの粒径は小さいほど強度的に強く、逆に大きいほど弱く乾燥工程またはそれ以降の取り扱い時に壊れやすくなるために適度の粒子系に設定される必要があり、最適な粒子系としては0.5〜50μm、更に好ましくは1〜20μmの範囲が好ましい。尚、マイクロカプセルの平均粒子系とは、米国コールター社製粒度測定装置マルチサイザーII型を用いて測定した体積平均粒子系を示す。
本発明のマイクロカプセルは通常水分散液として得られるため、固形物とするために脱水、乾燥、造粒操作が必要である。脱水方法として、遠心分離法、フィルタープレス法、スクリュープレス法、等があり、乾燥方法としては、ドラムドライヤー、スプレードライヤー、フリーズドライヤーなどの乾燥装置が用いられるが、スプレードライヤーがマイクロカプセルの破壊もなく粒子径のコントロールも容易であるため好ましい手法である。これらの脱水、乾燥装置で得られる粉体の平均粒子系は、5〜300μm、好ましくは10〜100μmの範囲に設定される。
これらの粉体は、更に造粒工程を経て平均粒径を大きくすることにより包材に充填しやすくなり、更に保温効果の持続性も向上する。造粒方法としては、試料が粉体の場合と湿潤品の場合で異なるが、転動造粒法、湿式押し出し造粒法、半乾式押し出し造粒法、ロール圧縮造粒法、打錠造粒法等の各種造粒方法が用いられるがマイクロカプセルの損傷のない装置、条件を選ぶ必要がある。粉体の形状は、球状、楕円形、立方体、直方体、円柱状、円錐状、桿状、正多面体、星形、筒型等如何なる形状でも良い。大きさは最大径で0.1〜20mmの粒状に成型されることが好ましい。マイクロカプセルを固形化する際に、結着剤、離型剤、酸化防止剤、VOC吸着剤、活性炭、光触媒、各種有機無機顔料、不燃材、難燃剤を練り込みまたは共存させることができる。
本発明の発熱材層と蓄熱材層を組み合わせてマイクロ波を照射すれば蓄熱材層が発熱し、その熱が蓄熱材層に伝導することにより蓄熱し長時間保温性が得られる。更に本発明では本保温材の少なくとも一面に断熱材を組み合わせることにより更に保温性を持続させることが可能となる。断熱材層として、ポリウレタンフォーム等の通常の断熱材が使用されるが、好ましくは断熱層にマイクロ波を照射された場合の発熱を防ぐため、分子構造として極性を有さない材料が好ましく、特にポリエチレンが好ましい例として挙げられる。各層は少なくとも一層あれば本発明の課題は達成されるが、それぞれが別々の層構成を取れば複数層組み合わせても良い。
本発明の保温材は、発熱材層、蓄熱材層、及びまたは断熱層からなるがそれぞれの素材を別々の包材に充填した後、各々を組み合わされて用いられる。包材の具体例としては、木綿、羊毛、絹等の天然繊維の他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、ナイロン、天然ゴム等の合成又は天然の素材が使用できる。包材の形状や大きさは特に限定されず、使用目的に適した形態に加工される。
マイクロ波は通常高周波とも呼ばれ、極性を有する液体に照射するとその分子運動が盛んになることにより加熱が可能となる。マイクロ波の最も一般的な照射装置は電子レンジでありマグネトロンから発射される高周波が一般に利用されている。本発明による粉体の加熱方法はマイクロ波照射に限定される訳ではなく、潜熱蓄熱材の融点以上の温度の熱湯中で蓄熱材が融解するまで加熱することによっても同様に蓄熱可能であるが、粉体を迅速に高温に加熱できる点でマイクロ波による加熱方法が好ましい。
蓄熱材層の調製例:pHを4.5に調整した5%のスチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100gの中に、潜熱蓄熱材として融点50℃のパラフィンワックス80gを激しく撹拌しながら添加し、平均粒子径が5.0μmになるまで乳化を行なった。次にメラミン5部と37%ホルムアルデヒド水溶液7.5部及び水15部を混合し、これをpH8に調整し、約80℃でメラミン−ホルマリン初期縮合物水溶液を調製した。この全量を上記乳化液に添加し70℃で2時間加熱撹拌を施してカプセル化反応を行なった後、この分散液のpHを9に調整してカプセル化を終了した。得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径は5.2μmであった。
このマイクロカプセル分散液をスプレードライング法で粉体化処理し、粉体100部と固形分濃度10%(w/w)のポリビニルアルコール水溶液20部をよく混合し押し出し式造粒機を用いて短径3mm、長径5mmの形状に押し出して、乾燥させて蓄熱材造粒物を得た。この造粒物500gを綿製の包材に充填して蓄熱材層を得た。
一方、市販の直径2mm、平衡水分12%のシリカゲル粒子500gを綿製の包材に充填して発熱材層を得た。また断熱材層として厚さ8mmの発泡ポリエチレン樹脂を断熱層として用いた。以上の断熱材層、発熱材層、蓄熱材層をこの順で重ね合わせた積層物をこれらと同様の綿製の包材で覆って保温材を得た。この保温材を高周波出力500Wの家庭用電子レンジで2分間加熱すると、発熱材層の内部は120℃で蓄熱材層内の温度は70℃であった。その後室温条件下で蓄熱材層内の温度が30℃まで下がるまでに約100分を要しその間カイロとして用いると極めて快適だった。また本保温材を強制的に10分間連続でマイクロ波を照射すると発熱材層内の温度は170℃まで上昇したが、蓄熱材層内の温度は100℃以上に上がることはなく異臭や造粒物の変化は特に見られなかった。
蓄熱材層の調製例:尿素5gとレゾルシン0.5gを溶解し、pHを3.0に調整した5%のエチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100g中に融点40℃のミリスチン酸ミリスチル80gを激しく撹拌しながら添加し平均粒子径が10μmになるまで乳化を行なった。次にこの乳化液に37%ホルムアルデヒド水溶液14gと水20gを添加し60℃で2時間加熱撹拌を施してカプセル化反応を行なった後、この分散液のpHを9に調整してカプセル化を終了した。得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径は10.2μmであった。
このマイクロカプセル分散液を遠心分離法で脱水し、固形分濃度80%のマイクロカプセルの半固形物を得た。この半固形物を実施例1と同様の押し出し式造粒機を用いて、短径1mm、長径2mmの形状に押しだして乾燥させて蓄熱材造粒物を得た。この造粒物500gを綿製の包材に充填して蓄熱材層を得た。この蓄熱材層を2枚作製し、その間に実施例1と同様の発熱材層を挟み込んで3枚構成とし、同様に全体を綿製の包材でくるんで保温材を得た。この保温材を高周波出力500Wの家庭用電子レンジで2分間加熱すると、発熱材層の内部は110℃で蓄熱材層内の温度は60℃であった。その後室温条件下で蓄熱材層内の温度が30℃まで下がるまでに約120分を要しその間カイロとして用いると極めて快適だった。また、強制的に10分間連続でマイクロ波を照射すると発熱材層内の温度は160℃まで上昇したが、蓄熱材層内の温度は100℃以上に上がることはなく異臭や造粒物の変化は特に見られなかった。
(比較例)
(比較例)
実施例1で作製した蓄熱材造粒物500gとシリカゲル500gを一緒によく混合し、一枚の包材に充填し保温材を得た。同様にこの保温材を高周波出力500Wの家庭用電子レンジで2分間加熱した後、保温材内部の温度を計測したところ80℃であった。その後室温条件下で30℃まで下がるのに60分を要した。また同様の電子レンジで強制的に10分間連続でマイクロ波を照射したところ内部温度は180℃まで上がり、シリカゲル、蓄熱材造粒物ともに茶色に変色し蓄熱材が焦げたような異臭が発生した。
本発明による保温材はマイクロ波を短時間照射することにより暖かさが長時間持続し、しかも安全性に優れるため様々な利用分野に応用できる。例えば肩や腰の痛みを解きほごす医療用温熱パッド、手袋、靴下、靴の中敷き及び乾燥剤、マフラー、衣服などの防寒具、家庭用、工業用及び農業用保温材、建築材料等に応用することが可能である。
Claims (5)
- マイクロ波を照射して加熱する保温材において、保温材の構成が、1.発熱材層、2.蓄熱材層、及び/または3.断熱層からなる保温材。
- 1.の発熱材層が、マイクロ波を照射して発熱する素材からなる請求項1記載の保温材。
- 1.の発熱材層が、相対湿度50%の雰囲気下での吸水率が1%〜60%の吸水性顔料からなる請求項1記載の保温材。
- 2.の蓄熱材層が蓄熱材を内包するマイクロカプセル固形物からなる請求項1記載の保温材。
- 3.の断熱層がポリオレフィン系材料である請求項1記載の保温材。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003292980A JP2005058496A (ja) | 2003-08-13 | 2003-08-13 | 保温材 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002146343A (ja) * | 2000-08-22 | 2002-05-22 | Mitsui Chemicals Inc | シーラント樹脂組成物、シーラントフィルムおよびその用途 |
-
2003
- 2003-08-13 JP JP2003292980A patent/JP2005058496A/ja active Pending
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JP2002146343A (ja) * | 2000-08-22 | 2002-05-22 | Mitsui Chemicals Inc | シーラント樹脂組成物、シーラントフィルムおよびその用途 |
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