JP2005056785A - マグネトロン - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構成で、長寿命化の図れる陰極部を備えたマグネトロンを提供することを目的とする。
【解決手段】メタンなどの炭化水素系ガス雰囲気中にて陰極基板10を400〜600℃に加熱し、熱CVD法にて陰極基板10表面にガスを反応させることで、陰極基板10表面に存在するニッケルあるいは鉄などを核として陰極基板10表面にグラファイトナノファイバー11を気相成長させた電子放出源を上下のエンドハット12で挟持して陰極部13が構成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子レンジなどの高周波加熱装置やレーダなどのパルス発生装置に用いられる電界放出型マグネトロンの改良に関するものである。
従来の熱電子放出型マグネトロンは、電子源として熱陰極が用いられている。熱陰極は、熱電子放出により電子を供給するものである。熱電子放出は、物質を1500〜2700K程度に加熱することで、陰極の伝導帯自由電子が熱エネルギーを得て表面ポテンシャル障壁を乗り超え空間に放出される機構である。
図6は、従来の熱電子放出型マグネトロンの一実施形態を示す軸方向断面図である。図において、複数枚の陽極ベイン1の中央部位に熱陰極2が配設されている。熱陰極2は、トリウム含有のタングステン線材3を略等間隔に螺旋状に形成し、両端部をエンドハット4により保持され形成されている。熱陰極2に電流を流すことで陰極を約2000Kに昇温し熱電子を放出させている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来の電界放出現象を利用した陰極を備えた電界放出型マグネトロンは、電極に金属箔を用いていることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
電界放出現象は、物質の表面付近に高電界(109V/m程度)を加えることにより、物質表面のポテンシャル障壁が薄くなり、電子の波動性により生ずるトンネル効果により、電子がポテンシャル障壁を乗り越えること無く物質の外へ放出する現象である。陰極の電圧が数kV〜数十kVの範囲にあるcm帯域のマグネトロンの場合、陰極表面の電界強度は107V/mであり、2ケタほど電界を強くしないと電界放出は生じない。よって、マグネトロン用陰極において電界放出をするには、電界放出する為の電極は針や箔など先端の曲率半径が小さい構造にし、電界集中効果を高める必要が有る。
図7は、従来の電界放出型マグネトロンの要部構成を示した軸方向の断面図である。図において、複数枚の陽極ベイン1の中央部位に陰極部5が配設されている。陰極部5は、金属薄膜を円板状に形成し電気腐食法により縁を鋭くした電界放出電極6と、酸化物膜7などを施した二次電子利得の高い陰極基板8を夫々複数組み合わせエンドハット9で挟持された構成である。陰極基板8の酸化物膜7は、電界放出電極6からの電子が突入した際、二次電子を多数放出させる為に配置されている。
特開2001−23531号公報 特許第2740793号公報
従来の熱電子放出型マグネトロンは、陰極が約2000Kになるため、陰極周辺の材料は高価な高融点材料を用いる必要があった。
従来の熱電子放出型マグネトロンは、マグネトロンの陽陰極間に印加する高圧電源の他に、陰極を加熱するためのヒーター電源が別途必要であった。
従来の熱電子放出型マグネトロンは、陰極に通電し、所望の動作温度になるまで時間がかかるという問題があった。
従来の熱電子放出型マグネトロンは、陰極の温度を上げる必要が有り、陰極において電力を消費してしまう問題があった。
従来の電界放出型のマグネトロンでは、電界放出電極である金属箔の縁を鋭くする加工が困難であった。また、安定した生産が困難であった。
複数個配置した電界放出電極にかかる電界強度は夫々異なる為、各電極からの放出電流が不揃いであった。その為、負担のかかる電極は特に消耗が激しく、電極の機能が先ず先に損なわれてしまい、これは陰極全体の寿命が短くなる要因であった。
一次電子放出源である電界放出電極と、電界放出された電子を増倍させるための二次電子放出源の電極を同軸上に多数配置する必要があるため、部品点数が多く、組み立てが困難であり、そして高コストであった。
上記課題を解決するために、本発明のマグネトロンは、陽極と陰極部が同軸状に配置され、陰極部の電子放出面にグラファイトナノファイバーが配置されて構成されている。
また、電子放出面の一部に二次電子利得の大きな酸化物膜が配置された陰極部を備えている。
また、陰極部が円柱または円筒状に形成されているのが好ましい。
また、陰極部が多角柱または多角筒状に形成されているのが好ましい。
また、本発明の別のマグネトロンは、粒径が数ミクロン〜数十ミクロンの酸化物と粉体のグラファイトナノファイバーを混合したものを陰極基板表面に塗布し電子放出源として構成している。
また、電子放出源の一部がフィラメントにて構成されているのが好ましい。
本発明によれば、以下に記載されるような効果を奏する。
陰極部にグラファイトナノファイバーや炭素繊維を用いることで、陰極の動作温度が低くなり、陰極周辺をステンレスなどの安価な金属にて構成することが可能となった。
陰極部にグラファイトナノファイバーや炭素繊維を用いることで、陰極を加熱するための電源が不要となりマグネトロン用電源およびマグネトロンの構成を大幅に簡略化することが可能となった。
陰極部にグラファイトナノファイバーや炭素繊維を用いることで、マグネトロンは電圧印加後の即時動作が可能となった。
陰極部にグラファイトナノファイバーや炭素繊維を用いることで、陰極の消費電力がゼロとなり、大幅な省エネルギーが可能となった。
陰極部にグラファイトナノファイバーや炭素繊維を用いることで、色々なCVD法を用い大量に安定して生産することが可能となった。
陰極部にグラファイトナノファイバーや炭素繊維を用いることで、膜全体から均一な電子放出させることが可能となり、長寿命となった。
以下、本発明のマグネトロンの一実施の形態について図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態における陰極表面にグラファイトナノファイバーを形成した陰極部を備えたマグネトロンの要部構成を示した軸方向断面図である。
本実施の形態では、メタンなどの炭化水素系ガス雰囲気中にて陰極基板10を400〜600℃に加熱し、熱CVD法にて陰極基板10表面にガスを反応させることで、陰極基板10表面に存在するニッケルあるいは鉄などを核として陰極基板10表面にグラファイトナノファイバー11を気相成長させた電子放出源を上下のエンドハット12で挟持して円柱状の陰極部13を構成した。
陰極を加熱するための電流経路が不要となったので、接続端子14は図6に示される従来の熱陰極の2本から、1本にした。
電子放出源としてグラファイトナノファイバーを用いることにより、その形状に起因して電界集中効果を高めることができる。よって、この陰極部の表面に通常使用する電圧(数kV〜数十kV)を印加して容易に強電界(109V/m)が得られ、陰極表面のポテンシャル障壁が薄くなって、電子の波動性からくるトンネル効果を生じ、加熱することなく電子を空間に放出させることができる。
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態におけるグラファイトナノファイバーを一次電子放出源に用い、酸化物膜を二次電子放出源に用いた冷陰極マグネトロンの要部構成を示した軸方向断面図である。
本実施の形態において、マグネトロンの陰極部15は、円筒状の陰極基板16の外周面表面に炭酸バリウムを熱CVD法にて蒸着、後に真空中にて800℃に加熱し酸化バリウムへと熱分解し、酸化物膜17を形成した二次電子放出源をグラファイトナノファイバー11を生成した円筒状の陰極基板10からなる一次電子放出源の軸方向両端に配置したものである。酸化物膜の中でも、酸化バリウム膜は二次電子放出比が4.8と大きく有利である。酸化ストロンチウムや、酸化カルシウムを用いても良い。
分割陽極は既存のマグネトロン(10分割、内径8mm)のものとし、上記の陰極部を陽極と同軸状に配置、マグネトロン真空管として組み立てた。軸方向に一対の磁石(図示せず)を配置し直流磁界18を0.35T生じさせつつ、陰極部10に−6.0kVの電圧を印加した。陽陰極間電圧のため生じる半径方向電界19によって、陰極部15のグラファイトナノファイバー11にて電界放出現象が生じ、電子が放出された。最初に電圧を印加した際は、グラファイトナノファイバー11の膜厚が均一では無い為、突出したグラファイトナノファイバーが異常放電するが、放電によって突出部が無くなる。何回かの異常放電の後、放出部が分散され、最終的にグラファイトナノファイバー膜ほぼ全ての面から均一に電子を放出するようになった。
電子は軸方向の直流磁界18によってサイクロトロン運動し酸化物膜17に突入し、多数の二次電子が放出され、陽陰極間に最大60mAの電流が流れ、2.45GHzにて最大250Wの発振を得られた。
(第3の実施の形態)
図3は、本発明の第3の実施の形態における平板状の陰極基板にグラファイトナノファイバーを成長させ、その陰極基板を複数個多角形柱になるよう配置し陰極部としたマグネトロンの要部構成を示した軸垂直方向断面図である。
本実施の形態において、マグネトロンの陰極部20は、平板状である陰極基板21にグラファイトナノファイバー11を成長し、8角形柱に組み合わせ陰極部としたものである。陰極基板21が平板状であるため、陰極基板21の表面にグラファイトナノファイバー11を形成し易く好ましい。
(第4の実施の形態)
図4は、本発明の第4の実施の形態における粉体グラファイトナノファイバーと酸化物スラリーを陰極表面に塗布し冷陰極とした陰極表面の拡大模式図である。
本実施の形態において、マグネトロンの陰極部は、陰極基板22の表面に粒径が数ミクロン〜数十ミクロンの炭酸塩とバインダーとを混合したスラリーと粉体のグラファイトナノファイバーとを混合したものを塗布し、加熱して炭酸塩を酸化物23にし、グラファイトナノファイバー11を一次電子放出の電子放出源に用い、陰極表面の酸化物23を二次電子放出の電子放出源としたものである。グラファイトナノファイバーのみを塗布した場合、グラファイトナノファイバーは陰極基板に横たえて固着される為、電界が集中せず電界放出電極として用いられないが、粒状の炭酸塩を用いた場合、炭酸塩の粒子がグラファイトナノファイバーを支えるため垂直に固着することが可能となり、この構造によって塗布のみで容易に電極を成膜することが可能である。
(第5の実施の形態)
図5は、本発明の第5の実施の形態におけるグラファイトナノファイバーとフィラメントを使用した陰極を備えたマグネトロンの要部構成を示した軸方向断面図である。
本実施の形態において、マグネトロンの陰極部は、陰極部24を部分的にトリウムタングステンなどからなるフィラメント25で構成し、フィラメント25を挟持するエンドハット26の一部分にグラファイトナノファイバー11を形成して構成したものである。このような構成により、マグネトロンの初期動作をグラファイトナノファイバー11から放出される電子にて行い、その後、電子の陰極再突入のエネルギーによって陰極部24の温度が上昇するとフィラメント25から熱電子が放出され、より大きなマグネトロン動作時の陽陰極間電流を得ることができる。
本発明は、電子レンジなどの高周波加熱装置や、レーダ、航空機、船舶、宇宙船、ロケット等に使用することが可能である。
本発明の第1の実施の形態における陰極表面にグラファイトナノファイバーを形成した陰極部を備えたマグネトロンの要部構成を示した軸方向断面図 本発明の第2の実施の形態におけるグラファイトナノファイバーを一次電子放出源に用い、酸化物膜を二次電子放出源に用いた冷陰極マグネトロンの軸方向断面図 本発明の第3の実施の形態における平板にグラファイトナノファイバーを成長させ、その平板を複数個多角形柱になるよう配置し陰極としたマグネトロンの軸垂直方向断面図 本発明の第4の実施の形態における粉体グラファイトナノファイバーと酸化物スラリーを陰極表面に塗布し冷陰極とした陰極表面の拡大模式図 本発明の第5の実施の形態におけるグラファイトナノファイバーとフィラメントを使用した陰極を備えたマグネトロンの要部構成を示した軸方向断面図 従来の熱電子放出型マグネトロンの要部構成を示した軸方向断面図 従来の電界放出型マグネトロンの要部構成を示した軸方向断面図
符号の説明
10,16,21,22 陰極基板
11 グラファイトナノファイバー
12,26 エンドハット
13,15,20,24 陰極部
14 接続端子
17 酸化物膜
18 直流磁界
19 半径方向電界
23 酸化物
25 フィラメント

Claims (7)

  1. 陽極と陰極部が同軸状に配置され、陰極部の電子放出面にグラファイトナノファイバーが配置されたことを特徴とするマグネトロン。
  2. 電子放出面の一部に二次電子利得の大きな酸化物膜が配置された陰極部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のマグネトロン。
  3. 陰極部が円柱または円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至2に記載のマグネトロン。
  4. 陰極部が多角柱または多角筒状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至2に記載のマグネトロン。
  5. 粒径が数ミクロン〜数十ミクロンの酸化物と粉体のグラファイトナノファイバーを混合したものを陰極基板表面に塗布し電子放出源としたことを特徴とする請求項2乃至4に記載のマグネトロン。
  6. 電子放出源の一部をフィラメントにて構成したことを特徴とする請求項2乃至5に記載のマグネトロン。
  7. 陰極からの接続端子を1本にした請求項1乃至6に記載のマグネトロン。
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