JP2005055543A - 高分子光多層膜及び高分子光多層膜の製造方法 - Google Patents
高分子光多層膜及び高分子光多層膜の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】レーザミラー、干渉フィルタ、偏光分離膜等の光学素子として有用な高分子薄膜が積層された高分子光多層膜及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ガラス等の基板101上に設けられた、ポリビニルカルバゾール等の高屈折率の高分子材料により形成された4分の1光学膜厚の高屈折率層(H層)と、セルロースアセテート等の低屈折率の高分子材料により形成された4分の1光学膜厚の低屈折率層(L層)とが交互に、例えば、合計29層積層された高分子多層膜102を有し、垂直方向からの入射光103に対して、5〜100%の範囲で任意の反射率(R0)の反射光104が得られる高分子多層膜ミラー100として有用な高分子光多層膜。高分子多層膜102はスピンコート法により形成される。
【選択図】 図1
【解決手段】ガラス等の基板101上に設けられた、ポリビニルカルバゾール等の高屈折率の高分子材料により形成された4分の1光学膜厚の高屈折率層(H層)と、セルロースアセテート等の低屈折率の高分子材料により形成された4分の1光学膜厚の低屈折率層(L層)とが交互に、例えば、合計29層積層された高分子多層膜102を有し、垂直方向からの入射光103に対して、5〜100%の範囲で任意の反射率(R0)の反射光104が得られる高分子多層膜ミラー100として有用な高分子光多層膜。高分子多層膜102はスピンコート法により形成される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子光多層膜に関し、より詳しくは、光学素子として有用な高分子光多層膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学素子として誘電体多層膜が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このような誘電体多層膜は、通常、光の波長(設計波長)をλとすると、基板上に、それぞれ4分の1光学膜厚(λ/4nD:nDは、ナトリウムD線光における屈折率である。)に調製された、TiO2、Ta2O5、ZrO2等の屈折率が高い金属化合物により形成された層と、MgF2、SiO2等の屈折率が低い金属化合物により形成された層とを交互に積層した積層体として作製される。
【0003】
このような誘電体多層膜は、例えば、垂直方向からの入射光に対して任意の反射率(R0)の反射光が得られる反射ミラーとして使用され、反射率(R0)は、下記一般式(1)により決定される。尚、一般式(1)中、nHは、屈折率が高い層の屈折率であり、nLは、屈折率が低い層の屈折率であり、nSは、基板の屈折率であり、qは、屈折率が高い層及び屈折率が低い層の周期層数である。
【0004】
【数1】
【0005】
【特許文献1】
特開平11−305014号公報
【特許文献2】
特開2003−107223号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような誘電体多層膜は、通常、TiO2等の屈折率が高い金属化合物からなる層とMgF2等の屈折率が低い金属化合物からなる層とを、真空蒸着あるいはスパッタ等により成膜・積層して積層体を設けることにより製造されている。このような真空蒸着等による成膜方法は、これらの金属化合物からなる薄膜の膜厚の制御が容易である反面、真空環境が必要である。また、薄膜の形成毎に蒸着源を交換するために、製造工程が煩雑であり、さらに、装置が大型化する等の問題がある。
【0007】
本発明は、このような、レーザ光学系等において使用される光学素子を開発する際に浮き彫りになった問題を解決すべくなされたものである。即ち、本発明の目的は、従来、TiO2やMgF2等の金属化合物により構成された誘電体多層膜に代わり、高分子材料を用いた高分子光多層膜を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、このような高分子光多層膜の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決すべく、本発明においては、屈折率の異なる高分子薄膜を交互に積層した構成を採用している。即ち、本発明が適用される高分子光多層膜は、基板と、この基板上に設けられ、屈折率の異なる少なくとも2種類の高分子薄膜が積層された高分子多層膜と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明が適用される高分子光多層膜において、高分子多層膜は、屈折率の差が0.05以上である少なくとも2種類の高分子薄膜が積層されたものであることを特徴とすれば、例えば、高分子多層膜ミラー、高分子多層干渉フィルター、高分子多層偏光分離膜、高分子多層反射防止膜等の光学素子として、多様な用途に応じることができる。
【0010】
特に、光透過性材料から形成された基板上に、高分子多層膜として、ポリビニルカルバゾールから形成される4分の1光学膜厚を有する高分子薄膜と、セルロールアセテートから形成される4分の1光学膜厚を有する高分子薄膜と、が交互に複数積層した多層膜ミラーであることを特徴とすれば、高反射率が得られる高分子多層膜ミラーとして使用することができる。
【0011】
次に、本発明が適用される高分子光多層膜は、光透過性材料からなる基板を形成する基板形成工程と、このような基板形成工程により形成された基板上に、湿式製膜法により、屈折率の異なる少なくとも2種類の高分子薄膜の積層体を形成する高分子多層膜形成工程と、を有する製造方法により製造することができる。
【0012】
さらに、湿式製膜法のなかでも、スピンコート法が好ましく、特に、高分子多層膜形成工程は、ガラス基板上に、ポリビニルカルバゾールのクロロベンゼン溶液と、セルロースアセテートの乳酸エチル溶液と、をスピンコート法により交互に所定の回数塗布する工程を含むことを特徴とすれば、均一かつ透明な多層膜を有する高分子光多層膜を調製することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施の形態について詳述する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施の形態が適用される高分子光多層膜の第1の実施形態である高分子多層膜ミラーを説明するための図である。図1に示された高分子多層膜ミラー100は、ガラス等の基板101と、このガラス等の基板101上に直接又は必要に応じて他の層を介して設けられ、屈折率が高い高分子材料により形成された高屈折率層(H層)と、屈折率が低い高分子材料により形成された低屈折率層(L層)とが交互に積層された高分子多層膜102とを有する。
【0014】
図1に示された高分子多層膜ミラー100は、垂直方向からの入射光103に対して、5〜100%の範囲で任意の反射率(R0)の反射光104が得られ、反射率(R0)は、従来の誘電体多層膜ミラーの場合と同様に、一般式(1)により決定される。高分子多層膜ミラー100の反射率(R0)は、H層又はL層を形成する高分子材料の屈折率、H層又はL層の膜厚、H層及びL層の合計層数により、適宜選択される。
【0015】
基板101は、光透過性を有する材料により形成されることが好ましい。また射出成形が容易である等成形性に優れることが好ましい。さらに、高分子多層膜ミラー100がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えることが好ましい。基板101を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ガラス等が挙げられる。これらの中でも、光学特性、成形性等の高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性等の点からはポリカーボネートが好ましい。また、耐薬品性、低吸湿性等の点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。また、高速応答性等の点からは、ガラス基板が好ましい。
【0016】
基板101上に設けられた高分子多層膜102は、屈折率が高い高分子材料により形成された高屈折率層(H層)と、屈折率が低い高分子材料により形成された低屈折率層(L層)とが交互に積層され、その構造は、H/[L/H]nで表される。ここで、nは、2以上の整数である。即ち、交互に積層されたH層及びL層からなる高分子多層膜102は、高分子材料からなるH層及びL層が、少なくとも5層積層され、通常、11層以上、好ましくは、29層以上が積層された高分子材料の薄膜からなる積層体である。また、高分子多層膜102の、基板101に最も近い層及び基板101に最も遠い層は、いずれも屈折率が高い高分子材料により形成されたH層であり、そのため、高分子多層膜102を構成するH層及びL層の合計層数は、常に奇数である。
【0017】
高分子多層膜102を構成するH層及びL層は、入射光103の波長λの4分の1の厚さである4分の1光学膜厚に調製され、それぞれ、λ/4nPH、λ/4nPLの膜厚を有している。ここで、nPHは屈折率が高い高分子材料のナトリウムD線光における屈折率であり、nPLは屈折率が低い高分子材料のナトリウムD線光における屈折率である。H層及びL層の膜厚は、使用する高分子材料のそれぞれの屈折率(nPH及びnPL)、反射させたい光の波長(設計波長)、反射率(R0)により適宜選択され特に限定されないが、通常、0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上である。但し、H層及びL層の膜厚は、通常、0.5μm以下、好ましくは0.2μm以下である。
【0018】
高分子多層膜102は、屈折率が高い高分子材料により形成された屈折率が高いH層と、屈折率が低い高分子材料により形成された屈折率が低いL層とが、交互に積層された構成を有している。ここで、屈折率が高い又は屈折率が低いとは、H層又はL層をそれぞれ形成する高分子材料の屈折率が、H層とL層との関係において相対的に高い、又は、相対的に低いことを言う。具体的には、H層を形成する高分子材料のナトリウムD線光における屈折率nPHと、L層を形成する高分子材料のナトリウムD線光における屈折率nPLとの差Δn(nPH−nP L)が、通常、0.05以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは、0.2以上である関係を言う。
【0019】
高分子多層膜102を構成するH層及びL層を形成するために使用する高分子材料は、入射光103に対して光透過性であり、さらに、低光散乱性、低光吸収性を有するものであれば特に限定されない。また、H層及びL層を形成するために使用する高分子材料の屈折率は、設計波長及び反射率(R0)により適宜選択され特に限定されないが、通常、1.2以上2.0以下である。
【0020】
高分子多層膜102のH層及びL層を形成する高分子材料は、H層を形成する高分子材料の屈折率nPHとL層を形成する高分子材料の屈折率nPLとの差Δnが、前述した一定の数値以上になる2種の高分子材料の組み合わせを適宜選択して使用することができる。このような高分子多層膜102を構成するH層及びL層を形成するために使用する高分子材料の具体例を、屈折率と共に表1乃至表3に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
さらに、具体例を表4乃至表17に示す。
【0025】
【表4】
【0026】
【表5】
【0027】
【表6】
【0028】
【表7】
【0029】
【表8】
【0030】
【表9】
【0031】
【表10】
【0032】
【表11】
【0033】
【表12】
【0034】
【表13】
【0035】
【表14】
【0036】
【表15】
【0037】
【表16】
【0038】
【表17】
【0039】
表1乃至表17に示した高分子材料の中でも、高分子多層膜102を構成するH層を形成するために使用する高分子材料としては、屈折率nPHが1.6以上のものが好ましく、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(ビニルナフタレン)等が挙げられる。また、高分子多層膜102を構成するL層を形成するために使用する高分子材料としては、屈折率nPLが1.5以下のものが好ましく、例えば、セルロースアセテート、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。尚、高分子多層膜102を形成するために使用するこのような高分子材料の分子量は、後述する湿式製膜法により均一な高分子薄膜が形成可能な程度であれば特に限定されないが、通常、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは、5,000〜500,000である。
【0040】
高分子多層膜102の製造方法としては特に限定されないが、通常、H層又はL層を形成するための高分子材料の溶液を、例えば、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の湿式製膜法により、基板101上に交互に塗布して薄膜を形成する方法が挙げられる。湿式製膜法の中でも、量産性、コスト面からはスピンコート法が好ましい。スピンコート法による成膜の場合、回転数は10〜15,000rpmが好ましく、スピンコートの後、加熱又は溶媒蒸気による処理を行っても良い。
【0041】
湿式製膜法によりH層又はL層を形成する場合に使用する高分子材料の溶液を調製するための溶媒としては、それぞれの層を形成するための高分子材料を溶解し基板101を侵さない溶媒であれば特に限定されず、適宜選択される。但し、例えば、H層を形成する高分子材料を溶解する溶媒は、L層を形成する高分子材料にとって非溶媒であり、一方、L層を形成する高分子材料を溶解する溶媒は、H層を形成する高分子材料にとって非溶媒であることが必要である。
【0042】
湿式製膜法によりH層又はL層を形成する場合に使用する高分子材料の溶液を調製するための溶媒の具体例としては、例えば、ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロオクタン、トリフルオロトルエン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、ヘキサフルオロ(m−キシレン)、フルオロエタン、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、トリフルオロ酢酸、トリフルオロエタノール、テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等の含フッ素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒が挙げられる。
【0043】
さらに、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;クロロフォルム、トリクロロエタノール、メチレンクロライド、クロロベンゼン、テトラクロロエタン等の含塩素系溶媒;酢酸エチル等のカルボン酸エステル系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒;ピリジン、ピペラジン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)等の含窒素系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド系溶媒;蟻酸、酢酸等の有機酸系溶媒;グリコール、水等が挙げられる。
【0044】
H層又はL層を形成する高分子材料と、この高分子材料の溶媒又は非溶媒の例を表1乃至表3に示す。H層又はL層を形成するための高分子材料の溶液の濃度は、H層又はL層の膜厚等により適宜選択され特に限定されないが、通常、0.5g/l〜100g/l、好ましくは、1g/l〜50g/lである。
【0045】
尚、スピンコート法等の湿式性膜法により、例えば、H層の上層にL層を形成する場合(又は、L層の上層にH層を形成する場合)、上層のL層を形成する高分子材料を溶解する溶媒は、下層のH層を形成する高分子材料にとって非溶媒であり(又は、上層のH層を形成する高分子材料を溶解する溶媒は、下層のL層を形成する高分子材料にとって非溶媒であり)、且つ、下層のH層に浸透し難い性質を有するもの(又は、下層のL層に浸透し難い性質を有するもの)であることが好ましい。上層を形成する高分子材料を溶解する溶媒が、隣接する下層に浸透し易い性質を有するものである場合は、上層を形成するために使用する溶液の溶媒が隣接する下層に浸透し、その下側にさらに形成されている層を溶解し、その結果、設計波長に対する反射率(R0)を大幅に低下させるおそれがある。このような形成された下層(H層又は、L層)に浸透し難い性質を有する溶媒は、使用する高分子材料に応じて適宜選択され特に限定されないが、通常、分子量又は分子サイズの大きい溶媒、粘度が高い溶媒を選択することが好ましい。
【0046】
次に、本実施の形態が適用される高分子多層膜ミラー100の製造方法について説明する。先ず、ガラス又は光透過性樹脂等の光透過性材料からなる基板101を形成する。次に、屈折率の高い高分子材料を溶媒に溶解させた塗布液を基板101の表面にスピンコート等により塗布し、第1のH層を成膜する。第1のH層を成膜した後、屈折率の低い高分子材料を溶媒に溶解させた塗布液を第1のH層の表面にスピンコート等により塗布し、第1のL層を成膜する。第1のL層を成膜した後、屈折率の高い高分子材料を溶媒に溶解させた塗布液を第1のL層の表面にスピンコート等により塗布し、第2のH層を成膜する。次に、第2のH層を成膜した後、屈折率の低い高分子材料を溶媒に溶解させた塗布液を第2のH層の表面にスピンコート等により塗布し、第2のL層を成膜する。このように、スピンコート等の塗布方法により、所定の周期層数に達するまで基板101上にH層とL層とを交互に成膜する操作を繰り返し、最後に、H層を成膜して高分子多層膜ミラー100の製造が完了する。
【0047】
H層又はL層を形成するための塗布液に使用した溶媒を除去するために、スピンコート等により塗布した後加熱して各層を成膜する。この場合、加熱する温度は、使用する溶媒に応じて適宜選択され特に限定されないが、通常、60℃〜100℃程度である。
【0048】
(第2の実施形態)
図2は、本実施の形態が適用される高分子光多層膜の第2の実施形態である高分子多層干渉フィルタを説明するための図である。図2に示された高分子多層干渉フィルタ200は、ガラス等の光透過性材料からなる基板201と、このガラス等の基板201上に設けられ、屈折率が高い高分子材料により形成された高屈折率層(H層)と、屈折率が低い高分子材料により形成された低屈折率層(L層)とが交互に積層され、中間に設けられたスペーサ202を介して、高屈折率層(H層)と低屈折率層(L層)とが交互に積層された高分子多層膜と、を有する。図1に示された第1の実施形態と同様に、高屈折率層(H層)及び低屈折率層(L層)の厚さは、それぞれ、入射光203の波長λの4分の1の厚さであるλ/4光学膜厚に調製されている。またスペーサ202の厚さは、入射光203の波長λの2分の1の厚さであるλ/2光学膜厚の整数倍の厚さに調製されている。
【0049】
図2に示された高分子多層干渉フィルタ200は、垂直方向からの入射光203に対して、特定の波長の光について高い透過率で透過光204が得られ、その他の波長域の光を実質的に透過しない干渉フィルタとして作用する。高分子多層干渉フィルタ200としての性能は、H層又はL層を形成する高分子材料の屈折率、H層又はL層の膜厚、H層及びL層の合計層数により、適宜選択される。
【0050】
(第3の実施形態)
図3は、本実施の形態が適用される高分子光多層膜の第3の実施形態である高分子多層偏光分離膜を説明するための図である。図3に示された高分子多層偏光分離膜300は、ガラス等の光透過性材料からなる基板301と、このガラス等の基板301上に設けられ、屈折率が高い高分子材料により形成された高屈折率層(H層)と、屈折率が低い高分子材料により形成された低屈折率層(L層)とが交互に積層された高分子多層膜と、を有する。高屈折率層(H層)及び低屈折率層(L層)の厚さは、基板301に接して設けられたH層及び最上層に形成されたH層を除き、それぞれ、λ/4光学膜厚に調製されている。また、基板301に接して設けられたH層及び最上層に形成されたH層の厚さは、それぞれ、λ/8光学膜厚に調製されている。
【0051】
図3に示された高分子多層偏光分離膜300は、例えば、入射角60度方向からの(P偏光,S偏光)303の入射光に対して、P偏光について高い透過率で透過光304が得られ、S偏光については透過しない偏光分離膜として作用する。高分子多層偏光分離膜300としての性能は、H層又はL層を形成する高分子材料の屈折率、H層又はL層の膜厚、H層及びL層の合計層数により、適宜選択される。
【0052】
(第4の実施形態)
図4は、本実施の形態が適用される高分子光多層膜の第4の実施形態である高分子多層反射防止膜を説明するための図である。図4に示された高分子多層反射防止膜400は、ガラス等の光透過性材料からなる基板401と、このガラス等の基板401上に設けられ、屈折率が高い高分子材料により形成された高屈折率層(H層)と、中間の屈折率を有する高分子材料により形成された中屈折率層(M層)と、屈折率が低い高分子材料により形成された低屈折率層(L層)とが順番に積層された高分子多層膜と、を有する。H層の厚さは、3λ/4光学膜厚に調製され、M層の厚さは、λ/2光学膜厚に調製され、L層の厚さは、λ/4光学膜厚に調製されている。
【0053】
図4に示された高分子多層反射防止膜400は、例えば、垂直方向からの入射光403に対して、反射率が実質的に0%である反射防止膜として作用する。高分子多層反射防止膜400としての性能は、H層、M層及びL層を形成する高分子材料の屈折率、各層の膜厚により、適宜選択される。
【0054】
以上、第1実施形態〜第4実施形態について説明したが、本実施の形態は上記の態様に限定されるものではなく、種々変形することができる。例えば、基板101の表面に、適当な表面処理を施すことにより、第1のH層との密着性を向上させることができる。表面処理方法としては、例えば、親水性又は疎水性処理、プラズマ処理等が挙げられる。また、高分子多層膜102の最上層の上に、さらに適当な保護膜を形成し、高分子多層膜102の強度を増大させることも可能である。保護膜としては、例えば、メタクリレート樹脂等の紫外線硬化性樹脂の前駆体に紫外線を照射することにより形成した架橋硬化膜、有機ポリシロキサンを主成分とするゾルゲルガラス膜等が挙げられる。
【0055】
さらに、基板101上に金属反射膜を設け、その上に高分子多層膜102を形成することができる。本実施の形態が適用される高分子光多層膜は、例えば、レーザ共振器ミラー、Qスイッチングミラー等の一般的な光学素子、光学多層膜製品等に適用することができる。
【0056】
【実施例】
以下に、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本実施の形態は実施例に限定されるものではない。
(塗布溶液の調製)
H層又はL層を形成する高分子材料を所定の溶媒中において90分間超音波処理を施し、次に、48時間スターラーにより攪拌し、所定の濃度の塗布溶液を調製した。
【0057】
(膜厚測定)
予め、所定の濃度に調製した、H層又はL層を形成する高分子材料の塗布溶液中に、高分子多層膜ミラーに使用する基板を半分浸漬した後乾燥し、基板表面に形成された高分子材料による薄膜を、ダイヤモンド針を用いてスキャンする触針法により、H層又はL層の膜厚を測定した。
【0058】
(実施例1〜4)(高分子多層膜ミラー)
H層を形成する高分子材料としてポリビニルカルバゾール(PVK:実施例1〜4)を使用し、L層を形成する高分子材料としてポリアクリル酸(PAA:実施例1)と、セルロースアセテート(CA:実施例2〜4)とを使用し、厚さ1mのパイレックス製ガラス基板(屈折率1.474)上に、予め調製した塗布液を、表1に示した条件でスピンコート法によりそれぞれ所定の回数を塗布し、λ/4光学膜厚のH層及びL層が交互に積層された高分子多層膜ミラーを調製した。PVK、PAA及びCAの屈折率、塗布液の溶媒、溶液濃度、H層及びL層のそれぞれの膜厚、H層及びL層の合計の層数、屈折率の差Δn、設計波長、反射率を表18に示す。
【0059】
【表18】
【0060】
表18の結果から、屈折率が高いPVKにより形成された高屈折率層(H層)と、屈折率が低いPAA(実施例1)又はCA(実施例2〜4)により形成された低屈折率層(L層)とが、交互に積層された高分子多層膜ミラーは、設計波長に対して高い反射率が得られることが分かる。また、L層を形成する際に、CA/酢酸溶液を塗布液した場合(実施例2)と比較して、CA/乳酸エチル溶液を塗布液した場合(実施例3)のほうが、屈折率が飛躍的に増大することが分かる。これは、CAの溶媒として用いた乳酸エチルの分子サイズが酢酸より大きく、PVKにより形成されたH層に浸透し難いことによるものと考えられる。さらに、設計波長600nmの場合にも90%の反射率が得られ(実施例4)、可視光反射ミラーとしても有用であることが分かる。
【0061】
(実施例5)(高分子多層干渉フィルタ)
図2に示した構造と同様な構造を有する高分子多層干渉フィルタを以下の通り調製した。即ち、ガラス基板(屈折率=1.5)上に、H層として、ポリビニルカルバゾール(n=1.683)のクロロベンゼン溶液(50g/l)を、L層として、セルロースアセテート(n=1.475)の乳酸エチル溶液(42g/l)を、スピンコート法により交互に塗布し、合計25層を積層した。次に、この合計25層を積層した上層に、セルロースアセテートの乳酸エチル溶液(72g/l)をスピンコート法により塗布してスペーサを形成した。続いて、このスペーサの上層に、同様に、H層及びL層を交互に塗布して25層を積層した。各層はそれぞれ、H層は157.8nm(λ/4光学膜厚)、L層は180.3nm(λ/4光学膜厚)、スペーサは360.6nm(λ/2光学膜厚)の厚さを有する。
【0062】
このように調製した高分子多層干渉フィルタについて、波長1000〜1100nmの範囲で透過率を測定した。その結果、1064nmを中心としたシャープな透過率曲線が得られ、1064nmにおいて90%の透過率、半値幅4nmとなった。その他の波長域では3%以下の透過率であった。
【0063】
(実施例6)(高分子多層偏光分離膜)
図3に示した構造と同様な構造を有する高分子多層偏光分離膜を以下の通り調製した。即ち、ガラス基板(屈折率=1.5)上に、スピンコート法により、第1層目としてポリビニルカルバゾール(屈折率1.683)のクロロベンゼン溶液(27g/l)を塗布し、厚さ90.6nm(λ/8光学膜厚)のH層を形成した。次に、このH層上に、セルロースアセテート(屈折率1.475)の乳酸エチル溶液(44g/l)を塗布し、厚さ206.7nm(λ/4光学膜厚)のL層を形成し、続いて、このL層上に、ポリビニルカルバゾールのクロロベンゼン溶液(53g/l)を塗布し、厚さ181.2nm(λ/4光学膜厚)のH層を形成した。さらに、この上に、L層及びH層を交互に形成し、合計53層の高分子薄膜の積層体形成し、最上層に、ポリビニルカルバゾール(屈折率1.683)のクロロベンゼン溶液(27g/l)を塗布し、厚さ90.6nm(λ/8光学膜厚)のH層を形成した。
【0064】
このように調製した高分子多層偏光分離膜に、入射角60度方向から、1064nmのYAGレーザーを入射させたところ、P偏光の透過率は99.6%であり、S偏光の透過率は0.3%であった。
【0065】
(実施例7)(高分子多層反射防止膜)
図4に示した構造と同様な構造の高分子多層反射防止膜を、以下の通り調製した。即ち、ガラス基板(屈折率=1.5)上に、H層として、セルロース(n=1.54)のトリフルオロ酢酸溶液(80g/l)を、M層として、ポリビニルカルバゾール(n=1.683)のクロロベンゼン溶液(52g/l)を、L層として、テフロンAF(デュポン社製フッ素樹脂 n=1.31)のヘキサフルオロベンゼン溶液(35g/l)を、スピンコート法により順番に塗布し、それぞれ、H層292.2(nm)(3λ/4光学膜厚)、M層178.3(nm)(λ/2光学膜厚)、L層114.5(nm)(λ/4光学膜厚)の厚さ多層膜構造を調製した。このように調製した高分子多層反射防止膜は、可視域波長400〜800nmの範囲で測定した結果、0.3%以下の反射率であった。
【0066】
(実施例8)(高分子多層反射防止膜)
実施例7と同様に高分子多層反射防止膜を、以下のとおり調製した。即ち、ガラス基板(屈折率=1.5)上に、H層として、ポリN−メチルメタクリルアミド(n=1.54)のエチレングリコール溶液(60g/l)を、M層として、ポリビニルカルバゾール(n=1.683)のクロロベンゼン溶液(52g/l)を、L層として、サイトップ(n=1.34)のパーフルオロ−2−ブチルテトラハイドロフラン溶液(20g/l)を、それぞれスピンコート法により順番に塗布し、それぞれ、H層292.2nm(3λ/4光学膜厚)、M層178.3nm(λ/2光学膜厚)、L層114.5nm(λ/4光学膜厚)の厚さの多層膜構造を調製した。このように調製した高分子多層反射防止膜は、可視域波長400〜800nmの範囲で測定した結果、0.5%以下の反射率であった。
【0067】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、高分子材料による高分子光多層膜が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】高分子光多層膜の第1の実施形態である高分子多層膜ミラーを説明するための図である。
【図2】高分子光多層膜の第2の実施形態である高分子多層干渉フィルタを説明するための図である。
【図3】高分子光多層膜の第3の実施形態である高分子多層偏光分離膜を説明するための図である。
【図4】高分子光多層膜の第4の実施形態である高分子多層反射防止膜を説明するための図である。
【符号の説明】
100…高分子多層膜ミラー、101,201,301,401…基板、102…高分子多層膜、103,203,403…入射光、104…反射光、200…高分子多層干渉フィルタ、202…スペーサ、204,304…透過光、300…高分子多層偏光分離膜、303…P偏光,S偏光、400…高分子多層反射防止膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子光多層膜に関し、より詳しくは、光学素子として有用な高分子光多層膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学素子として誘電体多層膜が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このような誘電体多層膜は、通常、光の波長(設計波長)をλとすると、基板上に、それぞれ4分の1光学膜厚(λ/4nD:nDは、ナトリウムD線光における屈折率である。)に調製された、TiO2、Ta2O5、ZrO2等の屈折率が高い金属化合物により形成された層と、MgF2、SiO2等の屈折率が低い金属化合物により形成された層とを交互に積層した積層体として作製される。
【0003】
このような誘電体多層膜は、例えば、垂直方向からの入射光に対して任意の反射率(R0)の反射光が得られる反射ミラーとして使用され、反射率(R0)は、下記一般式(1)により決定される。尚、一般式(1)中、nHは、屈折率が高い層の屈折率であり、nLは、屈折率が低い層の屈折率であり、nSは、基板の屈折率であり、qは、屈折率が高い層及び屈折率が低い層の周期層数である。
【0004】
【数1】
【0005】
【特許文献1】
特開平11−305014号公報
【特許文献2】
特開2003−107223号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような誘電体多層膜は、通常、TiO2等の屈折率が高い金属化合物からなる層とMgF2等の屈折率が低い金属化合物からなる層とを、真空蒸着あるいはスパッタ等により成膜・積層して積層体を設けることにより製造されている。このような真空蒸着等による成膜方法は、これらの金属化合物からなる薄膜の膜厚の制御が容易である反面、真空環境が必要である。また、薄膜の形成毎に蒸着源を交換するために、製造工程が煩雑であり、さらに、装置が大型化する等の問題がある。
【0007】
本発明は、このような、レーザ光学系等において使用される光学素子を開発する際に浮き彫りになった問題を解決すべくなされたものである。即ち、本発明の目的は、従来、TiO2やMgF2等の金属化合物により構成された誘電体多層膜に代わり、高分子材料を用いた高分子光多層膜を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、このような高分子光多層膜の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決すべく、本発明においては、屈折率の異なる高分子薄膜を交互に積層した構成を採用している。即ち、本発明が適用される高分子光多層膜は、基板と、この基板上に設けられ、屈折率の異なる少なくとも2種類の高分子薄膜が積層された高分子多層膜と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明が適用される高分子光多層膜において、高分子多層膜は、屈折率の差が0.05以上である少なくとも2種類の高分子薄膜が積層されたものであることを特徴とすれば、例えば、高分子多層膜ミラー、高分子多層干渉フィルター、高分子多層偏光分離膜、高分子多層反射防止膜等の光学素子として、多様な用途に応じることができる。
【0010】
特に、光透過性材料から形成された基板上に、高分子多層膜として、ポリビニルカルバゾールから形成される4分の1光学膜厚を有する高分子薄膜と、セルロールアセテートから形成される4分の1光学膜厚を有する高分子薄膜と、が交互に複数積層した多層膜ミラーであることを特徴とすれば、高反射率が得られる高分子多層膜ミラーとして使用することができる。
【0011】
次に、本発明が適用される高分子光多層膜は、光透過性材料からなる基板を形成する基板形成工程と、このような基板形成工程により形成された基板上に、湿式製膜法により、屈折率の異なる少なくとも2種類の高分子薄膜の積層体を形成する高分子多層膜形成工程と、を有する製造方法により製造することができる。
【0012】
さらに、湿式製膜法のなかでも、スピンコート法が好ましく、特に、高分子多層膜形成工程は、ガラス基板上に、ポリビニルカルバゾールのクロロベンゼン溶液と、セルロースアセテートの乳酸エチル溶液と、をスピンコート法により交互に所定の回数塗布する工程を含むことを特徴とすれば、均一かつ透明な多層膜を有する高分子光多層膜を調製することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施の形態について詳述する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施の形態が適用される高分子光多層膜の第1の実施形態である高分子多層膜ミラーを説明するための図である。図1に示された高分子多層膜ミラー100は、ガラス等の基板101と、このガラス等の基板101上に直接又は必要に応じて他の層を介して設けられ、屈折率が高い高分子材料により形成された高屈折率層(H層)と、屈折率が低い高分子材料により形成された低屈折率層(L層)とが交互に積層された高分子多層膜102とを有する。
【0014】
図1に示された高分子多層膜ミラー100は、垂直方向からの入射光103に対して、5〜100%の範囲で任意の反射率(R0)の反射光104が得られ、反射率(R0)は、従来の誘電体多層膜ミラーの場合と同様に、一般式(1)により決定される。高分子多層膜ミラー100の反射率(R0)は、H層又はL層を形成する高分子材料の屈折率、H層又はL層の膜厚、H層及びL層の合計層数により、適宜選択される。
【0015】
基板101は、光透過性を有する材料により形成されることが好ましい。また射出成形が容易である等成形性に優れることが好ましい。さらに、高分子多層膜ミラー100がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えることが好ましい。基板101を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ガラス等が挙げられる。これらの中でも、光学特性、成形性等の高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性等の点からはポリカーボネートが好ましい。また、耐薬品性、低吸湿性等の点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。また、高速応答性等の点からは、ガラス基板が好ましい。
【0016】
基板101上に設けられた高分子多層膜102は、屈折率が高い高分子材料により形成された高屈折率層(H層)と、屈折率が低い高分子材料により形成された低屈折率層(L層)とが交互に積層され、その構造は、H/[L/H]nで表される。ここで、nは、2以上の整数である。即ち、交互に積層されたH層及びL層からなる高分子多層膜102は、高分子材料からなるH層及びL層が、少なくとも5層積層され、通常、11層以上、好ましくは、29層以上が積層された高分子材料の薄膜からなる積層体である。また、高分子多層膜102の、基板101に最も近い層及び基板101に最も遠い層は、いずれも屈折率が高い高分子材料により形成されたH層であり、そのため、高分子多層膜102を構成するH層及びL層の合計層数は、常に奇数である。
【0017】
高分子多層膜102を構成するH層及びL層は、入射光103の波長λの4分の1の厚さである4分の1光学膜厚に調製され、それぞれ、λ/4nPH、λ/4nPLの膜厚を有している。ここで、nPHは屈折率が高い高分子材料のナトリウムD線光における屈折率であり、nPLは屈折率が低い高分子材料のナトリウムD線光における屈折率である。H層及びL層の膜厚は、使用する高分子材料のそれぞれの屈折率(nPH及びnPL)、反射させたい光の波長(設計波長)、反射率(R0)により適宜選択され特に限定されないが、通常、0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上である。但し、H層及びL層の膜厚は、通常、0.5μm以下、好ましくは0.2μm以下である。
【0018】
高分子多層膜102は、屈折率が高い高分子材料により形成された屈折率が高いH層と、屈折率が低い高分子材料により形成された屈折率が低いL層とが、交互に積層された構成を有している。ここで、屈折率が高い又は屈折率が低いとは、H層又はL層をそれぞれ形成する高分子材料の屈折率が、H層とL層との関係において相対的に高い、又は、相対的に低いことを言う。具体的には、H層を形成する高分子材料のナトリウムD線光における屈折率nPHと、L層を形成する高分子材料のナトリウムD線光における屈折率nPLとの差Δn(nPH−nP L)が、通常、0.05以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは、0.2以上である関係を言う。
【0019】
高分子多層膜102を構成するH層及びL層を形成するために使用する高分子材料は、入射光103に対して光透過性であり、さらに、低光散乱性、低光吸収性を有するものであれば特に限定されない。また、H層及びL層を形成するために使用する高分子材料の屈折率は、設計波長及び反射率(R0)により適宜選択され特に限定されないが、通常、1.2以上2.0以下である。
【0020】
高分子多層膜102のH層及びL層を形成する高分子材料は、H層を形成する高分子材料の屈折率nPHとL層を形成する高分子材料の屈折率nPLとの差Δnが、前述した一定の数値以上になる2種の高分子材料の組み合わせを適宜選択して使用することができる。このような高分子多層膜102を構成するH層及びL層を形成するために使用する高分子材料の具体例を、屈折率と共に表1乃至表3に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
さらに、具体例を表4乃至表17に示す。
【0025】
【表4】
【0026】
【表5】
【0027】
【表6】
【0028】
【表7】
【0029】
【表8】
【0030】
【表9】
【0031】
【表10】
【0032】
【表11】
【0033】
【表12】
【0034】
【表13】
【0035】
【表14】
【0036】
【表15】
【0037】
【表16】
【0038】
【表17】
【0039】
表1乃至表17に示した高分子材料の中でも、高分子多層膜102を構成するH層を形成するために使用する高分子材料としては、屈折率nPHが1.6以上のものが好ましく、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(ビニルナフタレン)等が挙げられる。また、高分子多層膜102を構成するL層を形成するために使用する高分子材料としては、屈折率nPLが1.5以下のものが好ましく、例えば、セルロースアセテート、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。尚、高分子多層膜102を形成するために使用するこのような高分子材料の分子量は、後述する湿式製膜法により均一な高分子薄膜が形成可能な程度であれば特に限定されないが、通常、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは、5,000〜500,000である。
【0040】
高分子多層膜102の製造方法としては特に限定されないが、通常、H層又はL層を形成するための高分子材料の溶液を、例えば、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の湿式製膜法により、基板101上に交互に塗布して薄膜を形成する方法が挙げられる。湿式製膜法の中でも、量産性、コスト面からはスピンコート法が好ましい。スピンコート法による成膜の場合、回転数は10〜15,000rpmが好ましく、スピンコートの後、加熱又は溶媒蒸気による処理を行っても良い。
【0041】
湿式製膜法によりH層又はL層を形成する場合に使用する高分子材料の溶液を調製するための溶媒としては、それぞれの層を形成するための高分子材料を溶解し基板101を侵さない溶媒であれば特に限定されず、適宜選択される。但し、例えば、H層を形成する高分子材料を溶解する溶媒は、L層を形成する高分子材料にとって非溶媒であり、一方、L層を形成する高分子材料を溶解する溶媒は、H層を形成する高分子材料にとって非溶媒であることが必要である。
【0042】
湿式製膜法によりH層又はL層を形成する場合に使用する高分子材料の溶液を調製するための溶媒の具体例としては、例えば、ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロオクタン、トリフルオロトルエン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、ヘキサフルオロ(m−キシレン)、フルオロエタン、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、トリフルオロ酢酸、トリフルオロエタノール、テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等の含フッ素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒が挙げられる。
【0043】
さらに、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;クロロフォルム、トリクロロエタノール、メチレンクロライド、クロロベンゼン、テトラクロロエタン等の含塩素系溶媒;酢酸エチル等のカルボン酸エステル系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒;ピリジン、ピペラジン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)等の含窒素系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド系溶媒;蟻酸、酢酸等の有機酸系溶媒;グリコール、水等が挙げられる。
【0044】
H層又はL層を形成する高分子材料と、この高分子材料の溶媒又は非溶媒の例を表1乃至表3に示す。H層又はL層を形成するための高分子材料の溶液の濃度は、H層又はL層の膜厚等により適宜選択され特に限定されないが、通常、0.5g/l〜100g/l、好ましくは、1g/l〜50g/lである。
【0045】
尚、スピンコート法等の湿式性膜法により、例えば、H層の上層にL層を形成する場合(又は、L層の上層にH層を形成する場合)、上層のL層を形成する高分子材料を溶解する溶媒は、下層のH層を形成する高分子材料にとって非溶媒であり(又は、上層のH層を形成する高分子材料を溶解する溶媒は、下層のL層を形成する高分子材料にとって非溶媒であり)、且つ、下層のH層に浸透し難い性質を有するもの(又は、下層のL層に浸透し難い性質を有するもの)であることが好ましい。上層を形成する高分子材料を溶解する溶媒が、隣接する下層に浸透し易い性質を有するものである場合は、上層を形成するために使用する溶液の溶媒が隣接する下層に浸透し、その下側にさらに形成されている層を溶解し、その結果、設計波長に対する反射率(R0)を大幅に低下させるおそれがある。このような形成された下層(H層又は、L層)に浸透し難い性質を有する溶媒は、使用する高分子材料に応じて適宜選択され特に限定されないが、通常、分子量又は分子サイズの大きい溶媒、粘度が高い溶媒を選択することが好ましい。
【0046】
次に、本実施の形態が適用される高分子多層膜ミラー100の製造方法について説明する。先ず、ガラス又は光透過性樹脂等の光透過性材料からなる基板101を形成する。次に、屈折率の高い高分子材料を溶媒に溶解させた塗布液を基板101の表面にスピンコート等により塗布し、第1のH層を成膜する。第1のH層を成膜した後、屈折率の低い高分子材料を溶媒に溶解させた塗布液を第1のH層の表面にスピンコート等により塗布し、第1のL層を成膜する。第1のL層を成膜した後、屈折率の高い高分子材料を溶媒に溶解させた塗布液を第1のL層の表面にスピンコート等により塗布し、第2のH層を成膜する。次に、第2のH層を成膜した後、屈折率の低い高分子材料を溶媒に溶解させた塗布液を第2のH層の表面にスピンコート等により塗布し、第2のL層を成膜する。このように、スピンコート等の塗布方法により、所定の周期層数に達するまで基板101上にH層とL層とを交互に成膜する操作を繰り返し、最後に、H層を成膜して高分子多層膜ミラー100の製造が完了する。
【0047】
H層又はL層を形成するための塗布液に使用した溶媒を除去するために、スピンコート等により塗布した後加熱して各層を成膜する。この場合、加熱する温度は、使用する溶媒に応じて適宜選択され特に限定されないが、通常、60℃〜100℃程度である。
【0048】
(第2の実施形態)
図2は、本実施の形態が適用される高分子光多層膜の第2の実施形態である高分子多層干渉フィルタを説明するための図である。図2に示された高分子多層干渉フィルタ200は、ガラス等の光透過性材料からなる基板201と、このガラス等の基板201上に設けられ、屈折率が高い高分子材料により形成された高屈折率層(H層)と、屈折率が低い高分子材料により形成された低屈折率層(L層)とが交互に積層され、中間に設けられたスペーサ202を介して、高屈折率層(H層)と低屈折率層(L層)とが交互に積層された高分子多層膜と、を有する。図1に示された第1の実施形態と同様に、高屈折率層(H層)及び低屈折率層(L層)の厚さは、それぞれ、入射光203の波長λの4分の1の厚さであるλ/4光学膜厚に調製されている。またスペーサ202の厚さは、入射光203の波長λの2分の1の厚さであるλ/2光学膜厚の整数倍の厚さに調製されている。
【0049】
図2に示された高分子多層干渉フィルタ200は、垂直方向からの入射光203に対して、特定の波長の光について高い透過率で透過光204が得られ、その他の波長域の光を実質的に透過しない干渉フィルタとして作用する。高分子多層干渉フィルタ200としての性能は、H層又はL層を形成する高分子材料の屈折率、H層又はL層の膜厚、H層及びL層の合計層数により、適宜選択される。
【0050】
(第3の実施形態)
図3は、本実施の形態が適用される高分子光多層膜の第3の実施形態である高分子多層偏光分離膜を説明するための図である。図3に示された高分子多層偏光分離膜300は、ガラス等の光透過性材料からなる基板301と、このガラス等の基板301上に設けられ、屈折率が高い高分子材料により形成された高屈折率層(H層)と、屈折率が低い高分子材料により形成された低屈折率層(L層)とが交互に積層された高分子多層膜と、を有する。高屈折率層(H層)及び低屈折率層(L層)の厚さは、基板301に接して設けられたH層及び最上層に形成されたH層を除き、それぞれ、λ/4光学膜厚に調製されている。また、基板301に接して設けられたH層及び最上層に形成されたH層の厚さは、それぞれ、λ/8光学膜厚に調製されている。
【0051】
図3に示された高分子多層偏光分離膜300は、例えば、入射角60度方向からの(P偏光,S偏光)303の入射光に対して、P偏光について高い透過率で透過光304が得られ、S偏光については透過しない偏光分離膜として作用する。高分子多層偏光分離膜300としての性能は、H層又はL層を形成する高分子材料の屈折率、H層又はL層の膜厚、H層及びL層の合計層数により、適宜選択される。
【0052】
(第4の実施形態)
図4は、本実施の形態が適用される高分子光多層膜の第4の実施形態である高分子多層反射防止膜を説明するための図である。図4に示された高分子多層反射防止膜400は、ガラス等の光透過性材料からなる基板401と、このガラス等の基板401上に設けられ、屈折率が高い高分子材料により形成された高屈折率層(H層)と、中間の屈折率を有する高分子材料により形成された中屈折率層(M層)と、屈折率が低い高分子材料により形成された低屈折率層(L層)とが順番に積層された高分子多層膜と、を有する。H層の厚さは、3λ/4光学膜厚に調製され、M層の厚さは、λ/2光学膜厚に調製され、L層の厚さは、λ/4光学膜厚に調製されている。
【0053】
図4に示された高分子多層反射防止膜400は、例えば、垂直方向からの入射光403に対して、反射率が実質的に0%である反射防止膜として作用する。高分子多層反射防止膜400としての性能は、H層、M層及びL層を形成する高分子材料の屈折率、各層の膜厚により、適宜選択される。
【0054】
以上、第1実施形態〜第4実施形態について説明したが、本実施の形態は上記の態様に限定されるものではなく、種々変形することができる。例えば、基板101の表面に、適当な表面処理を施すことにより、第1のH層との密着性を向上させることができる。表面処理方法としては、例えば、親水性又は疎水性処理、プラズマ処理等が挙げられる。また、高分子多層膜102の最上層の上に、さらに適当な保護膜を形成し、高分子多層膜102の強度を増大させることも可能である。保護膜としては、例えば、メタクリレート樹脂等の紫外線硬化性樹脂の前駆体に紫外線を照射することにより形成した架橋硬化膜、有機ポリシロキサンを主成分とするゾルゲルガラス膜等が挙げられる。
【0055】
さらに、基板101上に金属反射膜を設け、その上に高分子多層膜102を形成することができる。本実施の形態が適用される高分子光多層膜は、例えば、レーザ共振器ミラー、Qスイッチングミラー等の一般的な光学素子、光学多層膜製品等に適用することができる。
【0056】
【実施例】
以下に、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本実施の形態は実施例に限定されるものではない。
(塗布溶液の調製)
H層又はL層を形成する高分子材料を所定の溶媒中において90分間超音波処理を施し、次に、48時間スターラーにより攪拌し、所定の濃度の塗布溶液を調製した。
【0057】
(膜厚測定)
予め、所定の濃度に調製した、H層又はL層を形成する高分子材料の塗布溶液中に、高分子多層膜ミラーに使用する基板を半分浸漬した後乾燥し、基板表面に形成された高分子材料による薄膜を、ダイヤモンド針を用いてスキャンする触針法により、H層又はL層の膜厚を測定した。
【0058】
(実施例1〜4)(高分子多層膜ミラー)
H層を形成する高分子材料としてポリビニルカルバゾール(PVK:実施例1〜4)を使用し、L層を形成する高分子材料としてポリアクリル酸(PAA:実施例1)と、セルロースアセテート(CA:実施例2〜4)とを使用し、厚さ1mのパイレックス製ガラス基板(屈折率1.474)上に、予め調製した塗布液を、表1に示した条件でスピンコート法によりそれぞれ所定の回数を塗布し、λ/4光学膜厚のH層及びL層が交互に積層された高分子多層膜ミラーを調製した。PVK、PAA及びCAの屈折率、塗布液の溶媒、溶液濃度、H層及びL層のそれぞれの膜厚、H層及びL層の合計の層数、屈折率の差Δn、設計波長、反射率を表18に示す。
【0059】
【表18】
【0060】
表18の結果から、屈折率が高いPVKにより形成された高屈折率層(H層)と、屈折率が低いPAA(実施例1)又はCA(実施例2〜4)により形成された低屈折率層(L層)とが、交互に積層された高分子多層膜ミラーは、設計波長に対して高い反射率が得られることが分かる。また、L層を形成する際に、CA/酢酸溶液を塗布液した場合(実施例2)と比較して、CA/乳酸エチル溶液を塗布液した場合(実施例3)のほうが、屈折率が飛躍的に増大することが分かる。これは、CAの溶媒として用いた乳酸エチルの分子サイズが酢酸より大きく、PVKにより形成されたH層に浸透し難いことによるものと考えられる。さらに、設計波長600nmの場合にも90%の反射率が得られ(実施例4)、可視光反射ミラーとしても有用であることが分かる。
【0061】
(実施例5)(高分子多層干渉フィルタ)
図2に示した構造と同様な構造を有する高分子多層干渉フィルタを以下の通り調製した。即ち、ガラス基板(屈折率=1.5)上に、H層として、ポリビニルカルバゾール(n=1.683)のクロロベンゼン溶液(50g/l)を、L層として、セルロースアセテート(n=1.475)の乳酸エチル溶液(42g/l)を、スピンコート法により交互に塗布し、合計25層を積層した。次に、この合計25層を積層した上層に、セルロースアセテートの乳酸エチル溶液(72g/l)をスピンコート法により塗布してスペーサを形成した。続いて、このスペーサの上層に、同様に、H層及びL層を交互に塗布して25層を積層した。各層はそれぞれ、H層は157.8nm(λ/4光学膜厚)、L層は180.3nm(λ/4光学膜厚)、スペーサは360.6nm(λ/2光学膜厚)の厚さを有する。
【0062】
このように調製した高分子多層干渉フィルタについて、波長1000〜1100nmの範囲で透過率を測定した。その結果、1064nmを中心としたシャープな透過率曲線が得られ、1064nmにおいて90%の透過率、半値幅4nmとなった。その他の波長域では3%以下の透過率であった。
【0063】
(実施例6)(高分子多層偏光分離膜)
図3に示した構造と同様な構造を有する高分子多層偏光分離膜を以下の通り調製した。即ち、ガラス基板(屈折率=1.5)上に、スピンコート法により、第1層目としてポリビニルカルバゾール(屈折率1.683)のクロロベンゼン溶液(27g/l)を塗布し、厚さ90.6nm(λ/8光学膜厚)のH層を形成した。次に、このH層上に、セルロースアセテート(屈折率1.475)の乳酸エチル溶液(44g/l)を塗布し、厚さ206.7nm(λ/4光学膜厚)のL層を形成し、続いて、このL層上に、ポリビニルカルバゾールのクロロベンゼン溶液(53g/l)を塗布し、厚さ181.2nm(λ/4光学膜厚)のH層を形成した。さらに、この上に、L層及びH層を交互に形成し、合計53層の高分子薄膜の積層体形成し、最上層に、ポリビニルカルバゾール(屈折率1.683)のクロロベンゼン溶液(27g/l)を塗布し、厚さ90.6nm(λ/8光学膜厚)のH層を形成した。
【0064】
このように調製した高分子多層偏光分離膜に、入射角60度方向から、1064nmのYAGレーザーを入射させたところ、P偏光の透過率は99.6%であり、S偏光の透過率は0.3%であった。
【0065】
(実施例7)(高分子多層反射防止膜)
図4に示した構造と同様な構造の高分子多層反射防止膜を、以下の通り調製した。即ち、ガラス基板(屈折率=1.5)上に、H層として、セルロース(n=1.54)のトリフルオロ酢酸溶液(80g/l)を、M層として、ポリビニルカルバゾール(n=1.683)のクロロベンゼン溶液(52g/l)を、L層として、テフロンAF(デュポン社製フッ素樹脂 n=1.31)のヘキサフルオロベンゼン溶液(35g/l)を、スピンコート法により順番に塗布し、それぞれ、H層292.2(nm)(3λ/4光学膜厚)、M層178.3(nm)(λ/2光学膜厚)、L層114.5(nm)(λ/4光学膜厚)の厚さ多層膜構造を調製した。このように調製した高分子多層反射防止膜は、可視域波長400〜800nmの範囲で測定した結果、0.3%以下の反射率であった。
【0066】
(実施例8)(高分子多層反射防止膜)
実施例7と同様に高分子多層反射防止膜を、以下のとおり調製した。即ち、ガラス基板(屈折率=1.5)上に、H層として、ポリN−メチルメタクリルアミド(n=1.54)のエチレングリコール溶液(60g/l)を、M層として、ポリビニルカルバゾール(n=1.683)のクロロベンゼン溶液(52g/l)を、L層として、サイトップ(n=1.34)のパーフルオロ−2−ブチルテトラハイドロフラン溶液(20g/l)を、それぞれスピンコート法により順番に塗布し、それぞれ、H層292.2nm(3λ/4光学膜厚)、M層178.3nm(λ/2光学膜厚)、L層114.5nm(λ/4光学膜厚)の厚さの多層膜構造を調製した。このように調製した高分子多層反射防止膜は、可視域波長400〜800nmの範囲で測定した結果、0.5%以下の反射率であった。
【0067】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、高分子材料による高分子光多層膜が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】高分子光多層膜の第1の実施形態である高分子多層膜ミラーを説明するための図である。
【図2】高分子光多層膜の第2の実施形態である高分子多層干渉フィルタを説明するための図である。
【図3】高分子光多層膜の第3の実施形態である高分子多層偏光分離膜を説明するための図である。
【図4】高分子光多層膜の第4の実施形態である高分子多層反射防止膜を説明するための図である。
【符号の説明】
100…高分子多層膜ミラー、101,201,301,401…基板、102…高分子多層膜、103,203,403…入射光、104…反射光、200…高分子多層干渉フィルタ、202…スペーサ、204,304…透過光、300…高分子多層偏光分離膜、303…P偏光,S偏光、400…高分子多層反射防止膜
Claims (9)
- 基板と、
前記基板上に設けられ、屈折率の異なる少なくとも2種類の高分子薄膜が積層された高分子多層膜と、
を有することを特徴とする高分子光多層膜。 - 前記高分子多層膜は、屈折率の差が0.05以上である少なくとも2種類の前記高分子薄膜が積層されることを特徴とする請求項1記載の高分子光多層膜。
- 前記高分子多層膜が、4分の1光学膜厚を有し、屈折率の異なる2種類の前記高分子薄膜が交互に複数積層された高分子多層膜ミラーであることを特徴とする請求項1記載の高分子光多層膜。
- 前記高分子多層膜が、ポリビニルカルバゾールから形成される前記高分子薄膜と、セルロールアセテートから形成される前記高分子薄膜と、が積層されることを特徴とする請求項3記載の高分子光多層膜。
- 前記高分子多層膜が、2分の1光学膜厚の整数倍の厚さを有するスペーサの上下に、屈折率の異なる2種類の前記高分子薄膜が交互に複数積層された高分子多層干渉フィルタであることを特徴とする請求項1記載の高分子光多層膜。
- 前記高分子多層膜が、屈折率の異なる2種類の前記高分子薄膜が交互に複数積層された積層体の上下に、8分の1光学膜厚の前記高分子薄膜が積層された高分子多層偏光分離膜であることを特徴とする請求項1記載の高分子光多層膜。
- 前記高分子多層膜が、4分の3光学膜厚の前記高分子薄膜と、2分の1光学膜厚の前記高分子薄膜と、4分の1光学膜厚の前記高分子薄膜と、が順次積層された高分子多層反射防止膜であることを特徴とする請求項1記載の高分子光多層膜。
- 光透過性材料からなる基板を形成する基板形成工程と、
前記基板形成工程により形成された基板上に、湿式製膜法により、屈折率の異なる少なくとも2種類の高分子薄膜の積層体を形成する高分子多層膜形成工程と、
を有することを特徴とする高分子光多層膜の製造方法。 - 前記高分子多層膜形成工程は、ガラス基板上に、ポリビニルカルバゾールのクロロベンゼン溶液と、セルロースアセテートの乳酸エチル溶液と、をスピンコート法により交互に所定の回数塗布する工程を含むことを特徴とする請求項8記載の高分子光多層膜の製造方法。
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