従来の高周波加熱装置は、加熱用の高周波発生装置を備えた電子レンジや、この電子レンジに熱風を発生させるコンベクションヒータを付加したコンピネーションレンジ等がある。また、蒸気を加熱室に導入して加熱するスチーマーや、スチーマーにコンベクションヒータを付加したスチームコンベクションオーブン等も加熱調理器として利用されている。
上記の加熱調理器により食品等を加熱調理する際、食品の加熱仕上がり状態が最も良好な状態になるように加熱調理器を制御する。即ち、高周波加熱と熱風加熱とを組み合わせた調理はコンビネーションレンジ、蒸気加熱と熱風加熱とを組み合わせた調理はスチームコンベクションオーブンによりそれぞれ制御することができる。しかし、高周波加熱と蒸気加熱とを組み合わせた調理は、それぞれの加熱処理を別個の加熱調理器間で加熱食品を移し替えて行う等の手間が生じることになる。その不便を解消するために、高周波加熱と、蒸気加熱と、電熱加熱とを一台の加熱調理器で実現したものがある(例えば特許文献1参照)。
ところが、上記公報の構成によれば、加熱蒸気発生のための気化室が加熱室の下方に埋設されており、常に貯水タンクから一定水位で水が供給されるようになっている。従って、日常における加熱室周辺の清掃作業が行いにくく、特に気化室においては、蒸気発生の過程で水分中のカルシウムやマグネシウム等が濃縮され、気化室底部やパイプ内に沈殿固着し、蒸気発生量が少なくなり、その結果、カビ等の繁殖しやすい不衛生な環境となる問題があった。
また、蒸気を加熱室に導入する方法として、加熱室の外側に配置されたボイラー等の加熱手段により蒸気を発生させ、ここで発生した蒸気を加熱室に供給する方式も考えられるが、蒸気導入のためのパイプに雑菌の繁殖、凍結による破損、錆等による異物混入等の問題を生じ、また、加熱手段の分解・清掃が困難であることが多く、食品を扱うために特に衛生上配慮の必要がある加熱調理器においては、外部から蒸気を導入する方式は採用し難いものであった。
さらに、加熱調理器には被加熱物の温度を測定する赤外線センサ等の温度センサを設ける場合が多いが、蒸気が加熱室内に充満すると、赤外線センサは、被加熱物の温度ではなく、被加熱物との間に存在する蒸気の浮遊粒子の温度を測定するようになる。このため、被加熱物の温度を正確に計ることができなくなる。すると、赤外線センサの温度検出結果に基づいてなされる加熱制御が正常に動作しなくなり、例えば加熱不足、加熱過剰等の不具合が発生し、特にシーケンシャルな手順で自動調理を行う場合には、加熱不良のまま次のステップに進むことになり、単なる再加熱や放冷等により対処できず、調理が失敗に終わる可能性もある。
また、被加熱物の種類や冷凍品、冷蔵品等といった各温度状態に応じて、必ずしも加熱効率の高い加熱パターンで加熱することができず、加熱時間が長くなるという問題があった。
そこで、上記事情を考慮して、本出願人は先に、先行発明として、蒸気発生部が清掃容易で常に衛生的に保つことができ、また、被加熱物の温度を正確に測定することで適正な加熱処理を行うことができるようにし、また、加熱効率を高めることのできる蒸気発生機能付き高周波加熱装置を開発した。
図1〜図7は本出願人の先行発明に係る蒸気発生部を備えた蒸気発生機能付き高周波加熱装置を示している。
図1は高周波加熱装置の開閉扉を開けた状態を示す正面図、図2はこの装置に用いられる蒸気発生部の蒸発皿を示す斜視図、図3は蒸気発生部の蒸発皿加熱ヒータと反射板を示す斜視図、図4は蒸気発生部の断面図である。
この蒸気発生機能付き高周波加熱装置60は、被加熱物を収容する加熱室62に、高周波(マイクロ波)と蒸気との少なくともいずれかを供給して被加熱物を加熱処理する加熱調理器であって、高周波を発生する高周波発生部としてのマグネトロン70と、加熱室62内で蒸気を発生する蒸気発生部69と、加熱室62内の空気を撹拌・循環させる循環ファン64と、加熱室62内を循環する空気を加熱する室内気加熱ヒータとしてのコンベクションヒータ66と、加熱室62の壁面に設けた検出用孔を通じて加熱室62内の温度を検出する赤外線センサ63とを備えている。
加熱室62は、前面開放の箱形の本体ケース61内部に形成されており、本体ケース61の前面に、加熱室62の被加熱物取出口を開閉する透光窓71a付きの開閉扉71が設けられている。開閉扉71は、下端が本体ケース61の下縁にヒンジ結合されることで、上下方向に開閉可能となっている。加熱室62と本体ケース61との壁面間には所定の断熱空間が確保されており、必要に応じてその空間には断熱材が装填されている。特に加熱室62の背後の空間は、循環ファン64及びその駆動モータ84(図7参照)を収容した循環ファン室67となっており、加熱室62の後面の壁が、加熱室62と循環ファン室67とを画成する仕切板68となっている。仕切板68には、加熱室62側から循環ファン室67側への吸気を行う吸気用通風孔65と、循環ファン室67側から加熱室62側への送風を行う送風用通風孔72とが形成エリアを区別して設けられている。各通風孔65,72は、多数のパンチ孔として形成されている。
循環ファン64は、矩形の仕切板68の中央部に回転中心を位置させて配置されており、循環ファン室67内には、この循環ファン64を取り囲むようにして矩形環状のコンベクションヒータ66が設けられている。そして、仕切板68に形成された吸気用通風孔65は循環ファン64の前面に配置され、送風用通風孔72は矩形環状のコンベクションヒータ66に沿って配置されている。循環ファン64を回すと、風は循環ファン64の前面側から駆動モータ84のある後面側に流れるように設定されているので、加熱室62内の空気が、吸気用通風孔65を通して循環ファン64の中心部に吸い込まれ、循環ファン室67内のコンベクションヒータ66を通過して、送風用通風孔72から加熱室62内に送り出される。従って、この流れにより、加熱室62内の空気が、撹拌されつつ循環ファン室67を経由して循環されるようになっている。
マグネトロン70は、例えば加熱室62の下側の空間に配置されており、マグネトロンより発生した高周波を受ける位置にはスタラー羽根73が設けられている。そして、マグネトロン70からの高周波を、回転するスタラー羽根73に照射することにより、該スタラー羽根73によって高周波を加熱室62内に撹拌しながら供給するようになっている。なお、マグネトロン70やスタラー羽根73は、加熱室62の底部に限らず、加熱室62の上面や側面側に設けることもできる。
蒸気発生部69は、図2に示すように加熱により蒸気を発生する水溜凹所75aを有した蒸発皿75と、蒸発皿75の下側に配設され、図3及び図4に示すように蒸発皿75を加熱する蒸発皿加熱ヒータ76と、該ヒータの輻射熱を蒸発皿75に向けて反射する断面略U字形の反射板77とから構成されている。蒸発皿75は、例えばステンレス製の細長板状のもので、加熱室62の被加熱物取出口とは反対側の奥側底面に長手方向を仕切板68に沿わせた向きで配設されている。なお、蒸発皿加熱ヒータ76としては、ガラス管ヒータ、シーズヒータ、プレートヒータ等が利用できる。
図5は蒸気発生機能付き高周波加熱装置60を制御するための制御系のブロック図である。この制御系は、例えばマイクロプロセッサを備えてなる制御部701を中心に構成されている。制御部701は、主に、電源部703、記憶部705、入力操作部707、表示パネル709、加熱部711、冷却用ファン81等との間で信号の授受を行っている。
入力操作部707には、加熱の開始を指示するスタートスイッチ719、高周波加熱や蒸気加熱等の加熱方法を切り替える切替スイッチ721、予め用意されているプログラムをスタートさせる自動調理スイッチ723等の種々の操作スイッチが接続されている。
加熱部711には、高周波発生部70、蒸気発生部69、循環ファン64、赤外線センサ63等が接続されている。また、高周波発生部70は、電波撹拌部(スタラー羽根の駆動部)73と協働して動作し、蒸気発生部69には、蒸発皿加熱ヒータ76、室内気加熱ヒータ66(コンベクションヒータ)等が接続されている。なお、このブロック図には、上で説明した機械的構成要素以外の要素(例えば、送水ポンプ80や扉送風用ダンパ82、排気用ダンパ83等)も含まれているが、これらについては後の実施形態で説明する。
次に、上述した蒸気発生機能付き高周波加熱装置60の基本的な動作について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
操作の手順としては、まず、加熱しようとする食品を皿等に載せて加熱室62内に入れ、開閉扉71を閉める。そして、加熱方法、加熱温度又は時間を入力操作部707により設定して(ステップ10、以降はS10と略記する)、スタートスイッチをONにする(S11)。すると、制御部701の動作によって自動的に加熱処理が行われる(S12)。
即ち、制御部701は、設定された加熱温度・時間を読み取り、それに基づいて最適な調理方法を選択・実行し、設定された加熱温度・時間に達したか否かを判断して(S13)、設定値に達したときに、各加熱源を停止して加熱処理を終了する(S14)。なお、S12では、蒸気発生、室内気加熱ヒータ、循環ファン回転、高周波加熱を、それぞれ個別或いは同時に行う。
上記した動作の際に、例えば「蒸気発生+循環ファンON」のモードが選択・実行された場合の作用を説明する。このモードが選択されると、図7に本高周波加熱装置60の動作説明図を示すように、蒸発皿加熱ヒータ76がONされることで、蒸発皿75の水が加熱され蒸気Sが発生する。蒸発皿75から上昇する蒸気Sは、仕切板68の略中央部に設けた吸気用通風孔65から循環ファン64の中心部に吸引され、循環ファン室67を経由して、仕切板68の周部に設けた送風用通風孔72から、加熱室62内へ向けて吹き出される。吹き出された蒸気は、加熱室62内において撹拌されて、再度、仕切板68の略中央部の吸気用通風孔65から循環ファン室67側に吸引される。これにより加熱室62内と循環ファン室67に循環経路が形成される。なお、仕切板68の循環ファン64の配置位置下方には送風用通風孔72を設けずに、発生した蒸気を吸気用通風孔65に導かれるようにしている。そして、図中白抜き矢印で示すように、蒸気が加熱室62を循環することによって、被加熱物Mに蒸気が吹き付けられる。
この際、室内気加熱ヒータ66をONにすることによって、加熱室62内の蒸気を加熱できるので、加熱室62内を循環する蒸気の温度を高温に設定することができる。従って、いわゆる過熱蒸気が得られて、被加熱物Mの表面に焦げ目を付けた加熱調理も可能となる。また、高周波加熱を行う場合は、マグネトロン70をONにし、スタラー羽根73を回転することで、高周波を加熱室62内に撹拌しながら供給して、ムラのない高周波加熱調理を行うことができる。
このように、先行発明の高周波加熱装置によれば、加熱室62の外部ではなく内部で蒸気を発生する構成にしているので、加熱室62内を清掃する場合と同様に、蒸気を発生する蒸発皿75の清掃を簡単に行うことができる。例えば、蒸気発生の過程では、水分中のカルシウムやマグネシウム、塩素化合物等が濃縮されて蒸発皿75の底部に沈殿固着することがあるが、蒸発皿75の表面に付着したものを布等で拭き取るだけできれいに払拭することができる。 また、図4で説明したように、高周波加熱装置の内部に設置された蒸発皿を加熱ヒータで輻射加熱しており、さらに加熱ヒータからの輻射熱を反射板で蒸発皿へ反射するようにしているので、加熱効率がアップする。
また、図8の(A1)において、10は装置本体筺体、11は平板状ヒータ装置である。平板状ヒータ装置11は、アルミニウムダイキャストにU字型シーズヒータを埋め込んだヒータ装置を平板状に仕上げたもので、この平板状部分を鉄板製蒸発皿の裏側に直付けしているのが特徴である。
図9は平板状ヒータ装置の分解斜視図である。
(A)において、20は金属製蒸発皿で、皿の側面21と底部22とで皿部を構成し、ビス孔23が開けられている。
(B1)において、11はアルミダイキャストで作られたヒータ装置、111は蒸発皿底部11への当接部、112は取付部、113は鋳込まれたU字型シーズヒータである。ビス孔117と(A)のビス孔23がビス19で固定される。
(B2)において、(B1)と同じ符号は同一物を指すので説明は省略する。ここでは、シーズヒータ113がU字型をして鋳込まれているのが判る。また、アルミダイキャストの裏側には、2個の隆起部11a、11bが形成されており、図で左側の第1の隆起部11aには後述するサーミスタを挿入するための挿入孔が形成されている。
また、図で右側の第2の隆起部11bには後述する給水パイプ114が固定されている。 このような構成にすることにより、シーズヒータ113で発熱した熱はアルミダイキャスト当接部111から蒸発皿20に直接熱伝導されることになるので、図8の(B)に示す従来の管ヒータ13と反射板14による輻射式加熱装置15と比べて熱伝導が著しく速くなり、従ってスチームによる加熱調理が速くなる。
特開昭54−115448号公報
第1の発明は高周波発生部と、被加熱物を収容する加熱室の底面に設けられた蒸発皿および該蒸発皿を加熱するヒータ装置とで構成されて前記加熱室内で蒸気を発生する蒸気発生部と、前期ヒータ装置を保持する保持板と、を備えた蒸気発生機能付き高周波加熱装置において、前記ヒータ装置をアルミダイキャストにシーズヒータを埋め込んで成るヒータ装置とし、前記保持板は、ヒータ装置を蒸発皿の裏側に押し付けるように配設することにより、ヒータ装置は常に蒸発皿に密着している状態になり、ヒータ装置の熱は蒸発皿の水に伝わりサーミスタにより通電をOFFされることがなくなるので、安定した蒸気量が確保できる。
第2の発明は、特に、第1の発明の保持板を、蒸発皿にビス締めしないように構成することにより、蒸発皿とヒータ装置は常に連動し、ヒータ装置の熱により蒸発皿が変形し隙間が発生した場合にも、保持板がヒータ装置を押し付け蒸発皿との密着を確保することができる。
第3の発明は、特に、第1の発明の蒸発皿を、ヒータ装置の長手方向側に凸となるように構成することにより、ヒータ装置と蒸発皿の密着を更に高めることができる。
第4の発明は、特に、第1の発明の保持板を、ヒータ装置の長手方向側に凸となるように構成することにより、ヒータ装置と蒸発皿の密着を更に高めることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。以下、本発明の蒸気発生機能付き高周波加熱装置の好適な実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図8は本発明に係る加熱装置の概略構成を示す側面断面図で、A1は本発明の第1の実施の形態、A2及びBは上述した先行発明のものをそれぞれ示している。
(実施の形態1)
第1の実施の形態を示す図8の(A1)において、10は装置本体筺体、11は平板状ヒータ装置である。平板状ヒータ装置11は、アルミニウムダイキャストにU字型シーズヒータを埋め込んだヒータ装置を平板状に仕上げたもので、この平板状部分を鉄板製蒸発皿の裏側に直付けしているのが特徴である。
図9は平板状ヒータ装置の分解斜視図で、(A)は蒸発皿、(B1)はヒータ装置の蒸発皿への取り付け側、(B2)は裏側の各斜視図である。
(A)において、20は金属製蒸発皿で、皿の側面21と底部22とで皿部を構成し、ビス孔23が開けられている。
(B1)において、11はアルミダイキャストで作られたヒータ装置、111は蒸発皿底部11への当接部、112は取付部、113は鋳込まれたU字型シーズヒータである。ビス孔117と(A)のビス孔23がビス19で固定される。
(B2)において、(B1)と同じ符号は同一物を指すので説明は省略する。ここでは、シーズヒータ113がU字型をして鋳込まれているのが判る。また、アルミダイキャストの裏側には、2個の隆起部11a、11bが形成されており、図で左側の第1の隆起部11aには後述するサーミスタを挿入するための挿入孔が形成されている。
また、図で右側の第2の隆起部11bには後述する給水パイプ114が固定されている。
このような構成にすることにより、シーズヒータ113で発熱した熱はアルミダイキャスト当接部111から蒸発皿20に直接熱伝導されることになるので、図8の(B)に示す従来の管ヒータ13と反射板14による輻射式加熱装置15と比べて熱伝導が著しく速くなり、従ってスチームによる加熱調理が速くなる。
図10は、実施の形態に係る平板状ヒータ装置に保持板を取り付けた斜視図である。
図10において、保持板209にヒータ装置208を取り付けた構成であり、ビス等による固定もしくは、勘合などによる固定でもかまわない。 図12は、本発明の第1の実施の形態に係る蒸発皿とヒータ装置周辺の断面図を示す。
図12において、蒸発皿206は加熱室207の後方下部に位置しヒータ装置208の長手方向側に対して凸形状になっている、ヒータ装置208は保持板209により蒸発皿206に押し付けられている、保持板209はビス210で蒸発皿206と加熱室207の左右に友締めされているものであり、蒸発皿206とヒータ装置208は密着しているがビス210等による直接的かつ機械的固定はされていない。
更に保持板209はヒータ装置208の長手方向側に対して、ヒータ装置208を弾性的に押し付けるために凸形状になっている。実験では蒸発皿206/ヒータ装置208の凸形状の高さは0.5mm〜1.5mmが最適な密着状態を維持できた。
ここで、蒸発皿206とヒータ装置208が密着していてスキマがない場合と、密着していなくてスキマがある場合の加熱室内の温度の違いを図15と図16を用いて説明する。
図15は、ヒータ装置208と蒸発皿206に隙間が発生した状態におけるヒータ温度及び加熱室内の温度を示す図である。
図16は、ヒータ装置208と蒸発皿206が密着状態におけるヒータ温度及び加熱室内の温度を示す図である。
図15のグラフに示すようにスキマがある場合、ヒータ装置208の熱はスキマにより蒸発皿206に熱伝導ができなくヒータ装置208自身の温度が上昇してしまい、ヒータ保護の為のヒータOFFレベルにかかり通電がされなくなる、この為グラフのように加熱室の温度は70℃〜80℃位になってしまい蒸気による調理が可能な温度(茶碗蒸の卵液の凝固に必要な温度は82℃以上)に達しないので調理ができない。
図16のグラフに示すようにスキマがなくヒータ装置208と蒸発皿206が密着している場合は、ヒータ装置208の熱は蒸発皿206に熱伝導し蒸発皿206内の水に熱変換される為、ヒータ装置208自身の温度はヒータOFFレベルまで上がらず常に通電された状態になり、効率良く水を蒸気に変換することができ加熱室の温度も90℃以上となり、蒸気による調理に十分な温度を確保することができる。
以上のように構成された高周波加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、ヒータ装置208は保持板209により蒸発皿206に押し付けられた構成になっており、ヒータ装置208の熱により蒸発皿206が変形しても、ビス210等でヒータ装置208と蒸発皿206が固定されていないので保持板209により押し付けられ密着を維持できる、更に蒸発皿206と保持板209は対向するように凸形状にすることで、より密着度を増すことができる。
以上のように、本実施の形態においては高周波発生部と、被加熱物を収容する加熱室207と、蒸発皿206および該蒸発皿206を加熱するアルミダイキャストにシーズヒータを埋め込んで成るヒータ装置208と、ヒータ装置208に配設されたサーミスタと、前記加熱室内で蒸気を発生する蒸気発生部と、前期ヒータ装置208を保持する保持板209と、を備えた蒸気発生機能付き高周波加熱装置において、 前記保持板209はヒータ装置208を蒸発皿206に押し付けるように配設することにより、ヒータ装置208は常に蒸発皿206に密着している状態になり、ヒータ装置208の熱は蒸発皿206の水に伝わりサーミスタにより通電をOFFされることがなくなるので、安定した蒸気量を提供することができるようになり、蒸篭なみの蒸し料理を提供することができる。
ヒータ装置に電流を流してから蒸発開始するまでの時間を計測したところ、従来例では約60秒かかったが、本発明によれば約30秒で約30秒の短縮ができた。
また、発生する蒸気量についてみると、従来例では1分につき10ccであるのに対して本発明によれば1分につき12〜13ccであり、20〜30%も多く蒸発させることができた。このように、開始時間の短縮と蒸発量のアップによる調理時間の短縮が可能となる。
なお、蒸発皿に対して、ヒータ装置の取り付け位置や個数については、調理器の使用用途によって構成は多数考えられる。図11にその一例を紹介する。
図11は本発明に係る高周波加熱装置における蒸発皿の設置個所と個数を説明する図で、(a)は高周波加熱装置の開閉扉を開けた状態を示す正面図、(b)は蒸発皿の位置を示す概略正面図である。
図11(a)において、40は蒸気発生機能付き高周波加熱装置、41は加熱室内の上天井、42は右側壁、43は左側壁、44は底面、45は蒸発皿付き金属板、46Rは右蒸発皿、46Lは左蒸発皿、47Rは右給水口、47Lは左給水口、49は循環ファンである。
本発明に係る蒸発皿46は上述のように、蒸発能力が大きいので従来のような電子レンジの奥に横に横断して設ける(図1の15参照)必要はなく、図11(b)のように電子レンジの奥の右隅か左隅に1ヵ所((b)の(イ))か又は(ロ)のように電子レンジの奥の左右両隅に2ヶ所に設けるようにすればよい。
この場合、従来と同程度の蒸発能力を得るのであれば1個で十分である。
ただ、料理の種類によって瞬時的にスチームを多く必要とする場合等には2個あるのが便利で、その場合両方を使い、スチームをそれほど必要としない場合は一方だけで済ませるようにすればスチームのコントロールをすることができるようになる。また、別の使い方としては、一方を連続加熱動作させながら、もう一方を停止または断続動作させてスチーム調整を行うことも可能である。
たとえば、冷凍シュウマイに、輻射熱によるスチーム(従来例)と伝導熱によるスチーム(本発明)を当てて調理したところ、その重量変化率が、従来例では0.9%増しであるのに対して、本発明では1.6%増しとなった。すなわち、伝導熱により高速蒸発させたスチームの熱と電波を併用して温めると、輻射熱によるよりも、庫内に早く蒸気が行き渡って食品表面に付くので、食品に水分を与えながら温めることができ、輻射熱によるスチームの増加(0.9%増し)よりもさらに水分が増え(1.6%増し)、よりしっとりとしたシューマイが出来上がることとなる。
また、焼きとりの調理では従来例では2.6%減となるのに対して本発明では2.3%減となった。すなわち、伝導熱により高速蒸発させたスチームの熱と電波を併用して温めると、輻射熱による従来装置よりも、庫内に早く蒸気が行き渡って調理が早く終了するので、電波加熱による食品の乾燥を早く止めることができ、従来装置の乾燥による重量の減少(2.6%減)よりも、乾燥が少ない(2.3減)ため、パサパサ感がより少なくなることとなる。
このように、本発明によれば加熱に要する時間が従来よりも短くなるので電波で加熱する時間も短くなり、したがってその間対象物の水分が蒸発してゆく時間も短くなり、対象物の水分の減り方が少なくなる。
ヒータ装置(アルミダイキャスト)自身の温度をヒータ中心部に埋設したサーミスタで検出して検出値が所定値を超えたらヒータ装置に電流を流さなくする通常の温度制御(蒸発量の制御)の他に、前記蒸発皿に水が無くなったときの異常時の制御をも行なわせることができる。その具体例としては、サーミスタのオフレベルを連続2回又はそれ以上の所定回行われた場合にヒータ装置への給電を中止し、スチーム加熱を停止させるようにするのがよい。このような構成にすることにより、異常時の過熱制御を迅速に行うことができるようになる。その過熱保護動作は次のようになる。
サーミスタ50は、貯水タンクより給水されて給水受け皿45に水が充填されている場合には、加熱手段113の温度上昇に伴い検出温度レベルが上昇する。しかし、給水受け皿45に水が無くなった場合、加熱手段には通電が行われているので、検出温度レベルが急激に上昇し、上限基準値を超える。
図示略の制御回路は、上限基準値を超えた時点で加熱手段113への通電を遮断する。この時点でオーバシュートは有るものの、サーミスタ50の検出温度レベルは降下する。やがて、サーミスタ50の検出温度レベルが、cで示す下限基準値に達した時点で、制御回路は、再び、加熱手段113への通電を実施してヒータを加熱する。しかし、給水受け皿45には水が無いため、サーミスタ50の検出温度レベルは再び上昇して、dで示す上限基準値を超える。この時点で、制御回路は、給水受け皿45に水が無く加熱手段113が空焼き状態であると判断して、eで示すように、加熱手段113への通電を遮断すると共に、警報を発して蒸気加熱処理を停止させる制御を行う。
本実施の形態では、上記したように、単一のサーミスタで、蒸気量の発生制御と蒸発皿に水が無くなったときの異常検出を行うことができる。
また、上記した制御によって、ヒータの長寿命化と蒸発皿の耐熱温度内での使用を可能にして蒸発皿のフッ素樹脂コーティング面の劣化を防止することができる。
サーミスタの取付け位置はU字型シーズヒータ113の2本の長軸間にの中央で、かつ蒸発皿45の正確な温度を検出すべく、蒸発皿45に向けてアルミダイキャスト111に孔111aを開け、その中にサーミスタ50を取り付けるようにしている。
サイフォンによるポンプレス方式を採用するとき、図9に示した給水パイプをアルミダイキャストに固定したヒータ装置を用いるとよい。
図17はサイフォンによるポンプレス方式の動作説明図である。
図17において、蒸気供給機構91は装置本体90は着脱可能に装備される1基の貯水タンク92と、加熱室93内に装備される2つの金属製蒸発皿20と、これらの金属製蒸発皿20を加熱して金属製蒸発皿20上の水を蒸発させるヒータ装置94と、貯水タンク92の水をヒータ装置94による加熱域を経由して蒸発皿20に導く給水路95と、貯水タンク92と給水路95との接続部に装備されて貯水タンク92の取り外し時に貯水タンク92及び給水路95内の水の漏れ出しを防止するタンク側の止水弁96a及び給水路側の止水弁96bと、給水路側の止水弁96bよりも下流に配置されて給水路29から貯水タンク92への水の逆流を防止する逆止弁97とを備えて構成される。
給水路95は貯水タンク92の接続口22bに接続される基端配管部95aと、この基端配管部95aからヒータ装置94による加熱域を経由するように加熱室93の底板98の下に配索される水平配管部95bと、この水平配管部95bの先端から加熱室93の側方を垂直に立ち上がる垂直配管部95cと、この垂直配管部95cの上端から給水受け皿45の上方に延出して、垂直配管部95cから圧送された水を給水受け皿45に滴下する上部配管部95eと、空気採り入れ口95dと、上部配管部95eの先端を形成する水吹出し口95fとから構成される。
水平配管部95bはヒータ装置94のアルミダイキャスト94aに接触するように配管されていてヒータ装置94による熱が速やかに伝導され、水平配管部95b内の水が膨張して蒸発皿94に供給される。
ここで蒸気発生の原理について詳述する。
貯水タンク92がタンク収納部35に差し込まれ、水平配管部95b,95b内に水が充満した状態で、ヒータ装置94が発熱すると、アルミダイキャスト94aとの接触部で配管内の水に熱が供給されて水が膨張する。
逆止弁97は膨張する配管内の水の圧力を一次的に止めるため、圧力が垂直配管部95cの方向に向か、膨張した水は、上部配管部95eを通過して水吹出し口95fより滴下され、蒸発皿20に供給されことになる。
基端配管部95aは、貯水タンク92が取り外された際に水平配管部95b側からの漏水を防止するための管側の止水弁96bが装備される共に、水平配管部95bとの接続部には、水平配管部95bでの水の熱膨張による水平配管部95b側からの逆流を防止する逆止弁47が装備されている。
図17に示すように、上部配管部95eが接続される垂直配管部95cの上端は、貯水タンク92内における貯水の最高レベル位置Hmaxよりも高い位置に設定されている。これは、貯水タンク92側の貯水が、連通管作用で、不用意に、また連続的に、上部配管部95e側に流出することを防止するためである。
また、給水路95は、貯水タンク92における貯水の最低レベルHminよりも更に下がった位置で、基端配管部95aを介して、貯水タンク92に接続される。これは、貯水タンク92内の貯水を、残さず、給水路95側に取り込み可能にするためである。
蒸発皿20に供給される水は、ヒータ装置94の発生熱で昇温した状態にあるため、蒸発皿20に供給されてから蒸気の発生までの所要時間を短縮することができ迅速な蒸気加熱が可能になる。
加熱を中断すれば給水路95中の垂直配管部95cの水が膨張しなくなり、空気採り入れ口95dまで達することができず、空気採り入れ口95dから大気圧が管内に入って給水は中止する。
また、上記の構成において、貯水タンク92の残量が0(ゼロ)になって、蒸発皿20上の残水量が減ると、水の蒸発に費やされる熱量が減るため、ヒータ装置94や蒸発皿20自体の温度の昇温が起こる。しかし本実施の形態の蒸気供給機構91は、上述のように、ヒータ装置94の温度を検出するサーミスタ50を備えているため、そのサーミスタ50の検出信号を監視することで、比較的に簡単に貯水タンク92の残量0検出が可能で、空だき等の不都合の発生を防止することができる。
更に、サーミスタの検出信号を利用して、例えば、貯水タンク92の残量0の検出時に、ヒータ装置94の動作を停止させたり、給水用の警報を行うなどの多種の制御が可能で、高周波加熱装置100の取り扱い性を向上させることができる。
以上は、図11の(b)の(イ)の1個の蒸発皿の場合について説明したが、(ロ)の2個の蒸発皿の場合のポンプレス・サイフォンについても原理は同じである。しかし、この場合は蒸発皿20に装備される給水路95は、ヒータの接触部から配管先端の水吹出し口までの距離を等距離に設定した構成とすると、それぞれの給水路95での供給量を揃えることができ、加熱室93内での加熱蒸気の均等供給を安価に実現することができる。
以上のように、シーズヒータに電流を流すとアルミダイキャストが急速に加熱し、給水パイプ内の水も急速に加熱されて、膨張し、この膨張した水が管内の大気圧採り入れ口95dを通過して最終的に基準水面より下方位置に設けられている給水口まで到達してサイフォン動作が開始し、放水タンクからの水が給水パイプの先端の給水口から蒸発皿に給水される。そして給水は加熱がなされている間継続する。加熱を中断すれば給水パイプ内の水が膨張しなくなり、空気採り入れ口95dまで達することができず、空気採り入れ口95dから大気圧が管内に入って給水は中止する。
このように、図9に示した本発明に係るヒータ装置を用いると、急速高温加熱ができるので、給水パイプ内の水が急速に大きく膨張できることから、サイフォンを使ったポンプレス駆動が初めて可能となる。