JP2005054358A - 舗装用表面処理工法及び舗装用表面処理材 - Google Patents
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Abstract
【課題】氷結防止機能や騒音抑制機能を備える表面処理層を、加熱設備を要することなく常温施工で舗装の表面に容易に形成することのできる舗装用表面処理工法を提供する。
【解決手段】母体アスファルトコンクリートの表面を覆って、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子のいずれか一種以上とを混合して得られる常温スラリー材である舗装用表面処理材を敷設付着することにより表面処理層を形成する。特殊改質アスファルト乳剤は、固形アスファルト分を50重量%以上含んでおり、粘度が10〜50ポアズ、20℃における可使時間が20〜120分、硬化時間が30〜240分である。
【選択図】 図1
【解決手段】母体アスファルトコンクリートの表面を覆って、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子のいずれか一種以上とを混合して得られる常温スラリー材である舗装用表面処理材を敷設付着することにより表面処理層を形成する。特殊改質アスファルト乳剤は、固形アスファルト分を50重量%以上含んでおり、粘度が10〜50ポアズ、20℃における可使時間が20〜120分、硬化時間が30〜240分である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、舗装用表面処理工法及び舗装用表面処理材に関し、特に母体アスファルトコンクリート又は母体セメントコンクリートに氷結防止機能や騒音抑制機能を付与する舗装用表面処理工法及び舗装用表面処理材に関する。
【0002】
寒冷地などにおける路面の氷結を防止するための手段として、ゴム粒子を混入した特殊なアスファルト混合物を舗装材として敷設することにより構成される舗装構造が知られている。このような氷結防止機能を備える舗装構造によれば、舗装中に混在するゴム粒子が弾性を有していることから、路面を走行する車両の荷重によって舗装面が変形し、表面に付着している氷結層が破砕されることにより、氷結防止効果が得られることになる。また、表面から突出するゴム粒子の作用によって、すべり抵抗性が大きくなると共に、優れた耐摩耗性が得られ、さらに、タイヤと路面との接触音を低減して騒音を緩和する騒音抑制効果も得られることになる。
【0003】
一方、このようなゴム粒子を混入した舗装構造によれば、ゴム粒子が舗装の全体に分散混入しているため、骨材同士のかみ合わせが弱くなって舗装全体の安定性や耐久性が低下することになりやすいことから、舗装の表面に、アスファルト、フィラー、及びゴム粒子からなるスラリー材を敷設付着して表面処理層を形成することにより、ゴム粒子を舗装中に分散混入させることなく氷結防止効果や騒音抑制効果等が得られるようにした舗装構造も開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−110402号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、引用文献1に記載の舗装構造は、アスファルト、フィラー、及びゴム粒子からなるスラリー材を敷設付着することによって表面処理層を形成するものであるため、バインダであるアスファルトを加熱プラント等において加熱溶融しつつフィラー及びゴム粒子と混合したうえで、クッカー車等を介して施工現場まで運搬する必要があるため、近くにこのような設備のない施工現場においては、加熱設備を別途に準備しなけばならず、施工コストが嵩むことになる。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、氷結防止機能や騒音抑制機能を備える表面処理層を、加熱設備を要することなく常温施工で舗装の表面に容易に形成することのできる舗装用表面処理工法及び舗装用表面処理材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、母体アスファルトコンクリート又は母体セメントコンクリートの表面を覆って、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子のいずれか一種以上とを混合して得られる常温スラリー材を敷設付着することにより表面処理層を形成する舗装用表面処理工法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、母体アスファルトコンクリート又は母体セメントコンクリートの表面を覆って敷設付着され、硬化することにより表面処理層を形成する常温スラリー材である舗装用表面処理材であって、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子のいずれか一種以上とを混合して得られる舗装用表面処理材を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明の舗装用表面処理材によれば、前記特殊改質アスファルト乳剤は、固形アスファルト分を50重量%以上含んでおり、粘度が10〜50ポアズ、20℃における可使時間が20〜120分、硬化時間が30〜240分であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の舗装用表面処理材によれば、前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂のいずれか一種以上であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の舗装用表面処理材によれば、前記熱硬化性樹脂は、特殊アスファルト乳剤に10〜50重量%含まれていることが好ましい。
【0012】
本発明において、常温スラリー材である舗装用表面処理材は、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子のいずれか一種以上とを含んでおり、またバインダとして特殊改質アスファルト乳剤を使用していることから、加熱手段を要することなく、これらを常温で混合することによって容易に得られると共に、常温で容易に敷設施工することができるものである。
【0013】
そして、本発明によれば、舗装用表面処理材を構成する特殊改質アスファルト乳剤は、熱硬化性樹脂とアスファルト乳剤とを、必要に応じて添加される他の添加剤等と共に混合して得られるものであり、熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を好ましく用いることができる。特殊改質アスファルト乳剤中に熱硬化性樹脂が混合されることにより、特にアスファルト乳剤としてノニオン系のものを用いる場合や、特殊改質アスファルト乳剤にゴム粒子のみが混合される場合に、分解速度の遅れを効果的に補うことが可能になり、これによって特殊改質アスファルト乳剤の硬化を促進することが可能になる。また特に舗装用表面処理材に混入されたゴム粒子を取り巻く特殊改質アスファルト乳剤の固形分の硬化を促進させて、形成された表面処理層からのゴム粒子の剥がれを効果的に防止することが可能になる。
【0014】
なお、特殊改質アスファルト乳剤中における熱硬化性樹脂の配合量は、10〜50重量%とすることが好ましい。熱硬化性樹脂の特殊改質アスファルト乳剤中における配合量が多すぎると、樹脂ライクになり、骨材、フィラー等との相溶性が悪くなって形成された表面処理層の性能が劣ることになると共に、コストが高くなっ不経済になる。また熱硬化性樹脂の配合量が少なすぎると、硬化速度が遅くなって使用に適さなくなると共に、形成された表面処理層の性能が著しく劣ることになる。
【0015】
また、本発明によれば、舗装用表面処理材に用いられるアスファルト乳剤として、電荷のない非イオンの瀝青エマルジョンであるノニオン系アスファルト乳剤を使用することができる。このような電荷のないノニオン系アスファルト乳剤を用いることにより、常温型の表面処理工法として知られるマイクロサーフェシング工法(例えば、平成10年10月、(社)日本アスファルト乳剤協会発行のマイクロサーフェシング技術マニュアルに記載)において使用されるバインダであるカチオン系アスファルト乳剤(プラス電荷)と比較して、マイナス電荷であるスクリーニングス等の骨材や、ダスト等のフィラーとの相性を考慮することなく、当該骨材やフィラーの材料選択の自由度を増すことが可能になる。また細粒分の多い骨材やダストに対しても、アスファルト乳剤との急激な反応による凝結・硬化や凝集を効果的に抑制できるので、可使時間が例えば30秒〜3分程度であるマイクロサーフェシング工法における表面処理材と比較して、例えば30〜120分程度の相当の可使時間を容易に確保することが可能になる。
【0016】
そして、本発明によれば、舗装用表面処理材を構成する骨材は、アスファルトコンクリート用の骨材として使用される種々の細骨材(細目砂、粗目砂、スクリーニングス等)や粗骨材(7号砕石、人工骨材、スラグ等)を使用することができ、スラグ細骨材、副産物骨材等を使用することもできる。
【0017】
また、フィラーは、主として0.074mm以下の粒径を有し、アスファルト乳剤の耐久性、感温性、コンシステンシーなどを改善し、舗装用表面処理材の安定性を向上させる機能を発揮するもので、例えば石灰岩石粉、消石灰、セメント、ダスト等を使用することができる。
【0018】
さらに、ゴム粒子は、所望の弾性を有し、当該舗装用表面処理材を母体アスファルトコンクリートや母体セメントコンクリートの表面に敷設付着させた場合に、その全部または一部の粒子が舗装面に突出するような粒径を有するゴム粒子であれば、天然ゴム、人工ゴム、再生利用ゴム等の種々のものを使用することができるが、好ましくは、例えば粒径5mm程度以下の大きさのゴム粒子を使用することができる。
【0019】
なお、舗装用表面処理材は、上述の材料の他に、これの強度を補強することを目的として、グラスファイバー等の繊維を混入することもでき、また例えば塩化物等の化学系凍結防止剤を混入又は含浸させて用いることもできる。
【0020】
そして、このような舗装用表面処理材は、常温において混合や施工を行うことができることから、施工現場において所望の材料を用いて容易に混合形成することができ、また必要に応じて混合プラントで混合形成した舗装用表面処理材を可使時間内に施工現場まで運搬した後に、例えばグーズフィニッシャ等を用いて、母体アスファルトコンクリートや母体セメントコンクリートの表面を覆って、好ましくは2〜5mm程度の厚さで敷設付着させ、好ましくは30〜240分程度養生して硬化させることにより、表面処理層が容易に形成されることになる。
【0021】
なお、舗装用表面処理材を母体アスファルトコンクリートや母体セメントコンクリートの表面に敷設する作業は、例えばゴムレーキやコテ等を用いて人力作業により行うこともできる。また、スラリー材である舗装用表面処理材のコンシステンシーは、特殊改質アスファルト乳剤の配合量や、水、セメントの配合量等を調整することによって、容易に変化させることができる。さらに、母体アスファルトコンクリートの骨材として、例えば排水性アファルトコンクリート用や特殊ギャップアスファルトコンクリート用などの、骨材間隙が大きくなるようにその粒度を調整した骨材を使用することにより、舗装の表面に凹凸を形成して、舗装用表面処理材との付着力を向上させることが可能になる。さらにまた、舗装用表面処理材の敷設作業に先立って、母体アスファルトコンクリートや母体セメントコンクリートの表面に、ウォータージェットやショットブラスト等を用いて粗面を形成しておくことによって、舗装用表面処理材との付着力を向上させることもできる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい一実施形態に係る舗装用表面処理工法は、図1に示すように、粗骨材11と、アスファルトモルタル12とからなる母体アスファルトコンクリート13の表面に、常温スラリー材である舗装用表面処理材を敷設付着して硬化させることにより表面処理層10を形成し、形成された表面処理層10によって、母体アスファルトコンクリート13による舗装面に、氷結防止機能と騒音抑制機能とを付与するために採用されたものである。
【0023】
すなわち、本実施形態の舗装用表面処理工法は、母体アスファルトコンクリート13の表面を覆って、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子の一種以上とを混合して得られる舗装用表面処理材を敷設付着することにより表面処理層10を形成することによって構成されるものである。
【0024】
ここで、表面に表面処理層10が敷設付着される母体アスファルトコンクリート13は、例えば特殊ギャップアスファルトコンクリートなどの、粗骨材間の間隙が大きく表面形状が粗くなったアスファルトコンクリートであって、例えば細骨材と、石粉と、アスファルトとを含むアスファルトモルタル12が、粗骨材11間の間隙を充填するようにして硬化していることにより形成されているものである。
【0025】
そして、本実施形態によれば、母体アスファルトコンクリート13の表面を覆って敷設付着される舗装用表面処理材は、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子のいずれか一種以上とを混合することによって得られるものであり、特殊改質アスファルト乳剤は、好ましくは固形アスファルト分を50重量%以上、更に好ましくは68重量%以上含んでおり、粘度が10〜50ポアズ、20℃における可使時間が30〜120分、硬化時間が30〜240分の物性を備えている。なお、特殊改質アスファルト乳剤は例えば黒色の外観を有しているが、脱色化することも可能である。
【0026】
また、アスファルト乳剤と共に特殊改質アスファルト乳剤の主成分を構成する熱硬化性樹脂としては、好ましくはエポキシ樹脂、アクリル樹脂等を使用することができ、より具体的には、商品名「エピコート」(油化シェルエポキシ(株)製)を用いることができる。また熱硬化性樹脂は、特殊改質アスファルト乳剤に10〜50重量%含まれている。
【0027】
さらに、本実施形態によれば、骨材として、細目砂、粗目砂、スクリーニングス等の細骨材や、7号砕石、スラグ等の粗骨材を使用することができ、フィラーとして石灰岩石粉、消石灰、セメント、ダスト等を使用することができる。またゴム粒子として例えば粒径5mm程度以下の再生利用ゴム等を使用することができる。
【0028】
そして、本実施形態によれば、舗装用表面処理材を構成する特殊改質アスファルト乳剤と、骨材と、フィラーと、ゴム粒子との配合は、表1に示すような範囲で、所望の付着強度、氷結防止機能、騒音抑制機能、コンシステンシー等が得られるように適宜設計することができる。
【0029】
【表1】
【0030】
本実施形態によれば、所望の配合量に配合設計された特殊改質アスファルト乳剤、骨材、フィラー、及びゴム粒子は、例えば施工現場において、必要に応じて添加される他の添加剤と共に常温(例えば5〜35℃)で混合され、舗装用表面処理材が形成されることになる。混合形成された舗装用表面処理材は、例えば20〜120分程度の可使時間内において、グーズフィニッシャや、ゴムレーキ、コテ等を用いた人力作業によって、常温施工により好ましくは2〜5mm程度の厚さで母体アスファルトコンクリート13の表面を覆って敷設され、好ましくは30〜240分程度養生することにより硬化して、母体アスファルトコンクリート13の表面に強固に付着し、表面処理層10が容易に形成されることになる。
【0031】
そして、本実施形態の舗装用表面処理工法によって形成された、母体アスファルトコンクリート13の表面を覆って舗装用表面処理材による表面処理層10が敷設付着された舗装構造によれば、優れた氷結防止機能と騒音抑制機能とを発揮することができる。すなわち、舗装用表面処理材に含まれる特殊改質アスファルト乳剤は、硬化後に、それ自体が相当の弾性力を有することになり(例えば図2に示す−20℃における曲げ試験において、曲げひずみが200×10−3cm/cm以上、曲げ仕事量が500×10−3MP以上、曲げスチフネスが100MP以下程度の弾性力)、また低温においても相当の柔軟性を備え、高温領域においても組成変形しにくいものであることから、当該特殊改質アスファルト乳剤をバインダとした表面処理層10には、安定した弾性が付与されることになる。
【0032】
したがって、本実施形態の舗装用表面処理工法によって形成された舗装構造によれば、母体アスファルトコンクリート13の表面に設けられた表面処理層10の安定した弾性によって、路面を走行する車両の荷重で舗装面が変形することによる優れた氷結防止効果が得られると共に、すべり抵抗性や耐摩耗性の向上を効果的に図ることが可能になり、且つタイヤと路面との接触音を低減して騒音を緩和する優れた騒音抑制効果も得られることになる。
【0033】
また、舗装用表面処理材にゴム粒子14を配合しておけば、図1に示すように、表面処理層10に含まれるゴム粒子14を舗装の表面に突出させることが可能になり、当該ゴム粒子14の弾性と相俟って、表面処理層10による氷結防止効果や騒音抑制効果をより効率良く発揮させることが可能になると共に、すべり抵抗性や耐摩耗性を向上させる機能を、より効果的に発揮させることが可能になる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、表面処理層が設けられる母体アスファルトコンクリートは、粗骨材間の間隙が大きい特殊ギャップアスファルトコンクリート等である必要は必ずしもなく、密粒度や細粒度の骨材を用いたアスファルトコンクリートであっても良い。さらに、母体セメントコンクリートに本発明を適用することもできる。さらにまた、本発明は、舗装の新設時の他、舗装の改修や補修時に採用することもできる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
〔実施例1,2〕
密粒度アスファルト混合物によるアスファルトクンクリートを母体アスファルトコンクリートとし、これの表面に表2に示す配合の舗装用表面処理材を例えば5mm程度の厚さで敷設付着させて表面処理層を形成することにより、実施例1の舗装構造とした。また、密粒度アスファルト混合物によるアスファルトクンクリートを母体アスファルトコンクリートとし、これの表面に表3に示す配合のゴム粒子を含まない舗装用表面処理材を例えば5mm程度の厚さで敷設付着させて表面処理層を形成することにより、実施例2の舗装構造とした。実施例1及び実施例2の舗装構造に対して、後述の方法によって、凍結抑制効果、耐久性、すべり抵抗性、及び弾性力を評価した。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
〔比較例1,2〕
密粒度アスファルト混合物による母体アスファルトコンクリートに表面処理を行っていない舗装構造を比較例1の舗装構造とした。また、密粒度アスファルト混合物によるアスファルトクンクリートを母体アスファルトコンクリートとし、これの表面に、表4に示す配合の、上記特許文献1に係る舗装用表面処理材を例えば5mm程度の厚さで敷設付着させて表面処理層を形成することにより、比較例2の舗装構造とした。比較例1及び比較例2の舗装構造に対して、後述の方法によって、凍結抑制効果、耐久性、及びすべり抵抗性を評価した。
【0040】
【表4】
【0041】
〔凍結抑制効果の評価〕
図3(a),(b)に概念図として示す凍結抑制舗装技術委員会で発表されている氷着引張強度試験によって、氷着引張強度を測定した。測定結果を図4に示す。なお、氷着引張強度は、その値が小さいほど、氷が剥がれやすいことを示すものである。
【0042】
図4に示す測定結果によれば、表面処理を行っていない比較例1の舗装構造と比較して、本発明に係る実施例1の舗装構造は、優れた凍結抑制効果を発揮できること、及び上記特許文献1に係る比較例2の舗装構造と同等の凍結抑制効果が得られることが判明する。また、本発明に係る実施例2の舗装構造は、実施例1及び比較例1の舗装構造と比較して、凍結引張強度は大きくなっているが、表面処理を行っていない比較例1の舗装構造と比較して凍結引張強度が大幅に低下しており、相当程度の優れた凍結抑制効果を発揮できることが判明する。
【0043】
〔耐久性の評価〕
ホイールトラッキング試験によって、動的安定度とラベリング試験(往復チェーン型)によるすりへり量を測定した。測定結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
表5に示す測定結果によれば、表面処理を行っていない比較例1の舗装構造の動的安定度は4500回/mmであるのに対して、上記特許文献1に係る比較例2の舗装構造、及び本発明に係る実施例1,2の舗装構造は、若干の低下はあるものの3000回/mm以上の動的安定度を確保しており、流動抵抗性への影響はほとんどないことが判明する。一方、実施例1,2の舗装構造のすりへり量は、比較例1の舗装構造と比較して非常に小さくなっており、また上記特許文献1に係る比較例2の舗装構造と同等のすりへり量であることが判明する。さらに、本発明に係る実施例1,2の舗装構造によれば、比較例1の舗装構造と比較して、同等もしくはそれ以上の摩擦抵抗性を備えるものと判断される。
【0046】
〔すべり抵抗性の評価〕
振子式スキッドレジスタンステスターによるすべり抵抗値(BPN)、及びDFテスターによる摩擦係数(μ)を各々測定した。測定結果を表6に示す。
【0047】
【表6】
【0048】
表6に示す測定結果によれば、本発明に係る実施例1,2の舗装構造は、BPN、摩擦係数とも表面処理を行っていない比較例1の舗装構造と比較して大きな値を示しており、上記特許文献1に係る比較例2の舗装構造よりも若干低下しているものの、すべり抵抗性については全く問題ないことが判明する。なお、すべり抵抗性は、舗装用表面処理材の配合を調整することによって、容易に向上させることが可能である。
【0049】
〔弾性力の評価〕
本発明に係る実施例1,2の舗装構造に対して、GB(ゴルフボール)反発試験を行った。GB係数は通常の密粒度アスファルト混合物によるアスファルトコンクリートの場合、約60程度であるが、実施例1,2の舗装構造の場合は25前後の値が得られ、これは日本体育施設のアスファルト系弾性舗装材料の範囲内(10〜45)にあることが認められた。この弾力性は例えば−20℃程度の低温でも効果的に発揮され、変形量が多いことから、氷盤が形成されにくくかつ破壊され易いので、優れた凍結抑制硬化を備えることが判明する。また、身体に対する負担が少ない舗装として、車道以外の歩道やジョッキングコース、校庭等にも効果的に適用できることが判明する。
【0050】
【発明の効果】
本発明の舗装用表面処理工法及び舗装用表面処理材によれば、氷結防止機能や騒音抑制機能を備える表面処理層を、加熱設備を要することなく常温施工で舗装の表面に容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る舗装用表面処理工法によって形成された舗装構造の一例を示す略示断面図である。
【図2】特殊改質アスファルト乳剤の硬化後の弾性力を評価するための曲げ試験の説明図である。
【図3】(a)及び(b)は、凍結抑制効果の評価を評価するための氷着引張強度試験の説明図である。
【図4】氷着引張強度試験による測定結果を示すチャートである。
【符号の説明】
10 表面処理層
11 粗骨材
12 アスファルトモルタル
13 母体アスファルトコンクリート
14 ゴム粒子
【発明の属する技術分野】
本発明は、舗装用表面処理工法及び舗装用表面処理材に関し、特に母体アスファルトコンクリート又は母体セメントコンクリートに氷結防止機能や騒音抑制機能を付与する舗装用表面処理工法及び舗装用表面処理材に関する。
【0002】
寒冷地などにおける路面の氷結を防止するための手段として、ゴム粒子を混入した特殊なアスファルト混合物を舗装材として敷設することにより構成される舗装構造が知られている。このような氷結防止機能を備える舗装構造によれば、舗装中に混在するゴム粒子が弾性を有していることから、路面を走行する車両の荷重によって舗装面が変形し、表面に付着している氷結層が破砕されることにより、氷結防止効果が得られることになる。また、表面から突出するゴム粒子の作用によって、すべり抵抗性が大きくなると共に、優れた耐摩耗性が得られ、さらに、タイヤと路面との接触音を低減して騒音を緩和する騒音抑制効果も得られることになる。
【0003】
一方、このようなゴム粒子を混入した舗装構造によれば、ゴム粒子が舗装の全体に分散混入しているため、骨材同士のかみ合わせが弱くなって舗装全体の安定性や耐久性が低下することになりやすいことから、舗装の表面に、アスファルト、フィラー、及びゴム粒子からなるスラリー材を敷設付着して表面処理層を形成することにより、ゴム粒子を舗装中に分散混入させることなく氷結防止効果や騒音抑制効果等が得られるようにした舗装構造も開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−110402号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、引用文献1に記載の舗装構造は、アスファルト、フィラー、及びゴム粒子からなるスラリー材を敷設付着することによって表面処理層を形成するものであるため、バインダであるアスファルトを加熱プラント等において加熱溶融しつつフィラー及びゴム粒子と混合したうえで、クッカー車等を介して施工現場まで運搬する必要があるため、近くにこのような設備のない施工現場においては、加熱設備を別途に準備しなけばならず、施工コストが嵩むことになる。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、氷結防止機能や騒音抑制機能を備える表面処理層を、加熱設備を要することなく常温施工で舗装の表面に容易に形成することのできる舗装用表面処理工法及び舗装用表面処理材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、母体アスファルトコンクリート又は母体セメントコンクリートの表面を覆って、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子のいずれか一種以上とを混合して得られる常温スラリー材を敷設付着することにより表面処理層を形成する舗装用表面処理工法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、母体アスファルトコンクリート又は母体セメントコンクリートの表面を覆って敷設付着され、硬化することにより表面処理層を形成する常温スラリー材である舗装用表面処理材であって、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子のいずれか一種以上とを混合して得られる舗装用表面処理材を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明の舗装用表面処理材によれば、前記特殊改質アスファルト乳剤は、固形アスファルト分を50重量%以上含んでおり、粘度が10〜50ポアズ、20℃における可使時間が20〜120分、硬化時間が30〜240分であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の舗装用表面処理材によれば、前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂のいずれか一種以上であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の舗装用表面処理材によれば、前記熱硬化性樹脂は、特殊アスファルト乳剤に10〜50重量%含まれていることが好ましい。
【0012】
本発明において、常温スラリー材である舗装用表面処理材は、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子のいずれか一種以上とを含んでおり、またバインダとして特殊改質アスファルト乳剤を使用していることから、加熱手段を要することなく、これらを常温で混合することによって容易に得られると共に、常温で容易に敷設施工することができるものである。
【0013】
そして、本発明によれば、舗装用表面処理材を構成する特殊改質アスファルト乳剤は、熱硬化性樹脂とアスファルト乳剤とを、必要に応じて添加される他の添加剤等と共に混合して得られるものであり、熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を好ましく用いることができる。特殊改質アスファルト乳剤中に熱硬化性樹脂が混合されることにより、特にアスファルト乳剤としてノニオン系のものを用いる場合や、特殊改質アスファルト乳剤にゴム粒子のみが混合される場合に、分解速度の遅れを効果的に補うことが可能になり、これによって特殊改質アスファルト乳剤の硬化を促進することが可能になる。また特に舗装用表面処理材に混入されたゴム粒子を取り巻く特殊改質アスファルト乳剤の固形分の硬化を促進させて、形成された表面処理層からのゴム粒子の剥がれを効果的に防止することが可能になる。
【0014】
なお、特殊改質アスファルト乳剤中における熱硬化性樹脂の配合量は、10〜50重量%とすることが好ましい。熱硬化性樹脂の特殊改質アスファルト乳剤中における配合量が多すぎると、樹脂ライクになり、骨材、フィラー等との相溶性が悪くなって形成された表面処理層の性能が劣ることになると共に、コストが高くなっ不経済になる。また熱硬化性樹脂の配合量が少なすぎると、硬化速度が遅くなって使用に適さなくなると共に、形成された表面処理層の性能が著しく劣ることになる。
【0015】
また、本発明によれば、舗装用表面処理材に用いられるアスファルト乳剤として、電荷のない非イオンの瀝青エマルジョンであるノニオン系アスファルト乳剤を使用することができる。このような電荷のないノニオン系アスファルト乳剤を用いることにより、常温型の表面処理工法として知られるマイクロサーフェシング工法(例えば、平成10年10月、(社)日本アスファルト乳剤協会発行のマイクロサーフェシング技術マニュアルに記載)において使用されるバインダであるカチオン系アスファルト乳剤(プラス電荷)と比較して、マイナス電荷であるスクリーニングス等の骨材や、ダスト等のフィラーとの相性を考慮することなく、当該骨材やフィラーの材料選択の自由度を増すことが可能になる。また細粒分の多い骨材やダストに対しても、アスファルト乳剤との急激な反応による凝結・硬化や凝集を効果的に抑制できるので、可使時間が例えば30秒〜3分程度であるマイクロサーフェシング工法における表面処理材と比較して、例えば30〜120分程度の相当の可使時間を容易に確保することが可能になる。
【0016】
そして、本発明によれば、舗装用表面処理材を構成する骨材は、アスファルトコンクリート用の骨材として使用される種々の細骨材(細目砂、粗目砂、スクリーニングス等)や粗骨材(7号砕石、人工骨材、スラグ等)を使用することができ、スラグ細骨材、副産物骨材等を使用することもできる。
【0017】
また、フィラーは、主として0.074mm以下の粒径を有し、アスファルト乳剤の耐久性、感温性、コンシステンシーなどを改善し、舗装用表面処理材の安定性を向上させる機能を発揮するもので、例えば石灰岩石粉、消石灰、セメント、ダスト等を使用することができる。
【0018】
さらに、ゴム粒子は、所望の弾性を有し、当該舗装用表面処理材を母体アスファルトコンクリートや母体セメントコンクリートの表面に敷設付着させた場合に、その全部または一部の粒子が舗装面に突出するような粒径を有するゴム粒子であれば、天然ゴム、人工ゴム、再生利用ゴム等の種々のものを使用することができるが、好ましくは、例えば粒径5mm程度以下の大きさのゴム粒子を使用することができる。
【0019】
なお、舗装用表面処理材は、上述の材料の他に、これの強度を補強することを目的として、グラスファイバー等の繊維を混入することもでき、また例えば塩化物等の化学系凍結防止剤を混入又は含浸させて用いることもできる。
【0020】
そして、このような舗装用表面処理材は、常温において混合や施工を行うことができることから、施工現場において所望の材料を用いて容易に混合形成することができ、また必要に応じて混合プラントで混合形成した舗装用表面処理材を可使時間内に施工現場まで運搬した後に、例えばグーズフィニッシャ等を用いて、母体アスファルトコンクリートや母体セメントコンクリートの表面を覆って、好ましくは2〜5mm程度の厚さで敷設付着させ、好ましくは30〜240分程度養生して硬化させることにより、表面処理層が容易に形成されることになる。
【0021】
なお、舗装用表面処理材を母体アスファルトコンクリートや母体セメントコンクリートの表面に敷設する作業は、例えばゴムレーキやコテ等を用いて人力作業により行うこともできる。また、スラリー材である舗装用表面処理材のコンシステンシーは、特殊改質アスファルト乳剤の配合量や、水、セメントの配合量等を調整することによって、容易に変化させることができる。さらに、母体アスファルトコンクリートの骨材として、例えば排水性アファルトコンクリート用や特殊ギャップアスファルトコンクリート用などの、骨材間隙が大きくなるようにその粒度を調整した骨材を使用することにより、舗装の表面に凹凸を形成して、舗装用表面処理材との付着力を向上させることが可能になる。さらにまた、舗装用表面処理材の敷設作業に先立って、母体アスファルトコンクリートや母体セメントコンクリートの表面に、ウォータージェットやショットブラスト等を用いて粗面を形成しておくことによって、舗装用表面処理材との付着力を向上させることもできる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい一実施形態に係る舗装用表面処理工法は、図1に示すように、粗骨材11と、アスファルトモルタル12とからなる母体アスファルトコンクリート13の表面に、常温スラリー材である舗装用表面処理材を敷設付着して硬化させることにより表面処理層10を形成し、形成された表面処理層10によって、母体アスファルトコンクリート13による舗装面に、氷結防止機能と騒音抑制機能とを付与するために採用されたものである。
【0023】
すなわち、本実施形態の舗装用表面処理工法は、母体アスファルトコンクリート13の表面を覆って、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子の一種以上とを混合して得られる舗装用表面処理材を敷設付着することにより表面処理層10を形成することによって構成されるものである。
【0024】
ここで、表面に表面処理層10が敷設付着される母体アスファルトコンクリート13は、例えば特殊ギャップアスファルトコンクリートなどの、粗骨材間の間隙が大きく表面形状が粗くなったアスファルトコンクリートであって、例えば細骨材と、石粉と、アスファルトとを含むアスファルトモルタル12が、粗骨材11間の間隙を充填するようにして硬化していることにより形成されているものである。
【0025】
そして、本実施形態によれば、母体アスファルトコンクリート13の表面を覆って敷設付着される舗装用表面処理材は、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子のいずれか一種以上とを混合することによって得られるものであり、特殊改質アスファルト乳剤は、好ましくは固形アスファルト分を50重量%以上、更に好ましくは68重量%以上含んでおり、粘度が10〜50ポアズ、20℃における可使時間が30〜120分、硬化時間が30〜240分の物性を備えている。なお、特殊改質アスファルト乳剤は例えば黒色の外観を有しているが、脱色化することも可能である。
【0026】
また、アスファルト乳剤と共に特殊改質アスファルト乳剤の主成分を構成する熱硬化性樹脂としては、好ましくはエポキシ樹脂、アクリル樹脂等を使用することができ、より具体的には、商品名「エピコート」(油化シェルエポキシ(株)製)を用いることができる。また熱硬化性樹脂は、特殊改質アスファルト乳剤に10〜50重量%含まれている。
【0027】
さらに、本実施形態によれば、骨材として、細目砂、粗目砂、スクリーニングス等の細骨材や、7号砕石、スラグ等の粗骨材を使用することができ、フィラーとして石灰岩石粉、消石灰、セメント、ダスト等を使用することができる。またゴム粒子として例えば粒径5mm程度以下の再生利用ゴム等を使用することができる。
【0028】
そして、本実施形態によれば、舗装用表面処理材を構成する特殊改質アスファルト乳剤と、骨材と、フィラーと、ゴム粒子との配合は、表1に示すような範囲で、所望の付着強度、氷結防止機能、騒音抑制機能、コンシステンシー等が得られるように適宜設計することができる。
【0029】
【表1】
【0030】
本実施形態によれば、所望の配合量に配合設計された特殊改質アスファルト乳剤、骨材、フィラー、及びゴム粒子は、例えば施工現場において、必要に応じて添加される他の添加剤と共に常温(例えば5〜35℃)で混合され、舗装用表面処理材が形成されることになる。混合形成された舗装用表面処理材は、例えば20〜120分程度の可使時間内において、グーズフィニッシャや、ゴムレーキ、コテ等を用いた人力作業によって、常温施工により好ましくは2〜5mm程度の厚さで母体アスファルトコンクリート13の表面を覆って敷設され、好ましくは30〜240分程度養生することにより硬化して、母体アスファルトコンクリート13の表面に強固に付着し、表面処理層10が容易に形成されることになる。
【0031】
そして、本実施形態の舗装用表面処理工法によって形成された、母体アスファルトコンクリート13の表面を覆って舗装用表面処理材による表面処理層10が敷設付着された舗装構造によれば、優れた氷結防止機能と騒音抑制機能とを発揮することができる。すなわち、舗装用表面処理材に含まれる特殊改質アスファルト乳剤は、硬化後に、それ自体が相当の弾性力を有することになり(例えば図2に示す−20℃における曲げ試験において、曲げひずみが200×10−3cm/cm以上、曲げ仕事量が500×10−3MP以上、曲げスチフネスが100MP以下程度の弾性力)、また低温においても相当の柔軟性を備え、高温領域においても組成変形しにくいものであることから、当該特殊改質アスファルト乳剤をバインダとした表面処理層10には、安定した弾性が付与されることになる。
【0032】
したがって、本実施形態の舗装用表面処理工法によって形成された舗装構造によれば、母体アスファルトコンクリート13の表面に設けられた表面処理層10の安定した弾性によって、路面を走行する車両の荷重で舗装面が変形することによる優れた氷結防止効果が得られると共に、すべり抵抗性や耐摩耗性の向上を効果的に図ることが可能になり、且つタイヤと路面との接触音を低減して騒音を緩和する優れた騒音抑制効果も得られることになる。
【0033】
また、舗装用表面処理材にゴム粒子14を配合しておけば、図1に示すように、表面処理層10に含まれるゴム粒子14を舗装の表面に突出させることが可能になり、当該ゴム粒子14の弾性と相俟って、表面処理層10による氷結防止効果や騒音抑制効果をより効率良く発揮させることが可能になると共に、すべり抵抗性や耐摩耗性を向上させる機能を、より効果的に発揮させることが可能になる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、表面処理層が設けられる母体アスファルトコンクリートは、粗骨材間の間隙が大きい特殊ギャップアスファルトコンクリート等である必要は必ずしもなく、密粒度や細粒度の骨材を用いたアスファルトコンクリートであっても良い。さらに、母体セメントコンクリートに本発明を適用することもできる。さらにまた、本発明は、舗装の新設時の他、舗装の改修や補修時に採用することもできる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
〔実施例1,2〕
密粒度アスファルト混合物によるアスファルトクンクリートを母体アスファルトコンクリートとし、これの表面に表2に示す配合の舗装用表面処理材を例えば5mm程度の厚さで敷設付着させて表面処理層を形成することにより、実施例1の舗装構造とした。また、密粒度アスファルト混合物によるアスファルトクンクリートを母体アスファルトコンクリートとし、これの表面に表3に示す配合のゴム粒子を含まない舗装用表面処理材を例えば5mm程度の厚さで敷設付着させて表面処理層を形成することにより、実施例2の舗装構造とした。実施例1及び実施例2の舗装構造に対して、後述の方法によって、凍結抑制効果、耐久性、すべり抵抗性、及び弾性力を評価した。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
〔比較例1,2〕
密粒度アスファルト混合物による母体アスファルトコンクリートに表面処理を行っていない舗装構造を比較例1の舗装構造とした。また、密粒度アスファルト混合物によるアスファルトクンクリートを母体アスファルトコンクリートとし、これの表面に、表4に示す配合の、上記特許文献1に係る舗装用表面処理材を例えば5mm程度の厚さで敷設付着させて表面処理層を形成することにより、比較例2の舗装構造とした。比較例1及び比較例2の舗装構造に対して、後述の方法によって、凍結抑制効果、耐久性、及びすべり抵抗性を評価した。
【0040】
【表4】
【0041】
〔凍結抑制効果の評価〕
図3(a),(b)に概念図として示す凍結抑制舗装技術委員会で発表されている氷着引張強度試験によって、氷着引張強度を測定した。測定結果を図4に示す。なお、氷着引張強度は、その値が小さいほど、氷が剥がれやすいことを示すものである。
【0042】
図4に示す測定結果によれば、表面処理を行っていない比較例1の舗装構造と比較して、本発明に係る実施例1の舗装構造は、優れた凍結抑制効果を発揮できること、及び上記特許文献1に係る比較例2の舗装構造と同等の凍結抑制効果が得られることが判明する。また、本発明に係る実施例2の舗装構造は、実施例1及び比較例1の舗装構造と比較して、凍結引張強度は大きくなっているが、表面処理を行っていない比較例1の舗装構造と比較して凍結引張強度が大幅に低下しており、相当程度の優れた凍結抑制効果を発揮できることが判明する。
【0043】
〔耐久性の評価〕
ホイールトラッキング試験によって、動的安定度とラベリング試験(往復チェーン型)によるすりへり量を測定した。測定結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
表5に示す測定結果によれば、表面処理を行っていない比較例1の舗装構造の動的安定度は4500回/mmであるのに対して、上記特許文献1に係る比較例2の舗装構造、及び本発明に係る実施例1,2の舗装構造は、若干の低下はあるものの3000回/mm以上の動的安定度を確保しており、流動抵抗性への影響はほとんどないことが判明する。一方、実施例1,2の舗装構造のすりへり量は、比較例1の舗装構造と比較して非常に小さくなっており、また上記特許文献1に係る比較例2の舗装構造と同等のすりへり量であることが判明する。さらに、本発明に係る実施例1,2の舗装構造によれば、比較例1の舗装構造と比較して、同等もしくはそれ以上の摩擦抵抗性を備えるものと判断される。
【0046】
〔すべり抵抗性の評価〕
振子式スキッドレジスタンステスターによるすべり抵抗値(BPN)、及びDFテスターによる摩擦係数(μ)を各々測定した。測定結果を表6に示す。
【0047】
【表6】
【0048】
表6に示す測定結果によれば、本発明に係る実施例1,2の舗装構造は、BPN、摩擦係数とも表面処理を行っていない比較例1の舗装構造と比較して大きな値を示しており、上記特許文献1に係る比較例2の舗装構造よりも若干低下しているものの、すべり抵抗性については全く問題ないことが判明する。なお、すべり抵抗性は、舗装用表面処理材の配合を調整することによって、容易に向上させることが可能である。
【0049】
〔弾性力の評価〕
本発明に係る実施例1,2の舗装構造に対して、GB(ゴルフボール)反発試験を行った。GB係数は通常の密粒度アスファルト混合物によるアスファルトコンクリートの場合、約60程度であるが、実施例1,2の舗装構造の場合は25前後の値が得られ、これは日本体育施設のアスファルト系弾性舗装材料の範囲内(10〜45)にあることが認められた。この弾力性は例えば−20℃程度の低温でも効果的に発揮され、変形量が多いことから、氷盤が形成されにくくかつ破壊され易いので、優れた凍結抑制硬化を備えることが判明する。また、身体に対する負担が少ない舗装として、車道以外の歩道やジョッキングコース、校庭等にも効果的に適用できることが判明する。
【0050】
【発明の効果】
本発明の舗装用表面処理工法及び舗装用表面処理材によれば、氷結防止機能や騒音抑制機能を備える表面処理層を、加熱設備を要することなく常温施工で舗装の表面に容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る舗装用表面処理工法によって形成された舗装構造の一例を示す略示断面図である。
【図2】特殊改質アスファルト乳剤の硬化後の弾性力を評価するための曲げ試験の説明図である。
【図3】(a)及び(b)は、凍結抑制効果の評価を評価するための氷着引張強度試験の説明図である。
【図4】氷着引張強度試験による測定結果を示すチャートである。
【符号の説明】
10 表面処理層
11 粗骨材
12 アスファルトモルタル
13 母体アスファルトコンクリート
14 ゴム粒子
Claims (5)
- 母体アスファルトコンクリート又は母体セメントコンクリートの表面を覆って、熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子のいずれか一種以上とを混合して得られる常温スラリー材を敷設付着することにより表面処理層を形成する舗装用表面処理工法。
- 母体アスファルトコンクリート又は母体セメントコンクリートの表面を覆って敷設付着され、硬化することにより表面処理層を形成する常温スラリー材である舗装用表面処理材であって、
熱硬化性樹脂及びアスファルト乳剤を主成分とする特殊改質アスファルト乳剤と、骨材、フィラー、ゴム粒子のいずれか一種以上とを混合して得られる舗装用表面処理材。 - 前記特殊改質アスファルト乳剤は、固形アスファルト分を50重量%以上含んでおり、粘度が10〜50ポアズ、20℃における可使時間が20〜120分、硬化時間が30〜240分である請求項2に記載の舗装用表面処理材。
- 前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂のいずれか一種以上である請求項2又は3に記載の舗装用表面処理材。
- 前記熱硬化性樹脂は、特殊改質アスファルト乳剤に10〜50重量%含まれる請求項2〜4のいずれかに記載の舗装用表面処理材。
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Cited By (3)
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KR100729156B1 (ko) | 2006-08-28 | 2007-06-19 | 주식회사 콘위즈 | 강화 배수성 아스팔트 |
JP2008196145A (ja) * | 2007-02-09 | 2008-08-28 | Obayashi Road Corp | 舗装用表面補修材及び舗装用表面補修工法 |
-
2003
- 2003-08-01 JP JP2003205306A patent/JP2005054358A/ja active Pending
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