JP2005054292A - 簾模様付け用工業用織物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】単層又は多層構造の簾模様付け工業用織物において、経糸と緯糸の全てが合成樹脂モノフィラメントであり、少なくとも上面側緯糸の直径が上面側経糸の直径の1.5倍〜10倍であることを特徴とする簾模様付け用工業用織物である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は簾模様付きの紙を抄造する長網抄紙機や円網抄紙機で使用する製紙用織物、簾模様付きの不織布を抄紙機類似の装置で製造する際に使用する工業用織物、及びウォータージェット等で不織布に簾模様付けを行う際に使用する工業用織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
昔から日本で広く使用されている書道半紙や画仙紙には簾模様が付されており、これらを製造する方法には手漉きと機械抄きがある。手漉きには流し漉き、紗漉き、溜め漉き等があり地方や抄造物の種類によって異なる。また機械抄きには円網抄きと短網抄きがある。手漉きは、手作業特有の風合いが得られる反面、重労働でその作業は勘による所が多く独特の技術が必要であり、技術習得には長時間を要する。機械抄きである円網抄きは円筒状の枠に金簾(金網)を張った抄紙機で抄造する方法で、手漉き和紙の模造にはじまり大量生産に適し、費用も安く、均一の品質が得られるため、現在では広く使用されている。
和紙の抄造において、手漉き、機械抄きの両者とも根本的な抄造方法は同じであり、和紙の原料を簾の上に乗せ過剰な水分を簾の目を通して除去し、そして簾の表面で湿紙層を形成する。これを乾燥させることで簾の目の付いた和紙が形成される。このように簾は脱水させて湿紙を形成する役目と簾模様を付する役目がある。ユーザーからの要望により和紙に簾模様を付することは重要であり、和紙製造用の簾模様付け織物として手漉きでは竹簾が、機械抄きには金簾が使用されている。しかし、竹簾は原料となる竹を同径の線状とし、それらを手作業によって織り合わせるため非常に手間がかかる。一方、金簾の製造には従来よりブロンズ線が使用されており、機械によって製造されたほぼ均一な径のブロンズ線が供給され、それを自動織機によって製織するため、均一な目の織物が形成される。しかし、金簾は長期間の使用によって錆が生じたり、金属であるため衝撃等に弱く変形しやすい。また重量が重く取り扱いが大変であった。
近年上質紙や包装紙等の多種の紙の抄造を行う織物では、取り扱いの容易さから金網から合成樹脂網に移行されてきた。しかし和紙の抄造を行う簾では、単に材質をブロンズ網から合成樹脂網としただけでは和紙特有の簾模様を紙に転写できず和紙の風合いを与えることが困難であり、現在でも金簾が使用されているのが実情であった。
合成樹脂モノフィラメントによって製織した簾と、金属によって製織した簾との大きな違いは、合成樹脂製網は軽量で錆びの発生がなく、折れが生じにくいという点である。ブロンズ網は金属の中でも腐食が少なく錆びにくい材質ではあるが、常に水と接触しているため長期間の使用により錆が発生し、特に網の端末を溶接した部分では破断が生じて使用末期まで使用できないことがある。そして、重量に関しては、合成樹脂が金属よりもはるかに軽量なのは言うまでもなく扱いやすさとしても大きな差がある。また、金属は落下や衝撃、折れ等により跡がついてしまったり破断してしまうが、合成樹脂では金属程気にとめる必要もない。
本発明の発明者は以上のような合成樹脂の優れた特性を考慮に入れ、金簾の合成樹脂化を試みた。まず抄紙機で使用されている一般的な合成樹脂製の抄紙用織物を和紙の抄造に使用してみた。しかし、該織物は接紙面の空間率が15〜30%程度と低く、和紙の原料を用いて紙を抄造してみても和紙特有の地合や風合い、そして簾模様を付与することはできなかった。そして次に従来から使用されてきた金簾の線径や組織はそのままで材質のみを金属線から合成樹脂モノフィラメントに変更した。しかし、単に金簾の材質のみを合成樹脂モノフィラメントとしただけでは和紙特有の風合いや簾模様を紙に付与することができなかった。また、簾模様を付与しようと緯糸の線径を大きくし、それに対応させるために経糸の線径も大きくしたが紙に好適な簾模様を付与することができなかった。さらに緯糸の打ち込み数を減らし緯糸間隔を広くしてみたが、織物の剛性が低下し抄造時に和紙原料の繊維抜けも生じてしまった。
簾模様の入った和紙特有の風合いを与えることのできる工業用織物を合成樹脂化するために、簾模様、風合い付与性、剛性等を考慮に入れ、線径、メッシュ、網目の大きさ等のバランスと、組織等、その他の事項を検討することが必要であり、このような問題を鑑みて、必要とされる和紙の風合いを損なわず、取り扱いが容易で寿命の長い簾模様付け織物が要求されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の工業用織物は簾模様付きの紙を抄造する長網抄紙機や円網抄紙機で使用する製紙用織物、簾模様付きの不織布を抄紙機類似の装置で製造する際に使用する不織布製造用織物、及びウォータージェット等で不織布に簾模様付けを行う際に使用する不織布製造用織物であり、該織物を用いて抄造した紙や不織布に十分な風合いと簾模様を付することができ、また取り扱いが容易で寿命の長い簾模様付け工業用織物を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
「1. 単層又は多層構造の簾模様付け用工業用織物において、経糸と緯糸の全てが合成樹脂モノフィラメントであり、少なくとも上面側を形成する緯糸の直径が上面側を形成する経糸の直径の1.5倍〜10倍であることを特徴とする簾模様付け用工業用織物。
2. 1項の簾模様付け用工業用織物の横方向25.4mm巾の中に配置された上面側を形成する経糸の直径と本数が、次の式1を満たす簾模様付け用工業用織物。
式1
【0005】
【数2】
【0006】
3. 隣り合う上面側を形成する経糸が狭いピッチと広いピッチで配置され、狭いピッチが広いピッチの1/2以下である、1項または2項に記載された簾模様付け用工業用織物。
4. 隣り合う上面側を形成する経糸が1本毎に狭いピッチと広いピッチで交互に配置され、狭いピッチが広いピッチの1/2以下である、3項に記載された簾模様付け用工業用織物。
5. 上面側を形成する経糸と上面側を形成する緯糸が平織組織を形成している、1項乃至4項のいずれか1項に記載された簾模様付け用工業用織物。
6. 1項ないし5項のいずれか1項に記載された簾模様付け用工業用織物の隣接する上面側を形成する経糸1〜5本を該上面側を形成する経糸より直径が1.15倍以上大きい縦マーク用経糸に置き換えた縦マーク形成部を織物の複数箇所に配置した、簾模様付け用工業用織物。
7. 縦マーク形成部の複数本の縦マーク用経糸が隣接接触配置している、6項に記載された簾模様付け用工業用織物。
8. 1項ないし7項のいずれか1項に記載された簾模様付け用工業用織物の隣接する上面側緯糸1〜5本を該上面側緯糸より直径が1.15倍以上大きい横マーク用緯糸に置き換えた横マーク形成部を織物の複数箇所に配置した、簾模様付け用工業用織物。
9. 上面側緯糸の下方に配置された下面側緯糸の直径が、上面側を形成する緯糸の直径と同じか又は小さいことを特徴とする、1項乃至8項のいずれか1項に記載された多層構造の簾模様付け用工業用織物。」
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の工業用織物は手漉きで竹簾を用いて抄造したのと同等の風合いと簾マークを有する紙や不織布を高効率で抄造することができ、且つ使用寿命が長く軽量で取り扱いが容易な簾模様付け工業用織物である。
本明細書において、簾模様を付する和紙の抄造に使用する工業用織物を代表して説明するが、和紙の抄造だけでなく不織布等同様の簾模様付与用途に使用することができる。
【0008】
本発明の工業用織物は経糸と緯糸の全てを合成樹脂モノフィラメントとし、少なくとも上面側を形成する緯糸の直径が上面側を形成する経糸の直径の1.5倍〜10倍であるところに1つの特徴がある簾模様付け用工業用織物である。合成樹脂モノフィラメントを用いて製織した本発明の織物によって、書道半紙等に必要とされる横方向の簾マークを紙に適度に付するためには上記範囲の線径の糸を使用することがよい効果をもたらす。1.5倍より小さいと経、緯糸の線径がほぼ変わらず横方向のマークが付きにくく、10倍より大きいと経糸が開口して形成される隙間から繊維の抜けが生じたり、織物の剛性が低下してしまうことがある。さらに好適には上面側緯糸を上面側経糸の2〜5倍程度にするとよい。従来から使用されている金簾では経糸、緯糸の線径は同等か、大きくとも緯糸が1.2倍未満であり、和紙のような伝統的な製品を抄造するにはこの差が大きな違いとなり優れた効果を奏するので、非常に重要となる。
紙に簾模様が付与される原理としては、まず織物表面に和紙の原料を均一に流し入れる。そうすると、原料に含まれる余分な水分と微細な繊維が織物の網目(濾水空間)より抜け、糸が存在している部分では原料が多く留まるため紙の厚い部分が形成され、網目部分にはそれよりも薄い部分が形成されて簾模様が形成される。そのため構成糸の線径、目開きの大きさ等により異なる風合の紙が形成できる。織物の構成により簾模様を変化させることができるが、手漉きで抄造されていた和紙に似せるためには線径や目開き等微妙な調整が必要とされる。
緯糸の線径の限定に加え、好適には下記式1を満たす線径の上面側を形成する経糸を適宜本数配置するとよい結果が得られる。
式1
【0009】
【数3】
【0010】
式1は25.4mm(1inch)巾にある上面側表面を構成する経糸の占有率を半分以下とすることを定義した式であり、例えば上面側を形成する経糸の線径が小さく配置本数の少ない織物等が該当する。具体的には、線径0.2mmの経糸と、経糸より3倍大きい線径の0.6mmの緯糸を用い、経糸を25.4mmあたり30本配置した単層織物等がある。式1に経糸の線径と配置本数を当てはめて計算すると0.76となり、式1を満たす経糸間の空間率の割合が大きい織物といえる。式1の左辺によって求められる数値は上面側を形成する経糸の間に形成される空間率であり、数値が大きい程上面側経糸の目開きが大きいことを示している。例えば、0の時は上面側では経糸間の目開きが全くない状態であり、1に近づく程上面側の経糸間の目開きが大きくなることを意味する。
【0011】
上面側を形成する経糸より1.5倍〜10倍の線径の上面側を形成する緯糸と、上記式1を満たす上面側を形成する経糸によって構成された織物とすることで、和紙の抄造時に上面側を形成する緯糸が配置された部分と網目部分で脱水性、繊維支持性の大きな差ができ、さらに構成糸の線径が違うため形成される織物の表面高さにも差ができ、和紙に横方向に伸びるマークが紙に付与され簾模様の紙が抄造される。単に線径を細くし配置本数を減らしただけでは強度や繊維支持性、またマーク付与性、風合い等に難点を生ずる問題をきたしてしまうため関係式1を満たす線径、本数の上面側経糸を用いることが好ましい。
また、上面側を形成する経糸を狭いピッチと広いピッチで配置し、狭いピッチを広いピッチの1/2以下とすると紙に縦方向のマークも付与することができ、また織物の剛性を向上させることもできる。狭いピッチで配置された部分では隣接する少なくとも2本の経糸が接近して濾水空間を小さくするため、狭いピッチで配置された部分では広いピッチの部分よりも脱水量が少なくなりこの部分で繊維が留まって縦マークが形成され、広いピッチの部分では余分な水分と細かい繊維の通り道となり、これらの作用により紙に簾模様が形成される。特に隣接する上面側を形成する経糸を1本毎に狭いピッチと広いピッチで交互に配置した織物や、隣接する上面側を形成する経糸3本、あるいは4本、あるいはそれ以上を狭いピッチで配置してもよい。このような網を用いて横方向だけでなく、縦方向のマークのある簾模様の和紙を製造することができる。
【0012】
その他に縦方向のマーク付けを行う方法として隣接する上面側を形成する経糸1〜5本を上面側を形成する経糸より直径が1.15倍以上大きい縦マーク用経糸に置き換えて縦マーク形成部を織物の複数箇所に配置する方法でもよい。他より線径の大きい上面側を形成する経糸を配置させた縦マーク形成部を織物の所々に配置すれば織物の表面高さ、脱水性、繊維支持性が変化するため該部分に縦マークが付与される。更に隣接配置している縦マーク用経糸を密着させると脱水性、繊維支持性が大きく変化するため該部分に縦方向のマークが形成される。紙に付与する縦マークを太くしたい場合には縦マーク用経糸の本数を増やせばよく、また縦マーク用経糸の線径を操作してもマークの太さや濃さを変えることができる。縦マーク用経糸の線径、本数、ピッチ等は必要に応じて変化させればよい。例えば、上面側を形成する経糸よりも線径が6倍大きい縦マーク用経糸1本を1本の上面側を形成する経糸と置き換えて縦マーク形成部としてもよく、他には隣接する2本の上面側を形成する経糸が配置している部分に、上面側を形成する経糸より線径が2倍大きい縦マーク用経糸4本を密着配置させて縦マーク形成部としてもよい。これらによって形成される縦マークの太さや濃さ等は種々異なるので要望により適宜変化させることができる。
【0013】
同様に隣接する上面側を形成する緯糸1〜5本を上面側を形成する緯糸より直径が1.15倍以上大きい横マーク用緯糸に置き換えて横マーク形成部を織物の複数箇所に配し紙に横マークを形成する織物としてもよい。
湿紙形成面を構成する上面側を形成する経糸、上面側を形成する緯糸の組織は特に限定されないが、線径の細い経糸を広い間隔で配置することがあるため交絡数の多い平織り組織が好ましい。しかし、線径やメッシュ、抄造物の種類等によって適宜選択できる。これらの簾模様付け織物は単層構造だけでなく経糸、緯糸が重なって配置された多層織物であってもよい。その際には上面側経糸、緯糸の下方に配置された下面側経糸、緯糸の直径を、上面側の糸の直径と同じか又は小さくするとよい。下面側の糸より上面側の糸の方が線径が小さいと、和紙に好適な横マークが付されなかったり、あるいは不均一なマークとなってしまうことがある。
【0014】
構成糸の材質については用途や使用環境により適宜選択すれば良く、製紙用、不織布製造用には剛性があり、寸法安定性に優れるポリエステルが好ましく、高熱下で使用する場合には耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド等が好ましい。その他には、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロ、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン等も使用できる。もちろん、共重合体やこれらの材質に目的に応じてさまざまな物質をブレンドしたり含有させた糸を使用してもよい。糸の形状としては基本的な表面を構成する経糸、緯糸はモノフィラメントであるが、その他のマーク付け用経糸、緯糸、下面側緯糸等にはモノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、あるいはこれらを撚り合わせる等して組み合わせた糸が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状や星型等の短形状の糸や楕円形状、中空等の糸が使用できる。また合成樹脂フィラメントを使用すると製織後に熱セットすることで織物のナックルやクリンプが固定され剛性に優れた織物とすることができる。
本発明の織物は末端を周知の方法で織り継いでエンドレスの状態にして製紙機械や不織布製造用マシンで使用することができ、また切り網の状態で手漉き用網としても使用できる。
【0015】
【実施例】
発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。
図1〜33は本発明の実施例の簾模様付け用工業織物であり、図1、4、7、10、13、16、19、22、25、28、31は上面側表面を示した表面図である。図2、5、8、11、14、17、20、23、26、29、32は経糸に沿った経断面図であり、図3、6、9、12、15、18、21、24、27、30、33は緯糸に沿った緯断面図である。図1〜24は経糸、緯糸を単層に織り合わせた単層織物であり、図25〜30は上面側緯糸の下側に下面側緯糸を配置させた経糸一重緯糸二重織物であり、図31〜33は上面側経糸と上面側緯糸の下側に下面側経糸と下面側緯糸を配置した経糸二重緯糸二重織物である。
【0016】
実施例1
図1〜3は本発明の実施例であり、0.16mmのポリエステルモノフィラメントを経糸に用い、0.5mmのポリエステルモノフィラメントを緯糸に用い、1本の経糸が1本の緯糸の上側を通った後、連続する2本の緯糸の下側を通る組織を順次ずらして簾模様付け用工業用織物を構成した。配置本数は25.4mm四方あたり、経糸128本、緯糸20本とした。実施例1の織物は緯糸の線径が経糸よりも3倍以上大きいため緯糸が配置された部分の網の表面高さが高くなり、紙に横方向のマークを付与することができる。該織物組織は1本の経糸が1本の緯糸の上側を通った後、連続する2本の緯糸の下側を通る1/2組織とした。
【0017】
実施例2
図4〜6は本発明の他の実施例であり、0.16mmのポリエステルモノフィラメントを経糸に用い、0.5mmのポリエステルモノフィラメントを緯糸に用い、織物組織を平織りとした。配置本数は25.4mm四方あたり、経糸56本、緯糸32本とした。本実施例の織物は緯糸の線径が経糸よりも3倍以上大きいため緯糸が配置された部分の網の表面高さが高くなり、紙に横方向のマークを付与することができる。また先に示した数式4に該当する経糸の線径と本数とした。
【0018】
【数4】
【0019】
織物を構成する経糸の占有率を50%以下としたため経糸、緯糸間に比較的広い緯糸間の濾水空間が形成され、さらに緯糸に経糸より線径の大きい糸を使用しているため、脱水性、繊維支持性の違いから緯糸が配置されている部分と緯糸間の濾水空間により形成される横方向に伸びるマークを有する簾模様の和紙が抄造できる。該織物では経糸が1本の緯糸の上、下を交互に通る平織り組織としたため剛性に問題はない。
【0020】
実施例3
図7〜9は本発明の他の実施例であり、0.16mmのポリエステルモノフィラメントを経糸に用い、0.5mmのポリエステルモノフィラメントを緯糸に用い、1本の経糸が1本の緯糸の上側を通った後、連続する3本の緯糸の下側を通る組織とし、配置本数は25.4mm四方あたり、経糸60本、緯糸32本とした。本実施例の織物は隣り合う経糸が1本毎に狭いピッチと広いピッチで交互に配置されている。狭いピッチは0.1mm程度で、広いピッチは0.45mm程度である。そのため広いピッチの経糸間には大きな濾水空間が形成され、一方狭いピッチの経糸ではくっつき合って1本の糸のようになり、脱水性、繊維支持性の違いから紙に経糸2本分の太さの1本の縦マークが複数本形成される。狭いピッチで経糸を配置することはマーク付けにもなるが、織物の剛性をあげる効果もある。また、前述の実施例2同様、緯糸の線径が経糸よりも3倍以上大きいため緯糸が配置された部分の表面高さが高くなり、紙に横方向のマークを付与することができ、先に示した式1に該当する経糸の線径と本数としたことにより、織物を構成する経糸の占有率が50%以下となり、経糸、緯糸間に適度な濾水空間が形成され、さらに緯糸に経糸より線径の大きい糸を使用しているため緯糸の間隔に沿った横方向に伸びるマークも形成される。このような方法により本発明の織物を用いることで縦マーク、横マークを有する簾模様の和紙が抄造できる。
【0021】
実施例4
図10〜12は本発明の他の実施例であり、実施例3の織物と糸の線径や配置等は同じで、組織だけを平織り組織に変えた。経糸、緯糸の交絡点が多いため実施例3よりも剛性があり走行性も安定する織物となる。本発明の織物を用いることで縦マーク、横マークを有する簾模様の和紙が抄造できる。
【0022】
実施例5
図13〜15は本発明の他の実施例であり、0.16mmのポリエステルモノフィラメントを経糸に用い、さらに0.3mmのポリエステルモノフィラメントを縦マーク用経糸とし、0.5mmのポリエステルモノフィラメントを緯糸に用い、1本の経糸が1本の緯糸の上、下を通って形成される平織組織とした。配置本数は25.4mm四方あたり、経糸60本、緯糸35本とした。本実施例の織物は隣り合う経糸が1本毎に狭いピッチと広いピッチで交互に配置されており、所々で隣接する2本の上面側経糸を3本の縦マーク用経糸に置き換えた。経糸間の狭いピッチは0.1mm程度で、広いピッチは0.45mm程度であるが、2本の経糸に代えて3本の縦マーク用経糸を配置した部分では経糸間のピッチと糸の線径が変わり、脱水性、繊維支持性、そして織物の表面高さが変化することから紙に縦マークを形成できる。前述の実施例同様、紙に横方向のマークを付与することもできるため、本発明の織物を用いることで縦マーク、横マークを有する簾模様の和紙が抄造できる。
【0023】
実施例6
図16〜18は本発明の他の実施例であり、経糸、縦マーク用経糸、緯糸の線径は実施例5と同じであり、配置本数は実施例4と同じである。経糸の組織は1本の緯糸の上、下を通って形成される平織組織とし、縦マーク用経糸の組織は1本の緯糸の上側を通った後、連続する3本の緯糸の下側を通る組織とした。また、縦マーク用経糸は更に狭いピッチで密着配置させた。2本の上面側経糸に代えて縦マーク用経糸を配置した部分では経糸間のピッチと糸の線径が変わり、脱水性、繊維支持性と織物の表面高さが変化することから紙に縦マークが形成される。また、前述の実施例同様、紙に横方向のマークを付与することができ、本発明の織物を用いることで縦マーク、横マークを有する簾模様の和紙が抄造できる。
【0024】
実施例7
図19〜21は本発明の他の実施例であり、0.16mmのポリエステルモノフィラメントを経糸に、0.3mmのポリエステルモノフィラメントを緯糸に用い、さらに0.5mmのポリエステルモノフィラメントを横マーク用緯糸として所々に配置した。配置本数は25.4mm四方あたり、経糸60本、緯糸32本とし、織物組織は1本の経糸が1本の緯糸の上、下を通って形成される平織組織とした。本実施例の織物では横マーク用緯糸が配置されている部分で織物の表面高さが変化することにより横マークを付与することができ、本発明の織物を用いることで縦マーク、横マークを有する簾模様の和紙が抄造できる。
【0025】
実施例8
図22〜24は本発明の他の実施例であり、0.16mmのポリエステルモノフィラメントを経糸、0.3mmのポリエステルモノフィラメントを緯糸に用い、さらに0.35mmのポリエステルモノフィラメントを縦マーク用経糸とし、0.5mmのポリエステルモノフィラメントを横マーク用緯糸に用い、1本の経糸が1本の緯糸の上、下を通って形成される平織組織とした。配置本数は25.4mm四方あたり、経糸64本、緯糸32本とした。本実施例の織物は隣り合う経糸が1本毎に狭いピッチと広いピッチで交互に配置されている織物であり、所々で隣接する2本の上面側経糸を3本の縦マーク用経糸に置き換え、さらに1本の緯糸を1本の横マーク用緯糸に置き換えた。経糸間の狭いピッチは0.1mm程度で、広いピッチは0.45mm程度であり、縦マーク用経糸が配置されている部分も同様のピッチとした。このような組織としたことで縦マーク用経糸が3本配置された部分では織物の表面高さ、脱水性、繊維支持性が変化して縦マーク用経糸3本分の太い線の縦マークが形成され、経糸が狭いピッチで隣接配置された部分では経糸2本分の細い線の縦マークが形成される。さらに横マーク用緯糸を配置した部分では織物の表面高さが変化するため紙に横マークが形成される。本実施例の織物では縦マーク、横マークを有する簾模様の和紙が抄造できる。
【0026】
実施例9
図25〜27は本発明の他の実施例であり、0.16mmのポリエステルモノフィラメントを経糸、0.5mmのポリエステルモノフィラメントを上面側緯糸に用い、さらに上面側緯糸の下側に同本数の0.3mmのポリエステルモノフィラメントを下面側緯糸として配置した経糸一重緯糸二重の多層織物とした。織物組織は1本の経糸が1本の上面側緯糸の上側を通った後、1本の上面側緯糸と下面側緯糸の間を通り、次いで1本の下面側緯糸の下側を通り、1本の上面側緯糸と下面側緯糸の間を通る組織とし、配置本数は25.4mm四方あたり、上経糸60本、上面側緯糸32本とした。本実施例の織物は下面側緯糸の線径よりも上面側緯糸の線径の方が大きく、経糸は隣り合う経糸が1本毎に狭いピッチと広いピッチで交互に配置されている。広いピッチの経糸間では濾水空間が形成され、一方狭いピッチの経糸ではくっつき合って1本の糸のようになり、脱水性、繊維支持性の違いから紙に経糸2本分の太さの1本の縦マークが複数本形成される。また、前述の実施例同様、緯糸の線径が経糸よりも3倍以上大きいため緯糸が配置された部分の表面高さが高くなり、紙に横方向のマークを付与することができる。このようなに多層織物としても縦マーク、横マークを有する簾模様の和紙を抄造することができる。
【0027】
実施例10
図28〜30は本発明の他の実施例であり、0.16mmのポリエステルモノフィラメントを経糸、0.3mmのポリエステルモノフィラメントを上面側緯糸に用い、さらに上面側緯糸の下側に同本数の0.2mmのポリエステルモノフィラメントを下面側緯糸として配置した経糸一重緯糸二重の多層織物とした。また該織物の上面側緯糸の所々に0.5mmのポリエステルモノフィラメントを横マーク用緯糸として置き換えた。織物組織は1本の経糸が1本の上面側緯糸の上側を通った後、1本の上面側緯糸と下面側緯糸の間を通り、次いで1本の上面側緯糸の上側を通り、次いで1本の下面側緯糸の下側を通る組織とし、配置本数は25.4mm四方あたり、上経糸60本、上面側緯糸32本とした。本実施例の織物は実施例9と同じく下面側緯糸の線径よりも上面側緯糸の線径の方が大きく、経糸は隣り合う経糸が1本毎に狭いピッチと広いピッチで交互に配置されている。広いピッチの経糸間では濾水空間が形成され、一方狭いピッチの経糸ではくっつき合って1本の糸のようになり、脱水性、繊維支持性の違いから紙に経糸2本分の太さの1本の縦マークが複数本形成される。また、前述の実施例同様、緯糸の線径が経糸よりも3倍以上大きいため緯糸が配置された部分の表面高さが高くなり、紙に横方向のマークを付与することができる。このようなに多層織物としても縦マーク、横マークを有する簾模様の和紙を抄造することができる。
【0028】
実施例11
図31〜33は本発明の他の実施例であり、0.16mmのポリエステルモノフィラメントを上面側経糸、0.5mmのポリエステルモノフィラメントを上面側緯糸に用い、さらに上面側緯糸の下側に上面側緯糸の配置本数の倍の数の0.2mmのポリエステルモノフィラメントを下面側緯糸として配置し、そして上面側経糸の下側には上面側経糸の配置本数の半分の数の0.25mmのポリエステルモノフィラメントを下面側経糸として配置した経糸二重緯糸二重の多層織物とした。織物表面組織は1本の経糸が1本の上面側緯糸の上側を通った後、1本の上面側緯糸と下面側緯糸の下側を通る組織の繰り返しとした。本実施例の織物は実施例4と同じ表面組織を有しているが、上面側緯糸の下側にはそれより細い下面側緯糸が2本1組になって配置されている。そして、上面側経糸は隣り合う経糸が1本毎に狭いピッチと広いピッチで交互に配置されており、狭いピッチで配置された2本の上面側経糸の下側には1本の下面側経糸が配置されている。上面側経糸により縦方向のマークを付与することができ、また線径の大きい上面側緯糸によって横方向のマークを付与することもできる。このように、経糸二重緯糸二重織物であっても、縦マーク、横マークを有する簾模様の和紙を抄造することができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明の織物は経糸と緯糸の全てが合成樹脂モノフィラメントであり、少なくとも上面側緯糸の直径が上面側経糸の直径の1.5倍〜10倍であることを特徴とする、単層又は多層構造の簾模様付け用工業用織物であり、簾模様付きの紙を抄造する長網抄紙機や円網抄紙機で使用する製紙用織物、簾模様付きの不織布を抄紙機類似の装置で製造する際に使用する工業用織物、及びウォータージェット等で不織布に簾模様付けを行う際に使用する紙や不織布に十分な風合と簾模様を付与することができる織物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の簾模様付け用工業用織物の平面図である。
【図2】実施例1の織物の経糸に沿った経断面図である。
【図3】実施例1の織物の緯糸に沿った緯断面図である。
【図4】本発明の実施例2の簾模様付け用工業用織物の平面図である。
【図5】実施例2の織物の経糸に沿った経断面図である。
【図6】実施例2の織物の緯糸に沿った緯断面図である。
【図7】本発明の実施例3の簾模様付け用工業用織物の平面図である。
【図8】実施例3の織物の経糸に沿った経断面図である。
【図9】実施例3の織物の緯糸に沿った緯断面図である。
【図10】本発明の実施例4の簾模様付け用工業用織物の平面図である。
【図11】実施例4の織物の経糸に沿った経断面図である。
【図12】実施例4の織物の緯糸に沿った緯断面図である。
【図13】本発明の実施例5の簾模様付け用工業用織物の平面図である。
【図14】実施例5の織物の経糸に沿った経断面図である。
【図15】実施例5の織物の緯糸に沿った緯断面図である。
【図16】本発明の実施例6の簾模様付け用工業用織物の平面図である。
【図17】実施例6の織物の経糸に沿った経断面図である。
【図18】実施例6の織物の緯糸に沿った緯断面図である。
【図19】本発明の実施例7の簾模様付け用工業用織物の平面図である。
【図20】実施例7の織物の経糸に沿った経断面図である。
【図21】実施例7の織物の緯糸に沿った緯断面図である。
【図22】本発明の実施例8の簾模様付け用工業用織物の平面図である。
【図23】実施例8の織物の経糸に沿った経断面図である。
【図24】実施例8の織物の緯糸に沿った緯断面図である。
【図25】本発明の実施例9の簾模様付け用工業用織物の平面図である。
【図26】実施例9の織物の経糸に沿った経断面図である。
【図27】実施例9の織物の緯糸に沿った緯断面図である。
【図28】本発明の実施例10の簾模様付け用工業用織物の平面図である。
【図29】実施例10の織物の経糸に沿った経断面図である。
【図30】実施例10の織物の緯糸に沿った緯断面図である。
【図31】本発明の実施例11の簾模様付け用工業用織物の平面図である。
【図32】実施例11の織物の経糸に沿った経断面図である。
【図33】実施例11の織物の緯糸に沿った緯断面図である。
Claims (9)
- 単層又は多層構造の簾模様付け用工業用織物において、経糸と緯糸の全てが合成樹脂モノフィラメントであり、少なくとも上面側を形成する緯糸の直径が上面側を形成する経糸の直径の1.5倍〜10倍であることを特徴とする簾模様付け用工業用織物。
- 隣り合う上面側を形成する経糸が狭いピッチと広いピッチで配置され、狭いピッチが広いピッチの1/2以下である、請求項1または2に記載された簾模様付け用工業用織物。
- 隣り合う上面側を形成する経糸が1本毎に狭いピッチと広いピッチで交互に配置され、狭いピッチが広いピッチの1/2以下である、請求項3に記載された簾模様付け用工業用織物。
- 上面側を形成する経糸と上面側を形成する緯糸が平織組織を形成している、請求項1乃至4のいずれか1項に記載された簾模様付け用工業用織物。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載された簾模様付け用工業用織物の隣接する上面側を形成する経糸1〜5本を該上面側を形成する経糸より直径が1.15倍以上大きい縦マーク用経糸に置き換えた縦マーク形成部を織物の複数箇所に配置した、簾模様付け用工業用織物。
- 縦マーク形成部の複数本の縦マーク用経糸が隣接接触配置している、請求項6に記載された簾模様付け用工業用織物。
- 請求項1ないし7のいずれか1項に記載された簾模様付け用工業用織物の隣接する上面側を形成する緯糸1〜5本を該上面側を形成する緯糸より直径が1.15倍以上大きい横マーク用緯糸に置き換えた横マーク形成部を織物の複数箇所に配置した、簾模様付け用工業用織物。
- 上面側緯糸の下方に配置された下面側を形成する緯糸の直径が、上面側緯糸の直径と同じか又は小さいことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載された多層構造の簾模様付け用工業用織物。
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