JP2005053895A - α−アリール−N−アルキルニトロンの製造方法 - Google Patents

α−アリール−N−アルキルニトロンの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 工業的に有利なα−アリール−N−アルキルニトロンの製造方法を提供すること。
【解決手段】
(A)式(1)
Figure 2005053895

(式中、Arは置換されていてもよいフェニル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
で示されるハロゲン化ベンジル類と式(2)
Figure 2005053895

(式中、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、低級アルキル基を表す。ここで、それらのうち任意の二つまたは三つが一緒になって、その結合炭素原子とともに環を形成していてもよい。)
で示される1級アミン類とを反応させて式(3)
Figure 2005053895

(式中、Ar、R、RおよびRは前記と同じ意味を表す。)
で示されるN−ベンジル−2級アミン類を得る工程と、
(B)該N−ベンジル−2級アミン類と過酸化水素とを金属酸化物の存在下に反応させる工程を含むことを特徴とする式(4)
Figure 2005053895

(式中、Ar、R、RおよびRは前記と同じ意味を表す。)
で示されるα−アリール−N−アルキルニトロンの製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、α−アリール−N−アルキルニトロンの製造方法に関する。
α−アリール−N−アルキルニトロンは、汎用化学品の合成中間体として用いられるのみならず(例えば、特許文献1参照。)、それ自身が医薬用途に用いられることも可能であり(例えば、特許文献2参照。)、またそのラジカルトラップ作用を応用して分析試薬としても用いられるなど(例えば、特許文献2および非特許文献1参照。)、非常に重要な化合物である。
かかるα−アリール−N−アルキルニトロンを合成する方法としては、例えば、アリールアルデヒドとアルキルアミンとから合成されるアリールイミンをメタクロロ過安息香酸でエポキシ化した後、熱転移させる方法(例えば、特許文献1および非特許文献1参照。)、上記と同様にして得られるアリールイミンを水添して2級アミンとした後、タングステン酸ナトリウム触媒存在下に過酸化水素で酸化する方法(例えば、非特許文献2参照。)、アルキルニトロ化合物を還元しながらアリールアルデヒドと縮合させる方法(例えば、特許文献2および非特許文献1参照。)およびアルキルヒドロキシアミンとアリールアルデヒドとを縮合させる方法(例えば、特許文献2および非特許文献1参照。)などが報告されている。
しかしながら、これらの方法はいずれも、例えば高価な酸化剤が必要である、工程が長い、選択性および収率が低い、原料が不安定で入手が容易でない等の問題があり、より工業的に有利なα−アリール−N−アルキルニトロンの製造方法の開発が求められていた。
特表2002−520306号公報 特表2001−520217号公報 J.Org.Chem.,57,2646(1992) Pol.J.Chem.,55,2505(1981)
このような状況のもと本発明者は、ハロゲン化ベンジル類と特定の1級アミン類とを反応させることによりN−ベンジル−2級アミン類が高収率で得られ、続いて、かかるN−ベンジル−2級アミン類と過酸化水素とを金属酸化物の存在下に反応させることによりα−アリール−N−アルキルニトロンが効率よく得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、
(A)式(1)
Figure 2005053895
(式中、Arは置換されていてもよいフェニル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
で示されるハロゲン化ベンジル類と式(2)
Figure 2005053895
(式中、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、低級アルキル基を表す。ここで、それらのうち任意の二つまたは三つが一緒になって、その結合炭素原子とともに環を形成していてもよい。)
で示される1級アミン類とを反応させて式(3)
Figure 2005053895
(式中、Ar、R、RおよびRは前記と同じ意味を表す。)
で示されるN−ベンジル−2級アミン類を得る工程と、
(B)該N−ベンジル−2級アミン類と過酸化水素とを金属酸化物の存在下に反応させる工程を含むことを特徴とする式(4)
Figure 2005053895
(式中、Ar、R、RおよびRは前記と同じ意味を表す。)
で示されるα−アリール−N−アルキルニトロンの製造方法を提供するものである。
本発明によれば、安価なハロゲン化ベンジル類と1級アミン類とからN−ベンジル−2級アミン類を高収率で得、続いて、かかるN−ベンジル−2級アミン類と過酸化水素とを、例えば安価で入手が容易なタングステン金属等と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物触媒の存在下に反応させることにより、α−アリール−N−アルキルニトロンを選択性よく効率的に製造することができるため、工業的に有利である。
まず工程(A)、すなわち式(1)で表されるハロゲン化ベンジル類(以下、ハロゲン化ベンジル類(1)と略記する。)と式(2)で表される1級アミン類(以下、1級アミン類(2)と略記する。)とを反応させ、式(3)で示されるN−ベンジル−2級アミン類(以下、N−ベンジル−2級アミン類(3)と略記する。)を得る工程について説明する。
本工程で用いられるハロゲン化ベンジル類(1)において、Arは置換されていてもよいフェニル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
ここで、置換されていてもよいフェニル基におけるベンゼン核上の置換基としては、例えばハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アシル基、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホンアミド基、スルホ基、アルコキシスルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミド基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、これら置換基のうち、隣接する置換基同士が結合して、フェニル基を構成する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
低級アルコキシ基としては、前記低級アルキル基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。
低級アシル基としては、カルボニル基と前記低級アルキル基とから構成されるものが挙げられ、例えばアセチル基、エチルカルボニル基等が挙げられる。低級アルコキシカルボニル基としては、カルボニル基と前記低級アルコキシ基とから構成されるものが挙げられ、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
アルコキシスルホニル基としては、スルホン基と前記低級アルコキシ基とから構成されるものが挙げられ、例えばメトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等が挙げられる。
アルキルスルホニル基としては、スルホン基と前記低級アルキル基とから構成されるものが挙げられ、例えばメタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が挙げられる。
アリールスルホニル基としては、スルホン基と炭素数6〜10のアリール基とから構成されるものが挙げられ、例えばベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等が挙げられる。
アミド基としては、例えばホルムアミド基またはアセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基等の炭素数1〜7のアミド基が挙げられる。
また、ハロゲン原子Xとしては、例えば塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
かかるハロゲン化ベンジル類(1)としては、例えばベンジルクロライド、4−フルオロベンジルクロライド、4−クロロベンジルクロライド、3−ブロモベンジルクロライド、4−メチルベンジルクロライド、3−メチルベンジルクロライド、2−メチルベンジルクロライド、3−メトキシベンジルクロライド、4−アセチルベンジルクロライド、4−メトキシカルボニルベンジルクロライド、4−(クロロメチル)安息香酸、3−(クロロメチル)ベンゼンスルホン酸、2−スルホンアミドベンジルクロライド、4−(クロロメチル)ベンゼンスルホン酸メチル、3−メタンスルホニルベンジルクロライド、4−ベンゼンスルホニルベンジルクロライド、2−シアノベンジルクロライド、3−ヒドロキシベンジルクロライド、2−ニトロベンジルクロライド、4−ニトロベンジルクロライド、2−アセトアミドベンジルクロライド、4−トリフルオロメチルベンジルクロライド等の塩化ベンジル類および、
例えばベンジルブロマイド、4−フルオロベンジルブロマイド、4−クロロベンジルブロマイド、3−ブロモベンジルブロマイド、4−メチルベンジルブロマイド、3−メチルベンジルブロマイド、2−メチルベンジルブロマイド、3−メトキシベンジルブロマイド、4−アセチルベンジルブロマイド、4−メトキシカルボニルベンジルブロマイド、4−(ブロモメチル)安息香酸、3−(ブロモメチル)ベンゼンスルホン酸、2−スルホンアミドベンジルブロマイド、4−(ブロモメチル)ベンゼンスルホン酸メチル、3−メタンスルホニルベンジルブロマイド、4−ベンゼンスルホニルベンジルブロマイド、2−シアノベンジルブロマイド、3−ヒドロキシベンジルブロマイド、2−ニトロベンジルブロマイド、4−ニトロベンジルブロマイド、2−アセトアミドベンジルブロマイド、4−トリフルオロメチルベンジルブロマイド等の臭化ベンジル類などが挙げられる。
本工程で用いられる1級アミン類(2)において、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、低級アルキル基を表す。ここで、それらのうち任意の二つまたは三つが一緒になって、その結合炭素原子とともに環を形成していてもよい。
低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等の直鎖状または分枝鎖状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。また、アルキル基同士がその結合炭素原子とともに形成する環構造としては、例えばシクロプロパン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環等が挙げられる。
かかる1級アミン類(2)としては、例えばtert−ブチルアミン、tert−アミルアミン、1−メチルシクロヘキシルアミン、アダマンチルアミン等が挙げられる。
本工程において通常は、ハロゲン化ベンジル類(1)に対して1級アミン類(2)を過剰に用いる。1級アミン類(2)の使用量の上限は特にないが、少なすぎると1級アミン類(2)1分子に対しハロゲン化ベンジル類(1)2分子が反応した化合物が多く得られ、また多すぎると経済的に不利になるため、好ましくはハロゲン化ベンジル類(1)に対し2.5〜5モル倍程度の範囲である。
本工程は、有機溶媒または水の存在下において実施することができるし、それらの混合溶媒を用いても実施することができる。また、無溶媒でも実施することができ、反応効率の点において無溶媒での実施が好ましい。
溶媒を用いて実施する場合の有機溶媒としては、例えばメチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;例えば酢酸エチル等のエステル溶媒;例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;例えばシクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド溶媒;などが挙げられる。
水および/または有機溶媒を使用する場合の使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、ハロゲン化ベンジル類(1)に対して、通常100重量倍以下程度である。
反応温度があまり低いと反応が進行しにくく、また反応温度があまり高いと原料や生成物の分解等副反応が進行する恐れがあるため、実用的な反応温度は、通常50〜200℃程度の範囲である。
また、本工程は塩基の存在下に実施してもよい。かかる塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;例えば炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;例えばアンモニア;などが挙げられる。塩基の使用量は特に制限されないが、経済性を考慮して実用的には、1級アミン類(2)に対して、通常10モル倍以下程度である。
反応試剤の混合順は特に限定されないが、例えば、加熱した1級アミン類(2)にハロゲン化ベンジル類(1)を連続的に加えていく方法などが挙げられる。
本工程は、常圧条件下で実施してもよいし、加圧条件下で実施してもよい。また、反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
反応終了後、例えば、晶析処理や蒸留等の通常の手段によりN−ベンジル−2級アミン類(3)を得ることもできるし、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理した後、得られた有機層を濃縮処理することにより得ることもできる。かかる抽出操作を行う場合は、塩基の存在下に行ってもよい。かかる塩基としては、反応中に存在していてもよい塩基として上述したものと同様の塩基が挙げられる。得られたN−ベンジル−2級アミン類(3)は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ等の手段によりさらに精製してもよいが、通常は、精製することなく次の工程(B)に用いる。
水に不溶の有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;例えば酢酸エチル等のエステル溶媒;などが挙げられ、その使用量は特に制限されない。
また、塩基を添加せずに反応を行った場合には、通常、一部または全部のN−ベンジル−2級アミン類(3)がハロゲン化水素(HX)の塩として析出するが、その結晶を濾過し、得られた結晶をそのまま、または必要に応じて洗浄および再結晶等の精製を行った後に、次の工程(B)に供することもできる。もちろん、かくして得られた結晶に塩基を作用させることにより、遊離のN−ベンジル−2級アミン類(3)を得た後に、工程(B)に供してもよい。かかる塩基としては、反応中に存在していてもよい塩基として上述したものと同様の塩基が挙げられる。
かくして得られるN−ベンジル−2級アミン類(3)としては、例えばN−ベンジル−tert−ブチルアミン、N−ベンジル−tert−アミルアミン、N−ベンジル−1−メチルシクロヘキシルアミン、N−ベンジル−アダマンチルアミン、N−(4−フルオロベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(4−クロロベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(3−ブロモベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(4−メチルベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(3−メチルベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(2−メチルベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(3−メトキシベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(4−アセチルベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(4−メトキシカルボニルベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(4−ヒドロキシカルボニルベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(3−スルホベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(2−スルホンアミドベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(4−メトキシスルホニルベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(3−メタンスルホニルベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(4−ベンゼンスルホニルベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(2−シアノベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(3−ヒドロキシベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(2−ニトロベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(4−ニトロベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(2−アセトアミドベンジル)−tert-ブチルアミン、N−(4−トリフルオロメチルベンジル)−tert-ブチルアミン等が挙げられる。
次に工程(B)、すなわち工程(A)で得られたN−ベンジル−2級アミン類(3)と過酸化水素とを金属酸化物の存在下に反応させることにより、式(4)で示されるα−アリール−N−アルキルニトロン(以下、α−アリール−N−アルキルニトロン(4)と略記する。)を得る工程について説明する。
まずここで、金属酸化物としては、例えば酸化モリブデン、タングステン酸ナトリウム、酸化タングステン、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸等の第VIa族元素酸化物;例えば酸化レニウム、酸化レニウム・ピリジン錯体、メチルレニウムトリオキシド等の第VIIa族元素酸化物;などが挙げられる。
また、金属酸化物としては、例えば第VIa族元素金属、第VIIa族元素金属、第VIa族元素化合物および第VIIa族元素化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種(以下、金属または金属化合物と略記する。)と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物も挙げられる。
第VIa族元素金属としては、例えばタングステン金属、モリブデン金属等が挙げられ、第VIIa族元素金属としては、例えばレニウム金属等が挙げられる。かかる金属の中でも、第VIa族元素金属が好ましい。
第VIa族元素化合物としては、例えばホウ化タングステン等のタングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物;
例えば炭化タングステン、ケイ化タングステン等のタングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物;
例えばチッ化タングステン、リン化タングステン等のタングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物;
例えば硫化タングステン等のタングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物;
例えばタングステンカルボニル錯体、タングステンアミン錯体等のタングステン錯体;
例えばホウ化モリブデン等のモリブデンと第IIIb族元素とからなるモリブデン化合物;
例えば炭化モリブデン、ケイ化モリブデン等のモリブデンと第IVb族元素とからなるモリブデン化合物;
例えばチッ化モリブデン、リン化モリブデン等のモリブデンと第Vb族元素とからなるモリブデン化合物;
例えば硫化モリブデン等のモリブデンと酸素を除く第VIb族元素とからなるモリブデン化合物;
例えば塩化モリブデン等のモリブデンハロゲン化物;
例えばモリブデンカルボニル錯体、モリブデンアミン錯体等のモリブデン錯体;
などが挙げられる。
第VIIa族元素化合物としては、例えば塩化レニウム等のレニウムハロゲン化物等が挙げられる。
かかる第VIa族元素化合物および第VIIa族元素化合物の中でも、第VIa族元素化合物が好ましく、とりわけタングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物、モリブデンと第IIIb族元素とからなるモリブデン化合物、モリブデンと第IVb族元素とからなるモリブデン化合物、モリブデンと第Vb族元素とからなるモリブデン化合物、モリブデンと酸素を除く第VIb族元素とからなるモリブデン化合物が好ましい。
前記金属または金属化合物と反応せしめる過酸化水素としては、通常、水溶液が用いられる。もちろん、過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよいが、取扱いが容易という点で過酸化水素水を用いることが好ましい。過酸化水素水もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%程度である。過酸化水素水を用いる場合は、通常、市販のものをそのままもしくは必要に応じて希釈、濃縮等により濃度調整を行なったものを用いればよい。また、過酸化水素の有機溶媒溶液を用いる場合は、例えば、過酸化水素水を有機溶媒で抽出処理する、もしくは、有機溶媒の存在下に過酸化水素水を蒸留処理する等の手段により、調製したものを用いればよい。
金属または金属化合物と反応せしめる過酸化水素の使用量は、金属または金属化合物に対して、通常3モル倍以上、好ましくは5モル倍以上であり、その上限は特にない。
金属または金属化合物と過酸化水素との反応は、通常、水溶液中で実施される。もちろん、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;例えば酢酸エチル等のエステル溶媒;例えばメタノール、エタノール、tert−ブタノール等のアルコール溶媒;例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;などの有機溶媒中または該有機溶媒と水との混合溶媒中で実施してもよい。
金属または金属化合物と過酸化水素との反応は、通常、その両者を混合、接触させることにより行われ、金属または金属化合物と過酸化水素との接触効率をより向上させるため、金属酸化物調製液中で、金属または金属化合物が十分分散するよう攪拌しながら反応を行うことが好ましい。また、金属または金属化合物と過酸化水素との接触効率を高め、金属酸化物調製時の制御をより容易にするという点で、例えば粉末状の金属または金属化合物等の粒径の小さな金属または金属化合物を用いることが好ましい。
金属または金属化合物と過酸化水素との反応温度は、通常−10〜100℃程度の範囲である。
金属または金属化合物と過酸化水素とを、水中、有機溶媒中もしくは有機溶媒と水との混合溶媒中で反応させることにより、金属または金属化合物の一部または全部が溶解して、金属酸化物を含む均一溶液もしくは懸濁液を調製することができるが、該金属酸化物を、例えば濃縮処理等により調製液から取り出して触媒として用いてもよいし、該調製液をそのまま触媒として用いてもよい。
続いて、N−ベンジル−2級アミン類(3)と過酸化水素とを上記金属酸化物触媒の存在下に反応させて、α−アリール−N−アルキルニトロン(4)を製造する方法について説明する。
本反応に用いられるN−ベンジル−2級アミン類(3)としては、工程(A)で得られたものが用いられ、工程(A)の説明で前述したように、N−ベンジル−2級アミン類(3)・塩酸塩、N−ベンジル−2級アミン類(3)・硫酸塩等の塩として用いてもよい。
N−ベンジル−2級アミン類(3)と過酸化水素との反応における金属酸化物の使用量は、N−ベンジル−2級アミン類(3)に対して、通常0.001モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、N−ベンジル−2級アミン類(3)に対して1モル倍以下程度である。
過酸化水素は、通常、前記と同様の1〜60重量%程度の水溶液または有機溶媒溶液として用いられる。
過酸化水素の使用量は、N−ベンジル−2級アミン類(3)に対して、通常1モル倍以上であり、その使用量の上限は特にないが、経済的な面も考慮すると、実用的には、N−ベンジル−2級アミン類(3)に対して通常10モル倍以下である。なお、触媒として、金属酸化物を含む調製液を用いる場合は、該調製液中の過酸化水素量を考慮して、過酸化水素の使用量を設定してもよい。
本反応は通常、水中、有機溶媒中または有機溶媒と水との混合溶媒中で実施される。有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;例えば酢酸エチル等のエステル溶媒;例えばメタノール、エタノール、tert−ブタノール等のアルコール溶媒;例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;例えばシクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;などが挙げられる。かかる溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、N−ベンジル−2級アミン類(3)に対して通常100重量倍以下程度である。
反応温度があまり低いと反応が進行しにくく、また反応温度があまり高いと原料のN−ベンジル−2級アミン類(3)や生成するα−アリール−N−アルキルニトロン(4)の分解等の副反応が進行する恐れがあるため、実用的な反応温度は、通常−20〜100℃程度の範囲である。
また、本反応は、アンモニアの共存下に実施してもよく、アンモニアとしては、アンモニア水、アンモニアガス、アンモニア/有機溶媒溶液のいずれを用いてもよい。その使用量は特に制限されないが、あまり多すぎると経済的に不利となるため、実用的には、N−ベンジル−2級アミン類(3)に対して通常10モル倍以下である。
本反応は通常、N−ベンジル−2級アミン類(3)、過酸化水素および金属酸化物触媒を混合、接触することにより実施され、その混合順序は特に制限されない。また、例えば金属または金属化合物、過酸化水素およびN−ベンジル−2級アミン類(3)を混合、接触させることにより、金属酸化物触媒の調製およびN−ベンジル−2級アミン類(3)と過酸化水素との反応を同時に行ってもよい。
本反応は、常圧条件下で実施してもよいし、加圧条件下で実施してもよい。また、反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
反応終了後、反応液をそのままもしくは必要に応じて残存する過酸化水素を、例えばチオ硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、目的とするα−アリール−N−アルキルニトロン(4)が得られる。また、反応液に、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより得ることもできる。得られたα−アリール−N−アルキルニトロン(4)は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ等の通常用いる手段によりさらに精製してもよい。
水に不溶の有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;例えば酢酸エチル等のエステル溶媒;などが挙げられ、その使用量は特に制限されない。
また、目的とするα−アリール−N−アルキルニトロン(4)を晶析処理により取り出した後の濾液や反応液を抽出処理して得られる水層には、本反応の金属酸化物触媒を含まれており、該濾液もしくは水層をそのまま回収し、必要に応じて濃縮処理等を行った後、再度本反応に使用することができる。
かくして得られるα−アリール−N−アルキルニトロン(4)としては、例えばα−フェニル−N−tert-ブチルニトロン、α−フェニル−N−tert-アミルニトロン、α−フェニル−N−(1−メチルシクロヘキシル)ニトロン、α−フェニル−N−アダマンチルニトロン、α−(4−フルオロフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(4−クロロフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(3−ブロモフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(4−メチルフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(3−メチルフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(2−メチルフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(3−メトキシフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(4−アセチルフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(4−メトキシカルボニルフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(3−スルホフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(2−スルホンアミドフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(4−メトキシスルホニルフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(3−メタンスルホニルフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(4−ベンゼンスルホニルフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(2−シアノフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(3−ヒドロキシフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(2−ニトロフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(4−ニトロフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(4−アセトアミドフェニル)−N−tert-ブチルニトロン、α−(4−トリフルオロメチルフェニル)−N−tert-ブチルニトロン等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例1
50mLフラスコに、ベンジルクロライド2.53gおよびtert−ブチルアミン4.4gを仕込み、内温80℃に昇温し、同温度で3時間攪拌後、内温100℃に昇温し、さらに3時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、メチルtert−ブチルエーテル15gおよび水10gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、得られた有機層を濃縮し、無色オイルを3.3g得た。このオイルをガスクロマトグラフィ内部標準法により含量分析したところ、N−ベンジル−tert−ブチルアミンの含量は89.7%であった。
収率:91%。
実施例2
50mLフラスコに、タングステン金属16mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物触媒水溶液を調製した。該調製液を内温20℃に冷却し、メタノール3gおよび実施例1で得られたN−ベンジル−tert−ブチルアミン376mg(含量:89.7%)を仕込んだ。30重量%過酸化水素水1.15gを10分かけて滴下した後、同温度で3時間攪拌、保持し、反応させた。反応終了後、メチルtert−ブチルエーテル10gおよび水10gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、得られた有機層をガスクロマトグラフィ内部標準法により含量分析したところ、α−フェニル−N−tert−ブチルニトロンが、351mg含まれていた。
収率:96%。
実施例3
50mLフラスコに、4−ニトロベンジルブロマイド2.2gおよびtert−ブチルアミン2.2gを仕込み、内温80℃に昇温し、同温度で30分攪拌後、内温100℃に昇温し、さらに30分攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、メチルtert−ブチルエーテル15gおよび水10gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、得られた有機層を濃縮し、無色オイルを1.95g得た。このオイルをガスクロマトグラフィ面積百分率法により含量分析したところ、N−(4−ニトロベンジル)−tert−ブチルアミンの含量は99.0%であった。
収率:91%。
実施例4
50mLフラスコに、タングステン金属16mgおよび30重量%過酸化水素水250mgを仕込み、内温40℃に昇温し、同温度で0.5時間攪拌、保持し、タングステン酸化物触媒水溶液を調製した。該調製液を内温20℃に冷却し、メタノール3gおよび実施例3で得られたN−(4−ニトロベンジル)−tert−ブチルアミン416mg(含量:99.0%)を仕込んだ。30重量%過酸化水素水1.15gを10分かけて滴下した後、同温度で3時間攪拌、保持し、反応させた。反応終了後、メチルtert−ブチルエーテル10gおよび水10gを加え、攪拌、静置後、分液処理し、得られた有機層を濃縮して、淡黄色結晶を469mg得た。H−NMR内部標準法により含量分析したところ、α−(4−ニトロフェニル)−N−tert-ブチルニトロンの含量は90%であった。
収率:95%。

Claims (4)

  1. (A)式(1)
    Figure 2005053895
    (式中、Arは置換されていてもよいフェニル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
    で示されるハロゲン化ベンジル類と式(2)
    Figure 2005053895
    (式中、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、低級アルキル基を表す。ここで、それらのうち任意の二つまたは三つが一緒になって、その結合炭素原子とともに環を形成していてもよい。)
    で示される1級アミン類とを反応させて式(3)
    Figure 2005053895
    (式中、Ar、R、RおよびRは前記と同じ意味を表す。)
    で示されるN−ベンジル−2級アミン類を得る工程と、
    (B)該N−ベンジル−2級アミン類と過酸化水素とを金属酸化物の存在下に反応させる工程を含むことを特徴とする式(4)
    Figure 2005053895
    (式中、Ar、R、RおよびRは前記と同じ意味を表す。)
    で示されるα−アリール−N−アルキルニトロンの製造方法。
  2. (A)において、式(2)で示される1級アミン類を、式(1)で示されるハロゲン化ベンジル類に対して、2.5〜5モル倍用いて反応させることを特徴とする請求項1に記載のα−アリール−N−アルキルニトロンの製造方法。
  3. (A)を無溶媒で実施することを特徴とする請求項1に記載のα−アリール−N−アルキルニトロンの製造方法。
  4. (B)において、金属酸化物が、
    タングステン金属;
    モリブデン金属;
    タングステンと第IIIb族元素、第IVb族元素、第Vb族元素または酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物;
    モリブデンと第IIIb族元素、第IVb族元素、第Vb族元素または酸素を除く第VIb族元素とからなるモリブデン化合物;
    からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物である請求項1に記載のα−アリール−N−アルキルニトロンの製造方法。
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