しかしながら、上記した発信信号検出手段を道路路肩の支柱に設置する制御装置では、車両用道路の道幅が十数mを越えると、発信信号検出手段と発信器との間で通信障害が発生する虞がある。たとえば、発信器として、電磁誘導方式やマイクロ波方式の非接触方式ICタグを利用する場合には、ICタグの交信距離は略数mに限られるため、電波減衰などにより遠方の発信器からの発信信号を受信できないという問題点がある。
一方、発信信号受信手段を横断歩道の路面近傍に埋設する制御装置では、路面を掘り起こして発信信号受信手段を埋設した後、再び路面を埋め戻す施工作業が必要となる。また、各発信信号受信手段は、通信線を介して発信信号検出手段へ電気的に接続する必要があるため、かかる通信線を道路に埋設する施工工事も必須となり、設置コストが多額となってしまうという問題点がある。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、横断歩道を横断する人や車椅子などの各種の移動体を確実に検知することができ、その移動体を検知するためのアンテナ素子の設置作業を簡素化して、設置コストを低減できる横断移動体検知システムを提供することを目的としている。
この目的を達成するために請求項1から9のいずれかに記載の横断移動体検知システムによれば、例えば、1又は複数の定置リーダは、通信線などを介して交通信号機の制御装置に接続される一方、移動タグは、人、自転車その他の軽車両、自動車、車椅子などの移動体に取り付けられる。この移動体への移動タグの取り付けによって、移動体に所定の識別情報が付与されるのである。
請求項1記載の横断移動体検知システムは、車両の通行可能な通行路を横断する移動体を検知するものであり、通行路の路面上に間隔を隔てて略平行に敷設される複数の帯線体により標示される横断歩道と、その横断歩道を横断する移動体に取り付け可能に形成され且つ非接触方式によるデータ通信が可能で識別情報を記憶可能に形成された移動タグと、その移動タグとの間で非接触方式により通信可能であって前記複数の帯線体の個々と一体に形成される複数のアンテナ素子と、その複数のアンテナ素子にそれぞれ電気的に接続され前記移動タグに記憶される識別情報を読み取る複数の定置リーダとを備えている。
この請求項1記載の横断移動体検知システムによれば、移動体が横断歩道が標示される通行路を横断する際、移動タグは、横断歩道に一体となって形成される複数のアンテナ素子のうち少なくともいずれか1つを介して非接触方式による通信を行い、そのアンテナ素子が接続される定置リーダとの間でデータ通信を行う。
このデータ通信によって移動タグに記憶される識別情報は定置リーダにより読み取られ、通信線などを介して交通信号機の制御装置へ送信される。これによって、交通信号機の制御装置では、移動体の横断歩道への接近、又は横断歩道を横断中の移動体の有無がアンテナ素子を介して定置リーダにより検知されるので、この検知に基づいた交通信号機の信号灯の点灯制御がなされる。
請求項2記載の横断移動体検知システムは、車両の通行可能な通行路を横断する移動体を検知するものであり、通行路の路面上に間隔を隔てて略平行に敷設される複数の帯線体により標示される横断歩道と、その横断歩道を横断する移動体に取り付け可能に形成され且つ非接触方式によるデータ通信が可能で識別情報を記憶可能に形成された移動タグと、その移動タグとの間で非接触方式により通信可能であって前記複数の帯線体の個々と一体に形成される複数のアンテナ素子と、その複数のアンテナ素子を介して非接触方式により前記移動タグに記憶される識別情報を読み取る定置リーダと、その定置リーダと前記複数のアンテナ素子との間に介在され、その複数のアンテナ素子のうちで前記定置リーダと電気的に接続される1つのアンテナ素子を順次切り換える切換手段とを備えている。
この請求項2記載の横断移動体検知システムによれば、定置リーダは切換手段を介して複数のアンテナ素子のうちいずれか1つと接続されるが、この定置リーダの接続先となる1のアンテナ素子は、切換手段によって複数のアンテナ素子の中で順次切り換えられる。よって、1つの定置リーダのみでも、複数のアンテナ素子による電波の受信が実現される。横断歩道の標示される通行路を移動体が横断する際、移動タグは、定置リーダと接続中である1のアンテナ素子を介して非接触方式による通信を行う。
このデータ通信によって移動タグに記憶される識別情報は定置リーダにより読み取られ、通信線などを介して交通信号機の制御装置へ送信される。これによって、交通信号機の制御装置では、移動体の横断歩道への接近、又は横断歩道を横断中の移動体の有無はアンテナ素子を介して定置リーダにより検知されるので、この検知に基づいた交通信号機の信号灯の点灯制御がなされる。
請求項3記載の横断移動体検知システムは、車両の通行可能な通行路を横断する移動体を検知するものであり、通行路の路面上に敷設される複数の帯線体により標示される横断歩道と、その横断歩道を横断する移動体に取り付け可能に形成され且つ非接触方式によるデータ通信が可能で識別情報を記憶可能に形成された移動タグと、その移動タグとの間で非接触方式により通信可能であって、前記複数の帯線体と一体に形成され前記横断歩道のほぼ全域を取り囲む略ループ状に形成されるアンテナ素子と、そのアンテナ素子に電気的に接続され前記移動タグに記憶される識別情報を読み取る定置リーダとを備えている。
この請求項3記載の横断移動体検知システムによれば、移動体が通行路を横断する際、移動タグは、横断歩道のほぼ全域を取り囲む略ループ状に形成されるアンテナ素子を介して非接触方式による通信を行う。このデータ通信によって移動タグに記憶される識別情報は定置リーダにより読み取られ、通信線などを介して交通信号機の制御装置へ送信される。このデータ送信によって、交通信号機の制御装置では、移動体の横断歩道への接近、又は横断歩道を横断中の移動体の有無はアンテナ素子を介して定置リーダにより検知されるので、この検知に基づいた交通信号機の信号灯の点灯制御がなされる。
請求項4記載の横断移動体検知システムは、請求項1から3のいずれかに記載の横断移動体検知システムにおいて、前記横断歩道は、その横断歩道における通行路の横断方向端部にその横断歩道と隣り合わせに敷設される補助路面標示を備えており、前記複数のアンテナ素子には、その補助路面標示に一体となって形成され前記移動タグとの間で非接触方式により通信可能で前記定置リーダと電気的に接続されるアンテナ素子が含まれている。
この請求項4記載の横断移動体検知システムによれば、請求項1から3のいずれかに記載の横断移動体検知システムと同様に作用する上、移動体が横断歩道を横断するために補助路面標示に接近すると、移動タグは、その補助路面標示に一体となって形成されるアンテナ素子を介して定置リーダと非接触方式による通信を行う。このデータ通信によって移動タグに記憶される識別情報は定置リーダにより読み取られ、通信線などを介して交通信号機の制御装置へ送信される。
請求項5記載の横断移動体検知システムは、請求項1から4のいずれかに記載の横断移動体検知システムにおいて、前記アンテナ素子は導電性塗料で形成されている。
請求項6記載の横断移動体検知システムは、請求項5記載の横断移動体検知システムにおいて、前記アンテナ素子の表面を被覆するために前記導電性塗料より絶縁抵抗値の大きな非導電性塗料で形成される保護層を備えている。
請求項7記載の横断移動体検知システムは、請求項5又は6に記載の横断移動体検知システムにおいて、前記導電性塗料は、導電性を有する粉末材料を添加することにより導電性が付与された塗料である。
請求項8記載の横断移動体検知システムは、請求項1から4のいずれかに記載の横断移動体検知システムにおいて、前記横断歩道は、導電性材料により形成され前記定置リーダと電気的に接続されて前記アンテナ素子として機能するアンテナ回路と、そのアンテナ回路の一面に形成され路面に接着可能な接着層と、その接着層とは反対側の前記アンテナ回路の他面を被覆して保護すると共に前記アンテナ回路を形成する導電性材料より絶縁抵抗値の大きな非導電性材料で形成される保護層とが、一体的に形成されたテープ部材で形成されている。
本発明の横断移動体検知システムによれば、例えば、複数の定置リーダを通信線などを介して交通信号機の制御装置に接続することによって、横断歩道に接近する移動体、及び横断中の移動体の有無を、交通信号機の制御装置により逐次把握することができる。よって、歩行者用の交通信号機の青信号灯の点灯タイミングや、その青信号灯の点灯時間の延長動作を、適宜行うことができるという効果がある。
また、移動タグの交信距離が短いもの(例えば数m未満のもの)であっても、移動タグと通信するアンテナ素子は、横断歩道上を横断する移動体の足下に存在するので、電波減衰などによる通信障害を発生しにくくすることができるという効果がある。更に、アンテナ素子は路面上に敷設される複数の帯線体の個々と一体に形成されるので、路面を掘り返してアンテナ素子を路面に埋設して埋め戻す必要もないので、アンテナ素子の設置工事を横断歩道の施工工事と共に簡易に行うことができるという効果がある。
更に、以下に記すように、請求項1から9のぞれぞれに記載の横断移動体検知システムついては、個々に特有の効果を奏する。
請求項1記載の横断移動体検知システムによれば、複数のアンテナ素子は横断歩道における複数の帯線体の個々と一体に形成されている。また、交通信号機の制御装置では、各アンテナ素子が通行路の横断方向(道幅方向)の何処の地点に位置するのかを予め把握しておくことができる。しかも、各アンテナ素子には定置リーダがそれぞれ電気的に接続されている。よって、交通信号機の制御装置は、複数ある定置リーダのうちのどの定置リーダから識別情報を受信したかを判別することで、当該移動タグの識別情報を受信したアンテナ素子を特定し、そのアンテナ素子が形成される帯線体の敷設位置に基づいて移動体が横断歩道上のどの位置を横断中であるかを把握できるという効果がある。このように移動体の横断歩道上の現在位置を逐次把握することによって、移動体の進行方向や、移動体の移動速度、更には横断歩道を渡りきるまでの所要時間の予測もできるという効果がある。
請求項2記載の横断移動体検知システムによれば、複数のアンテナ素子は横断歩道における複数の帯線体の個々と一体に形成されている。このため、交通信号機の制御装置では、各アンテナ素子が車両通行路の道幅方向の何処の地点に位置するのかを予め把握しておくことができる。しかも、定置リーダに接続される1のアンテナ素子は、切換手段により順次切り換えられるので、その切換を監視することにより定置リーダに接続中のアンテナ素子を特定することができる。
このため、交通信号機の制御装置は、定置リーダが横断歩道のどの位置に形成されるアンテナ素子との接続中に識別情報を受信したのかも判断できるので、そのアンテナ素子が形成される帯線体の敷設位置に基づいて移動体が横断歩道上のどの位置を横断中であるかを把握できるという効果がある。このように移動体の横断歩道上の現在位置を逐次把握することによって、移動体の進行方向や、移動体の移動速度、更には横断歩道を渡りきるまでの所要時間の予測もできるという効果がある。
しかも、横断歩道に形成される複数のアンテナ素子は、切換手段を介して定置リーダと順次切り換えられながら接続されるだけで、複数のアンテナ素子の全てが移動タグとの間でデータ通信を実現できる。よって、複数のアンテナ素子の個々に定置リーダをそれぞれ1基ずつ接続する必要がなく、定置リーダの設置台数を低減でき、設備コストの上昇を抑制できるという効果がある。
請求項3記載の横断移動体検知システムによれば、アンテナ素子は、複数の帯線体と一体に形成され横断歩道のほぼ全域を取り囲む略ループ状に形成されている。このため、移動タグと電波を送受信する場合、ループ状のアンテナ素子に発生する磁界はアンテナ素子の内側と外側とでは逆向きとなる。この磁界の向きに基づけば、移動タグがアンテナ素子のループ内又はループ外のいずれに位置するかを判別可能となる。これによって、交通信号機の制御装置では、移動体の横断歩道への接近、又は横断歩道を横断中の移動体の有無はアンテナ素子を介して定置リーダにより検知されるので、この検知に基づいた交通信号機の信号灯の点灯制御を行うことができるという効果がある。
請求項4記載の横断移動体検知システムによれば、請求項1から3のいずれかに記載の横断移動体検知システムの奏する効果に加え、横断歩道における通行路の横断方向の端部には横断歩道と隣り合わせで補助路面標示が標示され、しかも、この補助路面標示にも定置リーダと電気的に接続されるアンテナ素子が一体に形成されている。よって、定置リーダは、補助路面標示に形成されるアンテナ素子を介して、移動体に取り付けられた移動タグの接近を当該移動体が横断歩道へ踏み込む以前に検知して、交通信号機の制御装置へ出力できるという効果がある。
しかも、補助路面標示に形成されるアンテナ素子も、横断歩道の帯線体に形成されるアンテナ素子と同様に、移動体の足下に存在するので、電波減衰などによる通信障害を発生しにくくすることができるという効果がある。更に、アンテナ素子は路面上に敷設される補助路面標示と一体に形成されるので、路面を掘り返してアンテナ素子を路面に埋設して埋め戻す必要もないので、アンテナ素子の設置工事を横断歩道の施工工事と共に簡易に行うことができるという効果がある。さらに、歩行者などの移動体に対しては、補助路面標示自体によって通行路の横断以前の待機場所を指示することもできる。
請求項5記載の横断移動体検知システムによれば、請求項1から4のいずれかに記載の横断移動体検知システムの奏する効果に加え、アンテナ素子は導電性塗料で形成されるので、導電性塗料を単に塗布することでアンテナ素子を路面に形成することができる。よって、アンテナ素子として導電性の金属線を直接敷設する場合に比べて、アンテナ素子の敷設作業を簡素化できるという効果がある。また、硬化前の塗料の流動性を活かせば、アンテナ素子の敷設面が凹凸面であっても容易にアンテナ素子を敷設することができるという効果がある。
請求項6記載の横断移動体検知システムによれば、請求項5記載の横断移動体検知システムの奏する効果に加え、アンテナ素子は、導電性塗料より絶縁抵抗値の大きな非導電性塗料で形成される保護層によって被覆されるので、導電性塗料が直接に露出することを防止して、アンテナ素子の汚損、破損を防ぐことができるという効果がある。しかも、保護層は、アンテナ素子を形成する導電性塗料より絶縁抵抗が大きな非導電性塗料で形成されるので、例えば、一般に横断歩道を描く際に用いられる路面標示用塗料を使用できる。このため、かかる保護層は路面上に標示される横断歩道の帯線体として兼用できるので、横断歩道用の標示を別途路面に施す必要がなく、その分、アンテナ素子及び横断歩道の施工コストを低減できるという効果がある。
請求項7記載の横断移動体検知システムによれば、請求項5又は6に記載の横断移動体検知システムの奏する効果に加え、アンテナ素子を形成する導電性塗料は、粉末材料を添加することにより導電性が付与されるので、例えば、一般に横断歩道を描く際に用いられる路面標示用塗料に粉末材料を添加することで安価に製造することができるという効果がある。
請求項8記載の横断移動体検知システムによれば、請求項1から4のいずれかに記載の横断移動体検知システムの奏する効果に加え、テープ部材は、その接着層によって路面に直接接着できるので、アンテナ素子として機能するアンテナ回路の敷設作業を容易かつ迅速にできるという効果がある。しかも、そのアンテナ回路は、保護層によって被覆されるので、アンテナ回路の汚損、破損を防ぐことができるという効果がある。更に、例えば、テープ部材の保護層に予め着色しておけば、かかるテープ部材を路面上に標示される横断歩道の帯線体として兼用できるので、横断歩道用の標示を別途路面に施す必要がなく、その分、アンテナ素子及び横断歩道の施工コストを低減できるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の横断移動体検知システムを適用した一実施例である信号機システム1の外観図である。この信号機システム1は、主に、移動タグ10と、横断歩道標示20と、信号機制御盤30とを備えており、この信号機制御盤30には図4に示すようにリーダーライター(以下、「R/W」という。)ユニット40及び信号機制御ユニット50が搭載されている。
図1に示すように、移動タグ10は、人、車椅子、又は盲導犬などの各種の移動体2に取り付けられるものであり、例えば、視覚障害者が使う杖(白杖)、車椅子自体、盲導犬の装着具、又は人が所持するカードや携帯電話等の小物などに装着される。この移動タグ10は、例えば、電磁誘導方式やマイクロ波方式など非接触通信方式のR/Wユニット40(図4参照)によってデータ(情報)の読み出し及び書き込みが可能なIC(集積回路)タグであって、一般にはRF−ID(Radio Frequency-IDentification)と称されている。
横断歩道標示20は、車両が走行する道路3の路面4に敷設される道路横断用の路面標示であって、R/Wユニット40の非接触通信用アンテナとしての機能も兼ね備えている。具体的には、横断歩道標示20は、主に、複数の横帯線21と、2本の縦帯線22とを備えており、複数の横帯線21は、道路3の延長方向(図1左右方向)と略同一方向へ延びると共に道路3の横断方向に等間隔かつ平行に敷設されている。また、その複数の横帯線21の両端には、これらの複数の横帯線21と交差する様に、2本の縦帯線22が道路3の横断方向へ延びるように敷設されている。
これらの横帯線21及び縦帯線22は、路面標示用塗料を道路3の路面4上に塗着して固化させることにより形成され、区画線5より幅広で且つ略数mm程度の厚みを持たせて路面4に塗着されたものである。この横帯線21及び縦帯線22に使用される路面標示用塗料は、路面4の色とは異なる色(例えば白色)に着色された既存の路面標示用塗料である。尚、区画線5は、道路3の車道6と路側帯(路肩)7とを区画するために道路3の路面4に敷設される路面標示である。
横断歩道標示20には、複数の横帯線21の内部にアンテナ素子23がそれぞれ1つずつ一体となって形成されている。これらの複数のアンテナ素子23はそれぞれ、横帯線21の長手方向(図1左右方向)に延びる平面視略ロ字形のループ状に形成されており、横断歩道標示20を形成する固化した塗料により被覆されている。また、これらのアンテナ素子23には接続線23aがそれぞれ個別に接続されており、これらの複数の接続線23aは、横断歩道標示20の一方の縦帯線22内部に配線されている。これらの複数の接続線23aは、当該縦帯線22の内部を通ってそれぞれ信号機制御盤30と電気的に接続されている。
信号機制御盤30は、歩行者用信号機51及び車両用信号機52の各信号灯の点灯動作を制御するものであり、道路3の片側の歩道8に立設される支柱9に設置されている。歩道8は、道路3の横断方向両側の路側帯7より外側にそれぞれ設けられており、支柱9は、この両側の歩道8,8にそれぞれ1本ずつ立設されている。支柱9,9の双方には歩行者用信号機51及び車両用信号機52がそれぞれ配設され、一方の支柱9(図1手前側)にのみ上記した信号機制御盤30が設置されている。
歩行者用信号機51には、青信号灯51aと赤信号灯51bとが設けられており、この両信号灯51a,51bの点灯動作が後述する信号機制御ユニット50(図4参照)により制御される。また、車両用信号機52には、青信号灯52a、黄信号灯52b、及び赤信号灯52cが横一列に設けられており、これらの信号灯52a〜52cの点灯動作は、歩行者用信号機51の信号灯51a,51bの点灯動作に連動させて信号機制御ユニット50により制御される。
また、信号機制御盤30が設置される一方の支柱9の頂部には、信号機制御盤30から導出されるケーブル53が配線されており、このケーブル53が他方の支柱9(図1奥側)の頂部へ張架されている。このケーブル53は、信号機制御盤30と、他方の支柱9に配設される歩行者用信号機51及び車両用信号機52とを接続するためのものであり、これによって、合計4基の信号機51、51,52,52が1台の信号機制御盤30と電気的に接続されている。更に、道路3の横断方向両側の路側部分であって、歩道8,8上には、横断歩道標示2と隣り合わせに待機場所標示24,24がぞれぞれ敷設されている。
待機場所標示24は、横断歩道標示20を横断する前に移動体2が待機する場所(範囲)を示す路面標示であって、横断歩道標示20と同様に、R/Wユニット40の非接触通信用アンテナとしての機能も兼ね備えている。具体的には、待機場所標示24は、道路3の延長方向(図1の左右方向)と略同一方向へ延びる平面視略ロ字形の枠線であり、横断歩道標示20と同様の路面標示用塗料を、歩道8,8上に塗着して固化させることにより形成されている。この待機場所標示24,24を象る枠線は、例えば、区画線5と略等しい幅の略帯線状で且つ略数mm程度の厚みを持たせて歩道8,8上に塗着されている。
待機場所標示24を象る枠線には、上記したアンテナ素子23と同種のアンテナ素子25が一体となってそれぞれ形成されている。これらのアンテナ素子25は、待機場所標示24の枠線に沿った平面視略ロ字形のループ状に形成されており、待機場所標示24を形成する固化した塗料により被覆されている。また、各待機場所標示24に形成される各アンテナ素子25は各支柱9に隣接してそれぞれ敷設されており、各アンテナ素子25には接続線25aがそれぞれ接続されている。
ここで、一方のアンテナ素子25(図1手前側)に接続される接続線25aは、図1の手前側に図示した歩道8の路面及び支柱9を伝って信号機制御盤30へ導入されている。また、他方のアンテナ素子25(図1奥側)に接続される接続線25aは、図1の奥側に図示した歩道8の路面、支柱9、ケーブル53、及び図1の手前側に図示した支柱9を伝って信号機制御盤30へ導入されている。これによって、待機場所標示24,24のアンテナ素子25,25は信号機制御盤30と電気的にそれぞれ接続されている。
図2は、移動タグ10の電気的構成を示したブロック図である。移動タグ10には、通信距離が最大数m程度確保できる電磁誘導方式のICタグが採用されている。図2に示すように、移動タグ10には、主に、制御回路11と、メモリ12と、アンテナ回路13と、電源回路14と、復調回路15と、変調回路16とが設けられている。制御回路11は、R/Wユニット40からの指令を受けて移動タグ10の動作を制御する制御装置であり、メモリ12と、復調回路15と、変調回路16とそれぞれ接続されている。
メモリ12は、制御回路11により各種データが読み出され又は書き込まれる不揮発性の書換可能な記憶装置であり、その一部に移動タグ10毎に付与される固有の識別コードや、その他の情報が記憶されている。この移動タグ10の識別コードは、当該移動タグ10を他の多数の移動タグ10の中から特定するための情報であり、例えば、数字、文字若しくは記号又はこれらの組み合わせを用いて構成される。また、移動タグ10のメモリ12に記憶される識別コード以外の情報としては、当該移動タグ10の取り付けられる移動体2が健常者、視覚障害者、盲導犬、又は車椅子である旨を示す情報(以下「障害者情報」という。)がある。
信号機システム1では、待機場所標示24へ接近する複数の移動体2、又は横断歩道標示20を横断する複数の移動体2を相互に区別するため、異なる識別コードをメモリ12に記憶させた複数の移動タグ10が、複数の移動体2にそれぞれ取り付けられる。即ち、移動タグ10に記憶される識別コードは、各移動体2の相違を識別するために利用される。アンテナ回路13は、非接触通信に用いられるコイル状のアンテナであり、横断歩道標示20のアンテナ素子23又は待機場所標示24のアンテナ素子25が発する電磁波(電波)を受信すると共に、制御回路11により読み出された識別コードを横断歩道標示20のアンテナ素子23又は待機場所標示24のアンテナ素子25へ送信する。
また、電磁波を受けたアンテナ回路13には電磁誘導による誘起電圧が生じる。このアンテナ回路13には、電源回路14が接続されており、電源回路14は、アンテナ回路13における誘起電圧を受けて移動タグ10の各部の駆動電圧を生成するものである。この電源回路14により生成された駆動電圧は、図示しない接続線を介して移動タグ10の各部へ電力供給される。復調回路15は、アンテナ回路13により受信したアナログ信号をデジタル信号に復調して制御回路11へ出力するものであり、変調回路16は、制御回路11から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変調してアンテナ回路13へ出力するものである。
図3は、横断歩道標示20の横帯線21の横断面図であって、図1のIII−III線における断面図である。図3に示すように、横断歩道標示20の横帯線21は、主に、アンテナ素子23と、被覆塗膜26と、絶縁素子27と、下地塗膜28とから形成されている。路面4上には、既存の路面標示用塗料が固化した下地塗膜28が層状に形成されており、この下地塗膜28上にアンテナ素子25及び絶縁素子27が形成されている。絶縁素子27は、下地塗膜28の幅方向(図3左右方向)略中央に設けられ、この絶縁素子27の幅方向両側面に密着してアンテナ素子23がそれぞれ設けられている。
アンテナ素子23及び絶縁素子27は図3の紙面に対する垂直方向に連続して延設されており、被覆塗膜26は、下地塗膜28とともにアンテナ素子23及び絶縁素子27の全体を被覆している。ここで、被覆塗膜26及び下地塗膜28はともに上記した既存の路面標示用塗料が固化したものであり、アンテナ素子23は、その既存の路面標示用塗料に導電性を有する粉末材料を添加した導電性塗料が固化したものである。この導電性塗料は、例えば、導電性カーボンブラック、又は銅若しくは銀等の導電性金属粉末の添加により既存の路面標示用塗料に比べて絶縁抵抗値が小さくされ、導電性が付与されている。一方、絶縁素子27は、既存の路面標示用塗料よりも更に絶縁抵抗値が大きな塗料で形成されている。
なお、説明は省略するが、上記した待機場所標示24についても横帯線21と同様な内部構造を有しており、かかる内部構造によりアンテナ素子25が一体的に形成されている。また、各アンテナ素子23と信号機制御盤30とを接続する接続線23aを、横断歩道標示20の縦帯線22内部に配線する場合にも、上記した横帯線21の内部構造を適用することができる。
図4は、信号機システム1の電気的構成を示したブロック図である。ここで、信号機制御盤30に収容される複数のR/Wユニット40はともに同様の電気的構成を有するので、図中では、1基のR/Wユニット40についてのみ電気的構成を示している。図4に示すように、信号機制御盤30には、複数のR/Wユニット40と、信号機制御ユニット50とが設けられており、この複数のR/Wユニット40と信号機制御ユニット50とは通信線31を介してそれぞれ通信可能に接続されている。複数のR/Wユニット40には、上記した複数のアンテナ素子23が接続線23aを介してそれぞれ個別に接続されると共に、上記した2つのアンテナ素子25が接続線25aを介してそれぞれ個別に接続されている。
R/Wユニット40は、信号機制御盤30内に収容されており、アンテナ素子23(又はアンテナ素子25)を介して、移動タグ10に記憶される識別コードを読み取るための機能と、必要に応じて移動タグ10に各種情報を書き込むための機能とを備えた機器である。R/Wユニット40には、CPU41と、ROM42と、RAM43と、入出力回路44と、電源回路45と、復調回路46と、変調回路47とが設けられている。ここで、CPU41、ROM42及びRAM43はバスラインを介して相互に接続され、このバスラインは更に入出力回路44とも接続されている。
CPU41は、R/Wユニット40の各部を制御する演算装置であり、ROM42は、このR/Wユニット40で実行される制御プログラムや各種の固定値データを格納した書換え不能な不揮発性メモリである。RAM43は、R/Wユニット40の各動作の実行時に各種のデータを一時的に記憶するための書換可能な揮発性メモリであり、移動タグ10から読み取った識別コードや障害者情報を一時的に記憶することができる。入出力回路44には、更に、1つの接続線23a(又は接続線25a)、電源回路45、復調回路46、変調回路47及び通信線31が接続されている。
電源回路45は、外部からの給電を常時受けてR/Wユニット40の各部へ常時必要な電力を供給するためのものである。復調回路46は、アンテナ素子23(又はアンテナ素子25)により受信した電磁波信号(アナログ信号)を識別コードや障害者情報等の元データ(デジタル信号)に復調するものである。変調回路47は、移動タグ10へ送信される各種指令などの各データ(デジタル信号)を電磁波信号(アナログ信号)に変調してアンテナ素子23(又はアンテナ素子25)へ出力するものである。接続線23a(又は接続線23a)には上記したアンテナ素子23(又はアンテナ素子25)が1つ接続されており、通信線31には信号機制御ユニット50が接続されている。
信号機制御ユニット50は、歩行者用信号機51及び車両用信号機52の点灯動作を制御するためのものであり、例えば、複数のR/Wユニット40からの出力に基づいて、歩行者用信号機51の青信号灯51a及び車両用信号機52の赤信号灯52cの点灯時間を調整することができる。この信号機制御ユニット50には、上記した歩行者用信号機51,51及び車両用信号機52,52と上記したケーブル53を介して接続されている。
次に、図1から図4を参照して、上記のよう構成された信号機システム1で実行される処理及び各部の動作について説明する。まず、図1に示すように移動タグ10は、移動体2である歩行者の白杖や、盲導犬の装着具、又は車椅子に取り付けられる。一方、横断歩道標示20及び一対の待機場所標示24の複数のアンテナ素子23,25からは、信号機制御盤30に収容される複数のR/Wユニット40によって所定周波数(例えば13.56MHz)の電磁波が送信されている。
ここで、移動タグ10を付けた移動体2が歩道8を移動して、待機場所標示24に接近すると、アンテナ素子25からの電磁波が移動タグ10に到達して、その電磁波を受けたアンテナ回路13に誘起電圧が生じ、その誘起電圧により移動タグ10が起動されR/Wユニット40との通信を開始する。この移動タグ10とR/Wユニット40との通信では、まず、R/Wユニット40のCPU41がROM42に記憶される制御プログラムに従って処理を実行し、移動タグ10の識別コード及び障害者情報を要求するコマンドがデジタル信号として出力される。
出力されたコマンドは、変調回路47によりアナログ信号に変調され、入出力回路44を経てアンテナ素子25から移動タグ10へ電磁波として送信される。この電磁波は、移動タグ10のアンテナ回路13により受信され、復調回路15により制御回路11のクロック周波数に同期させながらデジタル信号のコマンドに復調される。
移動タグ10では、R/Wユニット40からのコマンドを受けて、制御回路11によって識別コード及び障害者情報がメモリ12から読み出され、その識別コード及び障害者情報が変調回路16によりデジタル信号からアナログ信号に変調されて、アンテナ回路13により電磁波として送信される。移動タグ10が送信した電磁波は、待機場所標示24のアンテナ素子25により受信され、R/Wユニット40の復調回路46によりCPU41のクロック周波数に同期させながらデジタル信号の識別コード及び障害者情報に復調されて、RAM43に一時的に記憶される。
RAM43に記憶された識別コード及び障害者情報は、R/Wユニット40から通信線31を介して信号機制御ユニット50へ送信される。信号機制御ユニット50では、各R/Wユニット40の接続先が複数あるアンテナ素子23,25のうちの何れであるかを記憶しており、更に、各アンテナ素子23,25の敷設場所も記憶している。よって、信号機制御ユニット50では、待機場所標示24に形成されるアンテナ素子25と接続されるR/Wユニット30から識別コード及び障害者情報を受信した場合、その識別コードで特定される移動タグ10を付けた移動体2が待機場所標示24に接近中であることを検知できる。
待機場所標示24への移動体2の接近が検知されると、移動体2が待機場所標示24の枠線の内側、即ち、アンテナ素子25のループ内へ踏み入るまで待機する。具体的には、移動タグ10がアンテナ素子25のループ外からループ内へ入ると、アンテナ素子25が移動タグ10から受信する電磁波による磁界(の向き)が反転するので、この磁界の反転が検出されるまで待機する。その後、アンテナ素子25における磁界が反転せずに、移動タグ10と交信不能となれば、移動体2が横断歩道標示20を横断せずに通り過ぎたものと判断して、信号機制御ユニット50の通常の制御処理を継続する。
一方、待機場所標示24への移動体2の接近が検知された後、アンテナ素子25における磁界の反転が検出されると、信号機制御ユニット50によって、車両用信号機52の青信号灯52aが消灯され黄信号灯52bが所定時間点灯された後に消灯されて、赤信号灯52cが点灯され、この点灯後、歩行者用信号機51の赤信号灯51bが消灯されて青信号灯51aが点灯される。即ち、移動体2が待機場所標示24の枠線内に入り込むと、自動的に車両用信号機52の赤信号灯52cが点灯されて、歩行者用信号機51の青信号灯51aが点灯されるのである。
ここで、移動タグ10から受信した障害者情報が「健常者」を示す内容である場合には、信号機制御ユニット50は、歩行者用信号機51の青信号灯51aの点灯時間を通常値(以下「横断時間」という。)のまま変更せず、その横断時間が経過すると、歩行者用信号機51の青信号灯51aを所定時間点滅させた後に、その青信号灯51a及び車両用信号機52の赤信号灯52cを消灯して、歩行者用信号機51の赤信号灯51b及び車両用信号機52の青信号灯52aを点灯する。
一方、移動タグ10から受信した障害者情報が「健常者」以外を示すものである場合、即ち、「視覚障害者」、「盲導犬」、又は「車椅子」などを示す内容である場合には、信号機制御ユニット50によって、歩行者用信号機51の青信号灯51aの点灯時間が所定時間延長される。ここで、歩行者用信号機51の青信号灯51aの点灯時間を延長させる時間値(以下「延長時間」という。)は、信号機制御ユニット50に内蔵される記憶メモリ(図示せず)に予め記憶されている。
よって、移動タグ10から受信した障害者情報が「健常者」以外を示すものである場合、即ち、歩行者用信号機51の青信号灯51aの点灯時間を延長する場合には、歩行者用信号機51の青信号灯51を点灯すると、まず、横断時間に延長時間を加算した時間分の計時を開始し、かかる計時が終了するまで、青信号灯51aを点灯させたまま待機する。この待機によって、歩行者用信号機51の青信号灯51aの点灯時間が延長時間分だけ延長されるのである。
その後、延長時間が加算された横断時間の計時が終了すれば、歩行者用信号機51の青信号灯51aを所定時間点滅させた後に、その青信号灯51a及び車両用信号機52の赤信号灯52cを消灯して、歩行者用信号機51の赤信号灯51b及び車両用信号機52の青信号灯52aを点灯して、信号機制御ユニット50は通常の制御処理に復帰するのである。
以上説明したように本実施例の信号機システム1によれば、信号機制御ユニット50は、複数のアンテナ素子23,25の敷設位置に基づいて移動タグ10の所在位置を検知できるので、移動タグ10が取り付けられた移動体2が道路3を横断し終えるまで、当該各移動体2の動きを監視することができ、更に、横断歩道標示20及び待機場所標示24付近における移動体2の有無を検知することができる。
また、信号機制御ユニット50によれば、歩行者用信号機51の青信号灯51aの点灯中に、移動タグ10が両方のアンテナ素子25,25でにより検知された場合、即ち、同一の識別コードが両方のアンテナ素子25,25を介して受信された場合に、当該移動タグ10の付された移動体2が横断歩道標示20を横断して待機場所標示24,24の一方から他方まで渡りきったものと判断することができる。
更に、複数の移動体2が横断歩道標示20を横断する場合に、当該複数の移動体2に付けられる各移動タグ10にはそれぞれ異なる識別コードが付与されている。よって、信号機制御ユニット50では、複数のアンテナ素子23,25及びR/Wユニット40を介して読み取った識別コードに基づけば、複数の移動体2(移動タグ10)の個々を区別でき、更には、個々の移動体2(移動タグ10)が所在する横断歩道標示20及び待機場所標示24上の現在位置を逐次検知することもできる。
しかも、複数のアンテナ素子23は各横帯線21に合わせて一定間隔で敷設されるので、信号機制御ユニット50では、各アンテナ素子23間を移動する移動体2(移動タグ10)の移動方向や移動速度を算出することもできる。よって、移動体2の移動速度及び現在位置から横断歩道標示20を渡り切るために要する横断時間の予測値を演算することもできる。
次に、上記実施例の変形例について説明する。図5は、第2実施例の信号機システムの平面図である。第2実施例の横断歩道標示60は、上記した第1実施例の横断歩道標示20に対して、その構造を変更したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
図5に示すように、横断歩道標示60は、道路3の延長方向(図5左右方向)と略同一方向へ延びると共に道路3の横断方向に等間隔かつ平行に敷設される複数の横帯線61とを備えており、この複数の横帯線61は路面4に接着可能なテープ部材70(図6(a)参照)により形成されている。このテープ部材70の内部には、信号機制御盤30に収容されるR/Wユニット40の非接触通信用アンテナとして機能するアンテナ回路層72が形成されている。
また、複数の横帯線61の両端には、これらの横帯線61と交差するように隣接した2本の縦帯線62,63が道路3の横断方向(図5上下方向)へ延びるように敷設されている。この2本の縦帯線62,63は、路面4に接着可能なテープ部材75,76で形成されており、一方の縦帯線62(図5左側)を形成するテープ部材75の内部には、各横帯線61に形成されるアンテナ回路層72と個別に電気的に接続される複数の接続線75aが形成されている。
これらの複数の接続線75aは、複数のアンテナ回路層72と、信号機制御盤30に収容される複数のR/Wユニット40とをそれぞれ個別に接続するものであり、信号機制御盤30へ導入されている。また、待機場所標示64,64は、横断歩道標示60と隣り合わせに道路3の路側部分(図5上下部分)に敷設されており、これらの待機場所標示64,64は、横断歩道標示60の横帯線61と同様に、上記したテープ部材70により形成されている。
図6(a)は、図5のVI(a)−VI(a)における断面図であり、図6(b)は、図5のVI(b)−VI(b)における断面図であり、図6(c)は、図5のVI(c)−VI(c)における断面図である。即ち、図6(a)は、横断歩道標示60の横帯線61又は待機場所標示64の断面図であり、図6(b)は、一方の縦帯線62の断面図であり、図6(c)は、他方の縦帯線63の断面図である。
図6(a)に示すように、テープ部材70は、横断歩道標示60の横帯線61又は待機場所標示64として用いられるものであり、可撓性を有する薄膜状に形成されている。このテープ部材70には、被覆層71と、アンテナ回路層72と、接着層73とが積層して形成されている。被覆層71は、アンテナ回路層72、特に、絶縁部材72bより表面強度や耐食強度が大きな薄膜であり、路面4の色と異なる白色に着色されている。この被覆層71の着色によって、テープ部材70を横断歩道標示60の横帯線61又は待機場所標示64として機能させることができる。なお、被覆層71に光を拡散反射させる加工を施しても良い。
アンテナ回路層72は、移動タグ10との間で電磁波の送受信を行うアンテナ素子として機能するものであり、銅などの導電性を有する金属材料(導電性材)で形成された導電線72a,72aが幅方向(図6の左右方向)に間隔を隔てて設けられている。各導電線72a,72aは、それらより絶縁抵抗が極めて大きな絶縁部材72b内に埋設されており、この絶縁部材72bの上面が被覆層71により被覆されている。接着層73は、粘着性を有する樹脂で形成され、アンテナ回路層72を設置面である路面4に接着するためのものである。
図6(b)に示すように、テープ部材75は、一方の縦帯線62として用いられるものであり、テープ部材70と同様に可撓性を有する薄膜状に形成されている。このテープ部材75には、被覆層71と、回路層75と、接着層73とが積層して形成されており、回路層75には、銅などの導電性を有する金属材料(導電性材)で形成された複数の接続線75aが幅方向(図6左右方向)に間隔を隔てて絶縁部材72b内に埋設されている。また、図6(c)に示すように、テープ部材76は、他方の縦帯線63として用いられるものであり、上記した被覆層71と接着層73とが積層形成されたものである。
図7は、第3実施例の信号機システム80の横断歩道標示20の平面図である。第3実施例の信号機システム80は、上記した第1実施例に対して、複数のアンテナ素子23,25とR/Wユニットとの接続方式を変更したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。図7に示すように、道路3における一方の路側帯7(図7下側)の路面4には1基のR/Wユニット100が設置されている。
R/Wユニット100は、横断歩道標示20のアンテナ素子23及び待機場所標示24のアンテナ素子25を介して、移動タグ10に記憶される識別コードを読み取ると共に必要に応じて移動タグ10に各種情報を書き込むための機器である。このR/Wユニット100には、横断歩道標示20に形成される各アンテナ素子23に接続される複数の接続線23a、及び2箇所の待機場所標示24に形成される各アンテナ素子25に接続される2本の接続線25aがそれぞれ接続されている。このとき一方のアンテナ素子25(図7上側)の接続線25aは、一方の縦帯線22(図7左側)の内部を通ってR/Wユニット100へ配線されている。
図8は、信号機システム80の電気的構成を示すブロック図である。図8に示すように、R/Wユニット100は、上記した複数のアンテナ素子23,25が複数の接続線23a,25aを介して切換制御回路101に接続されており、この切換制御回路101は更に入出力回路34と接続されている。切換制御回路101は、CPU31の指令に基づいて入出力回路34の接続先を複数の接続線23a,25aのいずれかに1つに接続すると共に、当該1つの接続先を順次切り換えるものである。また、入出力回路34には、通信モジュール102が接続されている。
通信モジュール102は、デジタル携帯電話網を利用したパケット通信を行うための機器であり、デジタル携帯電話網や公衆電話回線網などを含む通信回線網110との間で無線方式による通信を行うことができる。通信回線網110には、信号機制御盤120が通信回線を介して接続されている。この信号機制御盤120は、第1実施例の信号機制御盤30から複数のR/Wユニット40を取り除いたものであり、信号機制御ユニット50と、通信モジュール121とを備えている。通信モジュール121は、無線又は有線方式を用いて通信回線網110との間でパケット通信を行うための機器である。
第3実施例の横断歩道標示90によれば、R/Wユニット100では、ROM32に記憶される制御プログラムがCPU31により実行され、この実行によって、切換制御回路101は、入出力回路34の接続先を複数の接続線23a,25aの間で順次切り換える。結果、複数のアンテナ素子23,25の全てから順番に電磁波が送信される。
かかる環境下において、移動体2が待機場所標示24に接近するか、又は横断歩道標示20を横断すると、当該移動体2に取り付けられた移動タグ10は、複数のアンテナ素子23,25の中で最も近いものを介してR/Wユニット100との間で通信を行う。この通信によって、移動タグ10のメモリ12に記憶される識別コードや障害者情報がR/Wユニット100により読み取られる。
一方、R/Wユニット100のCPU31では、切換制御回路101による接続先が常に監視されており、この監視によって複数のアンテナ素子23,25の中から移動タグ10と実際に通信を行ったものが判別される。この判別の結果データ(以下「判別データ」という)は、RAM33に一時的に記憶され、通信モジュール102によって、移動タグ10から読み取った識別コード及び障害者情報と共に通信回線網110を介して信号機制御盤120へ送信される。
信号機制御盤120では、R/Wユニット100からの判別データが通信モジュール121により受信されて信号機制御ユニット50へ出力される。信号機制御ユニット50では、受信した判別データに基づいて、複数のアンテナ素子23,25の中から移動タグ10との通信に実際に用いられたものを特定する。この特定によって、移動タグ10に最も近いアンテナ素子23又はアンテナ素子25が判明する。ここで、上記したように信号機制御ユニット50は、各R/Wユニット40の接続先が複数あるアンテナ素子23,25のうちの何れであるかを記憶しており、更に、各アンテナ素子23,25の敷設場所も記憶している。よって、上記により判明した移動タグ10に最も近いアンテナ素子23又はアンテナ素子25の敷設場所から、移動体2の所在位置を把握することができる。
図9は、第4実施例の横断歩道標示130の平面図である。第4実施例の横断歩道標示130は、上記した第1実施例の横断歩道標示20に対して、横断歩道標示20に一体となって形成されるアンテナ素子の形態を変更したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
図9に示すように、横断歩道標示130は、複数の横帯線21と、その2本の横帯線22とを備えており、更に、道路3の横断方向(図9上下方向)両側に標示される2本の横帯線21及び2本の縦帯線22に沿って、平面視略ロ字形のループ状に形成されたアンテナ素子131を備えている。このアンテナ素子131は、横断歩道標示130の全周を連続的に一回りしており、横断歩道標示130の標示領域のほぼ全域を取り囲むループアンテナ素子である。また、アンテナ素子131は、横断歩道標示130の外周を取り巻く4本の帯線21,21,22,22内部に一体となって形成されており、接続線132を介して信号機制御盤140と接続されている。
図10は、信号機制御盤140の電気的構成を示すブロック図である。図10に示すように、信号機制御盤140は、3基のR/Wユニット40と、信号機制御ユニット50とを備えており、各R/Wユニット40には上記した複数のアンテナ素子131及びアンテナ素子25,25が接続線132,25a,25aを介してそれぞれ個別に接続されている。
図11は、第5実施例の横断歩道標示150の平面図である。第5実施例の横断歩道標示150は、上記した第4実施例の横断歩道標示130に対してアンテナ素子の平面形態を変更したものである。以下、第9実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
図11に示すように、横断歩道標示150は、複数の横帯線21と、2本の縦帯線22と、ループ状に形成されたアンテナ素子151とを備えている。このアンテナ素子151は、主に全ての横帯線21と一方の縦帯線22(図11左側)との輪郭を縁取るようにして連続的に形成されており、横断歩道標示150の標示領域のほぼ全域を取り囲む平面視略櫛形状のループアンテナ素子である。また、アンテナ素子151は、横断歩道標示150の横帯線21及び縦帯線22と一体になって形成されており、接続線132を介して信号機制御盤140と接続されている。
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、第1実施例では、待機場所標示24は、その中央部分に塗料を塗着しない平面視略ロ字形の枠線に形成されたが、かかる待機場所標示の平面形態は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、待機場所となる箇所の全面を塗料により塗り潰した長方形や正方形であっても良い。また、第1実施例では、アンテナ素子23を導電性を有する粉末材料を添加した導電性塗料により形成したが、かかるアンテナ素子の材質は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、アンテナ素子としての導電性を有する金属線を横断歩道の横帯線の塗料内に埋設するようにしても良い。
また、第2実施例では、横断歩道標示60における複数の横帯線61又は待機場所標示64をテープ部材70又はテープ部材75のみにより形成したが、横断歩道標示又は待機場所標示の形態は必ずしもこれのみに限定されるものではない。例えば、横断歩道標示又は待機場所標示を象って路面4にテープ部材70,75,76を接着した後、これらのテープ部材70,75,76を被覆するように路面標示用塗料を路面4に塗着しても良い。即ち、路面4に接着したテープ部材70,75,76を路面標示用塗料により保護するようにしても良い。
また、第3実施例では、R/Wユニット100により受信された移動タグ10の各種情報は、信号機51,52に隣接設置される信号機制御盤120の信号機制御ユニット50へ通信回線網110を介して送信された。しかしながら、R/Wユニットによる各種情報の送信先は、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、当該R/Wユニットと通信回線網を通じて接続され信号機を遠隔地から制御するためのコンピュータ装置であっても良い。
また、第4及び5実施例では、横断歩道標示130,150に形成されるアンテナ素子131,151を、待機場所標示24,24に形成されるアンテナ素子25,25とは別体に形成したが、例えば、横断歩道標示及び待機場所標示の標示領域をまとめて網羅する1つの略ループ状のアンテナ素子を形成するようにしても良い。即ち、横断歩道標示に形成されるアンテナ素子と待機場所標示に形成されるアンテナ素子とを一体的に形成しても良い。