以上の通り、従来の反射型液晶表示装置において反射電極下に位置する絶縁膜の凹凸構造は、感光性能を有する有機系絶縁膜又は無機系絶縁膜を用いてベースとなる凸部を形成し、その後有機系絶縁膜又は無機系絶縁膜で凸部を覆うことで形成されている。
しかしながら、凸部の下には金属配線、電極、スイッチング素子等が形成されているので、凸部形成時のエッチング工程において、金属配線、電極、スイッチング素子等がエッチング液に曝されることになる。その結果、エッチング液と下地膜との反応によるスイッチング素子の特性劣化や、エッチング液の残留によるスイッチング素子の信頼性低下等が引き起こされていた。
また、反射電極下の絶縁膜に感光性能のない有機系絶縁膜又は無機系絶縁膜等を用いる場合、絶縁膜上にフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングにより凸部パターンを形成する。この場合は、エッチング処理中に下地膜がプラズマに曝されることになるため、プラズマダメージによりスイッチング素子特性の劣化が引き起こされていた。
一方、従来の反射型液晶表示装置の製造には、前述したように多くの工程数を必要とする。そのため、製造コストの上昇により、反射型液晶表示装置の単価が高くなっていた。反射型液晶表示装置が多くの製造工程数を必要とする理由は、明るい高品位表示を得るために、高性能スイッチング素子と高性能反射板とを同一絶縁基板上に作り込むためである。更に、高性能反射板の製造に、反射板表面の凹凸構造を所望の形状に形成できる方法を用いる必要があるためである。それゆえ、従来の反射型液晶表示装置では、多数の成膜工程、PR(フォトレジスト)工程及びエッチング工程等が必要となっていた。
これに対して、製造工程簡略化の有効な手段が、採られていないのが現状である。繰り返すが、反射電極下に位置する凹凸構造は次のように製造される。まず感光性樹脂を塗布形成し、露光工程及び現像工程により感光性樹脂にパターンニングを行い、凸部パターンを形成する。ただし、この凸部パターンの形成されない領域は、完全に感光性樹脂膜が除去されている。その後、凸部パターンに熱処理を加えることで丸みを有する凸形状へ変換し、更に所望の滑らかな凹凸面を作り出すために、凸形状パターンを覆うように有機絶縁層を塗布形成する。
すなわち、反射電極下の絶縁膜は、凸形状からなる膜とその上に覆われた膜との二層で構成されている。そして、この絶縁膜は、反射電極とスイッチング素子及び配線とを電気的に絶縁する層間絶縁膜としての機能を有している。その後、この絶縁層にコンタクトホールを形成後、アルミニウム等の金属薄膜を堆積し、この金属薄膜をパターニングすることで、絶縁膜の微細な凹凸形状を反映した反射電極を得ていた。
このように、反射電極形成には、1)ベースとなる凸部を形成するための絶縁膜の形成工程、2)凸部形成工程、2)凸部パターン上の絶縁膜形成工程、3)コンタクトホール形成工程、4)高反射効率金属薄膜形成工程、5)反射電極の形成工程と、五つの工程数を必要としていた。
そこで、本発明の目的は、製造工程中でのスイッチング素子の特性劣化を防止することにより高輝度及び高品位表示性能を実現し、かつ製造工程数の削減により製造コストの低下を実現する、反射型液晶表示装置及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決する本発明の反射型液晶表示装置は、透明な第一の基板と、この第一の基板上に設けられた透明電極と、第二の基板と、この第二の基板上に設けられたスイッチング素子と、このスイッチング素子上に設けられるとともに表面に凹凸構造が形成された絶縁膜と、この絶縁膜上に前記凹凸構造を反映させた形状で設けられるとともに前記スイッチング素子に接続された反射電極と、前記第一の基板の前記透明電極側と前記第二の基板の前記反射電極側とで挟み込まれた液晶層とを備えたものである。そして、前記絶縁膜は、前記スイッチング素子を当該スイッチング素子形成以降保護するとともに、膜厚の異なる領域が不規則に配置されたことにより前記凹凸構造が形成されたものである。
従来の反射型液晶表示装置では、金属配線、電極、スイッチング素子等の上に凸形状が位置することから、凸部形成時に下地部分がプロセス雰囲気に曝されるので、金属配線、電極、スイッチング素子等がダメージを受け、その結果、スイッチング素子の特性劣化が起きていた。これに対し、本発明における絶縁膜は、金属配線、電極、スイッチング素子等を常に覆っていることから、凹凸構造形成時に金属配線、電極、スイッチング素子等がプロセス雰囲気に曝されることがないため、これらをプロセスダメージから防ぐことができる。また、本発明における絶縁膜は、凹凸構造が膜厚の異なる領域からなり、すなわち、膜厚の厚い領域が凸部、膜厚の薄い領域が凹部で構成されている。そのため、凹凸構造に他の膜を必要としないので、工程数が削減される。
また、本発明に係る反射型液晶表示装置は、滑らかな形状を有する連続した凹凸構造の反射電極を有するので、明るい表示が可能である。なぜなら、反射型液晶表示装置の明るさは、反射電極の凹凸構造の有する傾斜角度により決定されるからである。
また、凹凸構造が形成された絶縁膜は、同一材料からなる単層膜であってもよい。絶縁膜が単層かつ同一工程で形成されれば、絶縁膜の凹凸構造部分と層間絶縁部分とを別々の工程で形成する必要がなくなることから、従来の反射型液晶表示装置における複雑な凹凸形成工程が簡略化される。
また、凹凸構造が形成された絶縁膜は、光吸収性を有していてもよい。これにより、隣接する反射電極間から入射する光を当該絶縁膜で吸収できることになる。したがって、反射電極裏面に回り込む入射光を遮断できることにより、入射光のスイッチング素子への照射を抑制できるので、良好なスイッチング特性を実現できる。
また、凹凸構造は、複数の突起部が不規則に配置されたものとしてもよい。これにより、反射電極からの反射光の干渉を抑制することができるため、良好な反射性能を有する凹凸構造を形成できる。更に、凹凸構造の突起部は、島状又は線状の平面形状で構成してもよい。これにより、明るい反射性能が得られる。つまり、これらの凹凸構造を用いた反射型液晶表示装置は、明るい表示性能が得られる。
また、凹凸構造は、複数の窪み部が不規則に配置されたものとしてもよい。これにより反射電極からの反射光の干渉を抑制することができるため、良好な反射板性能を有する凹凸構造を形成できる。更に、凹凸構造の窪み部は、穴状又は線状の平面形状で構成してもよい。これにより、明るい反射性能が得られる。つまり、これらの凹凸構造を用いた反射型液晶表示装置は、明るい表示性能が得られる。
また、凹凸構造は、1画素単位又は2以上の画素単位の不規則な凹凸形状の繰り返しから構成してもよい。これにより、反射光の干渉を抑制することができるため、この反射電極を用いて作成した反射型液晶表示装置は、光源による波長依存性もなく、色特性の劣化もない、明るく高品位な表示性能となる。
また、凹凸構造が形成された絶縁膜は、感光性能を有する有機樹脂又は無機樹脂であってもよい。これにより、感光性樹脂に直接露光及び現像処理を行うことで所望の凹凸パターン形成が可能となるので、凹凸構造を形成するために必要とされたフォトレジストの塗布、形成、現像、剥離工程が一切不要となる。したがって、プロセス数の簡略化が図れるので、反射型液晶表示装置の低コスト化が可能となる。
本発明に係る反射型液晶表示装置の製造方法は、本発明に係る反射型液晶表示装置を製造する方法である。すなわち、前記凹凸構造において、前記絶縁膜にフォトリソ処理を行うことで所定のパターン形成を行い、この際に所定の膜厚を残してパターンニングして、膜厚の薄い領域と厚い領域とを平面的に不規則に形成することにより、絶縁膜表面に凹凸構造を形成するものである。
これにより、絶縁膜に形成される凹凸構造の平面形状とその配置を、マスクパターンを反映して前記絶縁膜に作り込むことができることから、その平面形状を正確に制御でき、所望の凹凸形状を再現性よく形成することができる。更に、前記絶縁膜に対して、所望の膜厚を残すようにエッチングすれば、前記凹凸の断面形状も再現性よく制御できるため良好な凹凸構造を実現できる。しかも、これらの製造工程がわずか1PR工程+1エッチング工程でできることから、プロセスの簡略化も図れる。また、前記凹凸絶縁膜下に位置する、金属配線、電極、スイッチング素子、絶縁膜がプロセス雰囲気(エッチング液、エッチングガス等)に曝されることがないため、前記金属配線、絶縁膜、スイッチング素子にダメージを与えることがなく、良好な素子特性を有する反射型液晶表示装置を実現することができる。
更に、本発明によれば、前記絶縁膜に形成される凹凸構造は、該絶縁膜を形成する工程と、凹凸レジストパターンを形成するためのフォトリソ工程と、該絶縁膜の下部に所定の膜厚を残すようにエッチングを行う工程と、前記絶縁膜上に残ったレジスト膜を剥離する工程と、その後、前記凹凸膜を熱処理によりメルトさせる工程により、滑らかで且つ連続した凹凸構造を形成してもよい。
このような製造方法によれば、前記絶縁膜下に位置するスイッチング素子、配線、電極等を露出させることなく凹凸パターン加工が可能となるため、スイッチング素子等にプロセスダメージを与えることなく凹凸パターンを形成することができる。また、前記反射電極下に位置する凹凸絶縁膜は、従来の反射型液晶表示装置の凹凸絶縁膜と異なりベース凸形成工程とその上の膜形成工程とを必要としないので、同一膜を用いて同一工程で凹凸絶縁膜を形成できることから、工程数を簡略化できる。
更に、前記絶縁膜に形成される凹凸構造は、該絶縁膜として感光性能を有する有機系絶縁膜又は無機系絶縁膜を形成する工程と、凹凸パターンを形成するための露光工程と、該絶縁膜の下部に所定の膜厚を残すようにエッチング現像を行う現像工程と、その後、前記凹凸膜を熱処理によりメルトさせるメルト工程とにより、滑らかで且つ連続した凹凸構造を製造してもよい。
これにより凹凸構造を形成するために必要とされたレジストの塗布、形成、現像、剥離工程が、一切不要となり、感光性樹脂に直接、露光及び現像処理を行うことで所望の凹凸パターン形成が可能となり、これによりプロセス数の簡略化が一層図れ、反射型液晶表示装置の低コスト化が可能となる。
また、感光性能を有する有機系絶縁膜又は無機系絶縁膜を絶縁膜として用い、この絶縁膜に対して凹凸構造とコンタクト部とを同一現像工程で同時に製造するようにしてもよい。このような製造方法によれば、凹凸構造及びコンタクトホールをレジストプロセスを用いることなく簡便な方法で形成することができる。
このとき、ポジ型の感光性材料を用い、凹凸パターン形成のための露光量よりもコンタクトパターン形成のための露光量を多くすることで、同一現像工程で凹凸パターンとコンタクトパターンを同時形成できるようにしてもよい。これにより、コンタクト形成工程を省くことができるため、プロセスの簡略化が可能である。
本発明に係る反射型液晶表示装置及びその製造方法によれば、反射電極下の凹凸構造が形成された絶縁膜が、製造工程中スイッチング素子を保護するとともに、膜厚の異なる領域が不規則に配置されたものであることにより、製造工程中でのスイッチング素子の特性劣化を防止できるとともに、凹凸構造に他の膜を必要としないので製造工程数を削減できる。
図1は、本発明に係る反射型液晶表示装置の第一実施形態を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
本実施形態の反射型液晶表示装置は、透明な第一の基板としてのガラス基板53と、ガラス基板53上に設けられた透明電極55と、第二の基板としてのガラス基板40と、ガラス基板40上に設けられたスイッチング素子としての薄膜トランジスタ44、薄膜トランジスタ44上に設けられるとともに表面に凹凸構造45aが形成された絶縁膜45と、絶縁膜45上に凹凸構造45aを反映させた形状で設けられるとともに薄膜トランジスタ44のソース電極に接続された反射電極48と、ガラス基板53の透明電極55側とガラス基板40の反射電極48側とで挟み込まれた液晶層56とを備えたものである。絶縁膜48は、薄膜トランジスタ44を薄膜トランジスタ44形成以降保護するとともに、膜厚の異なる領域が不規則に配置されたことにより凹凸構造45aが形成されたものである。
薄膜トランジスタ44は、金属層41、絶縁層42、半導体層43等を成膜し、これらの膜に対してフォトリソグラフィー及びエッチングを施すことにより形成されたゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体膜、ソース電極、ドレイン電極等より構成された逆スタガー構造となっている。また、薄膜トランジスタ44上に、有機系絶縁材料又は無機系絶縁材料に用いた絶縁層45が位置している。絶縁膜45には、膜厚の異なる領域が不規則に配置されることで、所望の形状を有する凹凸構造45aが形成されている。凹凸構造45aは、膜厚の厚い凸部46と膜厚の薄い凹部47とで構成されている。そして、絶縁膜45上に反射電極48が形成されている。反射電極48は、絶縁膜45に穿設されたコンタクトホール49を介して薄膜トランジスタ44のソース電極と電気的に接続されており、画素電極としての機能も有している。
また、反射電極48の表面には絶縁膜45に形成された凹凸構造45aが反映されており、この凹凸傾斜角度が反射光の光学特性を決定することとなる。それゆえ、凹凸構造45aの傾斜角度は所望の反射光学特性が得られるように設計される。なお、凹凸構造45aは、凸ピッチ、凹ピッチ、凸高さ、凹深さのいずれかが異なる2種以上の値で構成されていればよい。
次に、本実施形態の反射型液晶表示装置の動作について説明する。
反射型液晶表示装置は、白状態のときに次のように動作する。ガラス基板53の外側方向から入射した入射光50は、偏光板51、位相差板52、ガラス基板53、カラーフィルタ54、透明電極55、液晶層56を通過して、反射電極48表面の凹凸の形状を反映した指向性に従って反射され、再び液晶層56、透明電極55、カラーフィルタ54、ガラス基板53、位相差板52、偏光板51を通過して、外側へ表示光58として戻される。一方、反射型液晶表示装置は、黒状態のときに次のように動作する。ガラス基板53の外側方向から入射した入射光50は、偏光板51、位相差板52、ガラス基板53、カラーフィルタ54、透明電極55、液晶層56を通過し、反射電極48で反射されるものの、偏光板51で遮光されるので外側に出射されない。これにより光のON/OFF動作が可能となる。
図2は、本発明に係る反射型液晶表示装置の製造方法の第一実施形態を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
まず、ガラス基板40上に薄膜トランジス44を形成する(図2[a])。続いて、有機系絶縁膜としてのアクリル樹脂膜60を塗布形成し、その上へのフォトレジスト(図示せず)を塗布及び露光して凹凸パターンを形成し、エッチングによりアクリル樹脂膜60に凹凸パターン61を形成し、その後フォトレジストを剥離する(図2[b][c])。続いて、再びフォトレジスト(図示せず)塗布、露光及び現像し、アクリル樹脂膜60をエッチングし、フォトレジストを剥離し、コンタクトホール62をアクリル樹脂膜60に形成する(図2[d])。最後に、アルミニウム膜を形成し、フォトレジストを塗布、露光及び現像し、アルミニウム膜をエッチングし、フォトレジストを剥離することにより、反射電極63を形成する(図2[e])。
図2[b][c]に示すアクリル樹脂膜60への凹凸形成では、膜厚の厚い領域からなる凸部46と薄い領域からなる凹部47とを作り込む。膜厚の薄い領域にもアクリル樹脂膜60を残すことで、スイッチング素子44等をアクリル樹脂膜60で常に覆う構造とする。このとき、レジストパターン下のアクリル樹脂膜60を所望の深さまでエッチングして薄いアクリル樹脂膜60を残すことにより、同一材料及び同一プロセスにより凹凸構造兼層間絶縁膜の形成ができる。なお、エッチング量を制御することにより、凸部46の高さ64及び凹部47の膜厚65を変えることができるため、凹凸形状又は凹部の膜厚を自由に制御することができる。
なお、本実施形態においては絶縁膜にアクリル樹脂を用いたが、反射板光学特性に必要とされる凹凸高さと、層間膜として必要とされる膜厚との要求を同時に満足できる厚さを形成できる絶縁膜であれば何でもよく、ポリイミド樹脂等のその他の有機系樹脂を用いてもよい。また、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜等の無機系絶縁膜を用いてもよい。
このときの凹凸構造は、反射光の指向性を考えると、高さは0.2〜4μmまでの範囲、そのピッチは1〜30μmまでの範囲が好ましい。更に凸部又は凹部は平面上に不規則に配置され、凸部の平面形状は島状のパターンでも線状パターンでもよく、凹部の平面形状は穴状のパターンでも溝状のパターンでもよい。基本的には、これらの凸部又は凹部のパターンが不規則に配置されていればよく、これにより、反射電極における反射光の干渉を抑制することができるので、明るく波長依存のない良好な反射特性を実現できる。
図3及び図4は、本発明に係る反射型液晶表示装置の製造方法の第二実施形態を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
本実施形態では、反射電極下の絶縁膜が凹凸形状膜と層間膜とから構成され、これらが別々の工程で形成される。まず、下層膜70を塗布形成し(図3[b])、続いて上層膜71を塗布形成する(図3[c])。続いて、フォトレジストのパターンニングにより、上層膜71に凹凸パターンを形成することにより、上層膜71を凹凸形状膜72とし、下層膜70を層間膜73とする(図4[d])。他の工程は、図2の実施形態と同じであるので説明を省略する。
下層膜70と上層膜71とは、異なる材料にしてもよい。例えば、凹凸形状の制御性の良好な材料であるアクリル樹脂等の有機系樹脂を上層膜71に使用し、電気的絶縁性能、パッシベーション性、耐プロセス性等に優れた材料であるシリコン窒化膜などの無機系絶縁膜を下層膜70に使用してもよい。また、凹凸形状膜72及び層間膜73として使用する膜には、これらの要求性能を満たしていれば、前述した絶縁材料に限定されず、様々な材料の組み合わせが適用できる。
なお、本実施形態ではスイッチング素子として逆スタガー構造の薄膜トランジスタを適用した場合について説明したが、これに限定されず、順スタガー構造の薄膜トランジスタ又はMIMダイオード等のスイッチング素子を用いてもよい。また、下部側基板と対向側基板とにガラス基板を使用したが、これに限定されず、これ以外の基板例えばプラスチック基板、セラミックス基板、半導体基板等でもよく、更にこれらの異なる基板の組み合わせとしてもよい。
図5は、本発明に係る反射型液晶表示装置の製造方法の第三実施形態を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
本実施形態では、突起物を形成後に熱処理を施して、凹凸形状を変化させることで、滑らかな凹凸形状となったものを反射電極下の凹凸構造に用いている。図5[a]の工程までは、図2に示す薄膜トランジスタ製造工程と同一工程で処理する。続いて、凹凸構造を有する絶縁膜74を形成し(図5[b])、絶縁膜74を熱処理にて溶融させることで、滑らかな凹凸構造の絶縁膜74’に変える(図5[c])。このときのベーク温度及びベーク時間を変化させることで絶縁膜74の凸部の溶融状態が変化し、従って最終的に形成される凹凸形状もこの溶融条件により制御できる。なお、本実施形態においては熱処理により凹凸構造を滑らかで連続したものとしたが、これに限られるものではなく、例えば凹凸構造に使用される材料を溶融性又は膨潤性を有する溶液に曝すことにより、凹凸面を滑らかな形状に変換させることもできる。
その後、コンタクトホール62を形成し(図5[d])、反射電極63を形成することで(図5[e])、反射型TFT基板の製造が完了する。これにより、反射電極63表面に形成される凹凸形状がより滑らかとなることで、反射光学特性が良好となり、このTFT基板を用いた反射型液晶表示装置は明るい表示を実現することができる。本実施形態では滑らかな凹凸面を得るために、熱処理による溶融法を使用したが、これに限定されるものではなく、その他の方法として薬品による溶解でも同様の効果が得られる。
ところで、図2及び図5に示す実施形態では、反射電極下に位置する絶縁膜が同一工程で、同一材料を用いて形成されている。すなわち、反射電極下の絶縁膜として単層膜が形成され、この単層膜をフォトリソ工程によりパターンニング処理し、絶縁膜のエッチングを行うことで、絶縁膜の形成領域に膜厚の厚い領域と薄い領域を選択的に形成し、これを凹凸構造に使用する。したがって、凹凸構造を単層膜で形成することができるため、製造工程の短縮化に最も適し、これにより反射型液晶表示装置を低コストで提供できる。
上記各実施形態では、フォトリソ工程により、絶縁膜の膜厚の厚い領域と薄い領域とを平面に選択的に形成して凹凸構造の形成を行ったが、これに限定されない。その他の方法として、スクリーン印刷による印刷樹脂の膜厚を制御してもよく、また絶縁膜表面を薬液により荒らすことで膜厚の差を発生させ、段差を形成してもよい。
図2及び図5の実施形態では、反射電板下に位置する絶縁膜が、同一工程かつ同一材料により形成されている。しかし、これに限定されず、図3及び図4の実施形態で示すように、異なる工程で下地膜と上部凸膜とを形成してもよく、又は異なる材料の膜を用いて凹凸構造を形成してもよい。これを絶縁膜の凹凸構造に用いて反射電極を作成しても、所望の光学特性を有する反射電極を提供できる。ただし、この場合、工程数が増加するという欠点はあるものの、下地膜の厚さを確実に制御できるという利点を有する。
図6は、本発明に係る反射型液晶表示装置の第二実施形態を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
本実施形態では、反射電極48下に形成される絶縁膜45が、薄膜トランジスタ44、配線80、電極81等を覆うように形成されている。そして、コンタクト部49により薄膜トランジスタ44と電気的に接続された反射板兼画素電極としての反射電極48が、絶縁膜45を介して層間分離された構造となっている。すなわち、絶縁膜45は保護膜としての機能を備えている。本実施形態おける絶縁膜45は、薄膜トランジスタ44に直接、接することで、薄膜トランジスタ44のパッシベーション膜として使用されている。絶縁膜45と薄膜トランジスタ44との間には、従来から薄膜トランジスタ44の保護膜として用いられているシリコン窒化膜(SiN)又はシリコン酸化膜(SiO)を挿入してもよい。
図7は、本発明に係る反射型液晶表示装置の第三実施形態を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
本実施形態おいて、反射電極48下に形成された絶縁膜101は、絶縁性能を有するものであれば有機系樹脂又は無機系樹脂でもよく、更に透明性、着色性、光吸収性等を有していてもよい。特に、絶縁膜101が光吸収性を有する場合、隣接する反射電極48間に入射する光100を絶縁膜101で完全に吸収できることから、薄膜トランジスタ44への光入射を防ぐことができる。これにより薄膜トランジスタ44特性の光オフリークを防止できるため、良好なスイッチング素子特性を有する反射型液晶表示装置を実現できる。
このときの光吸収性を有する絶縁膜101は、光が薄膜トランジスタ44へ照射されることを防ぐように配置されていれば、同様な効果を実現できることから、この位置に特に限定されるものではない。また、絶縁膜101は、反射電極48下に形成された滑らかな凹凸構造を有する絶縁膜を兼ねるので、プロセスの簡略化が図れる。絶縁膜101の材料として、東京応化工業株式会社製の商品名「ブラックレジスト」、「CFPR」、「BK−748S」、「BK−430S」等を使用すれば、良好な光吸収層の形成、及び良好な凹凸構造の形成ができる。また、その他のブラック樹脂材料でも同様の効果が得られる。更に、光吸収層としては、光吸収性の他に光反射性の膜でもよく、金属材料、又は光を透過しない絶縁物若しくは無機化合膜でもよい。
図8は、本発明に係る反射型液晶表示装置の第四実施形態を示すマスクパターンの平面図である。以下、この図面に基づき説明する。
上記各実施形態に示したように、反射電極下に位置する絶縁膜の凹凸構造の断面形状は、絶縁膜の形成領域に膜厚の厚い領域と薄い領域とを平面的に選択形成することで形成されている。この凹凸構造が反射電極表面の凹凸構造へ反映される。この絶縁膜の凹凸構造は、マスク上に不規則に配置されたパターンを用いて形成する。この凹凸形成に使用した1画素に相当するマスクパターンを、図8に示す。なお、符号110,112は光透過領域である。
本実施形態においては、凸パターンを不規則に配置しており、凸パターンの大きさは外形2〜20μm程度、ピッチ2〜40μm程度となっている。図8[a]では島状の凸パターン111が不規則に配置され、図8[b]では線状の凸パターン113が不規則に配置されている。どちらのマスクを用いて形成した凹凸構造においても、良好な反射光学特性を有する反射電極を形成することが可能となる。したがって、これを用いて製造した反射型液晶表示装置は良好な表示特性を得ることができる。
なお、本実施形態では、同一サイズの島状パターン又は同一線幅の線状パターンを用いたがこれに限定されない。例えば、島状パターンでは、異なる大きさのものを用いてもよく、更に個々のパターンが四角以外の、多角形パターン(三角、五角、六角、七角等)、円形、楕円形等でもよく、更に様々な形状のパターンが混在したものでも同様の効果が得られる。更に、線状パターンでは、様々な幅の線パターン、又は曲線パターンでもよく、これらのパターンが不均一でもよい。また、島状パターンと線状パターンとが混在したものでもよい。
図9は、本発明に係る反射型液晶表示装置の第五実施形態を示すマスクパターンの平面図である。以下、この図面に基づき説明する。
本実施形態のマスクパターンは、図8のマスクパターンの凹凸が反転したものとなっている。すなわち、穴状の凹パターン115又は溝状の凹パターン117が不規則に配置されている。このようなマスクパターンを使用しても高輝度反射電極を得ることができた。このとき使用したマスクパターンの凹パターンの大きさは外形2〜20μm程度、ピッチ2〜40μm程度となっている。なお。符号114,116は遮光領域である。
本実施形態の場合においても、同一サイズの穴状パターン又は同一幅の溝状パターンを用いたが、これに限定されない。例えば、穴状パターンでは、異なる大きさのものを用いてもよく、更に個々のパターンが四角以外の、多角形パターン(三角、五角、六角、七角等)、円形、楕円形等でもよく、更に様々な形状のパターンが混在したものでも同様の効果が得られる。更に、溝状パターンでは、様々な幅の線パターン、又は曲線パターンでもよく、これらのパターンが不均一でもよい。また、穴状パターンと溝状パターンとが混在したものでもよい。
図10は、本発明に係る反射型液晶表示装置の第六実施形態を示す説明図である。以下、この図面に基づき説明する。
本実施形態における凹凸パターンは、反射型液晶表示装置の1画素以上の範囲で不規則であればよく、例えばRGB又はRGGB等の3画素又は4画素の領域で不規則でもよい。また、それ以上の画素数の領域で不規則な凹凸パターンとし、これを繰り返してパネル表示部全面の反射電極領域へ凹凸を形成してもよい。この場合、反射板パネル全面を完全な不規則パターンで形成した場合と同様の明るい反射板を得ることができる。
図10[a]は一つの不規則配置パターンで全面表示領域を形成した例、図10[b]は1画素単位の不規則配置パターンの繰り返しで全面表示領域を形成した例、図10[c]は1画素以上の単位の不規則配置パターンの繰り返しで全面表示領域を形成した例を示している。望ましくは、1画素以上の画素単位で不規則な領域とし、この不規則領域パターンを繰り返して、反射電極全領域に凹凸を形成する。なお、本実施形態では島状パターンについて示したが、これに限定されない。図8及び図9に示すように、線状パターン、穴状パターン、溝状パターン等いずれにおいても同様の効果が実現できる。
図11及び図12は、本発明に係る反射型液晶表示装置の製造方法の第四実施形態を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
本実施形態は、反射電極下に用いられる絶縁膜が感光性能を有する材料で構成されている点が図2の実施形態と異なり、それ以外が図2の実施形態と同一となる。図11はフォトレジストを用いて絶縁膜133に凹凸パターンの形成を行った場合(比較例)、図12は本実施形態の場合について示している。本実施形態の場合、反射電極下に位置する絶縁膜の上層凹凸130と下層膜131とがともに感光性樹脂132で構成されている。この場合、感光性樹脂132を塗布形成し、その後、露光、現像工程で上層凹凸130及び下層膜131が同時形成されることとなる。
本実施形態では、感光性樹脂を用いているために、フォトレジスト層134によるマスクパターン135の工程である図11[b1],[c1],[d1]を必要としない。つまり、感光性樹脂を直接、露光及び現像することによりパターン加工ができることから、レジスト塗布及び剥離工程を簡略化できるので、図11の比較例に示した製造工程数よりも短縮化でき、その結果、反射型液晶表示装置を低コストで提供することができる。
なお、本実施形態における感光性樹脂には、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の有機系樹脂、又は無機系樹脂を用いてもよい。また、前述したように、反射電極下の絶縁膜の上層凹凸と下層膜とを異なる材料の感光性樹脂を用いてもよく、更には、上層凹凸のみ又は下層膜のみを感光性樹脂を用いてもよい。また、本実施形態で使用した下部側基板又は対向側基板は、ガラス基板である必要はなく、前述したようにその他の材質の基板を用いてもよい。また、本実施形態における感光性樹脂は、透明である必要もなく、光吸収の可能な黒色のものでもよい。特に半透過型には透明感光性材料、反射型には黒色感光性材料を用いればよい(次の第七実施形態に示す)。
図13は、本発明に係る反射型液晶表示装置の第七実施形態を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
図13[a]は反射型液晶表示装置であり、絶縁膜101aは黒色感光性材料からなる。図13[b]は透過型を兼ねる反射型液晶表示装置(半透過型液晶表示装置)であり、絶縁膜101bは透明感光性材料からなる。図13[b]における反射電極48’を薄膜化することで、バックライト140の光が透過できるようになっている。なお、半透過型液晶表示装置に関しては、この構成に限定されずその他の構成を有していてもよく、例えば、画素内における反射電極を一部開口させることで、その領域内でバックライト光141を透過させる方式でもよい。
図14及び図15は、本発明に係る反射型液晶表示装置の製造方法の第五実施形態を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
本実施形態では、スイッチング素子として逆スタガー構造薄膜トランジスタを使用している。本実施形態におけるTFT基板の製造工程は、[a]電極材の形成、[b]ゲート電極150の形成、[c]ゲート絶縁膜151、半導体層152、ドーピング層153の形成、[d]電極材の形成、[e]アイランド154の形成、[f]ソース電極155、ドレイン電極156の形成、[g]絶縁膜157の形成、[h]絶縁膜上層部への凹凸158の形成、[i]コンタクトホール159の形成、[j]反射電極160の形成等からなる。
更に工程[h]は、絶縁膜157上への(1)レジスト163形成、(2)凹凸パターン164形成、(3)絶縁膜157上層部への凹凸158形成、(4)レジスト剥離等の各工程からなる。このときの凹凸高さXと下層の膜厚Yは、前記(3)工程の絶縁膜157上層部のエッチング量で制御できる。それゆえ、凹凸高さXは所望とする反射板光学特性に必要な凹凸高さより決定すればよく、下層膜の厚さYは下地のスイッチング素子、配線等に対するカバレージ性、絶縁性等より決定すればよい。
なお、本実施形態ではスイッチング素子として逆スタガー構造薄膜トランジスタを適用した場合について説明したが、これに限定されず、順スタガー構造薄膜トランジスタ又はMIMダイオード等のスイッチング素子を用いてもよい。また、逆スタガー構造薄膜トランジスタにおいても、本実施形態で示した構造に限定されるものではなく、これ以外の構造を有したものでもよい。また、下部側基板と対向側基板とにガラス基板を使用したが、これに限定されず、これ以外の基板、例えばプラスチック基板、セラミクス基板、半導体基板等でもよい。更に、本実施形態では、前記工程(3)の凹凸構造を表面に有する絶縁膜において、同一工程での単膜構造を用いているが、これに限定されない。
図16及び図17は、本発明に係る反射型液晶表示装置の製造方法の第六実施形態を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
凹凸構造を表面に有する絶縁膜の形成以外の製造工程に関しては、図14及び図15の製造工程と同一とする。すなわち、本実施形態の凹凸絶縁膜は、スイッチング素子の形成までは図14[a]〜[f]と同一工程とし、その後、(1)層間膜用の絶縁層161を形成、(2)凹凸形成用の絶縁層162を形成、(3)レジスト163による凹凸パターン164の形成、(4)凹凸構造165の形成、(5)レジスト剥離の各工程で形成される。
これにより、反射電極下に形成される絶縁層の凹凸層166と下層膜167とを別工程で形成することができる。そのため、上層部の凹凸層には凹凸形状の制御の容易なアクリル樹脂、下層部には下地とのパッシベーション性能又は電気的絶縁性の優れたシリコン窒化膜を用いて、より良好な光学特性、かつ良好な素子特性を有するスイッチング素子基板を提供できる。その結果、高性能かつ高品位表示の反射型液晶表示装置が実現できる。
なお、本実施形態で使用される凹凸層及び下層膜は、これに限定されず、その他のポリイミド等の有機系絶縁膜、シリコン酸化膜等の無機系絶縁膜を使用してもよく、更には、上層と下層の材料が同一であってもよい。
図18及び図19は、本発明に係る反射型液晶表示装置の製造方法の第七実施形態を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
本実施形態では、反射電極160下に用いられる絶縁膜157が感光性能を有している材料で構成されている点が図14及び図15の実施形態と異なり、それ以外が図14及び図15の実施形態と同一となる。
本実施形態によれば、感光性樹脂を直接、露光及び現像することによりパターン加工ができることから、レジスト塗布及び剥離工程を簡略化でき、図14及び図15の実施形態に示した製造工程数よりも大幅な短縮化ができ、その結果、反射型液晶表示装置を低コストで提供することができる。
図20及び図21は、本発明に係る反射型液晶表示装置の製造方法の第八実施形態を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
本実施形態では、反射電極下に用いられる絶縁膜へのコンタクトホール形成工程を凹凸形成工程と同時に行う点が図18及び図19の実施形態と異なり、それ以外が図18及び図19の実施形態と同一となる。本実施形態におけるTFT基板の製造工程は、[a]電極材の形成、[b]ゲート電極の形成、[c]ゲート絶縁膜、半導体層、ドーピング層の形成、[d]電極材の形成、[e]アイランドの形成、[f]ソース電極、ドレイン電極の形成からなる。その後、[g]感光性絶縁層170の形成、[h]感光性絶縁層(コンタクト領域171及び凹凸領域172)への露光、[i]現像工程において感光性絶縁層へのコンタクト及び凹凸の同時形成、加熱処理による凹凸面のメルト、[j]反射電極173の形成と続く。
本実施形態の[h]工程では、同一露光工程でコンタクト形成領域と凹凸形成領域とに同時に各パターンを露光することとなる。その後、現像エッチング工程においては、凹凸形成部分は深さX、コンタクト形成部分は深さZのエッチング量となるように処理を行う。
この場合、[h]工程において、凹凸パターン部175とコンタクト部174の露光工程における露光エネルギー量を凹凸パターン部175よりもコンタクト部174が多くなる関係とし、更に、感光性絶縁層170の下層部が所望の膜厚Yとなるように、露光エネルギー量を調整すればよい。この露光量を調整する方法としては、凹凸パターン形成用マスクとコンタクトパターン形成用マスクとの二種類を用いて、それぞれの露光量が異なるように二重露光を行ってもよく、又は1枚のマスク内における凹凸パターン部とコンタクトパターン部との露光の光透過率が異なるようにマスク材を調整したマスクを用いてもよい。このように露光工程の露光エネルギーをパターン部により異なるようにすれば、同一現像条件下で同一基板内で異なるエッチング量を有するパターン形成が実現できる。本実施形態では、凹凸面は、絶縁膜に熱処理を加えることで滑らかな形状に変換されている。
本実施形態によれば、感光性樹脂を直接、露光及び現像することによりパターン加工ができること、更に凹凸形成工程とコンタクト形成工程とを同一露光及び現像エッチング工程で実現できることとから、図18及び図19の実施形態に示した製造工程数よりも更に短縮化ができ、低コストで反射型液晶表示装置を提供できる。
また、本実施形態では、凹凸絶縁層成膜に感光性材料を使用したが、レジストプロセスを用いれば、非感光性材料を用いて同様の構成を得ることができる。ただし、レジストプロセスを必要とするため工程数が増加するものの、従来の反射型液晶表示装置の製造工程よりは工程数の短縮化が図れる。
(実施例1) 本実施例に用いた反射型液晶表示装置の製造工程を図22及び図23に示す。スイッチング素子には順スタガー構造の薄膜トランジスタを採用した。
製造は、ガラス基板上に以下の工程を行う。[a]ITOをスパッタリング法により50nm形成。[b]ソース200、ドレイン電極201の形成。(1PR)[c]ドーピング層202を100nm、半導体層203を100nm、ゲート絶縁膜204を400nmプラズマCVDにより成膜。[d]Cr層205をスパッタリング法により50nm形成。[e]ゲート電極及びTFT素子部のアイランド206形成。(2PR目)[f]有機絶縁膜207(3μm)の形成。[g]有機絶縁膜上層部の凹凸パターン208の形成(3PR)[h]コンタクト209の形成(4PR)[i]アルミニウムをスパッタリング法により300nm形成。[j]反射画素電極板210の形成。(5PR)
なお、上記工程[c]において、ゲート絶縁膜にはシリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層膜、半導体層にはアモルファスシリコン膜、ドーピング層にはn型化アモルファスシリコン膜を使用し、これらのプラズマCVD条件は以下に示すように設定した。シリコン酸化膜の場合、反応ガスにシランと酸素ガスを用い、ガス流量比(シラン/酸素)は0.1〜0.5程度に設定し、成膜温度200〜300℃、圧力133Pa、プラズマパワー200Wとした。シリコン窒化膜の場合、反応ガスにシランとアンモニアガスを用い、ガス流量比(シラン/アンモニア)は0.1〜0.8に設定し、成膜温度250℃、圧力133Pa、プラズマパワー200Wとした。アモルファスシリコン膜の場合、反応ガスにシランと水素ガスを用い、ガス流量比(シラン/水素)は0.25〜2に設定し、成膜温度200〜250℃、圧力133Pa、プラズマパワー50Wとした。n型化アモルファスシリコン膜の場合、反応ガスにシランとホスフィンを用い、ガス流量比(シラン/フォスフィン)は1〜2に設定し、成膜温度200〜250℃、圧力133Pa、プラズマパワー50Wとした。
また、上記工程[e]のTFT素子部のアイランド形成では、Cr層にはウェットエッチングを採用し、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びアモルファスシリコン層にはドライエッチングを採用した。Cr層のエッチングには、過塩化水素酸と硝酸第2セリウムアンモニウムとの混合水溶液を用いた。また、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜のエッチングには、エッチングガスに四塩化フッ素と酸素ガスとを用い、反応圧力0.665〜39.9Pa、プラズマパワー100〜300Wとした。また、アモルファスシリコン層のエッチングには、塩素と水素ガスとを用い、反応圧力0.665〜39.9Pa、プラズマパワー50〜200Wとした。また、フォトリソ工程では、全て通常のレジストプロセスを用いた。
本実施例においては、ソース、ドレイン電極にITO、ゲート電極にCr金属を用いたが、各電極材料はこれらに限定されない。これ以外の電極材として、Ti、W、Mo、Ta、Cu、Al、Ag、ITO、ZnO、SnO等の単層膜、又はこれらの電極の組み合わせによる積層膜を採用してもよい。
本実施例では、反射電極下に形成される凹凸は、上記[f][g]工程で形成される。すなわち、上記工程[f]で形成した絶縁膜上部に、レジスト膜2μmを形成し、露光及び現像プロセスにより凹凸レジストパターンを形成し、前記絶縁膜を1μmの深さでエッチング処理し、レジスト剥離により前記絶縁層の上層部に凹凸構造を形成できる。
上記工程[f]の有機系絶縁膜には、ポリイミド膜(日産化学工業株式会社製商品名「RN−812」)を使用した。塗布条件は、前記ポリイミドの場合、スピン回転数1200rpm、仮焼成温度90℃、仮焼成時間10分間とし、本焼成温度250℃、本焼成時間1時間とした。一方、パターン形成に使用した前記レジストの場合、スピン回転数1000rpm、仮焼成温度90℃、仮焼成時間5分間、その後、露光及び現像によりパターン形成後、ポストベーク90℃かつ30分間処理した。該レジストパターンをマスク層として行った該ポリイミド膜のドライエッチング条件は、エッチングガスに四塩化フッ素と酸素ガスを用い、ガス流量比(四塩化フッ素/酸素)は0.5〜1.5に設定し、反応圧力0.665〜39.9Pa、プラズマパワー100〜300Wとした。なお、フォトリソ工程は、全て通常のレジストプロセスを用いた。
また、本実施例においては、反射板とTFT素子の間に位置する凹凸絶縁層に同一工程で形成された前記絶縁層を用いたが、この他の実施例として、上記[e]のTFT形成完了後、第1の有機樹脂を形成(2μm)し、第2の有機樹脂を形成(1μm)し、レジスト工程及びエッチング工程を施すことにより第2の有機樹脂に凹凸構造を形成しても、所望の凹凸絶縁層を形成できた。基本製造プロセスは、前記実施形態に記載された工程と同様にすればよい。
また、前記の第1の絶縁膜と第2の絶縁膜に同一の有機樹脂材料を用いたが、異なる材料を用いても同様に凹凸絶縁層を形成できる。第1の絶縁膜と第2の絶縁膜に、アクリル樹脂とポリイミド樹脂、シリコン窒化膜とアクリル樹脂、シリコン酸化膜とポリイミド樹脂などの無機系樹脂と有機系樹脂の組み合わせ、又は逆の組み合わせを用いても実現できた。
本実施例では、その後、反射効率の高く、TFTプロセスとの整合性がよいアルミニウム金属を形成し、これをパターン形成することで、画素電極兼反射板を形成した。このときのアルミニウムにはウェットエッチング処理を行い、エッチング液には60℃に加熱したリン酸、酢酸及び硝酸からなる混合液を使用した。
本実施例では、凹凸形成工程において、スイッチング素子上部に絶縁層が覆われた状態で、凹凸形成のためのパターン形成工程が行われることから、スイッチング素子が、エッチングプロセスに直接曝されることない。そのため、プロセスダメージによるスイッチング素子特性の劣化又は不安定性等の問題を引き起こすことがないので、反射型液晶表示の高性能化に大きな成果を有する。
なお、該凹凸の最大高さは1μm程度、凹凸の平面形状はランダムな形状に設定した。その後、上記TFT基板と、ITOからなる透明電極を有する対向基板とを、各々の膜面が対向するようにして重ね合わせた。なお、TFT基板と対向基板には、配向処理が施され、両基板はプラスチック粒子等のスペーサを介して、パネル周辺部にエポキシ系の接着剤を塗ることにより、張り合わされた。その後液晶を注入し液晶層とすることで、反射型液晶表示装置を製造した。
図24に、本実施例において得られた反射型液晶表示装置の断面図を示す。図24における符号は、212が対向基板、213が上部ガラス基板、214がカラーフィルタ、215がITO(インジウム・チン・オキサイド)、216が入射光、217が反射光、218が液晶、219が反射板、220が有機絶縁膜、221がガラス基板である。
この反射型液晶表示装置の反射画素電極は、均一で、光散乱性のよい反射性能を有している。そのため、新聞紙よりも明るい白表示を有するモノクロ反射型パネルを、低コストで実現することができる。また、対向基板側に、RGBカラーフィルタを設置した場合、明るいカラー反射型パネルを低コストで実現した。
なお、本実施例の凹凸の高さは、上記に限定されるものではない。該凹凸の高さは広い範囲で変えることができるため、この凹凸構造を用いることで、反射板性能の指向性を大きく変えた反射型液晶表示装置を提供できる。
(実施例2)本実施例に用いた反射型液晶表示装置の製造工程を図25及び図26に示す。本反射型液晶表示装置におけるスイッチング素子には、逆スタガー構造の薄膜トランジスタを採用した。
製造は、ガラス基板230の上に以下の工程を行う。[a]Crをスパッタリング法により50nm形成。[b]ゲート電極231の形成。(1PR)[c]ゲート絶縁膜232を400nm、半導体層233及びドーピング層234をそれぞれ100nmプラズマCVDにより成膜。[d]アイランド形成235(2PR目)[e]Cr、ITO層をスパッタリング法によりそれぞれ50nm形成。[f]ソース電極236、ドレイン電極237の形成。(3PR目)[g]有機絶縁膜238(3μm)の形成。[h]有機絶縁膜上層部の凹凸パターン239の形成(4PR)[i]コンタクト241の形成(5PR)[j]アルミニウム242をスパッタリング法により300nm形成。[k]反射画素電極板243の形成。(6PR目)[l]ゲート線端子出し(7PR目)
本実施例では、反射板下部に形成される凹凸240は、上記[g]工程で形成される。この時の形成方法は実施例1と同一条件とした。本実施例においては、トランジスタ構造に逆スタガー構造を採用したため、実施例1に対して工程数が増加している。
なお、本実施例における反射画素電極板の開口率は86%とした。その後、上記TFT基板と、ITOからなる透明電極を有する対向基板とを、各々の膜面が対向するようにして重ね合わせた。なお、TFT基板と対向基板とには、配向処理が施され、両基板はプラスチック粒子等のスペーサを介して、パネル周辺部にエポキシ系の接着剤を塗ることにより、張り合わされた。その後GH型の液晶を注入し液晶層とすることで、反射型液晶表示装置を製造した。
図27に本実施例で製造された反射型液晶表示装置の断面構造図を示す。図27における符号は、15が入射光、16が反射光、239がレジスト凹凸パターン、241がコンタクト、243が反射板、250が対向基板、251がガラス基板、252がカラーフィルタ、253が透明電極、254がゲストホスト液晶である。
本実施例における反射型液晶表示装置の場合においても、実施例1の場合と同様にスイッチング素子にプロセスダメージを与えることがなく、これにより良好な素子特性を得ることができ、且つ所望の凹凸反射板構造を得ることができた。その結果、本実施例で製造されたカラー反射型パネルは、明るい高品位表示を有したものとなった。
(実施例3) 本実施例では、反射電極下に位置する凹凸表面が滑らかな凹凸形状で構成されている。図28及び図29に本実施例において製造された反射型液晶表示装置の断面構造図を示す。
本実施例は、反射電極下の凹凸を滑らかな形状に変換するプロセスが付加される以外は、実施例1又は実施例2と全く同一である。異なる点は、実施例1では工程[i]、実施例2では工程[h]における凹凸パターン形成後に、熱処理を加える工程が加わるだけである。そのため、図28は図25と全く同じである。
本実施例では、凹凸形成後の前記熱処理工程として、窒素雰囲気中でオーブンにより260℃かつ1時間の処理を行った。これにより、熱処理前の凹凸の傾斜角度が60〜80度程度であったものが、熱処理後10〜40度程度まで変化した。すなわち、得られた凹凸形状は、矩形状からサインカーブ状の滑らかな凹凸面261に変換された。なお、本実施例における反射型液晶表示装置の場合、凹凸表面の凹凸傾斜角度の平均値は8度程度となるように設定された。また、前記熱処理工程のベーク温度を変化させることで、凹凸傾斜角度を制御できる。
また、本実施例では、凹凸の高さは実施例1及び実施例2と同様に1μmに設定した。ただし、凹凸高さを更に高くすることで、得られる反射板の光学性は散乱性の非常に強いものが得られる。この場合、特に大きな画面サイズを有する反射型液晶表示装置に適用することで、パネル表示特性の明るさに対する視野依存性が小さいため、見やすい反射型液晶表示装置を得ることができる。
また、凹凸高さを低くすることで反射板の光学特性は指向性の強いものが得られる。この場合、比較的画面サイズの小さい携帯情報機器用の反射型液晶表示装置に適用することで、より明るい表示特性を実現できる。このように、使用用途、又はパネル表示面積に応じて、凹凸表面構造を自由に制御できる。
また、本実施例における絶縁層は、その上部に位置する反射板と、下部に位置するスイッチング素子との間に位置することで、スイッチング素子の保護膜として機能している。
(実施例4) 本実施例では、反射板下部に位置する絶縁層が感光性能を有する有機系絶縁膜で構成されている。図30及び図31に本実施例において製造された反射型液晶表示装置の断面構造図を示す。
本実施例における反射型液晶表示装置の製造プロセスは、反射板下部に有する絶縁層に感光性樹脂(本実施例では感光性アクリル樹脂)が使用される以外は、前記実施例1又は前記実施例2と全く同一にできる。異なる点は、実施例1では工程(f)、実施例2では工程(g)において形成される絶縁層に感光性膜270を使用するところにある。
感光性膜の工程を加えるだけで、凹凸形成は、感光性膜の形成工程、感光成膜への直接露光工程、エッチング現像工程、熱処理によるメルト工程となる。そのため、実施例1、2、3で行われた凹凸形成工程に比べて、レジスト塗布、レジスト現像、レジスト剥離工程が不要になることから、プロセスの簡略化ができる。
本実施例では、感光性材料として、感光性アクリル樹脂を使用したが、これに限定されることはない。その他の感光性材料、例えば、感光性有機樹脂、感光性無機膜でも同様の効果が実現できた。なお、感光性材料として、東京応化工業株式会社製の商品名「OFPR800」、シプレー社製の商品名「LC100」、日本合成ゴム株式会社製の商品名「オプトマーシリーズ」、日産化学工業株式会社製の商品名「感光性ポリイミド」を使用しても、同様の凹凸絶縁層が得られた。
(実施例5) 本実施例に用いた反射型液晶表示装置の製造工程を図32及び図33に示す。スイッチング素子には逆スタガー構造の薄膜トランジスタを採用した。
製造は、ガラス基板230上に以下の工程を行う。[a]Crをスパッタリング法により50nm形成。[b]ゲート電極231の形成。(1PR)[c]ゲート絶縁膜232を400nm、半導体層233及びドーピング層234をそれぞれ100nm、プラズマCVDにより成膜。[d]アイランド形成235(2PR目)[e]Cr、ITO層をスパッタリング法によりそれぞれ50nm形成。[f]ソース電極237、ドレイン電極236、凹凸形成用電極の形成130。(3PR目)[g]感光性アクリル樹脂270(3μm)の形成。[h]感光性アクリル樹脂への凹凸パターン及びコンタクトパターン露光(4PR)[i]現像エッチング工程による凹凸239及びコンタクト241の同時形成[j]アルミニウム242をスパッタリング法により300nm形成。[k]反射画素電極板243の形成。(5PR目)[l]ゲート線端子だし(6PR目)
その後、対向基板を重ね合わせることで反射型液晶表示装置を製造した。得られた反射型液晶表示装置は、明るい高品位カラー表示を実現することが可能であった。
本実施例では、工程(h)工程の凹凸及びコンタクトの同時形成以外は実施例3の製造工程と同一条件とした。本実施例において、3μmの膜厚を有する前記絶縁膜を、コンタクト領域は完全に除去し、凹凸領域は下層膜2μm残るように除去することを、同一現像工程で実現した。
具体的には、図34に示すコンタクトパターン280と凹凸パターン281とが描画された1枚マスクを使用し、このときのコンタクトパターン領域の光透過量が、凹凸パターンの光透過量よりも大きくなるようにマスク材282が制御されているマスクを使用する。これにより、露光された感光性アクリル樹脂283は、パターンにより照射エネルギーが異なる結果、同一現像時間でエッチング量に差が生じるので、所望の膜厚を残す領域と、完全にエッチング完了する領域とを同時に実現できる。
本実施例では、この光透過量を制御することで透過露光量の比がコンタクトパターン部と凹凸パターン部で3:1となるように設定した。その後の現像工程においては、東京応化工業株式会社製の商品名「NMD―3」を使用することで、現像時間90秒で、コンタクト領域は完全に膜が除去され、凹凸領域は下層膜2μmが残るようにできた。
本実施例では、絶縁膜に感光性を使用すること、更に凹凸とコンタクトパターン形成を同時に行うことで、実施例1〜4に比べて、反射型液晶表示装置のTFT基板側の製造工程数を少なくすることができた。また、このときのTFT基板側の製造工程におけるPR数は6となり、従来反射型液晶表示装置におけるTFT基板側の製造工程PR数の8よりも低減化できることから、低コストで反射型液晶表示装置を提供できる。
また、本実施例では、凹凸パターンとコンタクトパターンの同時形成用マスクのマスク材の透過量を制御することで露光量を制御したが、凹凸パターンマスクとコンタクトパターンマスクをそれぞれ用いて、2度露光を行うことでも実現できた。ただし、露光量は凹凸パターン露光量よりもコンタクトパターン露光量を大きくする必要がある。
(実施例6) 本発明の実施例に用いた反射型液晶表示装置の断面図を図35に示す。図35における符号は、290が対向基板、291が凹凸反射板、292が凹凸層、293が画素電極、294が信号線、295が液晶層、296が絶縁層、297がMIM素子である。
スイッチング素子には金属、絶縁膜、金属構造からなるMIMダイオード素子を採用した。この場合においても、スイッチング素子に薄膜トランジスタを使用した場合と同様に、良好な表示性能を有した。
本発明に係る反射型液晶表示装置及びその製造方法によれば、反射電極下の凹凸構造が形成された絶縁膜が、製造工程中スイッチング素子を保護するとともに、膜厚の異なる領域が不規則に配置されたものであることにより、製造工程中でのスイッチング素子の特性劣化を防止できるとともに、凹凸構造に他の膜を必要としないので製造工程数を削減できる。