従来、カーナビゲーション装置等においては、内蔵のGPS受信装置により現在位置を検出するようになされており、このようなGPS受信装置においては、内蔵のメモリにエフェメリスデータ、アルマナックデータ、初期位置のデータを保持し、定期的にこのメモリに保持したエフェメリスデータ等を更新するようになされている。
すなわちGPS受信装置においては、例えば見通し範囲の4つのGPS衛星について、各GPS衛星の特定時刻における位置と、この時刻における各GPS衛星からの距離(レンジ)とを検出し、これらGPS衛星の特定時刻における位置及びGPS衛星からの距離を用いた連立方程式を演算処理により解析してGPS受信装置の現在位置を求めるようになされている。ここで初期位置のデータは、アルマナックデータを用いて見通し範囲のGPS衛星を検出する場合等に使用され、例えば直前に求めたGPS受信装置の座標データが割り当てられる。
エフェメリスデータは、各GPS衛星固有の軌道データであり、GPS衛星の特定時刻の位置を詳細に求めるのに必要なパラメータ等により構成される。これによりGPS受信装置は、各GPS衛星からエフェメリスデータを取得してメモリに保持し、このメモリに保持したエフェメリスデータを用いて所定の運動方程式を解析することにより、このGPS衛星の特定時刻の位置を求めるようになされ、さらにこの計算結果によりGPS受信装置の現在位置を検出し、さらにこの検出したGPS受信装置の現在位置によりメモリに保持した初期位置のデータを更新するようになされている。ここでこのGPS衛星から送出されるエフェメリスデータは、月の重力、太陽風の影響によりGPS衛星の位置がずれること等により、地上の監視局により数時間毎に更新され、GPS受信装置では、この監視局による更新に連動して、GPS衛星から取得されるエフェメリスデータによりメモリに保持したエフェメリスデータを更新するようになされている。
これに対してアルマナックデータは、全GPS衛星の軌道データであり、エフェメリスデータと同様のパラメータ等により構成される。これによりGPS受信装置は、何れかのGPS衛星からアルマナックデータを取得してメモリに保持し、このアルマナックデータと、メモリに保持した初期位置のデータを用いた演算処理により、見通し範囲のGPS衛星を計算により求め、この見通し範囲の各GPS衛星よりそれぞれエフェメリスデータを取得するようになされている。このようにしてGPS衛星から送出されるアルマナックデータにおいては、エフェメリスデータと同様に監視局により更新されるようになされ、これによりGPS受信装置においては、エフェメリスデータと同様に、この監視局による更新に連動して、GPS衛星から取得されるアルマナックデータによりメモリに保持したアルマナックデータを更新するようになされている。なおGPS受信装置に保持するアルマナックデータにおいては、このように監視局による更新に連動して更新することが望ましいが、実際上、単に見通し範囲のGPS衛星の検出にだけに使用することにより、このような更新の処理を多少怠っても使用することができる。
GPS衛星では、それぞれ6秒を単位とした5つのサブフレームの繰り返しによりメインフレームが構成され、このメインフレームの繰り返しにより航法メッセージが送出される。GPS衛星では、このメインフレームを構成する5つのサブフレームのうち、1番目〜3番目のサブフレームにそれぞれ各GPS衛星のエフェメリスデータが割り当てられ、残る4番目及び5番目のサブフレームにアルマナックデータが割り当てられる。GPS衛星では、符号長1023〔ビット〕、チップレート1.023〔MHz〕のゴールド符号により、50〔bps〕によるメインフレームのデータを直接拡散し、その結果得られるスペクトラム拡散信号により1575.42〔MHz〕のキャリア信号をBPSK変調し、これによりL1帯、C/Aコードにより航法メッセージを送出するようになされている。なお航法メッセージには、エフェメリスデータに、レンジ計測における時刻補正のデータ等が含まれるようになされている。
このようにして送出される航法メッセージにおいて、エフェメリスデータは、1つのメインフレームに割り当てられるのに対し、アルマナックデータは、25のメインフレームに分割されて割り当てられる。これによりエフェメリスデータは、最短でも、18秒(3サブフレーム×6秒)の期間の間、GPS衛星から送出される航法メッセージを受信しなければ取得し得ないのに対し、アルマナックデータにおいては、12.5分(25メインフレーム×5サブフレーム×6秒)の期間の間、GPS衛星から送出される航法メッセージを受信しなければ取得し得ない。
これにより図6に示すように、例えばメモリに有効なエフェメリスデータ、アルマナックデータ、初期位置のデータを保持していない場合(図6において符号×により示す)、さらには現在時刻が不明の場合(時間により示す)、GPS受信装置においては、いわゆるコールドスタートによりGPS受信装置の現在位置を検出するようになされている。なお初期位置のデータを保持している場合であって、他のデータを保持していない場合、コールドスタートと呼ばれる場合もある。
このコールドスタートにおいて、GPS受信装置では、アルマナックデータを用いて見通し範囲に存在するGPS衛星を特定できないことにより、全てのGPS衛星について順次航法メッセージの受信を試み、例えば4つのGPS衛星よりエフェメリスデータを取得できると、この取得したエフェメリスデータを用いてGPS受信装置の現在位置を検出し、GPS受信装置の現在位置を検出するようになされている。これによりコールドスタートにおいては、電源を入れてからGPS受信装置の現在位置を測位するまでの時間(TTFF:Time To First Fix )が長時間になる欠点がある。
これに対して有効なアルマナック、初期位置のデータを保持し(図6においては符号○により示す)、さらに現在時刻が判明している場合、GPS受信装置では、いわゆるウォームスタートにより現在位置を求めるようになされている。ここでウォームスタートにおいては、この有効なアルマナックデータを用いて見通し範囲のGPS衛星やドップラーシフト量を計算できることができ、これによりコールドスタートの場合に比してエフェメリスデータの取得に要する時間を短くすることができる。これによりウォームスタートにおいては、コールドスタートに比して、立ち上がりに要する時間を短くすることができるようになされている。
またウォームスタートの条件に加えて、さらに有効なエフェメリスデータを保持している場合、GPS衛星ではホットスタートにより現在位置を検出するようになされている。ここでホットスタートにおいては、エフェメリスデータの取得に要する時間を省略できることにより、その分、ウォームスタートに比して立ち上がりに要する時間を短くすることができるようになされている。
これに対して例えば特開2002−195846号公報、特開2002−221565号公報等においては、測位の開始時、サーバーをアクセスしてエフェメリスデータ、アルマナックデータ、初期位置、時間のデータを取得するいわゆるネットワークアシストGPSの手法が提案されるようになされている。この手法によれば、サーバーから取得したデータに基づいてGPS衛星の特定時刻における位置を求めることができ、その分、立ち上がりに要する時間を短くすることができる。
ところでこのようなサーバーを用いたネットワークアシストGPSにおいては、サーバーに係る一連のインフラの設置が必要になる問題がある。またサーバーまでのアクセスには、一般に、電話回線の使用が考えられ、この場合には、通信費用も必要になる。
特開2002−195846号公報
特開2002−221565号公報
(1)実施例の構成
図2は、本発明の実施例に係るアシストGPSシステムを示す略線図である。このアシストGPSシステム1は、無線通信によりデータ通信可能なGPS受信装置A1〜A5、B1〜B3、C1〜C3により構成される。なおこれらGPS受信装置A1〜A5、B1〜B3、C1〜C3は、ほぼ同一に構成されることにより、以下の説明においては、GPS受信装置A1を主に説明する。また以下の説明においては、GPS衛星の特定時刻の位置を求めるために必要なエフェメリスデータ、アルマナックデータの双方、又は一方を、適宜、軌道データと呼ぶ。
ここで図3に示すように、各GPS受信装置A1は、携帯型のGPS受信装置であり、ユーザーによる操作に応動してGPS衛星から送出される電波を受信して現在位置を検出し、表示部3によりこの検出した現在位置を表示する。なおこの現在位置の表示は、例えば地図を表示し、この地図上で現在位置を示すマークを表示する場合、現在位置の座標値を表示する場合等である。
すなわちGPS受信装置A1において、GPS受信部4は、コントロール部5の制御により動作を切り換え、GPSアンテナ6によりGPS衛星から到来する電波を受信して現在位置を検出する。このためGPS受信部4において、RFブロック7は、GPSアンテナ6で受信した信号を処理する。
すなわちGPS受信部4において、RFブロック7は、GPSアンテナ6で受信した信号を所定利得で増幅した後、中間周波数にダウンコンバートし、この中間周波数信号をアナログディジタル変換処理して出力する。ベースバンド処理部8は、中央処理ユニット(CPU)9による演算処理により、このRFブロック7の出力信号をスペクトラム逆拡散処理、同期追跡処理等して航法メッセージを取得する。ベースバンド処理部8は、この航法メッセージよりエフェメリスデータ、アルマナックデータを取得し、メモリにより構成されるデータ記憶部10に記録する。またこのようにして取得したエフェメリスデータ、アルマナックデータに基づいてGPS受信装置A1の現在位置を検出し、この検出した現在位置のデータをコントロール部5に出力すると共に、初期位置のデータとしてデータ記憶部10に記録する。
これらの処理において、ベースバンド処理部8は、GPS衛星から送出されるエフェメリスデータ、アルマナックデータが更新されると、これに対応してデータ記憶部10に記録したエフェメリスデータ、アルマナックデータを更新する。また一定の時間間隔によりGPS受信装置A1の現在位置を検出し直し、この検出し直した現在位置のデータをコントロール部5に出力すると共に、この現在位置の検出に対応してデータ記憶部10に記録した初期位置のデータを更新する。
このようにしてGPS受信装置A1の現在位置を検出してデータ記憶部10の内容を更新するにつき、ベースバンド処理部8は、起動時、データ記憶部10に保持したアルマナックデータ、エフェメリスデータが古いデータか否か判定し、これらアルマナックデータ、エフェメリスデータの双方、又は一方が古いデータの場合、対応するデータの取得をコントロール部5に要求すると共に、データ記憶部10に保持されたこの古いデータを削除する。なおベースバンド処理部8は、GPS衛星から送出されるアルマナックデータ、エフェメリスデータの更新に係る期間に対応して、それぞれデータ記憶部10に記録された各データの取得時刻、取得日時より一定時間、一定日時以上経過している場合、古いデータと判定する。
またこのようにしてコントロール部5にアルマナックデータ、エフェメリスデータを要求して対応するデータの全部又は一部がコントロール部5で取得されると、このコントロール部5で取得したデータをデータ記憶部10に記録する。これに対してデータ記憶部10に保持したデータが古くない場合、データ記憶部10の内容をそのままの状態に保持する。
ベースバンド処理部8は、このようにしてデータ記憶部10に記録されている内容に従って、GPS受信装置A1の現在位置を検出する。すなわち電源起動時にデータ記憶部10に記録されているアルマナックデータ、エフェメリスデータの双方が古く、かつコントロール部5にこれらアルマナックデータ、エフェメリスデータの取得を要求したにも係わらず、これらアルマナックデータ、エフェメリスデータの双方を取得できない場合、従来のコールドスタートにより現在位置を検出する。すなわちこの場合、全てのGPS衛星について順次航法メッセージの受信を試み、この実施例では4つのGPS衛星よりエフェメリスデータを取得できると、このエフェメリスデータを用いてGPS衛星の現在位置を検出する。また各GPS衛星からのレンジを検出し、これらによりGPS受信装置A1の現在位置を検出する。
なおアルマナックデータにおいては、多少古くなっても、見通し範囲のGPS衛星を特定できる場合がある。また見通し範囲に存在する全てのGPS衛星を特定できないまでも、見通し範囲に存在するGPS衛星の一部を特定することができる場合がある。これによりこのようにアルマナックデータ、エフェメリスデータの双方が古い場合に、アルマナックデータ、エフェメリスデータをコントロール部5から取得できない場合、この古いアルマナックデータを用いて見通し範囲のGPS衛星を検出し、この見通し範囲のGPS衛星からエフェメリスデータを取得してGPS受信装置A1の現在位置を検出するようにしてもよい。なおこの場合、アルマナックデータが古いことにより見通し範囲のGPS衛星を誤って検出する場合もあり、これにより例えば4つのGPS衛星のエフェメリスデータによりGPS受信装置A1の現在位置を検出する場合に、3つのGPS衛星からしかエフェメリスデータを取得できない場合、不足するエフェメリスデータについては、コールドスタートの場合と同様にして他のGPS衛星について航法メッセージの取得を試みることになる。
これに対してデータ記憶部10にアルマナックデータだけが記録されている場合、すなわち電源起動時にデータ記憶部10に記録されているアルマナックデータ、エフェメリスデータの双方が古く、かつコントロール部5にこれらアルマナックデータ、エフェメリスデータの取得を要求したにも係わらず、アルマナックデータだけしか取得できない場合、又は電源起動時にデータ記憶部10に記録されているデータのうちエフェメリスデータが古く、かつコントロール部5にこのエフェメリスデータの取得を要求したにも係わらず、エフェメリスデータを取得できない場合、従来のウォームスタートにより現在位置を検出する。すなわちこの場合、データ記憶部10に保持されたアルマナックデータにより見通し範囲のGPS衛星を検出し、このGPS衛星からエフェメリスデータを取得する。またこの取得したエフェメリスデータを用いてGPS衛星の現在位置、各GPS衛星からのレンジを検出し、これらによりGPS受信装置A1の現在位置を検出する。
これに対してデータ記憶部10にエフェメリスデータだけが記録されている場合、すなわち電源起動時にデータ記憶部10に記録されているアルマナックデータ、エフェメリスデータの双方が古く、かつコントロール部5にこれらアルマナックデータ、エフェメリスデータの取得を要求したにも係わらず、エフェメリスデータだけしか取得できない場合、又は電源起動時にデータ記憶部10に記録されているデータのうちアルマナックデータが古く、かつコントロール部5にこのアルマナックデータの取得を要求したにも係わらず、アルマナックデータを取得できない場合、さらにはデータ記憶部10にアルマナックデータ、エフェメリスデータが記録されている場合、従来のホットスタートによりGPS受信装置A1の現在位置を検出する。すなわちこの場合、データ記憶部10に保持されたエフェメリスデータを用いてGPS衛星の現在位置、各GPS衛星からのレンジを検出し、これらによりGPS受信装置A1の現在位置を検出する。
これによりGPS受信部4は、データ記憶部10に保持した軌道データによってGPS受信装置A1の現在位置を短時間で検出できる場合、このデータ記憶部10に保持した軌道データを用いてGPS受信装置A1の現在位置を検出するようになされている。またデータ記憶部10に保持した軌道データによっては、GPS受信装置A1の現在位置の検出に時間を要する場合、コントロール部5を介して、他のGPS受信装置A2〜C3より軌道データを取得し、この軌道データによりGPS受信装置A1の現在位置を検出するようになされている。これに対してデータ記憶部10に保持した軌道データによっては、GPS受信装置A1の現在位置の検出に時間を要する場合であって、コントロール部5に軌道データの取得を要求したにも係わらず、軌道データを取得できない場合、従来のGPS受信装置と同様にしてGPS受信装置A1の現在位置を検出するようになされている。
すなわち無線通信モジュール13は、同種の機器である他のGPS受信装置A2〜A5と無線通信によりデータ交換するデータ通信手段であり、この実施例では、ブルートゥース(Bluetooth )による通信モジュールが適用される。すなわち無線通信モジュール13は、コントロール部5の制御により、一連の認証等の処理を実行し、アンテナ14を介してコントロール部5の出力データを通信可能範囲に存在する他のGPS受信装置A2〜A5に送出し、またこの他のGPS受信装置A2〜A5からのデータをコントロール部5に出力する。
コントロール部5は、このGPS受信装置A1の動作を制御するマイクロコンピュータ構成の制御部であり、操作子16の制御に応動して中央処理ユニット(CPU)17によりメモリ18に記録された処理プログラムを実行することにより、例えば液晶表示装置による表示部3に地図を表示し、この地図上に、GPS受信部4で検出される現在位置を表示する。
コントロール部5は、ユーザーにより電源の操作子16が操作されると、この処理プログラムに係る処理を開始して全体を起動する。またこの起動によりベースバンド処理部8からエフェメリスデータ、アルマナックデータの取得が要求されると、無線通信モジュール13の制御により、他の機器A2〜A5、B1〜B3、C1〜C3より要求に係るデータを取得してGPS受信部4に出力する。
図1は、このような起動時に係るエフェメリスデータ、アルマナックデータの処理に係るコントロール部5とベースバンド処理部8との処理手順を示すフローチャートである。このGPS受信装置A1では、電源の立ち上げによりGPS受信部4が動作を立ち上げると、ベースバンド処理部8のデータ記憶部10に保持したエフェメリスデータ、アルマナックデータの中央処理ユニット9による判定により、ステップSP1からステップSP2に移り、軌道データが新しいか否か判断される。ここで軌道データが新しいものの場合、ステップSP2からステップSP3に移り、GPS受信部4において、データ記憶部10に保持されたエフェメリスデータ、アルマナックデータにより現在位置が検出され、ステップSP4に移ってこの起動時の処理手順を終了する。
これに対してデータ記憶部10に保持されたエフェメリスデータ、アルマナックデータの双方又は何れかが古いものの場合、ステップSP2で否定結果が得られ、ステップSP5に移り、ここで中央処理ユニット9によりこの古いデータが削除される。コントロール部5においては、この軌道データの削除によるベースバンド処理部8からの要求により、続くステップSP6において、無線通信モジュール13の動作を制御して通信可能範囲に存在する他の機器A2〜A5に対して削除に係る軌道データの送出を要求する。
またこの要求に対する他の機器A2〜A5からの応答により、続くステップSP7において、送出要求に係る軌道データを取得し得たか否か判断する。ここで肯定結果が得られると、コントロール部5は、ステップSP7からステップSP8に移り、この取得した軌道データをGPS受信部4に送出してデータ記憶部10に記録する。これによりベースバンド処理部8においては、続くステップSP9において、エフェメリスデータ、アルマナックデータの双方がデータ記憶部10に揃ったか否か判断する。ここで肯定結果が得られると、ステップSP3に移り、GPS受信部4において、このデータ記憶部10に記録された軌道データを用いてGPS受信装置A1の現在位置の検出を開始し、その結果得られる現在位置のデータをコントロール部5に通知した後、ステップSP4に移って、この起動時に係る処理手順を終了する。
これによりこの実施例において、GPS受信装置A1では、ホットスタートに必要な軌道データが揃っていない場合、図2において符号D1により示すように、直接の無線通信によるネットワークであるブルートゥースのピコネット(Piconet )により、不足する軌道データを近傍に存在する同種の機器から取得してGPS受信装置A1の現在位置を検出するようになされている。これによりGPS受信装置A1では、専用のサーバーをアクセスしなくても、GPS衛星から軌道データを取得する処理を省略して装置の現在位置を検出することができるようになされ、その分、立ち上がり時間を短縮することができるようになされている。
これに対して例えば通信可能の範囲におけるGPS受信装置A2〜A5から不足する軌道データの一部しか取得し得なかった場合、コントロール部5は、ステップSP6に戻り、この不足する軌道データについて、改めて軌道データの送出を要求する。
これに対してこのような直接、無線通信可能な近傍に存在するGPS受信装置A2〜A5によっては、軌道データを補いきれない場合、コントロール部5は、ステップSP7で否定結果が得られることにより、ステップSP7からステップSP10に移り、ここでスキャタネット(Scatternet)により軌道データを要求する。ここでスキャタネットは、ブルートゥースのピコネット(Piconet )に存在する通信対象の1つをマスタに設定し、このマスタを介して、このマスタと直接通信可能な機器との間でデータを交換することにより、ピコネットの外に存在する直接、無線通信困難な対象との間でも、データ交換可能に構築されるネットワークである。
コントロール部5においては、ステップSP10でこのスキャタネットにより軌道データを要求すると、続くステップSP11において軌道データを取得し得たか否か判断し、ここで肯定結果が得られると、ステップSP8に移り、この取得したデータをデータ記憶部10に記録してステップSP9に移る。
これによりGPS受信装置A1においては、直接、通信可能な近傍に存在する同種の機器によっては、不足する軌道データを取得できない場合、図2において符号D2、D3により示すように、直接、通信可能な範囲より以遠に存在する同種の機器B1〜B3、C1〜C3より軌道データを取得し、これにより専用のサーバーをアクセスしなくても、確実にGPS衛星の特定時刻における位置の検出に必要な軌道データを取得し得るようになされている。
これに対してこのようにスキャタネットによっても軌道データが揃わない場合、コントロール部5は、ステップSP11で否定結果が得られることにより、ステップSP11からステップSP3に移り、ベースバンド処理部8にその旨通知し、これによりベースバンド処理部8において、上述したように揃っているデータを用いてGPS受信装置A1の現在位置を検出してこの起動時における処理手順を終了する。
これに対して図4は、ユーザーによりリセットの操作子16が操作された場合の、エフェメリスデータ、アルマナックデータに係る処理手順を示すフローチャートである。コントロール部5においては、ユーザーによりリセットの操作子16が操作されると、ステップSP21からステップSP22に移り、ベースバンド処理部8にデータ記憶部10に記録したエフェメリスデータ、アルマナックデータの削除を指示する。また続くステップSP24において、ピコネットにより軌道データの送出を要求し、続くステップSP25において、軌道データを取得し得たか否か判断する。ここで軌道データを取得し得た場合、ステップSP26に移り、この軌道データのデータ記憶部10への記録をベースバンド処理部8に指示する。また続くステップSP27において、軌道データが揃ったか否か判断し、ここで肯定結果が得られると、ステップSP28に移り、ベースバンド処理部8に測位の開始を指示した後、ステップSP29に移ってこの処理手順を終了する。
これによりこのGPS受信装置A1では、リセットの処理により軌道データを更新する場合でも、直接、無線通信可能な近傍に存在する同種の機器から不足する軌道データを取得して現在位置を検出するようになされ、これにより専用のサーバーをアクセスしなくても立ち上がり時間を短くするようになされている。
これに対してステップSP27で否定結果が得られると、コントロール部5は、ステップSP24に戻り、不足する軌道データについて改めて近傍の機器に送出を要求する。
これに対してステップSP25で否定結果が得られると、コントロール部5は、ステップSP25からステップSP30に移り、スキャタネットにより軌道データの送出を要求し、続くステップSP31において、軌道データを取得し得たか否か判断する。ここで肯定結果が得られると、コントロール部5は、ステップSP26に移るのに対し、否定結果が得られると、ステップSP28に移る。これによりこの場合も、GPS受信装置A1においては、直接、通信可能な近傍に存在する同種の機器によっては、不足する軌道データを取得できない場合、この通信可能な範囲より以遠に存在する同種の機器B1〜B3、C1〜C3より軌道データを取得し、これにより専用のサーバーをアクセスしなくても、確実にGPS衛星の特定時刻の位置の検出に必要な軌道データを取得し得るようになされている。
これに対して図5は、無線通信モジュール13を介してこのような軌道データの要求を受信した場合におけるコントロール部5の処理手順を示すフローチャートである。コントロール部5においては、軌道データの要求が受信されると、ステップSP41からステップSP42に移り、この軌道データの要求がスキャタネットによるものか否か判断する。ここで否定結果が得られると、コントロール部5は、ステップSP43に移り、ベースバンド処理部8に対する問い合わせにより、送出要求に係る軌道データについて新しいデータが存在するか否か判断する。ここで否定結果が得られると、コントロール部5は、ステップSP44に移り、要求に係る軌道データを保持していない旨、送出要求に係る機器に通知した後、ステップSP46に移ってこの処理手順を終了する。
これに対してステップSP43において、肯定結果が得られると、コントロール部5は、ステップSP43からステップSP47に移り、この送出要求に係る軌道データをベースバンド処理部8から取得して送信した後、ステップSP46に移ってこの処理手順を終了する。これによりこの実施例においては、他の機器からの軌道データの要求に対して、保持した軌道データを送出し、この他の機器において、短い時間で装置の現在位置を検出できるようになされている。
これに対してステップSP42で肯定結果が得られると、コントロール部5は、ステップSP42からステップSP48に移る。ここでコントロール部5は、他の機器に対して軌道データの送出を要求し、続くステップSP49において、この要求に対する応答により軌道データを取得し得たか否か判断する。また軌道データを取得できた場合、ステップSP49からステップSP47に移り、この取得した軌道データをスキャタネットによる送出要求元に送信した後、ステップSP46に移ってこの処理手順を終了する。
これに対してステップSP49で否定結果が得られると、コントロール部5は、ステップSP49からステップSP50に移り、スキャタネットにより軌道データの送出を要求し、続くステップSP51において、軌道データを取得し得たか否か判断する。ここで肯定結果が得られると、コントロール部5は、ステップSP47に移り、取得した軌道データを元々の要求元に送信した後、ステップSP46に移ってこの処理手順を終了する。これに対してステップSP51において否定結果が得られると、ステップSP44に移り、軌道データを取得し得ない旨通知した後、ステップSP46に移ってこの処理手順を終了する。
これによりこの実施例においては、必要に応じてマスタに設定を切り換え、他の機器からの軌道データの要求を他の機器に通知すると共に、この他の機器から得られる軌道データを要求元に送信するようになされ、これによりこの軌道データの要求元に係る機器において、確実に軌道データを取得し得るようになされている。
(2)実施例の動作
以上の構成において、このアシストGPSシステム1においては(図1及び図2)、何れかのGPS受信装置A1〜A5、B1〜B3、C1〜C3が動作を立ち上げる場合、このGPS受信装置A1〜A5、B1〜B3、C1〜C3において、保持したエフェメリスデータ、アルマナックデータが古くなっていないか判定され、これらのデータが古くなっていない場合、この保持したエフェメリスデータによりGPS衛星の現在位置が検出される。また対応するGPSの電波を受信してレンジが測定され、このレンジの測定結果と各GPS衛星の現在位置とから、各GPS受信装置A1〜A5、B1〜B3、C1〜C3の現在位置が検出される。各GPS受信装置A1〜A5、B1〜B3、C1〜C3では(図3)、例えば表示部3で表示される地図上に、この現在位置が表示され、これにより各GPS受信装置A1〜A5、B1〜B3、C1〜C3を携帯するユーザーに現在位置が通知される。
これに対して保持したエフェメリスデータ、アルマナックデータが古くなっている場合、直接、無線通信可能な近傍に存在するGPS受信装置に対して、軌道データの送出が要求され、この近傍のGPS受信装置が対応する軌道データを保持しており、かつこの軌道データが古くなっていない場合、この軌道データが提供される。またこのような軌道データが、直接、無線通信可能なGPS受信装置より取得できない場合、軌道データの送出要求が中継されて、直接、無線通信可能範囲外に存在するGPS受信装置に対して、軌道データの送出が要求され、このGPS受信装置が対応する軌道データを保持しており、かつこの軌道データが古くなっていない場合、この軌道データが中継されて提供される。
これによりこの軌道データを取得したGPS受信装置においては、GPS衛星から到来する航法メッセージを受信してエフェメリスデータを検出する場合に比して、短い時間でGPS衛星の特定時刻における位置の検出に必要な軌道データを取得することができ、その分、起動に要する期間を格段的に短くすることができる。
またこの場合このGPS受信装置においては、同種の機器との間の無線通信により軌道データを取得することができることにより、軌道データの提供のためにサーバーを設けなくても、またこのようなサーバーにアクセスしなくても、軌道データを取得することができ、これによりサーバー等の設備を設けなくても立ち上がりに要する時間を短くすることができる。
またユーザーによりリセットが指示された場合、この指示に係るGPS受信装置では、同様にして同種の機器より軌道データが取得され、この軌道データにより現在位置が検出される。これによりこの場合でも、サーバー等の設備を設けなくても立ち上がりに要する時間を短くすることができる。
(3)実施例の効果
以上の構成によれば、同種の機器との間で、アルマナック等による軌道データをやりとりすることにより、サーバー等の設備を設けなくても立ち上がりに要する時間を短くすることができる。
すなわち同種の機器に対して、GPS衛星の特定時刻における位置の検出に必要なGPS衛星の軌道データの送出を要求し、この要求に応答して得られる軌道データに基づいて、装置の現在位置を検出することにより、立ち上がりに要する時間を短くすることができる。
またこの軌道データの送出要求を内蔵のメモリに保持した軌道データの判定結果に基づいて実行することにより、必要な場合についてだけ軌道データを無線通信により取得して現在位置を検出することができ、保持した軌道データが新しい場合にあっては、この保持した軌道データにより短時間で装置の現在位置を検出することができる。
またこの軌道データがエフェメリスデータ及び又はアルマナックデータであることにより、必要最小限度のデータのみ無線通信により取得して現在位置を検出することができ、その分、GPS衛星の現在位置の検出に必要な他の初期位置、時間のデータを併せて取得する場合に比して、無線通信に係る処理を簡略化することができる。
また同種の機器からの要求に応じて、GPS衛星の特定時刻における位置の検出に必要な軌道データをこの同種の機器に通知することにより、この同種の機器において、現在位置の検出に要する時間を短くすることができる。
また同種の機器からの要求に応じて、他の同種の機器に対して、GPS衛星の特定時刻における位置の検出に必要な軌道データの送出を要求し、この要求に応答して得られる軌道データを同種の機器に送出することにより、軌道データの送出要求、軌道データを中継して、無線通信可能範囲外の機器においても、現在位置の検出に要する時間を短くすることができる。
1……アシストGPSシステム、4……GPS受信部、5……コントロール部、8……ベースバンド処理部、9、17……中央処理ユニット、10……データ記憶部、13……無線通信モジュール、A1〜A5、B1〜B3、C1〜C3……GPS受信装置