JP2005048814A - 無段変速機の変速制御方法 - Google Patents

無段変速機の変速制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アップシフト時にエンジン回転数の変化に伴うトルクが大きく変化する場合でも、運転者の期待に合致した車両加速度が得られる無段変速機の変速制御方法を提供する。
【解決手段】アクセル開度と車速とから目標入力回転数または目標変速比を決定し、この目標入力回転数または目標変速比に向かって変速制御を行う無段変速機のアップシフト時の変速制御方法であって、アクセル開度および車速から目標出力軸トルクを決定し、変速直前の出力軸トルクから目標出力軸トルクに向かって一様に変化するスイープトルクおよびこのスイープトルクに対して所定値を加算した上限トルクを決定する。実際の出力軸トルクが上限トルクとなる変速速度の上限値を求め、実際の変速速度がこの上限値を越えないように変速制御を実施する。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用無段変速機のアップシフト時における変速制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平9−242854号公報
Vベルト式無段変速機やトロイダル型無段変速機などの無段変速機の変速制御は、アクセル開度と車速(出力軸回転数)とから目標入力回転数をマップ検索し、その回転数と現在の車速とで決まる変速比を目標値として、一様な変速速度で変速を行うのが一般的である。ところが、変速速度によっては運転者が期待する車両加速度が得られないことがある。
【0003】
特許文献1では、キックダウン時の変速速度が早すぎて引込み感が発生するのを防止する変速制御装置が提案されている。すなわち、出力軸トルクが負にならないように、変速速度をエンジントルクと系のイナーシャから逆算し、変速速度に制限を加えるようにしたものである。そのため、アクセル開度を急に開いた時、出力軸トルクが一時的に負になる現象を解消でき、キックダウン時の引込み感を解消することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特許文献1では、目標とする出力軸トルクの下限値を0としているため、アップシフト時にエンジン回転数の変化に伴うトルクが大きく変化する場合、運転者の期待に合致した車両加速度が得られないという現象が生じる。例えば、アクセル開度を全開(フルスロットル)から中間開度(パートスロットル)へ戻すと、運転者は車両加速度の減少を期待するが、変速比の減少によりイナーシャの大きなエンジンの回転数を減少させるため、変速機からの出力軸トルクが変速が終了するまで一時的に増大し、かえって加速度が増大する結果となる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、エンジン回転数の変化に伴うトルクが大きく変化するアップシフト時に、運転者の期待に合致した車両加速度が得られる無段変速機の変速制御方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、アクセル開度と車速とから目標入力回転数または目標変速比を決定し、この目標入力回転数または目標変速比に向かって変速制御を行う無段変速機のアップシフト時の変速制御方法において、上記目標入力回転数または目標変速比が達成された時の目標出力軸トルクを演算する工程と、変速直前の出力軸トルクから上記目標出力軸トルクに向かって一様に変化するスイープトルクおよびこのスイープトルクに対して所定値を加算した上限トルクを決定する工程と、実際の出力軸トルクが上記上限トルクとなる変速速度の上限値を求める工程と、実際の変速速度が上記上限値を越えないように上記変速制御を実施する工程と、を有することを特徴とする無段変速機の変速制御方法を提供する。
【0007】
本発明の基本的な考え方は次の通りである。
まず、アクセル開度から運転者の要求する加速度を推測する。但し、加速度は空気抵抗などを考慮する必要があり、計算が複雑になるので、現在の車速で目標変速比が実現した時の目標出力軸トルクを推測する。
エンジンのイナーシャを考慮し、運転者が要求する出力軸トルクを継続的に実現できる変速速度とするのが理想的であるが、多くの場合、変速速度が変速したい方向と逆方向になってしまう。これを避けるため、出力軸トルクを現在値から運転者が要求する出力軸トルクまで一様に変化(スイープ)させるように制御する。同時に、スイープした値から所定範囲でのずれを許容する。
このように出力軸トルクがほぼ一様に変化するように変速速度を制限することにより、運転者の要求する加速度にほぼ沿った加速度を得ることができる。
【0008】
具体的なアップシフト時の変速制御は次の通りである。
まず目標変速比における出力軸トルク(目標出力軸トルク)を演算する。例えば、アクセル開度および車速から目標変速比を求め、現在の車速のまま目標変速比が実現したときのエンジン回転数での推定エンジントルク、および目標変速比から目標出力軸トルクを算出すればよい。
次に、変速直前の出力軸トルクから目標出力軸トルクに向かって一様に変化するスイープトルクおよびこのスイープトルクに対して所定値を加算した上限トルクを決定する。スイープトルクとは、変速直前の出力軸トルクから目標出力軸トルクに向かって単調に変化するトルクであり、オフアップ時には単調減少し、オンアップ時には単調増加する。出力軸トルクをスイープトルクに沿った値に制御することは困難であるから、スイープトルクに対するずれを許容するため上限トルクを設定している。
次に、実際の出力軸トルクが上限トルクとなる変速速度の上限値を求める。ここで、変速速度とは絶対値のことであり、アップシフト時(変速比が減少する時)には上限値とは減少方向の最大値のことである。変速速度の上限値は、上限トルク、エンジン推定トルク、車速、入力回転数などから求めることができる。
そして、実際の変速速度が上限値を越えないように、変速速度に制限を加えながら変速制御を実施する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、実施例を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1,図2は本発明にかかる無段変速機の一例を示す。
この実施例の無段変速機はFF横置き式の自動車用変速機であり、大略、エンジン出力軸1によりトーショナルダンパ2を介して駆動される入力軸3、駆動プーリ11を支持する駆動軸10、従動プーリ21を支持する従動軸20、駆動プーリ11と従動プーリ21に巻き掛けられたVベルト15、第1減速軸30、第2減速軸31、車輪と連結された出力軸32、変速用モータ40、テンション装置50などで構成されている。
この実施例で用いられるVベルト15は、一対の無端状張力帯と、これら張力帯に長さ方向に係止された多数のブロックとで構成された公知の乾式複合ベルトである。
【0010】
駆動プーリ11は、駆動軸10上に固定された固定シーブ11aと、駆動軸10上に軸方向移動自在に支持された可動シーブ11bと、可動シーブ11bの背後に設けられたストローク機構12とを備えている。この実施例のストローク機構12は、変速用モータ40による回転入力によって可動シーブ11bを軸方向に移動させるボールネジ機構であり、可動シーブ11bに軸受12aを介して相対回転自在に支持された雌ねじ部材12bと、ハウジングに固定された雄ねじ部材12cとを備え、雌ねじ部材12bの外周部には変速ギヤ13が固定されている。
【0011】
従動プーリ21は、従動軸20上に固定された固定シーブ21aと、従動軸20上に軸方向移動自在に支持された可動シーブ21bと、可動シーブ21bの背後に設けられたストローク機構22とを備えている。このストローク機構22も駆動プーリ11のストローク機構12と同様の構成を有するボールネジ機構であり、可動シーブ21bに軸受22aを介して相対回転自在に支持された雌ねじ部材22bと、ハウジングに固定された雄ねじ部材22cとを備え、雌ねじ部材22bの外周部には変速ギヤ23が固定されている。
【0012】
従動軸20の従動プーリ21よりエンジン側の部位には、前後進切替機構24が設けられ、その両側には前進用ギヤ25と後進用ギヤ26とが回転自在に支持されている。前後進切替機構24を図1の左側へシフトすると前進(D)位置になり、右側へシフトすると後進(R)位置となる。従動軸20のエンジン側の軸端部には発進クラッチ27が設けられ、発進クラッチ27は前後進切替機構24のハブ24aを従動軸20に対して断接する。前進用ギヤ25は第1減速軸30のギヤ30aに噛み合い、第1減速軸30のギヤ30bは第2減速軸31のギヤ31aに噛み合い、さらに第2減速軸31のギヤ31bは差動装置33のリングギヤ33aに噛み合っている。また、後進用ギヤ26はアイドラギヤ28を介して第1減速軸30のギヤ30bに噛み合っている。そして、差動装置33を介して車輪に連結された出力軸32を駆動している。
【0013】
変速用モータ40の出力ギヤ41は第1変速軸45の一端に設けられた減速ギヤ45aに噛み合っている。第1変速軸45の他端部に設けられたギヤ45bは従動プーリ21の可動シーブ21bの移動ストローク分の長さを有する平歯車であり、従動プーリ21に設けられた変速ギヤ23と噛み合っている。第1変速軸45のギヤ45bを回転させると、変速ギヤ23が追随回転することでボールネジ機構22の作用により、可動シーブ21bを軸方向へ移動させることができる。従動プーリ21の変速ギヤ23は、第2変速軸46の第1アイドラギヤ46aとも噛み合い、さらに第2変速軸46の第2アイドラギヤ46bは駆動プーリ11の変速ギヤ13と噛み合っている。これらアイドラギヤ46a,46bも、第1変速軸45のギヤ45bと同様に、可動シーブ11b,21bの移動ストローク分の長さを有する平歯車で構成されている。変速用モータ40の回転力は、第1変速軸45,従動プーリ21の変速ギヤ23,第2変速軸46を介して駆動プーリ11の変速ギヤ13へと伝達される。そのため、駆動プーリ11の可動シーブ11aと従動プーリ21の可動シーブ21aは互いに同期し、かつ互いにプーリ溝幅(ベルト巻き掛け径)を逆方向に変化させながら軸方向へ移動することができる。なお、第1変速軸45は、必ずしも従動プーリ21側に設ける必要はなく、駆動プーリ11側に配置してもよい。さらに、第1変速軸45を省略し、変速用モータ40でアイドラ軸(第2変速軸46)を駆動してもよい。
【0014】
この無段変速機には、図2に示すように、Vベルト15にトルク伝達に必要なベルト張力を与える機構、すなわちテンション装置50が設けられている。
上記のようにプーリ11,21のプーリ溝幅(ベルト巻き掛け径)は変速用モータ40によって可変されるが、それだけでは伝達トルクによってVベルト15とプーリ11,21との間に滑りが発生してしまう。そこで、Vベルト15に滑りを生じさせないベルト張力を与えるため、テンション装置50が設けられている。テンション装置50はテンションローラ51を備え、このテンションローラ51はリンク52を介してテンションアーム53によって揺動可能に支持されている。
【0015】
テンションアーム53の回動軸53aは駆動プーリ11の半径方向外側に設けられ、引張スプリング54によってVベルト15方向に付勢されている。そのため、テンションローラ51は所定の荷重でVベルト15の緩み側を内側に向かって押し付けている。このように外側から内側に向かってVベルト15を押圧することで、所定のベルト張力を得るとともに、プーリ11,21に対するVベルト15の巻き付け長さを長くし、伝達効率を高めている。
なお、テンションローラ51はVベルト15を外側から内側に向かって押圧するものに限らず、内側から外側に向かって押圧してもよい。
また、テンションローラ51をリンク52を介してアーム53に取り付けたが、テンションローラ51をアーム53に直接回転自在に取り付けてもよい。
上記実施例のテンション装置50は引張スプリング54を用いたものであるが、特開2001−330097号公報のように、引張スプリングの他にアシストモータを備えたものであってもよいし、特開2002−213549号公報のように、引張スプリングと圧縮スプリングとを併用したものであってもよい。さらに、アシストモータに代えて油圧シリンダなどのアクチュエータを用いてもよい。
【0016】
図3は変速用モータ40を制御するための制御装置60を示す。
制御装置60には、エンジン回転数(入力軸3の回転数)、車速(出力軸32の回転数)、アクセル開度、駆動軸10の回転数、従動軸20の回転数などが入力される。制御装置60には、変速マップ、エンジントルク曲線などが設定され、上記入力信号に応じて目標出力軸トルク、目標変速比、実エンジントルク、実変速比などを算出し、後述する変速制御を実施する。
【0017】
図4は制御装置60の作用を表すブロック図である。
まず、アクセル開度と車速とが変速比演算部60aに入力され、ここでマップ検索され、目標変速比が決定される。一方、アクセル開度と車速と目標変速比とが出力軸トルク演算部60bに入力され、現在の車速のまま目標変速比が達成された場合のエンジン回転数とアクセル開度とに基づき、目標出力軸トルクが演算される。
次に、スイープトルク演算部60cで目標出力軸トルクに対応したスイープトルクを演算する。このスイープトルクは、変速直前の出力軸トルクから目標出力軸トルクに向かって一様に変化するトルクのことであり、オフアップ時には一定の時間勾配をもって低下するトルクであり、オンアップ時には逆に一定の時間勾配をもって上昇するトルクである。変速直前の出力軸トルクを演算するために、実エンジントルクと実変速比とが入力される。
次に、上下限トルク演算部60dにおいて、スイープトルクに対して上側許容トルクおよび下側許容トルクを加算・減算した上限トルクおよび下限トルクを計算する。上限トルクはアップシフト用、下限トルクはダウンシフト用であり、上記許容トルクはスイープトルクに対するずれの許容値である。
上記のようにして求めた上限トルクおよび下限トルクから、変速速度演算部60eで変速速度のハイ側制限値とロー側制限値とを演算する。
モータ制御部60fには、目標変速比と、ハイ側制限値およびロー側制限値とが入力され、変速速度がこれら制限値を越えないように変速用モータ40を目標変速比へと制御する。ここで、アップシフト時にはハイ側制限値のみを考慮すればよく、ダウンシフト時にはロー側制限値のみを考慮すればよい。
【0018】
図5はオフアップ時における出力軸トルクの時間変化を示す。
従来のオフアップ時には、一点鎖線Aで示すように、実出力軸トルクが一時的に上昇し、かえって加速度が増大する可能性がある。これに対し、本発明では破線Bで示すように、実出力軸トルクの上昇を上限トルクで制限しているので、加速度が増大する現象を抑制し、運転者の期待に応じて車両加速度を低下させることができる。
図5における▲1▼〜▲4▼のスイープトルクの計算は以下の通りである。
▲1▼目標出力軸トルク≒実出力軸トルクの場合
スイープトルク=目標出力軸トルクとする。
▲2▼目標出力軸トルク<スイープトルク<実出力軸トルクの場合
目標出力軸トルクが実出力軸トルクから離れれば、スイープする。このとき、スイープトルクに上側許容トルクを加算した上限トルクで実出力軸トルクの上昇を制限する。
▲3▼目標出力軸トルク<実出力軸トルク<スイープトルクの場合
実出力軸トルクがスイープトルクより小さければ、スイープトルクを実出力軸トルクに追従させる。すなわち、スイープトルク=実出力軸トルクとする。
▲4▼スイープトルク<目標出力軸トルクの場合
スイープトルクが目標出力軸トルクを越えないように、スイープトルク=目標出力軸トルクとする。
【0019】
図5ではオフアップ時における出力軸トルクの変化を示したが、オンアップ時には図5とは上下反転した特性になる。この場合も、変速直前の出力軸トルクから目標出力軸トルクに向かって一様に変化する(ここでは上昇する)スイープトルクを決定し、このスイープトルクに対して所定値を加算した上限トルクを決定する。そして、実出力軸トルクが上限トルクを越えないように変速速度に制限を加えながら変速制御を実施すればよい。
【0020】
図6は本発明にかかる変速制御の具体的流れを示す。この制御には、アップシフトだけでなくダウンシフトを含む。
制御がスタートすると、まず実出力軸トルクT と目標出力軸トルクT2tとを演算する(ステップS1)。具体的には次の計算式により計算する。
【数1】
Figure 2005048814
R:プーリ比を含む総減速比、T :実エンジントルク、I :エンジンを含む入力軸側イナーシャ、ω :出力軸回転数、R :プーリ比を含む総減速比の目標値、TEt:目標変速比でのエンジントルク。
次に、目標出力軸トルクT2tとスイープトルクT2sとを比較して、スイープ方向を判定する(ステップS2)。T2t≦T2sの場合には、下向きのスイープであるため、1周期(例えば4ms)前のスイープトルクT2sn−1 から下側スイープ量Tdwn だけ減算したものをスイープトルクT2sとする(ステップS3)。一方、T2t>T2sの場合には、上向きのスイープであるため、1周期前のスイープトルクT2sn−1 に上側スイープ量Tupを加算したものをスイープトルクT2sとする (ステップS4)。
ステップS3で下向きのスイープトルクT2sを求めた後、実出力軸トルクT とスイープトルクT2sとを比較し、スイープトルクと実出力軸トルクのいずれが目標に近いかを判定する(ステップS5)。T <T2sの場合には、実出力軸トルクT の方が目標に近いことを意味するので(図5の▲3▼に相当)、スイープトルクを実出力軸トルクに追随させるためT2s=T とする(ステップS6)。次に、スイープトルクT2sと目標出力軸トルクT2tとを比較し、スイープトルクが目標を行き過ぎないかどうかを判定する(ステップS7)。T2s<T2tの場合には、スイープトルクT2sが目標を行き過ぎたことを意味するので(図5の▲4▼に相当)、スイープトルクが目標出力軸トルクを越えないようにT2s=T2tとする (ステップS8)。
同様に、ステップS4で上向きのスイープトルクT2sを求めた後、実出力軸トルクT とスイープトルクT2sとを比較し(ステップS9)、T >T2sの場合には、実出力軸トルクT の方が目標に近いことを意味するので、スイープトルクを実出力軸トルクに追随させるため、T2s=T とする(ステップS10)。次に、スイープトルクT2sと目標出力軸トルクT2tとを比較し(ステップS1 1)、T2s>T2tの場合には、目標出力軸トルクを行き過ぎたことを意味するので、スイープトルクが目標出力軸トルクを越えないように、T2s=T2tとする (ステップS12)。
上記ステップの後、スイープトルクT2sに対して上側許容トルクKmax および下側許容トルクKmin を加算・減算した上限トルクT2tmax および下限トルクT2tmin を計算する(ステップS13)。
2tmax =T2s+Kmax
2tmin =T2s−Kmin
Figure 2005048814
【0021】
本発明は上記実施例に限定されるものではない。
上記実施例では、スイープトルクを一定時間勾配で変化するトルクとしたが、一定勾配である必要はなく、変速直前の出力軸トルクから目標出力軸トルクに向かって単調に変化するトルクであればよく、多次曲線的に変化してもよい。
また、本発明にかかる無段変速機は、図1,図2に示すように変速用モータ40とテンション装置50と乾式Vベルト15とを用いた無段変速機に限らず、例えば,駆動プーリおよび従動プーリにそれぞれ油圧サーボを設け、金属ベルトを用いた公知のVベルト式無段変速機であってもよいし、トロイダル型無段変速機のような異なる形式の無段変速機であってもよい。ただ、実施例のような無段変速機の場合には、変速用モータ40によって一義的に変速比を決定でき、伝達トルクによって変速比が影響を受けないので、変速速度の制御も容易であるという利点がある。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、アップシフト時において、スイープトルクに所定値を加算した上限トルクから求められる変速速度の上限値を越えないように変速速度を制限している。そのため、例えばアクセル開度を全開から中間開度へ戻した時、出力軸トルクが変速が終了するまで一時的に増大するが、単調減少する上限トルクに対応した変速速度以下に制限するので、加速度が一時的に増大する現象を解消できる。
このように、アップシフト時にエンジン回転数の変化に伴うトルクが大きく変化した場合でも、運転者の期待に合致した車両加速度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる無段変速機の一例のスケルトン図である。
【図2】図1に示す無段変速機に用いられるテンション装置の概略図である。
【図3】制御装置の入力系と出力系との概略を示す図である。
【図4】制御装置のブロック図である。
【図5】オフアップ時における出力軸トルクの時間変化図である。
【図6】本発明にかかる変速制御の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン出力軸
3 入力軸
11 駆動プーリ
21 従動プーリ
27 発進クラッチ
32 出力軸
40 変速用モータ
60 制御装置

Claims (1)

  1. アクセル開度と車速とから目標入力回転数または目標変速比を決定し、この目標入力回転数または目標変速比に向かって変速制御を行う無段変速機のアップシフト時の変速制御方法において、
    上記目標入力回転数または目標変速比が達成された時の目標出力軸トルクを演算する工程と、
    変速直前の出力軸トルクから上記目標出力軸トルクに向かって一様に変化するスイープトルクおよびこのスイープトルクに対して所定値を加算した上限トルクを決定する工程と、
    実際の出力軸トルクが上記上限トルクとなる変速速度の上限値を求める工程と、実際の変速速度が上記上限値を越えないように上記変速制御を実施する工程と、を有することを特徴とする無段変速機の変速制御方法。
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