JP2005048811A - 遊星磁気歯車機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】円柱状の磁気歯車の側面が互いに近接することにより各磁気歯車が磁気的に連結されている遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することを可能とする遊星磁気歯車機構を構成する。
【解決手段】遊星磁気歯車機構を構成する遊星磁気歯車2は、球面を備え、太陽磁気歯車1は、球状の遊星磁気歯車2の半径より僅かに大きい半径を有する半円を、該半円の弦と平行である直線を軸とし、前記半円の弧部分を前記軸に向けて回転したときに生じる曲面を備え、内磁気歯車3は、前記半円を、前記半円の弦部分を前記軸に向けて回転した時に生じる曲面を備える磁気歯車とする。
【選択図】 図1
【解決手段】遊星磁気歯車機構を構成する遊星磁気歯車2は、球面を備え、太陽磁気歯車1は、球状の遊星磁気歯車2の半径より僅かに大きい半径を有する半円を、該半円の弦と平行である直線を軸とし、前記半円の弧部分を前記軸に向けて回転したときに生じる曲面を備え、内磁気歯車3は、前記半円を、前記半円の弦部分を前記軸に向けて回転した時に生じる曲面を備える磁気歯車とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遊星歯車機構における太陽歯車、遊星歯車及び内歯車夫々を磁気歯車に代えた太陽磁気歯車、遊星磁気歯車及び内磁気歯車から構成される遊星磁気歯車機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
動力伝達機構の一つに遊星歯車機構がある。遊星歯車機構は太陽歯車と、この太陽歯車に噛合する複数の遊星歯車と、各遊星歯車に噛合する歯を内周に備える円筒又は環状の内歯車と、遊星歯車の回転軸を支持する円盤状のキャリヤとから構成される。なお、各歯車の回転軸は互いに平行であり、太陽歯車及び内歯車の回転軸は同軸である。
【0003】
このように構成される遊星歯車機構では、例えば、回転力を太陽歯車に加えた場合、回転力に応じた太陽歯車の回転は各遊星歯車を介して内歯車に伝達される。
【0004】
ところで、歯車を用いて構成される遊星歯車機構において、互いに噛合する各歯車が円滑に回転するためには、噛合する歯車の歯面間に適度なバックラッシをもうける必要があるが、このバックラッシにより発生する歯面同士の衝突による噛合騒音又は振動等が問題となる。また、歯車を介して伝達される回転力の一部が音、振動又は熱等として失われ、その結果、回転力の伝達効率が低くなる問題がある。更に、歯面同士が物理的に接触するため、歯面が摩耗することは避けられず、歯車の点検又は交換等の保守管理が必要となる問題がある。
【0005】
これらの問題を解決すべく、遊星歯車機構における各歯車を磁気歯車に代えて構成される遊星磁気歯車機構が提案されている(例えば、特許文献1)。磁気歯車とは、円柱面の周方向に沿って異種の磁極を交互に備える円柱状の部材であり、2つの磁気歯車の側面が互いに近接している場合、磁力の働きにより2つの磁気歯車が磁気的に連結される。この磁気歯車同士に働く磁力が歯車の歯の働きを担う。この状態で一方の磁気歯車が回転する時、他方の磁気歯車も磁力に引かれ、連動する。
【0006】
図3(a)及び(b)は、従来の遊星磁気歯車機構を模式的に示す上面図及び断面図である。図中21は、円柱状の太陽磁気歯車で有り、太陽磁気歯車21の外周には、4つの円柱状である遊星磁気歯車22が近接し、太陽磁気歯車21と遊星磁気歯車22とが磁気的に連結されている。また、遊星磁気歯車22は、太陽磁気歯車21と同軸で回転する筒状の内磁気歯車23の内周面に近接し、磁気的に連結されている。遊星磁気歯車22が備える遊星磁気歯車軸26は円盤状のキャリヤ27に保持されている。また、太陽磁気歯車21は、入力軸24を備え、内磁気歯車23は、その外周に中空の出力軸5を備える。
【0007】
太陽磁気歯車21はその外周面上にN極21a及びS極21bを周方向に沿って交互に且つ等間隔に備え、遊星磁気歯車22はその外周面上にN極22a及びS極22bを周方向に沿って交互に且つ等間隔に備える。また、内磁気歯車23は、その内周面上にN極23a及びS極23bを周方向に沿って交互に且つ等間隔に備える。
【0008】
このように構成される遊星磁気歯車機構においては、太陽磁気歯車21が回転する場合、太陽磁気歯車21と太陽磁気歯車21に近接する遊星磁気歯車22との間に働く磁力により、太陽磁気歯車21の回転が遊星磁気歯車22に伝達される。つまり、太陽磁気歯車21が回転する場合、太陽磁気歯車21が備える磁極21a、21bと遊星磁気歯車22が備える磁極22a、22bとの間に働く磁力により遊星磁気歯車22も太陽磁気歯車21の回転に連動し、太陽磁気歯車21から遊星磁気歯車22に回転力が伝達される。同様にして、遊星磁気歯車22の回転は、磁力の働きにより内磁気歯車23に伝達される。
【0009】
例えば、各磁気歯車21、22、23が静止している状態で、太陽磁気歯車21が時計回りに回転した場合、太陽磁気歯車21が備えるN極21a又はS極21bと遊星磁気歯車22が備えるS極22b又はN極22aとの間に働く磁力に引かれ、遊星磁気歯車22は反時計回りに回転する。同様に、遊星磁気歯車22が備える磁極22a、22bと内磁気歯車23が備える磁極23a、23bとの間に働く磁力に引かれ、内磁気歯車23は反時計回りに回転する。つまり、磁極間に働く磁力の働きにより、太陽磁気歯車21から遊星磁気歯車22を介して内磁気歯車23に回転力が伝達される。
【0010】
歯車を磁気歯車に代えた遊星磁気歯車機構においては、各磁気歯車は非接触で回転力を伝達することができるため、噛合騒音又は振動の問題を根本的に解決することができる。また、遊星歯車機構に比べ、回転力の伝達効率が高い動力伝達機構を構成することが可能となる。更に、各磁気歯車は非接触で回転力を伝達するため、磁気歯車の摩耗は発生せず、歯車の軸間距離の点検、再調節又は歯車の交換等の保守管理も不要となる。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−289153号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の遊星磁気歯車機構においては、互いに近接する円柱状の各磁気歯車の側面間に働く磁力により各磁気歯車が連動し、回転力が伝達されるため、歯車により回転力が伝達される遊星歯車機構に比べて伝達可能な回転力が小さいという問題があった。
【0013】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、円柱状の磁気歯車から構成される遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することを可能とする遊星磁気歯車機構を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る遊星磁気歯車機構は、太陽磁気歯車と、該太陽磁気歯車と磁気的に連結された1又は複数の遊星磁気歯車と、該遊星磁気歯車と磁気的に連結された内磁気歯車とを備える遊星磁気歯車機構において、前記遊星磁気歯車は、凸面又は凹面を有する外周面を備え、前記太陽磁気歯車は、前記遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する外周面を備え、前記内磁気歯車は、前記遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する内周面を備えることを特徴とする。
【0015】
遊星磁気歯車は凸面又は凹面を有する外周面を備える磁気歯車であり、太陽磁気歯車は、前記遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する外周面を備える磁気歯車であるため、遊星磁気歯車及び太陽磁気歯車の形状が円柱状である場合に比べ、遊星磁気歯車と太陽磁気歯車とが対向する面の面積は大きくなる。このため、遊星磁気歯車及び太陽磁気歯車間に働く磁力はより大きくなり、各磁気歯車間で相互に伝達することができる回転力は大きくなる。同様に、内磁気歯車は、遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する内周面を備える磁気歯車であるため、円柱状の磁気歯車を用いた遊星磁気歯車機構に比べ、遊星磁気歯車と内磁気歯車とが対向する面の面積は大きくなり、遊星磁気歯車及び内磁気歯車間で相互に伝達することができる回転力はより大きくなる。従って、このように構成される遊星磁気歯車機構は、円柱状の磁気歯車を備える遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することが可能となる。
【0016】
本発明に係る遊星磁気歯車機構において、前記太陽磁気歯車、遊星磁気歯車及び内磁気歯車夫々は、同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成されることを特徴とする。
【0017】
遊星磁気歯車が、凸面又は凹面を有する外周面を備え、同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成される場合、遊星磁気歯車と太陽磁気歯車及び内磁気歯車との間に働く磁力は磁気歯車の数に応じて大きくなり、伝達可能な回転力も大きくなる。同様に、太陽磁気歯車及び内磁気歯車についても、同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成される場合、各磁気歯車の個数に応じて伝達可能な回転力が大きくなる。
【0018】
本発明に係る遊星磁気歯車機構において、前記遊星磁気歯車は、回転2次曲線面を備えることを特徴とする。
【0019】
遊星磁気歯車は回転2次曲面を備える磁気歯車であり、太陽磁気歯車は前記遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する外周面を備える磁気歯車であるため、遊星磁気歯車及び太陽磁気歯車の形状が円柱状である場合に比べ、遊星磁気歯車と太陽磁気歯車とが対向する面の面積は大きくなる。このため、遊星磁気歯車及び太陽磁気歯車間に働く磁力はより大きくなり、各磁気歯車間で相互に伝達することができる回転力は大きくなる。同様に、内磁気歯車は、遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する内周面を備える磁気歯車であるため、円柱状の磁気歯車を用いた遊星磁気歯車機構に比べ、遊星磁気歯車と内磁気歯車とが対向する面の面積は大きくなり、遊星磁気歯車及び内磁気歯車間で相互に伝達することができる回転力はより大きくなる。従って、このように構成される遊星磁気歯車機構は、円柱状の磁気歯車を備える遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することが可能となる。
【0020】
本発明に係る遊星磁気歯車機構は、太陽磁気歯車と、該太陽磁気歯車と磁気的に連結された1又は複数の遊星磁気歯車と、該遊星磁気歯車と磁気的に連結された内磁気歯車とを備える遊星磁気歯車機構において、前記太陽磁気歯車及び前記遊星磁気歯車夫々は円盤状磁気歯車から構成され、前記内磁気歯車は、環状磁気歯車から構成され、前記太陽磁気歯車を構成する円盤状磁気歯車及び前記内磁気歯車を構成する環状磁気歯車は、前記遊星磁気歯車を構成する円盤状磁気歯車の片面又は両面に近接していることを特徴とする。
【0021】
太陽磁気歯車及び遊星磁気歯車は互いに円盤状磁気歯車が備える円形面の片面又は両面で近接するため、遊星磁気歯車及び太陽磁気歯車が互いに円周面で近接する場合に比べ、太陽磁気歯車と遊星磁気歯車とが近接する面の面積は大きくなる。これにより、太陽磁気歯車及び遊星磁気歯車間に働く磁力は大きくなり、各磁気歯車間で相互に伝達することができる回転力は大きくなる。同様に、内磁気歯車は前記遊星磁気歯車が備える円形面の片面又は両面に近接する環状磁気歯車であるため、遊星磁気歯車及び筒状の内磁気歯車が円周面で近接する場合に比べ、遊星磁気歯車と内磁気歯車とが近接する面の面積は大きくなり、遊星磁気歯車及び内磁気歯車間で相互に伝達することができる回転力は大きくなる。従って、このように構成された遊星磁気歯車機構は、円柱面を備える磁気歯車が互いに円柱側面で近接する遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することが可能となる。
【0022】
本発明に係る遊星磁気歯車機構において、前記太陽磁気歯車及び前記遊星磁気歯車夫々は、同軸で一体に回転する複数の円盤状磁気歯車から構成され、前記内磁気歯車は同軸で一体に回転する複数の環状磁気歯車から構成されることを特徴とする。
【0023】
太陽磁気歯車及び遊星磁気歯車が同軸で一体に回転する複数の円盤状磁気歯車から構成される場合、太陽磁気歯車と遊星磁気歯車との間に働く磁力は磁気歯車の数に応じて大きくなり、伝達可能な回転力も大きくなる。同様に、内磁気歯車が同軸で一体に回転する複数の環状磁気歯車から構成される場合、各磁気歯車の個数に応じて伝達可能な回転力が大きくなる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1(a)及び(b)は、実施の形態1に係る遊星磁気歯車機構を模式的に示す上面図及び断面図である。実施の形態1に係る遊星磁気歯車機構は、太陽磁気歯車1と、太陽磁気歯車1に対向し、磁気的に連結された2つの遊星磁気歯車2と、遊星磁気歯車2に対向し、太陽磁気歯車1と同軸で回転する内磁気歯車3と、遊星磁気歯車2が備える遊星磁気歯車軸6を保持する円盤状のキャリヤ7とから構成される。太陽磁気歯車1が備える入力軸4は動力供給源等(不図示)に繋がっており、回転可能に支持されている。太陽磁気歯車1の外周には、遊星磁気歯車2が入力軸4の周方向に沿って等間隔に配置されている。内磁気歯車3は、遊星磁気歯車2を囲繞する環状の磁気歯車であり、内磁気歯車3の外周に中空の出力軸5を備える。出力軸5は入力軸4と同軸で回転する。
【0025】
2つの遊星磁気歯車2は、凸面又は凹面を有する外周面、すなわち円柱面を除く回転面を有する外周面、又は回転2次曲線面を有する外周面の一つである球面を備える磁気歯車であり、太陽磁気歯車1は、遊星磁気歯車2の外周面に対応する凹面を有する外周面を備える磁気歯車である。すなわち、太陽磁気歯車1は、球状の遊星磁気歯車2の半径より僅かに大きい半径を有する半円を、該半円の弦と平行である直線を軸とし、前記半円の弧部分を前記軸に向けて回転した時に生じる曲面の一部を外周面に備える磁気歯車である。また、内磁気歯車3は、球状の遊星磁気歯車2の外周面に対応する凹面を有する内周面を備える磁気歯車である。すなわち内磁気歯車3は、遊星磁気歯車2の半径より僅かに大きい半径を有する半円を、該半円の弦と平行である直線を軸とし、前記半円の弦部分を前記軸に向けて回転した時に生じる回転面の一部を内周面に備える環状の磁気歯車である。なお、前記半円の半径は、太陽磁気歯車1及び内磁気歯車3と遊星磁気歯車2とが互いに接触しない範囲内で遊星磁気歯車2の半径に近い値であることが望ましい。より強い磁力が各磁気歯車1、2、3間に働くからである。
【0026】
各磁気歯車1、2、3は歯車の歯の役割を担う磁極を備えている。遊星磁気歯車2は、その外周面上に、遊星磁気歯車軸6の周方向に沿ってN極2a及びS極2bを交互に且つ等間隔に備えている。また、太陽磁気歯車1及び内磁気歯車3夫々も同様に、その外周面上に、各回転軸の周方向に沿ってN極1a、3a及びS極1b、3bを交互に且つ等間隔に備えている。太陽磁気歯車1及び内磁気歯車3夫々はN極1a、3a及びS極1b、3b夫々を9つ備え、遊星磁気歯車2はN極2a及びS極2b夫々を3つ備える。なお、各磁気歯車1、2、3が備える磁極は、着磁ヨークを用いる一般的な方法により着磁し、又は、予め着磁された磁石を、外周面上及び内周面上に交互に且つ等間隔に配置することにより、備えられる。
【0027】
なお、言うまでもなく、遊星磁気歯車2が外周面に有する回転面は、数学的に厳密な回転面である必要はなく、磁気歯車の加工精度の範囲内で回転面とみなすことができる形状であれば良い。
【0028】
次に遊星磁気歯車機構の動作を説明する。
遊星磁気歯車機構に回転力が加えられていない場合、各磁気歯車1、2、3が備えるN極1a、2a、3aとS極1b、2b、3bとがおよそ対向する位置関係にある時に、安定状態つまり静止状態又は一定の運動状態となる。この状態で、入力軸4を介して太陽磁気歯車1に回転力を加えた場合、太陽磁気歯車1の角速度が変化し、太陽磁気歯車1の回転角及び内磁気歯車2の回転角により定まる電磁場エネルギーが不安定状態に移行する結果、遊星磁気歯車2に回転力が働く。つまり、遊星磁気歯車2に回転力が伝達される。同様にして、遊星磁気歯車2から内磁気歯車3に回転力が伝達される。
【0029】
より具体的には、静止状態にあり、太陽磁気歯車1が備えるS極1bと遊星磁気歯車2が備えるN極2aとが対向している状態において、太陽磁気歯車1に回転力を加え、太陽磁気歯車1が時計回りに回転した場合、時計回りに回転する太陽磁気歯車1のS極1bと遊星磁気歯車2のN極2aとが磁力により引かれ合い、遊星磁気歯車2が反時計回りに回転する。つまり、太陽磁気歯車1に加えられた回転力が遊星磁気歯車2に伝達され、遊星磁気歯車2の角速度が変化する。同様に、反時計回りに回転する遊星磁気歯車2が備えるS極2bと内磁気歯車3が備えるN極3aとが磁力により引かれ合い、内磁気歯車3が反時計回りに回転する。結果として、太陽磁気歯車1に加えられた回転力は、遊星磁気歯車2を介して内磁気歯車3に伝達され、内磁気歯車3の角速度が変化することになる。また、各磁気歯車1、2、3が回転運動をしている状態で太陽磁気歯車1に回転力を加えた場合も同様にして、遊星磁気歯車2を介して内磁気歯車3に回転力が伝達されることは言うまでもない。
【0030】
実施の形態1に係る遊星磁気歯車機構にあっては、太陽磁気歯車1は、遊星磁気歯車2の外周面に対応する凹面又は凸面を有する外周面を備え、内磁気歯車3は遊星磁気歯車2の外周面に対応する凹面又は凸面を有する内周面を備えるため、各磁気歯車が円柱状であり、互いに側面で近接する場合に比べ、太陽磁気歯車1及び内磁気歯車3と遊星磁気歯車2とが近接する面積が大きくなる。従って、各磁気歯車1、2、3間に働く磁力は大きくなり、結果として、遊星磁気歯車2を介して太陽磁気歯車1から内磁気歯車3に伝達することができる回転力は大きくなる。
なお、太陽磁気歯車1の回転に遊星磁気歯車2の回転が追い付かない等の同期ずれが起きない場合、この遊星磁気歯車機構の減速比は−1.0である。
【0031】
なお、遊星磁気歯車が備える外周面の形状は球面に限るものではなく、例えば、楕円、放物線、双曲線等の2次曲線を軸回りに回転させて得られる回転2次曲線面の一部を備える磁気歯車であっても良い。また、円錐面の一部又は全部を備える磁気歯車であっても良い。
【0032】
いずれの曲面を備えている場合であっても、各磁気歯車が円柱状の磁気歯車であり、互いに側面で近接する遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することが可能となる。
【0033】
また、実施の形態1にあっては、遊星磁気歯車は球面を備える磁気歯車一つから構成されているが、球面を有する外周面を備え、同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成されるものであっても良い。この場合、同軸で回転する複数の磁気歯車により回転力が伝達されるため、遊星磁気歯車機構はより大きな回転力を伝達することができる。なお、言うまでもなく太陽磁気歯車又は/及び内磁気歯車が同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成されるものであっても良い。
【0034】
更に、実施の形態1に係る遊星磁気歯車機構は、太陽磁気歯車に入力軸を、内磁気歯車に出力軸を設けたスター型の遊星磁気歯車機構であるが、これに限らず、内磁気歯車を固定し、太陽磁気歯車及び遊星磁気歯車に入力軸及び出力軸を設けたプラネタリ型、又は太陽磁気歯車を固定し、遊星磁気歯車及び内磁気歯車に入力軸及び出力軸を設けたソーラ型の遊星磁気歯車機構であってもよい。
【0035】
(実施の形態2)
図2(a)及び(b)は、実施の形態2に係る遊星磁気歯車機構を模式的に示す上面図及びII−II線断面図である。太陽磁気歯車11は1つの円盤状磁気歯車から構成され、円盤状磁気歯車が備える円形面の両面に、入力軸4の周方向に沿ってN極11a及びS極11bを交互に且つ等間隔に備える。遊星磁気歯車12は、太陽磁気歯車11の上面又は下面に近接し、同軸で一体に回転する2つの円盤状磁気歯車から構成されており、各円盤状磁気歯車は、各円盤状磁気歯車が備える円形面の片面に、遊星磁気歯車軸6の周方向に沿ってN極12a及びS極12bを交互に且つ等間隔に備える。また、内磁気歯車13は、遊星磁気歯車12を構成する2つの円盤状磁気歯車に挟まれ、遊星磁気歯車12の両面に近接する環状磁気歯車から構成されており、内磁気歯車13が備える環状面の両面に、出力軸5の周方向に沿ってN極13a及びS極13bを交互に且つ等間隔に備える。太陽磁気歯車11は各面にN極11a及びS極11b夫々を3つ備え、遊星磁気歯車12を構成する円盤状磁気歯車は片面にN極11a及びS極11b夫々を3つ備え、内磁気歯車13は各面にN極13a及びS極13b夫々を9つ備えている。太陽磁気歯車11、遊星磁気歯車12及び内磁気歯車13以外の構成は実施の形態1と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0036】
実施の形態2に係る遊星磁気歯車機構にあっては、各磁気歯車11、12、13が備える円盤状磁気歯車又は環状磁気歯車は互いに片面又は両面で近接するため、円盤状磁気歯車が互いに側面で近接する場合に比べ、各磁気歯車11、12、13が近接する面積が大きくなる。従って、各磁気歯車11、12、13間に働く磁力は大きくなり、結果として、遊星磁気歯車12を介して太陽磁気歯車11から内磁気歯車13に伝達することができる回転力は大きくなる。
なお、磁気歯車の同期ずれが起きない場合、この遊星磁気歯車機構の減速比は−0.33である。
【0037】
実施の形態2にあっては、太陽磁気歯車は1つの円盤状磁気歯車から構成され、遊星磁気歯車は一体に回転する2つの円盤状磁気歯車から構成されるが、これに限るものではなく、太陽磁気歯車、遊星磁気歯車及び内磁気歯車夫々は同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成されるものであっても良い。この場合、遊星磁気歯車を構成する円盤状磁気歯車は両面にN極及びS極を備える。
【0038】
同軸で一体に回転する円盤状磁気歯車の数を増やすことにより、遊星磁気歯車と太陽磁気歯車及び内磁気歯車との間に働く磁力は大きくなり、遊星磁気歯車を介して太陽磁気歯車から内磁気歯車に伝達することができる回転力が大きくなる。
【0039】
なお、太陽磁気歯車、遊星磁気歯車及び内磁気歯車夫々は1つの円盤状磁気歯車から構成される遊星磁気歯車機構であっても良いことは言うまでもない。
【0040】
【発明の効果】
本発明に係る遊星磁気歯車機構にあっては、円柱状の磁気歯車の側面が互いに近接することにより各磁気歯車が磁気的に連結されている遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る遊星磁気歯車機構を模式的に示す上面図及び断面図である。
【図2】実施の形態2に係る遊星磁気歯車機構を模式的に示す上面図及びII−II線断面図である。
【図3】従来の遊星磁気歯車機構を模式的に示す上面図及び断面図である。
【符号の説明】
1 太陽磁気歯車
2 遊星磁気歯車
3 内磁気歯車
4 入力軸
5 出力軸
6 遊星磁気歯車軸
7 キャリヤ
【発明の属する技術分野】
本発明は、遊星歯車機構における太陽歯車、遊星歯車及び内歯車夫々を磁気歯車に代えた太陽磁気歯車、遊星磁気歯車及び内磁気歯車から構成される遊星磁気歯車機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
動力伝達機構の一つに遊星歯車機構がある。遊星歯車機構は太陽歯車と、この太陽歯車に噛合する複数の遊星歯車と、各遊星歯車に噛合する歯を内周に備える円筒又は環状の内歯車と、遊星歯車の回転軸を支持する円盤状のキャリヤとから構成される。なお、各歯車の回転軸は互いに平行であり、太陽歯車及び内歯車の回転軸は同軸である。
【0003】
このように構成される遊星歯車機構では、例えば、回転力を太陽歯車に加えた場合、回転力に応じた太陽歯車の回転は各遊星歯車を介して内歯車に伝達される。
【0004】
ところで、歯車を用いて構成される遊星歯車機構において、互いに噛合する各歯車が円滑に回転するためには、噛合する歯車の歯面間に適度なバックラッシをもうける必要があるが、このバックラッシにより発生する歯面同士の衝突による噛合騒音又は振動等が問題となる。また、歯車を介して伝達される回転力の一部が音、振動又は熱等として失われ、その結果、回転力の伝達効率が低くなる問題がある。更に、歯面同士が物理的に接触するため、歯面が摩耗することは避けられず、歯車の点検又は交換等の保守管理が必要となる問題がある。
【0005】
これらの問題を解決すべく、遊星歯車機構における各歯車を磁気歯車に代えて構成される遊星磁気歯車機構が提案されている(例えば、特許文献1)。磁気歯車とは、円柱面の周方向に沿って異種の磁極を交互に備える円柱状の部材であり、2つの磁気歯車の側面が互いに近接している場合、磁力の働きにより2つの磁気歯車が磁気的に連結される。この磁気歯車同士に働く磁力が歯車の歯の働きを担う。この状態で一方の磁気歯車が回転する時、他方の磁気歯車も磁力に引かれ、連動する。
【0006】
図3(a)及び(b)は、従来の遊星磁気歯車機構を模式的に示す上面図及び断面図である。図中21は、円柱状の太陽磁気歯車で有り、太陽磁気歯車21の外周には、4つの円柱状である遊星磁気歯車22が近接し、太陽磁気歯車21と遊星磁気歯車22とが磁気的に連結されている。また、遊星磁気歯車22は、太陽磁気歯車21と同軸で回転する筒状の内磁気歯車23の内周面に近接し、磁気的に連結されている。遊星磁気歯車22が備える遊星磁気歯車軸26は円盤状のキャリヤ27に保持されている。また、太陽磁気歯車21は、入力軸24を備え、内磁気歯車23は、その外周に中空の出力軸5を備える。
【0007】
太陽磁気歯車21はその外周面上にN極21a及びS極21bを周方向に沿って交互に且つ等間隔に備え、遊星磁気歯車22はその外周面上にN極22a及びS極22bを周方向に沿って交互に且つ等間隔に備える。また、内磁気歯車23は、その内周面上にN極23a及びS極23bを周方向に沿って交互に且つ等間隔に備える。
【0008】
このように構成される遊星磁気歯車機構においては、太陽磁気歯車21が回転する場合、太陽磁気歯車21と太陽磁気歯車21に近接する遊星磁気歯車22との間に働く磁力により、太陽磁気歯車21の回転が遊星磁気歯車22に伝達される。つまり、太陽磁気歯車21が回転する場合、太陽磁気歯車21が備える磁極21a、21bと遊星磁気歯車22が備える磁極22a、22bとの間に働く磁力により遊星磁気歯車22も太陽磁気歯車21の回転に連動し、太陽磁気歯車21から遊星磁気歯車22に回転力が伝達される。同様にして、遊星磁気歯車22の回転は、磁力の働きにより内磁気歯車23に伝達される。
【0009】
例えば、各磁気歯車21、22、23が静止している状態で、太陽磁気歯車21が時計回りに回転した場合、太陽磁気歯車21が備えるN極21a又はS極21bと遊星磁気歯車22が備えるS極22b又はN極22aとの間に働く磁力に引かれ、遊星磁気歯車22は反時計回りに回転する。同様に、遊星磁気歯車22が備える磁極22a、22bと内磁気歯車23が備える磁極23a、23bとの間に働く磁力に引かれ、内磁気歯車23は反時計回りに回転する。つまり、磁極間に働く磁力の働きにより、太陽磁気歯車21から遊星磁気歯車22を介して内磁気歯車23に回転力が伝達される。
【0010】
歯車を磁気歯車に代えた遊星磁気歯車機構においては、各磁気歯車は非接触で回転力を伝達することができるため、噛合騒音又は振動の問題を根本的に解決することができる。また、遊星歯車機構に比べ、回転力の伝達効率が高い動力伝達機構を構成することが可能となる。更に、各磁気歯車は非接触で回転力を伝達するため、磁気歯車の摩耗は発生せず、歯車の軸間距離の点検、再調節又は歯車の交換等の保守管理も不要となる。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−289153号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の遊星磁気歯車機構においては、互いに近接する円柱状の各磁気歯車の側面間に働く磁力により各磁気歯車が連動し、回転力が伝達されるため、歯車により回転力が伝達される遊星歯車機構に比べて伝達可能な回転力が小さいという問題があった。
【0013】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、円柱状の磁気歯車から構成される遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することを可能とする遊星磁気歯車機構を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る遊星磁気歯車機構は、太陽磁気歯車と、該太陽磁気歯車と磁気的に連結された1又は複数の遊星磁気歯車と、該遊星磁気歯車と磁気的に連結された内磁気歯車とを備える遊星磁気歯車機構において、前記遊星磁気歯車は、凸面又は凹面を有する外周面を備え、前記太陽磁気歯車は、前記遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する外周面を備え、前記内磁気歯車は、前記遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する内周面を備えることを特徴とする。
【0015】
遊星磁気歯車は凸面又は凹面を有する外周面を備える磁気歯車であり、太陽磁気歯車は、前記遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する外周面を備える磁気歯車であるため、遊星磁気歯車及び太陽磁気歯車の形状が円柱状である場合に比べ、遊星磁気歯車と太陽磁気歯車とが対向する面の面積は大きくなる。このため、遊星磁気歯車及び太陽磁気歯車間に働く磁力はより大きくなり、各磁気歯車間で相互に伝達することができる回転力は大きくなる。同様に、内磁気歯車は、遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する内周面を備える磁気歯車であるため、円柱状の磁気歯車を用いた遊星磁気歯車機構に比べ、遊星磁気歯車と内磁気歯車とが対向する面の面積は大きくなり、遊星磁気歯車及び内磁気歯車間で相互に伝達することができる回転力はより大きくなる。従って、このように構成される遊星磁気歯車機構は、円柱状の磁気歯車を備える遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することが可能となる。
【0016】
本発明に係る遊星磁気歯車機構において、前記太陽磁気歯車、遊星磁気歯車及び内磁気歯車夫々は、同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成されることを特徴とする。
【0017】
遊星磁気歯車が、凸面又は凹面を有する外周面を備え、同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成される場合、遊星磁気歯車と太陽磁気歯車及び内磁気歯車との間に働く磁力は磁気歯車の数に応じて大きくなり、伝達可能な回転力も大きくなる。同様に、太陽磁気歯車及び内磁気歯車についても、同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成される場合、各磁気歯車の個数に応じて伝達可能な回転力が大きくなる。
【0018】
本発明に係る遊星磁気歯車機構において、前記遊星磁気歯車は、回転2次曲線面を備えることを特徴とする。
【0019】
遊星磁気歯車は回転2次曲面を備える磁気歯車であり、太陽磁気歯車は前記遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する外周面を備える磁気歯車であるため、遊星磁気歯車及び太陽磁気歯車の形状が円柱状である場合に比べ、遊星磁気歯車と太陽磁気歯車とが対向する面の面積は大きくなる。このため、遊星磁気歯車及び太陽磁気歯車間に働く磁力はより大きくなり、各磁気歯車間で相互に伝達することができる回転力は大きくなる。同様に、内磁気歯車は、遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する内周面を備える磁気歯車であるため、円柱状の磁気歯車を用いた遊星磁気歯車機構に比べ、遊星磁気歯車と内磁気歯車とが対向する面の面積は大きくなり、遊星磁気歯車及び内磁気歯車間で相互に伝達することができる回転力はより大きくなる。従って、このように構成される遊星磁気歯車機構は、円柱状の磁気歯車を備える遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することが可能となる。
【0020】
本発明に係る遊星磁気歯車機構は、太陽磁気歯車と、該太陽磁気歯車と磁気的に連結された1又は複数の遊星磁気歯車と、該遊星磁気歯車と磁気的に連結された内磁気歯車とを備える遊星磁気歯車機構において、前記太陽磁気歯車及び前記遊星磁気歯車夫々は円盤状磁気歯車から構成され、前記内磁気歯車は、環状磁気歯車から構成され、前記太陽磁気歯車を構成する円盤状磁気歯車及び前記内磁気歯車を構成する環状磁気歯車は、前記遊星磁気歯車を構成する円盤状磁気歯車の片面又は両面に近接していることを特徴とする。
【0021】
太陽磁気歯車及び遊星磁気歯車は互いに円盤状磁気歯車が備える円形面の片面又は両面で近接するため、遊星磁気歯車及び太陽磁気歯車が互いに円周面で近接する場合に比べ、太陽磁気歯車と遊星磁気歯車とが近接する面の面積は大きくなる。これにより、太陽磁気歯車及び遊星磁気歯車間に働く磁力は大きくなり、各磁気歯車間で相互に伝達することができる回転力は大きくなる。同様に、内磁気歯車は前記遊星磁気歯車が備える円形面の片面又は両面に近接する環状磁気歯車であるため、遊星磁気歯車及び筒状の内磁気歯車が円周面で近接する場合に比べ、遊星磁気歯車と内磁気歯車とが近接する面の面積は大きくなり、遊星磁気歯車及び内磁気歯車間で相互に伝達することができる回転力は大きくなる。従って、このように構成された遊星磁気歯車機構は、円柱面を備える磁気歯車が互いに円柱側面で近接する遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することが可能となる。
【0022】
本発明に係る遊星磁気歯車機構において、前記太陽磁気歯車及び前記遊星磁気歯車夫々は、同軸で一体に回転する複数の円盤状磁気歯車から構成され、前記内磁気歯車は同軸で一体に回転する複数の環状磁気歯車から構成されることを特徴とする。
【0023】
太陽磁気歯車及び遊星磁気歯車が同軸で一体に回転する複数の円盤状磁気歯車から構成される場合、太陽磁気歯車と遊星磁気歯車との間に働く磁力は磁気歯車の数に応じて大きくなり、伝達可能な回転力も大きくなる。同様に、内磁気歯車が同軸で一体に回転する複数の環状磁気歯車から構成される場合、各磁気歯車の個数に応じて伝達可能な回転力が大きくなる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1(a)及び(b)は、実施の形態1に係る遊星磁気歯車機構を模式的に示す上面図及び断面図である。実施の形態1に係る遊星磁気歯車機構は、太陽磁気歯車1と、太陽磁気歯車1に対向し、磁気的に連結された2つの遊星磁気歯車2と、遊星磁気歯車2に対向し、太陽磁気歯車1と同軸で回転する内磁気歯車3と、遊星磁気歯車2が備える遊星磁気歯車軸6を保持する円盤状のキャリヤ7とから構成される。太陽磁気歯車1が備える入力軸4は動力供給源等(不図示)に繋がっており、回転可能に支持されている。太陽磁気歯車1の外周には、遊星磁気歯車2が入力軸4の周方向に沿って等間隔に配置されている。内磁気歯車3は、遊星磁気歯車2を囲繞する環状の磁気歯車であり、内磁気歯車3の外周に中空の出力軸5を備える。出力軸5は入力軸4と同軸で回転する。
【0025】
2つの遊星磁気歯車2は、凸面又は凹面を有する外周面、すなわち円柱面を除く回転面を有する外周面、又は回転2次曲線面を有する外周面の一つである球面を備える磁気歯車であり、太陽磁気歯車1は、遊星磁気歯車2の外周面に対応する凹面を有する外周面を備える磁気歯車である。すなわち、太陽磁気歯車1は、球状の遊星磁気歯車2の半径より僅かに大きい半径を有する半円を、該半円の弦と平行である直線を軸とし、前記半円の弧部分を前記軸に向けて回転した時に生じる曲面の一部を外周面に備える磁気歯車である。また、内磁気歯車3は、球状の遊星磁気歯車2の外周面に対応する凹面を有する内周面を備える磁気歯車である。すなわち内磁気歯車3は、遊星磁気歯車2の半径より僅かに大きい半径を有する半円を、該半円の弦と平行である直線を軸とし、前記半円の弦部分を前記軸に向けて回転した時に生じる回転面の一部を内周面に備える環状の磁気歯車である。なお、前記半円の半径は、太陽磁気歯車1及び内磁気歯車3と遊星磁気歯車2とが互いに接触しない範囲内で遊星磁気歯車2の半径に近い値であることが望ましい。より強い磁力が各磁気歯車1、2、3間に働くからである。
【0026】
各磁気歯車1、2、3は歯車の歯の役割を担う磁極を備えている。遊星磁気歯車2は、その外周面上に、遊星磁気歯車軸6の周方向に沿ってN極2a及びS極2bを交互に且つ等間隔に備えている。また、太陽磁気歯車1及び内磁気歯車3夫々も同様に、その外周面上に、各回転軸の周方向に沿ってN極1a、3a及びS極1b、3bを交互に且つ等間隔に備えている。太陽磁気歯車1及び内磁気歯車3夫々はN極1a、3a及びS極1b、3b夫々を9つ備え、遊星磁気歯車2はN極2a及びS極2b夫々を3つ備える。なお、各磁気歯車1、2、3が備える磁極は、着磁ヨークを用いる一般的な方法により着磁し、又は、予め着磁された磁石を、外周面上及び内周面上に交互に且つ等間隔に配置することにより、備えられる。
【0027】
なお、言うまでもなく、遊星磁気歯車2が外周面に有する回転面は、数学的に厳密な回転面である必要はなく、磁気歯車の加工精度の範囲内で回転面とみなすことができる形状であれば良い。
【0028】
次に遊星磁気歯車機構の動作を説明する。
遊星磁気歯車機構に回転力が加えられていない場合、各磁気歯車1、2、3が備えるN極1a、2a、3aとS極1b、2b、3bとがおよそ対向する位置関係にある時に、安定状態つまり静止状態又は一定の運動状態となる。この状態で、入力軸4を介して太陽磁気歯車1に回転力を加えた場合、太陽磁気歯車1の角速度が変化し、太陽磁気歯車1の回転角及び内磁気歯車2の回転角により定まる電磁場エネルギーが不安定状態に移行する結果、遊星磁気歯車2に回転力が働く。つまり、遊星磁気歯車2に回転力が伝達される。同様にして、遊星磁気歯車2から内磁気歯車3に回転力が伝達される。
【0029】
より具体的には、静止状態にあり、太陽磁気歯車1が備えるS極1bと遊星磁気歯車2が備えるN極2aとが対向している状態において、太陽磁気歯車1に回転力を加え、太陽磁気歯車1が時計回りに回転した場合、時計回りに回転する太陽磁気歯車1のS極1bと遊星磁気歯車2のN極2aとが磁力により引かれ合い、遊星磁気歯車2が反時計回りに回転する。つまり、太陽磁気歯車1に加えられた回転力が遊星磁気歯車2に伝達され、遊星磁気歯車2の角速度が変化する。同様に、反時計回りに回転する遊星磁気歯車2が備えるS極2bと内磁気歯車3が備えるN極3aとが磁力により引かれ合い、内磁気歯車3が反時計回りに回転する。結果として、太陽磁気歯車1に加えられた回転力は、遊星磁気歯車2を介して内磁気歯車3に伝達され、内磁気歯車3の角速度が変化することになる。また、各磁気歯車1、2、3が回転運動をしている状態で太陽磁気歯車1に回転力を加えた場合も同様にして、遊星磁気歯車2を介して内磁気歯車3に回転力が伝達されることは言うまでもない。
【0030】
実施の形態1に係る遊星磁気歯車機構にあっては、太陽磁気歯車1は、遊星磁気歯車2の外周面に対応する凹面又は凸面を有する外周面を備え、内磁気歯車3は遊星磁気歯車2の外周面に対応する凹面又は凸面を有する内周面を備えるため、各磁気歯車が円柱状であり、互いに側面で近接する場合に比べ、太陽磁気歯車1及び内磁気歯車3と遊星磁気歯車2とが近接する面積が大きくなる。従って、各磁気歯車1、2、3間に働く磁力は大きくなり、結果として、遊星磁気歯車2を介して太陽磁気歯車1から内磁気歯車3に伝達することができる回転力は大きくなる。
なお、太陽磁気歯車1の回転に遊星磁気歯車2の回転が追い付かない等の同期ずれが起きない場合、この遊星磁気歯車機構の減速比は−1.0である。
【0031】
なお、遊星磁気歯車が備える外周面の形状は球面に限るものではなく、例えば、楕円、放物線、双曲線等の2次曲線を軸回りに回転させて得られる回転2次曲線面の一部を備える磁気歯車であっても良い。また、円錐面の一部又は全部を備える磁気歯車であっても良い。
【0032】
いずれの曲面を備えている場合であっても、各磁気歯車が円柱状の磁気歯車であり、互いに側面で近接する遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することが可能となる。
【0033】
また、実施の形態1にあっては、遊星磁気歯車は球面を備える磁気歯車一つから構成されているが、球面を有する外周面を備え、同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成されるものであっても良い。この場合、同軸で回転する複数の磁気歯車により回転力が伝達されるため、遊星磁気歯車機構はより大きな回転力を伝達することができる。なお、言うまでもなく太陽磁気歯車又は/及び内磁気歯車が同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成されるものであっても良い。
【0034】
更に、実施の形態1に係る遊星磁気歯車機構は、太陽磁気歯車に入力軸を、内磁気歯車に出力軸を設けたスター型の遊星磁気歯車機構であるが、これに限らず、内磁気歯車を固定し、太陽磁気歯車及び遊星磁気歯車に入力軸及び出力軸を設けたプラネタリ型、又は太陽磁気歯車を固定し、遊星磁気歯車及び内磁気歯車に入力軸及び出力軸を設けたソーラ型の遊星磁気歯車機構であってもよい。
【0035】
(実施の形態2)
図2(a)及び(b)は、実施の形態2に係る遊星磁気歯車機構を模式的に示す上面図及びII−II線断面図である。太陽磁気歯車11は1つの円盤状磁気歯車から構成され、円盤状磁気歯車が備える円形面の両面に、入力軸4の周方向に沿ってN極11a及びS極11bを交互に且つ等間隔に備える。遊星磁気歯車12は、太陽磁気歯車11の上面又は下面に近接し、同軸で一体に回転する2つの円盤状磁気歯車から構成されており、各円盤状磁気歯車は、各円盤状磁気歯車が備える円形面の片面に、遊星磁気歯車軸6の周方向に沿ってN極12a及びS極12bを交互に且つ等間隔に備える。また、内磁気歯車13は、遊星磁気歯車12を構成する2つの円盤状磁気歯車に挟まれ、遊星磁気歯車12の両面に近接する環状磁気歯車から構成されており、内磁気歯車13が備える環状面の両面に、出力軸5の周方向に沿ってN極13a及びS極13bを交互に且つ等間隔に備える。太陽磁気歯車11は各面にN極11a及びS極11b夫々を3つ備え、遊星磁気歯車12を構成する円盤状磁気歯車は片面にN極11a及びS極11b夫々を3つ備え、内磁気歯車13は各面にN極13a及びS極13b夫々を9つ備えている。太陽磁気歯車11、遊星磁気歯車12及び内磁気歯車13以外の構成は実施の形態1と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0036】
実施の形態2に係る遊星磁気歯車機構にあっては、各磁気歯車11、12、13が備える円盤状磁気歯車又は環状磁気歯車は互いに片面又は両面で近接するため、円盤状磁気歯車が互いに側面で近接する場合に比べ、各磁気歯車11、12、13が近接する面積が大きくなる。従って、各磁気歯車11、12、13間に働く磁力は大きくなり、結果として、遊星磁気歯車12を介して太陽磁気歯車11から内磁気歯車13に伝達することができる回転力は大きくなる。
なお、磁気歯車の同期ずれが起きない場合、この遊星磁気歯車機構の減速比は−0.33である。
【0037】
実施の形態2にあっては、太陽磁気歯車は1つの円盤状磁気歯車から構成され、遊星磁気歯車は一体に回転する2つの円盤状磁気歯車から構成されるが、これに限るものではなく、太陽磁気歯車、遊星磁気歯車及び内磁気歯車夫々は同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成されるものであっても良い。この場合、遊星磁気歯車を構成する円盤状磁気歯車は両面にN極及びS極を備える。
【0038】
同軸で一体に回転する円盤状磁気歯車の数を増やすことにより、遊星磁気歯車と太陽磁気歯車及び内磁気歯車との間に働く磁力は大きくなり、遊星磁気歯車を介して太陽磁気歯車から内磁気歯車に伝達することができる回転力が大きくなる。
【0039】
なお、太陽磁気歯車、遊星磁気歯車及び内磁気歯車夫々は1つの円盤状磁気歯車から構成される遊星磁気歯車機構であっても良いことは言うまでもない。
【0040】
【発明の効果】
本発明に係る遊星磁気歯車機構にあっては、円柱状の磁気歯車の側面が互いに近接することにより各磁気歯車が磁気的に連結されている遊星磁気歯車機構に比べ、より大きな回転力を伝達することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る遊星磁気歯車機構を模式的に示す上面図及び断面図である。
【図2】実施の形態2に係る遊星磁気歯車機構を模式的に示す上面図及びII−II線断面図である。
【図3】従来の遊星磁気歯車機構を模式的に示す上面図及び断面図である。
【符号の説明】
1 太陽磁気歯車
2 遊星磁気歯車
3 内磁気歯車
4 入力軸
5 出力軸
6 遊星磁気歯車軸
7 キャリヤ
Claims (5)
- 太陽磁気歯車と、該太陽磁気歯車と磁気的に連結された1又は複数の遊星磁気歯車と、該遊星磁気歯車と磁気的に連結された内磁気歯車とを備える遊星磁気歯車機構において、
前記遊星磁気歯車は、凸面又は凹面を有する外周面を備え、
前記太陽磁気歯車は、前記遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する外周面を備え、
前記内磁気歯車は、前記遊星磁気歯車の外周面に対応する凹面又は凸面を有する内周面を備えることを特徴とする遊星磁気歯車機構。 - 前記太陽磁気歯車、遊星磁気歯車及び内磁気歯車夫々は、同軸で一体に回転する複数の磁気歯車から構成されることを特徴とする請求項1に記載の遊星磁気歯車機構。
- 前記遊星磁気歯車は、回転2次曲線面を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遊星磁気歯車機構。
- 太陽磁気歯車と、該太陽磁気歯車と磁気的に連結された1又は複数の遊星磁気歯車と、該遊星磁気歯車と磁気的に連結された内磁気歯車とを備える遊星磁気歯車機構において、
前記太陽磁気歯車及び前記遊星磁気歯車夫々は円盤状磁気歯車から構成され、
前記内磁気歯車は、環状磁気歯車から構成され、
前記太陽磁気歯車を構成する円盤状磁気歯車及び前記内磁気歯車を構成する環状磁気歯車は、前記遊星磁気歯車を構成する円盤状磁気歯車の片面又は両面に近接していることを特徴とする遊星磁気歯車機構。 - 前記太陽磁気歯車及び前記遊星磁気歯車夫々は、同軸で一体に回転する複数の円盤状磁気歯車から構成され、
前記内磁気歯車は同軸で一体に回転する複数の環状磁気歯車から構成されることを特徴とする請求項4に記載の遊星磁気歯車機構。
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Cited By (1)
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JP2015196159A (ja) * | 2014-04-02 | 2015-11-09 | 台湾圓點奈米技術股▲ふん▼有限公司 | 攪拌装置及び歯車列 |
-
2003
- 2003-07-30 JP JP2003203993A patent/JP2005048811A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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