JP2005048001A - アスファルト混合物 - Google Patents
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Abstract
【課題】取り扱いが容易で、ねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性が改善された高耐久性の排水性舗装用のアスファルト混合物を提供する。
【解決手段】少なくとも骨材とアスファルトとからなるアスファルト混合物において、前記アスファルト100重量部当たり、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、石油樹脂及び変性石油樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類の樹脂添加剤が3重量部〜15重量部の範囲内の量で配合されていることを特徴とするアスファルト混合物。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも骨材とアスファルトとからなるアスファルト混合物において、前記アスファルト100重量部当たり、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、石油樹脂及び変性石油樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類の樹脂添加剤が3重量部〜15重量部の範囲内の量で配合されていることを特徴とするアスファルト混合物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は排水性舗装用アスファルト混合物に関する。更に詳細には、本発明は、ねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性などの特性が改善された高耐久性排水性舗装を施工するためのアスファルト混合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
車道や歩道に用いられる舗装を大別すれば、アスファルト舗装とコンクリート舗装とに分けられる。アスファルト舗装は、粒状調整砕石やクラッシャランなどで築造された路盤上にアスファルト混合物による表層・基層を形成する舗装であり、道路利用者や歩行者に対する利便性や維持修繕が容易であるなどの理由から、わが国の舗装のほとんどはアスファルト舗装である。
【0003】
しかし、アスファルト舗装は、道路施設の建設と運営、車両交通による化石燃料の使用、物流など広範な活動により初めて機能する複雑な社会資本であり、直接的かつ間接的にさまざまな環境問題を発生させている。そのため、近年では、環境問題に対応した機能を有するアスファルト舗装が強く求められるようになった。
【0004】
このような背景から、交通車両の騒音低減による沿道住民の生活環境の改善や雨天時におけるドライバーの視環境の改善など多様かつ高い機能を有する排水性舗装の需要は、近年急速に増加している。
【0005】
非特許文献1によれば、従来の排水性舗装のバインダのほとんどには高粘度改質アスファルトが用いられている。高粘度改質アスファルトの改質剤としてはSBS(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)などの高分子材料が用いられてきた。
【0006】
【非特許文献1】
社団法人日本道路協会編「排水性舗装設計施工指針(案)」,丸善,1997年
【0007】
しかし、高粘度改質アスファルトを用いた一般的な排水性舗装はねじれ抵抗性に劣り、重交通路線の交差点などでは従来から骨材飛散の問題が指摘されてきた。ねじれ抵抗性とは、特に交差点などの大型車両が右左折する箇所や駐車場などの車両タイヤが据えきりする箇所において、タイヤにより舗装路面に生じるねじれ力により舗装路面の骨材が飛散する現象に抵抗する性質を言う。
【0008】
また、従来の排水性舗装はねじれ抵抗性の他に、耐水性の点でも劣ることが知られている。更に、近年では、より一層の騒音低減が期待され、この対応策として骨材の小粒径化が行われている。しかし、従来の高粘度改質アスファルトは、骨材の小粒径化に伴い、混合物の塑性変形抵抗性の確保が不十分であることが指摘されている。塑性変形抵抗性とは大型車両の荷重によってアスファルト混合物が塑性変形する性質に対する抵抗性を言う。アスファルト混合物が塑性変形すると轍掘れを生じ、安全な車両の走行を阻害する。更に、耐水性とはアスファルト混合物の水分に対する抵抗性のことであり、耐水性が劣ると、水分の存在下において、交通車両の繰り返し荷重により、骨材を被膜しているアスファルトが骨材から剥がれる場合があり、これは剥離現象と呼ばれている。
【0009】
排水性舗装のねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性を改善するために、高粘度改質アスファルトに代えて、エポキシアスファルトが用いられている。しかし、エポキシアスファルトは2液混合であるため、プラントでの混合物製造工程が複雑になること、反応のために可使時間や硬化時間の調整が困難であること、また、コスト面の問題点が指摘されている。
【0010】
更に、排水性舗装の舗設後に、舗装表面にMMA樹脂やエポキシ樹脂などを用いたトップコートを施すことにより、排水性舗装のねじれ抵抗性と耐水性を改善する試みが為されている。しかし、この場合、散布した樹脂が摩耗すると効果が減少してしまうばかり、施工単価が上昇し、不経済な工法である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、混合物の作業性が確保しやすく、ねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性が改善された高耐久性の排水性舗装用のアスファルト混合物を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、少なくとも骨材とアスファルトとからなるアスファルト混合物に、前記アスファルト100重量部当たり、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、石油樹脂及び変性石油樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類の樹脂添加剤を3重量部〜15重量部添加することにより解決される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、少なくとも骨材とアスファルトとからなるアスファルト混合物に、前記アスファルト100重量部当たり、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、石油樹脂及び変性石油樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類の樹脂添加剤を3重量部〜15重量部添加することにより、骨材間の接着強度が増大され、ねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性が改善された高耐久性の排水性舗装用のアスファルト混合物を得ることが出来る。
【0014】
アスファルト100重量部当たりの樹脂添加剤の添加量が3重量部未満の場合、骨材間の接着強度を増大させる効果が不十分となり、排水性舗装用としてのアスファルト混合物の耐久性、すなわち、ねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性の改善効果が不十分となる。一方、樹脂添加剤の添加量が15重量部超の場合、排水性舗装用としてのアスファルト混合物の耐久性はほとんど飽和し、不経済であるとともに、作業性の確保が困難となる。樹脂添加剤の実用的な好ましい添加量は、アスファルト100重量部当たり、3重量部〜15重量部の範囲内であるが、使用する樹脂添加剤の種類によって最適な添加量は異なる。
【0015】
本発明では、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、石油樹脂及び変性石油樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類の樹脂添加剤を使用する。従って、例えば、変性テルペン樹脂を単独で使用することもできるが、変性テルペン樹脂と石油樹脂を併用することもできるし、また、三種類以上の樹脂を組合せて併用することもできる。
【0016】
本発明で使用される石油樹脂とは、石油系不飽和炭化水素を直接原料とする樹脂であり、シクロペンタジエンを主原料とするものと、高級オレフィン系炭化水素を主原料とするものとがある。例えば、C5、C9、DCPD及びその変性物などが好適である。
【0017】
本発明で使用する変性樹脂とは、合成樹脂の反応において基本的な成分の一部を他の成分と置き換えて、性質又は特性が変性された合成樹脂のことである。樹脂の変性には脂肪酸、脂肪油、天然樹脂、合成樹脂、イミド、フェノールなどの様々な成分が使用される。本発明では、フェノールで変性された樹脂類が好ましい。特に、テルペンフェノール樹脂が好ましい。フェノールで変性された樹脂類は分子内にOH基が包含されることとなり、このOH基と骨材が結合し、アスファルト混合物のねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性が顕著に改善される。
【0018】
本発明で使用する樹脂添加剤の軟化点は120℃以上であることが好ましい。軟化点が120℃未満の樹脂添加剤を使用すると、ねじれ抵抗性と塑性変形抵抗性に対する効果はほとんどない。一方、樹脂添加剤の軟化点の上限値は155℃であることが好ましい。これ以上の軟化点ではアスファルト混合物の作業性の確保が困難となる。
【0019】
本発明で使用する樹脂添加剤は基本的に熱可塑性物質であり、しかもアスファルト改質剤として使用されるSBSなどのような熱可塑性エラストマーと比較すると、平均分子量が比較的小さく、15%まで添加しても施工性を阻害するような粘度まで上昇しないという利点を有する。
【0020】
本発明において、樹脂添加剤はフレークの状態で使用することが好ましい。しかし、フレーク状以外の粉末状、ペレット状、ペースト状、液状などの他の様々な形状でも使用できる。フレーク状の樹脂添加剤であれば、アスファルト混合物製造プラントのミキサーへの人力投入が容易であり、アスファルト混合物製造時の樹脂添加剤の分散性にも優れ、所定の品質のアスファルト混合物が製造できる。
【0021】
本発明におけるアスファルト混合物は、アスファルトに骨材及び、必要に応じてその他の添加剤類(例えば、アスファルト剥離防止剤、植物繊維、発泡剤、再生添加剤、アスファルト低粘度化剤など)を加えたものである。このようなアスファルト混合物自体は当業者に周知である。
【0022】
本発明のアスファルト混合物において使用される骨材は、フィラー、砕石、玉砕、砂利、砂、再生骨材、カルサインドボーキサイト、鉄鋼スラグ、溶融アルミナ、人工骨材などである。
【0023】
フィラーは例えば、石灰岩、火成岩類の石粉、セメント、消石灰、フライアッシュなどである。
【0024】
砕石は、原石を機械的に破砕し、それを必要に応じて粒度毎に分級したものである。原石は例えば、火成岩、堆積岩又は変成岩である。火成岩はその産出状態及びシリカの含有量に応じて、玄武岩、安山岩、石英粗面岩、輝緑岩、石英斑岩、斑稀岩、閃緑岩、花崗岩に分類される。堆積岩は凝灰岩、集塊岩、レキ岩、頁岩、石灰岩などである。変成岩はマイロナイト、ホルンフェス、片麻岩、結晶石片岩などである。
【0025】
玉砕は玉石を砕いたものである。砂利は川砂利、山砂利、海砂利などである。砂は、天然砂、人工砂、スクリーニングス、特殊砂に分類される。天然砂はその採取場所によって、川砂、山砂、海砂に分けられる。人工砂は岩石や玉石を破砕して作られるものであり、スクリーニングスは砕石、玉砕を作る際に生じる粒径2.36mm以下の細粒をいう。特殊砂はシリカサンド、高炉水砕スラグ、クリンカーアッシュなどである。
【0026】
再生骨材には、アスファルトコンクリート舗装発生材を機械破砕又は熱破砕して作製されたアスファルトコンクリート再生骨材と、セメントコンクリート舗装発生材を機械破砕して作製されたセメントコンクリート再生骨材とが含まれる。
【0027】
鉄鋼スラグとは、鉄鋼の製造過程で生産されるスラグを破砕したものである。これは更に、銑鉄の製造過程で高炉から製錬される高炉スラグと、鋼の製造過程で生成される製鋼スラグに分類される。道路舗装用としては、一般的に、水硬性粒度調製鉄鋼スラグ、粒度調製鉄鋼スラグ、クラッシャラン鉄鋼スラグなどが使用される。
【0028】
本発明のアスファルト混合物において使用されるアスファルトとしては、ストレートアスファルト及びブローンアスファルトなどの石油アスファルト、セミブローンアスファルト、天然アスファルト、溶剤脱瀝アスファルト、タール、ピッチなどの瀝青物、A、B及びC重油などがある。石油アスファルトの品質、特性などについてはJIS(日本工業規格)K−2207に記載されている。これらにSBS、SBR、SIS、EVA、EEA、CR、IRなどを混合した改質アスファルトも使用できる。更に、改質剤としてゴムラテックス、合成高分子ラテックス、合成高分子エマルジョン、水溶性合成樹脂を単体あるいは複数組み合わせて混合したものを加えることもできる。アスファルトを使用する場合、針入度は10〜300程度のものを使用することが好ましい。
【0029】
本発明のアスファルト混合物は必要に応じて、炭酸カルシウム、消石灰、セメント、活性炭などの無機及び有機充填材、石油系軟化剤、植物油軟化剤、各種可塑剤、硫黄、塩化アンモニウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化鉄などの水溶性無機塩及び水溶性天然ゴム類などの補助成分を含有することもできる。
【0030】
本発明のアスファルト混合物を敷設する場合、加熱して施工する。通常のアスファルトでは150℃程度にまで加熱し、改質アスファルトでは最大200℃程度にまで加熱する。従って、アスファルト混合物に配合される本発明の樹脂添加剤は、この加熱温度に耐え得るものでなければならない。
【0031】
本発明のアスファルト混合物は、所定量の樹脂添加剤をアスファルト混合物製造プラントのミキサー内に添加し、骨材とアスファルトを同時に混合することにより製造できる。別法として、製造工場の製造ケットル内でアスファルトに所定量の樹脂添加剤を添加してプレミックスアスファルトを製造し、これをアスファルト混合物製造プラントにおいて通常の手法で骨材と混合することによっても製造できる。混合温度は特に調整する必要はないが、混合不良が生じる場合は通常よりも5〜10℃程度高くすることが好ましい。また、混合時間も特に調整する必要はないが、混合不良が生じる場合は通常よりも5〜10秒程度長くすることが好ましい。
【0032】
本発明のアスファルト混合物を舗装施工する場合、従来の排水性舗装と同様に取り扱うことができる。従って、従来の排水性舗装と同様に、本発明のアスファルト混合物も排水性舗装設計施工指針(案)(日本道路協会発行)に基づいて舗設することができる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により、本発明の排水性舗装用アスファルト混合物について具体的に例証する。
【0034】
実施例1〜5
骨材として硬質砂岩と粗砂、フィラーとして石粉を使用し、排水性舗装設計施工指針(案)(日本道路協会発行)に規定されている排水性混合物の標準的粒度範囲の中央を目標に各材料を配合した。アスファルトとして排水性舗装設計施工指針(案)(日本道路協会発行)に規定された高粘度改質アスファルトを使用し、樹脂添加剤としてC9石油樹脂(軟化点:150℃)を使用した。骨材とアスファルトとの配合率は、骨材とアスファルトとの合計100重量部において、骨材95重量部に対してアスファルト5重量部であった。樹脂添加剤の添加量を、アスファルト100重量部当たり、2重量部(実施例1)、4重量部(実施例2)、10重量部(実施例3)及び15重量部(実施例4)、20重量部(実施例5)と変化させた。これらの各構成成分を常法に従い、アスファルト混合物製造用ミキサー内に投入し、175℃の温度で2分間混合し、排水性舗装用アスファルト混合物を製造した。
【0035】
実施例6〜10
樹脂添加剤としてテルペンフェノール樹脂(軟化点:150℃)を使用したこと以外は、実施例1〜5と同じ構成成分、同じ配合量及び同じ製造方法を用いて排水性舗装用アスファルト混合物を製造した。
【0036】
比較例1
樹脂添加剤を使用しないこと以外は、実施例1〜5と同じ骨材及びアスファルトを同じ配合量で使用し、これら骨材とアスファルトとを、実施例1〜5に述べた製造方法と同じ方法を用いて排水性舗装用アスファルト混合物を製造した。
【0037】
前記実施例1〜10及び比較例1で製造された各排水性舗装用アスファルト混合物についてそれぞれ水浸マーシャル安定度試験、ホイールトラッキング試験、ねじれ抵抗性試験を行いその性能を評価した。
【0038】
前記水浸マーシャル安定度試験、ホイールトラッキング試験、及びねじれ抵抗性試験は下記の試験法に準拠して行った。
(1)水浸マーシャル安定度試験(アスファルト混合物の配合試験)
この試験は、舗装試験法便覧(社団法人日本道路協会編集、昭和63年11月発行)の506頁〜516頁に記載された、3−7−1マーシャル安定度試験方法に準拠して行った。マーシャル安定度試験は、主として加熱アスファルト混合物に対する粗・細骨材と、アスファルトの割合及び配合量を決定するために、マーシャル安定度を測定することからなる。これは、標準マーシャル安定度試験及び水浸マーシャル安定度試験について規定する。水浸マーシャル安定度試験は60℃の温水に48時間水浸養生させて行う。水浸マーシャル安定度試験は剥離が問題となる地域に使用されるアスファルト混合物に対し配合設計とあわせて、主に試験室で実施する。水浸マーシャル安定度試験の評価値は残留安定度(単位:%)で表示される。
(2)ホイールトラッキング試験(温度60℃におけるアスファルト混合物の塑性変形抵抗性試験)
舗装試験法便覧(社団法人日本道路協会編集、昭和63年11月発行)の539頁〜555頁に記載された、3−7−3ホイールトラッキング試験方法に準拠して行った。この試験は、高温時における加熱アスファルト混合物の塑性変形抵抗性を評価する指標である動的安定度を、ホイールトラッキング試験機を用いて測定することからなる。これは、塑性変形対策が必要とされる、重交通道路に使用するアスファルト混合物又は重交通道路に施工されているアスファルト混合物に対し、配合設計及び品質管理を目的として実施する。配合設計の場合は室内で作製された供試体について、品質管理の場合は現場で作製又は切り出した供試体について、主に試験室において実施する。ホイールトラッキング試験の評価値は動的安定度(単位:回/mm)で表示される。
(3)ねじれ抵抗性試験
ねじれ抵抗性試験は現在規格化された試験法ではなく、試験機にも様々な仕様がある。本試験では、社団法人・日本道路建設業協会発行、道路建設、平成12年1月、44頁〜55頁に記載され、“特殊荷重を受ける箇所の舗装設計について”という項目中の51頁と52頁の試験法(A)に準じて行った。試験条件として、試験に用いた供試体はホイールトラッキング供試体、試験温度は60℃気中、輪荷重は687N、接地圧0.63MPaとし、使用したタイヤはホイールトラッキング試験機で用いるソリッドタイヤと同条件のものを用いた。走行速度は10.5回転/分、回転半径のみ参考文献と異なり5.7cmとした。ねじれ抵抗性試験で得られるデータは変位計によって計測された変位量であり、変位量が大きいほどねじれ抵抗性に劣ることを示唆している。
【0039】
測定結果を下記の表1に要約して示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示された結果から、アスファルト混合物に樹脂添加剤を添加することにより、水浸マーシャル試験の残留安定度、ホイールトラッキング試験の動的安定度及びねじれ抵抗性試験の変位量が大幅に向上されることが明確に理解できる。その改善効果はC9石油樹脂よりもフェノール変性テルペンフェノール樹脂の方が高いことも理解できる。
従って、C9石油樹脂よりもフェノール変性テルペンフェノール樹脂の方が、耐水性、塑性変形抵抗性及びねじれ抵抗性を向上させるのに有効であることが理解できる。
最適な樹脂添加量について、両方の樹脂とも、2重量部では水浸マーシャル安定度試験の残留安定度の向上がほとんど見られないが、添加量4重量部では明かな向上が見られる。
一方、C9石油樹脂は15重量部以上、テルペンフェノール樹脂では10重量部以上で水浸マーシャル安定度試験の残留安定度はほぼ一定となる。ホイールトラッキング試験では、両樹脂添加剤とも10重量部以上で、ねじれ抵抗性試験ではC9石油樹脂添加量が15重量部、テルペンフェノール樹脂が10重量部以上でほぼ一定となる。
従って、最適な樹脂添加量は3〜15重量部が望ましい。
【0042】
実施例11〜16
アスファルトとして排水性舗装設計施工指針(案)(日本道路協会発行)に規定された高粘度改質アスファルトを使用し、軟化点が100℃(実施例11)、120℃(実施例12)、130℃(実施例13)、140℃(実施例14)、150℃(実施例15)、160℃(実施例16)のC9石油樹脂添加剤をそれぞれ、アスファルト100重量部当たり15重量部加えた。
【0043】
実施例17〜22
骨材として硬質砂岩と粗砂、フィラーとして石粉を使用し、排水性舗装設計施工指針(案)(日本道路協会発行)に規定されている排水性混合物の標準的粒度範囲の中央を目標に各材料を配合した。アスファルトとして上記実施例11〜16のアスファルトを使用した。骨材とアスファルトとの配合率は、骨材とアスファルトの合計100重量部において、骨材95重量部に対してアスファルト5重量部であった。
【0044】
比較例2
樹脂添加剤を添加しない高粘度改質アスファルトを使用した。また、アスファルト混合物は実施例17〜22に述べた製造方法と同じ方法を用いて排水性舗装用アスファルト混合物を製造した。
【0045】
前記実施例11〜16及び比較例2で製造されたアスファルトについて、社団法人・日本道路協会発行(平成8年10月)の舗装試験法便覧別冊、69頁〜76頁の回転粘度計による粘度試験方法に準じた粘度測定を試験温度160℃で実施した。
【0046】
また、前記実施例17〜22及び比較例2のアスファルト混合物について、水浸マーシャル安定度試験、ホイールトラッキング試験及びねじれ抵抗性試験を実施した。
【0047】
回転粘度計による粘度試験方法は、加熱アスファルト混合物のマーシャル安定度試験における混合、締固め温度の算定の目的、また舗装用石油アスファルト、改質アスファルトの品質検査、性状評価、及びアスファルト混合物から回収されたアスファルトの劣化の程度を評価することを目的として、主に試験室において実施する試験であるが、ここでは混合物の作業性の把握を目的として本試験を採用した。
良好な混合物の作業性が得られる回転粘度について、基準値や報告文はないが、ここでは過去のデータや試験施工の結果から1300mPa・sを上限値とした。
【0048】
測定結果を下記の表2に要約して示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示された結果から、軟化点が高くなるにつれて、アスファルトの回転粘度も上昇していることが理解できる。160℃の軟化点を有するC9石油樹脂は、回転粘度が1300mPa・s以上となり、混合物の作業性の確保が難しい。また、軟化点が110℃以下の場合、アスファル混合物の耐久性はあまり向上しない。これは、特にねじれ抵抗性試験の結果からも明かである。
従って、望ましい樹脂添加剤の軟化点は120℃〜155℃である。
【0051】
本発明のアスファルト混合物は排水性舗装用として特に適しているが、排水性舗装用だけでなく、通常の舗装用アスファルト混合物として使用することもできる。この場合にもねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性が改善された高耐久性の舗装路を得ることが出来る。
【0052】
上記実施例は、アスファルト混合物作製時に樹脂添加剤を加えたものだが、予め高粘度改質アスファルトに樹脂添加剤を加えたプレミックスとした時も、同様の残留率、塑性変形抵抗性及びねじれ抵抗性が得られる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、取り扱いが容易で、ねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性が改善された高耐久性の排水性舗装用のアスファルト混合物を得ることが出来る。
【発明の属する技術分野】
本発明は排水性舗装用アスファルト混合物に関する。更に詳細には、本発明は、ねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性などの特性が改善された高耐久性排水性舗装を施工するためのアスファルト混合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
車道や歩道に用いられる舗装を大別すれば、アスファルト舗装とコンクリート舗装とに分けられる。アスファルト舗装は、粒状調整砕石やクラッシャランなどで築造された路盤上にアスファルト混合物による表層・基層を形成する舗装であり、道路利用者や歩行者に対する利便性や維持修繕が容易であるなどの理由から、わが国の舗装のほとんどはアスファルト舗装である。
【0003】
しかし、アスファルト舗装は、道路施設の建設と運営、車両交通による化石燃料の使用、物流など広範な活動により初めて機能する複雑な社会資本であり、直接的かつ間接的にさまざまな環境問題を発生させている。そのため、近年では、環境問題に対応した機能を有するアスファルト舗装が強く求められるようになった。
【0004】
このような背景から、交通車両の騒音低減による沿道住民の生活環境の改善や雨天時におけるドライバーの視環境の改善など多様かつ高い機能を有する排水性舗装の需要は、近年急速に増加している。
【0005】
非特許文献1によれば、従来の排水性舗装のバインダのほとんどには高粘度改質アスファルトが用いられている。高粘度改質アスファルトの改質剤としてはSBS(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)などの高分子材料が用いられてきた。
【0006】
【非特許文献1】
社団法人日本道路協会編「排水性舗装設計施工指針(案)」,丸善,1997年
【0007】
しかし、高粘度改質アスファルトを用いた一般的な排水性舗装はねじれ抵抗性に劣り、重交通路線の交差点などでは従来から骨材飛散の問題が指摘されてきた。ねじれ抵抗性とは、特に交差点などの大型車両が右左折する箇所や駐車場などの車両タイヤが据えきりする箇所において、タイヤにより舗装路面に生じるねじれ力により舗装路面の骨材が飛散する現象に抵抗する性質を言う。
【0008】
また、従来の排水性舗装はねじれ抵抗性の他に、耐水性の点でも劣ることが知られている。更に、近年では、より一層の騒音低減が期待され、この対応策として骨材の小粒径化が行われている。しかし、従来の高粘度改質アスファルトは、骨材の小粒径化に伴い、混合物の塑性変形抵抗性の確保が不十分であることが指摘されている。塑性変形抵抗性とは大型車両の荷重によってアスファルト混合物が塑性変形する性質に対する抵抗性を言う。アスファルト混合物が塑性変形すると轍掘れを生じ、安全な車両の走行を阻害する。更に、耐水性とはアスファルト混合物の水分に対する抵抗性のことであり、耐水性が劣ると、水分の存在下において、交通車両の繰り返し荷重により、骨材を被膜しているアスファルトが骨材から剥がれる場合があり、これは剥離現象と呼ばれている。
【0009】
排水性舗装のねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性を改善するために、高粘度改質アスファルトに代えて、エポキシアスファルトが用いられている。しかし、エポキシアスファルトは2液混合であるため、プラントでの混合物製造工程が複雑になること、反応のために可使時間や硬化時間の調整が困難であること、また、コスト面の問題点が指摘されている。
【0010】
更に、排水性舗装の舗設後に、舗装表面にMMA樹脂やエポキシ樹脂などを用いたトップコートを施すことにより、排水性舗装のねじれ抵抗性と耐水性を改善する試みが為されている。しかし、この場合、散布した樹脂が摩耗すると効果が減少してしまうばかり、施工単価が上昇し、不経済な工法である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、混合物の作業性が確保しやすく、ねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性が改善された高耐久性の排水性舗装用のアスファルト混合物を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、少なくとも骨材とアスファルトとからなるアスファルト混合物に、前記アスファルト100重量部当たり、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、石油樹脂及び変性石油樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類の樹脂添加剤を3重量部〜15重量部添加することにより解決される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、少なくとも骨材とアスファルトとからなるアスファルト混合物に、前記アスファルト100重量部当たり、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、石油樹脂及び変性石油樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類の樹脂添加剤を3重量部〜15重量部添加することにより、骨材間の接着強度が増大され、ねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性が改善された高耐久性の排水性舗装用のアスファルト混合物を得ることが出来る。
【0014】
アスファルト100重量部当たりの樹脂添加剤の添加量が3重量部未満の場合、骨材間の接着強度を増大させる効果が不十分となり、排水性舗装用としてのアスファルト混合物の耐久性、すなわち、ねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性の改善効果が不十分となる。一方、樹脂添加剤の添加量が15重量部超の場合、排水性舗装用としてのアスファルト混合物の耐久性はほとんど飽和し、不経済であるとともに、作業性の確保が困難となる。樹脂添加剤の実用的な好ましい添加量は、アスファルト100重量部当たり、3重量部〜15重量部の範囲内であるが、使用する樹脂添加剤の種類によって最適な添加量は異なる。
【0015】
本発明では、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、石油樹脂及び変性石油樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類の樹脂添加剤を使用する。従って、例えば、変性テルペン樹脂を単独で使用することもできるが、変性テルペン樹脂と石油樹脂を併用することもできるし、また、三種類以上の樹脂を組合せて併用することもできる。
【0016】
本発明で使用される石油樹脂とは、石油系不飽和炭化水素を直接原料とする樹脂であり、シクロペンタジエンを主原料とするものと、高級オレフィン系炭化水素を主原料とするものとがある。例えば、C5、C9、DCPD及びその変性物などが好適である。
【0017】
本発明で使用する変性樹脂とは、合成樹脂の反応において基本的な成分の一部を他の成分と置き換えて、性質又は特性が変性された合成樹脂のことである。樹脂の変性には脂肪酸、脂肪油、天然樹脂、合成樹脂、イミド、フェノールなどの様々な成分が使用される。本発明では、フェノールで変性された樹脂類が好ましい。特に、テルペンフェノール樹脂が好ましい。フェノールで変性された樹脂類は分子内にOH基が包含されることとなり、このOH基と骨材が結合し、アスファルト混合物のねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性が顕著に改善される。
【0018】
本発明で使用する樹脂添加剤の軟化点は120℃以上であることが好ましい。軟化点が120℃未満の樹脂添加剤を使用すると、ねじれ抵抗性と塑性変形抵抗性に対する効果はほとんどない。一方、樹脂添加剤の軟化点の上限値は155℃であることが好ましい。これ以上の軟化点ではアスファルト混合物の作業性の確保が困難となる。
【0019】
本発明で使用する樹脂添加剤は基本的に熱可塑性物質であり、しかもアスファルト改質剤として使用されるSBSなどのような熱可塑性エラストマーと比較すると、平均分子量が比較的小さく、15%まで添加しても施工性を阻害するような粘度まで上昇しないという利点を有する。
【0020】
本発明において、樹脂添加剤はフレークの状態で使用することが好ましい。しかし、フレーク状以外の粉末状、ペレット状、ペースト状、液状などの他の様々な形状でも使用できる。フレーク状の樹脂添加剤であれば、アスファルト混合物製造プラントのミキサーへの人力投入が容易であり、アスファルト混合物製造時の樹脂添加剤の分散性にも優れ、所定の品質のアスファルト混合物が製造できる。
【0021】
本発明におけるアスファルト混合物は、アスファルトに骨材及び、必要に応じてその他の添加剤類(例えば、アスファルト剥離防止剤、植物繊維、発泡剤、再生添加剤、アスファルト低粘度化剤など)を加えたものである。このようなアスファルト混合物自体は当業者に周知である。
【0022】
本発明のアスファルト混合物において使用される骨材は、フィラー、砕石、玉砕、砂利、砂、再生骨材、カルサインドボーキサイト、鉄鋼スラグ、溶融アルミナ、人工骨材などである。
【0023】
フィラーは例えば、石灰岩、火成岩類の石粉、セメント、消石灰、フライアッシュなどである。
【0024】
砕石は、原石を機械的に破砕し、それを必要に応じて粒度毎に分級したものである。原石は例えば、火成岩、堆積岩又は変成岩である。火成岩はその産出状態及びシリカの含有量に応じて、玄武岩、安山岩、石英粗面岩、輝緑岩、石英斑岩、斑稀岩、閃緑岩、花崗岩に分類される。堆積岩は凝灰岩、集塊岩、レキ岩、頁岩、石灰岩などである。変成岩はマイロナイト、ホルンフェス、片麻岩、結晶石片岩などである。
【0025】
玉砕は玉石を砕いたものである。砂利は川砂利、山砂利、海砂利などである。砂は、天然砂、人工砂、スクリーニングス、特殊砂に分類される。天然砂はその採取場所によって、川砂、山砂、海砂に分けられる。人工砂は岩石や玉石を破砕して作られるものであり、スクリーニングスは砕石、玉砕を作る際に生じる粒径2.36mm以下の細粒をいう。特殊砂はシリカサンド、高炉水砕スラグ、クリンカーアッシュなどである。
【0026】
再生骨材には、アスファルトコンクリート舗装発生材を機械破砕又は熱破砕して作製されたアスファルトコンクリート再生骨材と、セメントコンクリート舗装発生材を機械破砕して作製されたセメントコンクリート再生骨材とが含まれる。
【0027】
鉄鋼スラグとは、鉄鋼の製造過程で生産されるスラグを破砕したものである。これは更に、銑鉄の製造過程で高炉から製錬される高炉スラグと、鋼の製造過程で生成される製鋼スラグに分類される。道路舗装用としては、一般的に、水硬性粒度調製鉄鋼スラグ、粒度調製鉄鋼スラグ、クラッシャラン鉄鋼スラグなどが使用される。
【0028】
本発明のアスファルト混合物において使用されるアスファルトとしては、ストレートアスファルト及びブローンアスファルトなどの石油アスファルト、セミブローンアスファルト、天然アスファルト、溶剤脱瀝アスファルト、タール、ピッチなどの瀝青物、A、B及びC重油などがある。石油アスファルトの品質、特性などについてはJIS(日本工業規格)K−2207に記載されている。これらにSBS、SBR、SIS、EVA、EEA、CR、IRなどを混合した改質アスファルトも使用できる。更に、改質剤としてゴムラテックス、合成高分子ラテックス、合成高分子エマルジョン、水溶性合成樹脂を単体あるいは複数組み合わせて混合したものを加えることもできる。アスファルトを使用する場合、針入度は10〜300程度のものを使用することが好ましい。
【0029】
本発明のアスファルト混合物は必要に応じて、炭酸カルシウム、消石灰、セメント、活性炭などの無機及び有機充填材、石油系軟化剤、植物油軟化剤、各種可塑剤、硫黄、塩化アンモニウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化鉄などの水溶性無機塩及び水溶性天然ゴム類などの補助成分を含有することもできる。
【0030】
本発明のアスファルト混合物を敷設する場合、加熱して施工する。通常のアスファルトでは150℃程度にまで加熱し、改質アスファルトでは最大200℃程度にまで加熱する。従って、アスファルト混合物に配合される本発明の樹脂添加剤は、この加熱温度に耐え得るものでなければならない。
【0031】
本発明のアスファルト混合物は、所定量の樹脂添加剤をアスファルト混合物製造プラントのミキサー内に添加し、骨材とアスファルトを同時に混合することにより製造できる。別法として、製造工場の製造ケットル内でアスファルトに所定量の樹脂添加剤を添加してプレミックスアスファルトを製造し、これをアスファルト混合物製造プラントにおいて通常の手法で骨材と混合することによっても製造できる。混合温度は特に調整する必要はないが、混合不良が生じる場合は通常よりも5〜10℃程度高くすることが好ましい。また、混合時間も特に調整する必要はないが、混合不良が生じる場合は通常よりも5〜10秒程度長くすることが好ましい。
【0032】
本発明のアスファルト混合物を舗装施工する場合、従来の排水性舗装と同様に取り扱うことができる。従って、従来の排水性舗装と同様に、本発明のアスファルト混合物も排水性舗装設計施工指針(案)(日本道路協会発行)に基づいて舗設することができる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により、本発明の排水性舗装用アスファルト混合物について具体的に例証する。
【0034】
実施例1〜5
骨材として硬質砂岩と粗砂、フィラーとして石粉を使用し、排水性舗装設計施工指針(案)(日本道路協会発行)に規定されている排水性混合物の標準的粒度範囲の中央を目標に各材料を配合した。アスファルトとして排水性舗装設計施工指針(案)(日本道路協会発行)に規定された高粘度改質アスファルトを使用し、樹脂添加剤としてC9石油樹脂(軟化点:150℃)を使用した。骨材とアスファルトとの配合率は、骨材とアスファルトとの合計100重量部において、骨材95重量部に対してアスファルト5重量部であった。樹脂添加剤の添加量を、アスファルト100重量部当たり、2重量部(実施例1)、4重量部(実施例2)、10重量部(実施例3)及び15重量部(実施例4)、20重量部(実施例5)と変化させた。これらの各構成成分を常法に従い、アスファルト混合物製造用ミキサー内に投入し、175℃の温度で2分間混合し、排水性舗装用アスファルト混合物を製造した。
【0035】
実施例6〜10
樹脂添加剤としてテルペンフェノール樹脂(軟化点:150℃)を使用したこと以外は、実施例1〜5と同じ構成成分、同じ配合量及び同じ製造方法を用いて排水性舗装用アスファルト混合物を製造した。
【0036】
比較例1
樹脂添加剤を使用しないこと以外は、実施例1〜5と同じ骨材及びアスファルトを同じ配合量で使用し、これら骨材とアスファルトとを、実施例1〜5に述べた製造方法と同じ方法を用いて排水性舗装用アスファルト混合物を製造した。
【0037】
前記実施例1〜10及び比較例1で製造された各排水性舗装用アスファルト混合物についてそれぞれ水浸マーシャル安定度試験、ホイールトラッキング試験、ねじれ抵抗性試験を行いその性能を評価した。
【0038】
前記水浸マーシャル安定度試験、ホイールトラッキング試験、及びねじれ抵抗性試験は下記の試験法に準拠して行った。
(1)水浸マーシャル安定度試験(アスファルト混合物の配合試験)
この試験は、舗装試験法便覧(社団法人日本道路協会編集、昭和63年11月発行)の506頁〜516頁に記載された、3−7−1マーシャル安定度試験方法に準拠して行った。マーシャル安定度試験は、主として加熱アスファルト混合物に対する粗・細骨材と、アスファルトの割合及び配合量を決定するために、マーシャル安定度を測定することからなる。これは、標準マーシャル安定度試験及び水浸マーシャル安定度試験について規定する。水浸マーシャル安定度試験は60℃の温水に48時間水浸養生させて行う。水浸マーシャル安定度試験は剥離が問題となる地域に使用されるアスファルト混合物に対し配合設計とあわせて、主に試験室で実施する。水浸マーシャル安定度試験の評価値は残留安定度(単位:%)で表示される。
(2)ホイールトラッキング試験(温度60℃におけるアスファルト混合物の塑性変形抵抗性試験)
舗装試験法便覧(社団法人日本道路協会編集、昭和63年11月発行)の539頁〜555頁に記載された、3−7−3ホイールトラッキング試験方法に準拠して行った。この試験は、高温時における加熱アスファルト混合物の塑性変形抵抗性を評価する指標である動的安定度を、ホイールトラッキング試験機を用いて測定することからなる。これは、塑性変形対策が必要とされる、重交通道路に使用するアスファルト混合物又は重交通道路に施工されているアスファルト混合物に対し、配合設計及び品質管理を目的として実施する。配合設計の場合は室内で作製された供試体について、品質管理の場合は現場で作製又は切り出した供試体について、主に試験室において実施する。ホイールトラッキング試験の評価値は動的安定度(単位:回/mm)で表示される。
(3)ねじれ抵抗性試験
ねじれ抵抗性試験は現在規格化された試験法ではなく、試験機にも様々な仕様がある。本試験では、社団法人・日本道路建設業協会発行、道路建設、平成12年1月、44頁〜55頁に記載され、“特殊荷重を受ける箇所の舗装設計について”という項目中の51頁と52頁の試験法(A)に準じて行った。試験条件として、試験に用いた供試体はホイールトラッキング供試体、試験温度は60℃気中、輪荷重は687N、接地圧0.63MPaとし、使用したタイヤはホイールトラッキング試験機で用いるソリッドタイヤと同条件のものを用いた。走行速度は10.5回転/分、回転半径のみ参考文献と異なり5.7cmとした。ねじれ抵抗性試験で得られるデータは変位計によって計測された変位量であり、変位量が大きいほどねじれ抵抗性に劣ることを示唆している。
【0039】
測定結果を下記の表1に要約して示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示された結果から、アスファルト混合物に樹脂添加剤を添加することにより、水浸マーシャル試験の残留安定度、ホイールトラッキング試験の動的安定度及びねじれ抵抗性試験の変位量が大幅に向上されることが明確に理解できる。その改善効果はC9石油樹脂よりもフェノール変性テルペンフェノール樹脂の方が高いことも理解できる。
従って、C9石油樹脂よりもフェノール変性テルペンフェノール樹脂の方が、耐水性、塑性変形抵抗性及びねじれ抵抗性を向上させるのに有効であることが理解できる。
最適な樹脂添加量について、両方の樹脂とも、2重量部では水浸マーシャル安定度試験の残留安定度の向上がほとんど見られないが、添加量4重量部では明かな向上が見られる。
一方、C9石油樹脂は15重量部以上、テルペンフェノール樹脂では10重量部以上で水浸マーシャル安定度試験の残留安定度はほぼ一定となる。ホイールトラッキング試験では、両樹脂添加剤とも10重量部以上で、ねじれ抵抗性試験ではC9石油樹脂添加量が15重量部、テルペンフェノール樹脂が10重量部以上でほぼ一定となる。
従って、最適な樹脂添加量は3〜15重量部が望ましい。
【0042】
実施例11〜16
アスファルトとして排水性舗装設計施工指針(案)(日本道路協会発行)に規定された高粘度改質アスファルトを使用し、軟化点が100℃(実施例11)、120℃(実施例12)、130℃(実施例13)、140℃(実施例14)、150℃(実施例15)、160℃(実施例16)のC9石油樹脂添加剤をそれぞれ、アスファルト100重量部当たり15重量部加えた。
【0043】
実施例17〜22
骨材として硬質砂岩と粗砂、フィラーとして石粉を使用し、排水性舗装設計施工指針(案)(日本道路協会発行)に規定されている排水性混合物の標準的粒度範囲の中央を目標に各材料を配合した。アスファルトとして上記実施例11〜16のアスファルトを使用した。骨材とアスファルトとの配合率は、骨材とアスファルトの合計100重量部において、骨材95重量部に対してアスファルト5重量部であった。
【0044】
比較例2
樹脂添加剤を添加しない高粘度改質アスファルトを使用した。また、アスファルト混合物は実施例17〜22に述べた製造方法と同じ方法を用いて排水性舗装用アスファルト混合物を製造した。
【0045】
前記実施例11〜16及び比較例2で製造されたアスファルトについて、社団法人・日本道路協会発行(平成8年10月)の舗装試験法便覧別冊、69頁〜76頁の回転粘度計による粘度試験方法に準じた粘度測定を試験温度160℃で実施した。
【0046】
また、前記実施例17〜22及び比較例2のアスファルト混合物について、水浸マーシャル安定度試験、ホイールトラッキング試験及びねじれ抵抗性試験を実施した。
【0047】
回転粘度計による粘度試験方法は、加熱アスファルト混合物のマーシャル安定度試験における混合、締固め温度の算定の目的、また舗装用石油アスファルト、改質アスファルトの品質検査、性状評価、及びアスファルト混合物から回収されたアスファルトの劣化の程度を評価することを目的として、主に試験室において実施する試験であるが、ここでは混合物の作業性の把握を目的として本試験を採用した。
良好な混合物の作業性が得られる回転粘度について、基準値や報告文はないが、ここでは過去のデータや試験施工の結果から1300mPa・sを上限値とした。
【0048】
測定結果を下記の表2に要約して示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示された結果から、軟化点が高くなるにつれて、アスファルトの回転粘度も上昇していることが理解できる。160℃の軟化点を有するC9石油樹脂は、回転粘度が1300mPa・s以上となり、混合物の作業性の確保が難しい。また、軟化点が110℃以下の場合、アスファル混合物の耐久性はあまり向上しない。これは、特にねじれ抵抗性試験の結果からも明かである。
従って、望ましい樹脂添加剤の軟化点は120℃〜155℃である。
【0051】
本発明のアスファルト混合物は排水性舗装用として特に適しているが、排水性舗装用だけでなく、通常の舗装用アスファルト混合物として使用することもできる。この場合にもねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性が改善された高耐久性の舗装路を得ることが出来る。
【0052】
上記実施例は、アスファルト混合物作製時に樹脂添加剤を加えたものだが、予め高粘度改質アスファルトに樹脂添加剤を加えたプレミックスとした時も、同様の残留率、塑性変形抵抗性及びねじれ抵抗性が得られる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、取り扱いが容易で、ねじれ抵抗性、塑性変形抵抗性及び耐水性が改善された高耐久性の排水性舗装用のアスファルト混合物を得ることが出来る。
Claims (4)
- 少なくとも骨材とアスファルトとからなるアスファルト混合物において、前記アスファルト100重量部当たり、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、石油樹脂及び変性石油樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類の樹脂添加剤が3重量部〜15重量部の範囲内の量で配合されていることを特徴とするアスファルト混合物。
- 前記変性テルペン樹脂添加剤はフェノールで変性されていることを特徴とする請求項1に記載のアスファルト混合物。
- 前記変性テルペン樹脂添加剤の軟化点は120℃以上155℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアスファルト混合物。
- 排水性舗装用に使用されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアスファルト混合物。
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