JP2005042153A - ダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を提供すること。
【解決手段】クロム粒22をバルーン膜4の両末端部4aから内部4bに充填し、さらに、棒部21a及び基部21bを有する棒状電極21を差し込んで、バルーン膜4の一末端部4aと棒状電極21の基部21bとを填め合わせる。そして、この状態のバルーン膜4を、コーティングユニットの上部電極内にセットし、さらに、棒状電極21の基部21bをコーティングユニットの下部電極に導通させ、これにより、クロム粒22をコーティングユニットの下部電極の働きをさせる。
【選択図】 図4
【解決手段】クロム粒22をバルーン膜4の両末端部4aから内部4bに充填し、さらに、棒部21a及び基部21bを有する棒状電極21を差し込んで、バルーン膜4の一末端部4aと棒状電極21の基部21bとを填め合わせる。そして、この状態のバルーン膜4を、コーティングユニットの上部電極内にセットし、さらに、棒状電極21の基部21bをコーティングユニットの下部電極に導通させ、これにより、クロム粒22をコーティングユニットの下部電極の働きをさせる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマCVD法を使用したダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングは、注目されている表面処理技術であり、水素化非晶質炭素皮膜を施すことによって、母材に対し、耐磨耗性や、低摩擦性、表面硬度の向上、ガス透過抑制性などを付与することができ、近年では、樹脂フィルムなどへの応用例も見られるようになってきている。
【0003】
この点、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施すには、いくつかの方法が存在するが、特に、金属と比べ耐熱性に劣る樹脂を母材とする場合、比較的低温で処理が行えるプラズマCVD法が有用である。もっとも、プラズマCVD法を用いてダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施す方法では、コーティングを施す面の裏側に沿って可能な限り接近させた電極が必要となる。すなわち、コーティングを施す面が袋状容器の内面のときは、当該容器の外形とほぼ相似形に形成された外部電極を用い、コーティングを施す面が袋状容器の外面のときは、当該容器の内壁面とほぼ相似形に形成された内部電極を用いることが要求される。
【0004】
従って、例えば、ペットボトルの内面にダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施す場合では、ペットボトルの外形とほぼ相似形に形成された空所を有する中空状の外部電極で、ペットボトルを覆えば良く、比較的簡単に行うことができる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特許第2788412号公報
【特許文献2】
特開平8−53116号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、逆に、ペットボトルの外面にダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施す場合には、ペットボトルの口部が内部より狭いため、当該口部を介して内部電極をペットボトルの内部に挿入したとしても、ペットボトルの内壁面と内部電極との間に不要なスペースが生じるので、ペットボトルの外面に施されたダイヤモンドライクカーボンのコーティングの品質に影響を及ぼすおそれがあった。
【0007】
特に、ダイヤモンドライクカーボンの膜は、抗血栓性や生体適合性に優れ、医療用途への応用に対し、大きな可能性を秘めているが、医療用途への応用を大きく進展させるためには、袋状容器の外面にダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施すプラズマCVD法において、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングの品質に影響を及ぼすおそれを払拭させる必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために成された請求項1に係る発明は、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材に対し、減圧容器の中で、前記袋状母材の内側に設置した内部電極と前記袋状母材の外側に設置した外部電極との間で高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化することにより、前記袋状母材の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、前記袋状母材の内部空間に充填させた粒状又は粉状の導電性物質を前記内部電極として使用することにより、前記袋状母材の外側全面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させること、を特徴としている。
【0010】
このような特徴を有する本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法は、減圧容器の中で、内部電極を袋状母材の内側に設置するとともに外部電極を袋状母材の外側に設置し、内部電極と外部電極との間で、高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化することにより、袋状母材の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることから、プラズマCVD法を用いたものである。
【0011】
但し、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材に対し、袋状母材の口部を介して、粒状又は粉状の導電性物質を袋状母材の内部空間に充填させて、当該導電性物質を内部電極として使用している。そのため、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができる。
【0012】
すなわち、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、袋状母材の口部を介して、粒状又は粉状の導電性物質を袋状母材の内部空間に充填させており、当該導電性物質を内部電極として使用することによって、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を一様に形成させることができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材に対し、減圧容器の中で、前記袋状母材の内側に設置した内部電極と前記袋状母材の外側に設置した外部電極との間で高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化することにより、前記袋状母材の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、前記袋状母材の内側全面に塗布させたペースト状の導電性物質を前記内部電極として使用することにより、前記袋状母材の外側全面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させること、を特徴としている。
【0014】
このような特徴を有する本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法は、減圧容器の中で、内部電極を袋状母材の内側に設置するとともに外部電極を袋状母材の外側に設置し、内部電極と外部電極との間で、高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化することにより、袋状母材の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることから、プラズマCVD法を用いたものである。
【0015】
但し、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材に対し、袋状母材の口部を介して、ペースト状の導電性物質を袋状母材の内側全面に塗布させており、当該導電性物質を内部電極として使用している。そのため、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができる。
【0016】
すなわち、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、袋状母材の口部を介して、ペースト状の導電性物質を袋状母材の内側全面に塗布させており、当該導電性物質を内部電極として使用することによって、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載するダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法であって、前記袋状母材が変形するものであること、を特徴としている。
【0018】
また、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、袋状母材の内部空間に充填させた粒状又は粉状の導電性物質、あるいは、袋状母材の内内側全面に塗布させたペースト状の導電性物質を内部電極として使用することから、袋状母材が変形するものであっても、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
【0019】
尚、「袋状母材が変形するもの」とは、例えば、袋状母材が折りたたまれるものや、袋状母材が弾性変形するものなどがある。
【0020】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載するダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法であって、前記袋状母材の内面と前記内部電極との間にゴム状の樹脂膜を介在させたこと、を特徴としている。
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載するダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法であって、前記樹脂が、ラテックス又は、シリコーンRTV、酢酸ビニルのいすれか一つであること、を特徴としている。
【0021】
また、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、袋状母材の内面と内部電極との間にゴム状の樹脂膜を介在させた状態で、内部電極と外部電極との間で、高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化させ、袋状母材の外側全面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させても、ゴム状の樹脂膜の層を挟んで、袋状母材の内側全面に内部電極を接近させた状態で沿わせることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
さらに、ゴム状の樹脂膜の層は、内部電極として使用される粒状又は、粉状、ペースト状のいずれか一つの導電性物質で袋状母材の内面が汚染・損傷されることを防ぐことができ、また、ダイヤモンドライクカーボンの膜を袋状母材の外側全面に形成させた後は、袋状母材の内面から容易に剥がすことができる。
【0022】
尚、ここで使用する粒状又は粉状の導電性物質は、金属又はカーボンの小球や粉末であることが望ましい。さらに、小球や粉末は、非導電性の材料の表面に導電性を持つ皮膜を施したものであってもよい。また、中実である必要は必ずしもないが、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングを行う際の減圧によって破壊しないことが必要である。特に、小球の場合、その直径は5mm以下が望ましく、これよりも大きいと、均一なダイヤモンドライクカーボンのコーティングが不可能となる。また、導電性物質がペースト状である場合には、粉末を液体などに分散させたペーストを使用すれば、袋状母材の内側全面に塗布された後、当該液体を乾燥させると、袋状母材の内側全面に粉末の層を一様に密接させることができる。
また、粒状又は、粉状、ペースト状の導電性物質は、電気的に導通があることが必要であるが、10−6Ω/cm程度以下の抵抗値であればよい。
【0023】
一方、袋状母材の内面と内部電極との間に介在させるゴム状の樹脂膜は、無溶剤又は水を分散材としたものが望ましく、自身の反応により、又は、水の蒸発により、ゴム状に硬化するものがよい。また、袋状母材の材質によっては、アルコール又はアセトン、酢酸エチルなどの有機溶剤を分散材として使用してもよい。
さらに、ラテックスを使用した場合には、水を分散材として乳化させたエマルジョンが望ましい。また、シリコーンゴムを使用した場合には、2液性付加型のRTVが望ましく、さらに、補強材としてのシリカを含まないものであってもよい。また、酢酸ビニルを使用した場合には、水を分散材として乳化させたエマルジョンが望ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。図1は、本実施の形態のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を実施するコーティングユニットの模式図である。図1に示すように、コーティングユニット30は、減圧チャンバー31や、原料ガスを計測する流量計32、炭化水素系ガスをつめた原料ボンベ33、下部が開口した円筒状の上部電極34(「外部電極」に相当するもの)、下部電極35(「内部電極」に相当するもの)、マッチングボックス36、RFジェネレーター37などで構成されており、プラズマCVD法を行うことができる。そして、コーティングユニット30では、不図示の真空ポンプで排気されて減圧状態にある減圧チャンバー31内において、流量計32を介し炭化水素系ガスを導入する一方で、マッチングボックス36及びRFジェネレーター37で上部電極34及び下部電極35に電力を供給することにより、上部電極34と下部電極35との間で炭化水素系ガスをプラズマ分解させて、上部電極34と下部電極35との間に設置された袋状母材の表面に、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させることができる。
【0025】
また、上述したように、コーティングユニット30において、プラズマCVD法により、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングを行う場合には、減圧チャンバー31内に袋状母材を設置した後、減圧チャンバー31内を減圧する必要がある。このとき、袋状母材が密閉状態にあると、袋状母材の内部と減圧チャンバー31の内部に圧力差が生じ、袋状母材が伸展して破壊するおそれがあるので、袋状母材の内部は密閉状態にしてはならず、袋状母材の内部と減圧チャンバー31の内部を等しい圧力にする。
【0026】
また、コーティングユニット30では、プラズマ生成用の電源周波数として、通常電波法により規定された13.56MHzを使用する。すなわち、高周波を利用するので、ダイヤモンドライクカーボンの膜が堆積する袋状母材の材料には、絶縁性や導電性など、電気的性質を特定しない。
【0027】
また、原料ガスとしては、メタン、エタンなどの炭化水素系ガスが適しているが、ここではメタンガスを用いる。さらに、原料ガスのガス圧によって、ダイヤモンドライクカーボンの膜の性状が変化することが知られているが、この点、原料ガスのガス圧は、1〜1000Paの範囲が望ましく、これよりも、原料ガスのガス圧が低いと、ダイヤモンドライクカーボンの膜の製膜自体が困難となり、また、これよりも、原料ガスのガス圧が高いと、ダイヤモンドライクカーボンの膜の表面硬度が低下し、耐磨耗性が不十分になるなど、ダイヤモンドライクカーボンの膜の性能が低下する。従って、これらを考慮すると、原料ガスのガス圧は、10〜100Paの範囲がより望ましい。
【0028】
また、ダイヤモンドライクカーボンの膜の厚さは、コーティング時間や原料ガスにより異なることが知られているが、この点、0.1〜10μmの範囲が望ましく、これよりも薄すぎると、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施したことによる十分な効果が得られず、また、これよりも厚すぎると、ダイヤモンドライクカーボンの膜の屈曲性が低下する。従って、これらを考慮すると、0.5〜3μmの範囲がより望ましい。
【0029】
尚、ダイヤモンドライクカーボンの膜では、およそ、炭素が100〜80%、水素が0〜20%であり、若干の酸素を含んでいる。また、表面硬度は20〜45GPaと高硬度であり、さらに、摩擦係数は0.05〜0.15程度である。
【0030】
次に、コーティングユニット30において、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させる袋状母材の具体例について、バルーンカテーテルと人工心臓用血液ポンプを例に挙げて説明する。
【0031】
先ず、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させる袋状母材の具体例として、バルーンカテーテルが使用された場合について説明する。図2(a)は、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させるバルーンカテーテルの概略全体図であり、また、図2(b)は、当該バルーン膜の断面図である。図2(a)に示すように、バルーンカテーテル1は、大動脈内バルーンボンピング法に使用するものであり、カテーテル外筒2と、カテーテル内筒3、バルーン膜4、Yコネクタ5からなる。この点、バルーン膜4は、図2(b)に示すように、直径が20mm程度、長さが40cm程度の両端がすぼまった円筒形にあり、遠位端でカテーテル内筒3と一体化され、また、近位端でカテーテル外筒2と一体化される。一体化の方法は、接着剤による接着や、溶剤を用いた溶着、熱による融着など、どのような手法であってもよい。また、バルーン膜4の両末端部4aについては、カテーテル外筒2やカテーテル内筒3と一体化するため、バルーン膜4の内部4bに比べ絞られており、その内径は3mm程度である。
【0032】
そして、バルーンカテーテル1が大動脈内バルーンボンピング法で使用される場合には、カテーテル外筒2とカテーテル内筒3の間隙を経由して、不図示の駆動装置から供給されるガスの陽陰圧パルスにより、バルーン膜4が拡張、収縮する。このとき、バルーン膜4の外側全面がダイヤモンドライクカーボンでコーティングされていると、バルーン膜4に対し、耐磨耗性の向上や、摩擦係数の低下、非粘着性などを付与させることができる。そこで、図1のコーティングユニット30を使用して、バルーン膜4の外側全面に対し、ダイヤモンドライクカーボンをコーティングさせる。
【0033】
そのためには、図4に示すように、直径が0.8mmのクロム粒22をバルーン膜4の両末端部4aから内部4bに充填し、さらに、棒部21aの直径が1mmで基部21bの直径が2.1mmの棒状電極21(図3参照)を差し込んで、バルーン膜4の一末端部4aと棒状電極21の基部21bとを填め合わせる。そして、この状態のバルーン膜4を、図1のコーティングユニット30の上部電極34内にセットし、さらに、棒状電極21の基部21bを下部電極35に導通させると、これにより、クロム粒22が下部電極35の働きをするので、バルーン膜4の外側全面がダイヤモンドライクカーボンでコーティングされる。
【0034】
次に、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させる袋状母材の具体例として、人工心臓用血液ポンプが使用された場合について説明する。図5(a)は、人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプの概略全体を示した断面図であり、また、図5(b)は、人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプから駆動チャンバーを除いたものの概略全体を示した断面図である。図5(a)に示すように、人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプ11は、血液ハウジング12と、ダイアフラム13、駆動チャンバー14などを有している。この点、血液ハウジング12とダイアフラム13とが一体化されており、これにより、血液チャンバー15が構成されている。また、血液ハウジング12には、血液の入口と出口となるポート12aがそれぞれ設けられている。
【0035】
そして、人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプ11は、拍動流型のものであり、ダイアフラム13によって区切られた袋状の血液チャンバー15の内部に、ポート12aを介して、血液が吸引・拍出される。もっとも、血液チャンバー15の内側表面に異物の付着又は、不整、継ぎ目などがあると、血液が凝固して血栓塞栓症の原因となるので、血液チャンバー15の内側表面は、清浄且つスムースな表面にする必要がある。一般的には、ダイアフラム13を形成した後に、血液チャンバー15の内側表面(血液接触面)の全面に一体でポリウレタン樹脂などのコーティングを施すことにより、継ぎ目を無くし一体化している。さらに、このとき、ダイアフラム13の外側表面(血液接触面の裏側)に、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施すと、耐磨耗性の向上や水蒸気の透過抑制などの新たな機能を付与することができる。そこで、図1のコーティングユニット30を使用して、ダイアフラム13の外側全面に対し、ダイヤモンドライクカーボンをコーティングさせる。
【0036】
そのためには、先ず、ポート12aを介して、血液チャンバー15の内部にコーティング用の樹脂(例えば、ラテックス、シリコーンRTV、酢酸ビニルなど)を流し込み、血液チャンバー15の内側全面に行き渡らした後、ポート12aを介して余分な樹脂を流し出す。そして、硬化中の樹脂の偏りを避けるために、血液チャンバー15を不図示の回転台に設置し、1分間に2回転程度のゆっくりとしたスピードで回転させて、樹脂を硬化させる。その後は、図6に示すように、血液チャンバー15の内部に、直径が0.8mmのクロム粒22を充填し、さらに、ポート12aに対して、金属メッシュ状の電極を持つ蓋23をする。そして、この状態の血液チャンバー15を、図1のコーティングユニット30の上部電極34内にセットし、さらに、金属メッシュ状の電極を持つ蓋23に下部電極35を導通させると、クロム粒22が下部電極35の働きをするので、ダイアフラム13を含めた血液チャンバー15の外側全面がダイヤモンドライクカーボンでコーティングされる。
【0037】
尚、コーティングが終了した後は、血液チャンバー15のポート12aから、金属メッシュ状の電極を持つ蓋23を除去し、血液チャンバー15の内部からクロム粒22を取り出し、さらに、ポート12aを介して、血液チャンバー15の内側全面からゴム状の樹脂膜(不図示)を剥がして除去する。この点、ゴム状の樹脂膜(不図示)は、ダイアフラム13を含めた血液チャンバー15の外側全面をダイヤモンドライクカーボンでコーティングする際に、血液チャンバー15の内側全面(血液接触面)がクロム粒22で汚染されたり傷つけられたりすることを防止するが、血液チャンバー15の内側全面から容易に剥がすことができるので、血液チャンバー15の内側表面に異物として残ることはない。
【0038】
以上詳細に説明したように、本実施の形態のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法は、減圧チャンバー31の中で、下部電極35として使用されるクロム粒22をバルーン膜4や血液チャンバー15の内側に設置するとともに上部電極34をバルーン膜4や血液チャンバー15の外側に設置し、下部電極35として使用されるクロム粒22と上部電極34との間で、13.56MHzの高周波電圧を印加してメタンガスをプラズマ化することにより、バルーン膜4や血液チャンバー15の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることから、プラズマCVD法を用いたものである。
【0039】
但し、本実施の形態のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、内部4bに通じる両末端部4aが狭められたバルーン膜4や、内部に通じるポート12aが狭められた血液チャンバー15に対し、両末端部4aやポート12aを介して、粒状のクロム粒22をバルーン膜4の内部4bや血液チャンバー15の内部に充填させて、粒状のクロム粒22を下部電極35として使用している。そのため、バルーン膜4や血液チャンバー15の内側全面に、下部電極35として使用されるクロム粒22を一様に密接させることができる。
【0040】
すなわち、本実施の形態のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、バルーン膜4の両末端部4aや血液チャンバー15のポート12aを介して、粒状のクロム粒22をバルーン膜4の内部4bや血液チャンバー15の内部に充填させており、当該クロム粒22を下部電極35として使用することによって、バルーン膜4や血液チャンバー15の内側全面に、下部電極35として使用されるクロム粒22を一様に密接させることができるので、内部4bに通じる両末端部4aが狭められたバルーン膜4や、内部に通じるポート12aが狭められた血液チャンバー15に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を一様に形成させることができる。
【0041】
また、本実施の形態のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、バルーン膜4の内部4bや血液チャンバー15の内部に充填させた粒状のクロム粒22を下部電極35として使用することから、バルーン膜4や血液チャンバー15のダイアフラム13が変形するものであっても、バルーン膜4や血液チャンバー15の内側全面に、下部電極35として使用されるクロム粒22を一様に密接させることができるので、内部4bに通じる両末端部4aが狭められたバルーン膜4や、内部に通じるポート12aが狭められた血液チャンバー15に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
【0042】
尚、バルーン膜4は、バルーンカテーテル1において折りたたまれた状態で出荷されるものである。また、血液チャンバー15のダイアフラム13は、人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプ11が血液を吸引・拍出する際に弾性変形するものである。
【0043】
また、本実施の形態のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、血液チャンバー15の内面と下部電極35として使用されるクロム粒22との間にゴム状の樹脂膜を介在させた状態で、下部電極35として使用されるクロム粒22と上部電極34との間で、13.56MHzの高周波電圧を印加してメタンガスをプラズマ化することにより、血液チャンバー15の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させているが、この点、ゴム状の樹脂膜の層を挟んで、血液チャンバー15の内側全面に、下部電極35として使用されるクロム粒22を接近させた状態で沿わせることができるので、内部に通じるポート12aが狭められた血液チャンバー15に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
【0044】
さらに、ゴム状の樹脂膜の層は、下部電極35として使用されるクロム粒22で血液チャンバー15の内面が汚染・損傷されることを防ぐことができ、また、ダイヤモンドライクカーボンの膜を血液チャンバー15の外側全面に形成させた後は、血液チャンバー15の内面から容易に剥がすことができる。
【0045】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、バルーン膜4の内部4bや血液チャンバー15の内部には、下部電極35として使用される粒状のクロム粒22が充填されていたが、この点、クロム粉を充填してもよい。また、クロム粉を液体などに分散させたペーストを使用してもよく、この場合には、バルーン膜4や血液チャンバー15の内側全面に塗布された後、当該液体を乾燥させると、バルーン膜4や血液チャンバー15の内側全面にクロム粉の層を一様に密接させることができる。
但し、クロム粒22や、クロム粉、ペースト状のクロム粉は、電気的に導通があることが必要であるが、10−6Ω/cm程度以下の抵抗値であればよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させる袋状母材の具体例として、拍動流型の人工心臓用血液ポンプ11が使用された場合について説明しており、当該人工心臓用血液ポンプ11は、袋状の血液チャンバー15がダイアフラム13によって区切られたものであったが、サックによって区切られたものであってもよい。
【0047】
【発明の効果】
本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、袋状母材の口部を介して、粒状又は粉状の導電性物質を袋状母材の内部空間に充填させており、当該導電性物質を内部電極として使用することによって、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を一様に形成させることができる。
【0048】
また、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、袋状母材の口部を介して、ペースト状の導電性物質を袋状母材の内側全面に塗布させており、当該導電性物質を内部電極として使用することによって、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
【0049】
また、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、袋状母材の内部空間に充填させた粒状又は粉状の導電性物質、あるいは、袋状母材の内内側全面に塗布させたペースト状の導電性物質を内部電極として使用することから、袋状母材が変形するものであっても、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
【0050】
また、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、袋状母材の内面と内部電極との間にゴム状の樹脂膜を介在させた状態で、内部電極と外部電極との間で、高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化させ、袋状母材の外側全面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させても、ゴム状の樹脂膜の層を挟んで、袋状母材の内側全面に内部電極を接近させた状態で沿わせることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
さらに、ゴム状の樹脂膜の層は、内部電極として使用される粒状又は、粉状、ペースト状のいずれか一つの導電性物質で袋状母材の内面が汚染・損傷されることを防ぐことができ、また、ダイヤモンドライクカーボンの膜を袋状母材の外側全面に形成させた後は、袋状母材の内面から容易に剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を実施するコーティングユニットの模式図である。
【図2】本発明の一実施の形態であるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させるバルーンカテーテルを示した図であり、(a)は概略全体図であり、(b)はバルーン膜の断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態であるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を実施する際に使用される棒状電極を示した図である。
【図4】本発明の一実施の形態であるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を実施する際において、クロム粒及び棒状電極が填め込まれたバルーン膜を示した断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態であるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させる人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプを示した図であり、(a)は概略全体を示した断面図であり、(b)は、人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプから駆動チャンバーを除いた血液チャンバーの概略全体を示した断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態であるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を実施する際において、クロム粒が填め込まれた血液チャンバーを示した断面図である。
【符号の説明】
1 バルーンカテーテル
2 カテーテル外筒
3 カテーテル内筒
4 バルーン膜
4a バルーン膜の両末端部
4b バルーン膜の内部
5 Yコネクタ
11 人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプ
12 血液ハウジング
12a 血液ハウジングのポート
13 ダイアフラム
14 駆動チャンバー
15 血液チャンバー1
21 棒状電極
21a 棒状電極の棒部
21b 棒状電極の基部
22 クロム粒
23 金属メッシュ状の電極を持つ蓋
30 コーティングユニット
31 減圧チャンバー
32 流量計
33 原料ボンベ
34 上部電極
35 下部電極
36 マッチングボックス
37 RFジェネレーター
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマCVD法を使用したダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングは、注目されている表面処理技術であり、水素化非晶質炭素皮膜を施すことによって、母材に対し、耐磨耗性や、低摩擦性、表面硬度の向上、ガス透過抑制性などを付与することができ、近年では、樹脂フィルムなどへの応用例も見られるようになってきている。
【0003】
この点、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施すには、いくつかの方法が存在するが、特に、金属と比べ耐熱性に劣る樹脂を母材とする場合、比較的低温で処理が行えるプラズマCVD法が有用である。もっとも、プラズマCVD法を用いてダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施す方法では、コーティングを施す面の裏側に沿って可能な限り接近させた電極が必要となる。すなわち、コーティングを施す面が袋状容器の内面のときは、当該容器の外形とほぼ相似形に形成された外部電極を用い、コーティングを施す面が袋状容器の外面のときは、当該容器の内壁面とほぼ相似形に形成された内部電極を用いることが要求される。
【0004】
従って、例えば、ペットボトルの内面にダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施す場合では、ペットボトルの外形とほぼ相似形に形成された空所を有する中空状の外部電極で、ペットボトルを覆えば良く、比較的簡単に行うことができる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特許第2788412号公報
【特許文献2】
特開平8−53116号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、逆に、ペットボトルの外面にダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施す場合には、ペットボトルの口部が内部より狭いため、当該口部を介して内部電極をペットボトルの内部に挿入したとしても、ペットボトルの内壁面と内部電極との間に不要なスペースが生じるので、ペットボトルの外面に施されたダイヤモンドライクカーボンのコーティングの品質に影響を及ぼすおそれがあった。
【0007】
特に、ダイヤモンドライクカーボンの膜は、抗血栓性や生体適合性に優れ、医療用途への応用に対し、大きな可能性を秘めているが、医療用途への応用を大きく進展させるためには、袋状容器の外面にダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施すプラズマCVD法において、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングの品質に影響を及ぼすおそれを払拭させる必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために成された請求項1に係る発明は、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材に対し、減圧容器の中で、前記袋状母材の内側に設置した内部電極と前記袋状母材の外側に設置した外部電極との間で高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化することにより、前記袋状母材の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、前記袋状母材の内部空間に充填させた粒状又は粉状の導電性物質を前記内部電極として使用することにより、前記袋状母材の外側全面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させること、を特徴としている。
【0010】
このような特徴を有する本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法は、減圧容器の中で、内部電極を袋状母材の内側に設置するとともに外部電極を袋状母材の外側に設置し、内部電極と外部電極との間で、高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化することにより、袋状母材の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることから、プラズマCVD法を用いたものである。
【0011】
但し、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材に対し、袋状母材の口部を介して、粒状又は粉状の導電性物質を袋状母材の内部空間に充填させて、当該導電性物質を内部電極として使用している。そのため、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができる。
【0012】
すなわち、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、袋状母材の口部を介して、粒状又は粉状の導電性物質を袋状母材の内部空間に充填させており、当該導電性物質を内部電極として使用することによって、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を一様に形成させることができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材に対し、減圧容器の中で、前記袋状母材の内側に設置した内部電極と前記袋状母材の外側に設置した外部電極との間で高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化することにより、前記袋状母材の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、前記袋状母材の内側全面に塗布させたペースト状の導電性物質を前記内部電極として使用することにより、前記袋状母材の外側全面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させること、を特徴としている。
【0014】
このような特徴を有する本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法は、減圧容器の中で、内部電極を袋状母材の内側に設置するとともに外部電極を袋状母材の外側に設置し、内部電極と外部電極との間で、高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化することにより、袋状母材の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることから、プラズマCVD法を用いたものである。
【0015】
但し、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材に対し、袋状母材の口部を介して、ペースト状の導電性物質を袋状母材の内側全面に塗布させており、当該導電性物質を内部電極として使用している。そのため、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができる。
【0016】
すなわち、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、袋状母材の口部を介して、ペースト状の導電性物質を袋状母材の内側全面に塗布させており、当該導電性物質を内部電極として使用することによって、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載するダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法であって、前記袋状母材が変形するものであること、を特徴としている。
【0018】
また、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、袋状母材の内部空間に充填させた粒状又は粉状の導電性物質、あるいは、袋状母材の内内側全面に塗布させたペースト状の導電性物質を内部電極として使用することから、袋状母材が変形するものであっても、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
【0019】
尚、「袋状母材が変形するもの」とは、例えば、袋状母材が折りたたまれるものや、袋状母材が弾性変形するものなどがある。
【0020】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載するダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法であって、前記袋状母材の内面と前記内部電極との間にゴム状の樹脂膜を介在させたこと、を特徴としている。
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載するダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法であって、前記樹脂が、ラテックス又は、シリコーンRTV、酢酸ビニルのいすれか一つであること、を特徴としている。
【0021】
また、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、袋状母材の内面と内部電極との間にゴム状の樹脂膜を介在させた状態で、内部電極と外部電極との間で、高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化させ、袋状母材の外側全面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させても、ゴム状の樹脂膜の層を挟んで、袋状母材の内側全面に内部電極を接近させた状態で沿わせることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
さらに、ゴム状の樹脂膜の層は、内部電極として使用される粒状又は、粉状、ペースト状のいずれか一つの導電性物質で袋状母材の内面が汚染・損傷されることを防ぐことができ、また、ダイヤモンドライクカーボンの膜を袋状母材の外側全面に形成させた後は、袋状母材の内面から容易に剥がすことができる。
【0022】
尚、ここで使用する粒状又は粉状の導電性物質は、金属又はカーボンの小球や粉末であることが望ましい。さらに、小球や粉末は、非導電性の材料の表面に導電性を持つ皮膜を施したものであってもよい。また、中実である必要は必ずしもないが、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングを行う際の減圧によって破壊しないことが必要である。特に、小球の場合、その直径は5mm以下が望ましく、これよりも大きいと、均一なダイヤモンドライクカーボンのコーティングが不可能となる。また、導電性物質がペースト状である場合には、粉末を液体などに分散させたペーストを使用すれば、袋状母材の内側全面に塗布された後、当該液体を乾燥させると、袋状母材の内側全面に粉末の層を一様に密接させることができる。
また、粒状又は、粉状、ペースト状の導電性物質は、電気的に導通があることが必要であるが、10−6Ω/cm程度以下の抵抗値であればよい。
【0023】
一方、袋状母材の内面と内部電極との間に介在させるゴム状の樹脂膜は、無溶剤又は水を分散材としたものが望ましく、自身の反応により、又は、水の蒸発により、ゴム状に硬化するものがよい。また、袋状母材の材質によっては、アルコール又はアセトン、酢酸エチルなどの有機溶剤を分散材として使用してもよい。
さらに、ラテックスを使用した場合には、水を分散材として乳化させたエマルジョンが望ましい。また、シリコーンゴムを使用した場合には、2液性付加型のRTVが望ましく、さらに、補強材としてのシリカを含まないものであってもよい。また、酢酸ビニルを使用した場合には、水を分散材として乳化させたエマルジョンが望ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。図1は、本実施の形態のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を実施するコーティングユニットの模式図である。図1に示すように、コーティングユニット30は、減圧チャンバー31や、原料ガスを計測する流量計32、炭化水素系ガスをつめた原料ボンベ33、下部が開口した円筒状の上部電極34(「外部電極」に相当するもの)、下部電極35(「内部電極」に相当するもの)、マッチングボックス36、RFジェネレーター37などで構成されており、プラズマCVD法を行うことができる。そして、コーティングユニット30では、不図示の真空ポンプで排気されて減圧状態にある減圧チャンバー31内において、流量計32を介し炭化水素系ガスを導入する一方で、マッチングボックス36及びRFジェネレーター37で上部電極34及び下部電極35に電力を供給することにより、上部電極34と下部電極35との間で炭化水素系ガスをプラズマ分解させて、上部電極34と下部電極35との間に設置された袋状母材の表面に、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させることができる。
【0025】
また、上述したように、コーティングユニット30において、プラズマCVD法により、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングを行う場合には、減圧チャンバー31内に袋状母材を設置した後、減圧チャンバー31内を減圧する必要がある。このとき、袋状母材が密閉状態にあると、袋状母材の内部と減圧チャンバー31の内部に圧力差が生じ、袋状母材が伸展して破壊するおそれがあるので、袋状母材の内部は密閉状態にしてはならず、袋状母材の内部と減圧チャンバー31の内部を等しい圧力にする。
【0026】
また、コーティングユニット30では、プラズマ生成用の電源周波数として、通常電波法により規定された13.56MHzを使用する。すなわち、高周波を利用するので、ダイヤモンドライクカーボンの膜が堆積する袋状母材の材料には、絶縁性や導電性など、電気的性質を特定しない。
【0027】
また、原料ガスとしては、メタン、エタンなどの炭化水素系ガスが適しているが、ここではメタンガスを用いる。さらに、原料ガスのガス圧によって、ダイヤモンドライクカーボンの膜の性状が変化することが知られているが、この点、原料ガスのガス圧は、1〜1000Paの範囲が望ましく、これよりも、原料ガスのガス圧が低いと、ダイヤモンドライクカーボンの膜の製膜自体が困難となり、また、これよりも、原料ガスのガス圧が高いと、ダイヤモンドライクカーボンの膜の表面硬度が低下し、耐磨耗性が不十分になるなど、ダイヤモンドライクカーボンの膜の性能が低下する。従って、これらを考慮すると、原料ガスのガス圧は、10〜100Paの範囲がより望ましい。
【0028】
また、ダイヤモンドライクカーボンの膜の厚さは、コーティング時間や原料ガスにより異なることが知られているが、この点、0.1〜10μmの範囲が望ましく、これよりも薄すぎると、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施したことによる十分な効果が得られず、また、これよりも厚すぎると、ダイヤモンドライクカーボンの膜の屈曲性が低下する。従って、これらを考慮すると、0.5〜3μmの範囲がより望ましい。
【0029】
尚、ダイヤモンドライクカーボンの膜では、およそ、炭素が100〜80%、水素が0〜20%であり、若干の酸素を含んでいる。また、表面硬度は20〜45GPaと高硬度であり、さらに、摩擦係数は0.05〜0.15程度である。
【0030】
次に、コーティングユニット30において、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させる袋状母材の具体例について、バルーンカテーテルと人工心臓用血液ポンプを例に挙げて説明する。
【0031】
先ず、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させる袋状母材の具体例として、バルーンカテーテルが使用された場合について説明する。図2(a)は、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させるバルーンカテーテルの概略全体図であり、また、図2(b)は、当該バルーン膜の断面図である。図2(a)に示すように、バルーンカテーテル1は、大動脈内バルーンボンピング法に使用するものであり、カテーテル外筒2と、カテーテル内筒3、バルーン膜4、Yコネクタ5からなる。この点、バルーン膜4は、図2(b)に示すように、直径が20mm程度、長さが40cm程度の両端がすぼまった円筒形にあり、遠位端でカテーテル内筒3と一体化され、また、近位端でカテーテル外筒2と一体化される。一体化の方法は、接着剤による接着や、溶剤を用いた溶着、熱による融着など、どのような手法であってもよい。また、バルーン膜4の両末端部4aについては、カテーテル外筒2やカテーテル内筒3と一体化するため、バルーン膜4の内部4bに比べ絞られており、その内径は3mm程度である。
【0032】
そして、バルーンカテーテル1が大動脈内バルーンボンピング法で使用される場合には、カテーテル外筒2とカテーテル内筒3の間隙を経由して、不図示の駆動装置から供給されるガスの陽陰圧パルスにより、バルーン膜4が拡張、収縮する。このとき、バルーン膜4の外側全面がダイヤモンドライクカーボンでコーティングされていると、バルーン膜4に対し、耐磨耗性の向上や、摩擦係数の低下、非粘着性などを付与させることができる。そこで、図1のコーティングユニット30を使用して、バルーン膜4の外側全面に対し、ダイヤモンドライクカーボンをコーティングさせる。
【0033】
そのためには、図4に示すように、直径が0.8mmのクロム粒22をバルーン膜4の両末端部4aから内部4bに充填し、さらに、棒部21aの直径が1mmで基部21bの直径が2.1mmの棒状電極21(図3参照)を差し込んで、バルーン膜4の一末端部4aと棒状電極21の基部21bとを填め合わせる。そして、この状態のバルーン膜4を、図1のコーティングユニット30の上部電極34内にセットし、さらに、棒状電極21の基部21bを下部電極35に導通させると、これにより、クロム粒22が下部電極35の働きをするので、バルーン膜4の外側全面がダイヤモンドライクカーボンでコーティングされる。
【0034】
次に、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させる袋状母材の具体例として、人工心臓用血液ポンプが使用された場合について説明する。図5(a)は、人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプの概略全体を示した断面図であり、また、図5(b)は、人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプから駆動チャンバーを除いたものの概略全体を示した断面図である。図5(a)に示すように、人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプ11は、血液ハウジング12と、ダイアフラム13、駆動チャンバー14などを有している。この点、血液ハウジング12とダイアフラム13とが一体化されており、これにより、血液チャンバー15が構成されている。また、血液ハウジング12には、血液の入口と出口となるポート12aがそれぞれ設けられている。
【0035】
そして、人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプ11は、拍動流型のものであり、ダイアフラム13によって区切られた袋状の血液チャンバー15の内部に、ポート12aを介して、血液が吸引・拍出される。もっとも、血液チャンバー15の内側表面に異物の付着又は、不整、継ぎ目などがあると、血液が凝固して血栓塞栓症の原因となるので、血液チャンバー15の内側表面は、清浄且つスムースな表面にする必要がある。一般的には、ダイアフラム13を形成した後に、血液チャンバー15の内側表面(血液接触面)の全面に一体でポリウレタン樹脂などのコーティングを施すことにより、継ぎ目を無くし一体化している。さらに、このとき、ダイアフラム13の外側表面(血液接触面の裏側)に、ダイヤモンドライクカーボンのコーティングを施すと、耐磨耗性の向上や水蒸気の透過抑制などの新たな機能を付与することができる。そこで、図1のコーティングユニット30を使用して、ダイアフラム13の外側全面に対し、ダイヤモンドライクカーボンをコーティングさせる。
【0036】
そのためには、先ず、ポート12aを介して、血液チャンバー15の内部にコーティング用の樹脂(例えば、ラテックス、シリコーンRTV、酢酸ビニルなど)を流し込み、血液チャンバー15の内側全面に行き渡らした後、ポート12aを介して余分な樹脂を流し出す。そして、硬化中の樹脂の偏りを避けるために、血液チャンバー15を不図示の回転台に設置し、1分間に2回転程度のゆっくりとしたスピードで回転させて、樹脂を硬化させる。その後は、図6に示すように、血液チャンバー15の内部に、直径が0.8mmのクロム粒22を充填し、さらに、ポート12aに対して、金属メッシュ状の電極を持つ蓋23をする。そして、この状態の血液チャンバー15を、図1のコーティングユニット30の上部電極34内にセットし、さらに、金属メッシュ状の電極を持つ蓋23に下部電極35を導通させると、クロム粒22が下部電極35の働きをするので、ダイアフラム13を含めた血液チャンバー15の外側全面がダイヤモンドライクカーボンでコーティングされる。
【0037】
尚、コーティングが終了した後は、血液チャンバー15のポート12aから、金属メッシュ状の電極を持つ蓋23を除去し、血液チャンバー15の内部からクロム粒22を取り出し、さらに、ポート12aを介して、血液チャンバー15の内側全面からゴム状の樹脂膜(不図示)を剥がして除去する。この点、ゴム状の樹脂膜(不図示)は、ダイアフラム13を含めた血液チャンバー15の外側全面をダイヤモンドライクカーボンでコーティングする際に、血液チャンバー15の内側全面(血液接触面)がクロム粒22で汚染されたり傷つけられたりすることを防止するが、血液チャンバー15の内側全面から容易に剥がすことができるので、血液チャンバー15の内側表面に異物として残ることはない。
【0038】
以上詳細に説明したように、本実施の形態のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法は、減圧チャンバー31の中で、下部電極35として使用されるクロム粒22をバルーン膜4や血液チャンバー15の内側に設置するとともに上部電極34をバルーン膜4や血液チャンバー15の外側に設置し、下部電極35として使用されるクロム粒22と上部電極34との間で、13.56MHzの高周波電圧を印加してメタンガスをプラズマ化することにより、バルーン膜4や血液チャンバー15の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることから、プラズマCVD法を用いたものである。
【0039】
但し、本実施の形態のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、内部4bに通じる両末端部4aが狭められたバルーン膜4や、内部に通じるポート12aが狭められた血液チャンバー15に対し、両末端部4aやポート12aを介して、粒状のクロム粒22をバルーン膜4の内部4bや血液チャンバー15の内部に充填させて、粒状のクロム粒22を下部電極35として使用している。そのため、バルーン膜4や血液チャンバー15の内側全面に、下部電極35として使用されるクロム粒22を一様に密接させることができる。
【0040】
すなわち、本実施の形態のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、バルーン膜4の両末端部4aや血液チャンバー15のポート12aを介して、粒状のクロム粒22をバルーン膜4の内部4bや血液チャンバー15の内部に充填させており、当該クロム粒22を下部電極35として使用することによって、バルーン膜4や血液チャンバー15の内側全面に、下部電極35として使用されるクロム粒22を一様に密接させることができるので、内部4bに通じる両末端部4aが狭められたバルーン膜4や、内部に通じるポート12aが狭められた血液チャンバー15に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を一様に形成させることができる。
【0041】
また、本実施の形態のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、バルーン膜4の内部4bや血液チャンバー15の内部に充填させた粒状のクロム粒22を下部電極35として使用することから、バルーン膜4や血液チャンバー15のダイアフラム13が変形するものであっても、バルーン膜4や血液チャンバー15の内側全面に、下部電極35として使用されるクロム粒22を一様に密接させることができるので、内部4bに通じる両末端部4aが狭められたバルーン膜4や、内部に通じるポート12aが狭められた血液チャンバー15に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
【0042】
尚、バルーン膜4は、バルーンカテーテル1において折りたたまれた状態で出荷されるものである。また、血液チャンバー15のダイアフラム13は、人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプ11が血液を吸引・拍出する際に弾性変形するものである。
【0043】
また、本実施の形態のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、血液チャンバー15の内面と下部電極35として使用されるクロム粒22との間にゴム状の樹脂膜を介在させた状態で、下部電極35として使用されるクロム粒22と上部電極34との間で、13.56MHzの高周波電圧を印加してメタンガスをプラズマ化することにより、血液チャンバー15の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させているが、この点、ゴム状の樹脂膜の層を挟んで、血液チャンバー15の内側全面に、下部電極35として使用されるクロム粒22を接近させた状態で沿わせることができるので、内部に通じるポート12aが狭められた血液チャンバー15に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
【0044】
さらに、ゴム状の樹脂膜の層は、下部電極35として使用されるクロム粒22で血液チャンバー15の内面が汚染・損傷されることを防ぐことができ、また、ダイヤモンドライクカーボンの膜を血液チャンバー15の外側全面に形成させた後は、血液チャンバー15の内面から容易に剥がすことができる。
【0045】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、バルーン膜4の内部4bや血液チャンバー15の内部には、下部電極35として使用される粒状のクロム粒22が充填されていたが、この点、クロム粉を充填してもよい。また、クロム粉を液体などに分散させたペーストを使用してもよく、この場合には、バルーン膜4や血液チャンバー15の内側全面に塗布された後、当該液体を乾燥させると、バルーン膜4や血液チャンバー15の内側全面にクロム粉の層を一様に密接させることができる。
但し、クロム粒22や、クロム粉、ペースト状のクロム粉は、電気的に導通があることが必要であるが、10−6Ω/cm程度以下の抵抗値であればよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させる袋状母材の具体例として、拍動流型の人工心臓用血液ポンプ11が使用された場合について説明しており、当該人工心臓用血液ポンプ11は、袋状の血液チャンバー15がダイアフラム13によって区切られたものであったが、サックによって区切られたものであってもよい。
【0047】
【発明の効果】
本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、袋状母材の口部を介して、粒状又は粉状の導電性物質を袋状母材の内部空間に充填させており、当該導電性物質を内部電極として使用することによって、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を一様に形成させることができる。
【0048】
また、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、袋状母材の口部を介して、ペースト状の導電性物質を袋状母材の内側全面に塗布させており、当該導電性物質を内部電極として使用することによって、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
【0049】
また、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法では、袋状母材の内部空間に充填させた粒状又は粉状の導電性物質、あるいは、袋状母材の内内側全面に塗布させたペースト状の導電性物質を内部電極として使用することから、袋状母材が変形するものであっても、袋状母材の内側全面に内部電極を一様に密接させることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
【0050】
また、本発明のダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、袋状母材の内面と内部電極との間にゴム状の樹脂膜を介在させた状態で、内部電極と外部電極との間で、高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化させ、袋状母材の外側全面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させても、ゴム状の樹脂膜の層を挟んで、袋状母材の内側全面に内部電極を接近させた状態で沿わせることができるので、内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材の外側全面に対し、品質の優れたダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させることができる。
さらに、ゴム状の樹脂膜の層は、内部電極として使用される粒状又は、粉状、ペースト状のいずれか一つの導電性物質で袋状母材の内面が汚染・損傷されることを防ぐことができ、また、ダイヤモンドライクカーボンの膜を袋状母材の外側全面に形成させた後は、袋状母材の内面から容易に剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を実施するコーティングユニットの模式図である。
【図2】本発明の一実施の形態であるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させるバルーンカテーテルを示した図であり、(a)は概略全体図であり、(b)はバルーン膜の断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態であるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を実施する際に使用される棒状電極を示した図である。
【図4】本発明の一実施の形態であるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を実施する際において、クロム粒及び棒状電極が填め込まれたバルーン膜を示した断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態であるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、ダイヤモンドライクカーボンの膜を堆積させる人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプを示した図であり、(a)は概略全体を示した断面図であり、(b)は、人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプから駆動チャンバーを除いた血液チャンバーの概略全体を示した断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態であるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法を実施する際において、クロム粒が填め込まれた血液チャンバーを示した断面図である。
【符号の説明】
1 バルーンカテーテル
2 カテーテル外筒
3 カテーテル内筒
4 バルーン膜
4a バルーン膜の両末端部
4b バルーン膜の内部
5 Yコネクタ
11 人工心臓用ダイアフラム型血液ポンプ
12 血液ハウジング
12a 血液ハウジングのポート
13 ダイアフラム
14 駆動チャンバー
15 血液チャンバー1
21 棒状電極
21a 棒状電極の棒部
21b 棒状電極の基部
22 クロム粒
23 金属メッシュ状の電極を持つ蓋
30 コーティングユニット
31 減圧チャンバー
32 流量計
33 原料ボンベ
34 上部電極
35 下部電極
36 マッチングボックス
37 RFジェネレーター
Claims (5)
- 内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材に対し、減圧容器の中で、前記袋状母材の内側に設置した内部電極と前記袋状母材の外側に設置した外部電極との間で高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化することにより、前記袋状母材の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、
前記袋状母材の内部空間に充填させた粒状又は粉状の導電性物質を前記内部電極として使用することにより、前記袋状母材の外側全面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させること、を特徴とするダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法。 - 内部空間に通じる口部が狭められた袋状母材に対し、減圧容器の中で、前記袋状母材の内側に設置した内部電極と前記袋状母材の外側に設置した外部電極との間で高周波電圧を印加して炭化水素系ガスをプラズマ化することにより、前記袋状母材の表面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させるダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法において、
前記袋状母材の内側全面に塗布させたペースト状の導電性物質を前記内部電極として使用することにより、前記袋状母材の外側全面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成させること、を特徴とするダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法。 - 請求項1又は請求項2に記載するダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法であって、
前記袋状母材が変形するものであること、を特徴とするダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載するダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法であって、
前記袋状母材の内面と前記内部電極との間にゴム状の樹脂膜を介在させたこと、を特徴とするダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法。 - 請求項4に記載するダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法であって、
前記樹脂が、ラテックス又は、シリコーンRTV、酢酸ビニルのいすれか一つであること、を特徴とするダイヤモンドライクカーボンのコーティング方法。
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WO2010001880A1 (ja) * | 2008-07-01 | 2010-01-07 | 株式会社ユーテック | プラズマcvd装置、dlc膜及び薄膜の製造方法 |
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- 2003-07-28 JP JP2003202155A patent/JP2005042153A/ja active Pending
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