JP2005041359A - シフトレバー装置 - Google Patents

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Haruhiko Yoshikawa
晴彦 吉川
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Abstract

【課題】 操作フィーリングの向上やミスシフトの防止等を図ったシフトレバー装置を提供する。
【解決手段】 シフトレバー装置6は、運転者に操作されるシフトレバー61と、シフトレバー61のマニュアルシフトゲートM内での位置を検出するリニアポジションセンサ62と、操作反力付与手段である反力アクチュエータ63と、CLU(コントロールレバーECU)64とを備えている。シフトレバー61の位置は、図2のリニアポジションセンサ62と図示しないポジションセンサとにより検出されてCLU64に入力する一方、CLU64からの駆動信号により反力アクチュエータ63が駆動制御される。
【選択図】 図2

Description

本発明は、シフトレバー装置に関し、詳しくは操作フィーリングの向上やミスシフトの防止等を図る技術に関する。
動力源として内燃機関(以下、エンジンと記す)を搭載した四輪自動車等では、エンジンのアウトプットシャフトの回転をトランスミッションにより適宜変速した後、差動装置やドライブシャフトを介して左右の車輪に伝達する構成が採られている。自動車用トランスミッションとしては、変速操作やクラッチ操作を運転者が行うマニュアル式や、トルクコンバータ(流体継手)や油圧アクチュエータにより自動変速を行うオートマチック式の他、2組の溝幅可変型プーリや金属ベルト等により変速比を自動かつ連続的に変化させるCVT(Continuously Variable Transmission)等、種々のものが存在する。しかしながら、これら従来の自動車用トランスミッションは、ユーザの操作性や走行燃費、製造コスト、耐久性、静粛性等に対する要求を完全に満たすものではなかった。
そこで、近年、前記の種々の要求を高い次元で満たすべく、マニュアルトランスミッションに変速アクチュエータやクラッチアクチュエータ、シフトレバー、シフトスイッチ、変速制御装置等を付加した、いわゆるセミオートマチックトランスミッションが開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。セミオートマチックトランスミッションでは、通常、車速や加速要求(アクセルペダル開度)等に応じて自動的に変速を行うドライブモードと、運転者によるシフトレバーやシフトスイッチの操作に応じて変速を行うマニュアルシフトモードとが設けられており、変速制御装置は、両モードにおいて最適な変速が実現されるように、各アクチュエータを適宜駆動制御すると同時に、エンジン制御装置にもエンジンの出力制御を行わせる。
セミオートマチックトランスミッションでは、シフトレバーが単に変速指令信号を出力する電気スイッチであるため、これに適切な操作反力を付与することがある。例えば、シフトレバーに複数種の操作反力(力覚)を付与する装置としては、シフトレバーにナビゲーション装置用操作スティックの機能を兼ねさせ、シフトチェンジモードとナビゲーションモードとで操作反力を変更する車両用操作装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、シフトレバーの誤操作を防止する装置として、運転者が走行中にシフトレバーをニュートラルレンジやリバースレンジ、パーキングレンジに操作しようとした場合、シフトレバーの作動を電磁反発力により抑制したり、シフトレバーの操作を無効にするシフト装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特開平7−305762号公報(段落0026〜0031、図1) 特開平6−241298号公報(段落0015〜0020、図1) 特開2001−105926号公報(段落0012〜0024、図1) 特開2002−257222号公報(段落0011〜0018、図2)
ところで、前記のセミオートマチックトランスミッションでは、シフトレバーが単なる電気スイッチであることに起因して、次のような不具合が生じることがあった。
例えば、運転者がマニュアルシフトモードですばやくシフトレバーを操作すると、アップシフトやダウンシフトの変速開始指令を受けた変速制御装置は、エンジンの出力制御(トルク低下制御)や、クラッチの解放制御、トランスミッションギヤのセレクトおよびシフト制御、エンジンの出力制御(回転速度制御)、クラッチの再係合制御等からなる変速プロセスを順次実行する。ところが、運転者は、マニュアルシフトゲート内でシフトレバーのアップシフト側あるいはダウンシフト側への操作を完了すると、自己のアクセル操作やクラッチ操作が不要であることもあって、トランスミッション内での変速も完了したと思い込むことが多い。そのため、運転者はシフトレバーをダウンシフト側へ操作した直後に急加速をすべくアクセルペダルを踏み込むことがあるが、この際にトランスミッションが変速過程にあれば、当然のことながら加速は実行されない(無視される)。これにより、セミオートマチックトランスミッションでは、実際には変速プロセスがごく短時間で終了しているにも拘わらず、変速に時間が掛かる等の不満を感じることがあった。そして、このような不満は、感覚的かつ微妙なものであるため、特許文献3等に記載された操作反力を切り換える技術思想では到底解消することができなかった。
また、運転者は、変速の意思を持っていないにも拘わらず、姿勢の変化等により不用意にシフトレバーを操作(ミスシフト)し、変速制御装置に対して変速信号を出力してしまうことがある。この場合、変速制御装置が一連の変速プロセスを開始し、運転者の意図しない変速が実行されるため、運転者は、シフトレバーを逆方向に操作して元の変速段に戻すことになる。このような操作は、各コンポーネント(エンジンやトランスミッション、クラッチ等)に不要な負担を強いることになると共に、イレギュラな操作であるために運転者の操作を煩雑にさせる虞もあった。マニュアルシフトモードでのこの種のミスシフトは、運転者が意図しない操作ではあるものの、それ自体は通常時の変速操作と同一であるため、特許文献4等の技術思想では防ぐことができなかった。
本発明は、このような背景に鑑みてなされたもので、操作フィーリングの向上やミスシフトの防止等を図ったシフトレバー装置を提供することを目的とする。
請求項1の発明に係るシフトレバー装置は、機械式有段トランスミッションの変速アクチュエータを制御する変速制御手段に変速指令信号を出力するシフトレバー装置であって、運転者にマニュアルシフトゲート内でアップシフト位置とニュートラル位置とダウンシフト位置との間で操作され、ニュートラル位置から信号出力ストローク操作されることをもって前記変速制御手段へのアップシフト信号とダウンシフト信号との出力に供されるシフトレバーと、前記マニュアルシフトゲート内の前記シフトレバーに操作反力を付与する操作反力付与手段と、前記マニュアルシフトゲート内での前記シフトレバーの位置を検出する位置検出手段と、前記機械式有段トランスミッションの作動状態を検出する作動状態検出手段と、前記位置検出手段の検出結果と前記作動状態検出手段の検出結果とに基づき、前記操作反力付与手段による前記シフトレバーへの操作反力を設定する反力設定手段とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、例えば、シフトレバーの操作ストローク等に応じて操作反力を適宜増減させることで、シフトレバー操作時における節度感を実現できると共に、運転者に変速状態を的確に知らせること等が可能となる。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載されたシフトレバー装置において、前記シフトレバーの操作速度を検出する操作速度検出手段を更に備え、前記反力設定手段は、前記操作速度検出手段の検出結果に応じて前記操作反力の設定を行うことを特徴とする。
この構成によれば、例えば、スポーツ走行時に運転者が積極的にシフト操作を行う意図を持っていた場合等に、変速プロセスの進行に応じて操作反力を適宜増減させることで、運転者のシフトレバーの操作感と変速機の状態とを一致させることができる。
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載されたシフトレバー装置において、前記反力設定手段は、前記シフトレバーの同一操作ストロークに対して第1の操作反力と当該第1の操作反力より大きい第2の操作反力とを設定でき、前記マニュアルシフトゲート内で前記シフトレバーが前記ニュートラル位置側から第1の所定ストロークを超えて操作された場合には当該第2の操作反力を設定することを特徴とする。
この構成によれば、例えば、運転者がすばやくシフトレバーを操作しようとしても、変速が略完了するまで大きな操作反力をシフトレバーに作用させることで、シフトレバーによるシフト操作の完了時点とトランスミッション内での変速の完了時点とが同一となる。
また、請求項4の発明は、請求項3に記載されたシフトレバー装置において、前記反力設定手段は、前記変速制御手段による変速プロセスが第1の所定段階に達した場合、前記第1の操作反力を設定することを特徴とする。
この構成によれば、例えば、運転者は変速プロセスが略終了したことをシフトレバーの操作反力から認識し、加速等を開始すべくアクセルペダルを踏みこむ。
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたシフトレバー装置において、前記シフトレバーが前記ニュートラル位置から前記信号出力ストローク以上操作された後に当該信号出力ストロークより小さい第2の所定ストロークまで戻され、かつ、前記変速プロセスが第2の所定段階に達していない場合、前記変速制御手段に変速中止指令信号を出力することを特徴とする。
この構成によれば、例えば、運転者が不用意に信号出力ストロークまでシフトレバーを操作した後にすぐにニュートラル方向に戻すと、変速中止指令信号を受けた変速制御手段がクラッチの再係合等を行って現ギヤ段が維持される。
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載されたシフトレバー装置において、前記シフトレバーが前記ニュートラル位置から前記信号出力ストローク以上操作された後に当該信号出力ストローク以上の第3の所定ストローク以下のストロークに所定時間留まっていた場合、前記変速制御手段に変速中止指令信号を出力することを特徴とする。
この構成によれば、例えば、運転者が無意識にシフトレバーを信号出力ストロークまでシフトレバーを操作しても、アップシフト位置やダウンシフト位置へのシフトレバーの操作を行わなかった場合、変速中止指令信号を受けた変速制御手段がクラッチの再係合等を行って現ギヤ段が維持される。
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載されたシフトレバー装置において、前記シフトレバーを備えた移動体の移動状態を判定する移動状態判定手段を更に備え、前記反力設定手段は、当該移動状態判定手段の判定結果に応じて前記操作反力の設定を行うことを特徴とする。
この構成によれば、移動体の走行状態に応じてシフトレバーの操作力を増減するため、運転者に運転状況に応じた操作を促すことができる。
このようなシフトレバー装置によれば、シフトレバーにフィードバック機能を与えることにより運転者に変速状態を認識させ、シフトレバーによるシフト操作の完了時点とトランスミッション内での変速の完了時点とが異なることによる不都合や違和感を解消させることができる他、シフトレバーの操作状態を監視することにより運転者の変速意思を確認し、意図しない変速を防止することができる。
以下、本発明をFF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式の四輪自動車に適用した実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、実施形態に係る自動車の前部を示す平面図であり、図2は制御に関わる機器のブロック構成図である。
≪第1実施形態≫
図1に示すように、自動車1の前部には燃料噴射式4サイクルガソリン型のエンジン2が横置きに搭載されており、エンジン2の出力側(図1中、上方)には単式乾板型のクラッチ3を介して機械式多段型のトランスミッション4が一体的に結合されている。また、自動車1の車室内には、ステアリングホイール5およびシフトレバー装置6の他、アクセルペダル71やブレーキペダル81、クラッチペダル91等が配設されている。第1実施形態の場合、エンジン2およびクラッチ3、トランスミッション4の駆動方式としては、運転者がシフトレバー61や各ペダル71,81,91等を操作すると、これらの操作量や運転状態等に基づいて電気的な駆動が行われる、いわゆるDBW(Drive By Wire)が採用されている。
図2に示すように、エンジン2は、スロットルバルブや燃料噴射弁等からなるエンジン制御アクチュエータ21を備えており、このエンジン制御アクチュエータ21を介してエンジンコントロールユニット22に駆動制御される。また、クラッチ3がクラッチアクチュエータ31を備える一方、トランスミッション4は変速アクチュエータ41を備えており、クラッチ3とトランスミッション4とは、これらアクチュエータ31,41を介してTCU(Transmission Control Unit)42に駆動制御される。尚、トランスミッション4には車速センサ43とトランスミッション回転速度センサ44とが付設されており、これらセンサ43,44の検出値がTCU42に入力される。
第1実施形態の場合、クラッチアクチュエータ31および変速アクチュエータ41は、電動油圧ポンプやリリーフバルブ、アキュムレータ等から構成された油圧パワーユニット32の圧油で作動する油圧式である。クラッチアクチュエータ31は、圧油を流量制御弁で制御し、目標ストロークとストロークセンサの検出値との偏差に基づくフィードバック制御を行う。また、変速アクチュエータ41は、1,3,5速段のシンクロ制御を行うプレッシャバルブと、2,4,6速段およびリバース段のシンクロ制御を行うプレッシャバルブとを備え、これらプレッシャバルブを電流フィードバック制御することによりシフト制御を行う。また、変速アクチュエータ41は、1,2速段に対応したN1ポジション、3,4速段に対応したN2ポジション、5,6速段に対応したN3ポジション、リバース段に対応したN4ポジションを2個のON/OFFバルブを開閉することにより切り換える。尚、第1実施形態ではクラッチアクチュエータ31および変速アクチュエータ41を油圧駆動式としたが、電動モータや電磁ソレノイド等からなる電動式としてもよい。
図2に示すように、ステアリングホイール5には舵角センサ51の他、アップシフトスイッチ52およびダウンシフトスイッチ53が付設されており、これらの出力信号が統合ECU11に入力される。統合ECU11は、自動車1の全体制御を行う制御装置であり、CAN(Controller Area Network)12を介して、前記のエンジンコントロールユニット22やクルーズコントロールユニット13,VSA(Vehicle Stability Assist:車両挙動安定化制御システム)14,ナビゲーションシステム15,電動パワーステアリングシステム16等と相互に通信を行う。尚、クルーズコントロールユニット13は、エンジンコントロールユニット22とも直接的に通信を行う。
図2に示すように、シフトレバー装置6は、運転者に操作されるシフトレバー61と、シフトレバー61のマニュアルシフトゲートM(図3,図4参照)内での位置を検出するリニアポジションセンサ62と、操作反力付与手段である反力アクチュエータ63と、CLU(コントロールレバーECU)64とを備えている。図3に示すように、第1実施形態のシフトパターンは、運転者から見て、中央にドライブレンジDが配置され、ドライブレンジDの左右にニュートラルNとマニュアルシフトゲートMとが配置され、ニュートラルレンジNの前方にリバースレンジRが配置されている。マニュアルシフトゲートMでは、前端がアップシフト位置UPであり、後端がダウンシフト位置DPであり、中央(中立)がニュートラル位置NPである。シフトレバー61の位置が図2のリニアポジションセンサ62と図示しないポジションセンサとにより検出されてCLU64に入力される一方、CLU64からの駆動信号により反力アクチュエータ63が駆動制御される。CLU64と統合ECU11とは、相互に通信を行うべく電気的に接続されている。
図4に示すように、シフトレバー61にはその下部右端に連結突起65が突設される一方、反力アクチュエータ63は連結凹部66を備えたラック67や電動モータ68、ピニオン69等から構成されている。そして、運転者がドライブレンジDからマニュアルシフトゲートMのニュートラル位置NPにシフトレバー61を入れると、連結突起65がラック67の連結凹部66に嵌入してシフトレバー61とラック67とが連結され、ピニオン69およびラック67を介して電動モータ68の駆動力がシフトレバー61に操作反力として作用できるようになる。
図2に示すように、アクセルペダルユニット7は、運転者に踏み込まれるアクセルペダル71と、アクセルペダル71を戻り側に付勢するコイルばね72と、アクセルペダル71に踏込抵抗等を与える電動アクチュエータ73と、アクセルペダル71の踏込量を検出する回転センサ74とから構成されている。アクセルペダルユニット7の電動アクチュエータ73と回転センサ74とは、アクセルペダルコントロールユニット75に接続されており、アクセルペダル71の踏込抵抗がアクセルペダルコントロールユニット75により制御される一方、アクセルペダルコントロールユニット75にはアクセルペダル71の踏込量がデジタル信号として入力される。アクセルペダルコントロールユニット75と統合ECU11とは、相互に通信を行うべく電気的に接続されている。図2中の符号76で示すストッパは、アクセルペダル71の踏み込み限度を規制する。
図2に示すように、ブレーキペダルユニット8は、運転者に踏み込まれるブレーキペダル81と、ブレーキペダル81を戻り側に付勢するコイルばね82と、ブレーキペダル81に踏込抵抗等を与える電動アクチュエータ83と、ブレーキペダル81の踏込量を検出する回転センサ84とから構成されている。ブレーキペダルユニット8の電動アクチュエータ83と回転センサ84とは、ブレーキペダルコントロールユニット85に接続されており、ブレーキペダル81の踏込抵抗がブレーキペダルコントロールユニット85に制御される一方、ブレーキペダルコントロールユニット85にはブレーキペダル81の踏込量がデジタル信号として入力される。ブレーキペダルコントロールユニット85と統合ECU11とは、相互に通信を行うべく電気的に接続されている。図2中の符号86で示すストッパは、ブレーキペダル81の踏み込み限度を規制する。
図2に示すように、クラッチペダルユニット9は、運転者に踏み込まれるクラッチペダル91と、クラッチペダル91を戻り側に付勢するコイルばね92と、クラッチペダル91に踏込抵抗等を与える電動アクチュエータ93と、クラッチペダル91の踏込量を検出する回転センサ94とから構成されている。クラッチペダルユニット9の電動アクチュエータ93と回転センサ94とは、クラッチペダルコントロールユニット95に接続されており、クラッチペダル91の踏込抵抗がクラッチペダルコントロールユニット95に制御される一方、クラッチペダルコントロールユニット95にはクラッチペダル91の踏込量がデジタル信号として入力される。クラッチペダルコントロールユニット95と統合ECU11とは、相互に通信を行うべく電気的に接続されている。図2中の符号96で示すストッパは、クラッチペダル91の踏み込み限度を規制する。また、符号97は、コンソールやインスツルメントパネル等に設けられ、運転者が「クラッチペダルモード」を選択する際に操作されるクラッチスイッチを示している。
次に、第1実施形態でのクラッチペダル制御やシフトレバー制御等について述べる。
〔クラッチペダル制御〕
本実施形態の場合、シフトレバー61がドライブレンジDに位置するDモードやマニュアルシフトゲートMに位置するMモードでは、統合ECU11がTCU42およびエンジンコントロールユニット22を所定の変速プロセスをもって駆動制御し、トランスミッション4のギヤ段を自動的に切り換える。しかしながら、運転者がマニュアルトランスミッションと同様にクラッチワークを行いたいと希望した場合、クラッチペダル91の操作によりクラッチ9が断続されるクラッチペダルモードを選択することができる。
クラッチペダルモードは、クラッチスイッチ97をONにすることにより選択できる。クラッチペダルモードを選択した場合、エンジン2の始動は以下のように行われる。一般的なマニュアルトランスミッションの場合には、トランスミッション4がニュートラルで、かつクラッチが完全に解放されていないと、急発進防止回路によりエンジン2の始動が行えない。そして、エンジン2の始動は、運転者がイグニッションキー(図示せず)を操作することにより、エンジンコントロールユニット22がセルモータの制御を行って実行される。第1実施形態のクラッチペダルモードでは、シフトレバー61がNレンジ(ニュートラル)で、ブレーキペダル81が踏まれ、クラッチ3が完全解放していることを統合ECU11が確認した場合、エンジンコントロールユニット22にエンジン始動許可が通知され、はじめてエンジン2が始動されるようになる。
しかしながら、Dモードで運転していてクラッチペダルモードを選択した運転者は、直前までクラッチ操作なしで運転していたので、クラッチペダル91を踏むという意識の切り換えがすぐにはできず、クラッチペダル91を踏まずにエンジン2の始動操作を行う場合がある。そのような場合には、統合ECU11から指令を受けたクラッチペダルコントロールユニット95は、クラッチペダル91を軽振動させることで運転者に注意を促す。この際、警告音や警告灯点灯を併用してもかまわない。そして、クラッチペダル91が所定量以上踏み込まれたら、クラッチペダル91の軽振動や警告音、警告灯点灯を中止する。第1実施形態では、このようにすることで、交差点等で緊急に車両を移動する必要のある状況において、運転者にクラッチペダル91の踏み込みを効果的に促すことが可能となった。
一方、クラッチペダルモードの通常走行時において、クラッチペダル91が「遊び」の範囲を超えて踏み込まれ、その踏込ストロークが所定量以下の状態が所定時間継続した場合、統合ECU11から指令を受けたクラッチペダルコントロールユニット95は、「足載せ」と判断してクラッチペダルを振動させて運転者に注意を促す。この際、警告音や警告灯点灯を併用してもかまわない。特に、クルーズコントロール中に本制御を実施することにより、「足載せ」によるクルーズコントロールの不要な解除が防止される。従来のように、所定ストローク以上クラッチペダル91が踏み込まれた際にクルーズコントロールを解除していたものでは、「足載せ」という不注意により運転者の意思に背いた状況を作り出していたが、運転者に認識させることによりクラッチペダル91への「足載せ」を止めさせ、クルーズコントロールを継続させることが可能となる。
また一方、クラッチペダルモードでは、通常走行からブレーキペダル81を踏み込んで減速していった場合、エンジン回転速度がアイドル回転速度付近まで低下した時点でクラッチペダル91を踏み込まないとエンジン2がストールする。そこで、統合ECU11は、ブレーキペダル情報やエンジン回転速度情報、車速情報に基づき、減速時に所定車速かつ所定エンジン回転速度に達したらクラッチペダルコントロールユニット95に指令を出力し、クラッチペダル91を軽振動させて運転者にクラッチペダル91を踏み込むように注意を促す。この際、警告音や警告灯点灯を併用してもかまわない。また、注意を促したにも拘わらず運転者がクラッチペダル91を踏み込まずにいた場合、エンジンストールを回避すべく所定回転速度に達したらクラッチ3を解放する。そして、クラッチペダルコントロールユニット95は、クラッチ3の解放が完了したら、クラッチペダル91の軽振動や警告音、警告灯点灯を中止する。また、統合ECU11は、通常のブレーキ操作以外に、パニックブレーキ時にも同様の制御を行う。この一連の制御によって、運転者にクラッチペダルモードで運転していることを再認識させることができる。特に、Dレンジ走行に慣れている運転者は、パニックブレーキの際にクラッチペダル91を踏み忘れるケースが多いため、不要なエンジンストールを効果的に回避することができる。
〔シフトレバー制御〕
統合ECU11は、舵角センサ51からの舵角情報により車両が旋回していることを認識した場合、CAN12を介してTCU42に変速禁止信号を送信する。また、旋回中に運転者がシフトレバー61を操作して変速を行おうとした場合には、CLU64がシフト操作荷重を通常操作荷重より大きくして変速できないことを運転者に知らしめる。この際、警告音や警告灯点灯を併用してもかまわない。同時に、運転者がステアリングホイール5に設置されたアップシフトスイッチ52やダウンシフトスイッチ53を操作しても、変速禁止信号がCAN12経由でTCU42に送信されているため、旋回中の変速を禁止できる。更に、VSA14がアンチロックブレーキ制御やトラクション制御を行っている場合、統合ECU11は、VSA14から送信される情報に基づいてCLU64に指令を出力し、シフトレバー61の操作荷重を大きくさせて変速できないことを運転者に知らしめる。このように、走行状態や運転状態を把握しつつマン・マシン・インタフェースを制御することによって、車両を危険な状況に陥らせなくすることが可能となる。
Mモードにおけるインギヤ操作において、統合ECU11は、運転者が発進可能変速段以外の変速段へシフトレバー61を入れようとした場合、CLU64に指令を出力し、操作荷重を大きくしてシフトができないようにブロックする。また、第1実施形態と異なってHパターンを備える場合には、統合ECU11は、シフトレバー61が3,4,5,6段の位置にきても、操作反力を作用させることにより運転者が手を離すとシフトレバー61をニュートラルに戻すようにする。両ケースとも、警告音や警告灯点灯を併用してもかまわない。また、前進走行中で車速が所定値以上である状況で、運転者がシフトレバー61をリバースレンジへシフトしようとしてもブロックする機能を有する。これはシフトロックソレノイドを備える必要がなくなり、コストメリットがある。
〔アクセルペダル制御〕
運転者がリバース走行を行う際、クリープ状態でステアリングホイール5を回した場合や、据え切りの場合、縁石にタイヤが乗り上げた場合には、車速が極端に低下したり、あるいは殆ど停止することがある。この際、アクセルペダル71を踏み込むために必要な踏力が小さいと、運転者がアクセルペダル71を強く踏み込みがちとなる。そのため、統合ECU11は、このような場合にアクセルペダルコントロールユニット75に指令を出力し、アクセルペダル71の踏み込み抵抗を少し高めさせて、運転者にゆっくりとアクセルペダル71を踏み込ませ、安心してアクセルコントロールを行わせるようにする。
〔ブレーキペダル制御〕
ナビゲーションシステム15からの情報によって交差点に接近したことを認識したり、レーダ等で測定した自車の前を走行している車両との距離が所定値以内になったことを認識すると、統合ECU11は、ブレーキペダルコントロールユニット85に指令を出力し、ブレーキペダル81の「遊び」分の遅れを無くさせて運転者が直ぐに制動できるようにする。また、車間距離が更に小さくなった場合には、ブレーキペダル81の踏み込みがなくても所定の制動量をもって制動する操作を行い、パニックブレーキ等を必要とする事態を避けるようにする。
<Mモード変速制御>
次に、第1実施形態におけるMモードでの変速制御について述べる。
第1実施形態の場合、CLU64は、自動車1が運転を開始すると、通常操作反力マップに基づき、シフトレバー61に所定の操作反力を与える。これにより、ニュートラル位置NPの前後には操作反力の比較的大きい部位ができ、これが運転者がアップシフト位置UPやダウンシフト位置DPにシフトレバー61を操作する際のディテントとなる。一方、CLU64は、シフトレバー61がニュートラル位置NPからアップシフト側あるいはダウンシフト側に第1の所定ストローク(第1実施形態の場合、信号出力ストロークと同一)以上操作されると、通常の操作反力より大きい操作反力をシフトレバー61に作用させる。これにより、比較的強く操作しなければシフトレバー61がニュートラル側に戻ってしまうため、運転者は、変速途中にあることを認識することになる。そして、TCU42による変速プロセスが略終了すると、CLU64は、シフトレバー61に作用させる操作反力を通常の値に戻す。これにより、シフトレバー61が急に軽くなるため、運転者は、変速が終了したことを認識でき、スムーズに加速操作等に移行することができる。
一方、シフトレバー61がアップシフト側あるいはダウンシフト側に信号出力ストローク以上操作された後にニュートラル側に戻った場合、TCU42は一旦変速プロセスを開始するが、CLU64は、変速プロセスが初期の段階であれば、TCU42に向けて変速中止指令を出力して変速を中止させる。これにより、運転者が不用意にシフトレバー61を操作することで変速開始指令が出力されても、無意味な変速が実行されなくなり、元の変速段に戻す操作を運転者が行う必要がなくなる。
以下、図5,図6のフローチャートに基づいて、第1実施形態におけるMモード変速制御の手順を詳細に説明する。尚、第1実施形態においては、制御用のフラグの初期値は全て0とする。
運転者がシフトレバー61をマニュアルシフトゲートMに入れると、CLU64は、図5,図6に示すMモード変速制御を所定の制御インターバルで繰り返し実行する。CLU64は、Mモード変速制御を開始すると、先ず、リニアポジションセンサ62の検出値に基づき、シフトレバー61のニュートラル位置NPからのストロークSslが第1の所定ストロークを兼ねた信号出力ストロークSαh以上であるか否かを判定する(S1)。そして、この判定がYesであった場合には、アップシフトフラグFupを1とし(S2)、後記のステップS9に移行する。尚、第1実施形態の場合、信号出力ストロークSαhは、ニュートラル位置からアップシフト位置UP側およびダウンシフト位置DP側にそれぞれ10mmとなっており、前記のように第1の所定ストロークと同一であるが、第1の所定ストロークと別に設けるようにしてもよい。
ステップS1の判定がNoであった場合、CLU64は次に、シフトレバー61のニュートラル位置NPからのストロークSslが第1実施形態における第2の所定ストロークである信号解除ストロークSαlより小さいか否かを判定する(S3)。そして、この判定がYesであった場合には、アップシフトフラグFupを0とし(S4)、後記のステップS9に移行する。尚、第1実施形態の場合、信号解除ストロークSαlは、ニュートラル位置からアップシフト位置UP側およびダウンシフト位置DP側にそれぞれ5mmとなっている。
ステップS3の判定がNoであった場合、CLU64は、シフトレバー61のニュートラル位置NPからのストロークSslが所定の信号出力ストローク−Sαh以下であるか否かを判定する(S5)。そして、この判定がYesであった場合には、ダウンシフトフラグFdnを1とし(S6)、後記のステップS9に移行する。
ステップS5の判定がNoであった場合、CLU64は次に、シフトレバー61のニュートラル位置NPからのストロークSslが所定のダウンシフト信号解除ストローク−Sαlより小さいか否かを判定する(S7)。そして、この判定がYesであった場合(すなわち、シフトレバー61がニュートラル位置NPの近傍にある場合)には、ダウンシフトフラグFdnを0とし(S8)、後記のステップS9に移行する。また、ステップS7の判定がNoの場合には、そのままステップS9に移行する。
次に、CLU64は、初期値0のシフト開始フラグFssが1であるか否かを判定し(S9)、初回は当然にこの判定がNoとなるため、ステップS10に移行してアップシフトフラグFupまたはダウンシフトフラグFdnが1であるか否かを判定する。
〔変速開始〕
シフトレバー61が信号出力ストロークSαh以上操作され、ステップS10の判定がYesとなった場合、CLU64は、TCU42にCAN12経由で変速開始指令を出力する(S11)。
TCU42は、CAN12経由で変速開始指令を受けると、図7に示す変速プロセスを実行する。すなわち、エンジントルクダウン制御であるステータス01では、クラッチ3の解放時におけるエンジン2の吹き上がりを防止すべく、エンジンコントロールユニット22に対しエンジントルクを徐々に低下させる指令をCAN12経由で出力する。また、クラッチ解放制御であるステータス10では、クラッチペダルコントロールユニット95に対しクラッチ3を完全解放させる指令をCAN12経由で出力する。また、回転を合わせるNE制御(ブリッピング制御)であるステータス20では、ダウンシフト時において、トランスミッション回転速度センサ44から入力されたトランスミッション回転速度Nmに基づき、次段でのトランスミッション回転速度Nmに対応したエンジン回転速度Neとなるように、エンジンコントロールユニット22に対しエンジン回転速度Neを上昇させる指令をCAN12経由で出力する。
次に、TCU42は、シフトセレクト制御に移行し、先ずギヤ抜き処理であるステータス30では、現在のシフト段のギヤを抜く(係合を解く)指令を変速アクチュエータ41に出力する。また、TCU42は、セレクト処理であるステータス40(第1実施形態における第2の所定段階)では、要求された目標段に対応するセレクト位置を選択する指令を変速アクチュエータ41に出力する。また、TCU42は、ボーク前処理であるステータス50では、ボーク位置(シンクロナイザリングが摩擦係合を開始する位置)までシフトを進行させる指令を変速アクチュエータ41に出力する。また、TCU42は、ボーク動作処理であるステータス60では、トランスミッション回転速度Nmを同期させるべく、シフトを更に進行させる指令を変速アクチュエータ41に出力する。また、TCU42は、掻き分け処理であるステータス99(第1実施形態における第1の所定段階)では、同期完了後にインギヤが完了する位置までシフトを更に進行させる指令を変速アクチュエータ41に出力する。尚、ステータス00は、変速処理が行われていない状態を示す。
ステップS11で変速開始指令を出力したCLU64は、次に、図8のフローチャートに示す操作反力増大制御を開始した後(S12)、シフト開始フラグFssを1にし(S13)、CAN12経由でTCU42から変速ステータス(以下、STATUSと記す)を取得する(S14)。
〔操作反力増大制御〕
図8の操作反力増大制御を開始すると、CLU64は先ず、シフトレバー61のニュートラル位置NPからのストロークSslを読み込み(S51)、図9の大操作反力マップからストロークSslに対応した大操作反力値Rupを検索する(S52)。次に、CLU64は、図示しない操作反力値−電流マップから反力アクチュエータ63の電動モータ68に供給する目標電流値Itrgを検索し(S53)、電動モータ68の現在の実電流値Iactを読み込んだ後(S54)、実電流値Iactが目標電流値Itrgに一致するようにPI制御を行う(S55)。図10は、第1実施形態における電流値と操作反力との関係を示す図であり、電流値の増加に略比例して操作反力が増加することが判る。
図9に示すように、第1実施形態の大操作反力マップは、信号出力ストロークSαh以上のストローク領域で、大操作反力値Rupが一定かつ通常時のもの(二点鎖線で示す)に比べて大きな値をとっているため、操作反力増大制御にはシフトレバー61に通常時に比べて遥かに大きな操作反力が作用する。したがって、運転者は、変速する意思を明確に有していないとシフトレバー61を変速側に操作し続けることは難しく、手を緩めた場合にはシフトレバー61をニュートラル位置NP側に復帰させてしまうことになる。
図5に示すように、ステップS14でSTATUSを取得したCLU64は、次に、初期値0のシフト解除フラグFscが1であるか否かを判定し(S15)、初回は当然にこの判定がNoとなるため、ステップS16に移行してアップシフトフラグFupまたはダウンシフトフラグFdnが0であるか否かを判定する。
変速開始直後にはステップS16の判定が当然にNoとなるため、CLU64は、図6のステップS17でSTATUSが60(図7参照)以下であるか否かを判定する。変速プロセスが殆ど進行していない変速開始直後には、ステップS17の判定が当然にYesとなるため、CLU64は、ステップS18において、ストロークSslの絶対値が信号出力ストロークSαhと第3の所定ストロークである意思判定ストロークSβとの間にあるか否かを判定する。意思判定ストロークSβは、信号出力ストロークSαhを若干超えた値、または、信号出力ストロークSαhと略同一の値に設定されており、通常は運転者がシフトレバー61を操作する際に一瞬通過する位置である。
通常、変速開始直後にはステップS18の判定がYesとなるため、CLU64は、ステップS19に移行して初期値0のタイマフラグFtが1であるか否かを判定する。そして、ステップS19の判定がNoとなるため、CLU64は、タイマtを起動した後(S20)、タイマフラグFtを1とする(S21)。
次に、CLU64は、ステップS22でSTATUSが00であるか否かを判定する。変速プロセスの開始後にはステップS22の判定がNoとなるため、CLU64は、ステップS23でSTATUSが99であるか否か(変速プロセスが第1の所定段階に達しているか否か)を更に判定する。
変速開始直後にはステップS23の判定もNoとなるため、CLU64は、ステップS24で初期値0の通常反力フラグFnomalが1であるか否かを判定する。変速開始直後にはステップS24の判定がNoとなるため、CLU64は、ステップS1に戻って処理を繰り返す。
2回目以降は、ステップS9の判定がYesとなるため(図5参照)、ステップS10〜ステップS13の処理は繰り返されない。また、ステップS18の判定がYesである場合(ストロークSslの絶対値が信号出力ストロークSαhと意思判定ストロークSβとの間に留まっていた場合)には、2回目以降はステップS19の判定がYesとなるため、CLU64は、ステップS25でタイマtの値が限界値tmaxに達したか否かを判定する。
一方、ステップS18の判定がNoである場合(シフトレバー61が意思判定ストロークSβを超えていた場合)には、CLU64は、ステップS26でタイマフラグFtが1であるか否かを判定する。2回目におけるステップS26の判定は当然にYesとなるため、CLU64は、ステップS27でタイマtをリセットし、ステップS28でタイマフラグFtを0とする。また、3回目以降は、ステップS26の判定がNoとなるため、ステップS27,ステップS28の処理は繰り返されない。
〔同期完了〕
TCU42による変速プロセスが進行し、トランスミッション回転速度Nmが同期すると(いわゆる掻き分け処理に移行すると)、前記のようにSTATUSが99となる。すると、ステップS23の判定がYesとなり、CLU64は、ステップS29で初期値0の漸減制御フラグFdownが1であるか否かを判定する。変速開始直後にはステップS29の判定がNoとなるため、CLU64は、ステップS30で図11のフローチャートに示す操作反力漸減制御を開始した後、ステップS31で漸減制御フラグFdownを1にする。
〔操作反力漸減制御〕
図11の操作反力漸減制御を開始すると、CLU64は先ず、シフトレバー61のニュートラル位置NPからのストロークSslを読み込んだ後(S61)、初期値0のエンドプロセスフラグFepが1であるか否かを判定する(S62)。1回目におけるステップS62の判定はNoとなるため、CLU64は、ステップS63に移行してエンドプロセスフラグFepを1とすると共に目標操作反力値Rtrgをリセットする。
次に、CLU64は、図9の大操作反力マップからストロークSslに対応した大操作反力値Rupを検索し(S64)、図12の通常操作反力マップからストロークSslに対応した通常操作反力値Rnを検索する(S65)。次に、CLU64は、大操作反力値Rupと通常操作反力値Rnとの差を所定の整数N1で除して漸減値Rdeltaを求めた後(S66)、大操作反力値Rupから漸減値Rdeltaを減じて目標操作反力値Rtrgを得る(S67)。
図12に示すように、通常操作反力マップにおける通常操作反力値Rnは、ニュートラル位置NPからストロークが前後1/3程度までの範囲で比較的大きな値をとり、その後はストロークエンドまで比較的小さな値となり、ストロークエンドで突き当たり感を出すべく急増する。したがって、運転者は、シフトレバー61を操作する際、ニュートラル位置NP近傍でディテントを感じた後、アップシフト位置UPやダウンシフト位置DPまでは比較的軽い操作感を得ることになる。尚、第1実施形態の場合、通常操作反力マップにおける単調増加側の通常操作反力値Rnは、単調減少側の通常操作反力値Rnより大きく設定されている。
次に、CLU64は、目標操作反力値Rtrgが通常操作反力値Rnより小さいか否かを判定する(S68)。制御開始当初はこの判定がNoとなるため、CLU64は、図示しない操作反力値−電流マップから反力アクチュエータ63の電動モータ68に供給する目標電流値Itrgを検索し(S69)、電動モータ68の現在の実電流値Iactを読み込んだ後(S70)、実電流値Iactが目標電流値Itrgに一致するようにPI制御を行う(S71)。これにより、シフトレバー61の操作反力は若干低下する。
2回目以降は、ステップS62の判定がYesとなるため、CLU64は、ステップS72で目標操作反力値Rtrgから漸減値Rdeltaを減じた後、S68〜S71の処理を繰り返す。これにより、シフトレバー61の操作反力は徐々に減少し、次第に通常操作反力値Rnに近づくことになる。
目標操作反力値Rtrgが通常操作反力値Rnより小さくなり、ステップS68の判定がYesになると、CLU64は、ステップS73で通常操作反力値Rnを目標操作反力値Rtrgとする。これにより、シフトレバー61の操作反力は小さくなり、運転者は、変速プロセスが略終了したことを認識できるのである。
〔変速完了〕
TCU42による変速プロセスが更に進行し、掻き分け処理が終了してインギヤ状態になると前記のようにSTATUSが00となるため、ステップS22の判定がYesとなり、CLU64は、ステップS32で通常反力フラグFnomalを1とする。すると、今度はステップS24の判定がYesとなるため、CLU64は、ステップS33で初期値0の通常制御フラグFnが1であるか否かを判定する。この判定は当然にNoとなるため、CLU64は、ステップS34で図13のフローチャートに示す通常操作反力制御を開始した後、ステップS35で通常制御フラグFnを1にする。
〔通常操作反力制御〕
図13の通常操作反力制御を開始すると、CLU64は先ず、シフトレバー61のニュートラル位置NPからのストロークSslを読み込んだ後(S81)、ステップS82でストロークSslの絶対値から前回絶対値Szを減じて差Dslを求め、ステップS83でストロークSslの絶対値を前回絶対値Szとする。
次に、CLU64は、ステップS84で差Dslが0以上であるか否かを判定し、この判定がYesであれば、図12の通常操作反力マップからストロークSslに対応する単調増加側の通常操作反力値Rnを検索する(S85)。また、ステップS84の判定がNoであれば、ストロークSslに対応する単調減少側の通常操作反力値Rnを検索する(S86)。前記したように、通常操作反力マップにおける単調増加側の通常操作反力値Rnは、単調減少側の通常操作反力値Rnより大きく設定されている。
通常操作反力値Rnの検索を終えると、CLU64は、図示しない操作反力値−電流マップから反力アクチュエータ63の電動モータ68に供給する目標電流値Itrgを検索し(S87)、電動モータ68の現在の実電流値Iactを読み込んだ後(S88)、実電流値Iactが目標電流値Itrgに一致するようにPI制御を行う(S89)。
〔変速中止1〕
シフトレバー61が誤って操作されても、シフトレバー61の操作ストロークSslが信号出力ストロークSαhまで達すると、TCU42には変速開始指令が出力される。この場合、変速の意図が無い運転者がシフトレバー61から手を離すと、シフトレバー61は操作反力によりニュートラル位置NPまで戻されるが、トランスミッション4の変速プロセスは既に開始されている。第1実施形態の場合、このようなミスシフトに起因する変速を防止すべく、所定の条件のもとに変速を中止させる。
シフトレバー61が信号解除ストロークSαl以下に位置している場合、図5に示すステップS16の判定がYesとなるため、CLU64は、ステップS36でシフト開始フラグFssが1であるか否か(現在、変速制御中であるか否か)を判定する。そして、この判定がYesであれば、シフトレバー61が一旦信号出力ストローク−Sαhまで操作された後に戻されたことになるため、CLU64は、ステップS37でSTATUSが40未満(セレクト処理が開始される第2の所定段階に達していないか否か)か否かを判定する。そして、この判定がNoであれば、CLU64は、ステップS17に移行して操作反力増大制御を続行する。これは、変速プロセスがある程度進行した段階(シフト段のギヤが完全に抜かれた段階)では、変速を中止させることが不可能であることによる。
ステップS37の判定がYesであった場合、CLU64は、先ずステップS38でTCU42にCAN12経由で変速中止指令を出力し、ステップS39で通常反力フラグFnomalを1とした後、ステップS40でシフト解除フラグFscを1とする。これにより、TCU42は、ギヤやクラッチ3の再係合等を行い、当初の変速段を維持する。尚、2回目以降はステップS15の判定がYesとなるため、ステップS16およびステップS36〜ステップS40の処理は繰り返されない。
ステップS39で通常反力フラグFnomalが1とされると、図6に示すステップS24の判定がYesとなり、CLU64は、前記の通常操作反力制御を行うことになる。
〔変速中止2〕
運転者がシフトレバー61を無意識に操作し、シフトレバー61の操作ストロークSslが信号出力ストロークSαhまで達してしまうことがある。この場合、運転者に変速の意図が無いにも拘わらず、TCU42には変速開始指令が出力されるが、シフトレバー61がニュートラル位置NP側に戻らないために前記の制御では変速プロセスが中止されない。第1実施形態の場合、このような無意識の操作に起因する変速を防止すべく、所定の条件のもとに変速を中止させる。
シフトレバー61が信号出力ストロークSαhと意思判定ストロークSβとの間に位置する場合、CLU64は、前記のように図6に示すステップS20でタイマtを起動する。そして、シフトレバー61がその位置に留まり続けると、タイマtは毎回加算されてゆき、遂には限界値tmaxに達してステップS25の判定がYesとなる。すると、CLU64は、ステップS41でTCU42にCAN12経由で変速中止指令を出力した後、ステップS42でタイマtをリセットし、ステップS43で通常反力フラグFnomalを1とする。
ステップS43で通常反力フラグFnomalが1とされると、ステップS24の判定がYesとなり、CLU64は、前記の通常操作反力制御を行うことになる。
≪第2実施形態≫
以下、図14の操作反力増大制御の手順を示すフローチャートを参照し、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は、その装置構成や制御の全体的な流れは前記の第1実施形態と同様であるが、シフトレバー61の操作速度が早い場合にのみ操作反力の増大制御を行う点が異なる。
図5のMモード変速制御において、シフトレバー61がニュートラル位置NPから信号出力ストロークSαh以上操作されてステップS10の判定がYesとなった場合、CLU64は、ステップS11でTCU42にCAN12経由で変速開始指令を出力する一方、ステップS12において図14のフローチャートに示す操作反力増大制御を開始する。
〔操作反力増大制御〕
図14の操作反力増大制御を開始すると、CLU64は先ず、シフトレバー61のニュートラル位置NPからのストロークSslを読み込んだ後(S91)、ステップS92でストロークSslの絶対値から前回絶対値Szを減じて差Dslを求め、ステップS93でストロークSslの絶対値を前回絶対値Szとする。
次に、CLU64は、ステップS94で差Dslが所定の判定閾値Dfより大きいか否かを判定する。ここで、差Dslは1制御インターバル(例えば、10ミリ秒)でのシフトレバー61の移動ストロークであるため、判定閾値Dfを適宜設定することにより、シフトレバー61の操作速度が一定値以上であることが判定できる。
運転者がシフトレバー61を素早く操作してステップS94の判定がYesとなった場合、CLU64は、図9の大操作反力マップからストロークSslに対応した大操作反力値Rupを検索した後(S95)、図示しない操作反力値−電流マップから反力アクチュエータ63の電動モータ68に供給する目標電流値Itrgを検索し(S96)、電動モータ68の現在の実電流値Iactを読み込んだ後(S97)、実電流値Iactが目標電流値Itrgに一致するようにPI制御を行う(S98)。
一方、ステップS94の判定がNoであった場合、CLU64は、ステップS99で通常反力フラグFnomalを1とする。前記のように、通常反力フラグFnomalが1とされると、図6に示すステップS24の判定がYesとなるため、CLU64は、前記の通常操作反力制御を行うことになる。尚、第2実施形態では、ステップS94の判定がNoであった場合、大操作反力値Rupに基づく反力アクチュエータ63の駆動制御が行われないため、図6のステップS23以降の処理(操作反力漸減制御)は当然に行われない。
このように、第2実施形態では、運転者が積極的にシフト操作を行うスポーツ走行時等には、第1実施形態と同様、シフトレバー61が信号出力ストロークSαh以上操作されると操作反力が増大される。しかし、運転者が穏やかにシフト操作を行う市街地走行時等には、シフトレバー61が信号出力ストロークSαh以上操作されても操作反力が増大されず、シフト操作力の急増に起因する不快感を運転者にもたせなくする。
以上述べたように、前記実施形態では、自動車の走行状態や運転状況に応じて、クラッチペダルや、ブレーキペダル、アクセルペダル、シフトレバー等の作動や出力信号を統合ECUにより管理するようにしたため、運転者に運転状況に応じた操作を促すこと等が可能となる。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限られるものではない。例えば、前記実施形態では、操作反力を増大させる起点となる第1の所定ストロークと、アップシフト信号やダウンシフト信号を出力するための信号出力ストロークとを一つにしたが、これらを独立して設けるようにしてもよい。また、前記実施形態は本発明をFF方式の四輪自動車に適用したものであるが、例えば、船舶や農耕車両、作業車等、他の移動体に適用してもよい。また、操作反力付与手段の具体的構造や自動車の全体的な機器構成を始め、制御の具体的手順等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
実施形態に係る自動車の前部を示す平面図である。 実施形態での制御に関わる機器のブロック構成図である。 実施形態のシフト装置におけるシフトパターンを示す図である。 実施形態での反力アクチュエータの構造を示す平面図である。 第1実施形態でのMモード変速制御の手順を示すフローチャートである。 第1実施形態でのMモード変速制御の手順を示すフローチャートである。 実施形態での変速プロセスを示すチャートである。 第1実施形態での操作反力増大制御の手順を示すフローチャートである。 実施形態での大操作反力マップである。 実施形態での電流値と操作反力との関係を示すグラフである。 第1実施形態での操作反力漸減制御の手順を示すフローチャートである。 実施形態での通常操作反力マップである。 第1実施形態での通常操作反力制御の手順を示すフローチャートである。 第2実施形態での操作反力増大制御の手順を示すフローチャートである。
符号の説明
4 トランスミッション
6 シフトレバー装置
41 変速アクチュエータ
42 TCU(変速制御手段)
61 シフトレバー
63 反力アクチュエータ
64 CLU(反力設定手段)
M マニュアルシフトゲート
UP アップシフト位置
NP ニュートラル位置
DP ダウンシフト位置
Sαh 信号出力ストローク(第1の所定ストローク)
Sαl 信号解除ストローク(第2の所定ストローク)
Sβ 意思判定ストローク(第3の所定ストローク)

Claims (7)

  1. 機械式有段トランスミッションの変速アクチュエータを制御する変速制御手段に変速指令信号を出力するシフトレバー装置であって、
    運転者にマニュアルシフトゲート内でアップシフト位置とニュートラル位置とダウンシフト位置との間で操作され、ニュートラル位置から信号出力ストローク操作されることをもって前記変速制御手段へのアップシフト信号とダウンシフト信号との出力に供されるシフトレバーと、
    前記マニュアルシフトゲート内の前記シフトレバーに操作反力を付与する操作反力付与手段と、
    前記マニュアルシフトゲート内での前記シフトレバーの位置を検出する位置検出手段と、
    前記機械式有段トランスミッションの作動状態を検出する作動状態検出手段と、
    前記位置検出手段の検出結果と前記作動状態検出手段の検出結果とに基づき、前記操作反力付与手段による前記シフトレバーへの操作反力を設定する反力設定手段と
    を備えたことを特徴とするシフトレバー装置。
  2. 前記シフトレバーの操作速度を検出する操作速度検出手段を更に備え、
    前記反力設定手段は、前記操作速度検出手段の検出結果に応じて前記操作反力の設定を行うことを特徴とする、請求項1記載のシフトレバー装置。
  3. 前記反力設定手段は、前記シフトレバーの同一操作ストロークに対して第1の操作反力と当該第1の操作反力より大きい第2の操作反力とを設定でき、前記マニュアルシフトゲート内で前記シフトレバーが前記ニュートラル位置側から第1の所定ストロークを超えて操作された場合には当該第2の操作反力を設定することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシフトレバー装置。
  4. 前記反力設定手段は、前記変速制御手段による変速プロセスが第1の所定段階に達した場合、前記第1の操作反力を設定することを特徴とする、請求項3に記載のシフトレバー装置。
  5. 前記シフトレバーが前記信号出力ストローク以上操作された後に当該信号出力ストロークより小さい第2の所定ストロークまで戻され、かつ、前記変速プロセスが第2の所定段階に達していない場合、前記変速制御手段に変速中止指令信号を出力することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシフトレバー装置。
  6. 前記シフトレバーが前記ニュートラル位置から前記信号出力ストローク以上操作された後に当該信号出力ストローク以上の第3の所定ストローク以下のストロークに所定時間留まっていた場合、前記変速制御手段に変速中止指令信号を出力することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシフトレバー装置。
  7. 前記シフトレバーを備えた移動体の移動状態を判定する移動状態判定手段を更に備え、
    前記反力設定手段は、当該移動状態判定手段の判定結果に応じて前記操作反力の設定を行うことを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシフトレバー装置。
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