JP2005037402A - 生体成分測定試薬 - Google Patents
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Abstract
【目的】本発明の課題は、次のような条件を満たす試薬用の抗菌剤を提案し、これを添加した新しい生体成分測定用試薬を提供する事である。
・試薬本来の反応に影響を与えない
・微生物の繁殖を効果的に抑制する
・製造工程で危険な化合物を生成しない
・環境衛生上の問題とならない
【構成】本発明の課題は、ミロキサシン、アミフロキサシン、およびロメフロキサシン他の特定のキノロン系の抗菌剤を利用する事によって解決される。
【効果】本発明は、免疫学的活性から酵素学的活性まで、幅広い成分に対して影響を与えることなく微生物の繁殖を効果的に防止する。
【選択図】なし
・試薬本来の反応に影響を与えない
・微生物の繁殖を効果的に抑制する
・製造工程で危険な化合物を生成しない
・環境衛生上の問題とならない
【構成】本発明の課題は、ミロキサシン、アミフロキサシン、およびロメフロキサシン他の特定のキノロン系の抗菌剤を利用する事によって解決される。
【効果】本発明は、免疫学的活性から酵素学的活性まで、幅広い成分に対して影響を与えることなく微生物の繁殖を効果的に防止する。
【選択図】なし
Description
本発明は、臨床検査などの分野に利用される生体成分測定用試薬に関するものである。生体成分測定用試薬は、分析に必要な酵素、抗原や抗体のような免疫学的活性成分、あるいはこれらの成分を含む血清蛋白のような蛋白質で構成されている。また各種の分析に必要な標準物質は、物質濃度を検定した血清や、血清に一定の濃度となるように各種の成分を添加したものによって構成される。
臨床検査などの分野で利用される試薬の多くは、抗体や酵素のような蛋白質、あるいは糖類やビタミンのような生物学的な成分を含んでいる。たとえば免疫学的な分析のための試薬には、抗原や抗体が含まれている。酵素標識を利用した場合には、酵素や、その基質となる化合物も含むことになる。また酵素学的な分析のための試薬であれば、酵素や酵素基質が試薬中に存在する。更に分析にあたっては、検量線の作成や分析精度の確認のために標準物質が必要となる。標準物質は分析対象となる化合物の含有量を検定した血清、あるいは一定量の分析対象物を血清に添加することによって構成されている。これらの生物学的成分は、微生物の栄養素として利用され、微生物の繁殖の原因となる。試薬における微生物の繁殖は、成分の分解によって試薬自身の品質を低下させるのみならず、分析環境に微生物の汚染を引き起こす原因となるため避けなければならない問題である。しかし生物学的な成分を高い濃度で含む試薬や標準物質を、微生物の繁殖から完全に保護することは容易ではない。
細菌や真菌の繁殖を抑制する化合物(以下抗菌剤と呼ぶ)は多く知られているが、これらを試薬に添加するには次のような注意が必要である。まず、その試薬に期待されている反応性を阻害しないように注意しなければならない。試薬は、それが免疫学的なものであれ、酵素学的なものであれ、なんらかの反応を利用して分析を行うためのものである。したがってこの反応を阻害するような抗菌剤は用いるべきではない。
たとえば、古くから抗菌剤として試薬に添加されていたアジ化物は、免疫学的な反応には影響を与えにくいが、使用濃度によっては酵素反応、特にペルオキシダーゼの活性に重大な影響を与えることが知られている。ペルオキシダーゼは、結合分析のための標識酵素や酸化酵素によって生成する過酸化水素の測定に広く利用されている酵素なので、その活性を阻害する抗菌剤は試薬に添加するものとして不都合がケースが多い。アジ化物は、この他にアスコルビン酸オキシダーゼに対しても阻害的に作用することが知られている。アスコルビン酸オキシダーゼは、ペルオキシダーゼによる過酸化水素の発色系において妨害物質となるアスコルビン酸を酸化除去する酵素として利用される酵素であり、この酵素に阻害的に作用する抗菌剤は組み合わせを避けるべきである。
アジ化物に代えて、各種の抗生物質を利用する試みもある。たとえばペニシリンG−ストレプトマイシン−ファンギゾンの混合溶液(以下PSFと省略する、和光純薬工業等からPenicillin-Streptomycin-Fungizone-Mixtureとして市販されている)が試薬用の抗菌剤として用いられた。しかしPSFの抗菌力は、たとえば血清をベースとした標準品のようにきわめて細菌の繁殖しやすい環境のもとでは、必ずしも十分に維持できない場合がある。また動物の血液に感染した状態で実験環境に持ちこまれることの多いマイコプラズマに対してPSFは抗菌力を持たない。更に本発明者らの知見によれば、PSFの存在下では一部の反応が影響を受けることが明らかとなった。具体的には、たとえば遊離サイロキシンの免疫学的な測定において、PSF共存下で測定値が上昇する場合の有ることが観察された。
このような問題点を避けるために、現在利用されている試薬用の抗菌剤は、試薬の用途にしたがって様々な化合物を使い分けているのが現状である。しかし非常に多様な成分で構成される幅広い用途の試薬に対して、それぞれに適した抗菌剤を選択することは決して容易なことではない。他方、現在市販されている試薬の中には、特定の分析対象物に限定できない品目も存在する。たとえば、多くの成分を同時に検定した多項目の標準物質がそうである。多項目標準物質は、多くの項目の分析において標準として用いられるので、項目ごとにまったく異なった反応系を適用される可能性が大きい。具体的には、物質AについてはRIA(ラジオイムノアッセイ)用の標準となるかもしれないが、物質BはELISA(酵素免疫測定法)のための標準として用いられる可能性も有るということである。このような場合、RIAでは問題とならない抗菌剤がELISAでは酵素反応を妨害してしまうかもしれない。したがって、できるだけ広い範囲の試薬に適用することができる抗菌剤が必要となるのである。
加えて試薬に添加する抗菌剤は、保存中に試薬中の成分を変性させることが有ってはならない。試薬中には、免疫学的な活性物質、酵素学的に活性な物質、そして化学的に活性な物質といった、さまざまな活性と、多様な構造を持つ成分が存在する可能性が有る。これらの化合物の活性を保存中に変性させる可能性のあるものは利用できない。
更に抗菌剤として添加する化合物そのものの特性によって不利益をもたらす場合もある。たとえばアジ化物に代えてよく用いられていたチメロサールは、その構造中に有機水銀を含むため、環境衛生上の問題から使われなくなってきた。また代表的なアジ化物であるアジ化ナトリウムは、銅や鉛のような金属と反応して爆発性の金属アジドを生じることが知られている。末端の検査施設における廃液中においてはアジ化ナトリウムの濃度が低いので危険性は小さいが、常に比較的高い濃度のアジ化ナトリウムと接触する可能性の有る製造施設においては無視することのできない問題である。
最後に抗菌剤にとって最も大切なことは、使用される環境のもとで十分な抗菌活性を維持することである。試薬は、さまざまな反応を提供するものであるため、そのpH、塩濃度、溶媒といった環境が大きく変動する。したがって様々な条件のもとで十分な抗菌活性を維持することが試薬の抗菌剤には求められる。以上のような背景のもとで、試薬の抗菌剤として有用な幾つかの組み合わせが報告されている。
新しい抗菌剤の試みのひとつとして、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン−ヒドロクロリド、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシド、クロルアセトアミド、{N,N−メチレン−ビス[(N−1−ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル]}−尿素及び5−ブロム−5−ニトロ−1,3−ジオキサンを利用した保存剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また特定のアリールフルオロキノロンとp−ヒドロキシ安息香酸誘導体の組み合わせも公知である(例えば、特許文献2参照)。この他にも、サルファメトキサゾールとトリメトプリムの組み合わせ(例えば、特許文献3参照)、あるいはミクロシド類の応用(例えば、特許文献4参照)を試みた報告が有る。これらの報告は、いずれも以上のような問題点の解決を目的として提案されたものである。しかし先に述べたような理由から、様々な反応系に対応するためには抗菌剤の選択の幅は広い方が好ましいし、また特定の抗菌剤を連続して使用することは耐性菌の出現につながる可能性が有る。更に本発明者らは、これらの抗菌剤の組み合わせのうちp−ヒドロキシ安息香酸誘導体を利用したものでは、一部の免疫学的な測定系において重大な反応系への影響が観察される場合のあることを確認した。即ち、アリールフルオロキノロンとp−ヒドロキシ安息香酸誘導体の組み合わせを、遊離型のサイロキシンの免疫学的測定用標準に抗菌剤として添加すると、標識物と抗体の結合率が無添加の場合に比較して1/3以下まで減少することがある。このような抗菌剤は少なくとも特定の測定項目のための試薬や標準には利用することができない。
本発明は、広い範囲の試薬に適用することができ、多様な微生物に対してさまざまな環境のもとで十分な抗菌活性を示し、しかも耐性菌の出現を起こしにくい新たな抗菌剤の提供を課題としている。試薬中の微生物の繁殖を効果的に防止し、試薬本来の性能に悪影響を与えることなく試薬中の活性成分を微生物の繁殖から保護することが本発明の課題である。
本発明者らは、前記のような特殊な測定項目において血清蛋白との結合率が50%以下である抗菌剤が有用であることを見出した。したがって、本発明は特定構造のキノロン系抗生物質の試薬用防腐剤としての用途を提供するのみならず、血清蛋白との結合率が50%以下である抗菌剤の、遊離型リガンド測定用試薬のための抗菌剤としての新しい用途を提供するものである。血清蛋白との結合率が50%以下である抗菌剤の代表的なものがロメフロキサシンで、ヒト血清蛋白に対する結合率は24.4%である。本発明における結合率が50%以下の抗菌剤としては、次のような抗菌剤を挙げられる。これら血清蛋白との結合率が50%以下である抗菌剤は、遊離型リガンドの測定値に影響を与えにくい優れた化合物である。
ノルフロキサシン(norfloxacin) 10.2%
オフロキサシン(ofloxacin) 6.3%
シプロフロキサシン(ciprofloxacin) 36.7%
トスフロキサシン(tosfloxacin) 37.4%
ロメフロキサシン(lomefloxacin) 24.4%
フレロキサシン(fleroxacin) 32.0%
スパルフロキサシン(sparfloxacin) 42.2%
なお薬剤の血清蛋白との結合率とは、薬物動態を把握する上で重要な情報である。そのため抗菌剤としてヒトへの投与を目的とする化合物であれば少なくともヒト血清蛋白に対する結合率が公知となっている。試薬用の抗菌剤として用いるときには、ヒト以外の動物血液が試料となる可能性、あるいは測定試薬成分や標準試薬の媒体としてヒト以外の血清を含む可能性等が考えられる。このような場合には、ヒト血清蛋白との結合率ではなく想定される血液蛋白の結合率を求めることも可能である。血清蛋白結合率を求める方法は公知である(Antibiotics in Laboratory Medicine 2nd ed. C.13 p.477-514(1986))。
ノルフロキサシン(norfloxacin) 10.2%
オフロキサシン(ofloxacin) 6.3%
シプロフロキサシン(ciprofloxacin) 36.7%
トスフロキサシン(tosfloxacin) 37.4%
ロメフロキサシン(lomefloxacin) 24.4%
フレロキサシン(fleroxacin) 32.0%
スパルフロキサシン(sparfloxacin) 42.2%
なお薬剤の血清蛋白との結合率とは、薬物動態を把握する上で重要な情報である。そのため抗菌剤としてヒトへの投与を目的とする化合物であれば少なくともヒト血清蛋白に対する結合率が公知となっている。試薬用の抗菌剤として用いるときには、ヒト以外の動物血液が試料となる可能性、あるいは測定試薬成分や標準試薬の媒体としてヒト以外の血清を含む可能性等が考えられる。このような場合には、ヒト血清蛋白との結合率ではなく想定される血液蛋白の結合率を求めることも可能である。血清蛋白結合率を求める方法は公知である(Antibiotics in Laboratory Medicine 2nd ed. C.13 p.477-514(1986))。
なおこのような公知の方法によって求めることができる血清蛋白結合率は、血清中に含まれる多様な蛋白質のどの蛋白質と結合するのかは問題としておらず、単にある化合物がどのていど血清蛋白と結合するのかを求めているに過ぎない。したがって、特定の遊離型リガンドの測定値に与える影響をこのような薬物動態を示す一般的な数値から推測することは困難である。本発明者らは、新たに見出した遊離リガンドの測定値に影響を与えにくい抗菌剤の血清蛋白結合率を公知の抗菌剤のものと比較分析し、特定の血清蛋白結合率を境に測定値への影響が無視できるていどに抑制できることを確認し本発明を完成した。
免疫学的活性物質を含む試薬の中でも、トリヨードサイロニンやサイロキシンは本発明によって特別な効果が期待できる測定項目の一つである。これらの甲状腺ホルモンは、血中でTBG(Thyroxine Binding Globulin)やアルブミン等の血清蛋白と結合した状態にあるものと、遊離の状態で存在するものとが知られている。両者は生体内で微妙な平衡状態にあり、このうち遊離の状態にあるものがホルモンとしての生理活性を持っている。そしてこの遊離型のホルモンの測定が、内分泌機能の診断において有用な情報となる。遊離の状態にあるホルモンは、結合状態にあるものとの平衡をくずさないように測定しなければ臨床的に意味のある測定値とならない。本発明者らが確認したところによれば、いくつかの抗生物質はこの平衡状態に影響を与え、遊離分画の測定値を実際よりも大きくしてしまう。本発明が提案する抗菌剤は、このような測定系において測定値に与える影響が小さく、遊離の状態にあるホルモンの免疫学的な測定用試薬や、標準物質を微生物の繁殖から保護するために有用である。
本発明に用いるキノロン系抗生物質は、それぞれ前記のような一般名を持つ化合物である。本発明に用いるキノロン系抗生物質の多くは構造中にフッ素を含む、いわゆるフルオロキノロン系抗生物質である。これらのキノロン系抗生物質は、もともと各種感染症の治療を目的として開発されたものであるが、本発明者らは、これらの抗菌剤が試薬に添加した時に先に述べたような多くの課題を解決する抗菌剤として有用性の高い化合物であることを見出し、本発明を完成した。
本発明に用いるキノロン系抗生物質は、市販されているものであれば入手が容易である。また市販されていないものであっても、類似の構造を持つ化合物の製造法を基に合成することが可能である。
これらの抗菌剤は単独で添加しても良いし、何種類かを混合して添加しても良い。何種類かを混合して用いれば耐性菌が出現しにくくなるという効果を期待できる。また単独で用いるにしろ、混合する場合にしろ、これらのキノロン系抗生物質の試薬中における好ましい使用濃度は、0.0005%W/V(5μg/ml)以上である。この濃度よりも低い場合には、特に血清をベースとした微生物の繁殖し易い試薬における抗菌力が不十分になる場合が有る。またより広範囲の微生物に対して十分な抗菌活性を保証し、しかも耐性菌の出現しにくい環境を実現するためには、0.001−0.01%W/V(10−100μg/ml)の範囲で用いると良い。本発明の抗菌剤はこのような非常に高い濃度で用いても、免疫反応や酵素反応に影響を与える可能性が低い。たとえばロメフロキサシンの場合は、RIAにおいて0.05%W/V(500μg/ml)まで反応に影響を与えないことを確認しているが、一部の酵素反応には阻害的に働くことも有るのであまりにも高い濃度は限定された反応系でしか利用できないものと思われる。基本的には本発明で用いるキノロン系抗菌剤は、高い濃度で用いても各種反応系に対して影響の出にくいものである。したがって高い濃度で使ってはならないということではない。ただ、不必要に高い濃度は原料コストの上昇につながるので好ましくない。また溶解度を越える濃度で用いても添加量に応じた効果は期待できないので、この程度の濃度で用いるのが効率的である
本発明において、前記抗菌剤を適用することができる試薬は、微生物の繁殖から保護すべき成分を含む試薬である。具体的には、酵素を含むもの、抗原や抗体のような免疫学的活性物質を含むもの、血清蛋白を含むもの等をあげることができる。抗原や抗体のような免疫学的活性物質を含む試薬には、トリヨードサイロニン、サイロキシン、甲状腺刺激ホルモン、卵巣刺激ホルモン、黄体ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、インスリンといった各種ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージ遊走阻止因子、顆粒球コロニー刺激因子といったリンホカイン、ウイルス粒子やその断片、細菌、毒素、CEAやAFPのような腫瘍マーカーを分析するための抗体を含む試薬を示すことができる。あるいはウイルス粒子、細菌、あるいは毒素等に対する抗体を測定するための抗原を含む試薬をこの免疫学的活性成分を含む試薬の範疇に入る。これら免疫学的な活性成分は、ラジオアイソトープ、酵素、補酵素、酵素基質、発光物質、あるいは蛍光物質等の標識成分と結合していても良い。またラテックス粒子、金属コロイド粒子、試験管の内壁やビーズ等の固相に結合した状態であっても良い。更にこれらの測定対象成分の含有量をあらかじめ検定した標準物質も含めて、本発明における試薬とする。標準物質は、微生物の繁殖し易い血清をベースとすることが多く特に抗菌剤の添加が重要である。血清をベースとする試薬では、蛋白濃度が高いうえに微生物の繁殖に必要なその他の栄養素も豊富に存在しているので微生物にとってはかっこうの繁殖場所になる。それだけに、この種の抗菌剤の効果が大きく現れる。
一方、酵素を含む試薬とは、グルコース、コレステロール、トリグリセライド、クレアチニンといった各種酵素基質を酵素反応によって測定するための試薬や、アミラーゼ、LDH、γGTP、GOT、GPTといった酵素の活性を測定するためにその基質や共役酵素を含む試薬等を例示できる。酵素や基質についても免疫学的な活性物質と同じように含有量をあらかじめ検定した標準物質が求められるので、抗菌剤の添加が必要なことに変わりはない。
ところで微生物学的な分析技術の一つに、薬剤感受性試験と呼ばれる分析方法が有る。単離した微生物を抗菌剤の存在下で培養し、その培養成績を基に抗菌剤に対する感受性を決定するための分析技術である。この分析技術においては培養用の栄養素や増殖指示薬といった試薬成分と抗菌剤の組み合わせが利用されている。しかしこれらの試薬成分は微生物によって消費される成分であって、微生物の増殖から保護すべき成分とは言えないので、本発明における試薬とは明瞭に区別される。
本発明が提供する試薬は、抗菌力が優れているので従来用いられていた抗菌成分の添加を省略することができる。たとえば製造工程において爆発性の金属アジドを生成するおそれの有るアジ化ナトリウム、有機水銀を含むため利用を避けたいチメロサールのような公知の抗菌剤はもはや添加の必要はないし、本発明の利点を生かすために添加するべきではない。また試薬の反応を妨害するおそれの有る抗菌剤も不要とする。たとえば遊離サイロキシンの測定を大きく妨害するPSFは、本発明の試薬によりもはや添加の必要はない。
本発明で抗菌剤として添加する特定のキノロン系製剤は、主として細菌やマイコプラズマに対して有効な薬剤である。したがって糸状菌に対しては抗菌活性が不足する場合が考えられる。このような場合には、アンホテリシンB(以下AMPH−Bと省略する)の添加が有効である。AMPH−Bはファンギゾンとも呼ばれPSFに含有されている抗真菌性の化合物であるが、本発明による特定のキノロン系製剤と組み合わせた場合には遊離サイロキシン測定の妨害作用を示すこともなく、好ましい組み合わせとして示すことができる。AMPH−Bは、およそ0.5〜30μg/mlの濃度で添加すると十分な抗真菌活性を期待できる。AMPH−Bの他に同様の抗真菌活性を期待できる化合物として、ナイスタチン、フルシトシン、ミコナゾール、およびイトラコナゾール等を示すことができる。これらの抗真菌活性を持つ化合物のうち、フルシトシンは血清蛋白とほとんど結合せず本発明によって提供される遊離型リガンド測定用試薬に添加する場合に有利である。
遊離サイロキシン測定系への影響−1−
遊離サイロキシンの免疫学的な測定に与える各種抗菌剤の影響を調査するために、以下のような実験を行った。利用した抗菌剤と使用濃度(検体中の濃度)は次のとおりである。
条件1:抗菌剤添加無し
条件2:SM 2000μg/m
条件3:PCG 2000U/ml
条件4:AMPH−B 5μg/ml
条件5:LFLX 500μg/ml
反応は、上記濃度の抗菌剤を含む検体20μl、125I標識HCG結合サイロキシン溶液50μl、抗サイロキシン・ウサギ血清含有抗血清50μl、抗ウサギIgG抗体結合ビーズ1コを混和し、37℃水浴中で2時間反応させた。反応後に未反応試薬を洗浄後、γカウンタ−でビーズに結合した標識抗原のカウントを測定した。HCG結合サイロキシンは、抗サイロキシン抗体との免疫学的な結合活性を持つ一方で、生体内における結合パートナーであるTBG等とはHCGによる修飾のために結合できない。このような特殊な標識抗原を利用することによって遊離サイロキシンと、TBG等と結合した状態に有るサイロキシンとの平衡を乱すことなく遊離サイロキシンの測定が可能となる。各検体は10重測定を行い、その測定値の平均値を表1に示す。SMやPCGを加えた場合に測定値が大きくなり、抗菌剤の添加によって誤差が生じる場合のあることが確認された。本発明の抗菌剤であるLFLXではこのような大きな誤差は生じておらず、測定系への影響が小さいことは明らかである。このような現象は、PCG等の抗菌剤がTBGやアルブミンと結合したサイロキシン(本実施例では測定対象ではない)と、遊離の状態で存在するサイロキシン(本実施例における測定対象)との間に成立している微妙な平衡関係に影響を与えたためと推測される。PCGは血清蛋白との結合率が53%(超遠心法)〜56%(透析平衡法)の化合物であるのに対して、LFLXは24.4%であり結合率が50%を越える場合に無視できない大きさの誤差の原因につながることが確認された。。
遊離サイロキシンの免疫学的な測定に与える各種抗菌剤の影響を調査するために、以下のような実験を行った。利用した抗菌剤と使用濃度(検体中の濃度)は次のとおりである。
条件1:抗菌剤添加無し
条件2:SM 2000μg/m
条件3:PCG 2000U/ml
条件4:AMPH−B 5μg/ml
条件5:LFLX 500μg/ml
反応は、上記濃度の抗菌剤を含む検体20μl、125I標識HCG結合サイロキシン溶液50μl、抗サイロキシン・ウサギ血清含有抗血清50μl、抗ウサギIgG抗体結合ビーズ1コを混和し、37℃水浴中で2時間反応させた。反応後に未反応試薬を洗浄後、γカウンタ−でビーズに結合した標識抗原のカウントを測定した。HCG結合サイロキシンは、抗サイロキシン抗体との免疫学的な結合活性を持つ一方で、生体内における結合パートナーであるTBG等とはHCGによる修飾のために結合できない。このような特殊な標識抗原を利用することによって遊離サイロキシンと、TBG等と結合した状態に有るサイロキシンとの平衡を乱すことなく遊離サイロキシンの測定が可能となる。各検体は10重測定を行い、その測定値の平均値を表1に示す。SMやPCGを加えた場合に測定値が大きくなり、抗菌剤の添加によって誤差が生じる場合のあることが確認された。本発明の抗菌剤であるLFLXではこのような大きな誤差は生じておらず、測定系への影響が小さいことは明らかである。このような現象は、PCG等の抗菌剤がTBGやアルブミンと結合したサイロキシン(本実施例では測定対象ではない)と、遊離の状態で存在するサイロキシン(本実施例における測定対象)との間に成立している微妙な平衡関係に影響を与えたためと推測される。PCGは血清蛋白との結合率が53%(超遠心法)〜56%(透析平衡法)の化合物であるのに対して、LFLXは24.4%であり結合率が50%を越える場合に無視できない大きさの誤差の原因につながることが確認された。。
遊離サイロキシン測定系への影響−2−
遊離サイロキシンの免疫学的な測定に与える各種抗菌剤の影響を調査するために、以下のような実験を行った。利用した抗菌剤と使用濃度(検体中の濃度)は次のとおりである。p−ヒドロキシ安息香酸エチル(表中にEthylparabenで示した)、あるいはp−ヒドロキシ安息香酸メチル(表中にMethylparabenで示した、いずれも和光純薬工業製)とキノロン剤の組み合わせは、試薬用の防腐剤として過去に提案されたものである。抗菌剤の組み合わせを変更した他は実施例1と同じ操作により遊離サイロキシン測定系への影響を観察した。結果は表2に示すとおりである。公知の抗菌剤の組み合わせであるp−ヒドロキシ安息香酸エチル(あるいはメチル)を利用した場合に測定値が小さくなることが確認された。本発明による抗菌剤であるLFLXが実施例1ではるかに高い濃度で用いているのにもかかわらず測定値に影響を与えないのに対して、p−ヒドロキシ安息香酸エチル等を組み合わせると大きな誤差の原因となることが確認された。実施例1と同じように、これらの薬剤が遊離サイロキシン−TBG結合サイロキシンとの平衡関係に影響を与えたものと推測された。
条件1:抗菌剤添加無し
条件2:LFLX 50μg/ml
条件3:p−ヒドロキシ安息香酸エチル 0.1%(w/v)+LFLX 10μg/ml
条件4:p−ヒドロキシ安息香酸メチル 0.1%(w/v)+LFLX 10μg/ml
遊離サイロキシンの免疫学的な測定に与える各種抗菌剤の影響を調査するために、以下のような実験を行った。利用した抗菌剤と使用濃度(検体中の濃度)は次のとおりである。p−ヒドロキシ安息香酸エチル(表中にEthylparabenで示した)、あるいはp−ヒドロキシ安息香酸メチル(表中にMethylparabenで示した、いずれも和光純薬工業製)とキノロン剤の組み合わせは、試薬用の防腐剤として過去に提案されたものである。抗菌剤の組み合わせを変更した他は実施例1と同じ操作により遊離サイロキシン測定系への影響を観察した。結果は表2に示すとおりである。公知の抗菌剤の組み合わせであるp−ヒドロキシ安息香酸エチル(あるいはメチル)を利用した場合に測定値が小さくなることが確認された。本発明による抗菌剤であるLFLXが実施例1ではるかに高い濃度で用いているのにもかかわらず測定値に影響を与えないのに対して、p−ヒドロキシ安息香酸エチル等を組み合わせると大きな誤差の原因となることが確認された。実施例1と同じように、これらの薬剤が遊離サイロキシン−TBG結合サイロキシンとの平衡関係に影響を与えたものと推測された。
条件1:抗菌剤添加無し
条件2:LFLX 50μg/ml
条件3:p−ヒドロキシ安息香酸エチル 0.1%(w/v)+LFLX 10μg/ml
条件4:p−ヒドロキシ安息香酸メチル 0.1%(w/v)+LFLX 10μg/ml
Claims (6)
- 血液試料中で結合パートナーと結合した状態で存在するリガンドと共存している遊離型のリガンドを特異的に測定するための試薬に防腐剤として添加する抗菌剤であって、血清蛋白との結合率が50%以下であることを特徴とする抗菌剤。
- リガンドが、ホルモン、ステロイド、薬剤、ビタミン、およびこれらの化合物の代謝産物からなる群から選択される請求項1の抗菌剤。
- ホルモンがサイロキシン、トリヨードサイロニン、およびコルチゾールからなる群から選択される請求項2の抗菌剤。
- 血液試料中で結合パートナーと結合した状態で存在するリガンドと共存している遊離型のリガンドを特異的に測定するための試薬組成物であって、血清蛋白との結合率が50%以下である抗菌剤を含むことを特徴とする試薬組成物。
- 試薬組成物が、以下の群から選択される成分で構成されるものであることを特徴とする請求項4の試薬組成物。
1)遊離型のリガンドとの結合性成分
2)前記結合性成分との結合活性に比べて、前記結合パートナーとの結合活性が低くなるように設計されたリガンド類縁体
3)標準として用いるための予め濃度を検定した遊離型リガンド - 血液試料中で結合パートナーと結合した状態で存在するリガンドと共存している遊離型のリガンドを特異的に測定するための試薬組成物において、血清蛋白との結合率が50%以下である抗菌剤を添加することによって遊離リガンドの測定値に影響を与えることなく微生物の繁殖を抑制する方法。
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2004261468A Pending JP2005037402A (ja) | 2004-09-08 | 2004-09-08 | 生体成分測定試薬 |
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JP (1) | JP2005037402A (ja) |
-
2004
- 2004-09-08 JP JP2004261468A patent/JP2005037402A/ja active Pending
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