JP2005033586A - 通信端末装置及びその消費電力削減方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】効率の良い受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出する。
【解決手段】本発明では、送信(Tx)、受信(Rx)パケットそれぞれについて、発生数、発生間隔、占有時間、遅延に関してサンプリングを行う。さらにパケット送受信終了後、期間TNo Dataで示す「送受信パケット待ち受け時間=受信待機時間」の間、送受信パケットが発生しなかった場合には、自局が休止状態に移行することを示すPS−ONパケットを送信した上で、休止状態とする。そして本発明においては、各サンプリング動作の終了時点で、期間TNo Data、及び期間TOffの値の最適値を算出して更新する。このようにして発生したトラフィックの状況に応じて、受信待機時間及び受信休止時間を変動させることで、消費電力の削減と、スループットの維持を適正に行うことができるようになる。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明では、送信(Tx)、受信(Rx)パケットそれぞれについて、発生数、発生間隔、占有時間、遅延に関してサンプリングを行う。さらにパケット送受信終了後、期間TNo Dataで示す「送受信パケット待ち受け時間=受信待機時間」の間、送受信パケットが発生しなかった場合には、自局が休止状態に移行することを示すPS−ONパケットを送信した上で、休止状態とする。そして本発明においては、各サンプリング動作の終了時点で、期間TNo Data、及び期間TOffの値の最適値を算出して更新する。このようにして発生したトラフィックの状況に応じて、受信待機時間及び受信休止時間を変動させることで、消費電力の削減と、スループットの維持を適正に行うことができるようになる。
【選択図】 図2
Description
本発明は、例えば無線によりデータ通信を行う通信システムに使用して好適な通信端末装置及びその消費電力削減方法に関する。詳しくは、複数の通信端末で構成され、パケット送受信時間が予約されない通信システムにおいて、通信端末装置における受信休止時間の制御が良好に行われるようにしたものである。
従来、定期的にスロット割当が行われるような通信方式では、通信端末は、決められた時間のみ起動状態とし、それ以外の時間は基本的には休止状態としておくことが可能であり、受信待機時間(待ち受け時間)と受信休止時間を適切に設定できる。例えばTDMA(Time Division Multiple Access)方式を採用している携帯電話、PHS(Personal Handy-phone System)などではこの性質を利用し、受信休止時間における消費電力削減を実現している。
しかしながら、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)のように、パケット送受信時間が予約されない通信方式では、いつ発生するか分からないデータを受信すべく、基本的には常に搬送波感知動作をしておく必要があり、不用意に休止状態に移行すると、パケットロスが発生し、受信時間期待値(スループット)に重大な悪影響を及ぼしてしまう。
例えばIEEE802.11規格に代表されるCSMAを用いた無線LAN(Local Area Network)では、パケットロス防止のために、送信側の通信端末は、休止状態にある通信端末宛のデータをバッファリングしておく。一方、休止状態にある通信端末は、ほぼ一定周期で送信されるビーコンフレームのタイミングで起動し、ビーコンフレームに付与されている「データバッファリング中」の目印が確認できると、起動状態になり、データを受信する。
このようにして、ビーコンフレームを起点として、休止状態から起動状態に遷移する。通常、一旦起動状態になると、一定時間起動状態を維持した後に再度休止状態とする方法が用いられている。
しかしながら、このような省電力制御方法においては、一旦休止状態に移行した通信端末はビーコンフレーム間隔でのみ起動するため、この間送信側の通信端末は休止状態にある通信端末宛のデータを保持し続ける必要があり、トラフィック負荷が一時的に高くなると、バッファオーバフローが発生しやすくなるという問題がある。
また、上記のような問題を軽減すべく、一旦起動状態となった後一定時間起動状態を維持するような対策が取られているのだが、これによると、データが来ない場合には、不必要に起動状態の時間が長くなり、必然的に休止状態でいられる時間は短くなる。すなわち、休止時間を利用して消費電力削減を行っても、その効果は小さいといえる。
以上のことから、パケット送受信時間が予約されない通信方式では、通信トラフィックが刻々と変動する状況下において、起動状態でいる時間と、休止状態でいる時間を、適切に設定することができなかった。
一方、CSMAによる通信方式のLANインターフェイスにおいて、フレームの衝突を回避し、QoS(Quality of Service)を保証する目的で、フレーム送信時に、次のフレーム送信タイミングを通知する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
すなわちこの特許文献1によれば、受信側は次の自局宛のデータの送信のタイミングを予め知ることができるものである。しかしながらこの方法では、予めフレームの概念をシステムに設ける必要がある。また、特許文献1の方法は、フレーム衝突の回避を目的としたものであって、省電力に関する考慮はなされていないものである。
特開2001−189736号公報
さらに、図面を用いて従来の省電力方式とその問題点を説明する。まず、本願の背景をより具体的に説明するため、図7を用いて、IEEE802.11規格に代表されるCSMAを用いた無線LANを例に挙げ、想定する通信システムを説明する。
無線LANでは、端末局1〜3はアクセスポイントを経由して外部のLANと接続されている。外部のLANから端末局へのパケットはアクセスポイントが外部のLANから受け取り、該当する端末局へ送信する。逆に、端末局から外部のLANへのパケットは、一旦アクセスポイントが受け取った上で外部のLANに送信する。
端末局同士の通信には一旦アクセスポイントが受け取った上で宛先の端末局へ中継する場合と、アクセスポイントを介さず、直接端末局同士がパケット送受を行う場合がある。いずれのパケット送受信方法においても、その発生間隔は基本的にランダムとなっており、アクセスポイントを含め、全ての端末局は、自局宛のパケットがいつ発生するか、あらかじめ認識することができない。従って、通常の状態では、常に起動状態としておき、搬送波感知動作を行っている。
次に、図8を用いてIEEE802.11規格における起動状態と休止状態の制御方法を説明する。前述のように、無線LANでは常に起動状態としておき、搬送波感知動作を行うことが基本的な動作である。ただし、消費電力を抑えるため、休止状態とすることもできる。図8に示す通り、起動状態にある端末局は、送受信を行った後、任意のタイミングで休止状態となることができる。図中では「送受信パケット待ち受け時間」後に休止状態となる。
図示はしていないが、IEEE802.11規格では休止状態となる際に、他の端末に対して、自局が休止状態に移行したことを知らせるパケットを送信した後でないと休止状態となることはできない。なお、図中の「送受信パケット待ち受け時間」はIEEE802.11規格上、規定されておらず、通常は数秒程度の固定値が用いられる。
また、図中の「休止時間」は、基本的にはビーコン上に自局宛のパケットがあることを示す目印を発見するまでとなっている。例外として、自局が自発的にパケットを送信する場合は、その時間に起動状態となる。
しかしながらこの方法では、「送受信パケット待ち受け時間」が固定されているので、パケットの送受信が無くても、この時間が経過するまで、起動状態を維持してしまう。また、特に受信についての問題であるが、休止状態となった後はビーコン上の目印を確認するまで、起動状態になることができない。
つまり、受信すべきパケットがあるにもかかわらず、その存在を自局がビーコンのタイミングまで知り得ないために、受信できないということである。これらのことは、消費電力削減効果を低下させ、さらにスループットも低下させてしまうという事態を招く。
この出願はこのような点に鑑みて成されたものであって、解決しようとする問題点は、パケット送受信時間が予約されない通信システムにおいて、従来の装置では、消費電力削減効果を向上させることができず、また、スループットの低下を招く恐れを解消することができなかったというものである。
すなわち、本発明の第1の目的は、パケット送受信時間が予約されない通信方式において、通信トラフィックが刻々と変動する状況下で、休止時間を最大限に設定しながらトラフィックのスループットの維持も可能にする、受信待機時間と、受信休止時間を算出することである。
また、本発明の第2の目的は、パケット送受信時間が予約されない通信方式において、通信トラフィックが刻々と変動する状況下で、受信待機時間と受信休止時間を動的に変化させ、消費電力削減効果を高めることである。
このため本発明においては、自己のパケット送受信のトラフィックの状況を計測し、計測されたトラフィックの状況を元に、パケット送受信のトラフィックが任意の確率分布に従うものと仮定して、自己の受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出するようにしたものであって、これによれば、休止時間を最大限に設定しながらトラフィックの受信時間期待値(スループット)の維持も可能にする、受信待機時間と、受信休止時間を算出することができる。
従って請求項1の発明によれば、自己のパケット送受信のトラフィックの状況を計測し、計測されたトラフィックの状況を元に、パケット送受信のトラフィックが任意の確率分布に従うものと仮定して、自己の受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出するようにしたことによって、休止時間を最大限に設定しながらトラフィックの受信時間期待値(スループット)の維持も可能にする、受信待機時間と、受信休止時間を算出することができるものである。
また、請求項2の発明によれば、算出手段は、平均消費電力の期待値を、計測されたトラフィックの状況における必要最低限の消費電力に対して、任意に設定された割合に収束させる受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出することによって、良好に受信待機時間と、受信休止時間の算出を行うことができるものである。
請求項3の発明によれば、算出された受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値に基づいて通信システムでの受信時間期待値を推定する推定手段を有し、推定された受信時間期待値が通信システムでの平均受信時間期待値を下回らないとき、算出された受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値に基づく処理を実行することによって、トラフィックの受信時間期待値(スループット)の維持を可能にするものである。
請求項4の発明によれば、推定手段で推定された受信時間期待値が通信システムでの平均受信時間期待値を下回ったときは、平均受信時間期待値を下回らない受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出することによって、トラフィックの受信時間期待値(スループット)の維持を最優先とした処理を行うことができるものである。
請求項5の発明によれば、受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出する算出手段は、受信待機時間を任意に定めて計測されたトラフィックの状況に基づく受信休止時間の最大期待値の算出を行うと共に、受信休止時間の最大期待値の解が得られないときは、受信待機時間を変更して、再度受信休止時間の最大期待値の算出を行うことによって、良好に受信休止時間の最大期待値の算出を行うことができるものである。
請求項6の発明によれば、算出された受信待機時間の最大期待値の間にパケット送受信の発生がなかったときは、起動状態から休止状態に移行することによって、消費電力の削減を行うことができるものである。
請求項7の発明によれば、休止状態は、算出された受信休止時間の最大期待値の間継続されることによって、効率の良い消費電力の削減を行うことができるものである。
請求項8の発明によれば、受信待機時間または受信休止時間の最大期待値の算出が不能のときは、予め設定された次の算出のタイミングまで休止状態への移行を行わないことによって、安定した消費電力の削減を行うことができるものである。
請求項9の発明によれば、トラフィックの状況を計測する計測手段は、予め設定されたサンプリング期間の周期で計測を行うと共に、サンプリング期間の周期を2種以上設けて複数の計測を行うことによって、安定した受信待機時間と受信休止時間の算出を行うことができるものである。
請求項10の発明によれば、予め設定されたサンプリング期間の周期は、通信システムにおける規定の起動のタイミングの周期と、算出された受信待機時間の最大期待値の経過後の休止状態に移行するタイミングの周期についてそれぞれ計測を行うことによって、効率の良い受信待機時間と受信休止時間の算出を行うことができるものである。
さらに、請求項11の発明によれば、自己のパケット送受信のトラフィックの状況を計測し、計測されたトラフィックの状況を元に、パケット送受信のトラフィックが任意の確率分布に従うものと仮定して、自己の受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出するようにしたことによって、休止時間を最大限に設定しながらトラフィックの受信時間期待値(スループット)の維持も可能にする、受信待機時間と、受信休止時間を算出することができるものである。
また、請求項12の発明によれば、受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値の算出は、平均消費電力の期待値を、計測されたトラフィックの状況における必要最低限の消費電力に対して、任意に設定された割合に収束させる受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出することによって、良好に受信待機時間と、受信休止時間の算出を行うことができるものである。
請求項13の発明によれば、算出された受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値に基づいて通信システムでの受信時間期待値を推定し、推定された受信時間期待値が通信システムでの平均受信時間期待値を下回らないとき、算出された受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値に基づく処理を実行することによって、トラフィックの受信時間期待値(スループット)の維持を可能にするものである。
請求項14の発明によれば、推定された受信時間期待値が通信システムでの平均受信時間期待値を下回ったときは、平均受信時間期待値を下回らない受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出することによって、トラフィックの受信時間期待値(スループット)の維持を最優先とした処理を行うことができるものである。
請求項15の発明によれば、受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出は、受信待機時間を任意に定めて計測されたトラフィックの状況に基づく受信休止時間の最大期待値の算出を行うと共に、受信休止時間の最大期待値の解が得られないときは、受信待機時間を変更して、再度受信休止時間の最大期待値の算出を行うことによって、良好に受信休止時間の最大期待値の算出を行うことができるものである。
請求項16の発明によれば、算出された受信待機時間の最大期待値の間にパケット送受信の発生がなかったときは、起動状態から休止状態に移行することによって、消費電力の削減を行うことができるものである。
請求項17の発明によれば、休止状態は、算出された受信休止時間の最大期待値の間継続されることによって、効率の良い消費電力の削減を行うことができるものである。
請求項18の発明によれば、受信待機時間または受信休止時間の最大期待値の算出が不能のときは、予め設定された次の算出のタイミングまで休止状態への移行を行わないことによって、安定した消費電力の削減を行うことができるものである。
請求項19の発明によれば、トラフィックの状況を計測する計測手段は、予め設定されたサンプリング期間の周期で計測を行うと共に、サンプリング期間の周期を2種以上設けて複数の計測を行うことによって、安定した受信待機時間と受信休止時間の算出を行うことができるものである。
請求項20の発明によれば、予め設定されたサンプリング期間の周期は、通信システムにおける規定の起動のタイミングの周期と、算出された受信待機時間の最大期待値の経過後の休止状態に移行するタイミングの周期についてそれぞれ計測を行うことによって、効率の良い受信待機時間と受信休止時間の算出を行うことができるものである。
これによって、パケット送受信時間が予約されない通信システムにおいて、従来の装置では、消費電力削減効果を向上させることができず、また、スループットの低下を招く恐れを解消することができなかったものを、本発明によればこれらの問題点を容易に解消することができるものである。
すなわち本発明は、複数の通信端末で構成され、パケット送受信時間が予約されない通信システムに用いられる通信端末装置であって、自己のパケット送受信のトラフィックの状況を計測する計測手段と、計測されたトラフィックの状況を元に、パケット送受信のトラフィックが任意の確率分布に従うものと仮定して、自己の受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出する算出手段とを有してなるものである。
また、本発明は、複数の通信端末で構成され、パケット送受信時間が予約されない通信システムに用いられる通信端末装置の消費電力削減方法であって、自己のパケット送受信のトラフィックの状況を計測し、計測されたトラフィックの状況を元に、パケット送受信のトラフィックが任意の確率分布に従うものと仮定して、自己の受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出するものである。
以下、図面を参照して本発明を説明するに、図1は本発明による通信端末装置及びその消費電力削減方法を適用した通信端末装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
図1において、通信端末装置の全体の処理を行うCPU(Central Processing Unit)1が設けられ、このCPU1にはメインメモリ2が併設されている。このCPU1で形成された情報データや制御データは、バスライン3を通じて各部とやり取りされる。そしてバスライン3には、ハードディスク装置4やその他の周辺回路5、また、キーボード6とディスプレイ7等が接続される。
さらにバスライン3には、送受信制御回路8を通じて、MAC(Media Access Control:媒体アクセス制御)回路9とPHY(Physical Layer Protocol:物理層プロトコル)回路10が接続される。これらのMAC回路9とPHY回路10により、通信端末装置は外部との情報の通信を行うと共に、これらの通信が送受信制御回路8によって制御される。
さらに、図2は、本発明における起動状態と休止状態の制御方法を説明するためのタイミングチャート図である。すなわち図2において、本発明では、送信(Tx)、受信(Rx)パケットそれぞれについて、発生数、発生間隔、占有時間、遅延に関してサンプリングを行う。
なお、本発明において、図2に示すように、サンプリング動作は並行して複数動作させてもよい。この例では、長期的なトラフィック傾向、短期的なトラフィック傾向等、時間的に変動する成分をできるだけ詳細に把握し、受信待機時間と受信休止時間の最適値の精度を向上させるため、長期サンプリングと短期サンプリングを並行して実施している。
また、図2では、ビーコン周期に同期して行うサンプリング動作と、休止状態移行前まで行うサンプリング動作の2つを図示しているが、本発明ではサンプリング動作の期間や、タイミング、動作数をこれに限定するものではない。
さらに図2に示す通り、パケット送受信終了後、期間TNo Dataで示す「送受信パケット待ち受け時間=受信待機時間」の間、送受信パケットが発生しなかった場合には、自局が休止状態に移行することを示すPS−ONパケットを送信した上で、休止状態とする。また、期間TOffで示す「休止時間=受信休止時間」の間、休止状態を継続した後、自局が起動状態に移行することを示すPS−Offパケットを送信し、起動状態とする。
そして本発明においては、各サンプリング動作の終了時点で、前述した期間TNo Data、及び期間TOffの値の最適値を算出して更新する。このようにして発生したトラフィックの状況に応じて、受信待機時間及び受信休止時間を変動させることで、消費電力の削減と、スループットの維持を適正に行うことができるようになる。
次に、サンプリングしたトラフィックの各計測値から、スループットを維持しつつ、消費電力効果を最大にすることができる期間TNo Data、及び期間TOffの最適値を決定していく過程を図3および図4を用いて説明する。
図3は、ある典型的なトラフィックにおいて、TNo Data値をそれぞれ1ms、2ms、3ms、4msと固定した場合の、TOff値に対する平均消費電力の傾向を示している。また、図4は、図3と同じ条件を用いた場合の、スループットの傾向を示している。
図3から明らかなように、TOff値を大きくすれば、平均消費電力が下がっていくが、徐々にある値に収束していくことが分かる。つまり、ある値以上にTOff値を大きくしても、消費電力削減効果はさほど変化が無くなってしまうと言える。一方、図4によれば、あるTOff値を超えるとスループットを維持できなくなってしまうことを示している。
以下には、これらの特徴を利用し、スループットを維持しつつ平均消費電力を効率的に削減できるTNo Data値、TOff値の組み合わせを算出する過程を説明する。
まず、図3を用いて、消費電力が最小消費電力値のX%以内に収束する最も大きなTOff値を決定するイメージを説明する。初めに図で示す最小消費電力値を算出しておく。この算出式については後述する。図3内に示している平均消費電力が最小消費電力値のX%以内に収束する最も大きなTOff値は、後述の式2の方程式をTOffについて解いた解である。
一方、図4で示すように、前述で求めたTNo Data値、TOff値の組み合わせを用いた場合、スループットが低下することが予測される場合がある。そこで、前述で求めたTNo Data値、TOff値の組み合わせを用いた時のスループットをチェックする。スループットをチェックするためには、後述の式3から1つのデータフレームを受信するのに要する時間の期待値を求め、発生中トラフィックのデータフレーム平均到着間隔と比較する。
ここで、図4の例のように、スループットが低下してしまう場合には、スループットが低下しない最大のTOff値を求める。これは後述の式4の方程式をTOffについて解いた解である。本発明では、このようにして、スループットを維持しつつ平均消費電力を効果的に削減できるTNo Data値、TOff値の組み合わせを決定する。
次に、サンプリングしたトラフィックの各計測値から、スループットを維持しつつ、消費電力効果を最大にすることができる期間TNo Data、及び期間TOffの最適値を算出するアルゴリズム及び算出式について図5を用いて説明する。
まず、ステップ〔1〕では、サンプリング動作で得られるトラフィック特性及びシステム依存値を取得し、トラフィック計測テーブルに保存する。IEEE802.11規格に準ずる無線LANで、インフラストラクチュア・モード(infrastructure mode=アクセスポイントを使用するモード)、かつ送信開始確認(RTS/CTSの授受)を行わない場合のトラフィック計測テーブル例を下記表1に示す。
この表1において、802.11規定値の区分に含まれているパラメータは、IEEE802.11規格に記載されているものである。また、AP依存値の区分に含まれているパラメータは、アクセスポイントの設定に依存するものである。また、チップセット依存値の区分に含まれているパラメータは、端末局の各状態における消費電力値である。また、計測値の区分に含まれているパラメータは、サンプリング動作によって得られる、トラフィックの特性値である。
さらにステップ〔2〕では、算出後に期間TNo Data、及び期間TOffの最適値が得られなかった場合に備え、「常時ON(ON−Off制御をしない)」に返り値を初期化している。ステップ〔3〕の処理と、ステップ〔4〕の判定は、期間TNo Dataを初期値から、あるステップ(図中では1000μs)でインクリメントしながら、期間TNo Data最大値に達するまでループすることを表している。
ここで、ステップ〔5〕〜ステップ〔12〕の計算に共通的に用いられるパラメータを以下のように定める。
さらに、以降の計算簡略化のため、共通的に用いられる計算式を以下に示す。
*ビーコン受信合計時間期待値:
Tbeacon=PLCP
+(Beacon Frame Size・8/Beacon Rx Rate)]・[Ttotal/Tbeacon int]
*ビーコン受信に必要な電力期待値:
Pbeacon total=Prx state・Tbeacon
*ビーコン受信合計時間期待値:
Tbeacon=PLCP
+(Beacon Frame Size・8/Beacon Rx Rate)]・[Ttotal/Tbeacon int]
*ビーコン受信に必要な電力期待値:
Pbeacon total=Prx state・Tbeacon
*1データフレーム受信時間期待値:
Trcv=DIFS+2・PLCP+SIFS+ACK Frame Size・8/ACK Tx Rate
+(Data Frame Head Size+Payload rx)・8/Data Rx Rate
*データフレーム受信合計時間期待値:
Trcv total=(Trcv+TBack Off)・ (Ttotal/Rx int)
Trcv=DIFS+2・PLCP+SIFS+ACK Frame Size・8/ACK Tx Rate
+(Data Frame Head Size+Payload rx)・8/Data Rx Rate
*データフレーム受信合計時間期待値:
Trcv total=(Trcv+TBack Off)・ (Ttotal/Rx int)
*1データフレーム受信時電力期待値:
Prcv=(DIFS+SIFS)・Pwait state
+[PLCP+(Data Frame Head Size+Payload rx)・8/Data Rx Rate]・Prx state
+[PLCP+(ACK Frame Size・8/ACK Tx Rate)]・Ptx state
*データフレーム受信総電力期待値:
Prcv total=(Prcv+Pwait state・TBack Off)・(Ttotal/Rx int)
Prcv=(DIFS+SIFS)・Pwait state
+[PLCP+(Data Frame Head Size+Payload rx)・8/Data Rx Rate]・Prx state
+[PLCP+(ACK Frame Size・8/ACK Tx Rate)]・Ptx state
*データフレーム受信総電力期待値:
Prcv total=(Prcv+Pwait state・TBack Off)・(Ttotal/Rx int)
*1データフレーム送信時間:
Tsend=DIFS+2・PLCP+SIFS+ACK Frame Size・8/ACK Rx Rate
+(Data Frame Head Size+Payload tx)・8/Data Tx Rate
*データフレーム送信合計時間:
Tsend total=(Tsend+TBack Off)・(Ttotal/Tx int)
Tsend=DIFS+2・PLCP+SIFS+ACK Frame Size・8/ACK Rx Rate
+(Data Frame Head Size+Payload tx)・8/Data Tx Rate
*データフレーム送信合計時間:
Tsend total=(Tsend+TBack Off)・(Ttotal/Tx int)
*1データフレーム送信時電力期待値:
Psend=(DIFS+SIFS)・Pwait state
+[PLCP+(Data Frame Head Size+Payload tx)・8/Data Tx Rate]・Ptx state
+[PLCP+(ACK Frame Size・8/ACK Rx Rate)]・Prx state
*データフレーム送信総電力期待値:
Psend total=(Psend+Pwait state・TBack Off)・(Ttotal/Tx int)
Psend=(DIFS+SIFS)・Pwait state
+[PLCP+(Data Frame Head Size+Payload tx)・8/Data Tx Rate]・Ptx state
+[PLCP+(ACK Frame Size・8/ACK Rx Rate)]・Prx state
*データフレーム送信総電力期待値:
Psend total=(Psend+Pwait state・TBack Off)・(Ttotal/Tx int)
*1回のNullフレーム(PS−On/PS−off)送信時間:
Ton off send=DIFS+PLCP・2+SIFS+ACK Frame Size・8/ACK Rx Rate
+Data Frame Head Size・8/Data Tx Rate
*1回のNullフレーム(PS−On/PS−off)送信に必要な電力:
Pnull=(DIFS+SIFS)・Pwait state
+[PLCP+(Data Frame Head Size・8/Data Tx Rate)]・Ptx state
+[PLCP+(ACK Frame Size・8/ACK Rx Rate)]・Prx state
Ton off send=DIFS+PLCP・2+SIFS+ACK Frame Size・8/ACK Rx Rate
+Data Frame Head Size・8/Data Tx Rate
*1回のNullフレーム(PS−On/PS−off)送信に必要な電力:
Pnull=(DIFS+SIFS)・Pwait state
+[PLCP+(Data Frame Head Size・8/Data Tx Rate)]・Ptx state
+[PLCP+(ACK Frame Size・8/ACK Rx Rate)]・Prx state
*単位時間当たりの受信パケット平均発生数:λR=1/Rx int
*単位時間当たりの送信パケット平均発生数:λT=1/Tx int
*単位時間当たりの送信または受信パケット平均発生数:λ=λT+λR
*単位時間当たりの送信パケット平均発生数:λT=1/Tx int
*単位時間当たりの送信または受信パケット平均発生数:λ=λT+λR
*受信休止中にTxフレームが発生せず、PS−offフレームを送信する確率:
Pnull off on=Exp(−1・TOff/Tx int)
Pnull off on=Exp(−1・TOff/Tx int)
*微小時間にTxが発生する確率:Pdelta Tx=λT・Exp(−λT )
*微小時間にRxが発生する確率:Pdelta Rx=λR・Exp(−λR )
*TNo Data内でTx、Rxが発生せず、Offに移行する確率:
Pon off=Exp(−1・TNo Data・λT)・Exp(−1・TNo Data・λR)
*微小時間にRxが発生する確率:Pdelta Rx=λR・Exp(−λR )
*TNo Data内でTx、Rxが発生せず、Offに移行する確率:
Pon off=Exp(−1・TNo Data・λT)・Exp(−1・TNo Data・λR)
*受信休止時間(TOff)による遅延時間期待値:
Tsleep=(Toff cont+(Ton off send+TBack Off)・Pnull off on)・Pon off
*TNo Data以内に、Tx/Rxが発生し、待機状態を継続する合計時間期待値:
Twait=[(Ttotal/Tx int)・Pdelta Tx+(Ttotal/Rx int)・Pdelta Rx]・T1wait
Tsleep=(Toff cont+(Ton off send+TBack Off)・Pnull off on)・Pon off
*TNo Data以内に、Tx/Rxが発生し、待機状態を継続する合計時間期待値:
Twait=[(Ttotal/Tx int)・Pdelta Tx+(Ttotal/Rx int)・Pdelta Rx]・T1wait
*1回分On→Off→On時間期待値:
T1on off on=TNo Data+Toff cont+Ton off send+TBack Off k
+Pnull off on・(Ton off send+TBack Off)
*On→Off→On発生回数期待値:
Count on off
=(Ttotal−Tbeacon‐Trcv total‐Tsend total‐Twait)/T1on off on
T1on off on=TNo Data+Toff cont+Ton off send+TBack Off k
+Pnull off on・(Ton off send+TBack Off)
*On→Off→On発生回数期待値:
Count on off
=(Ttotal−Tbeacon‐Trcv total‐Tsend total‐Twait)/T1on off on
*Nullフレーム送信に必要な総電力期待値:
Pnull total=[1+Exp(−1・TOff/Tx int)]・Pnull・Count on off
*休止状態の総電力期待値:
Psleep=Poff state・Toff cont・Count on off
Pnull total=[1+Exp(−1・TOff/Tx int)]・Pnull・Count on off
*休止状態の総電力期待値:
Psleep=Poff state・Toff cont・Count on off
*休止状態への移行前のNo Data状態の総電力:
Pno data=Pwait state・Tno data cont・Count on off
*それ以外の待機電力:
Pwait=Pwait state・Twait
Pno data=Pwait state・Tno data cont・Count on off
*それ以外の待機電力:
Pwait=Pwait state・Twait
ステップ〔5〕では、各システムで定義する最大の期間TOffの値を用いた場合に消費されるであろう、消費電力値を、最小消費電力期待値として求める。ここで前述のトラフィック計測テーブル〔表1〕と、指定された期間TNo Data、及び期間TOffから消費電力期待値を算出する式を下記に示す。なお、この算出式では、単位時間あたりに発生する送信・受信パケットの数をポアソン分布に従うものとして、発生中トラフィックでの消費電力期待値を算出している。
すなわち、
消費電力期待値(P)=(Pbeacon total+Prcv total+Psend total+Pnull total
+Psleep+Pno data+Pwait)/Ttotal ・・・式1
である。
消費電力期待値(P)=(Pbeacon total+Prcv total+Psend total+Pnull total
+Psleep+Pno data+Pwait)/Ttotal ・・・式1
である。
次にステップ〔6〕に示す消費電力収束TOff値の算出処理を説明する。基本的にTOff値は大きい方が消費電力を削減できる。しかし、TOff値を大きくしても、無限に消費電力が小さくなるわけではなく、ある値に収束していく。これを鑑み、この処理では、前述で求めた最小消費電力値のX%以内に収束する最も大きなTOff値を算出する。
これを算出するには、
(P−Pmin) =X*Pmin/100 ・・・式2
という方程式をTOff値について解けばよい。
(P−Pmin) =X*Pmin/100 ・・・式2
という方程式をTOff値について解けばよい。
式2において、P値は、TNo Data値、TOff値、トラフィック計測テーブルの各パラメータで記述される関数である。また、Pmin値は、前述で求めた最小消費電力値である。従って式2を変形すると、TOff値についての指数関数方程式となるが、これを解くにはTOff値を変化させながら両辺を計算していくという方法が必要になる。しかし、動的にトラフィックに追随するには、時間的な制約上、このような計算方法は適切でない。
これ対して、指数成分を1次のテイラー展開により直線に近似すると、2次方程式として解くことができる。すなわち、上述の式2をTOff値について解くために、TOff値に依存しない部分を下記のように置き換える。
すなわち
Pno t-off=(Pbeacon total+Prcv total+Psend total)/Ttotal
+Pwait state・[λT・Pdelta Tx+λR・Pdelta Rx]・T1wait
‐(X/100+1)Pmin
Tno t-off=1‐(Tbeacon+Trcv total+Tsend total)/Tbeacon int
‐(λT・Pdelta Tx+λR・Pdelta Rx)・T1wait
とする。
Pno t-off=(Pbeacon total+Prcv total+Psend total)/Ttotal
+Pwait state・[λT・Pdelta Tx+λR・Pdelta Rx]・T1wait
‐(X/100+1)Pmin
Tno t-off=1‐(Tbeacon+Trcv total+Tsend total)/Tbeacon int
‐(λT・Pdelta Tx+λR・Pdelta Rx)・T1wait
とする。
さらに
x=λT・TOff
A=Tno t-off・[Pnull‐Poff state・Exp(-λT)/λT]
+Pno t-off・[Toff on send+TBack Off−Exp(-λT)/λT]
B=Tno t-off・[Poff state/λT‐Poff state・Exp(-λT)/λT]
+Pno t-off・[1/λT‐Exp(-λT)/λT]
C=Tno t-off・[Pnull+Poff state・Exp(-λT)/λT+Pwait state・TNo Data]
+Pno t-off・[TNo Data+Ton off send+TBack Off+Exp(-λT)/λT]
とする。
x=λT・TOff
A=Tno t-off・[Pnull‐Poff state・Exp(-λT)/λT]
+Pno t-off・[Toff on send+TBack Off−Exp(-λT)/λT]
B=Tno t-off・[Poff state/λT‐Poff state・Exp(-λT)/λT]
+Pno t-off・[1/λT‐Exp(-λT)/λT]
C=Tno t-off・[Pnull+Poff state・Exp(-λT)/λT+Pwait state・TNo Data]
+Pno t-off・[TNo Data+Ton off send+TBack Off+Exp(-λT)/λT]
とする。
上記のように置き換えると、式2は
A・Exp(−x)+B・x・Exp(−x)+C=0
のように整理できる。しかしながら、このままの指数関数方程式では解くことができない。
A・Exp(−x)+B・x・Exp(−x)+C=0
のように整理できる。しかしながら、このままの指数関数方程式では解くことができない。
そこで本実施形態においては、休止状態の時に送信(Tx)が発生した場合、直ちに起動状態へ移行する方式であることから、TOff値はTx int値より長くする意味はないので、0≦x≦1と仮定する。
さらに1次のテイラー展開により、Exp(−x)をx=t(0≦t≦1)の周りで直線に近似すると、
Exp(−x)≒e-t−e-t(x−t)=−Exp(−t)x+(t+1)Exp(−t)
と近似でき、これを使用して下記のように2次方程式に近似できる。
−B・Exp(−t)x2+[B・(t+1)Exp(−t)−A・Exp(−t)]x
+C+A・(t+1)Exp(−t)=0
Exp(−x)≒e-t−e-t(x−t)=−Exp(−t)x+(t+1)Exp(−t)
と近似でき、これを使用して下記のように2次方程式に近似できる。
−B・Exp(−t)x2+[B・(t+1)Exp(−t)−A・Exp(−t)]x
+C+A・(t+1)Exp(−t)=0
さらに、整理するため、下記のように置き換えを行う。
a=−B・Exp(−t)
b=B・(t+1)Exp(−t)−A・Exp(−t)
c=C+A・(t+1)Exp(−t)
a=−B・Exp(−t)
b=B・(t+1)Exp(−t)−A・Exp(−t)
c=C+A・(t+1)Exp(−t)
このように置き換えることにより、上記の方程式は下記のように通常の2次方程式となる。
a・x2+b・x+c=0
a・x2+b・x+c=0
そしてxの解は、2次方程式の公式から、
x=[−b±√(b2−4ac)]/2a
となるので、求めるTOff値は、
TOff=x/λT=[−b±√(b2−4ac)]/2aλT
となる。このようにして、TOff値を求めることができる。
x=[−b±√(b2−4ac)]/2a
となるので、求めるTOff値は、
TOff=x/λT=[−b±√(b2−4ac)]/2aλT
となる。このようにして、TOff値を求めることができる。
ただし、上述の計算で、判別式b2−4acが負の場合は解なしである。また、上記2つの解がいずれも負の場合も解なしである。さらに、0≦t≦1の周りでテイラー展開をしたので、上記2つの解のうち、0≦x≦1にある方の解をTOff値とし、2つの解が共に0≦x≦1の場合は大きい方の解をTOff値とする。一方、上記2つの解がいずれもx>1である場合は、誤差が大きいため、TOff値=Tx int値とする。
従ってステップ〔7〕では、前述の2次方程式の判別式が負になる場合等、「解なし」の場合にはステップ〔3〕に戻り、次のTNo Data値での計算を行う。
さらにステップ〔8〕で、ステップ〔6〕の解が平均送信間隔より大きくなる場合に、平均送信間隔値をTOff値に設定しているのは、例に挙げているIEEE802.11規格に準ずる無線LANで、送信パケット発生時は直ちに休止状態から起動状態に移行するということから、平均送信間隔よりも大きなTOff値には意味がないからであり、通信方式によってはこの処理は不要である。
次に、ステップ〔9〕に示す平均受信時間期待値算出処理を説明する。この処理は、発生中のトラフィックに対して、前述で求めた「期待する消費電力が、最小消費電力値のX%に収束するTOff値」を適用した場合に生じる受信時間(休止状態により生じた遅延時間を含む)を求めるための処理である。
すなわち、トラフィック計測テーブル、ステップ〔6〕〜ステップ〔8〕で求められたTOff値、TNo Data値から、1パケットあたりの受信時間期待値を算出する式を下記に示す。尚、この算出式では、単位時間あたりに発生する送信・受信パケットの数をポアソン分布に従うものとして、発生中トラフィックでの1パケットあたりの受信時間期待値を算出している。
Trx=Trcv+Tback off+Tsleep ・・・式3
Trx=Trcv+Tback off+Tsleep ・・・式3
式3において、項Trcvは1パケット受信に最小限必要とする処理時間期待値、項Tback offは1パケット受信する際に、送信側の端末の衝突監視処理によって生じる遅延の期待値である。さらに、項Tsleepは指定したTOff値(受信休止時間)によって生じる遅延期待値を示している。これらの項は、いずれも、前述の共通的に用いられる計算式により算出することができる。
さらにステップ〔10〕では、ステップ〔9〕で得られた1パケットあたりの受信時間期待値と、実際に発生している受信トラフィックの平均受信パケット発生間隔を比較することによって、ステップ〔6〕〜〔8〕で求めたTOff値(受信休止時間)を適用した場合に、受信スループットの低下が発生するかどうかをチェックしている。
もし、ステップ〔9〕で得られた1パケットあたりの受信時間期待値が、実際に発生している受信トラフィックの平均受信パケット発生間隔より短い時間ならば、ステップ〔6〕〜〔8〕で求めたTOff値を適用してもスループット低下が発生しないと予測されることから、ステップ〔11〕に進み、保持中のTNo Data値、ステップ〔6〕〜〔8〕で求めたTOff値を最適値として算出できたことになる。
逆に、ステップ〔9〕で得られた1パケットあたりの受信時間期待値が、実際に発生している受信トラフィックの平均受信パケット発生間隔より長くなってしまう場合には、ステップ〔6〕〜〔8〕で求めたTOff値を適用すると、消費電力においては、良好な値が得られるものの、受信スループットが低下する恐れがあることを示している。
このような場合には、ステップ〔12〕のスループット非低下値算出処理を行う。この処理の目的は、実際に発生している受信トラフィックで許容できる最大のTOff値を求めることである。
これを算出するには、
Trx=Rx int ・・・式4
という方程式をTOff値について解けばよい。
Trx=Rx int ・・・式4
という方程式をTOff値について解けばよい。
すなわち式4において、項Trxは、式3で示される通り、TNo Data値、TOff値、トラフィック計測テーブルの各パラメータで記述される関数である。また、項Rx intは、トラフィック計測テーブルから算出可能な受信パケット発生間隔である。式4を変形すると、TOff値についての指数関数方程式となるが、これを解くにはTOff値を変化させながら、両辺を計算していくという方法が必要になる。しかし、動的にトラフィックに追随するには、時間的な制約上、このような計算方法は適切でない。
これ対して、指数成分を1次のテイラー展開により直線に近似すると、2次方程式として解くことができる。すなわち、上述の式4をTOff値について解くために、TOff値に依存しない部分を下記のように置き換える。
A=(Tback off+Tnull send)−(1/λT)・Exp(−λT)
B=[1−Exp(−λT)]/λT
C=Exp(−λT)/λT−[Rx int−(Trcv+Tback off)]/Pon off
B=[1−Exp(−λT)]/λT
C=Exp(−λT)/λT−[Rx int−(Trcv+Tback off)]/Pon off
上記のように置き換えると、式4は
A・Exp(−x)+B・x・Exp(−x)+C=0
のように整理できる。しかしながら、このままの指数関数方程式は解くことができない。そこで、休止状態の時にTxが発生した場合、直ちに起動状態へ移行する方式であることから、TOff値はTx intより長くする意味はないので、0≦x≦1と仮定する。
A・Exp(−x)+B・x・Exp(−x)+C=0
のように整理できる。しかしながら、このままの指数関数方程式は解くことができない。そこで、休止状態の時にTxが発生した場合、直ちに起動状態へ移行する方式であることから、TOff値はTx intより長くする意味はないので、0≦x≦1と仮定する。
さらに、1次のテイラー展開により、Exp(−x)をx=t(0≦t≦1)の周りで直線に近似すると
Exp(−x)≒e-t−e-t(x−t)=−Exp(−t)x+(t+1)Exp(−t)
と近似でき、これを使用して下記のように2次方程式に近似できる。
−B・Exp(−t)x2+[B・(t+1)Exp(−t)−A・Exp(−t)]x
+C+A・(t+1)Exp(−t)=0
Exp(−x)≒e-t−e-t(x−t)=−Exp(−t)x+(t+1)Exp(−t)
と近似でき、これを使用して下記のように2次方程式に近似できる。
−B・Exp(−t)x2+[B・(t+1)Exp(−t)−A・Exp(−t)]x
+C+A・(t+1)Exp(−t)=0
さらに、整理するため、下記のように置き換えを行う。
a=−B・Exp(−t)
b=B・(t+1)Exp(−t)−A・Exp(−t)
c=C+A・(t+1)Exp(−t)
このように置き換えれば、上記方程式は下記のように通常の2次方程式となる。
a・x2+b・x+c=0
a=−B・Exp(−t)
b=B・(t+1)Exp(−t)−A・Exp(−t)
c=C+A・(t+1)Exp(−t)
このように置き換えれば、上記方程式は下記のように通常の2次方程式となる。
a・x2+b・x+c=0
また、xの解は、2次方程式の公式から、
x=[−b±√(b2−4ac)]/2a
となるので、
TOff=x/λT
=[−b±√(b2−4ac)]/2aλT
となる。
x=[−b±√(b2−4ac)]/2a
となるので、
TOff=x/λT
=[−b±√(b2−4ac)]/2aλT
となる。
さらに、判別式b2−4acが負の場合は、解なしとする。また、上記2つの解がいずれも0≦x≦1にない場合も誤差が大きく、スループット維持が不確定なため、解なしとする。さらに0≦t≦1の周りでテイラー展開をしたので、上記2つの解のうち、0≦x≦1にある方の解をTOff値とする。共に0≦x≦1の場合は、大きい方の解をTOff値とする。
従ってステップ〔13〕では、前述の2次方程式の判別式が負になる場合等、「解なし」の場合にはステップ〔3〕に戻り、次のTNo Data値の計算をする。
また、ステップ〔14〕で、ステップ〔12〕の解が平均送信間隔より大きくなる場合に、平均送信間隔値をTOff値に設定しているのは、例に挙げているIEEE802.11規格に準ずる無線LANで、送信パケット発生時は直ちに休止状態から起動状態に移行するということから、平均送信間隔よりも大きなTOff値には意味がないからであり、通信方式によってはこの処理は不要である。
このようにして、ステップ〔12〕〜〔15〕でスループットを低下させない最大のTOff値と、TNo Data値の組み合わせを発見できた場合は、これらを最適値として算出できたことになる。また、TNo Data値を初期値から、あるステップ(図中では1000μs)でインクリメントしながら、TNo Data値が最大値に達するまでループし、ステップ〔5〕〜〔12〕の処理を行っても、依然として解が発見できなかった場合は、最適値なし(=受信休止時間を設定することは望ましくない)という結果を返すことになる。
なお、本実施例では、休止状態時に自局から送信すべきパケットが発生した場合は、直ちに起動状態に移行することから、受信休止時間による送信スループットの低下は考慮する必要がないため、スループットが低下しないTOff値の算出時に、受信のみを考慮した。しかしながら休止状態時に送信も遅延させるような方式の場合は、同様の計算を送信トラフィックについても行うべきである。
この実施形態において、自己のパケット送受信のトラフィックの状況を計測し、計測されたトラフィックの状況を元に、パケット送受信のトラフィックが任意の確率分布に従うものと仮定して、自己の受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出するようにしたことによって、休止時間を最大限に設定しながらトラフィックの受信時間期待値(スループット)の維持も可能にする、受信待機時間と、受信休止時間を算出することができる。
これによって、パケット送受信時間が予約されない通信システムにおいて、従来の装置では、消費電力削減効果を向上させることができず、また、スループットの低下を招く恐れを解消することができなかったものを、本発明によればこれらの問題点を容易に解消することができるものである。
さらに本発明によれば、パケット送受信時間が予約されない通信方式において、前述したスループットが低下しないTOff値、TNo Data値の算出方法を受信休止時間として利用する以外に、QoS制御に利用することも可能である。
また、本発明によれば、例えばIEEE802.11規格に準ずる無線LANで、インフラストラクチュア・モード(infrastructure mode=アクセスポイントを使用するモード)において、アクセスポイントは配下に管理している複数の端末局に対する送受信の時間割当を行うことも可能である。
通常、FIFO処理で送受信パケットを処理するが、トラフィック負荷によっては、特定の端末局に送受信時間割当が集中してしまい、公平性が損なわれることもある。そこで、アクセスポイントが各端末のそれぞれでスループットが低下しないTOff値、TNo Data値を算出し、ある端末局についてTOff値で設定された時間は、その他の端末局の送受信時間に割り当てれば、スループットの公平性を保つことが可能となる。
さらに、図6を用いて本発明の効果を説明する。図6は、IEEE802.11規格に準ずる無線LANで、インフラストラクチュア・モード(infrastructure mode=アクセスポイントを使用するモード)かつ送信開始確認(RTS/CTSの授受)を行わないの場合を前提に、平均消費電力を計算した結果である。
なお、横軸は受信トラフィック(アクセスポイント→端末局)のデータ発生レート(Mbps)を表している。縦軸は単位時間あたりの平均消費電力(mW)を表している。
計算に用いた固定値は以下の通りである。
(802.11規定値)
IEEE802.11aで規定される値
(AP依存値)
ビーコンインターバル(ms):100ms
ビーコンフレームサイズ(byte):64byte
ビーコン送信PHYレート(Mbps):6Mbps
IEEE802.11aで規定される値
(AP依存値)
ビーコンインターバル(ms):100ms
ビーコンフレームサイズ(byte):64byte
ビーコン送信PHYレート(Mbps):6Mbps
(チップセット依存値)
Doze:60mW
Awake:988mW
Tx:1589mW
Rx:1151mW
これらの値は、IEEE802.11aの無線LANで現実的な数値である。
Doze:60mW
Awake:988mW
Tx:1589mW
Rx:1151mW
これらの値は、IEEE802.11aの無線LANで現実的な数値である。
ここで、図6のグラフに示す通り、従来の技術では、受信トラフィック量が非常に低い場合のみ有効で、トラフィックが一定量以上発生している状態では、省電力モードを使わない場合とほとんど平均消費電力の特性が変わらないことが見てとれる。一方、本発明を適用すると、受信トラフィック量に応じて、適切に受信休止時間を設定しているため、従来の技術よりも効果的に消費電力の削減ができていることが見てとれる。
こうして上述の通信端末装置によれば、自己のパケット送受信のトラフィックの状況を計測する計測手段と、計測されたトラフィックの状況を元に、パケット送受信のトラフィックが任意の確率分布に従うものと仮定して、自己の受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出する算出手段とを有することにより、休止時間を最大限に設定しながらトラフィックの受信時間期待値(スループット)の維持も可能にすることができるものである。
また、上述の通信端末装置の消費電力削減方法によれば、自己のパケット送受信のトラフィックの状況を計測し、計測されたトラフィックの状況を元に、パケット送受信のトラフィックが任意の確率分布に従うものと仮定して、自己の受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出することにより、休止時間を最大限に設定しながらトラフィックの受信時間期待値(スループット)の維持も可能にし、消費電力を効率よく削減することができるものである。
なお、本発明は、通信端末装置の単体でも実施可能なものであり、例えば既存の無線LANシステムに対して、本発明の通信端末装置を接続した場合に、上述の作用効果が発揮されるものである。また、本発明は上述した無線LANシステムに限らず、例えば携帯電話システムは現状ではTDMA方式が用いられているものであるが、これがCSMA方式となった場合には、利用可能な技術となるものである。
さらに本発明は、上述の説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱することなく種々の変形が可能とされるものである。
1…通信端末装置の全体の処理を行うCPU(Central Processing Unit)、2…メインメモリ、3…バスライン、4…ハードディスク装置、5…その他の周辺回路、6…キーボード、7…ディスプレイ7、8…送受信制御回路、9…MAC(Media Access Control:媒体アクセス制御)回路、10…PHY(Physical Layer Protocol:物理層プロトコル)回路
Claims (20)
- 複数の通信端末で構成され、パケット送受信時間が予約されない通信システムに用いられる通信端末装置であって、
自己のパケット送受信のトラフィックの状況を計測する計測手段と、
前記計測されたトラフィックの状況を元に、前記パケット送受信のトラフィックが任意の確率分布に従うものと仮定して、自己の受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出する算出手段と
を有することを特徴とする通信端末装置。 - 請求項1記載の通信端末装置において、
前記算出手段は、平均消費電力の期待値を、前記計測されたトラフィックの状況における必要最低限の消費電力に対して、任意に設定された割合に収束させる前記受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出する
ことを特徴とする通信端末装置。 - 請求項1記載の通信端末装置において、
前記算出された受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値に基づいて前記通信システムでの受信時間期待値を推定する推定手段を有し、
前記推定された受信時間期待値が前記通信システムでの平均受信時間期待値を下回らないとき、前記算出された受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値に基づく処理を実行する
ことを特徴とする通信端末装置。 - 請求項3記載の通信端末装置において、
前記推定手段で推定された受信時間期待値が前記通信システムでの平均受信時間期待値を下回ったときは、前記平均受信時間期待値を下回らない前記受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出する
ことを特徴とする通信端末装置。 - 請求項1記載の通信端末装置において、
前記受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出する算出手段は、
前記受信待機時間を任意に定めて前記計測されたトラフィックの状況に基づく受信休止時間の最大期待値の算出を行うと共に、
前記受信休止時間の最大期待値の解が得られないときは、前記受信待機時間を変更して、再度前記受信休止時間の最大期待値の算出を行う
ことを特徴とする通信端末装置。 - 請求項1記載の通信端末装置において、
前記算出された受信待機時間の最大期待値の間にパケット送受信の発生がなかったときは、起動状態から休止状態に移行する
ことを特徴とする通信端末装置。 - 請求項6記載の通信端末装置において、
前記休止状態は、前記算出された受信休止時間の最大期待値の間継続される
ことを特徴とする通信端末装置。 - 請求項1記載の通信端末装置において、
前記受信待機時間または受信休止時間の最大期待値の算出が不能のときは、予め設定された次の算出のタイミングまで休止状態への移行を行わない
ことを特徴とする通信端末装置。 - 請求項1記載の通信端末装置において、
前記トラフィックの状況を計測する計測手段は、予め設定されたサンプリング期間の周期で計測を行うと共に、前記サンプリング期間の周期を2種以上設けて複数の計測を行う
ことを特徴とする通信端末装置。 - 請求項9記載の通信端末装置において、
前記予め設定されたサンプリング期間の周期は、前記通信システムにおける規定の起動のタイミングの周期と、前記算出された受信待機時間の最大期待値の経過後の休止状態に移行するタイミングの周期についてそれぞれ計測を行う
ことを特徴とする通信端末装置。 - 複数の通信端末で構成され、パケット送受信時間が予約されない通信システムに用いられる通信端末装置の消費電力削減方法であって、
自己のパケット送受信のトラフィックの状況を計測し、
前記計測されたトラフィックの状況を元に、前記パケット送受信のトラフィックが任意の確率分布に従うものと仮定して、自己の受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出する
ことを特徴とする通信端末装置の消費電力削減方法。 - 請求項11記載の通信端末装置の消費電力削減方法において、
前記受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値の算出は、平均消費電力の期待値を、前記計測されたトラフィックの状況における必要最低限の消費電力に対して、任意に設定された割合に収束させる前記受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出する
ことを特徴とする通信端末装置の消費電力削減方法。 - 請求項11記載の通信端末装置の消費電力削減方法において、
前記算出された受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値に基づいて前記通信システムでの受信時間期待値を推定し、
前記推定された受信時間期待値が前記通信システムでの平均受信時間期待値を下回らないとき、前記算出された受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値に基づく処理を実行する
ことを特徴とする通信端末装置の消費電力削減方法。 - 請求項13記載の通信端末装置の消費電力削減方法において、
前記推定された受信時間期待値が前記通信システムでの平均受信時間期待値を下回ったときは、前記平均受信時間期待値を下回らない前記受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出する
ことを特徴とする通信端末装置の消費電力削減方法。 - 請求項11記載の通信端末装置の消費電力削減方法において、
前記受信待機時間及び受信休止時間の最大期待値を算出は、
前記受信待機時間を任意に定めて前記計測されたトラフィックの状況に基づく受信休止時間の最大期待値の算出を行うと共に、
前記受信休止時間の最大期待値の解が得られないときは、前記受信待機時間を変更して、再度前記受信休止時間の最大期待値の算出を行う
ことを特徴とする通信端末装置の消費電力削減方法。 - 請求項11記載の通信端末装置の消費電力削減方法において、
前記算出された受信待機時間の最大期待値の間にパケット送受信の発生がなかったときは、起動状態から休止状態に移行する
ことを特徴とする通信端末装置の消費電力削減方法。 - 請求項16記載の通信端末装置の消費電力削減方法において、
前記休止状態は、前記算出された受信休止時間の最大期待値の間継続される
ことを特徴とする通信端末装置の消費電力削減方法。 - 請求項11記載の通信端末装置の消費電力削減方法において、
前記受信待機時間または受信休止時間の最大期待値の算出が不能のときは、予め設定された次の算出のタイミングまで休止状態への移行を行わない
ことを特徴とする通信端末装置の消費電力削減方法。 - 請求項11記載の通信端末装置の消費電力削減方法において、
前記トラフィックの状況を計測する計測手段は、予め設定されたサンプリング期間の周期で計測を行うと共に、前記サンプリング期間の周期を2種以上設けて複数の計測を行う
ことを特徴とする通信端末装置の消費電力削減方法。 - 請求項19記載の通信端末装置の消費電力削減方法において、
前記予め設定されたサンプリング期間の周期は、前記通信システムにおける規定の起動のタイミングの周期と、前記算出された受信待機時間の最大期待値の経過後の休止状態に移行するタイミングの周期についてそれぞれ計測を行う
ことを特徴とする通信端末装置の消費電力削減方法。
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