JP2005032845A - ボンド磁石及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、磁気特性を損なうことなく信頼性を向上させたボンド磁石を提供すること。
【解決手段】表面に、第1層として金属被膜が、最外層である第2層としてダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が形成されている。これによれば、リング状ボンド磁石の表面に、第1層として金属被膜が、最外層である第2層としてダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が形成されているので、耐スクラッチ性、耐薬品性、耐食性などを向上させることができる。最外層に樹脂塗膜を形成した従来のボンド磁石に比し、表面硬度を上げることによって耐スクラッチ性を向上できることから、特に精密電子部品など高い信頼性が要求される場合に有効である。また、金属被膜の表面にダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成したため、両被膜の間で充分な密着性が得られるとともに、その形成が容易である。
【選択図】 なし
【解決手段】表面に、第1層として金属被膜が、最外層である第2層としてダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が形成されている。これによれば、リング状ボンド磁石の表面に、第1層として金属被膜が、最外層である第2層としてダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が形成されているので、耐スクラッチ性、耐薬品性、耐食性などを向上させることができる。最外層に樹脂塗膜を形成した従来のボンド磁石に比し、表面硬度を上げることによって耐スクラッチ性を向上できることから、特に精密電子部品など高い信頼性が要求される場合に有効である。また、金属被膜の表面にダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成したため、両被膜の間で充分な密着性が得られるとともに、その形成が容易である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に被膜が形成されたボンド磁石及びその製造方法に関する。より詳しくは、例えばコンピューターに搭載されるハードディスクのモータなどの精密電子部品に使用されるリング状のボンド磁石及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスク用モータなどの精密電子部品に使用されるリング状磁石には、例えばNd−Fe−B系、Sm−Fe−N系、Sm−Co系などのいわゆる希土類材料を磁石材料として使用し、結合樹脂を用いてリング状の成形体としたボンド磁石が用いられている。これらのボンド磁石は酸化し易い希土類金属や鉄を含んでいることから、わずかな酸や塩素イオン等を含んだ水などによって腐食されて錆を生じさせるといった欠点を持つ。ボンド磁石に錆を生じさせてしまった場合には磁気特性が著しく低下してしまい、磁石としての機能を充分に発揮できなくなると同時に、錆による被膜破壊や微細な腐食成分の飛散等が発生し、結果として精密電子部品の信頼性を低下させてしまっていた。
【0003】
このように耐食性に劣るボンド磁石の耐食性を向上させるため、下地層として金属被膜を設け、さらにその表面に樹脂塗膜を設けた磁石が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、樹脂塗膜を形成させる際に用いられる樹脂塗料は、樹脂、顔料もしくは染料から成る固形成分と、これを分散または溶解させる溶剤(有機溶剤、もしくは水、もしくは有機溶剤と水の混合物)から構成されており、そのため塗装後には前記溶剤を揮発させる工程が必要となる。そのため、溶剤の揮発に伴い樹脂塗膜には微小なガスの抜け穴が多数形成されてしまい、ここから腐食を生じてしまうという問題があった。このようなガス抜け穴による耐食性の低下を防止する観点から、樹脂塗膜は一定以上の膜厚が必要である。
【0005】
また、樹脂を塗装した後に加熱処理することで樹脂成分を溶融・硬化させる工程において、リング状ボンド磁石の角部の樹脂が溶融とともに引けを起こすことで角部の膜厚が薄くなってしまう。そのため、特に角部においては接合する相手部材との接触頻度が多く、また圧入に近い状態に成り易いため、薄い膜厚のままでは地肌(すなわち、磁石材料)の一部または全部が露出してしまい、耐食性の低下につながっていた。このように、樹脂塗膜の膜厚は一定以上必要となってくる。
【0006】
また、特にボンド磁石の形状がリング状である場合には、樹脂塗膜を形成させる静電塗装方法、電着塗装方法、スプレー塗装方法等において磁石の内周面が電気的または幾何学的に塗装の「影」となるため、外周・端面等に比べて内周面は膜厚が薄くなってしまう。従って、角部と同様に内周面の膜厚も一定以上確保することが前提となるため、外周面や端面の膜厚は必然的に必要以上の膜厚が形成されることになってしまう。このように、リング状のボンド磁石においては、均一かつ精密な樹脂塗膜を形成することが特に困難であった。
【0007】
また、耐食性を向上させるために非磁性物である樹脂塗膜の膜厚を厚くすることに伴って構成する磁気回路の磁気抵抗が増大し、ボンド磁石本体が本来有する磁気特性を充分に発現することができず、モータ特性を低下させてしまうといった問題があった。特に、リング状ボンド磁石は限られたモータの空間内で最大限の効率を発揮することが求められるため、高寸法精度および高磁気特性の要求に対して、僅かな磁気特性の低下が大きな問題となってしまっていた。
【0008】
【特許文献1】
特開平3−11714号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その課題は、磁気特性を損なうことなく信頼性を向上させたボンド磁石及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係るボンド磁石の発明は、表面に、第1層として金属被膜が、最外層である第2層としてダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が形成されていることを特徴とする。
【0011】
この特徴によれば、リング状ボンド磁石の表面に、第1層として金属被膜が、最外層である第2層としてダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が形成されているので、耐スクラッチ性、耐薬品性、耐食性などを向上させることができる。最外層に樹脂塗膜を形成した従来のボンド磁石に比し、表面硬度を上げることによって耐スクラッチ性を向上できることから、特に精密電子部品など高い信頼性が要求される場合に有効である。また、金属被膜の表面にダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成したため、両被膜の間で充分な密着性が得られるとともに、その形成が容易である。
【0012】
また、ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が薄い場合であっても耐スクラッチ性、耐薬品性、耐食性などを向上させる効果が充分得られるので、該ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が非磁性であることによるパーミアンスの低下を防ぐことができ、もってボンド磁石本体(磁石材料と結合樹脂を有する中心部分)の磁性を損なうことがほとんどない。また、被膜部分を薄くすることができることから、全体に占めるボンド磁石本体部分の割合をより高めることができ、より高い磁気特性を得ることができる。
【0013】
また、本発明の第2の態様に係るボンド磁石の発明は、前記第1の態様において、前記金属被膜の膜厚が5〜50μmであり、前記ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜の膜厚が0.5〜4μmであることを特徴とする。
【0014】
この特徴によれば、第1層としての金属被膜の膜厚が5〜50μmであるので、ピンホールがほとんどない緻密な被膜を形成することができるとともに、高い寸法精度で膜厚を調整することができる。
【0015】
また、ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜の膜厚が0.5〜4μmであるので、高い寸法精度で膜厚を調整することができ、もって精密電子部品など高い精度の寸法が求められる場合に特に有効である。また、非磁性膜である該ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜によるパーミアンスの低下を最小限に防ぐことができ、もってボンド磁石本体が有する磁気特性を最大限に発現させることができる。
【0016】
すなわち、ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜は、膜厚が0.5〜4μmと薄くとも充分な耐スクラッチ性、耐薬品性、耐食性等が得られるので、該ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜による磁気特性の低下を最小限に抑制することができ、ボンド磁石本体が有する磁気特性を最大限に発現できる。また、被膜が薄くなった分だけ全体に占めるボンド磁石本体の割合を高めることができ、もって全体として同一の外形寸法であっても、従来の樹脂塗装を施したボンド磁石よりも磁気特性を一層高めることができる。
【0017】
また、本発明の第3の態様に係るボンド磁石の製造方法の発明は、ボンド磁石の表面に、第1層として金属被膜を形成した後、最外層である第2層としてダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成することを特徴とする。
【0018】
この特徴によれば、前記第1の態様と同様の効果が得られる。
また、例えばイオンプレーティング法などの低温表面処理でダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成することができるので、ボンド磁石本体に対して熱による影響を与えることがない。すなわち、ボンド磁石本体は結合樹脂を含んでいるため高温で処理した場合には該結合樹脂が熱によって変性してしまう恐れがあり、また、磁石粉末自体も高熱による酸化で最も重要な磁気特性を損なう恐れがある。しかしながら、本発明によればボンド磁石本体に影響を与えることなくダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成することが可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明に係るボンド磁石の本体は、リング形状であって、磁石材料と結合樹脂(バインダー)とを成形することで構成することができる。また、使用条件などに応じて酸化防止剤などの添加剤を適宜添加することもできる。
【0020】
磁石材料としては、R−TM−B系合金(Rは、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種、TMは、Feを主とする遷移金属、以下同様)、R−TM−N系合金、R−Co系合金、ナノコンポジット磁石、および、上記合金の少なくとも2種以上を混合したもの、および、上記合金のうち少なくとも1種とフェライト粉末(例えば、BaO・6Fe2O3等のBa―フェライト、SrO・6Fe2O3等のSr―フェライトや、これらの一部を他の遷移金属、希土類元素で置換したもの等)を混合したもの等が例示できる。
【0021】
また、結合樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
磁石材料と結合樹脂とを成形する方法としては、圧縮成形方法、押出成形方法、カレンダー成形方法、射出成形方法等を例示することができ、より高性能なリング形状に成形するためには圧縮成形方法が好ましい。
【0023】
リング状ボンド磁石は、内周部のプレーティング性を考慮して、内径(d)と高さ(L)との関係が、d/L≧1であることが好ましく、d/L≧0.5であることがより好ましい。
【0024】
本発明における第1層としての金属被膜としては、Ni、Cu、Cr、Fe、Zn、Cd、Sn、Pd、Al、Au、Ag、Pd、Pt、Ph等、またはこれらのうち少なくとも一種を成分として含む合金等を例示できる。これらのうち、強磁性材の一つであるNiを主成分とする金属被膜が好ましい。
【0025】
また、金属被膜の膜厚は、5〜50μm程度であることが好ましく、10〜40μm程度であればより好ましい。金属被膜の膜厚が上記範囲であると、ピンホールがない緻密な被膜を形成することができるとともに、膜厚の寸法を高い精度で制御することができる。従って、精密電子部品など特に高い寸法精度が求められる場合に有効である。
【0026】
金属被膜の成膜方法としては、例えば、電解めっき法、無電解めっき法、蒸着法等を使用することができる。電解めっき法において用いる電解めっき浴、無電解めっき法において用いる無電解めっき浴は、めっきする金属種によって適宜選択することができる。また、成膜条件を設定することにより金属被膜の膜厚を高い精度で調整することができる。
【0027】
本発明における最外層である第2層としてのダイヤモンド・ライク・カーボン被膜は、膜厚が0.5〜4μm程度であることが好ましく、1〜2μm程度であればより好ましい。
【0028】
ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜の成膜方法としては、例えば、PVD法、CVD法等のドライプロセスを例示することができ、第1層である金属被膜の表面に高い密着性をもって確実にコーティングすることができることからイオンプレーティング法が好ましい。イオンプレーティング法は、例えば、真空炉中に炭化水素系ガスを導入し、直流アーク放電プラズマ等によって炭化水素イオンや励起ラジカルを発生させ、負の電圧に印可された被処理物(本発明においては、第1層である金属被膜が成膜されたリング状ボンド磁石)に炭化水素イオンを電気的エネルギーによって衝突させることにより行うことができる。
【0029】
ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜は、160〜200℃程度の温度領域で成膜することが好ましい。成膜温度が上記範囲であると、所望する膜機能(硬度、耐摩耗性、金属被膜との膜密着性など)を得ることができるとともに、高い寸法精度で膜厚を調整することができる。また、ボンド磁石本体を構成する結合樹脂、および磁石粉末の耐熱温度領域であるためボンド磁石本体に熱による影響を与えることがなく、もって磁気特性を損なうことがない。
【0030】
最外層にダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成することにより、表面硬度を上げて耐摩耗性、耐スクラッチ性を向上させることができ、着磁や他部品との接合の際など他の部材と接触した場合であっても表面のキズや破損などの恐れがない。また、酸、アルカリ、有機溶剤などに対する耐薬品性、塩水などに対する耐食性をより一層高めることもでき、もって腐食性の高い使用条件下、例えば酸性ガス雰囲気下においても有効に使用することできる。
【0031】
また、第2層であるダイヤモンド・ライク・カーボン被膜の膜厚は、0.5〜4μm程度と充分に薄いので、ボンド磁石としての磁気特性を損なうことなく、上記効果が得られる。すなわち、ボンド磁石表面に形成される非磁性膜が厚い場合には、パーミアンスが低下することによって、ボンド磁石本体が本来有する磁気特性を有効に発現できず、表面における磁気特性を低下させてしまっていた。しかし、本発明においてはパーミアンスの低下を最小限に防ぐことができるので、表面における磁気特性を損なうことがない。
【0032】
また、従来と比し、被膜全体の膜厚を薄くすることができるので、全体に占めるボンド磁石本体の割合を高めることができ、もって全体として同一の外形寸法であっても磁気特性をより一層高めることができる。
【0033】
【実施例】
次に、実施例、比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによってなんら制約されるものではない。
【0034】
実施例
<リング状ボンド磁石の作成>
合金組成がR−TM−B系合金で構成される磁石材料(MQI社製のMQP−B粉末)と、エポキシ樹脂と、少量のヒドラジン系酸化防止剤とを混合し、これらを常温で30分間混練してボンド磁石用組成物(コンパウンド)を作成した。このとき、磁石粉末、エポキシ樹脂、ヒドラジン系酸化防止剤の配合比率(重量比)は、それぞれ95wt%、4wt%、1wt%であった。次いで、上記コンパウンドを秤量してプレス装置の金型内に充填し、無磁場中、常温にて、圧力1370MPaで圧縮成形してから、170℃で処理することによりエポキシ樹脂を加熱硬化させ、リング状のボンド磁石を得た。このボンド磁石に対して、その高さ方向の研磨処理を施した後、バレル研磨法により各稜がR0.2になるまで研磨し、外径19mm、内径17mm、高さ4mmのリング状ボンド磁石を作成し、これをボンド磁石本体として使用した。
【0035】
上述のように作成したリング状ボンド磁石本体の表面に、第1層として電気めっき法により金属Ni被膜を形成し、次いで、最外層である第2層としてPVD法によりダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成した。
【0036】
金属Ni被膜の膜厚は内周で27μm、外周で31.5μmであり、ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜の膜厚は内周で1μm、外周で1.5μmであり、よって金属被膜とダイヤモンド・ライク・カーボン被膜との膜厚の合計は内周で28μm、外周で33μmであった。そして、内周12極により着磁した。
【0037】
比較例1
実施例と同様にして作成したリング状ボンド磁石本体の表面に、第1層として電気めっき法により金属Ni被膜を形成し、次いで、最外層である第2層として吹付塗装により樹脂塗膜を形成した。樹脂塗膜は、樹脂20〜30wt%、顔料10〜20wt%、残り有機溶剤からなるエポキシ樹脂ベースのものを樹脂塗料として使用して作成した。
【0038】
金属Ni被膜の膜厚は内周で18μm、外周で20μmであり、樹脂塗膜の膜厚は内周で10μm、外周で14μmであり、よって金属被膜と樹脂塗膜との膜厚の合計は内周で28μm、外周で34μmであった。そして、内周12極により着磁した。
【0039】
比較例2
実施例と同様にして作成したリング状ボンド磁石本体の表面に、電気めっき法により金属Ni被膜を形成した。金属Ni被膜の膜厚は内周で27μm、外周で31.5μmであった。
【0040】
<評価試験>
1.磁気特性
B−emf法を使用して磁気特性を測定することにより、実施例及び比較例1に係るリング状ボンド磁石の磁気特性を評価した。測定結果を表1に示す。なお、ここでは実施例及び比較例1について、それぞれ3つのサンプルを用意して測定を行い、平均値を算出し、さらに比較例1に係る平均値と実施例に係る平均値とを比べることにより、被膜による磁気特性への影響について評価した。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、比較例1に係るボンド磁石は、実施例に係るボンド磁石と比し平均値においてB−emf値が96.5%しか発現しておらず、磁気特性が低下していることがわかる。これは、比較例1においては、表面に形成した樹脂塗膜が非磁性であるとともに、その膜厚が実施例と比し厚いことによる磁場の遮蔽効果によってパーミアンスが低くなり、もってB−emf値も低くなっているものである。すなわち、厚い樹脂塗膜によってボンド磁石本体が本来有する磁気特性が妨げられているものである。従って、本発明に係る実施例においては、従来よりも高い磁気特性が得られることがわかる。
【0043】
2.耐スクラッチ性
鉛筆引っ掻き試験(JIS K5400)により、実施例、比較例1及び比較例2に係るリング状ボンド磁石の耐スクラッチ性(鉛筆硬度)を評価した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
3.耐薬品性
3−1. 5%塩酸水溶液にサンプルを24時間浸漬して外観の変化を観察することにより、実施例、比較例1及び比較例2に係るリング状ボンド磁石の耐酸性を評価した。結果を表3に示す。なお、表3において、○は外観変化なし、△は変色あり、×は脱落・錆の発生あり、を示すものである。
【0046】
【表3】
【0047】
3−2. シンナーを染み込ませた不織布でサンプルを30往復こすり外観の変化を観察することにより、実施例、比較例1及び比較例2に係るリング状ボンド磁石の耐有機溶剤性を評価した。結果を表4に示す。なお、表4において、○は外観変化なし、△は色落ちあり、×は脱落・地肌の露出あり、を示すものである。
【0048】
【表4】
【0049】
4.耐食性
5%塩化ナトリウム水溶液を使用した48時間塩水噴霧試験(JIS Z2371)を行い外観の変化を観察することにより、実施例、比較例1及び比較例2に係るリング状ボンド磁石の耐食性を評価した。結果を表5に示す。なお、表5において、○は外観変化なし、△は点錆の発生あり、×は脱落・錆の発生あり、を示すものである。
【0050】
【表5】
【0051】
以上示したように、本発明に係るボンド磁石によれば、磁石本体が有する磁気特性を損なうことなく、耐スクラッチ性、耐薬品性、耐食性を高めることができるので、精密電子部品に使用される場合において信頼性を各段に向上させることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に被膜が形成されたボンド磁石及びその製造方法に関する。より詳しくは、例えばコンピューターに搭載されるハードディスクのモータなどの精密電子部品に使用されるリング状のボンド磁石及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスク用モータなどの精密電子部品に使用されるリング状磁石には、例えばNd−Fe−B系、Sm−Fe−N系、Sm−Co系などのいわゆる希土類材料を磁石材料として使用し、結合樹脂を用いてリング状の成形体としたボンド磁石が用いられている。これらのボンド磁石は酸化し易い希土類金属や鉄を含んでいることから、わずかな酸や塩素イオン等を含んだ水などによって腐食されて錆を生じさせるといった欠点を持つ。ボンド磁石に錆を生じさせてしまった場合には磁気特性が著しく低下してしまい、磁石としての機能を充分に発揮できなくなると同時に、錆による被膜破壊や微細な腐食成分の飛散等が発生し、結果として精密電子部品の信頼性を低下させてしまっていた。
【0003】
このように耐食性に劣るボンド磁石の耐食性を向上させるため、下地層として金属被膜を設け、さらにその表面に樹脂塗膜を設けた磁石が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、樹脂塗膜を形成させる際に用いられる樹脂塗料は、樹脂、顔料もしくは染料から成る固形成分と、これを分散または溶解させる溶剤(有機溶剤、もしくは水、もしくは有機溶剤と水の混合物)から構成されており、そのため塗装後には前記溶剤を揮発させる工程が必要となる。そのため、溶剤の揮発に伴い樹脂塗膜には微小なガスの抜け穴が多数形成されてしまい、ここから腐食を生じてしまうという問題があった。このようなガス抜け穴による耐食性の低下を防止する観点から、樹脂塗膜は一定以上の膜厚が必要である。
【0005】
また、樹脂を塗装した後に加熱処理することで樹脂成分を溶融・硬化させる工程において、リング状ボンド磁石の角部の樹脂が溶融とともに引けを起こすことで角部の膜厚が薄くなってしまう。そのため、特に角部においては接合する相手部材との接触頻度が多く、また圧入に近い状態に成り易いため、薄い膜厚のままでは地肌(すなわち、磁石材料)の一部または全部が露出してしまい、耐食性の低下につながっていた。このように、樹脂塗膜の膜厚は一定以上必要となってくる。
【0006】
また、特にボンド磁石の形状がリング状である場合には、樹脂塗膜を形成させる静電塗装方法、電着塗装方法、スプレー塗装方法等において磁石の内周面が電気的または幾何学的に塗装の「影」となるため、外周・端面等に比べて内周面は膜厚が薄くなってしまう。従って、角部と同様に内周面の膜厚も一定以上確保することが前提となるため、外周面や端面の膜厚は必然的に必要以上の膜厚が形成されることになってしまう。このように、リング状のボンド磁石においては、均一かつ精密な樹脂塗膜を形成することが特に困難であった。
【0007】
また、耐食性を向上させるために非磁性物である樹脂塗膜の膜厚を厚くすることに伴って構成する磁気回路の磁気抵抗が増大し、ボンド磁石本体が本来有する磁気特性を充分に発現することができず、モータ特性を低下させてしまうといった問題があった。特に、リング状ボンド磁石は限られたモータの空間内で最大限の効率を発揮することが求められるため、高寸法精度および高磁気特性の要求に対して、僅かな磁気特性の低下が大きな問題となってしまっていた。
【0008】
【特許文献1】
特開平3−11714号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その課題は、磁気特性を損なうことなく信頼性を向上させたボンド磁石及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係るボンド磁石の発明は、表面に、第1層として金属被膜が、最外層である第2層としてダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が形成されていることを特徴とする。
【0011】
この特徴によれば、リング状ボンド磁石の表面に、第1層として金属被膜が、最外層である第2層としてダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が形成されているので、耐スクラッチ性、耐薬品性、耐食性などを向上させることができる。最外層に樹脂塗膜を形成した従来のボンド磁石に比し、表面硬度を上げることによって耐スクラッチ性を向上できることから、特に精密電子部品など高い信頼性が要求される場合に有効である。また、金属被膜の表面にダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成したため、両被膜の間で充分な密着性が得られるとともに、その形成が容易である。
【0012】
また、ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が薄い場合であっても耐スクラッチ性、耐薬品性、耐食性などを向上させる効果が充分得られるので、該ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が非磁性であることによるパーミアンスの低下を防ぐことができ、もってボンド磁石本体(磁石材料と結合樹脂を有する中心部分)の磁性を損なうことがほとんどない。また、被膜部分を薄くすることができることから、全体に占めるボンド磁石本体部分の割合をより高めることができ、より高い磁気特性を得ることができる。
【0013】
また、本発明の第2の態様に係るボンド磁石の発明は、前記第1の態様において、前記金属被膜の膜厚が5〜50μmであり、前記ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜の膜厚が0.5〜4μmであることを特徴とする。
【0014】
この特徴によれば、第1層としての金属被膜の膜厚が5〜50μmであるので、ピンホールがほとんどない緻密な被膜を形成することができるとともに、高い寸法精度で膜厚を調整することができる。
【0015】
また、ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜の膜厚が0.5〜4μmであるので、高い寸法精度で膜厚を調整することができ、もって精密電子部品など高い精度の寸法が求められる場合に特に有効である。また、非磁性膜である該ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜によるパーミアンスの低下を最小限に防ぐことができ、もってボンド磁石本体が有する磁気特性を最大限に発現させることができる。
【0016】
すなわち、ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜は、膜厚が0.5〜4μmと薄くとも充分な耐スクラッチ性、耐薬品性、耐食性等が得られるので、該ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜による磁気特性の低下を最小限に抑制することができ、ボンド磁石本体が有する磁気特性を最大限に発現できる。また、被膜が薄くなった分だけ全体に占めるボンド磁石本体の割合を高めることができ、もって全体として同一の外形寸法であっても、従来の樹脂塗装を施したボンド磁石よりも磁気特性を一層高めることができる。
【0017】
また、本発明の第3の態様に係るボンド磁石の製造方法の発明は、ボンド磁石の表面に、第1層として金属被膜を形成した後、最外層である第2層としてダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成することを特徴とする。
【0018】
この特徴によれば、前記第1の態様と同様の効果が得られる。
また、例えばイオンプレーティング法などの低温表面処理でダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成することができるので、ボンド磁石本体に対して熱による影響を与えることがない。すなわち、ボンド磁石本体は結合樹脂を含んでいるため高温で処理した場合には該結合樹脂が熱によって変性してしまう恐れがあり、また、磁石粉末自体も高熱による酸化で最も重要な磁気特性を損なう恐れがある。しかしながら、本発明によればボンド磁石本体に影響を与えることなくダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成することが可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明に係るボンド磁石の本体は、リング形状であって、磁石材料と結合樹脂(バインダー)とを成形することで構成することができる。また、使用条件などに応じて酸化防止剤などの添加剤を適宜添加することもできる。
【0020】
磁石材料としては、R−TM−B系合金(Rは、Yを含む希土類元素のうち少なくとも1種、TMは、Feを主とする遷移金属、以下同様)、R−TM−N系合金、R−Co系合金、ナノコンポジット磁石、および、上記合金の少なくとも2種以上を混合したもの、および、上記合金のうち少なくとも1種とフェライト粉末(例えば、BaO・6Fe2O3等のBa―フェライト、SrO・6Fe2O3等のSr―フェライトや、これらの一部を他の遷移金属、希土類元素で置換したもの等)を混合したもの等が例示できる。
【0021】
また、結合樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
磁石材料と結合樹脂とを成形する方法としては、圧縮成形方法、押出成形方法、カレンダー成形方法、射出成形方法等を例示することができ、より高性能なリング形状に成形するためには圧縮成形方法が好ましい。
【0023】
リング状ボンド磁石は、内周部のプレーティング性を考慮して、内径(d)と高さ(L)との関係が、d/L≧1であることが好ましく、d/L≧0.5であることがより好ましい。
【0024】
本発明における第1層としての金属被膜としては、Ni、Cu、Cr、Fe、Zn、Cd、Sn、Pd、Al、Au、Ag、Pd、Pt、Ph等、またはこれらのうち少なくとも一種を成分として含む合金等を例示できる。これらのうち、強磁性材の一つであるNiを主成分とする金属被膜が好ましい。
【0025】
また、金属被膜の膜厚は、5〜50μm程度であることが好ましく、10〜40μm程度であればより好ましい。金属被膜の膜厚が上記範囲であると、ピンホールがない緻密な被膜を形成することができるとともに、膜厚の寸法を高い精度で制御することができる。従って、精密電子部品など特に高い寸法精度が求められる場合に有効である。
【0026】
金属被膜の成膜方法としては、例えば、電解めっき法、無電解めっき法、蒸着法等を使用することができる。電解めっき法において用いる電解めっき浴、無電解めっき法において用いる無電解めっき浴は、めっきする金属種によって適宜選択することができる。また、成膜条件を設定することにより金属被膜の膜厚を高い精度で調整することができる。
【0027】
本発明における最外層である第2層としてのダイヤモンド・ライク・カーボン被膜は、膜厚が0.5〜4μm程度であることが好ましく、1〜2μm程度であればより好ましい。
【0028】
ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜の成膜方法としては、例えば、PVD法、CVD法等のドライプロセスを例示することができ、第1層である金属被膜の表面に高い密着性をもって確実にコーティングすることができることからイオンプレーティング法が好ましい。イオンプレーティング法は、例えば、真空炉中に炭化水素系ガスを導入し、直流アーク放電プラズマ等によって炭化水素イオンや励起ラジカルを発生させ、負の電圧に印可された被処理物(本発明においては、第1層である金属被膜が成膜されたリング状ボンド磁石)に炭化水素イオンを電気的エネルギーによって衝突させることにより行うことができる。
【0029】
ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜は、160〜200℃程度の温度領域で成膜することが好ましい。成膜温度が上記範囲であると、所望する膜機能(硬度、耐摩耗性、金属被膜との膜密着性など)を得ることができるとともに、高い寸法精度で膜厚を調整することができる。また、ボンド磁石本体を構成する結合樹脂、および磁石粉末の耐熱温度領域であるためボンド磁石本体に熱による影響を与えることがなく、もって磁気特性を損なうことがない。
【0030】
最外層にダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成することにより、表面硬度を上げて耐摩耗性、耐スクラッチ性を向上させることができ、着磁や他部品との接合の際など他の部材と接触した場合であっても表面のキズや破損などの恐れがない。また、酸、アルカリ、有機溶剤などに対する耐薬品性、塩水などに対する耐食性をより一層高めることもでき、もって腐食性の高い使用条件下、例えば酸性ガス雰囲気下においても有効に使用することできる。
【0031】
また、第2層であるダイヤモンド・ライク・カーボン被膜の膜厚は、0.5〜4μm程度と充分に薄いので、ボンド磁石としての磁気特性を損なうことなく、上記効果が得られる。すなわち、ボンド磁石表面に形成される非磁性膜が厚い場合には、パーミアンスが低下することによって、ボンド磁石本体が本来有する磁気特性を有効に発現できず、表面における磁気特性を低下させてしまっていた。しかし、本発明においてはパーミアンスの低下を最小限に防ぐことができるので、表面における磁気特性を損なうことがない。
【0032】
また、従来と比し、被膜全体の膜厚を薄くすることができるので、全体に占めるボンド磁石本体の割合を高めることができ、もって全体として同一の外形寸法であっても磁気特性をより一層高めることができる。
【0033】
【実施例】
次に、実施例、比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによってなんら制約されるものではない。
【0034】
実施例
<リング状ボンド磁石の作成>
合金組成がR−TM−B系合金で構成される磁石材料(MQI社製のMQP−B粉末)と、エポキシ樹脂と、少量のヒドラジン系酸化防止剤とを混合し、これらを常温で30分間混練してボンド磁石用組成物(コンパウンド)を作成した。このとき、磁石粉末、エポキシ樹脂、ヒドラジン系酸化防止剤の配合比率(重量比)は、それぞれ95wt%、4wt%、1wt%であった。次いで、上記コンパウンドを秤量してプレス装置の金型内に充填し、無磁場中、常温にて、圧力1370MPaで圧縮成形してから、170℃で処理することによりエポキシ樹脂を加熱硬化させ、リング状のボンド磁石を得た。このボンド磁石に対して、その高さ方向の研磨処理を施した後、バレル研磨法により各稜がR0.2になるまで研磨し、外径19mm、内径17mm、高さ4mmのリング状ボンド磁石を作成し、これをボンド磁石本体として使用した。
【0035】
上述のように作成したリング状ボンド磁石本体の表面に、第1層として電気めっき法により金属Ni被膜を形成し、次いで、最外層である第2層としてPVD法によりダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成した。
【0036】
金属Ni被膜の膜厚は内周で27μm、外周で31.5μmであり、ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜の膜厚は内周で1μm、外周で1.5μmであり、よって金属被膜とダイヤモンド・ライク・カーボン被膜との膜厚の合計は内周で28μm、外周で33μmであった。そして、内周12極により着磁した。
【0037】
比較例1
実施例と同様にして作成したリング状ボンド磁石本体の表面に、第1層として電気めっき法により金属Ni被膜を形成し、次いで、最外層である第2層として吹付塗装により樹脂塗膜を形成した。樹脂塗膜は、樹脂20〜30wt%、顔料10〜20wt%、残り有機溶剤からなるエポキシ樹脂ベースのものを樹脂塗料として使用して作成した。
【0038】
金属Ni被膜の膜厚は内周で18μm、外周で20μmであり、樹脂塗膜の膜厚は内周で10μm、外周で14μmであり、よって金属被膜と樹脂塗膜との膜厚の合計は内周で28μm、外周で34μmであった。そして、内周12極により着磁した。
【0039】
比較例2
実施例と同様にして作成したリング状ボンド磁石本体の表面に、電気めっき法により金属Ni被膜を形成した。金属Ni被膜の膜厚は内周で27μm、外周で31.5μmであった。
【0040】
<評価試験>
1.磁気特性
B−emf法を使用して磁気特性を測定することにより、実施例及び比較例1に係るリング状ボンド磁石の磁気特性を評価した。測定結果を表1に示す。なお、ここでは実施例及び比較例1について、それぞれ3つのサンプルを用意して測定を行い、平均値を算出し、さらに比較例1に係る平均値と実施例に係る平均値とを比べることにより、被膜による磁気特性への影響について評価した。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、比較例1に係るボンド磁石は、実施例に係るボンド磁石と比し平均値においてB−emf値が96.5%しか発現しておらず、磁気特性が低下していることがわかる。これは、比較例1においては、表面に形成した樹脂塗膜が非磁性であるとともに、その膜厚が実施例と比し厚いことによる磁場の遮蔽効果によってパーミアンスが低くなり、もってB−emf値も低くなっているものである。すなわち、厚い樹脂塗膜によってボンド磁石本体が本来有する磁気特性が妨げられているものである。従って、本発明に係る実施例においては、従来よりも高い磁気特性が得られることがわかる。
【0043】
2.耐スクラッチ性
鉛筆引っ掻き試験(JIS K5400)により、実施例、比較例1及び比較例2に係るリング状ボンド磁石の耐スクラッチ性(鉛筆硬度)を評価した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
3.耐薬品性
3−1. 5%塩酸水溶液にサンプルを24時間浸漬して外観の変化を観察することにより、実施例、比較例1及び比較例2に係るリング状ボンド磁石の耐酸性を評価した。結果を表3に示す。なお、表3において、○は外観変化なし、△は変色あり、×は脱落・錆の発生あり、を示すものである。
【0046】
【表3】
【0047】
3−2. シンナーを染み込ませた不織布でサンプルを30往復こすり外観の変化を観察することにより、実施例、比較例1及び比較例2に係るリング状ボンド磁石の耐有機溶剤性を評価した。結果を表4に示す。なお、表4において、○は外観変化なし、△は色落ちあり、×は脱落・地肌の露出あり、を示すものである。
【0048】
【表4】
【0049】
4.耐食性
5%塩化ナトリウム水溶液を使用した48時間塩水噴霧試験(JIS Z2371)を行い外観の変化を観察することにより、実施例、比較例1及び比較例2に係るリング状ボンド磁石の耐食性を評価した。結果を表5に示す。なお、表5において、○は外観変化なし、△は点錆の発生あり、×は脱落・錆の発生あり、を示すものである。
【0050】
【表5】
【0051】
以上示したように、本発明に係るボンド磁石によれば、磁石本体が有する磁気特性を損なうことなく、耐スクラッチ性、耐薬品性、耐食性を高めることができるので、精密電子部品に使用される場合において信頼性を各段に向上させることができる。
Claims (3)
- 表面に、第1層として金属被膜が、最外層である第2層としてダイヤモンド・ライク・カーボン被膜が形成されていることを特徴とするボンド磁石。
- 請求項1において、前記金属被膜の膜厚が5〜50μmであり、前記ダイヤモンド・ライク・カーボン被膜の膜厚が0.5〜4μmであることを特徴とするボンド磁石。
- ボンド磁石の表面に、第1層として金属被膜を形成した後、最外層である第2層としてダイヤモンド・ライク・カーボン被膜を形成することを特徴とするボンド磁石の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003194040A JP2005032845A (ja) | 2003-07-09 | 2003-07-09 | ボンド磁石及びその製造方法 |
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JP2003194040A JP2005032845A (ja) | 2003-07-09 | 2003-07-09 | ボンド磁石及びその製造方法 |
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JP2005032845A true JP2005032845A (ja) | 2005-02-03 |
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ID=34205308
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JP (1) | JP2005032845A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010067592A1 (ja) | 2008-12-12 | 2010-06-17 | 愛知製鋼株式会社 | 希土類系ボンド磁石 |
US11417469B2 (en) | 2020-01-24 | 2022-08-16 | Murata Manufacturing Co., Ltd. | Multilayer ceramic electronic component |
-
2003
- 2003-07-09 JP JP2003194040A patent/JP2005032845A/ja active Pending
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WO2010067592A1 (ja) | 2008-12-12 | 2010-06-17 | 愛知製鋼株式会社 | 希土類系ボンド磁石 |
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