JP2005029729A - ボールペン用水性インキ組成物及びそれを用いた水性ボールペン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 少なくとも着色剤として染料と、水と、水溶性有機溶剤とからなるインキ組成物中に、ポリウレタンエマルジョンを含有してなり、前記エマルジョンの平均粒子径が0.1μm以下であるボールペン用水性インキ組成物、及び、前記ボールペン用水性インキ組成物を、ボールペンチップを直接又は中継部材を介して取り付けたインキ収容管内に直接充填し、且つ、インキ組成物後端面にインキ逆流防止体を配設した水性ボールペン。
【選択図】 なし
Description
前記ボールペン用水性インキにおいては、更にキャップオフ性能が重要であり、ペン先乾燥防止剤として尿素及び/又はその誘導体の増量等が試みられてきた(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、尿素及び/又は尿素誘導体は吸水性能の高さがキャップオフ性能を発現させるため、これらのキャップオフ性能付与剤を過剰に添加したインキは高湿度条件下で放置した場合、ペン先部分において局部的に水分を吸収することになる。そのため、水性ボールペンにこのようなインキを適用した場合、水分吸収によりペン先部分のインキ粘度が低下し、インキがペン先部分に溜まる「垂れ下がり」、或いは溜まったインキが落下する「ボタ落ち」現象が発生してしまう。
特に、着色剤として染料を用いた場合は、垂れ下がりが顕著であり、キャップオフ性能と垂れ下がり防止性能を共に満たすことは困難であった。
更には、前記ポリウレタンエマルジョンは、親水性基がアニオン性又はノニオン性を示す自己乳化型のエマルジョンであり、媒体中で自己分散性を示すこと、前記ポリウレタンエマルジョンをインキ組成物中0.1〜5.0重量%の範囲で含有してなること等を要件とする。
更には、前記ボールペン用水性インキ組成物を、ボールペンチップを直接又は中継部材を介して取り付けたインキ収容管内に直接充填し、且つ、インキ組成物後端面にインキ逆流防止体を配設した水性ボールペンを要件とする。
前記エマルジョンの平均粒子径は0.1μm以下と小さく、インキ中で安定的に存在すると共に、垂れ下がり防止性能を付与する。
前記ポリウレタンエマルジョンは、平均粒子径が0.1μm以下であることから、経時安定性を満足させるが、0.1μmを越えると比重が重いためインキ中で沈降・分離するため所期の性能を満足させ難くなる。
なお、前記エマルジョンの平均粒子径は、好ましくは0.01〜0.1μmである。
また、キャップオフ性能については、ペン先で前記ポリウレタンエマルジョンが乾燥被膜を形成してインキの蒸発を抑制し、筆記時の衝撃により被膜が破壊されてインキ出が回復するものと推察される。
また、前記ポリウレタンエマルジョンは水性媒体中で安定して分散させるために親水性基が付加された自己分散型のものが好適に用いられる。
親水性基としてはアニオン性又はノニオン性を示すものが挙げられるが、より好ましくはアニオン性を示すものが用いられる。
親水性基がカチオン性を示すポリウレタンを用いた場合は、安定性に乏しく、インキに含まれる添加剤、或いは、着色剤として用いた酸性染料との反応により析出を生じることがある。また、活性剤等の添加により、強制的に分散させたタイプでは十分な分散効果が得られ難く、目的とする粒子径が得られない。
酸性染料としては、
ニューコクシン(C.I.16255)、
タートラジン(C.I.19140)、
アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、
ギニアグリーン(C.I.42085)、
ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、
アシッドバイオレット6BN(C.I.43525)、
ソルブルブルー(C.I.42755)、
ナフタレングリーン(C.I.44025)、
エオシン(C.I.45380)、
フロキシン(C.I.45410)、
エリスロシン(C.I.45430)、
ニグロシン(C.I.50420)、
アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
クリソイジン(C.I.11270)、
メチルバイオレットFN(C.I.42535)、
クリスタルバイオレット(C.I.42555)、
マラカイトグリーン(C.I.42000)、
ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、
ローダミンB(C.I.45170)、
アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、
メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
コンゴーレッド(C.I.22120)、
ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、
バイオレットBB(C.I.27905)、
ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、
カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、
ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、
フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられる。
蛍光顔料としては、各種蛍光染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。その他、金属光沢顔料、蓄光性顔料、二酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム等の白色顔料、可逆熱変色性組成物を内包したカプセル顔料、香料や香料を内包したカプセル顔料等を例示できる。
前記金属光沢顔料としては、アルミニウムや真鍮等の金属粉、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、金属蒸着膜の片面又は両面に透明又は着色透明フィルムを設けた金属光沢フィルム片を細かく裁断したもの、透明性樹脂層を複数積層した虹彩性フィルムを細かく裁断したものを例示できる。
前記水溶性有機溶剤は1種又は2種以上を併用することもできる。
その他、必要に応じてpH調整剤、防錆剤、防腐剤或いは防黴剤、潤滑剤を添加することができる。
前記pH調整剤としては、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、トリエタノールアミンやジエタノールアミン等の水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等が挙げられる。
前記防錆剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、サポニン、ジアルキルチオ尿素等が挙げられる。
前記防腐剤或いは防黴剤としては、石炭酸、1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等が挙げられる。
前記潤滑剤としては、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩等が挙げられる。
その他、溶剤の浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン、アニオン、カチオン系界面活性剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤を添加することもできる。
更に、N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を用いることもできる。
インキの剪断減粘性とは静止状態あるいは応力の低い時は高粘度で流動し難い性質を有し、応力が増大すると低粘度化して良流動性を示すレオロジー特性を言うものであり、チクソトロピー性あるいは擬似可塑性とも呼ばれる液性を意味している。よって、インキ組成物は筆記時の高剪断応力下においては三次元構造が一時的に破壊されインキの粘度が低下し、筆記先端部のインキは筆記に適した低粘度インキとなり、紙面に転移される。非筆記時にはインキの粘度が高くなり、インキの漏出を防止したり、インキの分離、逆流を防ぐことができる。又、インキ物性を経時的に安定に保つことができる。
前記ボールペンチップに抱持されるボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等の外径0.3〜1.5mmのボールが有効であり、前記チップのボール抱持部の内径とボールとの径方向の可動距離は10〜50μm、ボールの軸方向の可動距離は10〜30μmの範囲であることが好ましい。
なお、前記ボールペンチップには、チップ内にボールの後端を前方に弾発する弾発部材を配して、非筆記時にはチップ先端の内縁にボールを押圧させて密接状態とし、筆記時には筆圧によりボールを後退させてインキを流出可能に構成することが好ましく、不使用時のインキ漏れを抑制できる。
前記弾発部材は、金属細線のスプリング、前記スプリングの一端にストレート部(ロッド部)を備えたもの、線状プラスチック加工体等を例示でき、15〜45gの弾発力により、押圧可能に構成して適用される。
又、前記インキ収容管は、2.5〜10mmの内径を有するものが好適に用いられる。
更に、前記インキ収容管として透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等を確認できる。
前記インキ収容管はレフィルの形態として軸筒内に収容したり、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容管として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
前記インキ逆流防止体は、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、シリコーン油、精製鉱油等の従来より公知の不揮発性液体或いは難揮発性液体からなる基油に、シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、脂肪酸アマイド等の増粘剤を添加したものが適用される。前記基油としては、ポリブテン又はシリコーン油が好適に用いられ、増粘剤としては脂肪酸アマイド又はシリカが好適に用いられる。
本発明に用いられるインキ逆流防止体は、インキ粘度がEM型回転粘度計の100rpmにおける測定粘度(20℃)が、3〜160mPa・sの範囲にあり、且つ剪断減粘性指数が、0.9〜0.99の範囲にある剪断減粘性水性インキ、B型回転粘度計の60rpmにおける測定粘度(20℃)が、1〜20mPa・sの範囲にあり、且つ剪断減粘性指数が、0.9〜0.99の範囲にある剪断減粘性水性インキ、或いは、B型回転粘度計の60rpmにおける測定粘度(20℃)が、1〜20mPa・sの範囲にある非剪断減粘性水性インキを用いる場合、粘弾性測定におけるtanδが1を越える点(ω)が20rad/s≦ω≦450rad/sの範囲にあることが好ましい。
これを詳しく説明すると、前記インキは静置状態での粘度が低く、剪断減粘指数を0.1〜0.6程度に調整した従来の剪断減粘性水性インキと比べて耐衝撃性に劣る。よって、インキ収容管後部からインキの漏れ出しを生じ易く、筆記不能になったり、商品価値を損なう虞がある。
よって、インキの後端に配置されるインキ逆流防止体に耐衝撃性を付与して前述した不具合を解消する必要がある。
前記粘弾性測定におけるtanδが1を越える点(ω)が20rad/s≦ω≦450rad/sの範囲にあるインキ逆流防止体は粘弾性を示し、弾性応答と粘性応答の中間的な性質を示す。
粘弾性測定は、レオメーターの振動法により測定し、tanδとは損失弾性率の値を貯蔵弾性率の値で割ったものであり、この値が低い(tanδ<1)と、弾性特性が高く、且つ、粘性特性が低くなる。一方、この値が高い(tanδ>1)と、弾性特性が低く、且つ、粘性特性が高くなる。
前述の粘弾性測定において、角周波数(rad/s)が20以上の領域は筆記具に落下等の衝撃を加えた状態に近い領域となる。
従って、20rad/sでtanδが1を越える粘弾性を示すインキ逆流防止体は、粘性応答の強さに依存して耐衝撃性を満足させることができる。
前記tanδが1を越える点は20rad/s以上であるが、450rad/sを越えると弾性応答が強くなってインキ追従性を損ないがちであり、インキ出に乏しくなる。
よって、インキ逆流防止体のtanδが1を越える点(ω)を20rad/s≦ω≦450rad/sの範囲に調整することにより、耐衝撃性と筆記性能を共に満足させることができる。
なお、インキ逆流防止体には、樹脂成形による固体栓を併用することもできる。
なお,表中の組成の数値は重量部を示す。
実施例1〜5、比較例1〜5のインキ粘度は20℃でB型回転粘度計〔東京計器(株)製、BL、BLアダプター使用)を用いて、60rpmにて測定した。
実施例6及び比較例6のインキ粘度は20℃でEMD型回転粘度計〔東機産業(株)製、RE−80R、標準ロータ使用)を用いて、100rpmにて測定した。
前記実施例2、4、5及び、比較例2、4、5のインキの剪断減粘指数は0.97であり、実施例6及び比較例6のインキの剪断減粘指数は0.3であった。
(1)オリエント化学工業(株)製、商品名:フィスコブラック886、有効成分15%
(2)アイゼン保土谷(株)製、C.I.45410、商品名:フロキシン
(3)住友化学工業(株)製、C.I.42655、商品名:アシッドブルーPG
(4)第一工業製薬(株)製、商品名:スーパーフレックス130、平均粒子径0.02μm、固形分35%、親水性基:アニオン性
(5)第一工業製薬(株)製、商品名:スーパーフレックス460、平均粒子径0.03μm、固形分38%、親水性基:アニオン性
(6)第一工業製薬(株)製、商品名:スーパーフレックス470、平均粒子径0.05μm、固形分38%、親水性基:アニオン性
(7)第一工業製薬(株)製、商品名:スーパーフレックス840、平均粒子径0.02μm、固形分27%、親水性基:アニオン性
(8)太陽化学(株)製、商品名:サンカラ634
(9)BASF社製、商品名:ルビスコールK−30、分子量40000
(10)三晶(株)製、商品名:レオザン
(11)1,2−ベンズチアゾリン−3−オン、アビシア(株)製、商品名:プロキセルXL−2
(12)リン酸エステル系界面活性剤、第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(13)第一工業製薬(株)製、商品名:スーパーフレックスE−2500、平均粒子径0.96μm、固形分45%、親水性基:アニオン性
基油としてポリブテン85部中に、増粘剤として脂肪酸アマイド15部を添加した後、3本ロールにて混練してインキ逆流防止体を得た。
なお、前記インキ逆流防止体は、20℃でレオメーター〔Paar Physica社製、DSR4000、2°のコーンプレート(直径25mm)使用〕を用いて測定した結果、100rad/sでtanδが1を越えるものであった。
前記各インキ組成物を直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプ(内径3.8mm)の一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを軸筒に組み込み、水性ボールペンを作製した。
垂れ下がり試験
キャップを外した水性ボールペンを、ペン先(ボールペンチップ)非接触状態で下向き(倒立)に保持し、温度20℃、相対湿度90%の雰囲気下に20時間放置した後、ペン先の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
キャップオフ試験
組み立て後、筆記可能であることを確認した水性ボールペンを、ペン先を露出した状態で室温(20℃)、湿度55〜75%RHの条件下に横置き、10日間放置後、JIS P3201筆記用紙Aに手書きで丸を一行に12個連続筆記し、何行目から正常に筆記できるかを調べ、以下の基準で評価した。
インキ安定性試験
各インキ組成物を室温(20℃)及び50℃で7日間放置した後、インキの状態を目視により観察した。
垂れ下がり試験
○:インキの漏れだし(垂れ下がり)が認められない。
△:チップ先端にインキの小滴が認められる。
×:チップ先端に、大きいインキ滴が認められる、或いはチップ先端から漏れたインキが落下している。
キャップオフ試験
○:即筆記可能
△:1行以内で筆記可能となる。
インキ安定性試験
○:異常なし。
×:エマルジョンが浮いたり、沈降している。
Claims (4)
- 少なくとも着色剤として染料と、水と、水溶性有機溶剤とからなるインキ組成物中に、ポリウレタンエマルジョンを含有してなり、前記エマルジョンの平均粒子径が0.1μm以下であることを特徴とするボールペン用水性インキ組成物。
- 前記ポリウレタンエマルジョンは、親水性基がアニオン性又はノニオン性を示す自己乳化型のエマルジョンであり、媒体中で自己分散性を示す請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記ポリウレタンエマルジョンをインキ組成物中0.1〜5.0重量%の範囲で含有してなる請求項1又は2記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物を、ボールペンチップを直接又は中継部材を介して取り付けたインキ収容管内に直接充填し、且つ、インキ組成物後端面にインキ逆流防止体を配設した水性ボールペン。
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