JP2005029706A - 顔料分散剤、それを用いた顔料組成物および顔料分散体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高光沢、安定性良好、低粘度であり、従来使用されてきた界面活性剤や各種顔料分散剤では達成できなかった、耐ボイル性、密着性等の印刷適性に優れたインキ塗膜を与える顔料分散体および印刷インキの提供。
【解決手段】水酸基を有するウレタン樹脂と、スチレンと無水マレイン酸の共重合体とを反応させてなる顔料分散剤、該顔料分散剤および顔料を含む顔料組成物、該顔料組成物を液状媒体に分散させてなる顔料分散体、および該顔料分散体を含む印刷インキ。
【選択図】なし

Description

本発明は、顔料を高濃度で分散できる顔料分散剤、それを用いた顔料組成物および顔料分散体に関する。
従来、グラビアインキ等の印刷インキ用バインダーとしては、塗工基材に対する密着性、耐ボイル性に優れるウレタン樹脂が汎用されているが、ウレタン樹脂をバインダーとする場合には、顔料分散性、流動性、着色力、貯蔵安定性の向上、色別れの防止、たれ止め、沈降防止効果等が得られ難い。かかる問題を解決するために、ウレタン樹脂に遊離のカルボキシル基を導入することで、分散性を付与する工夫がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
また、印刷インキには、顔料分散性を向上させるため、顔料分散剤として界面活性剤が用いられていたが、界面活性剤を添加したインキは、添加しないインキに比べて、形成皮膜の耐ボイル性が劣り、フィルム等の塗工基材に対する密着性が著しく劣る場合が多かった。また、界面活性剤は、インキバインダーとの相溶性が著しく悪い場合が多く、インキに添加した時点でインキの粘度が著しく高くなったり、析出して濁るという問題があった。
そのため、顔料分散剤として、スチレンと無水マレイン酸の共重合体やポリアクリル酸類、ポリリン酸類が用いられるようになった。その中でも特に、エステル改質されたスチレンと無水マレイン酸の共重合体は、その優れた顔料分散性もさることながら、分子内に耐ボイル性および塗工基材に対する密着性を極端に悪くするノニオン鎖を含まず、比較的良好な印刷適性が得られるため、顔料分散剤として極めて有用である(例えば、特許文献2参照)。
特開平5−222332号公報 特開平9−104837号公報
しかし、特許文献1に記載されているカルボキシル基導入成分、例えば無水マレイン酸やヒドロキシカルボン酸などは、顔料を分散する効果が決して高くなく、結果として、これらをポリウレタン樹脂に導入しても満足な顔料分散性は得られない。また、遊離のカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂は、油系の液状媒体に顔料を分散させる場合には、それなりの効果があるが、水系の液状媒体に顔料を分散させる場合には、顔料吸着点としての芳香環のようなものを有していないことから、顔料分散性は得られない。
また、特許文献2に記載されているエステル改質されたスチレンと無水マレイン酸の共重合体も、他の顔料分散剤と同様に、インキバインダーとして用いられるウレタン樹脂との相溶性が悪く、ウレタン樹脂をバインダーとするインキに添加した時点で、インキの粘度の上昇、印刷適性の劣化を引き起こしてしまう。
そこで、発明が解決しようとする課題は、従来の顔料分散剤を用いたのでは、高光沢、安定性良好、低粘度な顔料分散体および印刷インキが得られない点である。
また、発明が解決しようとする別の課題は、従来使用されてきた界面活性剤や各種顔料分散剤では、耐ボイル性、密着性等の印刷適性に優れたインキ塗膜を与える顔料分散体および印刷インキが得られない点である。
本発明における顔料分散剤は、スチレンと無水マレイン酸の共重合体に、ウレタン樹脂との相溶性に優れるウレタン骨格を導入することにより、高光沢、安定性良好、低粘度な顔料分散体および印刷インキを与えるようにしたもの、すなわち水酸基を有するウレタン樹脂と、スチレンと無水マレイン酸の共重合体とを反応させてなる顔料分散剤である。
本発明の顔料分散剤において、スチレンと無水マレイン酸の共重合体の無水マレイン環の一部は、アルコールによりエステル化されていることが好ましい。また、水酸基を有するウレタン樹脂の数平均分子量は1000〜100000であることが好ましく、スチレンと無水マレイン酸の共重合体の重量平均分子量は800〜33000であることが好ましい。また、本発明の顔料分散剤は、水酸基を有するウレタン樹脂と、スチレンと無水マレイン酸の共重合体とを、水酸基を有するウレタン樹脂の水酸基1個に対して、スチレンと無水マレイン酸の共重合体の無水マレイン環が0.01〜20000個となる比率で反応させてなるものであることが好ましい。
また、本発明における顔料組成物は、前記顔料分散剤および顔料を含む顔料組成物である。
また、本発明における顔料分散体は、前記顔料組成物を液状媒体に分散させてなる顔料分散体であり、従来使用されてきた界面活性剤や各種顔料分散剤では成し得なかった、耐ボイル性、密着性等の印刷適性に優れたインキ塗膜を与えるものである。
さらに、本発明における印刷インキは、前記顔料分散体を含む印刷インキである。
本発明の顔料分散剤は、一般的に広く知られている方法で容易に合成することが可能であり、高顔料濃度という厳しい条件下においても、分散性、流動性、発色性、貯蔵安定性に優れ、インキや塗料に用いたときの形成皮膜の耐ボイル性およびフィルム等の塗工基材に対する密着性が良好であり、かつ、従来の界面活性剤や各種顔料分散剤では成し得なかった、ウレタン系バインダー樹脂との相溶性に極めて優れている。
まず、本発明の顔料分散剤について説明する。
本発明の顔料分散剤は、水酸基を有するウレタン樹脂と、スチレンと無水マレイン酸の共重合体とを反応させてなるものであり、顔料を高濃度に液状媒体中に分散できる。
顔料分散剤の原料となるウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂であって、水酸基を有することを特徴とする。
ポリオールは、一分子中に水酸基を二個以上有する化合物であればよいが、カルボキシル基、スルホニル基などのアニオン基を含むポリオールが好ましく、印刷インキのバインダーとして用いられるウレタン樹脂との相溶性や、最終的なインキ塗膜の耐ボイル性等を考慮した場合、カルボキシル基を含むポリオールを用いることがより好ましい。カルボキシル基を有するポリオールとしては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシプロピオン酸等のジメチロールアルカン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシ安息香酸などが挙げられる。これらのアニオン基含有ポリオールは、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。アニオン基を含むポリオールの量は、ポリオールの全量を基準として、0.1〜100モル%が好ましい。
他の水酸基を2個以上有するポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメチロール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、N,N−ジヒドロキシエチル−n−ブチルアミン、N,N−ジヒドロキシプロピル−n−ブチルアミン、N,N−ジヒドロキシエチル−tert−ブチルアミン、N,N−ジヒドロキシプロピル−tert−ブチルアミン、N,N−ジヒドロキシエチルイソプロピルアミン、N,N−ジヒドロキシプロピルイソプロピルアミン、N,N−ジヒドロキシエチル−n−ステアリルアミン、N,N−ジヒドロキシプロピル−n−ステアリルアミン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルエンスルホンアミド、N,N−ジヒドロキシプロピル−p−トルエンスルホンアミド、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシプロピルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−m−トルイジン、N,N−ジヒドロキシプロピル−m−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシプロピル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチルベンジルアミン、N,N−ジヒドロキシプロピルベンジルアミン、N,N−ジヒドロキシエチルピペラジン、N,N−ジヒドロキシプロピルピペラジン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、ポリブタジエンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−へキサントリオール、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、ジオールと二塩基酸の重縮合より得られる化合物である。ジオールとしては、前記のエチレングリコール、ジエチレングリコールの他、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。また、二塩基酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。その他、ポリカプロラクトン、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトンなどのラクトン系開環重合体ポリオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
アクリルポリオールとしては、水酸基を有するモノマーの重合体が挙げられる。水酸基を有するモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ジヒドロキシアクリレート等が挙げられる。
エポキシポリオールとしては、アミン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。その他等が挙げられる。
水酸基を3個以上有するポリオールは、ウレタン樹脂がゲル化しない範囲内で必要に応じて使用することができる。
これらのポリオールは、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
また、本発明で使用できるポリイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環式のポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族のポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジクロロ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族のポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式のポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらのポリイソシアネートは、単独で、または2種以上を混合で用いることができる。
水酸基を有するウレタン樹脂は、常法に従って、例えば、イソシアネート基と反応しない不活性な有機溶剤中で、室温または40〜120℃程度の温度で、ポリオールとポリイソシアネートとを付加反応させることにより合成することができる。
ウレタン樹脂を合成する際に用いる溶剤としては、反応性の制御の点から、イソシアネート基および水酸基(後述のウレア結合を導入する場合にはアミノ基)と反応しないもの、あるいはこれらの官能基に対する反応性が低いもの、樹脂およびその原料に対する溶解性が良く、樹脂の合成上問題がないものであることが好ましい。このような溶剤としては、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸イソプロピル、酢酸−n−プロピル、塩化メチレン、ベンゼン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
とりわけ、本発明の顔料分散剤を水性化して使用する場合には、前述の条件に加えて、蒸気圧が水より高く、脱溶剤を行いやすい溶剤を用いることが好ましい。このような溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
また、ウレタン樹脂を合成する際には、イソシアネート基と水酸基の反応を促進するために、触媒を使用してもよい。触媒としては、ジブチルすずジラウレート、オクトエ酸すず、ジブチルすずジ(2−エチルヘキソエート)、2−エチルヘキソエート鉛、チタン酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキソエート鉄、2−エチルヘキソエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、テトラ−n−ブチルすず、塩化第一すず、塩化第二すず、塩化鉄などが挙げられる。
ウレタン樹脂には、インキ塗膜の発色性や耐水性を向上させるため、ウレア結合を導入しても良い。ウレア結合は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを作成した後、アミノ基を有する鎖延長剤を反応させることにより、ウレタン樹脂に導入することができる。アミノ基を有する鎖延長剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、イソホロンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン等の脂環式ジアミン、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン等が挙げられる。ウレタン樹脂に鎖延長剤を用いてウレア結合を導入する場合には、末端イソシアネート基のウレア結合を有するウレタン樹脂を合成し、さらにポリオールを反応させることにより、末端に水酸基を導入して水酸基を有するウレタン樹脂とする。
また、ポリオールとポリイソシアネートとを負荷反応させる際には、ウレタン鎖の封止剤として、一分子中に一個の水酸基を有する化合物を併用することができる。一分子中に一個の水酸基を有する化合物としては、例えば、一級から三級までのアルコールを用いることができる。一分子中に一個の水酸基を有する化合物は、ポリオールに対し、10モル%以下の範囲で用いることが好ましい。一分子中に一個の水酸基を有する化合物の使用量が10モル%を越えると、ウレタン樹脂の分子量が伸びず、所望のウレタン樹脂が得られない。
ウレタン樹脂を合成する際のポリオールとポリイソシアネートとの仕込み量は、鎖延長を行わない場合には、ポリオールの水酸基1モルに対し、ポリイソシアネートのイソシアネート基が1モル以下であり、0.50〜0.99モルとなる比率が好ましい。ポリイソシアネートのイソシアネート基が1モルより多い場合は、反応終了後に、水酸基が完全に反応して系内に存在しなくなってしまい、ウレタン樹脂に水酸基を導入することができない。また、0.99モルより多い場合は、ウレタン樹脂に水酸基を導入することはできるが、得られるウレタン樹脂の分子量が大きくなり、反対に、ポリイソシアネートのイソシアネート基が0.50モルより少ない場合は、得られるウレタン樹脂の分子量が小さくなりすぎたり、ウレタン樹脂の合成時に低分子量成分が未反応のまま残留しやすくなり、結果として本発明の顔料分散剤を用いたインキ皮膜の耐水性やフィルムへの密着性などに悪影響を及ぼし易くなる。
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を用いて鎖延長する場合は、一般的に知られているように、ポリオールの水酸基1モルに対してポリイソシアネートのイソシアネート基が1モルより大きくなるような比率でポリオールとポリイソシアネートを仕込んで反応させ、末端がイソシアネート基のプレポリマーを合成した後に、鎖延長剤を添加する。その際、鎖延長反応終了後にイソシアネート基が残存するような比率で鎖延長剤を添加し、残存するイソシアネート基と前述のポリオールとを反応させて、ウレタン樹脂の末端に水酸基を導入する。
水酸基を有するウレタン樹脂の数平均分子量は、好ましくは1000〜100000、より好ましくは10000〜50000、さらに好ましくは15000〜25000である。数平均分子量が1000より小さいウレタン樹脂を使用した場合、本発明の顔料分散剤を用いたインキ皮膜の耐ボイル性が劣り、またフィルム等の塗工基材に対する密着性が劣る傾向にある。また、数平均分子量が100000より大きいウレタン樹脂を使用した場合、要求されるような高い顔料分散性は得られない。
顔料分散剤の原料となるスチレンと無水マレイン酸の共重合体は、スチレンモノマーおよび無水マレイン酸を共重合させたものである。スチレンモノマーと無水マレイン酸の共重合比(モル比)は、好ましくは3:1〜1:1、より好ましくは2:1〜1:1、さらに好ましくは1:1である。スチレンと無水マレイン酸の共重合体は、SARTOMER COMPANY社から市販されている。
スチレンと無水マレイン酸の共重合体の重量平均分子量は、好ましくは800〜33000、より好ましくは1600〜6700である。重量平均分子量が800より小さいスチレンと無水マレイン酸の共重合体を使用した場合、本発明の顔料分散剤を用いたインキ皮膜の耐ボイル性が劣り、またフィルム等の塗工基材に対する密着性が劣る傾向にある。また、重量平均分子量が33000より大きいスチレンと無水マレイン酸の共重合体を使用した場合、要求されるような高い顔料分散性は得られない。
スチレンと無水マレイン酸の共重合体の無水マレイン環の一部は、アルコールによりエステル化することができる。アルコールは第一級、第二級および第三級アルコールを含み、最も好適なアルコールはイソプロパノール、n−プロパノール、シクロヘキサノール、2−ブトキシエタノールである。これらのアルコールは、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。エステル化は、常法に従って行うことができる。
本発明の顔料分散剤は、水酸基を有するウレタン樹脂と、スチレンと無水マレイン酸の共重合体とを、適当な溶媒中で反応させてなるものである。溶剤は、反応性の制御の点から、カルボキシル基および水酸基と反応しないもの、あるいはこれらの官能基に対する反応性が低いもの、得られる顔料分散剤およびその原料に対する溶解性が良く、顔料分散剤の合成上問題がないものであることが好ましい。このような溶剤としては、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸イソプロピル、酢酸−n−プロピル、塩化メチレン、ベンゼン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
とりわけ、本発明の顔料分散剤を水性化して使用する場合には、前述の条件に加えて、蒸気圧が水より高く、脱溶剤を行いやすい溶剤を用いることが好ましい。このような溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどが挙げられる。
また、水酸基を有するウレタン樹脂とスチレンと無水マレイン酸の共重合体を反応させる際には、反応を促進するために触媒を使用してもよい。触媒としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(以下、DBUという)、ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン、エタノールアミンなどが挙げられる。
水酸基を有するウレタン樹脂と、スチレンと無水マレイン酸の共重合体との反応比率は、水酸基を有するウレタン樹脂の水酸基1個に対して、スチレンと無水マレイン酸の共重合体の無水マレイン環が好ましくは0.01〜20000個、より好ましくは0.02〜8000、さらに好ましくは0.2〜820となる比率である。水酸基を有するウレタン樹脂の水酸基1個に対して、スチレンと無水マレイン酸の共重合体の無水マレイン環の個数が0.2より小さくなると、得られる顔料分散剤の顔料分散性が低下していく傾向があり、0.01より小さくなると、要求される高い顔料分散性が得られない。また、水酸基を有するウレタン樹脂の水酸基1個に対して、スチレンと無水マレイン酸の共重合体の無水マレイン環の個数が820より大きくなると、本発明の顔料分散剤を用いたインキ皮膜の耐ボイル性や、フィルム等の塗工基材に対する密着性、及びバインダーとの相溶性に悪影響を及ぼしやすくなる傾向があり、20000より大きくなると、耐ボイル性、密着性、相溶性が不良となる。
本発明の顔料分散剤を水性化して使用する場合、水性化の方法としては、一般的に知られているような、樹脂の水性化の方法を用いればよい。例えば、有機溶剤中でカルボキシル基等のアニオン基を有する顔料分散剤を合成した後、顔料分散剤中のアニオン基を、アンモニアやN,N-ジエチルアミノエタノールなどの塩基性化合物を用いて中和し、水を添加した後、加熱して脱溶剤する方法などが挙げられる。
中和に用いる塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジエチルアミノエタノール、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モルホリンなどの有機塩基が挙げられる。
次に、本発明の顔料分散剤を用いた顔料組成物および顔料分散体について説明する。顔料組成物は、本発明の顔料分散剤及び顔料を含むものである。また、顔料分散体は、本発明の顔料分散剤及び顔料を含む顔料組成物を液状媒体に分散させてなるものである。
顔料としては、通常印刷インキまたは塗料に用いられる、すべての有機顔料および無機顔料顔料を用いることができる。
有機顔料としては、天然有機顔料および合成有機顔料があり、天然有機顔料の具体的な例としては、コチニール・レーキ、マダー・レーキなどが挙げられる。また、合成有機顔料としては、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、顔料色素型アゾ顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアンスラキノニル顔料、アンスラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ピランスロン顔料、ジケトピロロピロール顔料などのほか、エオシンなどのキサンタン・レーキ顔料、塩基性染料から作るレーキ顔料(ファナル・カラーなど)、塩基型の酸性染料から作るレーキ顔料(アシッド・グリーン・レーキなど)、バット染料からの顔料(インジゴ、アルゴン・イエローなど)などが挙げられる。
無機顔料としては、チタン白、亜鉛華、リトポン、鉛白などの白色顔料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウムなどの透明性白色顔料、カーボンブラック、動物性黒、黒鉛などの黒色顔料、ベンガラ、鉛丹などの赤色顔料、アンバー、酸化鉄粉、バンダイク茶などの茶色顔料、黄鉛、ジンククロメート、黄酸化鉄などの黄色顔料、クロム緑、酸化クロム、ビリジアンなどの緑色顔料、群青、紺青などの青色顔料、マルス紫、淡口コバルト紫などの紫色顔料、アルミニウム粉、銅粉、ブロンズ粉などの金属粉顔料等が挙げられる。
本発明では、これらの顔料を単独または2種類以上を併用して使用できる。
顔料組成物において、顔料の組成比は、顔料分散剤100重量部に対して、0.1〜100000重量部の割合であることが好ましい。顔料の割合が0.1重量部未満の場合、顔料組成物中の顔料濃度が低くなりすぎて、塗料や印刷インキとして用いる場合に着色機能が低下する。一方、顔料の割合が100000重量部を超えると、顔料が充分に液状媒体中に分散されないため、安定な顔料分散体が得られない。
液状媒体としては、トルエン等の芳香族炭化水素、ミネラルスピリット等の石油系炭化水素、クロロベンゼン等のハロゲン炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類や塩化メチレン、テトラヒドロフラン、水等が挙げられる。液状媒体は、2種またはそれ以上の混合物であってもよい。
本発明の顔料組成物及び顔料分散体には、必要に応じて、バインダー樹脂、染料、有機改質剤、安定剤、分散剤、防腐剤、凍結防止剤、消泡剤、増粘剤、界面活性剤、溶剤、アンチブロッキング剤などを添加できる。更に、目的によっては、耐水性、皮膜強度、耐薬品性などを向上させるために架橋剤を添加することも可能である。架橋剤としては、ブロックドイソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、アジリジン化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
また、本発明の顔料分散剤を油系で使用する場合は特に、一般的な塩基性顔料誘導体と併用することによって、より良好な分散性を得ることができる。
バインダー樹脂としては、一般的にインキ、塗料、色材などに使用される樹脂、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は、単独で用いても良いし、2種以上の樹脂を混合して用いても良い。
とりわけ本発明の顔料分散剤は、従来の界面活性剤や各種顔料分散剤では成し得なかったポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂に対する相溶性に優れているため、ポリウレタン系の樹脂をバインダーとして使用する用途には非常に有効である。
染料としては、例えば直接染料、反応性染料または金属錯体染料などが挙げられる。有機改質剤としては、例えばフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末またはウレタン樹脂粉末などが挙げられる。安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、ヒドラジン系、燐系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アキザリックアシッドアニリド系またはヒンダードアミン系安定剤が挙げられる。分散剤としては、例えばポリアクリル酸系分散剤などが挙げられる。防腐剤としては、例えば有機窒素硫黄化合物系または有機硫黄ハロゲン化合物系防腐剤が挙げられる。
凍結防止剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。消泡剤としては、例えばシリコーン系またはフッ素系消泡剤などが挙げられる。増粘剤としては、セルロース誘導体、デンプン誘導体、またはポリビニルアルコールなどが挙げられる。
界面活性剤としては、ポリプロピレンオキサイドのエチレンオキサイド付加物などのノニオン性界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム塩などのアニオン性界面活性剤、ラウリルアミン酢酸塩などのカチオン性界面活性剤などが挙げられる。溶剤としては、メチルエチルケトンや酢酸エチル、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。アンチブロッキング剤としては、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
顔料組成物及び顔料分散体は、アイガーミル、ペイントシェーカー、ペイントコンディショナー、スキャンデックス、サンドミル、ボールミル、コロイドミル、三本ロールなどの公知の分散機や、ジスパー、ホモミキサーなどの攪拌機などを用いて、顔料分散剤と顔料、および必要に応じて添加剤を混合して顔料組成物とすることや、液状媒体中に顔料組成物を分散させて顔料分散体とすることにより製造することができる。
以下、本発明を詳細に、実施例をあげて説明する。特に断らない限り、%は重量%、部は重量部を表す。なお、ウレタン樹脂の数平均分子量は、東ソー社製のGPCにより測定した。
(合成例1)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、攪拌装置、温度計を備えた4ツ口の1000mlフラスコに、ジメチロールブタン酸43.3部、ポリテトラメチレングリコール(水酸基価55.9、重量平均分子量2000)323.7部、メチルエチルケトン60.0部、ジブチルすずジラウレート0.04部を仕込み、フラスコ内を乾燥窒素で置換し、攪拌しながら80℃まで昇温した。攪拌下、イソホロンジイソシアネート93.0部を10分で滴下し、8時間反応させ(ポリオールの水酸基1モルに対し、ポリイソシアネートのイソシアネート基0.92モルとなる比率)、ウレタン樹脂溶液(A)を得た。ウレタン樹脂の数平均分子量は30000であった。
(合成例2)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、攪拌装置、温度計を備えた4ツ口の1000mlフラスコに、ジメチロールブタン酸42.7部、ポリテトラメチレングリコール(水酸基価55.9、重量平均分子量2000)319.5部、メチルエチルケトン60.0部、ジブチルすずジラウレート0.04部を仕込み、フラスコ内を乾燥窒素で置換し、攪拌しながら80℃まで昇温した。攪拌下、イソホロンジイソシアネート97.8部を10分で滴下し、8時間反応させ(ポリオールの水酸基1モルに対し、ポリイソシアネートのイソシアネート基0.98モルとなる比率)、ウレタン樹脂溶液(B)を得た。ウレタン樹脂の数平均分子量は36000であった。
(合成例3)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、攪拌装置、温度計を備えた4ツ口の1000mlフラスコに、エチレングリコール18.9部、ポリテトラメチレングリコール(水酸基価55.9、重量平均分子量2000)337.0部、メチルエチルケトン60.0部、ジブチルすずジラウレート0.04部を仕込み、フラスコ内を乾燥窒素で置換し、攪拌しながら80℃まで昇温した。攪拌下、イソホロンジイソシアネート103.4部を10分で滴下し、8時間反応させ(ポリオールの水酸基1モルに対し、ポリイソシアネートのイソシアネート基0.98モルとなる比率)、ウレタン樹脂溶液(C)を得た。ウレタン樹脂の数平均分子量は28000であった。
(合成例4)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、攪拌装置、温度計を備えた4ツ口の1000mlフラスコに、ジメチロールブタン酸40.1部、ポリテトラメチレングリコール(水酸基価55.9、重量平均分子量2000)300.0部、メチルエチルケトン60.0部、ジブチルすずジラウレート0.04部を仕込み、フラスコ内を乾燥窒素で置換し、攪拌しながら80℃まで昇温した。攪拌下、イソホロンジイソシアネート119.9部を10分で滴下し、8時間反応させ(ポリオールの水酸基1モルに対し、ポリイソシアネートのイソシアネート基1.28モルとなる比率)、ウレタン樹脂溶液(D)を得た。ウレタン樹脂の数平均分子量は39500であった。
(実施例1)
スチレンと無水マレイン酸の共重合体(SARTOMER社製「SMA1000」、重量平均分子量2500〜5000、スチレン/無水マレイン酸モル比=1/1)100部をメチルエチルケトン100部に溶解した溶液に、合成例1で得られたウレタン樹脂溶液(A)100部を添加し、80℃で8時間反応させた。反応物を65℃に冷却後、水552.3部、25%アンモニア水47.7部を添加し、昇温して、メチルエチルケトンを除去し、顔料分散剤水溶液(E)を得た。
(実施例2)
合成例1で得られたウレタン樹脂溶液(A)100部に、スチレンと無水マレイン酸の共重合体(SARTOMER社製「SMA17352」、重量平均分子量2500〜5000、スチレン/無水マレイン酸モル比=1/1、シクロヘキサノールとイソプロパノールで一部エステル化)100部、およびメチルエチルケトン30部を添加し、80℃で8時間反応させた。反応物を65℃に冷却後、水552.3部、25%アンモニア水47.7部を添加し、昇温して、メチルエチルケトンを除去し、顔料分散剤水溶液(F)を得た。
(実施例3)
スチレンと無水マレイン酸の共重合体(SARTOMER社製「SMA17352」、重量平均分子量2500〜5000、スチレン/無水マレイン酸モル比=1/1、シクロヘキサノールとイソプロパノールで一部エステル化)50部をメチルエチルケトン50部に溶解した溶液に、合成例1で得られたウレタン樹脂溶液(A)150部を添加し、80℃で8時間反応させた。反応物を65℃に冷却後、水660部、25%アンモニア水47.4部を添加し、昇温して、メチルエチルケトンを除去し、顔料分散剤水溶液(G)を得た。
(実施例4)
スチレンと無水マレイン酸の共重合体(SARTOMER社製「SMA17352」、重量平均分子量2500〜5000、スチレン/無水マレイン酸モル比=1/1、シクロヘキサノールとイソプロパノールで一部エステル化)150部をメチルエチルケトン150部に溶解した溶液に、合成例1で得られたウレタン樹脂溶液(A)50部を添加し、80℃で8時間反応させた。反応物を65℃に冷却後、水600部、25%アンモニア水47.4部を添加し、昇温して、メチルエチルケトンを除去し、顔料分散剤水溶液(H)を得た。
(実施例5)
スチレンと無水マレイン酸の共重合体(SARTOMER社製「SMA17352」、重量平均分子量2500〜5000、スチレン/無水マレイン酸モル比=1/1、シクロヘキサノールとイソプロパノールで一部エステル化)100部をメチルエチルケトン100部に溶解した溶液に、合成例2で得られたウレタン樹脂溶液(B)100部、DBU0.8部を添加し、80℃で8時間反応させた。反応物を65℃に冷却後、水552.3部、25%アンモニア水47.7部を添加し、昇温して、メチルエチルケトンを除去し、顔料分散剤水溶液(I)を得た。
(実施例6)
スチレンと無水マレイン酸の共重合体(SARTOMER社製「SMA2000」、重量平均分子量2500〜5000、スチレン/無水マレイン酸モル比=2/1)100部をメチルエチルケトン100部に溶解した溶液に、合成例3で得られたウレタン樹脂溶液(C)100部、DBU0.8部を添加し、80℃で8時間反応させた。反応物を65℃に冷却後、水660部、25%アンモニア水 47.4部を添加し、昇温して、メチルエチルケトンを除去し、顔料分散剤水溶液(J)を得た。
(実施例7)
スチレンと無水マレイン酸の共重合体(SARTOMER社製「SMA2000」、重量平均分子量2500〜5000、スチレン/無水マレイン酸モル比=2/1)100部をメチルエチルケトン100部に溶解した溶液に、合成例1で得られたウレタン樹脂溶液(A)100部、DBU0.8部を添加し、80℃8時間反応させた。反応物を65℃に冷却後、水621部、25%アンモニア水47.4部を添加し、昇温して、メチルエチルケトンを除去し、顔料分散剤水溶液(K)を得た。
(比較例1)
スチレンと無水マレイン酸の共重合体(SARTOMER社製「SMA17352」、重量平均分子量2500〜5000、スチレン/無水マレイン酸モル比=1/1、シクロヘキサノールとイソプロパノールで一部エステル化)100部をメチルエチルケトン100部に溶解した溶液に、合成例4で得られた樹脂溶液(D)100部を添加し、80℃で8時間加熱した。反応物を65℃に冷却後、水552.3部、25%アンモニア水47.7部を添加し、昇温して、メチルエチルケトンを除去し、顔料分散剤水溶液(L)を得た。
(比較例2)
無水マレイン酸100部に、合成例3で得られたウレタン樹脂溶液(C)100部、DBU0.8部を添加し、80℃で8時間反応させた。反応物を65℃に冷却後、水550部、25%アンモニア水50.0部を添加し、昇温して、メチルエチルケトンを除去し、顔料分散剤水溶液(M)を得た。
(比較例3)
無水コハク酸100部をメチルエチルケトン100部に溶解した溶液に、合成例2で得られたウレタン樹脂溶液(B)100部を添加し、80℃で8時間反応させた。反応物を65℃に冷却後、水550部、25%アンモニア水50.0部を添加し、昇温して、メチルエチルケトンを除去し、顔料分散剤水溶液(N)を得た。
実施例および比較例で得られた顔料分散剤水溶液16部、フタロシアニン系青色顔料(東洋インキ製造社製「リオノールブルー FG7351」)40部、水44部の混合物をジスパー(特殊機化工業社製「T.K.ホモジスパー」)を用いて、1500rpmで攪拌した後、ビーズミル分散機に入れて10分間分散し、高顔料濃度の顔料分散体を作成した。作成した顔料分散体の粘度をレオメーターを用いて25℃の条件下で測定した。この時の値をミルベース粘度とする。また、この顔料分散体を、処理配向ポリプロピレンフィルム(東洋紡績社製「パイレンP2161」)上に、バーコーターNo.4(第一理化社製)を用いて塗布し、60℃の乾燥オーブンで1分間乾燥乾燥させた後、光沢計(BYKガードナー社製「マイクロ−トリグロス光沢計」)を用いて25℃の条件下、塗膜の60度光沢値を測定した。このときの値を、ミルベース光沢とする。
つづいて、作成した顔料分散体を、ジスパーを用いて1500rpmで攪拌しながら、水21.12部および水性ウレタン系バインダー樹脂ワニス(ウレタン樹脂24.0%、イソプロピルアルコール10.0%、水65.83%、アンモニア0.17%からなる)29.58部を3分間で滴下し、インキを得た。上記の水性ウレタンバインダー樹脂ワニスは、ポリオール成分としては、ポリテトラメチレングリコール、ジメチロールブロピオン酸、イソシアネート成分としては、イソホロンジイソシアネートを原料としたもので、重量平均分子量は約40000である。
得られたインキを用いて、高顔料濃度分散体と同様の方法で、光沢値を測定した。インキの光沢値をインキ光沢とする。また、得られたインキについて、光沢測定と同様の方法で作成した塗膜フィルムを水に浸漬した。3時間後、この塗膜フィルムを取り出すと同時に、塗膜表面を互いに擦りあわせることによって、塗膜の剥がれ具合を目視で確認し、耐水性を評価した。このとき、塗膜が全く剥がれない場合は耐水性◎、わずかに剥がれる場合は○、半分程度の面積が剥がれる場合は△、大部分の面積が剥がれる場合は×として評価した。また光沢測定と同様の方法で作成した塗膜フィルムの塗膜表面にセロテープを貼り付け、指で5回擦った後、剥がれ具合を目視で確認し、密着性を評価した。塗膜が全く剥がれない場合は耐水性◎、わずかに剥がれる場合は○、半分程度の面積が剥がれる場合は△、大部分の面積が剥がれる場合は×として評価した。
結果を表1に示す。
Figure 2005029706
評価結果は、ミルベース粘度が低く、ミルベース光沢およびインキ光沢がともに高いことが理想的であり、これらのいずれの条件が欠けていても、好ましくない。例えばミルベース粘度が低く、ミルベース光沢も高いが、インキ光沢が著しく低い場合は、インキとしての発色性が非常に悪いという意味で好ましくない。これは、顔料分散剤を単独で使用した場合の顔料分散性は良好であるが、従来問題とされているウレタン系バインダー樹脂との相溶性が悪いために、バインダー樹脂で希釈した際、顔料の凝集、沈降がおこっているためと考えられる。なお、比較例3で得られた顔料分散剤水溶液(N)を用いた場合には、
顔料を水に分散することができず、顔料分散体が得られなかった。
本発明の顔料分散剤は、印刷インキ、塗料、着色剤、カラーフィルター用レジスト、インクジェットインキ、カラートナーなど、顔料を分散する必要のある、あらゆる用途に使用できる。

Claims (9)

  1. 水酸基を有するウレタン樹脂と、スチレンと無水マレイン酸の共重合体とを反応させてなる顔料分散剤。
  2. スチレンと無水マレイン酸の共重合体の無水マレイン環の一部が、アルコールによりエステル化されていることを特徴とする請求項1記載の顔料分散剤。
  3. 水酸基を有するウレタン樹脂の数平均分子量が1000〜100000であることを特徴とする請求項1または2記載の顔料分散剤。
  4. スチレンと無水マレイン酸の共重合体の重量平均分子量が800〜33000であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の顔料分散剤。
  5. 水酸基を有するウレタン樹脂と、スチレンと無水マレイン酸の共重合体とを、水酸基を有するウレタン樹脂の水酸基1個に対して、スチレンと無水マレイン酸の共重合体の無水マレイン環が0.01〜20000個となる比率で反応させてなることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の顔料分散剤。
  6. 請求項1ないし5いずれか記載の顔料分散剤および顔料を含む顔料組成物。
  7. 請求項6記載の顔料組成物を液状媒体に分散させてなる顔料分散体。
  8. 液状媒体が水であることを特徴とする請求項7記載の顔料分散体。
  9. 請求項7または8記載の顔料分散体を含む印刷インキ。

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