JP2005029589A - 摩擦材原材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】攪拌、混合時に分散しやすく、かつ混合物中で偏析しない摩擦材原材料を提供する。
【解決手段】摩擦材に配合される摩擦材原材料であって、原材料本体と、この原材料本体の表面に少なくとも露出する繊維とを有し、この繊維の上からコーティング剤が塗布されてなり、このコーティング剤として、例えば、摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって繊維が起毛した状態になることができる程度に、繊維を寝た状態に保つコーティング剤を用いる。
【選択図】 図4
【解決手段】摩擦材に配合される摩擦材原材料であって、原材料本体と、この原材料本体の表面に少なくとも露出する繊維とを有し、この繊維の上からコーティング剤が塗布されてなり、このコーティング剤として、例えば、摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって繊維が起毛した状態になることができる程度に、繊維を寝た状態に保つコーティング剤を用いる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種車両や産業機械等のブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦材の原材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般のブレーキやクラッチ用の摩擦材(ブレーキパッド、ブレーキライニング、クラッチフェーシング等)の原材料には、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の結合材、有機繊維、無機繊維、金属繊維等の繊維補強材、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機充填材及びカシューダスト等の摩擦調整材等、種々の材料が用いられる。これらの摩擦材原材料は、形状や大きさや重さが異なり、このような摩擦材原材料の形状や物性の違いから、摩擦材原材料の混合物では、所定の摩擦材原材料が混合物中に偏って存在する現象(以下、この現象を「偏析」ともいう)が生じることがある。
【0003】
例えば、カシューダストは、優れた摩擦調整材であるが、他の原材料よりも比較的大きいため、混合物中で脱落して偏析する傾向がある。このようなカシューダストの偏析を防止するための技術としては、例えば、カシューダストの表面に粘性を有する層を形成する技術(例えば、特許文献1〜4参照。)や、カシューダストの表面に繊維を付着させる技術(例えば、特許文献5及び6参照。)が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−106742号公報
【特許文献2】
特許第3109790号公報
【特許文献3】
特開平6−322146号公報
【特許文献4】
特開平5−156235号公報
【特許文献5】
特開平6−25651号公報
【特許文献6】
特開平6−25648号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述したカシューダストの偏析を防止するための技術は、カシューダストの偏析を防止する上では優れているが、カシューダストの表面における粘着層の粘着力や、カシューダストの表面における繊維の絡み合い効果が大きいと、カシューダストとその他の摩擦材原材料との攪拌、混合時において、カシューダストの分散性が低下し、摩擦材の生産性の観点から好ましくない。
【0006】
本発明は、攪拌、混合時に分散しやすく、かつ混合物中で偏析しない摩擦材原材料を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、通常は起毛した状態の繊維が表面には露出せず、摩擦材原材料の攪拌、混合時に、起毛した状態の繊維が現れる摩擦材原材料を提供する。
【0008】
すなわち、本発明の摩擦材原材料は、摩擦材に配合される摩擦材原材料であって、この摩擦材原材料は、表面に露出する繊維を有すると共に繊維の上からコーティング剤が塗布されてなり、このコーティング剤は、摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって崩壊することを特徴とする摩擦材原材料である。
【0009】
前記摩擦材原材料によれば、摩擦材原材料の攪拌初期では、表面に繊維を有さない摩擦材原材料のように分散性に優れ、さらに、攪拌に伴って表面の繊維が起毛し、周囲の摩擦材原材料に絡み合うので、混合物中での偏析が防止される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の摩擦材原材料は、摩擦材に配合される摩擦材原材料であって、原材料本体と、この原材料本体の表面に少なくとも露出する繊維とを有し、この繊維の上からコーティング剤が塗布されてなる。
【0011】
前記原材料本体は、表面に繊維が露出し摩擦材原材料として用いられる材料であれば特に限定されない。前記原材料本体は、繊維であっても良いし、表面に繊維を有する粒子であっても良いが、表面に繊維を有する粒子であることが好ましい。前記粒子は、大きさや重さ等の物性によって偏析を生じやすい粒子であると、本発明においてより一層効果的である。このような前記原材料本体としては、例えばカシューダストと、このカシューダストの表面に粘結材によって接着している繊維とからなる粒子等が挙げられる。
【0012】
前記粘結材は、前記粒子の表面に繊維を接着させることができる材料であれば特に限定されない。このような粘結材としては、例えば、液状のフェノール樹脂、液状のエポキシ樹脂、液状のゴム等の、繊維の粒子への接着に通常用いられる材料が挙げられる。前記粘結材は、一種類だけを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0013】
前記繊維は、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって起毛する繊維であれば特に限定されない。前記繊維は、耐熱性の有機繊維であることが、混合物中での絡み合い効果を高め、混合物中での偏析を防止する上でより好ましい。このような繊維としては、例えば、フェノール繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン等の、摩擦材原材料に用いられる種々の公知の繊維が挙げられる。前記繊維は、一種類だけを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0014】
前記繊維は、原材料本体の表面からの長さが0.1〜0.5mmであることが、良好な分散性と偏析防止効果との両方を得るうえで好ましい。繊維の長さは、例えば粘結材によって粒子の表面に接着される繊維に適当な長さの繊維を用いることによって調整することが可能である。
【0015】
前記コーティング剤は、前記繊維を摩擦材原材料の表面から実質的に起毛していない状態に保つとともに、摩擦材原材料の攪拌時の摩擦によって崩壊し、前記繊維が起毛することを許容する材料である。このようなコーティング剤としては、摩擦材原材料の表面に繊維を起毛した状態で露出させなくするコーティング剤であって、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって繊維が起毛した状態になることができる程度に、繊維を寝た状態に保つ第一のコーティング剤や、摩擦材原材料の表面を覆い、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって崩壊する層を形成する第二のコーティング剤等が挙げられる。
【0016】
なお、上記において、「露出させなくする」とは、本発明の摩擦材原材料の表面において起毛した状態の前記繊維がまったくない状態、及び、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時において、前記繊維が摩擦材原材料の偏析の防止に実質的に作用しない程度に、本発明の摩擦材原材料の表面に前記繊維が露出する状態を意味する。このような状態は、前記原材料本体の表面における前記繊維の種類や長さや本数によって異なるが、例えば摩擦材原材料の表面において前記繊維の20%以下が起毛している状態や、摩擦材原材料の表面において起毛している繊維の起毛長さが0.05mm以下である状態等が目安として挙げられる。
【0017】
前記第一のコーティング剤は、前記摩擦材原材料の表面の個々の繊維に作用するようなコーティング剤であり、前記繊維を寝かせ、この状態を、固化や粘着等による弱い拘束力で保つ材料であれば特に限定されない。前記第一のコーティング剤は、粘性によって前記繊維を寝た状態に保つサイジング剤であることが、優れた分散性と偏析防止効果との両方を得る上で好ましい。前記第一のコーティング剤は、前記繊維を寝た状態に保つために、粘性以外にも、例えば保湿性、膜形成性等の他の物性をしていても良い。
【0018】
前記サイジング剤等の前記第一のコーティング剤は、塗布後に所望の物性を発現するように、水や有機溶剤等の適当な媒体によって溶解又は分散させた状態で用いることができる。このような第一のコーティング剤としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、エチレングリコール、プロピレングリコール、カシューナッツオイル等が挙げられる。前記第一のコーティング剤は、一種類だけを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0019】
前記第二のコーティング剤は、個々の前記摩擦材原材料の表面に作用するようなコーティング剤であり、摩擦材原材料の表面を覆い、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時に本発明の摩擦材原材料の表面にかかる負荷で崩壊する強度の層を形成する材料であれば特に限定されない。
【0020】
前記第二のコーティング剤は、粉体であり、水や有機溶剤等の液状の媒体に濡れた状態で前記繊維に付着し、繊維に付着した状態で乾燥して前述した摩擦によって崩壊する層を形成することが、優れた分散性と偏析防止効果との両方を得る上で好ましい。粉体を濡らす液状の媒体は、粉体の種類や留去の容易性等に応じて選択される。なお、第二のコーティング剤における乾燥は、前記層が形成されるのであれば、前記液状の媒体を完全に留去しなくても良い。
【0021】
前記粉体は、液状の媒体に濡らした後に乾燥させたときに、層を形成するのに十分な強度で固化する粉体であれば特に限定されない。前記粉体は、粉末状の樹脂と、他の摩擦材原材料として摩擦材に配合される充填材との混合粉体であることが、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料とを混合して摩擦材を製造する際に、摩擦材原材料以外の材料の混入を防止し、所期の性能を発現する摩擦材を製造する上で好ましい。
【0022】
前記粉末状の樹脂は、摩擦材原材料に用いることが従来より知られている樹脂の粉末であることが、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料とを混合して摩擦材を製造する際に、摩擦材原材料以外の材料の混入を防止し、所期の性能を発現する摩擦材を製造する上で好ましく、熱硬化性樹脂であることがより好ましい。このような粉末状の樹脂としては、例えば、粉末状のフェノール樹脂、粉末状のエポキシ樹脂、粉末状のメラミン樹脂等が挙げられる。前記粉末状の樹脂は、一種類だけを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0023】
前記充填材は、摩擦材の摩擦力の調整などの目的で摩擦材原材料として従来より用いられる材料であり、このような材料であれば特に限定されない。このような充填材としては、例えば炭酸カルシウムや硫酸バリウム等の無機の充填材が挙げられる。前記充填材は、一種類だけを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0024】
前記原材料本体の繊維の上から前記コーティング剤を塗布する方法は、コーティング剤の種類に応じた適当な方法によって行うことができる。このような方法としては、例えば前記第一のコーティング剤であれば、前記原材料本体の前記第一のコーティング剤への浸漬や、原材料本体への第一のコーティング剤の噴霧等が挙げられる。また、前述した方法としては、例えば前記第二のコーティング剤であれば、粉体と液状の媒体とのスラリーへの原材料本体の浸漬や、原材料本体への前記スラリーの噴霧や、浸漬や噴霧等によって前記液状の媒体で濡らされた原材料本体と前記粉体との混合等が挙げられる。
【0025】
前記原材料本体への前記コーティング剤の塗布量は、コーティング剤の種類に応じて異なるが、100質量部の原材料本体に対して5質量部以上であることが、コーティング剤による繊維の状態制御や隠蔽を十分に行う上で好ましい。なお、コーティング剤による繊維の状態制御や隠蔽(前記層の形成)は、塗布後の摩擦材原材料を実体顕微鏡で観察することによって確認することができる。
【0026】
本発明の摩擦材原材料は、他の摩擦材原材料と混合されて、摩擦材原材料の混合物を構成する。本発明の摩擦材原材料は、他の摩擦材原材料との攪拌、混合時には、本発明の摩擦材原材料の表面に起毛した状態の繊維が実質的に存在しないことから、混合物中での本発明の摩擦材原材料の移動が比較的容易であり、短い攪拌、混合時間で良好な分散状態にすることができる。
【0027】
また、攪拌、混合時の摩擦によって、起毛した状態の繊維が本発明の摩擦材原材料の表面に現れることから、攪拌後の混合物中では本発明の摩擦材原材料が移動しにくく、混合物の搬送や輸送等による振動の負荷によっても偏析しにくい。
【0028】
したがって、前記混合物は、混合物の搬送や保存によっても本発明の摩擦材原材料の偏析が見られない混合物であり、このような混合物を摩擦材の製造に用いることによって、偏析を生じやすい摩擦材原材料の所期の性能が十分に発揮される種々の摩擦材の製造が期待される。
【0029】
前記他の摩擦材原材料には、前記原材料本体を構成する材料以外の種類の公知の摩擦材原材料を用いることができる。このような他の摩擦材原材料としては、例えば、レーヨン、アラミド繊維、アクリル繊維及びリンターパルプ等の有機繊維や、ガラス繊維、ロックウール、銅繊維及び真鍮繊維等の無機繊維や、珪藻土、バーミキュライト、ジルコニア、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化鉄、アルミナ等の無機充填材、二硫化モリブデン粉、グラファイト粉、カシューダスト、ゴム粒等の摩擦調整材、亜鉛粉、アルミニウム粉、銅粉、真鍮粉、鋳鉄粉等の金属粉、フェノール樹脂等の結合材等が挙げられる。
【0030】
本発明の摩擦材原材料及び前記他の摩擦材原材料の混合物への配合量は、摩擦材の種類や所期の性能によって異なるが、前記繊維や前記第二のコーティング剤等の本発明の摩擦材原材料の構成材料に公知の他の摩擦材原材料を用いる場合では、前記構成材料の量を考慮して他の摩擦材原材料の配合量を調整すれば良く、このような調整を除けば、これらの摩擦材原材料は、通常の配合量で用いることができる。
【0031】
【実施例】
本発明の実施例を以下に示す。
<実施例1>
平均粒径が700μmのカシューダスト(図1に示す。これを「カシューダスト1」とする)を用意した。
【0032】
カシューダスト1に対して10質量%の粘結材としての液状のフェノール樹脂をカシューダスト1にコーティングし、粘着性の層を有するカシューダスト(図2に示す。これを「カシューダスト2」とする)を得た。
【0033】
カシューダスト2に対して5質量%のアラミド繊維をカシューダスト2に添加し、前記液状のフェノール樹脂を硬化して、起毛した状態のアラミド繊維を表面に有するカシューダスト(図3に示す。これを「カシューダスト3」とする)を得た。アラミド繊維には、長さが0.5〜1.4mmのアラミド繊維を用いた。
【0034】
カーシューダスト3に対して10質量%のサイジング剤としての1質量%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液をカシューダスト3に噴霧し、乾燥することによって表面のアラミド繊維を寝かせ、寝た状態のアラミド繊維を表面に有するカシューダスト(図4に示す。これを「カシューダスト4」とする)を得た。
【0035】
95質量部の炭酸カルシウムと5質量部のアラミド繊維の混合物に対して10質量部のカシューダスト1を添加して所定時間攪拌し、混合物1を得た。前記所定時間は、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間及び10分間であり、それぞれの攪拌時間の混合物1を得た。前記混合物とカシューダスト1との攪拌には、ハイスピードミキサーを用いた。
【0036】
同様に、95質量部の炭酸カルシウムと5質量部のアラミド繊維の混合物に対して、それぞれ10質量部のカシューダスト2、3及び4をそれぞれ添加して所定時間攪拌し、混合物2、3及び4を得た。
【0037】
1〜5分間攪拌した混合物のそれぞれの分散状態を攪拌直後に目視により確認し、下記の基準によって評価した。評価結果を表1に示す。
◎ 満遍なく均一に分散している。
○ 部分的にカシューダストが集まっているところが見られるがほぼ均一に分散している。
△ カシューダストが集まっているところが複数箇所で見られた。
× カシューダストの大きな集合が見られた。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示されるように、混合物1及び混合物4は、3分間の攪拌時間で分散状態が良好となった。また、混合物2及び混合物3は、5分間の攪拌時間で分散状態が良好になった。
【0040】
また、10分間攪拌した混合物のそれぞれを40gずつビーカに入れ、2cmの高さから5回落としたときの混合物の偏析の状態を目視により確認した。その結果、混合物1ではビーカの底にカシューダストの偏析が見られたが、混合物2、3及び4ではカシューダストの偏析は見られず、分散状態は良好であった。
【0041】
また、混合物4中のカシューダスト4を顕微鏡により観察したところ、図5に示すように、カシューダスト4の表面のアラミド繊維が起毛し、混合物中のアラミド繊維と絡み合っていた。
【0042】
以上のことから、寝た状態のアラミド繊維を表面に有するカシューダスト4を添加した混合物4は、他のカシューダストを添加した混合物に比べて、短い攪拌時間で均一に分散し、かつ分散後の偏析が防止されていることがわかる。
【0043】
<実施例2>
カシューダスト3に対して10質量%の水をカシューダスト3に添加し、これに、粒径が3μmの炭酸カルシウムと、粒径が20μmであり、炭酸カルシウムに対して5質量%の粉末状のフェノール樹脂との混合粉体を添加して乾燥し、炭酸カルシウムとフェノール樹脂との混合粉体層を表面に有するカシューダスト(図6に示す。これを「カシューダスト5」とする)を得た。
【0044】
カシューダスト4に代えてカシューダスト5を用いる以外は実施例1と同様にして、混合物5を得、得られた混合物5を混合物1〜3とともに実施例1と同様に評価した。混合物の分散状態の評価結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示されるように、混合物1及び混合物5は、3分間の攪拌時間で分散状態が良好となった。また、混合物2及び混合物3は、5分間の攪拌時間で分散状態が良好になった。
【0047】
また、実施例1と同様に混合物の偏析の状態を評価したところ、混合物1ではビーカの底にカシューダストの偏析が見られたが、混合物2、3及び5ではカシューダストの偏析は見られず、分散状態は良好であった。
【0048】
また、混合物5中のカシューダスト5を顕微鏡により観察したところ、図7に示すように、カシューダスト5の表面の混合粉体層が崩壊し、カシューダスト5の表面ではアラミド繊維が起毛し、混合物中のアラミド繊維と絡み合っていた。
【0049】
以上のことから、前述した混合粉体層を表面に有するカシューダスト5の混合物5は、他のカシューダストを添加した混合物に比べて、短い攪拌時間で均一に分散し、かつ分散後の偏析が防止されていることがわかる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、摩擦材に配合される摩擦材原材料であって、この摩擦材原材料は、表面に露出する繊維を有すると共に繊維の上からコーティング剤が塗布されてなり、このコーティング剤は、前述した第一のコーティング剤や第二のコーティング剤のような、摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって崩壊するコーティング剤であることから、攪拌、混合時には容易に分散しやすく、均一な分散状態となってからは混合物中で偏析しない摩擦材原材料を提供することができる。
【0051】
本発明では、コーティング剤の粉体や繊維に、摩擦材原材料として用いることが知られている材料を用いると、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料とを混合して摩擦材を製造する際に、摩擦材原材料以外の材料の混入を防止し、所期の性能を発現する摩擦材を製造する上でより一層効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるカシューダスト1を示す図である。
【図2】本発明の実施例1におけるカシューダスト2を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例1におけるカシューダスト3を示す図である。
【図4】本発明の実施例1におけるカシューダスト4を示す図である。
【図5】図4に示すカシューダスト4の攪拌後の様子を示す図である。
【図6】本発明の実施例2におけるカシューダスト5を示す要部断面図である。
【図7】図6に示すカシューダスト5の攪拌後の様子を示す要部断面図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種車両や産業機械等のブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦材の原材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般のブレーキやクラッチ用の摩擦材(ブレーキパッド、ブレーキライニング、クラッチフェーシング等)の原材料には、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の結合材、有機繊維、無機繊維、金属繊維等の繊維補強材、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機充填材及びカシューダスト等の摩擦調整材等、種々の材料が用いられる。これらの摩擦材原材料は、形状や大きさや重さが異なり、このような摩擦材原材料の形状や物性の違いから、摩擦材原材料の混合物では、所定の摩擦材原材料が混合物中に偏って存在する現象(以下、この現象を「偏析」ともいう)が生じることがある。
【0003】
例えば、カシューダストは、優れた摩擦調整材であるが、他の原材料よりも比較的大きいため、混合物中で脱落して偏析する傾向がある。このようなカシューダストの偏析を防止するための技術としては、例えば、カシューダストの表面に粘性を有する層を形成する技術(例えば、特許文献1〜4参照。)や、カシューダストの表面に繊維を付着させる技術(例えば、特許文献5及び6参照。)が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−106742号公報
【特許文献2】
特許第3109790号公報
【特許文献3】
特開平6−322146号公報
【特許文献4】
特開平5−156235号公報
【特許文献5】
特開平6−25651号公報
【特許文献6】
特開平6−25648号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述したカシューダストの偏析を防止するための技術は、カシューダストの偏析を防止する上では優れているが、カシューダストの表面における粘着層の粘着力や、カシューダストの表面における繊維の絡み合い効果が大きいと、カシューダストとその他の摩擦材原材料との攪拌、混合時において、カシューダストの分散性が低下し、摩擦材の生産性の観点から好ましくない。
【0006】
本発明は、攪拌、混合時に分散しやすく、かつ混合物中で偏析しない摩擦材原材料を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、通常は起毛した状態の繊維が表面には露出せず、摩擦材原材料の攪拌、混合時に、起毛した状態の繊維が現れる摩擦材原材料を提供する。
【0008】
すなわち、本発明の摩擦材原材料は、摩擦材に配合される摩擦材原材料であって、この摩擦材原材料は、表面に露出する繊維を有すると共に繊維の上からコーティング剤が塗布されてなり、このコーティング剤は、摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって崩壊することを特徴とする摩擦材原材料である。
【0009】
前記摩擦材原材料によれば、摩擦材原材料の攪拌初期では、表面に繊維を有さない摩擦材原材料のように分散性に優れ、さらに、攪拌に伴って表面の繊維が起毛し、周囲の摩擦材原材料に絡み合うので、混合物中での偏析が防止される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の摩擦材原材料は、摩擦材に配合される摩擦材原材料であって、原材料本体と、この原材料本体の表面に少なくとも露出する繊維とを有し、この繊維の上からコーティング剤が塗布されてなる。
【0011】
前記原材料本体は、表面に繊維が露出し摩擦材原材料として用いられる材料であれば特に限定されない。前記原材料本体は、繊維であっても良いし、表面に繊維を有する粒子であっても良いが、表面に繊維を有する粒子であることが好ましい。前記粒子は、大きさや重さ等の物性によって偏析を生じやすい粒子であると、本発明においてより一層効果的である。このような前記原材料本体としては、例えばカシューダストと、このカシューダストの表面に粘結材によって接着している繊維とからなる粒子等が挙げられる。
【0012】
前記粘結材は、前記粒子の表面に繊維を接着させることができる材料であれば特に限定されない。このような粘結材としては、例えば、液状のフェノール樹脂、液状のエポキシ樹脂、液状のゴム等の、繊維の粒子への接着に通常用いられる材料が挙げられる。前記粘結材は、一種類だけを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0013】
前記繊維は、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって起毛する繊維であれば特に限定されない。前記繊維は、耐熱性の有機繊維であることが、混合物中での絡み合い効果を高め、混合物中での偏析を防止する上でより好ましい。このような繊維としては、例えば、フェノール繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン等の、摩擦材原材料に用いられる種々の公知の繊維が挙げられる。前記繊維は、一種類だけを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0014】
前記繊維は、原材料本体の表面からの長さが0.1〜0.5mmであることが、良好な分散性と偏析防止効果との両方を得るうえで好ましい。繊維の長さは、例えば粘結材によって粒子の表面に接着される繊維に適当な長さの繊維を用いることによって調整することが可能である。
【0015】
前記コーティング剤は、前記繊維を摩擦材原材料の表面から実質的に起毛していない状態に保つとともに、摩擦材原材料の攪拌時の摩擦によって崩壊し、前記繊維が起毛することを許容する材料である。このようなコーティング剤としては、摩擦材原材料の表面に繊維を起毛した状態で露出させなくするコーティング剤であって、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって繊維が起毛した状態になることができる程度に、繊維を寝た状態に保つ第一のコーティング剤や、摩擦材原材料の表面を覆い、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって崩壊する層を形成する第二のコーティング剤等が挙げられる。
【0016】
なお、上記において、「露出させなくする」とは、本発明の摩擦材原材料の表面において起毛した状態の前記繊維がまったくない状態、及び、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時において、前記繊維が摩擦材原材料の偏析の防止に実質的に作用しない程度に、本発明の摩擦材原材料の表面に前記繊維が露出する状態を意味する。このような状態は、前記原材料本体の表面における前記繊維の種類や長さや本数によって異なるが、例えば摩擦材原材料の表面において前記繊維の20%以下が起毛している状態や、摩擦材原材料の表面において起毛している繊維の起毛長さが0.05mm以下である状態等が目安として挙げられる。
【0017】
前記第一のコーティング剤は、前記摩擦材原材料の表面の個々の繊維に作用するようなコーティング剤であり、前記繊維を寝かせ、この状態を、固化や粘着等による弱い拘束力で保つ材料であれば特に限定されない。前記第一のコーティング剤は、粘性によって前記繊維を寝た状態に保つサイジング剤であることが、優れた分散性と偏析防止効果との両方を得る上で好ましい。前記第一のコーティング剤は、前記繊維を寝た状態に保つために、粘性以外にも、例えば保湿性、膜形成性等の他の物性をしていても良い。
【0018】
前記サイジング剤等の前記第一のコーティング剤は、塗布後に所望の物性を発現するように、水や有機溶剤等の適当な媒体によって溶解又は分散させた状態で用いることができる。このような第一のコーティング剤としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、エチレングリコール、プロピレングリコール、カシューナッツオイル等が挙げられる。前記第一のコーティング剤は、一種類だけを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0019】
前記第二のコーティング剤は、個々の前記摩擦材原材料の表面に作用するようなコーティング剤であり、摩擦材原材料の表面を覆い、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時に本発明の摩擦材原材料の表面にかかる負荷で崩壊する強度の層を形成する材料であれば特に限定されない。
【0020】
前記第二のコーティング剤は、粉体であり、水や有機溶剤等の液状の媒体に濡れた状態で前記繊維に付着し、繊維に付着した状態で乾燥して前述した摩擦によって崩壊する層を形成することが、優れた分散性と偏析防止効果との両方を得る上で好ましい。粉体を濡らす液状の媒体は、粉体の種類や留去の容易性等に応じて選択される。なお、第二のコーティング剤における乾燥は、前記層が形成されるのであれば、前記液状の媒体を完全に留去しなくても良い。
【0021】
前記粉体は、液状の媒体に濡らした後に乾燥させたときに、層を形成するのに十分な強度で固化する粉体であれば特に限定されない。前記粉体は、粉末状の樹脂と、他の摩擦材原材料として摩擦材に配合される充填材との混合粉体であることが、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料とを混合して摩擦材を製造する際に、摩擦材原材料以外の材料の混入を防止し、所期の性能を発現する摩擦材を製造する上で好ましい。
【0022】
前記粉末状の樹脂は、摩擦材原材料に用いることが従来より知られている樹脂の粉末であることが、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料とを混合して摩擦材を製造する際に、摩擦材原材料以外の材料の混入を防止し、所期の性能を発現する摩擦材を製造する上で好ましく、熱硬化性樹脂であることがより好ましい。このような粉末状の樹脂としては、例えば、粉末状のフェノール樹脂、粉末状のエポキシ樹脂、粉末状のメラミン樹脂等が挙げられる。前記粉末状の樹脂は、一種類だけを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0023】
前記充填材は、摩擦材の摩擦力の調整などの目的で摩擦材原材料として従来より用いられる材料であり、このような材料であれば特に限定されない。このような充填材としては、例えば炭酸カルシウムや硫酸バリウム等の無機の充填材が挙げられる。前記充填材は、一種類だけを用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0024】
前記原材料本体の繊維の上から前記コーティング剤を塗布する方法は、コーティング剤の種類に応じた適当な方法によって行うことができる。このような方法としては、例えば前記第一のコーティング剤であれば、前記原材料本体の前記第一のコーティング剤への浸漬や、原材料本体への第一のコーティング剤の噴霧等が挙げられる。また、前述した方法としては、例えば前記第二のコーティング剤であれば、粉体と液状の媒体とのスラリーへの原材料本体の浸漬や、原材料本体への前記スラリーの噴霧や、浸漬や噴霧等によって前記液状の媒体で濡らされた原材料本体と前記粉体との混合等が挙げられる。
【0025】
前記原材料本体への前記コーティング剤の塗布量は、コーティング剤の種類に応じて異なるが、100質量部の原材料本体に対して5質量部以上であることが、コーティング剤による繊維の状態制御や隠蔽を十分に行う上で好ましい。なお、コーティング剤による繊維の状態制御や隠蔽(前記層の形成)は、塗布後の摩擦材原材料を実体顕微鏡で観察することによって確認することができる。
【0026】
本発明の摩擦材原材料は、他の摩擦材原材料と混合されて、摩擦材原材料の混合物を構成する。本発明の摩擦材原材料は、他の摩擦材原材料との攪拌、混合時には、本発明の摩擦材原材料の表面に起毛した状態の繊維が実質的に存在しないことから、混合物中での本発明の摩擦材原材料の移動が比較的容易であり、短い攪拌、混合時間で良好な分散状態にすることができる。
【0027】
また、攪拌、混合時の摩擦によって、起毛した状態の繊維が本発明の摩擦材原材料の表面に現れることから、攪拌後の混合物中では本発明の摩擦材原材料が移動しにくく、混合物の搬送や輸送等による振動の負荷によっても偏析しにくい。
【0028】
したがって、前記混合物は、混合物の搬送や保存によっても本発明の摩擦材原材料の偏析が見られない混合物であり、このような混合物を摩擦材の製造に用いることによって、偏析を生じやすい摩擦材原材料の所期の性能が十分に発揮される種々の摩擦材の製造が期待される。
【0029】
前記他の摩擦材原材料には、前記原材料本体を構成する材料以外の種類の公知の摩擦材原材料を用いることができる。このような他の摩擦材原材料としては、例えば、レーヨン、アラミド繊維、アクリル繊維及びリンターパルプ等の有機繊維や、ガラス繊維、ロックウール、銅繊維及び真鍮繊維等の無機繊維や、珪藻土、バーミキュライト、ジルコニア、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化鉄、アルミナ等の無機充填材、二硫化モリブデン粉、グラファイト粉、カシューダスト、ゴム粒等の摩擦調整材、亜鉛粉、アルミニウム粉、銅粉、真鍮粉、鋳鉄粉等の金属粉、フェノール樹脂等の結合材等が挙げられる。
【0030】
本発明の摩擦材原材料及び前記他の摩擦材原材料の混合物への配合量は、摩擦材の種類や所期の性能によって異なるが、前記繊維や前記第二のコーティング剤等の本発明の摩擦材原材料の構成材料に公知の他の摩擦材原材料を用いる場合では、前記構成材料の量を考慮して他の摩擦材原材料の配合量を調整すれば良く、このような調整を除けば、これらの摩擦材原材料は、通常の配合量で用いることができる。
【0031】
【実施例】
本発明の実施例を以下に示す。
<実施例1>
平均粒径が700μmのカシューダスト(図1に示す。これを「カシューダスト1」とする)を用意した。
【0032】
カシューダスト1に対して10質量%の粘結材としての液状のフェノール樹脂をカシューダスト1にコーティングし、粘着性の層を有するカシューダスト(図2に示す。これを「カシューダスト2」とする)を得た。
【0033】
カシューダスト2に対して5質量%のアラミド繊維をカシューダスト2に添加し、前記液状のフェノール樹脂を硬化して、起毛した状態のアラミド繊維を表面に有するカシューダスト(図3に示す。これを「カシューダスト3」とする)を得た。アラミド繊維には、長さが0.5〜1.4mmのアラミド繊維を用いた。
【0034】
カーシューダスト3に対して10質量%のサイジング剤としての1質量%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液をカシューダスト3に噴霧し、乾燥することによって表面のアラミド繊維を寝かせ、寝た状態のアラミド繊維を表面に有するカシューダスト(図4に示す。これを「カシューダスト4」とする)を得た。
【0035】
95質量部の炭酸カルシウムと5質量部のアラミド繊維の混合物に対して10質量部のカシューダスト1を添加して所定時間攪拌し、混合物1を得た。前記所定時間は、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間及び10分間であり、それぞれの攪拌時間の混合物1を得た。前記混合物とカシューダスト1との攪拌には、ハイスピードミキサーを用いた。
【0036】
同様に、95質量部の炭酸カルシウムと5質量部のアラミド繊維の混合物に対して、それぞれ10質量部のカシューダスト2、3及び4をそれぞれ添加して所定時間攪拌し、混合物2、3及び4を得た。
【0037】
1〜5分間攪拌した混合物のそれぞれの分散状態を攪拌直後に目視により確認し、下記の基準によって評価した。評価結果を表1に示す。
◎ 満遍なく均一に分散している。
○ 部分的にカシューダストが集まっているところが見られるがほぼ均一に分散している。
△ カシューダストが集まっているところが複数箇所で見られた。
× カシューダストの大きな集合が見られた。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示されるように、混合物1及び混合物4は、3分間の攪拌時間で分散状態が良好となった。また、混合物2及び混合物3は、5分間の攪拌時間で分散状態が良好になった。
【0040】
また、10分間攪拌した混合物のそれぞれを40gずつビーカに入れ、2cmの高さから5回落としたときの混合物の偏析の状態を目視により確認した。その結果、混合物1ではビーカの底にカシューダストの偏析が見られたが、混合物2、3及び4ではカシューダストの偏析は見られず、分散状態は良好であった。
【0041】
また、混合物4中のカシューダスト4を顕微鏡により観察したところ、図5に示すように、カシューダスト4の表面のアラミド繊維が起毛し、混合物中のアラミド繊維と絡み合っていた。
【0042】
以上のことから、寝た状態のアラミド繊維を表面に有するカシューダスト4を添加した混合物4は、他のカシューダストを添加した混合物に比べて、短い攪拌時間で均一に分散し、かつ分散後の偏析が防止されていることがわかる。
【0043】
<実施例2>
カシューダスト3に対して10質量%の水をカシューダスト3に添加し、これに、粒径が3μmの炭酸カルシウムと、粒径が20μmであり、炭酸カルシウムに対して5質量%の粉末状のフェノール樹脂との混合粉体を添加して乾燥し、炭酸カルシウムとフェノール樹脂との混合粉体層を表面に有するカシューダスト(図6に示す。これを「カシューダスト5」とする)を得た。
【0044】
カシューダスト4に代えてカシューダスト5を用いる以外は実施例1と同様にして、混合物5を得、得られた混合物5を混合物1〜3とともに実施例1と同様に評価した。混合物の分散状態の評価結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示されるように、混合物1及び混合物5は、3分間の攪拌時間で分散状態が良好となった。また、混合物2及び混合物3は、5分間の攪拌時間で分散状態が良好になった。
【0047】
また、実施例1と同様に混合物の偏析の状態を評価したところ、混合物1ではビーカの底にカシューダストの偏析が見られたが、混合物2、3及び5ではカシューダストの偏析は見られず、分散状態は良好であった。
【0048】
また、混合物5中のカシューダスト5を顕微鏡により観察したところ、図7に示すように、カシューダスト5の表面の混合粉体層が崩壊し、カシューダスト5の表面ではアラミド繊維が起毛し、混合物中のアラミド繊維と絡み合っていた。
【0049】
以上のことから、前述した混合粉体層を表面に有するカシューダスト5の混合物5は、他のカシューダストを添加した混合物に比べて、短い攪拌時間で均一に分散し、かつ分散後の偏析が防止されていることがわかる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、摩擦材に配合される摩擦材原材料であって、この摩擦材原材料は、表面に露出する繊維を有すると共に繊維の上からコーティング剤が塗布されてなり、このコーティング剤は、前述した第一のコーティング剤や第二のコーティング剤のような、摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって崩壊するコーティング剤であることから、攪拌、混合時には容易に分散しやすく、均一な分散状態となってからは混合物中で偏析しない摩擦材原材料を提供することができる。
【0051】
本発明では、コーティング剤の粉体や繊維に、摩擦材原材料として用いることが知られている材料を用いると、本発明の摩擦材原材料と他の摩擦材原材料とを混合して摩擦材を製造する際に、摩擦材原材料以外の材料の混入を防止し、所期の性能を発現する摩擦材を製造する上でより一層効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるカシューダスト1を示す図である。
【図2】本発明の実施例1におけるカシューダスト2を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例1におけるカシューダスト3を示す図である。
【図4】本発明の実施例1におけるカシューダスト4を示す図である。
【図5】図4に示すカシューダスト4の攪拌後の様子を示す図である。
【図6】本発明の実施例2におけるカシューダスト5を示す要部断面図である。
【図7】図6に示すカシューダスト5の攪拌後の様子を示す要部断面図である。
Claims (12)
- 摩擦材に配合される摩擦材原材料であって、この摩擦材原材料は、表面に露出する繊維を有すると共に繊維の上からコーティング剤が塗布されてなり、
前記コーティング剤は、前記摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって崩壊することを特徴とする摩擦材原材料。 - 摩擦材に配合される摩擦材原材料であって、この摩擦材原材料は、原材料本体と、この原材料本体の表面に少なくとも露出する繊維とを有すると共に前記繊維の上からコーティング剤が塗布されてなり、
前記コーティング剤は、前記摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって前記繊維が起毛した状態になることができる程度に前記原材料本体の表面に前記繊維を寝た状態に保つ第一のコーティング剤であるか、又は、前記摩擦材原材料と他の摩擦材原材料との攪拌時の摩擦によって崩壊して前記繊維が起毛した状態になることができる程度に前記繊維を覆う層を形成する第二のコーティング剤であることを特徴とする摩擦材原材料。 - 前記第一のコーティング剤は、前記原材料本体の表面に粘性によって前記繊維を寝た状態に保つサイジング剤であることを特徴とする請求項2記載の摩擦材原材料。
- 前記第一のコーティング剤はポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項2記載の摩擦材原材料。
- 前記第二のコーティング剤は、粉体であり、水に濡れた状態で前記繊維に付着し、前記繊維に付着した状態で乾燥して前記層を形成することを特徴とする請求項2記載の摩擦材原材料。
- 前記粉体は、粉末状の樹脂と、摩擦材に配合される充填材との混合粉体であることを特徴とする請求項5記載の摩擦材原材料。
- 前記樹脂は熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項6記載の摩擦材原材料。
- 前記樹脂はフェノール樹脂であることを特徴とする請求項6又は7に記載の摩擦材原材料。
- 前記充填材は炭酸カルシウム及び硫酸バリウムのいずれか一方又は両方であることを特徴とする請求項6記載の摩擦材原材料。
- 前記原材料本体は、カシューダストと、このカシューダストの表面に粘結材によって接着している繊維とからなる粒子であることを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載の摩擦材原材料。
- 前記繊維は、耐熱性の有機繊維であることを特徴とする請求項2〜10のいずれか一項に記載の摩擦材原材料。
- 前記繊維はアラミド繊維であることを特徴とする請求項2〜11のいずれか一項に記載の摩擦材原材料。
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2003
- 2003-07-07 JP JP2003192843A patent/JP2005029589A/ja active Pending
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