JP2005026193A - 有機el発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 発光部が発光する全発光エネルギを、広帯域の波長にわたって効率よく外部に取り出すことができる有機EL発光素子の提供。
【解決手段】 反射電極と、有機発光層と、透明電極と、1層または多層の膜で構成される無反射コーティングとを含み、有機発光層は反射電極と透明電極とに挟持されており、無反射コーティングは透明電極と空気との界面に存在することを特徴とする有機EL発光素子。
【選択図】 図3

Description

本発明は有機EL素子に関し、特に有機EL発光素子の構造に関する。
有機EL発光素子を利用した平面ディスプレイや、平面光源は次世代ディスプレイ材料として大きな注目をあびており、研究開発が盛んに行なわれている。有機EL発光素子は、図1に示すようにガラス基板10上に陽極を構成する透明導電材料(ITO、IZO、SnO、In、ZnO:Alなど)が用いられた透明電極12が形成され、この透明電極12上に有機材料を用いた複数の有機層(正孔輸送層14、発光層16、電子輸送層17など)が形成され、有機層の上に陰極を構成するためのMgAg、MgIn、Ca、Al等からなる金属電極50が形成されている(特許文献1参照)。そして、透明電極12から発光層16に注入される正孔と、金属電極50から発光層16に注入される電子とが、発光層16で再結合することによって発光する。図1に示すように発光層16で発光した光は、透明電極12を通過し、ガラス基板10を通して外部にでる。また不透明な金属電極50側へ進んだ光はこの金属電極50で反射され、これによりガラス基板側に進んでガラス基板を通って外部に出る。
このような構造を有する有機EL発光素子において、外部に取り出される光は陽極近傍で光の反射損失を受ける。即ち陽極とガラス基板、ガラス基板と空気との間でフレネル反射による反射損が発生する。光が屈折率の異なる2つの媒体の境界面を通過する際に発生する光損失は、以下の式で表される。
Figure 2005026193
ここで、視感度のピーク波長の550nmの光に関して、透明電極がIZOの場合その屈折率nは約2であり、空気の屈折率nは1である。このため透明電極と空気との間では、以下に示すように、この波長において10%以上の光が損失となる。
Figure 2005026193
図2に示すような微小共振器構造を持つ有機EL発光素子も知られている(特許文献1参照)。微小共振器構造を備えた有機EL発光素子では、ガラス基板10と陽極をなす透明電極12との間に多層膜からなる誘電体ミラー40が設けられ、発光層16での発光光が、この誘電体ミラー40と金属電極50との間を往復し、共振波長の光だけが増強されてガラス基板10を通して外部に出る。
微小共振器構造を有する有機EL発光素子において、金属電極50と誘電体ミラー40とでエタロン構造を形成しており、その出射スペクトルは次のように求められる。まず、金属電極側の振幅反射率r
=rmaexp(-jφma) (3)
とする。ここでrmaは該振幅反射率の振幅であり、φmaはその位相であり、jは虚数単位である。また、誘電体ミラー40の振幅反射率γを
r=rexp(-jφ) (4)
とする。ここでrは該振幅反射率の振幅であり、φはその位相である。さらに、誘電体ミラー40の振幅透過率tを
t=texp(-jφ) (5)
とする。ここでtは該振幅透過率の振幅であり、φはその位相である。発光層中の1つの輝点を考える。このとき透明電極12に垂直に入射する光の電界をE=Aexp(-jφ)、金属電極50に垂直に入射する光をE=Aexp(−jφ)とする。Aはその振幅、φはその位相である。このとき総合的な出射光の電界Iは次のように示される。
I=I+I (6)
但し、IおよびIは、以下の式(7)、(8)で表される。
Figure 2005026193
Figure 2005026193
(7),(8)式において、λは波長、Dは発光層の厚さ、dは輝点の陽極と発光層の境界面との間の距離を示す。また、kは媒体の透過損失を表す消衰係数である。したがって総合複素出射効率η(λ)は次式で示される。
Figure 2005026193
この式から微小共振器構造を有する有機EL発光素子においては、rrが大きな値となるように選択して、分母の[1-rrexp(1−j4πkD/λ)]の項が波長λによって周期的に変化することを利用して共振構造とし、特定の波長で選択的に大きな出力が得られるようにしている。
以上の数式による理論的な説明は微小共振器構造を持たない有機EL発光素子の説明にも適用でき、一般的な有機EL発光素子の発光スペクトルを説明できるものであり本発明を行なうに当って発明者が導いたものである。
特開平11−224783号公報 「光工学ハンドブック」、ISBN: 4-254-21016-7、朝倉書店(発行日:1986年2月) H. A. Macleod,"Thin film optical filters ",1986, Adam Hiiger, Techno House, Redcliff Way, Bristol BSI 6NX
一般に発光輝度が大きいことが求められる。従来技術の有機EL発光素子においては、上述の様にフレネル反射のために10%以上もの光損失が発生している。また、微小共振器構造を有する有機EL発光素子では、[1-rrexp(1−j4πkD/λ)]の項により波長特性をもたせるために、rrを1に近い値としている。すなわち、ある特定の波長では[1-rrexp(1−j4πkD/λ)]が1に近くなるため光損失を非常に小さくすることができるが、広帯域にわたって光損失を低減できない。本発明は広帯域の波長にわたって有機発光素子が発光する全発光エネルギを効率よく外部に取り出すことを目的とする。
本発明の第1の実施態様の有機EL発光素子は、反射電極と、有機発光層と、透明電極と、1層または多層の膜で構成される無反射コーティングとを含み、前記有機発光層は前記反射電極と前記透明電極とに挟持されており、前記無反射コーティングは前記透明電極と空気との界面に存在することを特徴とする。ここで、前記透明電極がnの屈折率を有し、前記無反射コーティングの屈折率nが、0.8×(n1/2≦n≦1.2×(n1/2の範囲内の値を有することが望ましい。前記無反射コーティングがSiO膜を含んでもよい。好ましくは、前記無反射コーティングが1層のSiO膜から構成される。ここで、前記SiO膜が50〜100nmの膜厚を有してもよい。また、前記透明電極がIZOまたはITOから構成されていてもよい。
本発明の第2の実施態様の有機EL発光素子は、反射電極と、有機発光層と、透明電極と、1層または多層の膜で構成される第1無反射コーティングと、パッシベーション層とを含み、前記有機発光層は前記反射電極と前記透明電極とに挟持されており、前記第1無反射コーティングは前記透明電極と前記パッシベーション層とに挟持されていることを特徴とする。ここで、前記透明電極がnの屈折率を有し、前記パッシベーション層がnの屈折率を有し、前記第1無反射コーティングの屈折率nが、0.8×(n1/2≦n≦1.2×(n1/2の範囲内の値を有することが望ましい。前記第1無反射コーティングは、アルミニウムトリス(8−キノリノラート)から形成されていてもよい。ここで、前記第1無反射コーティングは、50〜100nmの膜厚を有していてもよい。また、前記透明電極がIZOあるいはITOから構成されていてもよい。
好ましくは、前記パッシベーション層に接触する、1層または多層の膜で構成される第2無反射コーティングをさらに含む。ここで、前記第2無反射コーティングの屈折率nが、0.8×(n1/2≦n≦1.2×(n1/2の範囲内の値を有することが望ましい。前記第2無反射コーティングは、1層のMgF膜から形成されていてもよい。
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
透明電極上への多層膜の追加により共振構造とする従来技術とは異なり、透明電極上に無反射コーティングを設けて、または透明電極上に第1無反射コーティング、パッシベーション層および第2無反射コーティングの積層体を設けて、透明電極と空気との界面を無反射化することにより高輝度の有機EL発光素子を得ることができる。
上記においては数式でその特性を説明したが、定性的には有機EL発光素子をファブリペロー干渉計とみなすことにより説明できる。有機EL発光素子は有機材料からなる発光層を陽極側及び陰極側の光学多層薄膜でサンドイッチした構造になっている。ここで光学多層膜とは、たとえばIZO,ITOなどからなる透明電極、パシベーションのためのガラス、あるいは正孔輸送層、電子輸送層などである。すなわち光学的には陽極側の光学多層膜を1つの反射膜とみなし、また陰極側の光学多層膜をやはりまとめて1つの反射膜とみなせば1つのファブリペロー干渉計と考えられる。ファブリペロー干渉計は周知のとおりそれを構成する2つの反射膜の反射率によってその透過または反射の光学スペクトルが種々な特性を示す。その定性的な動作説明、スペクトルの説明などは公知である(非特許文献1参照)。これらの反射膜の反射率を調整するために本発明で述べる無反射コーティングは1つの主要な方法である。
(第1実施形態)
図3に本発明の第1の実施態様にかかる第1実施形態の有機EL発光素子を示す。有機EL発光素子は、透明電極12、正孔輸送層14、有機発光層16、電子輸送層17および反射電極50の積層体であり、正孔注入層14と接触する面とは反対側の透明電極12の表面上に無反射コーティング100を具える。
透明電極12の材料としては、SnO、In、ITO、IZO、ZnO:Alなどの導電性金属酸化物を含む公知の材料を用いることができる。透明電極12は、蒸着(抵抗加熱または電子ビーム加熱)、スパッタ、イオンプレーティング、レーザーアブレーションなどの当該技術において知られている任意の手段を用いて、これらの透明導電性酸化物により形成することができる。
正孔輸送層14の材料としては、TPD、α−NPD、m−MTDATAなどのトリアリールアミン系材料を含む公知の材料を用いることができる。あるいはまた、前述の材料と、フタロシアニン類(銅フタロシアニンなど)またはインダンスレン系材料のような正孔注入性を有する材料との積層体としてもよい。正孔注入性を有する材料は、電極(本実施形態においては透明電極12)と接触するように設けることが望ましい。正孔輸送層14は、蒸着(抵抗加熱または電子ビーム加熱)などの当該技術において知られている任意の手段を用いて形成することができる。なお、有機発光層16が充分な正孔注入性を有する場合には、正孔輸送層14を設けなくてもよい。
有機発光層16の材料としては、任意の公知の材料を用いることができる。たとえば、青色から青緑色の発光を得るためには、例えばベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、べンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などの材料が好ましく使用される。有機発光層16は、蒸着(抵抗加熱または電子ビーム加熱)などの当該技術において知られている任意の手段を用いて形成することができる。
電子輸送層17の材料としては、PBDのようなオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルキノキサリン類、アルミニウムのキノリノール錯体などを用いることができる。あるいはまた、前述の材料と、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらを含む合金、アルカリ金属フッ化物などの電子注入性材料の薄膜(膜厚10nm以下)との積層体としてもよい。電子注入性を有する材料は、電極(本実施形態においては反射電極50)と接触するように設けることが望ましい。電子輸送層17は、蒸着(抵抗加熱または電子ビーム加熱)などの当該技術において知られている任意の手段を用いて形成することができる。なお、有機発光層16が充分な電子注入性を有する場合には、電子輸送層17を設けなくてもよい。
反射電極50の材料としては、Al、Ag、Mo、Wなどの反射率の高い金属を用いることが好ましい。反射電極50は、蒸着(抵抗加熱または電子ビーム加熱)、スパッタ、イオンプレーティング、レーザーアブレーションなどの当該技術において知られている任意の手段を用いて形成することができる。
2つの光学媒体の境界面での反射損をある波長で無反射化するためには、その波長の0.25倍の厚さを有し、入射側光学媒体(透明電極12)の屈折率nと出射側光学媒体(本実施形態においては空気300)の屈折率との積の平方根である屈折率を有する媒体を、該境界面に追加すればよいことは知られている。したがって、本実施形態の場合には空気の屈折率は1であるので、無反射コーティング100の材料の屈折率nは、0.8×(n1/2≦n≦1.2×(n1/2の範囲内の値を有することが望ましい。具体的には、透明電極12にIZO(屈折率2.2)を用いる場合、1.19〜1.78の屈折率を有する材料を用いることが望ましい。好ましい材料は、SiO(屈折率約1.5)がある。
用いる材料に依存するが、無反射コーティング100は、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、レーザーアブレーションなどのドライプロセス、あるいはロールコーティング、スピンコーティング、ナイフコーティングなどのウェットプロセスを用いて、透明電極12上にその材料を積層することによって形成することができる。
図3に示すような構造において、無反射コーティング100のための膜(SiO膜)の厚さを、有機EL発光素子が発光するスペクトルの中心波長の0.1〜0.4倍、好ましくは0.2〜0.3倍、より好ましくは0.25倍とすることにより、発光するスペクトルの中心波長以外においても近似的に反射損失を低減できる。IZO透明電極に隣接するSiOからなる無反射コーティング100の膜厚を変化させた場合について、マトリックス法(非特許文献2参照)を用いてより高精度に反射率の波長依存性を計算した結果を、図4に示す。IZO上に積層する無反射コーティング100をSiO単層で構成した場合、このSiO層の膜厚は50〜100nm程度がよいことが分かる。
(第2実施形態)
図5に、本発明の第2の実施態様にかかる第2実施形態の有機EL発光素子を示す。本実施形態では、無反射のためのコーティングとパッシベーションのための層との機能分離を行なった例である。無反射のためのコーティングは、透明電極12とパッシベーション層200との間の無反射化のための第1無反射コーティング101、およびパッシベーション層200と外部(空気300)との間の無反射化のための第2無反射コーティング102を含む。
パッシベーション層200は、外部(空気300)から有機EL発光素子への水分および酸素などの移動を防止するための層であり、好ましくはSiO、SiN、SiOなどから形成することができる。パッシベーション層200は、0.5μm程度以上の厚さを有することが望ましい。パッシベーション層200は支持基板として機能してもよい。支持基板として機能する場合には、パッシベーション層200は、ガラス、好ましくはホウケイ酸ガラスなどから形成される。
第1無反射コーティング101の材料は、0.8×(n1/2≦n≦1.2×(n1/2の範囲内の屈折率nを有することが望ましい(ここで、nは透明電極12の屈折率であり、nはパッシベーション層200の屈折率である)。また、第1無反射コーティング101の厚さを、有機EL発光素子が発光するスペクトルの中心波長の0.1〜0.4倍、好ましくは0.2〜0.3倍、より好ましくは0.25倍とすることが望ましい。たとえば、透明電極12としてIZOを用い、パッシベーション層200としてSiOを用いる場合、IZOの屈折率は可視領域で若干変化はするが約2.2であり、SiOの屈折率は約1.5であるので、1.45〜2.18、好ましくは1.5×2.2の平方根=1.8の屈折率を有する材料を用いることが望ましい。前述の屈折率を有する材料は、アルミニウムトリス(8−キノリノラート)(屈折率1.8)などを含む。前述の膜厚を有するこれらの材料を積層することにより、透明電極12/パッシベーション層200間の反射は低減される。
図6は、屈折率1.8の材料からなる無反射コーティング101を介してIZO透明電極12からパッシベーション層(SiO)に光が入射する場合の反射率の波長依存性を、無反射コーティング101の膜厚をパラメータとして第1実施形態と同様に計算した結果を示すグラフである。IZOとSiOとの間に設けられる第1無反射コーティング101を単一層のアルミニウムトリス(8−キノリノラート)で構成した場合、このアルミニウムトリス(8−キノリノラート)層の膜厚は、50〜100nm程度がよいことが分かる。第1無反射コーティング101がない場合について(1)式を用いて計算される反射損失が4%程度であるが、前述の第1無反射コーティング101を設けることにより反射損失を1%以下に低減できることがわかる。
第2無反射コーティング102の材料は、0.8×(n1/2≦n≦1.2×(n1/2の範囲内の屈折率nを有することが望ましい(ここで、nはパッシベーション層200の屈折率である)。また、第2無反射コーティング102の厚さを、有機EL発光素子が発光するスペクトルの中心波長の0.1〜0.4倍、好ましくは0.2〜0.3倍、より好ましくは0.25倍とすることが望ましい。たとえば、パッシベーション層200としてSiOを用いる場合、SiOの屈折率は約1.5であるので、1より大きく1.46以下、好ましくは1.5の平方根=1.22の屈折率を有する材料を用いることが望ましい。前述の屈折率を有する材料は、MgF(屈折率1.38)などを含む。第2無反射コーティング102がない場合について上記と同様の計算により得られる反射損失は4%程度であるが、第2無反射コーティング102を設けることによって1%程度に低減できる。
用いる材料に依存するが、第1無反射コーティング101および第2無反射コーティング102は、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、レーザーアブレーションなどのドライプロセス、あるいはロールコーティング、スピンコーティング、ナイフコーティングなどのウェットプロセスを用いて形成することができる。第1無反射コーティング101は、透明電極12上にその材料を積層することによって形成してもよいし、あるいはパッシベーション層200上にその材料を積層することによって形成してもよい。
なお以上の説明では、第1および第2の実施形態ともに簡単のため単一層の無反射コーティングに関して説明した。しかしながら、多層の無反射コーティングを用いればさらに低反射化できることは明らかである。たとえば、SiO層にホウ素またはフッ素をドープすることによって、その屈折率を調整することが可能である。より低い屈折率を有する被ドープSiO層と、より高い屈折率を有する被ドープSiO層を交互に積層することによって無反射コーティングを形成して、さらなる低反射化を図ることが可能である。
(第3実施形態)
図7に、本発明の第3実施形態の有機EL発光素子を示す。本実施形態は、いわゆるボトムエミッション方式の第1の実施形態に対応し、トップエミッション方式の有機EL発光素子に関するものである。本実施形態の有機EL発光素子は、基板10上に、反射性電極500、透明電極12a、正孔輸送層14、有機発光層16、電子輸送層17、透明電極12bおよび無反射コーティング100が順次積層された構造を有する。本実施形態においては、反射電極500および透明電極12aが一緒になって第1電極として機能し、透明電極12bが第2電極として機能する。
基板10として、ガラスやプラスチックなどからなる絶縁性基板、または、半導電性や導電性基板に絶縁性の薄膜を形成した基板を用いることができる。あるいはまた、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂またはポリイミド樹脂などから形成される可撓性フィルムを、基板10として用いてもよい。
反射電極500の材料としては、Al、Ag、Mo、Wなどの反射率の高い金属を用いることが好ましい。反射電極500は、蒸着(抵抗加熱または電子ビーム加熱)、スパッタ、イオンプレーティング、レーザーアブレーションなどの当該技術において知られている任意の手段を用いて形成することができる。
透明電極12aおよび12b、正孔輸送層14、有機発光層16、電子輸送層17は、第1の実施形態と同様に形成することができる。なお、本実施例において、透明電極12aは任意選択で設けてもよい層である。反射電極500および透明電極12aで構成される第1電極を陽極として用いる場合には、正孔輸送層14に対する正孔注入性を高めるという点から、透明電極12aを設けることが望ましい。
無反射コーティング100も、第1の実施形態と同様に形成することができる。本実施形態においては、反射損失の大部分は透明電極12b(一般に屈折率が2程度のIZOまたはITOから形成される)と空気との間で(2)式で示すように発生するものであり、光の出射面に関する限り第1実施形態と第3実施形態の有機EL発光素子の構造は同一である。したがって、無反射コーティング100の反射損失の低減効果は、第1の実施形態に関する図4と同様である。
(第4実施形態)
図8に、本発明の第4実施形態の有機EL発光素子を示す。本実施形態は、いわゆるボトムエミッション方式の第2実施形態に対応し、トップエミッション方式の有機EL発光素子に関するものである。本実施形態の有機EL発光素子は、基板10上に、反射性電極500、透明電極12a、正孔輸送層14、有機発光層16、電子輸送層17、透明電極12bおよび無反射コーティング100が順次積層された構造を有する。本実施形態においては、反射電極500および透明電極12aが一緒になって第1電極として機能し、透明電極12bが第2電極として機能する。
基板10は、第3実施形態に記載したものを用いることができる。また、反射電極500、透明電極12aおよび12b、正孔輸送層14、有機発光層16、電子輸送層17は、第3実施形態と同様に形成することができる。
第1無反射コーティング101および第2無反射コーティング102も、第2の実施形態と同様に形成することができる。本実施形態においては、反射損失の大部分は透明電極12b(一般に屈折率が2程度のIZOまたはITOから形成される)とパッシベーション層200との間、ならびにパッシベーション層200と空気との間で(2)式で示すように発生するものであり、光の出射面に関する限り第2実施形態と第4実施形態の有機EL発光素子の構造は同一である。したがって、第1無反射コーティング101の反射損失の低減効果は、第2の実施形態に関する図6と同様であり、また第2無反射コーティング102の反射損失の低減効果についても、第2実施形態と同様である。
前述の第3および第4の実施形態においては、基板10上に単一の有機EL発光部が形成される、平面光源として用いられる有機EL発光素子について説明した。これらの実施形態において、第1電極(反射電極500および存在する場合には透明電極12a)および/または透明電極12bを複数の部分に分割することによって、独立した有機EL発光部がマトリクス状に配列された有機EL発光素子を形成することができる。たとえば、複数のスイッチング素子(TFT、MIMなど)が設けられた基板を用い、第1電極を複数の部分に分割し、該複数の部分のそれぞれを、複数のスイッチング素子と1対1で電気的に接続することによって、アクティブマトリクス駆動型有機EL発光素子としてもよい。あるいはまた、第1電極および透明電極12bを、ライン形状を有する複数の部分に分割し、第1電極のライン形状が、透明電極12bのライン形状の延びる方向と直交する方向に延びるようにして、パッシブマトリクス型有機EL発光素子としてもよい。これらの有機EL発光素子は、モノクロ平面ディスプレイとして利用可能である。
さらに、光の取り出し側に、カラーフィルタ、または光の波長分布変換を行う色変換フィルタを設けることによって多色平面ディスプレイを形成してもよい。カラーフィルタは、複数種の色を透過させる部分を、有機EL発光素子の発光部と対応させてマトリクス状に配列した構造を有することが望ましい。また、色変換フィルタは、複数種の波長分布変換を行う部分を、有機EL発光素子の発光部と対応させてマトリクス状に配列した構造を有することが望ましい。カラーフィルタおよび色変換フィルタは、本発明の有機EL発光素子上に直接積層して形成してもよいし、別個の透明基板上に形成して本発明の有機EL発光素子と貼り合わせてもよい。
また、前述の第1〜第4の実施形態においては、正孔輸送層14、有機発光層16、そして電子輸送層17の順に積層され、下部の電極(12、12a、500)が陽極であり、上部の電極(50、12b)が負極である有機EL発光素子に関して説明した。しかしながら、電子輸送層17、有機発光層16、そして正孔輸送層14の順に積層して、下部の電極(12、12a、500)を負極として、上部の電極(50、12b)を陽極としてもよいことはもちろんである。
最初に、膜厚75nmのIZOである透明電極12の一方の表面上に、スパッタ法によって膜厚80nmのSiOを積層して、無反射コーティング100を形成した。続いて、透明電極12の他方の表面上に有機EL層を成膜した。正孔輸送層14として、膜厚100nmの銅フタロシアニン(CuPc)および膜厚20nmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を積層した。さらに、発光層16として膜厚30nmの4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を積層し、電子輸送層17として膜厚20nmのアルミニウムトリス(8−キノリノラート)を積層した。
これらの成膜を終了した後、スパッタ法にて膜厚100nmのCrB膜を積層して反射電極50を形成し、有機EL発光素子を得た。
最初に、厚さ100nmのSiO膜の一方の表面上に、蒸着法によって膜厚100nmのMgFを積層して、第2無反射コーティング102を形成した。次に、該SiO膜の他方の表面上に、蒸着法にて膜厚20nmのアルミニウムトリス(8−キノリノラート)を積層し、第1無反射コーティング101を形成した。
続いて、無反射コーティング101の上に、スパッタ法にて膜厚10nmのIZOを積層して、透明電極12を形成した。その後に、この表面を室温において酸素プラズマを用いてクリーニングした。
続いて、透明電極12上に有機EL層を成膜した。正孔輸送層14として、膜厚100nmの銅フタロシアニン(CuPc)および膜厚20nmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を積層した。さらに、発光層16として膜厚30nmの4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を積層し、電子輸送層17として膜厚20nmのアルミニウムトリス(8−キノリノラート)を積層した。
これらの成膜を終了した後、スパッタ法にて膜厚100nmのCrB膜を積層して反射電極50を形成し、有機EL発光素子を得た。
CrBの組成を持つターゲットを用いるスパッタ法にて、ガラス基板10上に膜厚100nmのCrB膜を積層して、反射電極500を形成した。この上に、スパッタ法にて膜厚10nmのIZOを積層して、透明電極12aを形成した。その後に、この表面を室温において酸素プラズマを用いてクリーニングした。
続いて、透明電極12a上に有機EL層を成膜した。正孔輸送層14として、膜厚100nmの銅フタロシアニン(CuPc)および膜厚20nmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を積層した。さらに、発光層16として膜厚30nmの4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を積層し、電子輸送層17として膜厚20nmのアルミニウムトリス(8−キノリノラート)を積層した。
これらの成膜を終了した後、スパッタ法にて膜厚200nmのIZOを積層して、透明電極12bを形成した。続いて、透明電極12b上に、スパッタ法にて膜厚80nmのSiOを積層し、無反射コーティング100を形成して、有機EL発光素子を得た。
実施例3と同様に方法において、透明電極12b以下の積層体を形成した。続いて、透明電極12b上に、蒸着法にて膜厚20nmのアルミニウムトリス(8−キノリノラート)を積層し、第1無反射コーティング101を形成した。さらに、スパッタ法にて膜厚80nmのSiOを積層して、パッシベーション層200を形成した。最後に、パッシベーション層200上に、蒸着法によって膜厚100nmのMgFを積層して、第2無反射コーティング102を形成し、有機EL発光素子を得た。
従来技術の有機EL発光素子を示す断面図である。 従来技術の微小共振器構造を有する有機EL発光素子を示す断面図である。 第1実施形態の有機EL発光素子を示す断面図である。 第1実施形態の有機EL発光素子の効果を示すグラフである。 第2実施形態の有機EL発光素子を示す断面図である。 第2実施形態の有機EL発光素子の効果を示すグラフである。 第3実施形態の有機EL発光素子を示す断面図である。 第4実施形態の有機EL発光素子を示す断面図である。
符号の説明
10 基板
12(a,b) 透明電極
14 正孔輸送層
16 有機発光層
17 電子輸送層
40 誘電体ミラー
50,500 反射電極
100 無反射コーティング
101 第1無反射コーティング
102 第2無反射コーティング
200 パッシベーション層
300 空気

Claims (14)

  1. 反射電極と、有機発光層と、透明電極と、1層または多層の膜で構成される無反射コーティングとを含み、前記有機発光層は前記反射電極と前記透明電極とに挟持されており、前記無反射コーティングは前記透明電極と空気との界面に存在することを特徴とする有機EL発光素子。
  2. 前記透明電極がnの屈折率を有し、前記無反射コーティングの屈折率nが、0.8×(n1/2≦n≦1.2×(n1/2の範囲内の値を有することを特徴とする請求項1に記載の有機EL発光素子。
  3. 前記無反射コーティングがSiO膜を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機EL発光素子。
  4. 前記無反射コーティングが1層のSiO膜から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の有機EL発光素子。
  5. 前記SiO膜が50〜100nmの膜厚を有することを特徴とする請求項4に記載の有機EL発光素子。
  6. 前記透明電極がIZOまたはITOから構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の有機EL発光素子。
  7. 反射電極と、有機発光層と、透明電極と、1層または多層の膜で構成される第1無反射コーティングと、パッシベーション層とを含み、前記有機発光層は前記反射電極と前記透明電極とに挟持されており、前記第1無反射コーティングは前記透明電極と前記パッシベーション層とに挟持されていることを特徴とする有機EL発光素子。
  8. 前記透明電極がnの屈折率を有し、前記パッシベーション層がnの屈折率を有し、前記第1無反射コーティングの屈折率nが、0.8×(n1/2≦n≦1.2×(n1/2の範囲内の値を有することを特徴とする請求項7に記載の有機EL発光素子。
  9. 前記第1無反射コーティングは、アルミニウムトリス(8−キノリノラート)から形成されることを特徴とする請求項7に記載の有機EL発光素子。
  10. 前記第1無反射コーティングは、50〜100nmの膜厚を有することを特徴とする請求項7に記載の有機EL発光素子。
  11. 前記透明電極がIZOあるいはITOから構成されることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の有機EL発光素子。
  12. 前記パッシベーション層に接触する、1層または多層の膜で構成される第2無反射コーティングをさらに含むことを特徴とする請求項7から11のいずれかに記載の有機EL発光素子。
  13. 前記第2無反射コーティングの屈折率nが、0.8×(n1/2≦n≦1.2×(n1/2の範囲内の値を有することを特徴とする請求項12に記載の有機EL発光素子。
  14. 前記第2無反射コーティング層は1層のMgF膜から形成されていることを特徴とする請求項13に記載の有機EL発光素子。
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