JP2005025313A - 滞留者検知システム - Google Patents

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Abstract

【課題】家の玄関、門扉の前などを通過する通行人を誤検知することなく、長時間滞留する滞留者のみを精度良く検知する方式を実現する。
【解決手段】撮像手段からエッジ画像を生成し、背景画像との差分に基づき撮像画像から顔画像を抽出する。そして、顔画像の時空間分布104、108を生成する。この時空間分布より得られる滞留度数に基づいて、前記顔画像が滞留者であるか否かを判定することにより、滞留者検知をする。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カメラの視野内に長時間留まる人物を検知する装置に関し、特に、インターホンなどに設置された画像センサが撮像した画像を処理し、対象画像中に存在する人物情報をある時間蓄積し、その結果からカメラの前に長時間留まる滞留者を特定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
玄関や門扉の前などに滞留し、家の中を窺うような挙動を示す不審な人物を検知する従来の技術として、人体検知センサに連動したカメラを利用する方式が一般的には知られている(例えば、特許文献1参照。)。
人体検知センサを利用する場合、人体から発せられる熱を検知するセンサを利用して、センサが感知した場合にカメラの映像を取得し、その画像を記録して、住人にアナウンスするといった方法がとられている。
【0003】
またインターホンの前をうろついている不審人物などの滞留者を画像処理によって検知する従来の技術として、画像信号の差分をとって、そのレベルから判断する方式がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特許第3368019号公報
【特許文献2】
特開平9−65328号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された技術では、人体検知センサは、玄関前に留まる滞留者以外に、玄関前を通り過ぎるだけの通行人に対しても反応してしまい、長時間滞在する滞留者だけを検知することは困難である。また通行人の往来が激しい環境では、検知の頻度が高くなるため、メモリに記録される映像データ量が膨大になり、本来必要な滞留者の映像の検索が困難になる。
【0007】
同時に、メモリ容量の制約から、所望の映像がほかの映像で上書きされたり、所望の映像が書き込めなかったりするなどの状況に陥り、必要な映像が保存できなくなる場合が考えられる。
【0008】
また、上記特許文献2の技術の場合、画像の差分情報のみでは、そのレベル差がどの様な状況の変化によって生じたものか判断できないため、誤検出の問題が生じる。
例えば、雲による太陽の陰りが生じた場合、画像全体に大きなレベル差が生ずるが、滞留者が移動したこととの違いをレベル差のみで判断することは困難である。また、玄関向かいにある店舗のネオンが点滅するなどによっても同様のレベル差が生ずることは容易に想像できる。親機に内蔵したブザーで滞留者の検出を家人に知らせる機能を有している場合、仮に夜中に誤検出が発生すれば、就寝中にブザー音が鳴ってしまうこととなり、使い勝手の低下を招く。
【0009】
本発明は、家の玄関、門扉の前などを通過する通行人を誤検知することなく、長時間滞留する滞留者のみを精度良く検知する方式を実現することを目的とする。
また、本発明は、滞留者として判断する滞留時間の設定値に応じて、人物領域の抽出に用いる背景画像の更新の程度を適切に設定し、滞留者のみ効果的に背景差分の抽出領域として得られると同時に、日照変動などの各種ノイズを最小限に抑え、抽出の精度向上を図ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものである。
本発明においては、撮像画像を入力する撮像手段と、前記撮像画像から人物領域を抽出する領域抽出部と、前記人物領域の出現度数を算出し該出現度数に基づき前記人物画像が滞留者であるか否かを判定する滞留検知部とから滞留者検知システムを構成する。
【0011】
本発明によれば、画像による情報のみで、領域内に滞留する人物を精度良く検出することができ、コストの低減、機器の小型化を実現することができる。また、人物領域の出現度数に基づいて滞留者の判別を行うことにより、連続的な検知継続時間を経ることなく滞留者を検出することができる。
【0012】
また、前記領域抽出部は前記撮像画像のエッジを抽出してエッジ画像を生成するエッジ画像生成部と、前記エッジ画像を記憶するエッジ画像記憶部と、このエッジ画像記憶部に記憶される複数フレームのエッジ画像を加重平均して平均画像を生成する平均画像生成部と、を有し、前記平均画像と前記撮像画像の背景画像との差分に基づき人物領域を抽出するようにすることができる。
【0013】
これにより撮像領域内を通過する物体のエッジ強度を低く撮像領域内に滞留する物体のエッジ強度を強く得ることができ、誤検出を低減することが可能となり、画像による情報のみで精度よく滞留者を検出することができる。
【0014】
前記滞留検知部は、前記人物領域を水平軸に射影した場合の出現度数の分布となる水平時空間分布と、前記人物領域を垂直軸に射影した場合の出現度数の分布となる垂直時空間分布とを生成し、前記水平時空間分布及び前記垂直時空間分布の最大値が、水平時空間分布に対するしきい値と該しきい値より大きく設定された垂直時空間分布に対するしきい値とを超えれば滞留者ありと判定するようにすることができる。
【0015】
これにより、度数の蓄積により滞留者を検出することが可能となり、連続的な検知継続時間を経ることなく、より精度の高い滞留者検知を実現することができる。
【0016】
さらに、前記領域抽出部は、前記平均画像と前記背景画像との差分に基づいて差分エッジ画像を生成し、この差分エッジ画像の各エッジ画素から所定方向の画素をマスクして得られるマスク領域を抽出するマスク領域抽出手段と、このマスク領域抽出手段で抽出したマスク領域とテンプレートとのパターンマッチングにより人物領域を抽出するようにすることができる。
【0017】
これにより、エッジ画像から高速に動き領域を抽出することが可能となり、処理の高速化を図ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1を用いて、本発明を適用した滞留者検知装置の構成を説明する。
図1の滞留者検知装置1は、例えば、インターホン装置に組み込まれる。
インターホン装置は、住戸の玄関先などに設置されるインターホン子機と、住戸内に設置されるインターホン親機とから構成される。
【0019】
画像入力部10は、インターホン子機に備えられ、撮像画像を常時インターホン親機に送出する。
制御部50と、パラメータ入力部34と、出力部28は、インターホン親機に備えられる。
【0020】
インターホン親機は、制御部50により滞留者を検知すると、出力部28のブザーを鳴らすなどして、滞留者の存在を家人に知らしめる。ブザーの音色は通常の呼び出し音と異なるものとして結果をより認識しやすくしても良い。同時に、画像入力部10から入力される画像データを出力部28のモニタに表示することで、子機付近の様子を確認しやすくすることも可能である。
【0021】
また、出力部28をハードディスクレコーダ、VTRなどの記録装置に接続しても良い。滞留者を検知したときの入力画像データを自動的に記録しておけば、家人が忙中あるいは留守中であっても、任意のタイミングで滞留者検知時の様子を確認することができる。
【0022】
パラメータ入力部34は、パラメータTを与えるための入力手段であり、タッチパネルあるいはボタン、スイッチ、ダイヤルなどで構成される。
パラメータ設定部36は、パラメータ入力部34から入力されるパラメータTを基に、重みα(T)およびしきい値Lx,Lyの値を計算し、これらを出力する。
パラメータ記憶部38は、パラメータ設定部36が出力するパラメータ値T,α(T),Lx,Lyを記憶する記憶手段である。
【0023】
画像入力部10は、カメラ、増幅器、A/D変換器などで構成される。画像入力部10のカメラは、所定の領域を撮像するように、地面に対してほぼ水平に設置される。画像入力部10は、インターホン子機前の映像を撮像し、入力された映像をディジタル化し、画像データとして一定時間間隔で滞留者検知装置1に出力する。
【0024】
エッジ画像生成部12は、画像入力部10から入力された画像データを用いてエッジ画像を生成し、エッジ画像記憶部14に記憶させる。
平均画像生成部16は、エッジ画像記憶部14に記憶されたNフレーム分の入力エッジ画像を読み出し、平均画像を生成する。生成された平均画像は、背景画像更新部18と頭部領域抽出部22に出力される。
【0025】
背景画像更新部18は、平均画像生成部16から入力される平均画像と、パラメータ記憶部38に記憶されたパラメータを用いて、背景画像記憶部30に記憶された背景画像を更新する。
背景画像記憶部30は、頭部領域抽出部22で用いる背景画像を記憶しておく記憶手段であり、記憶された背景画像は背景画像更新部18により更新される。
【0026】
頭部領域抽出部22は、入力エッジ画像記憶部14に記憶された最新の入力エッジ画像、平均画像生成部16から出力された平均画像、背景画像記憶部30に記憶された背景画像とから、人の頭部としての特徴を有する領域を抽出する。
【0027】
時空間画像更新部24は、頭部領域抽出部22から入力される頭部領域情報を基にして、時空間画像記憶部32に記憶されている画像を更新する。
滞留判定部26は、時空間画像更新部24に記憶した画像を基に滞留者の有無を判定し、判定結果を出力部28に出力する。
出力部28は、滞留者検出結果を利用者に提示する手段であり、モニタ、ブザーなどで構成される。
【0028】
エッジ画像生成部12、入力エッジ画像記録部14、平均画像生成部16、背景画像更新部18、頭部領域抽出部22、背景画像記憶部30、時空間画像更新部24、時空間画像記憶部32、滞留判定部26、パラメータ設定部36、パラメータ記憶部38よりなる制御部50は、CPU、マイコン、DSPなどのプロセッサ及び、SRAM、DRAMなどのメモリなどを用いて構成することができる。
【0029】
図2のフローチャートを用いて、図1の滞留者検知装置1の動作を説明する。最初に、図2の全体の動作を概略的に説明する。
滞留者検知装置1は、画像入力部10から画像データが入力されると、図示の処理を開始する。
ステップS1で、エッジ画像生成部12が、画像入力部10から入力された画像データを処理してエッジ画像を生成し、入力エッジ画像記憶部14に記憶する。
【0030】
ステップS2で、平均画像生成部16が、入力エッジ画像記憶部14から最も新しいNフレームの入力エッジ画像を読み出し、これらを平均した画像データを生成して出力する。
【0031】
ステップS3で、頭部領域抽出部22が、平均画像生成部16から入力される平均画像データと背景画像記憶部30から読み出した背景画像データの差分画像データに基づいて、頭部探索領域を決定する。その後、入力エッジ画像記憶部14から最新のエッジ画像を読み出し、エッジ画像中の頭部探索領域内で楕円を検出するための参照パターンを移動させながら類似度を算出して、楕円形状を有する領域を頭部領域として抽出する。
【0032】
ステップS4で、時空間画像更新部24が、頭部領域抽出部22から入力される頭部領域をx軸方向に射影した2値化像と、y軸方向に射影した2値化像を生成する。この2値化像を時空間画像記憶部32に記憶する。
【0033】
ステップS5で、滞留判定部26が、時空間画像に基づき、滞留者検知の有無を判定する。
滞留者が検知されたと判定されると、ステップS6で、出力部28がブザーの鳴動、モニタへの画像出力を行う。そして、ステップS7で、背景画像記憶部30に記憶された背景画像の更新を行う。
【0034】
次に、図3、図4を併せ用いて、滞留者検知装置1の詳細な動作を説明する。
あらかじめ、パラメータ入力部34から、パラメータTを与えておく。Tは、滞留者を検知するための観察を行う時間長に比例するパラメータである。Tが大きいと長時間滞留した者のみを検知し、逆にTが小さいと短時間滞留した者も検知する。
【0035】
Tのとり得る範囲を、T ≦T≦T とする。例えばT は1分間に相当する値(1分間をフレーム周期で除した値)、T は5分間に相当する値(5分間をフレーム周期で除した値)などとすればよい。パラメータ入力部34は、この範囲でパラメータTを任意に設定できるように構成しても良いし、推奨する幾つかの値を提示して選択するように構成しても良い。
【0036】
パラメータ設定部36は、パラメータ入力部34から入力されるパラメータTを基に、後述するαおよびLx,Lyの値を計算し、これらを出力する。本例では、αおよびLx,LyをTの関数とする。このようにすることで、利用者はひとつのパラメータTを変更するという簡単な操作で、αおよびLx,Lyを自動的に適切な値に変更することが可能となり、設定変更に要する労力を軽減することができる。
【0037】
パラメータ記憶部38は、パラメータ設定部36が出力するパラメータ値T,α,Lx,Lyを記憶する。
【0038】
画像入力部10は、一定時間間隔(例えば、1秒間隔)で検知対象領域を撮像し、入力された映像をディジタル化し画像データとして出力する。映像が滞留者検知装置1に取り込まれると、図2に示す動作が開始される。更に新しい画像データが出力されると、新しい画像データに対する滞留者検知処理が行われる。このようにフレーム単位で動作するよう制御が行われる。
【0039】
ステップS1で、エッジ画像生成部12は画像入力部10から入力された画像データを用いてその画像データと同じ大きさの入力エッジ画像を生成する。生成した入力エッジ画像は、入力エッジ画像記憶部14に記憶される。
入力エッジ画像記憶部14は、入力された時刻が新しい入力エッジ画像をN(>1)フレーム分記憶する。入力エッジ画像記憶部14には、所定枚数のエッジ画像が記憶されており、新しく記憶されるエッジ画像は、既に記憶されているエッジ画像の中で最も古い画像データを上書きする。
【0040】
ステップS2で、平均画像生成部16は、入力エッジ画像記憶部14に記憶された最新のものを含むNフレームの入力エッジ画像を読み出し、Nフレーム分の画像データ間で各画素値について平均値を計算することにより、平均画像61(図3)を生成する。
【0041】
エッジ画像には、通常、検出の対象とする滞留者のほかにも、車などの移動体も含まれているが、平均画像61を用いることにより、移動速度の速い車などの移動体のエッジ強度を弱くすることができる。これに対し、滞留者は、移動速度が遅く、あるいは一時的に停止するので、滞留者のエッジ強度はより強いものとなる。このように、滞留者のエッジ強度を強いものとすることで、後述する背景差分処理において、滞留者をより抽出しやすくすることが可能となり、結果的に滞留者の検出精度の向上に繋げることができる。
【0042】
ステップS3で、頭部領域抽出部22が、平均画像生成部16から入力される平均画像61と背景画像記憶部30から読み出した背景画像62(図3)の背景差分画像63(図3)を計算する。なお、この時点での背景画像は1フレーム前の処理で生成されたものである。
【0043】
背景画像62は、次のように更新される。
新しい背景画像62は、平均画像と背景画像の加重平均処理により算出する。このときの重みα(T)は、パラメータ記憶部38から読み出す。時刻tにおける座標(x,y)の平均画像の画素値をA(t,x,y)、背景画像の画素値をB(t,x,y)、重みをα(T)と表すと、これらの関係は次式となる。
【0044】
B(t,x,y)
={1−α(T)}B(t−1,x,y)+α(T)A(t,x,y)
【0045】
パラメータ設定部36はα(T)をパラメータTの関数として0≦α(T)≦の範囲で設定する。α(T)が大きいと、背景画像更新時に与える現状態の寄与が大きい。つまり、平均画像の比重を高く背景画像の比重を小さくして加重平均し背景画像を更新する。一方、α(T)が小さいと、逆の作用が生じる。また、一般に、撮像領域内をうろつく移動物体としての滞留者は静止物体に比べ更新される背景画像への寄与が低くなる。
【0046】
ここで、滞留者の観察時間に比例するパラメータTとα(T)の関係について、パラメータTとα(T)が比例する場合と反比例する場合について説明する。パラメータTとα(T)が比例する場合、観察時間が短いと、α(T)は小さくなり現状態はゆっくりと時間をかけて背景画像に溶け込んでいくこととなる。したがって、この場合、現状態と背景画像との差分がより明瞭となり、より早く滞留者を検出することができる。
【0047】
他方、観察時間が長い場合、α(T)は大きくなり現状態は早く背景画像に溶け込んでいくこととなる。したがって、この場合、静止物体や日照変化は早く背景に溶け込むこととなり静止物体等による誤報を防止できる。また、移動物体である滞留者も背景に溶け込んでいくが、移動体である滞留者が完全に背景に溶け込むことはなく少なからず差分が抽出されるため、長い時間観察することにより長時間うろつく滞留者を検知することができる。
【0048】
また、パラメータTとα(T)が反比例する場合、観察時間が短いと、α(T)は大きくなり現状態は早く背景画像に溶け込んでいくこととなる。したがって、この場合、静止物体等を早く背景に溶け込ませて静止物体等による誤報を防止できる。また、移動物体である滞留者は短い時間では背景に溶け込まないため確実に検知することができる。
【0049】
他方、観察時間が長い場合、α(T)は小さくなり、現状態はゆっくりと時間をかけて背景画像に溶け込んでいくこととなる。したがって、この場合、移動物体である滞留者を背景に溶け込ませることなく確実に検知でき失報を防止することができる。また、静止物体や日照変化は長い観察時間中に徐々に背景に溶け込んでいくため静止物体等による誤報を防止することができる。
【0050】
このように、パラメータTとα(T)の関係により得られる効果は異なる。したがって、α(T)はパラメータTに比例する関数とするか反比例する関数とするかは、利用者が好みに応じて任意に設定すればよい。
【0051】
頭部領域抽出部22は、この背景差分画像63を基に頭部探索領域を決定する。背景差分画像63は、人物などの動きのある領域の輪郭を主として含んだ画像となる。頭部領域抽出部22は、背景差分画像63中のノイズを除去した上で予め定めたしきい値を用いて、背景差分画像に含まれる輪郭の画素値が1、それ以外が0となるような背景差分2値化画像64(図3)を生成する。この背景差分2値化画像64の画素値が1となる部分の内側を後述する楕円探索の中心に据えるため、頭部の輪郭の内側を抽出する必要がある。
【0052】
図3の65で示すように、画素値が1である画素(輪郭上に存在する画素)のうち、x座標が同じものの中で最も上に位置する画素の下部方向に位置する画素値全てに1を加える。
同じく図3の66で示すように、画素値が1である画素のうち、y座標が同じものの中で最も左に位置する画素の右方向に位置する画素値全てに1を加える。同じく図3の67で示すように、画素値が1である画素のうち、y座標が同じものの中で最も右に位置する画素の左方向に位置する画素値全てに1を加える。
【0053】
この結果、画素値が3以上となる領域が、輪郭に囲まれた内部領域として抽出される。このようにして得られた内部領域の画素値を1に、それ以外の画素値を0にすることにより、楕円探索の中心を据える領域画像68(以下、シルエット画像と称する)を生成することができる。このように、図3に65,66,67で示す3方向の塗りつぶし画像を生成し、これらの論理積をシルエット画像とするという簡便な処理により、人物の輪郭内部を精度良く高速に抽出することが可能となる。
【0054】
次に、頭部領域抽出部22は、頭部の輪郭形状を表す楕円形状の参照パターンを用いて、平均画像61を探索する。例えば、平均画像61において参照パターンを移動させることにより、平均画像61中のエッジと参照パターンとの類似度を順次計算し、類似度が予め定めたしきい値以上の領域に、頭部領域が存在すると判定する。
【0055】
ここで、平均画像61において参照パターンを移動させる範囲を、上記の探索したシルエット画像68内に限定する(マスクをする)。すなわち、シルエット画像68中の画素値が1である座標についてのみ、参照パターンを移動させる。このようにすることで、計算量が少なくなり、かつ、背景に含まれる楕円形状を頭部領域と誤って判定することがなくなる。
【0056】
ステップS4で、時空間画像更新部24が、頭部領域抽出部22から入力される頭部領域像を基にして、時空間画像記憶部32に記憶されているx−t画像104とy−t画像108を更新する。
具体的には、図4に示すように、時空間画像更新部24が、頭部領域像100をx軸方向に射影した2値化像102を作成し、y軸方向に射影した2値化像106を作成する。
【0057】
時空間画像記憶部32は、T (≧T)個以上の2値化像102及び106を記憶することにより、x−t画像104とy−t画像108を記憶する。x−t画像104とy−t画像108は、時空間画像更新部24が作成した2値化像102及び106でx−t画像104とy−t画像108中の最も古い2値化像を上書きするにより、更新処理を行う。
【0058】
ステップS5で、滞留判定部26が、x−t画像104とy−t画像108に基づいて、滞留者の有無を判定し、判定結果を出力する。
まず、時空間画像記憶部32に記憶されているx−t画像104から最新のT個の2値化像を読み出し、T個の2値化像をx軸方向に射影したヒストグラム110を作成する。
【0059】
同様にして、y−t画像108からもヒストグラム112を作成する。次に、ヒストグラム110の最大値Mxをしきい値Lxと、ヒストグラム112の最大値Myをしきい値Lyと比較する。比較の結果、MxがLxより大きく、かつ、MyがLyより大きい場合に、滞留判定部26は滞留者を検知したことを表す信号を出力する。
【0060】
前記比較は、例えば、各ヒストグラム110、112の最大値Mx、Myを利用するのではなく、しきい値より大きな値を示す度数の割合などで行っても良い。本例では、ヒストグラムの最大値やヒストグラム中のしきい値より大きな値を示す度数の割合などを滞留度数と称する。
【0061】
ここで用いるしきい値LxおよびLyは、前述のようにパラメータTの関数となるようにパラメータ設定部36で算出され、パラメータ記憶部38に記憶されている。パラメータ設定部36は、例えば、Lx,LyがパラメータTに比例するように設定する。つまり滞留者が同じように存在しても、Tが小さい値に設定された場合には、最大値MxとMyは小さな値となり、Tが大きい値に設定された場合はMxとMyは大きな値となるが、前述のようにLxとLyをTに比例させることで検知精度をほぼ一定に保つことが可能となる。
【0062】
また、ほぼ水平に設置されたカメラの映像を処理するため、滞留者の頭部領域の位置はほぼ同じ高さで推移する可能性が高いことから、本例では、y軸方向のしきい値Lyをx軸方向のLxより大きく設定する。このように設定することで滞留者が存在しないにも拘らず滞留者が存在する誤り判定を減少させることができる。
【0063】
出力部28は、滞留者判定部26から検知信号を受け取ると、ステップS6で、親機の出力部28のブザーを鳴らすとともに、画像入力部10から入力される画像を出力部28モニタに映し出す。また、ハードディスクレコーダなどの記録装置に前記画像を記録する。
【0064】
なお、出力部28が検知信号を受け取ったときにブザーを鳴らすような場合は、連続的に検知信号を出力するとブザーが鳴り続けてしまい好ましくない。このようなことを考慮して、検知信号を出力するときに時空間画像更新部24によって時空間画像記憶部32に記憶されているx−t画像104とy−t画像108を初期化しても良い。
【0065】
ステップS7で、背景画像更新部18が、パラメータ記憶部38から重み係数αを読み出し、平均画像生成部16から入力される平均画像61の各画素値をα(T)倍した画像データを作成する。また、背景画像記憶部30から読み出した背景画像データの各画素値を(1−α(T))倍した画像データを作成する。これら2つの画像データを足し合わせた画像データを作成し、背景画像記憶部30に記憶した画像データを上書きする。
【0066】
以上説明した実施形態においては、人物画像の時空間分布を生成することにより滞留者が存在するか否かを判定している。これに対し、図2のステップS3で、平均エッジ画像と背景画像との差分の蓄積に基づき、撮像領域内に滞留する画像が抽出された場合に、滞留者が存在すると判定することも可能である。例えば、図3のシルエット画像68が検出されたとき、滞留者が存在すると判定しても良く、所定の観察時間内にシルエット画像68や頭部領域像100が検出される度数がしきい値を超えることで滞留者が存在すると判定しても良い。
【0067】
あるいは、シルエット画像68領域内で、参照パターンを移動させながら類似度を算出することにより、楕円形状を有する頭部領域が抽出されたときに、滞留者が存在すると判定しても良い。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、家の玄関、門扉の前などを通過する通行人を誤検知することなく、長時間滞留する滞留者のみを精度良く検知する方式を実現することができる。
また、本発明によれば、滞留者を検知するための観察を行う時間長に比例するパラメータTを入力するだけで、背景画像の更新に用いる重み係数α(T)および滞留者検知に用いるしきい値Lx,Lyを適切な値に自動的に設定するため、パラメータ設定に要する煩雑な作業を軽減することができる。
【0069】
さらに、本発明によれば、背景差分法により滞留者を含む領域を背景差分画像として背景から分離し、背景差分画像を基に頭部探索領域を決定し頭部探索領域内で頭部領域を探索することで頭部領域を抽出することで人物である可能性の高い領域のみを用い、頭部領域に関する時空間画像を生成して時間位置情報を蓄積し、これを解析することによって精度の高い滞留者検知を実現することができる。
【0070】
また、本発明によれば、カメラをほぼ水平に設置することによって生じる滞留者の頭部領域の位置はほぼ同じ高さで推移する可能性が高いという性質を利用してx−t画像から得るヒストグラムに対するしきい値よりもy−t画像から得るヒストグラムに対するしきい値を高く設定することで、滞留者が存在しないにも拘らず滞留者が存在する誤り判定を減少させることができる。
【0071】
さらに、本発明によれば、背景差分に用いる入力画像として複数フレーム画像の平均画像を用いて移動速度の速い物体の領域を抽出しにくくすることで、滞留者以外の移動物体を検出する誤りを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した滞留者検知装置の構成を示す図である。
【図2】図1の滞留者検知装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図2の動作を説明するための図(その1)である。
【図4】図2の動作を説明するための図(その2)である。
【符号の説明】
1…滞留者検知装置
10…画像入力部
12…エッジ画像生成部
14…入力エッジ画像記憶部
16…平均画像生成部
18…背景画像更新部
22…頭部領域抽出部
24…時空間画像更新部
26…滞留判定部
28…出力部
30…背景画像記憶部
32…時空間画像記憶部
34…パラメータ入力部
36…パラメータ設定部
38…パラメータ記憶部
50…制御部
61…平均画像
62…背景画像
63…背景差分画像
64…背景差分2値化画像
65…下部方向に1を代入した画像
66…右方向に1を代入した画像
67…左方向に1を代入した画像
68…シルエット画像
100…頭部領域像
102…x軸方向に射影した2値化像
104…x−t画像
106…y軸方向に射影した2値化像
108…y−t画像
110…x軸方向に射影したヒストグラム
112…y軸方向に射影したヒストグラム

Claims (5)

  1. 撮像画像を入力する撮像手段と、
    前記撮像画像から人物領域を抽出する領域抽出部と、
    前記人物領域の出現度数を算出し、該出現度数が所定しきい値を超えれば滞留者ありと判定する滞留検知部と、
    前記滞留検知部の判定結果を出力する出力部と、を具備することを特徴とする滞留者検知システム。
  2. 前記領域抽出部は、
    前記撮像画像のエッジを抽出してエッジ画像を生成するエッジ画像生成部と、
    前記エッジ画像を記憶するエッジ画像記憶部と、
    このエッジ画像記憶部に記憶される複数フレームのエッジ画像を加重平均して平均画像を生成する平均画像生成部とを有し、
    前記平均画像と前記撮像画像の背景画像との差分に基づき人物領域を抽出する請求項1記載の滞留者検知システム。
  3. 前記滞留検知部は、
    前記人物領域を水平軸に射影した場合の出現度数の分布である水平時空間分布と、
    前記人物領域を垂直軸に射影した場合の出現度数の分布となる垂直時空間分布とを生成し、
    前記水平時空間分布及び前記垂直時空間分布の最大値が、水平時空間分布に対するしきい値と該しきい値より大きく設定された垂直時空間分布に対するしきい値とを超えれば、滞留者ありと判定する請求項1又は2記載の滞留者検知システム。
  4. 前記領域抽出部は、
    前記平均画像と前記背景画像との差分に基づいて差分エッジ画像を生成し、この差分エッジ画像の各エッジ画素から所定方向の画素をマスクして得られるマスク領域を抽出するマスク領域抽出手段と、
    このマスク領域抽出手段で抽出したマスク領域とテンプレートとのパターンマッチングにより人物領域を抽出する請求項2又は3に記載の滞留者検知システム。
  5. 監視時間を所定長に設定する設定部と、
    撮像画像と背景画像との差分に基づく動き領域を前記所定長監視して滞留者の有無を判定する滞留検知部と、
    前記滞留検知部の判定結果を出力する出力部と、
    前記撮像画像を所定の重み係数で前記背景画像と加重平均して背景画像を更新する背景画像更新部と、を備え、
    前記設定部は、前記撮像画像の重み係数を前記所定長の関数として設定することを特徴とする滞留者検知装置。
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