JP2005024389A - 金属材料の寿命評価方法及びその評価システム - Google Patents

金属材料の寿命評価方法及びその評価システム Download PDF

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孝広 白根
Masayuki Kondo
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Abstract

【課題】特定のクリープ環境下における寿命を正確に測定し得る金属材料の寿命評価方法を提供する。
【解決手段】所定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、寿命消費率と平均結晶方位差との相関を表す特性図を得る一方、測定対象の金属材料の平均結晶方位差を測定し、その測定値を前記特性図に当てはめることにより当該金属材料の推定寿命消費率を検出する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属材料の寿命評価方法及びその評価システムに関し、特にボイラ材料としての高強度フェライト鋼の寿命評価に適用して有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
ボイラ材料は高温で応力を受ける部位、すなわちクリープ環境下で使用されることが多い。したがって、ボイラ材料のクリープ環境下での余寿命評価が、ボイラの保守管理上肝要となってくる。
【0003】
一般の低合金鋼(2Cr鋼等)は、クリープ損傷に伴なう組織の変化、炭化物の球状化及びクリープボイドの生成を経て破壊へと至る。したがって、この種の低合金鋼の場合には、クリープ破断時間を推定するためにそれらの組織の変化、炭化物の球状化及びクリープボイドの生成量の調査を行うことで寿命消費量を定量的に把握することができる。
【0004】
一方、高強度フェライト鋼(ニクロムタングステン鋼)は、ボイラ材料として汎用されているが、低合金鋼に較べ、それらの組織変化が極めて微小であるため、上述の如き低合金鋼と同様の寿命診断をすることができない。このため、従来技術ではクリープ損傷に伴って現れる硬さ変化及びクリープボイドの生成量によって寿命消費率を算出している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、高強度フェライト鋼は、組織が単相でないため、硬さ測定に範囲があり、また表層には脱炭層が生成して硬さが低下するため、寿命診断に誤差を生じてしまうという問題を生起していた。
【0006】
なお、Cr−Mo鋼を対象としたものであるが、高温で使用中の高温機器材料のクリープ寿命を、簡単な操作と少ない材料採取量で、短時間に精度良く評価することができるクリープ寿命評価方法を公知技術として挙げることができる。これは、試料のサブグレインサイズ(亜粒界組織の大きさ)を測定し、予め求めておいたサブグレインサイズとクリープ歪の大きさとの関係図からクリープ歪を算出し、さらに予め求めておいたクリープ歪の大きさとクリープ寿命消費率との関係図からクリープ寿命消費率を算出するようにした耐熱鋼のクリープ寿命評価方法である(特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−170503
【0008】
本発明は、上記従来技術に鑑み、上記高強度フェライト鋼も含めクリープ環境下における寿命を正確に測定し得る金属材料の寿命評価方法及びその評価システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明に係る金属材料の寿命評価方法は次の点を特徴とする。
【0010】
1) 所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と平均結晶方位差との相関を表すデータを得る一方、
前記特定のクリープ環境に置いた前記金属材料と同一の測定対象である金属材料の平均結晶方位差を結晶方位顕微鏡で測定し、その測定値を前記データに当てはめることにより当該金属材料の推定寿命消費率を検出すること。
【0011】
2) 所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で得られる前記金属材料の結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度であるIQ値を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率とIQ値との相関を表すデータを得る一方、
前記特定のクリープ環境に置いた前記金属材料と同一の測定対象である金属材料のIQ値を結晶方位顕微鏡で測定し、その測定値を前記データに当てはめることにより当該金属材料の推定寿命消費率を検出すること。
【0012】
3) 所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差と前記金属材料の結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度であるIQ値とを測定するとともに、
かかる各測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と平均結晶方位差及びIQ値との相関を表すデータをそれぞれ得る一方、
前記特定のクリープ環境に置いた前記金属材料と同一の測定対象である金属材料の平均結晶方位差とIQ値とを結晶方位顕微鏡で測定し、それぞれの測定値を前記各データに当てはめることにより当該金属材料の推定寿命消費率を検出すること。
【0013】
4) 上記1)に記載する金属材料の寿命評価方法において、 測定対象となる金属材料の硬度を検出し、予め作成しておいたこの硬度と寿命消費率との相関を表すデータに基づき推定した前記金属材料の寿命消費率も加味して前記金属材料の推定寿命消費率を検出すること。
【0014】
5) 上記2)に記載する金属材料の寿命評価方法において、 測定対象となる金属材料の硬度を検出し、予め作成しておいたこの硬度と寿命消費率との相関を表すデータに基づき推定した前記金属材料の寿命消費率も加味して前記金属材料の推定寿命消費率を検出すること。
【0015】
6) 上記3)に記載する金属材料の寿命評価方法において、 測定対象となる金属材料の硬度を検出し、予め作成しておいたこの硬度と寿命消費率との相関を表すデータに基づき推定した前記金属材料の寿命消費率も加味して前記金属材料の推定寿命消費率を検出すること。
【0016】
7) 上記1)乃至6)に記載する何れか一つの金属材料の寿命評価方法において、
金属材料は高強度フェライト鋼であること。
【0017】
また、本発明に係る金属材料の寿命評価システムは次の点を特徴とする。
【0018】
8) 所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と平均結晶方位差との相関を表すデータを記憶している第1のデータベースと、
クリープ損傷を受けている測定対象となる金属材料の特定の結晶粒について平均結晶方位差を検出する結晶方位顕微鏡と、
この結晶方位顕微鏡が検出した平均結晶方位差の測定値と、前記測定対象となる金属材料と同一クリープ条件における前記第1のデータベースのデータとを比較して、前記平均結晶方位差に対応する推定寿命消費率を求める情報処理手段とを有すること。
【0019】
9) 所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で得られる前記金属材料の結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度であるIQ値を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率とIQ値との相関を表すデータを記憶している第2のデータベースと、
クリープ損傷を受けている測定対象となる金属材料の特定の結晶粒についてIQ値を検出する結晶方位顕微鏡と、
この結晶方位顕微鏡が検出したIQ値と、前記測定対象となる金属材料と同一クリープ条件における第2のデータベースのデータとを比較して、前記IQ値に対応する推定寿命消費率を求める情報処理手段とを有すること。
【0020】
10) 所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と平均結晶方位差との相関を表すデータを記憶している第1のデータベースと、
同一条件の下で前記結晶方位顕微鏡で得られる前記金属材料の結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度であるIQ値を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率とIQ値との相関を表すデータを記憶している第2のデータベースと、
クリープ損傷を受けている測定対象となる金属材料の特定の結晶粒について平均結晶方位差及びIQ値を検出する結晶方位顕微鏡と、
この結晶方位顕微鏡が検出した平均結晶方位差の測定値と、前記測定対象となる金属材料と同一クリープ条件における第1のデータベースのデータとを比較して、前記平均結晶方位差に対応する推定寿命消費率を求めるとともに、前記結晶方位顕微鏡が検出したIQ値と、前記同一クリープ条件における第2のデータベースのデータとを比較して、前記IQ値に対応する推定寿命消費率を求める情報処理装置とを有すること。
【0021】
11) 上記8)に記載する金属材料の寿命評価システムにおいて、
所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の硬度を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と硬度との相関を表すデータを記憶している第3のデータベースと、
測定対象となる金属材料の硬度を検出する硬度測定手段とを追加するとともに、
情報処理手段は、前記第3のデータベースを参照することにより前記硬度測定手段が検出する硬度データも加味して測定対象である金属材料の寿命消費率を推定するように構成したこと。
【0022】
12) 上記9)に記載する金属材料の寿命評価システムにおいて、
所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の硬度を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と硬度との相関を表すデータを記憶している第3のデータベースと、
測定対象となる金属材料の硬度を検出する硬度測定手段とを追加するとともに、
情報処理手段は、前記第3のデータベースを参照することにより前記硬度測定手段が検出する硬度データも加味して測定対象である金属材料の寿命消費率を推定するように構成したこと。
【0023】
13) 上記10)に記載する金属材料の寿命評価システムにおいて、
所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の硬度を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と硬度との相関を表すデータを記憶している第3のデータベースと、
測定対象となる金属材料の硬度を検出する硬度測定手段とを追加するとともに、
情報処理手段は、前記第3のデータベースを参照することにより前記硬度測定手段が検出する硬度データも加味して測定対象である金属材料の寿命消費率を推定するように構成したこと。
【0024】
14) 上記13)に記載する金属材料の寿命評価システムにおいて、
情報処理装置は、第1のデータベースを参照して得る推定寿命消費率が最も大きく評価されるよう、次に第2のデータベースを参照して得る推定寿命消費率が評価されるよう、また第3のデータベースを参照して得る推定寿命消費率が最も小さく評価されるよう、それぞれの推定寿命消費率に所定の重み係数を掛けて、その後これらを平均化し、この平均値を推定寿命消費率とするよう構成したこと。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0026】
本発明の各実施の形態は次の知見を基礎とするものである。すなわち、クリープ変形に伴う組織変化を調べるため、4種類の試料を用意した。試料1は、全くクリープ歪が付与されていない高強度鋼であるニクロムタングステン鋼である。試料2は試料1と同一材料のニクロムタングステン鋼が特定の条件(温度及び応力条件)の下でクリープ変形により破断に至る迄の時間の57%の時間、同様のクリープ環境下においた試料1と同一材料のニクロムタングステン鋼である。試料3は前記破断に至る迄の時間の86%の時間、同様のクリープ環境下においた試料1と同一材料のニクロムタングステン鋼である。試料4は前記クリープ環境下で破断に至った試料1と同一材料のニクロムタングステン鋼である。
【0027】
したがって、試料1は推定寿命消費率が0%、試料2は推定寿命消費率が57% 試料3は推定寿命消費率が86%、試料4は推定寿命消費率が100%ということになる。
【0028】
かかる試料1乃至試料4のそれぞれについて結晶方位顕微鏡(Electron Back Scatter Pattern)でその特定の結晶粒について平均結晶方位差及びIQ(Image Quality) 値を測定した。ここで、結晶方位顕微鏡とは、金属材料の結晶方位を測定することができる装置であり、0.1μmピッチ(測定対象となる結晶粒は100μm程度である。)での結晶方位の変化、歪の定性的な測定等が可能な装置である。また、平均結晶方位差は、結晶方位顕微鏡で得る解析パターンの一つで、各測定点の結晶格子がその周囲に較べてどの程度歪んでいるかを示す指標であり、その値が大きい程、周囲に較べて格子の歪み(結晶方位の角度差)が大きいことを意味する。KAM(Karnel Average Misorientation)値がその一例である。
【0029】
IQ値は、同様に結晶方位顕微鏡の解析パターンの一つであり、結晶方位の完全性を評価するもので、歪量に対応させることができる。すなわち、IQ値が大きいほど、歪が少ない。歪が少ない程、結晶方位顕微鏡で得られる結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度(IQ(Image Quality) )が向上するからである。
【0030】
ここで、結晶方位顕微鏡による0.1μmピッチでの結晶方位角の測定の際には、その角度に閾値を設けておき、測定した角度が前記閾値を越える場合には、隣接する結晶粒における測定値であるとみなし、この値を排除して測定データを処理することにより特定の結晶粒について平均結晶方位差及びIQ値を測定した。
【0031】
図1は平均結晶方位角の測定結果に関する特性図、図2はIQ値の測定結果に関する特性図である。図1を参照すれば、推定寿命消費率が50%を越え、60%の近傍に達した時点からクリープ変形が進行するに伴い急激に平均結晶方位差が小さくなって破壊(推定寿命消費率100%)に至っていることが分かる。一方、図2を参照すれば、クリープ変形を受けていない状態(推定寿命消費率が0%の状態)から破壊状態(推定寿命消費率が100%の状態)に向けて直線的にIQ値が向上していることが分かる。これは、次の様な理由によるものと考えられる。
【0032】
クリープ変形を生じる前のニクロムタングステン鋼の組織はベイナイト組織であり、結晶方位が揃っていない。しかし、ある程度クリープ損傷を受けた場合には組織がサブグレン化し、組織の回復(歪の消失)が起こる。かかる組織の回復により結晶方位が滑りやすい方位に変化するため、方位差が減少するものと考えられる。また、歪みの消失に比例して回折パターンが鮮明化するためIQ値が向上する。
【0033】
したがって、上述の如き平均結晶方位差及びIQ値を把握することによりクリープ損傷の程度、すなわちニクロムタングステン鋼の寿命消費率を推定することができる。
【0034】
図3は、従来より実施していたビッカース硬さ(Hv)に基づくニクロムタングステン鋼の推定寿命消費率を示す特性図である。同図に示すように、寿命消費率が変化しても当該ニクロムタングステン鋼の硬さのクリープ環境下における経時的な変化が小さいので、当該硬さの測定による推定寿命消費率の測定だけでは十分な精度を確保するのが困難である。特に、材料の寿命消費率を知りたい範囲である寿命消費率が50%乃至100%の範囲の測定値の変化が平坦であるため当該範囲における寿命消費率の評価に正確を期し難い。
【0035】
上記知見に基づく本発明の実施の形態は次の通りである。
【0036】
図4は本発明の実施の形態に係る寿命評価システムを示すブロック線図である。同図に示すように、第1のデータベース11は、各クリープ条件(温度、応力)における平均結晶方位差と推定寿命消費率との関係(図1の特性図に示す関係)を予め測定し、その結果のデータをデータベース化したものである。第2のデータベース12は、各クリープ条件(温度、応力)におけるIQ値と推定寿命消費率との関係(図2の特性図に示す関係)を予め測定し、その結果のデータをデータベース化したものである。第3のデータベース13は、各クリープ条件(温度、応力)における材料の硬度と推定寿命消費率との関係(図3の特性図に示す関係)を予め測定し、その結果のデータをデータベース化したものである。
【0037】
かかる第1乃至第3のデータベース11乃至13に記憶するデータは、クリープ条件が異なるデータの種類が多くなれば、その分評価システムとして有用なものとなるが、特定の一種類のクリープ条件に関するデータであっても、勿論良い。
【0038】
結晶方位顕微鏡14は、本形態における測定対象であるニクロムタングステン鋼の結晶方位及びIQ値を測定するもので、その測定データを情報処理装置15に送出する。このとき、方位角が所定の閾値を越えた場合にはその値を排除することにより、特定の結晶粒についての平均結晶方位差及びIQ値を求める。
【0039】
硬度計16は本形態における測定対象であるニクロムタングステン鋼の硬度を測定してその測定データを情報処理装置15に送出する。
【0040】
入力装置17は、例えばキーボード等で構成したもので、測定対象のクリープ条件(温度、圧力)等、測定に必要な情報を入力するためのマン/マシンインターフェースであり、その入力情報は情報処理装置15に送出する。
【0041】
情報処理装置15は、測定対象となるニクロムタングステン鋼の結晶方位顕微鏡14及び硬度計16での測定値を読み込むとともに、入力装置17から入力されるクリープ条件等を読み込んで、第1乃至第3のデータベース11、12、13を参照することにより、平均結晶方位差、IQ値及び硬度に対応する推定寿命消費率を検出する。そして、各検出値に所定の処理をした後、又はそのまま表示部18に送出して当該測定対象となっているニクロムタングステン鋼の推定寿命消費率を前記表示部18に表示する。
【0042】
ここで、当該情報処理装置15に取り込んだ各測定値に基づく推定寿命消費率の検出方法は、種々考えられる。
【0043】
先ず、最も単純には、平均結晶方位差(図1の特性図)、IQ値(図2の特性図)及び硬度(図3の特性図)に基づく推定寿命消費率を併記して表示する方法がある。この場合には、表示部18に表示された3種類の検出値を測定作業者が読んで、何れかを選択するか、又は何れかを主として他を参照することにより適宜主たる検出値を補正する等の作業を行う。ちなみに、最も信頼性が高いのは、図1の特性図を利用する平均結晶方位差に基づく検出であり、次に図2の特性図を利用するIQ値に基づく検出であり、図3の特性図を利用する硬度に基づく検出は経時的な変化が小さいので最も信頼性が劣る。
【0044】
そこで、硬度に基づく検出値は参考程度に参照するに止める。また、特に50%を越える領域での信頼性は最も高い寿命消費率の推定値を提供し得る平均結晶方位差を利用する場合も、50%以下の領域では寿命消費率の経時的な変化が小さいので、この領域に関してはIQ値を利用する等、各特性の特徴を組み合わせることにより検出精度を上げることができる。
【0045】
また、情報処理部15での処理の際、信頼度の高い検出値がより大きく評価されるように各特性毎に重み係数を設定しておき、各重み係数を掛けて算出した推定寿命消費率を平均した一個の検出値とし、これを表示部18に表示するようにしても良い。
【0046】
さらに、平均結晶方位差に基づく推定寿命消費率、IQ値に基づく推定寿命消費率、又は硬度に基づく推定寿命消費率が単独でも十分信頼できる場合は、これらの何れかのみを表示する装置構成とすることもできる。当然、平均結晶方位差に基づく推定寿命消費率、IQ値に基づく推定寿命消費率、又は硬度に基づく推定寿命消費率のうちの何れか2種類を組み合わせることも可能であり、この場合には、何れかを単独で用いる場合に較べ、相互の欠点を補完してより正確な寿命消費率の推定を行うことができる。
【0047】
本発明は、従来の硬度による寿命消費率の推定では経時的な変化が乏しいニクロムタングステン鋼に適用して特に効果的に、高精度の測定を行うことができるが、測定対象をこのニクロムタングステン鋼に限る必要はない。一般に金属材料のクリープ損傷による寿命消費率の評価に適用することにより、同様の高精度の評価結果を得ることができる。
【0048】
【発明の効果】
以上実施の形態とともに具体的に説明した通り、
〔請求項1〕に記載する発明は、
所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と平均結晶方位差との相関を表すデータを得る一方、
前記特定のクリープ環境に置いた前記金属材料と同一の測定対象である金属材料の平均結晶方位差を結晶方位顕微鏡で測定し、その測定値を前記データに当てはめることにより当該金属材料の推定寿命消費率を検出するので、
クリープ損傷を受けた測定対象である金属材料の推定寿命消費率を平均結晶方位差を媒介として検出・評価することができる。
かかる平均結晶方位差は、図1に示すように、特に寿命消費率が50%以上の領域で顕著な経時的な変化を示す。
したがって、特に寿命消費率の評価を行う必要性が高い前記範囲の金属材料の寿命消費率の検査に適用してその評価を高精度に行うことができる。
【0049】
〔請求項2〕に記載する発明は、
所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で得られる前記金属材料の結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度であるIQ値を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率とIQ値との相関を表すデータを得る一方、
前記特定のクリープ環境に置いた前記金属材料と同一の測定対象である金属材料のIQ値を結晶方位顕微鏡で測定し、その測定値を前記データに当てはめることにより当該金属材料の推定寿命消費率を検出するので、
クリープ損傷を受けた測定対象である金属材料の推定寿命消費率をIQ値を媒介として検出・評価することができる。
かかるIQ値は、図2に示すように、寿命消費率が0%乃至100%の前記領域で直線的に顕著な経時的な変化を示す。
したがって、金属材料の寿命消費率の全領域に亘ってその評価を高精度に行うことができる。
【0050】
〔請求項3〕に記載する発明は、
所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差と前記金属材料の結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度であるIQ値とを測定するとともに、
かかる各測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と平均結晶方位差及びIQ値との相関を表すデータをそれぞれ得る一方、
前記特定のクリープ環境に置いた前記金属材料と同一の測定対象である金属材料の平均結晶方位差とIQ値とを結晶方位顕微鏡で測定し、それぞれの測定値を前記各データに当てはめることにより当該金属材料の推定寿命消費率を検出するので、
クリープ損傷を受けた測定対象である金属材料の推定寿命消費率を平均結晶方位差及びIQ値を媒介として検出・評価することができる。
かかる平均結晶方位差は、図1に示すように、特に寿命消費率が50%以上の領域で顕著な経時的な変化を示すとともに、IQ値は、図2に示すように、寿命消費率が0%乃至100%の前記領域で直線的に顕著な経時的な変化を示す。
したがって、平均結晶方位差及びIQ値に基づく特性の相互の特徴を相乗した効果により金属材料の寿命評価をさらに高精度に行うことができる。
【0051】
〔請求項4〕に記載する発明は、
〔請求項1〕に記載する金属材料の寿命評価方法において、
測定対象となる金属材料の硬度を検出し、予め作成しておいたこの硬度と寿命消費率との相関を表すデータに基づき推定した前記金属材料の寿命消費率も加味して前記金属材料の推定寿命消費率を検出するので、
硬度による寿命消費率の判定を平均結晶方位差に基づく寿命消費率の検出値で補完することができる。
この結果、当該寿命消費率の総合的な精度を向上させることができる。
【0052】
〔請求項5〕に記載する発明は、
〔請求項2〕に記載する金属材料の寿命評価方法において、
測定対象となる金属材料の硬度を検出し、予め作成しておいたこの硬度と寿命消費率との相関を表すデータに基づき推定した前記金属材料の寿命消費率も加味して前記金属材料の推定寿命消費率を検出するので、
硬度による寿命消費率の判定をIQ値に基づく寿命消費率の検出値で補完することができる。
この結果、当該寿命消費率の総合的な精度を向上させることができる。
【0053】
〔請求項6〕に記載する発明は、
〔請求項3〕に記載する金属材料の寿命評価方法において、
測定対象となる金属材料の硬度を検出し、予め作成しておいたこの硬度と寿命消費率との相関を表すデータに基づき推定した前記金属材料の寿命消費率も加味して前記金属材料の推定寿命消費率を検出するので、
硬度による寿命消費率の判定を平均結晶方位差及びIQ値に基づく寿命消費率の検出値で補完することができる。
この結果、3種類の寿命消費率の評価を総合することにより、その分高精度の寿命消費率の判定を行うことができる。
【0054】
〔請求項7〕に記載する発明は、
〔請求項1〕乃至〔請求項6〕に記載する何れか一つの金属材料の寿命評価方法において、
金属材料はニクロムタングステン鋼であるので、
硬度による寿命消費率の推定では、経時的な変化に乏しいため、正確な推定ができないニクロムタングステン鋼に関して平均結晶方位差及び/又はIQ値を加味することにより経時的に変化する顕著な特性を得ることができる。
この結果、本発明によれば、最も正確な寿命消費率の評価を行うことができる。
【0055】
〔請求項8〕に記載する発明は、
所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と平均結晶方位差との相関を表すデータを記憶している第1のデータベースと、
クリープ損傷を受けている測定対象となる金属材料の特定の結晶粒について平均結晶方位差を検出する結晶方位顕微鏡と、
この結晶方位顕微鏡が検出した平均結晶方位差の測定値と、前記測定対象となる金属材料と同一クリープ条件における前記第1のデータベースのデータとを比較して、前記平均結晶方位差に対応する推定寿命消費率を求める情報処理手段とを有するので、
第1のデータベースのデータを参照することでクリープ損傷を受けた測定対象である金属材料の推定寿命消費率を平均結晶方位差を媒介として検出・評価することができる。
かかる平均結晶方位差は、図1に示すように、特に寿命消費率が50%以上の領域で顕著な経時的な変化を示す。
したがって、特に寿命消費率の評価を行う必要性が高い前記範囲の金属材料の寿命消費率の検査に適用してその評価を高精度に行うことができる。
【0056】
〔請求項9〕に記載する発明は、
所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で得られる前記金属材料の結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度であるIQ値を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率とIQ値との相関を表すデータを記憶している第2のデータベースと、クリープ損傷を受けている測定対象となる金属材料の特定の結晶粒についてIQ値を検出する結晶方位顕微鏡と、
この結晶方位顕微鏡が検出したIQ値と、前記測定対象となる金属材料と同一クリープ条件における第2のデータベースのデータとを比較して、前記IQ値に対応する推定寿命消費率を求める情報処理手段とを有するので、
第2のデータベースのデータを参照することでクリープ損傷を受けた測定対象である金属材料の推定寿命消費率をIQ値を媒介として検出・評価することができる。
かかるIQ値は、図2に示すように、寿命消費率が0%乃至100%の前記領域で直線的に顕著な経時的な変化を示す。
したがって、金属材料の寿命消費率の全領域に亘ってその評価を高精度に行うことができる。
【0057】
〔請求項10〕に記載する発明は、
所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と平均結晶方位差との相関を表すデータを記憶している第1のデータベースと、
同一条件の下で前記結晶方位顕微鏡で得られる前記金属材料の結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度であるIQ値を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率とIQ値との相関を表すデータを記憶している第2のデータベースと、
クリープ損傷を受けている測定対象となる金属材料の特定の結晶粒について平均結晶方位差及びIQ値を検出する結晶方位顕微鏡と、
この結晶方位顕微鏡が検出した平均結晶方位差の測定値と、前記測定対象となる金属材料と同一クリープ条件における第1のデータベースのデータとを比較して、前記平均結晶方位差に対応する推定寿命消費率を求めるとともに、前記結晶方位顕微鏡が検出したIQ値と、前記同一クリープ条件における第2のデータベースのデータとを比較して、前記IQ値に対応する推定寿命消費率を求める情報処理装置とを有するので、
第1及び第2のデータベースのデータをそれぞれ参照することによりクリープ損傷を受けた測定対象である金属材料の推定寿命消費率を平均結晶方位差及びIQ値を媒介として検出・評価することができる。
かかる平均結晶方位差は、図1に示すように、特に寿命消費率が50%以上の領域で顕著な経時的な変化を示すとともに、IQ値は、図2に示すように、寿命消費率が0%乃至100%の前記領域で直線的に顕著な経時的な変化を示す。
したがって、平均結晶方位差及びIQ値に基づく特性の相互の特徴を相乗した効果により金属材料の寿命評価をさらに高精度に行うことができる。
【0058】
〔請求項11〕に記載する発明は、
〔請求項8〕に記載する金属材料の寿命評価システムにおいて、
所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の硬度を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と硬度との相関を表すデータを記憶している第3のデータベースと、
測定対象となる金属材料の硬度を検出する硬度測定手段とを追加するとともに、
情報処理手段は、前記第3のデータベースを参照することにより前記硬度測定手段が検出する硬度データも加味して測定対象である金属材料の寿命消費率を推定するように構成したので、
第3のデータベースを参照することによる硬度による寿命消費率の判定を平均結晶方位差に基づく寿命消費率の検出値で補完することができる。
この結果、当該寿命消費率の総合的な精度を向上させることができる。
【0059】
〔請求項12〕に記載する発明は、
〔請求項9〕に記載する金属材料の寿命評価システムにおいて、
所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の硬度を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と硬度との相関を表すデータを記憶している第3のデータベースと、
測定対象となる金属材料の硬度を検出する硬度測定手段とを追加するとともに、
情報処理手段は、前記第3のデータベースを参照することにより前記硬度測定手段が検出する硬度データも加味して測定対象である金属材料の寿命消費率を推定するように構成したので、
第3のデータベースを参照することによる硬度による寿命消費率の判定をIQ値に基づく寿命消費率の検出値で補完することができる。
この結果、当該寿命消費率の総合的な精度を向上させることができる。
【0060】
〔請求項13〕に記載する発明は、
〔請求項10〕に記載する金属材料の寿命評価システムにおいて、
所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の硬度を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と硬度との相関を表すデータを記憶している第3のデータベースと、
測定対象となる金属材料の硬度を検出する硬度測定手段とを追加するとともに、
情報処理手段は、前記第3のデータベースを参照することにより前記硬度測定手段が検出する硬度データも加味して測定対象である金属材料の寿命消費率を推定するように構成したので、
第3のデータベースを参照することによる硬度による寿命消費率の判定を平均結晶方位差及びIQ値に基づく寿命消費率の検出値で補完することができる。
この結果、3種類の寿命消費率の評価を総合することにより、その分高精度の寿命消費率の判定を行うことができる。
【0061】
〔請求項14〕に記載する発明は、
〔請求項13〕に記載する発明金属材料の寿命評価システムにおいて、
情報処理装置は、第1のデータベースを参照して得る推定寿命消費率が最も大きく評価されるよう、次に第2のデータベースを参照して得る推定寿命消費率が評価されるよう、また第3のデータベースを参照して得る推定寿命消費率が最も小さく評価されるよう、それぞれの推定寿命消費率に所定の重み係数を掛けて、その後これらを平均化し、この平均値を推定寿命消費率とするよう構成したので、
最も信頼性が高い平均結晶方位差による寿命消費率を大きく評価し、次に信頼性が高いIQ値による寿命消費率を大きく評価し、特に金属材料によっては信頼性に乏しい硬度による寿命消費率を最も小さく評価して総合的な寿命消費率を求めることができる。
この結果、極めて正確な寿命消費率を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を実現する平均結晶方位差と推定寿命消費率との関係をニクロムタングステン鋼に関して示す特性図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態を実現するIQ値と推定寿命消費率との関係をニクロムタングステン鋼に関して示す特性図である。
【図3】測定対象であるニクロムタングステン鋼の硬度と推定寿命消費率との関係を示す特性図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る評価システムを示すブロック線図である。
【符号の説明】
11 第1のデータベース
12 第2のデータベース
13 第3のデータベース
14 結晶方位顕微鏡
15 情報処理装置
16 硬度計
17 入力装置
18 表示部

Claims (14)

  1. 所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と平均結晶方位差との相関を表すデータを得る一方、
    前記特定のクリープ環境に置いた前記金属材料と同一の測定対象である金属材料の平均結晶方位差を結晶方位顕微鏡で測定し、その測定値を前記データに当てはめることにより当該金属材料の推定寿命消費率を検出することを特徴とする金属材料の寿命評価方法。
  2. 所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で得られる前記金属材料の結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度であるIQ値を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率とIQ値との相関を表すデータを得る一方、
    前記特定のクリープ環境に置いた前記金属材料と同一の測定対象である金属材料のIQ値を結晶方位顕微鏡で測定し、その測定値を前記データに当てはめることにより当該金属材料の推定寿命消費率を検出することを特徴とする金属材料の寿命評価方法。
  3. 所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差と前記金属材料の結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度であるIQ値とを測定するとともに、
    かかる各測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と平均結晶方位差及びIQ値との相関を表すデータをそれぞれ得る一方、
    前記特定のクリープ環境に置いた前記金属材料と同一の測定対象である金属材料の平均結晶方位差とIQ値とを結晶方位顕微鏡で測定し、それぞれの測定値を前記各データに当てはめることにより当該金属材料の推定寿命消費率を検出することを特徴とする金属材料の寿命評価方法。
  4. 〔請求項1〕に記載する金属材料の寿命評価方法において、測定対象となる金属材料の硬度を検出し、予め作成しておいたこの硬度と寿命消費率との相関を表すデータに基づき推定した前記金属材料の寿命消費率も加味して前記金属材料の推定寿命消費率を検出することを特徴とする金属材料の寿命評価方法。
  5. 〔請求項2〕に記載する金属材料の寿命評価方法において、測定対象となる金属材料の硬度を検出し、予め作成しておいたこの硬度と寿命消費率との相関を表すデータに基づき推定した前記金属材料の寿命消費率も加味して前記金属材料の推定寿命消費率を検出することを特徴とする金属材料の寿命評価方法。
  6. 〔請求項3〕に記載する金属材料の寿命評価方法において、測定対象となる金属材料の硬度を検出し、予め作成しておいたこの硬度と寿命消費率との相関を表すデータに基づき推定した前記金属材料の寿命消費率も加味して前記金属材料の推定寿命消費率を検出することを特徴とする金属材料の寿命評価方法。
  7. 〔請求項1〕乃至〔請求項6〕に記載する何れか一つの金属材料の寿命評価方法において、
    金属材料は高強度フェライト鋼であることを特徴とする金属材料の寿命評価方法。
  8. 所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と平均結晶方位差との相関を表すデータを記憶している第1のデータベースと、
    クリープ損傷を受けている測定対象となる金属材料の特定の結晶粒について平均結晶方位差を検出する結晶方位顕微鏡と、
    この結晶方位顕微鏡が検出した平均結晶方位差の測定値と、前記測定対象となる金属材料と同一クリープ条件における前記第1のデータベースのデータとを比較して、前記平均結晶方位差に対応する推定寿命消費率を求める情報処理手段とを有することを特徴とする金属材料の寿命評価システム。
  9. 所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で得られる前記金属材料の結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度であるIQ値を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率とIQ値との相関を表すデータを記憶している第2のデータベースと、
    クリープ損傷を受けている測定対象となる金属材料の特定の結晶粒についてIQ値を検出する結晶方位顕微鏡と、
    この結晶方位顕微鏡が検出したIQ値と、前記測定対象となる金属材料と同一クリープ条件における第2のデータベースのデータとを比較して、前記IQ値に対応する推定寿命消費率を求める情報処理手段とを有することを特徴とする金属材料の寿命評価システム。
  10. 所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の特定の結晶粒について結晶方位顕微鏡で平均結晶方位差を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と平均結晶方位差との相関を表すデータを記憶している第1のデータベースと、
    同一条件の下で前記結晶方位顕微鏡で得られる前記金属材料の結晶の回折パターンを表す画像の鮮明度であるIQ値を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率とIQ値との相関を表すデータを記憶している第2のデータベースと、
    クリープ損傷を受けている測定対象となる金属材料の特定の結晶粒について平均結晶方位差及びIQ値を検出する結晶方位顕微鏡と、
    この結晶方位顕微鏡が検出した平均結晶方位差の測定値と、前記測定対象となる金属材料と同一クリープ条件における第1のデータベースのデータとを比較して、前記平均結晶方位差に対応する推定寿命消費率を求めるとともに、前記結晶方位顕微鏡が検出したIQ値と、前記同一クリープ条件における第2のデータベースのデータとを比較して、前記IQ値に対応する推定寿命消費率を求める情報処理装置とを有することを特徴とする金属材料の寿命評価システム。
  11. 〔請求項8〕に記載する金属材料の寿命評価システムにおいて、
    所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の硬度を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と硬度との相関を表すデータを記憶している第3のデータベースと、
    測定対象となる金属材料の硬度を検出する硬度測定手段とを追加するとともに、
    情報処理手段は、前記第3のデータベースを参照することにより前記硬度測定手段が検出する硬度データも加味して測定対象である金属材料の寿命消費率を推定するように構成したことを特徴とする金属材料の寿命評価システム。
  12. 〔請求項9〕に記載する金属材料の寿命評価システムにおいて、
    所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の硬度を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と硬度との相関を表すデータを記憶している第3のデータベースと、
    測定対象となる金属材料の硬度を検出する硬度測定手段とを追加するとともに、
    情報処理手段は、前記第3のデータベースを参照することにより前記硬度測定手段が検出する硬度データも加味して測定対象である金属材料の寿命消費率を推定するように構成したことを特徴とする金属材料の寿命評価システム。
  13. 〔請求項10〕に記載する金属材料の寿命評価システムにおいて、
    所定温度雰囲気における所定応力を付与した状態である特定のクリープ環境に所定時間置いた寿命消費率が既知の金属材料の硬度を測定するとともに、かかる測定を寿命消費率が異なる複数種類の同一金属材料について測定することにより、クリープ損傷を発生していない寿命消費率が0%からクリープ損傷により破損した寿命消費率が100%に至る前記金属材料の寿命消費率と硬度との相関を表すデータを記憶している第3のデータベースと、
    測定対象となる金属材料の硬度を検出する硬度測定手段とを追加するとともに、
    情報処理手段は、前記第3のデータベースを参照することにより前記硬度測定手段が検出する硬度データも加味して測定対象である金属材料の寿命消費率を推定するように構成したことを特徴とする金属材料の寿命評価システム。
  14. 〔請求項13〕に記載する金属材料の寿命評価システムにおいて、
    情報処理装置は、第1のデータベースを参照して得る推定寿命消費率が最も大きく評価されるよう、次に第2のデータベースを参照して得る推定寿命消費率が評価されるよう、また第3のデータベースを参照して得る推定寿命消費率が最も小さく評価されるよう、それぞれの推定寿命消費率に所定の重み係数を掛けて、その後これらを平均化し、この平均値を推定寿命消費率とするよう構成したことを特徴とする金属材料の寿命評価システム。
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