JP2005024272A - 蓄積性蛍光体シート - Google Patents

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Abstract

【課題】輝尽発光特性が良好な蓄積性蛍光体層を有する蓄積性蛍光体シートを提供する。
【解決手段】真空成膜法による蓄積性蛍光体層を有し、かつ、この蓄積性蛍光体層が、ハロゲン化セシウム系蓄積性蛍光体を主成分とするものであり、かつ、所定の条件で測定した2次イオン質量分析法による炭素/セシウムの二次イオン強度比が0.1以下であることにより、前記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄積性蛍光体シートの技術分野に属し、詳しくは、真空蒸着法などの真空成膜法によって蓄積性蛍光体層を形成されてなる、輝尽発光特性が良好な蓄積性蛍光体シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)の照射を受けると、この放射線エネルギーの一部を蓄積し、その後、可視光等の励起光の照射を受けると、蓄積されたエネルギーに応じた輝尽発光を示す蛍光体が知られている。この蛍光体は、蓄積性蛍光体(輝尽性蛍光体)と呼ばれ、医療用途などの各種の用途に利用されている。
【0003】
一例として、この蓄積性蛍光体を主成分とする層(以下、蛍光体層とする)を有する蓄積性蛍光体シート((放射線像変換シートや輝尽性蛍光体パネルとも呼ばれている) 以下、蛍光体シートとする)を利用する、いわゆるCR(Computed Radiography) システムが知られており、例えば、富士写真フイルム社製のデジタルX線画像診断システムであるFCR(Fuji Computed Radiography)などとして実用化されている。
CRでは、被検者などの被写体を介して蛍光体シート(その蛍光体層)にX線を照射することにより、蛍光体シートに被写体のX線画像を撮影する(放射線画像情報を蓄積記録する)。このようにしてX線画像を撮影した蛍光体シートをレーザ光等の励起光で2次元的に走査して輝尽発光光を生ぜしめ、この輝尽発光光をCCDセンサ等を用いて光電的に読み取ることにより、X線画像の画像信号を得、この画像信号をCRTなどの表示装置や写真感光材料などの記録材料等に、被写体のX線画像として再生する。
【0004】
蛍光体シートは、通常、蓄積性蛍光体の粉末をバインダ等を含む溶媒に分散してなる塗料を調製して、この塗料をガラスや樹脂製等のシート状の支持体に塗布し、乾燥することによって、作成される。
これに対し、特許文献1や特許文献2などに開示されるように、真空蒸着やスパッタリング等の物理蒸着法(気相成膜法)によって、支持体に蛍光体層を形成してなる蛍光体シートも知られている。蒸着によって作製される蛍光体層は、真空中で形成されるので不純物が少なく、また、バインダなどの蓄積性蛍光体以外の成分が殆ど含まれないので、性能のバラツキが少なく、しかも発光効率が非常に良好であるという、優れた特性を有している。
【0005】
【特許文献1】
特許第2789194号公報
【特許文献2】
特開平5−249299号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
蛍光体シートに要求される最も重要な特性の1つとして、輝尽発光特性が挙げられる。輝尽発光特性とは、蛍光体層にX線を照射(X線エネルギの蓄積)した後、レーザ光などの励起光を照射した際に、X線の照射量に対して、どれ位の光量で輝尽発光を生じるか、という特性である。
X線の照射量および励起光の強度が同じであれば、輝尽発光の光量が高い方が輝尽発光特性が良好な蛍光体層である。すなわち、輝尽発光特性が良好な蛍光体層を有する蛍光体シートは、少ないX線照射量でも十分な輝尽発光を得ることができる、高感度な蛍光体シートである。
【0007】
前述のように、蛍光体シートを用いるX線画像の撮影では、X線フィルム等を用いた撮影と同様、被検者を通して蛍光体シートにX線を照射することにより、X線画像を蛍光体シートに撮影する。
従って、高感度な蛍光体シートを用いれば、X線の照射量が少なくても十分なX線強度での撮影を行うことができる。すなわち、高感度な蛍光体シートであれば、X線の被爆量を減らして、被検者の負担を低減することができる。
【0008】
本発明の目的は、前記FCRなどのCRに用いられる蓄積性蛍光体シートであって、輝尽発光特性が良好な蓄積性蛍光体層を有する蓄積性蛍光体シートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、真空成膜法による蓄積性蛍光体層を有する蓄積性蛍光体シートであって、前記蓄積性蛍光体層が、ハロゲン化セシウム系蓄積性蛍光体を主成分とするものであり、かつ、所定の条件で測定した2次イオン質量分析法による炭素/セシウムの二次イオン強度比が0.1以下であることを特徴とする蓄積性蛍光体シートを提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の蓄積性蛍光体シートについて、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0011】
図1に、本発明の蓄積性蛍光体シートの一例の概念図を示す。
図示例の蓄積性蛍光体シート10(以下、蛍光体シート10とする)は、基本的に、基板12の表面に、真空成膜法によって蓄積性蛍光体層14((輝尽性蛍光体層) 以下、蛍光体層14とする)を形成してなるものである。
【0012】
なお、図示例の蛍光体シート10は、基板12の表面に蛍光体層14のみを有する構成であるが、本発明は、これに限定はされず、蛍光体層14が後述する特性を有するものであれば、各種の構成が利用可能である。
【0013】
例えば、基板12の表面に輝尽発光光の出射効率を向上するための反射膜を有し、その上に蛍光体層14を有してもよく、さらに、反射膜と蛍光体層14との間に、反射膜の酸化を防止するためのバリア膜を有してもよい。また、蛍光体層14の上に、酸化等を防止するためのバリア膜を有してもよい。
なお、反射膜としては、厚さが0.01μm〜5μmのAl(アルミニウム)、Ag(銀)、Al合金、Ag合金等の薄膜が例示され、また、バリア膜としては、厚さが0.01μm〜5μmのSi(珪素)酸化物、Ti(チタン)酸化物、Si窒化物、Ce(セレン)酸化物、Mg(マグネシウム)フッ化物等の薄膜が例示される。
これらの膜は、スパッタリングや真空蒸着等、形成する膜に応じた各種の真空成膜法で形成すればよい。
【0014】
本発明の蛍光体シート10において、基板12には、特に限定はなく、ガラス、セラミックス、カーボン、アルミニウム、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド等、蛍光体シートで利用されている各種のシート状の基板が、全て利用可能である。
【0015】
本発明の蛍光体シート10において、蛍光体層14は、ハロゲン化セシウム系の蓄積性蛍光体(輝尽性蛍光体)を主成分とする、真空成膜法によって形成される層(膜)である。
【0016】
ハロゲン化セシウム系蓄積性蛍光体には、特に限定はなく、各種のものが利用可能であるが、特開昭57−148285号公報に開示されるアルカリハライド系蓄積性蛍光体の内、一般式「CsX・aMIIX’・bMIII X’’:cA」で示されるハロゲン化セシウム系蓄積性蛍光体は好ましく例示される。
(上記式において、MIIは、Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,CuおよびNiからなる群より選択される少なくとも一種の二価の金属、MIII は、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,GaおよびInからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属、X、X’およびX’’は、F,Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種、Aは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu,BiおよびMgからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦a<0.5、0≦b<0.5、0≦c<0.2である。)
特に、良好な輝尽発光特性を有し、かつ、本発明の効果を好適に発現する等の点で、Xが少なくともBrを含み、さらに、AがEuまたはBiである蓄積性蛍光体は好ましく、中でも、ユーロピウムを付活剤(賦活剤:activator)とする臭化セシウム(CsBr)系の蓄積性蛍光体、特に、一般式CsBr:Euで示される蓄積性蛍光体が好ましい。
【0017】
本発明の蛍光体シート10において、蛍光体層14における蛍光体と付活剤との比率には、特に限定はなく、蓄積性蛍光体の組成に応じて、適宜、決定すればよいが、付活剤/蛍光体のモル濃度比で0.0005/1〜0.01/1が好ましい。
さらに、膜厚にも、特に限定はなく、蛍光体層14の組成に応じて、十分な輝尽発光特性を得られる厚さを、適宜、決定すればよいが、50μm〜2000μm、特に、200μm〜1000μmが好適に例示される。
【0018】
ここで、本発明の蛍光体シート10においては、蛍光体層14は、所定の測定条件下におけるSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry 二次イオン質量分析法) による分析を行った際に、炭素/セシウム(C/Cs)の二次イオン強度比が0.1以下の蛍光体層14である。
【0019】
真空成膜法によるハロゲン化セシウム系蓄積性蛍光体の輝尽発光のメカニズムは、明らかにされてはいないが、本発明者は、その輝尽発光特性の低下原因について鋭意検討を重ねた結果、成膜系内に残存する界面活性剤が蛍光体層14の輝尽発光特性に悪影響を及ぼすこと、および、その悪影響の大きさを蛍光体層14中の炭素量で知見できることを見いだした。
【0020】
真空蒸着装置などの真空成膜装置では、真空チャンバ本体(内壁面)を蒸着カスなどによる汚染から防止するために、防着板と呼ばれる部材で真空チャンバの内壁面の大部分で覆った状態で、基板への成膜を行う。
例えば、図2((A)は上面図、(B)は正面断面図)の概念図に示すような、略円筒形状の真空チャンバ20を有する真空蒸着装置であれば、基板12を保持して回転するターンテーブル22や、成膜材料の加熱蒸発部24および26を収容できる径を有する、上下端が開放する円筒状の防着板28を真空チャンバ20内に配置して、加熱蒸発部24および26からの蒸気に対して真空チャンバ20の内壁面を覆った状態で基板12への成膜を行う。
なお、図示例の真空蒸着装置では、例えば、加熱蒸発部24に臭化ユーロピウムを、加熱蒸発部26に臭化セシウムを、それぞれ充填して、抵抗加熱による二元の真空蒸着によって蛍光体層14としてCsBr:Euを成膜する。
【0021】
防着板は、一般的な機械加工で作製されるため、その際にオイル成分が付着する。このオイル成分等の除去を目的として、防着板の作製後には、界面活性剤による洗浄が行われる。界面活性剤は、通常は問題にならない場合が多い。ところが、ハロゲン化セシウム系蓄積性蛍光体の成膜材料、特にCsBr:Euの成膜材料となる臭化ユーロピウムは、界面活性剤と良く反応する。そのため、防着板すなわち成膜系内に界面活性材が存在すると、成膜材料と反応して、この反応物が蛍光体層中に取り込まれ、輝尽発光特性を劣化させる。
ここで、本発明者の検討によれば、この悪影響の大きさは、蛍光体層中の炭素量で知見できる。従って、蛍光体層中の炭素量を指標にして、炭素量を低減した蛍光体層14を作製することにより、良好な輝尽発光特性を有する蛍光体シートを実現でき、特に、後述する条件で測定したSIMSによるC/Csの二次イオン強度比を0.1以下の蛍光体層14とすることにより、優れた輝尽発光特性を有する蛍光体シート10が実現できる。
【0022】
本発明は、上記知見を基になされたものであり、ハロゲン化セシウム系蓄積性蛍光体を主成分とする、真空成膜法による蛍光体層14を有する蛍光体シート10において、後述する所定条件で測定したSIMSによるC/Csの二次イオン強度比(Counts(カウント))が0.1以下、好ましくは0.01以下の蛍光体層14を有することにより、輝尽発光特性に優れる、高感度な蛍光体シート10を実現している。
従って、本発明の蛍光体シート10によれば、例えば、前述のFCR等の医療用測定装置に利用した際に、X線被爆量を低減して、被検者の負担を大幅に低減することができる。
【0023】
なお、本発明において、SIMSの所定の測定条件とは、一次イオン種としてCsを用い、一次イオンエネルギが5keV、一次イオン電流が150nAで、ラスターサイズが200μm×400μm、分析領域が9%で、二次イオンとして12および 133Csを検出するものである。
また、SIMSによる測定は、基本的に、D−SIMS(Dynamic−SIMS) を用いて、測定モードはデプスプロファイル(深さ方向分析)で行い、一次イオン入射角(照射角)を60°として、帯電補償(帯電補正)を行った状態で測定を行うのが好ましい。
【0024】
C/Csの二次イオン強度比を算出する深さには、特に限定はなく、蛍光体層14の層厚に応じて、デプスプロファイルの測定モードにおいて二次イオン強度が安定する深さ領域を、適宜、決定すればよく、例えば、中間の深さ近傍でC/Csの二次イオン強度比を算出すればよい。あるいは、二次イオン強度が安定した領域において、深さ方向に複数点でC/Csの二次イオン強度比を算出し、その平均値を算出してもよい。
【0025】
本発明の蛍光体シート10において、蛍光体層14の成膜方法には、特に限定はなく、スパッタリング、CVD、真空蒸着など、各種の真空成膜法が利用可能である。
また、成膜材料にも、特に限定はなく、蛍光体層の組成に応じて、蛍光体を含有する材料、および、付活剤を含有する材料(付活剤単体を含む)を、適宜、選択すればよい。
【0026】
なお、前述のように、蛍光体シート10の蛍光体層14の厚さは、50μm以上、特に、200μm以上が好ましく、通常の真空成膜法による薄膜に比して、非常に厚い膜を成膜する必要ある。そのため、生産性等の点で、真空蒸着を利用するのが好ましい。
また、前述のように、付活剤(ユーロピウム)は、蛍光体に比して、非常に微量である。そのため、付活剤の添加精度や分散状態など、蛍光体層の組成や特性等の点で、付活剤の材料と、蛍光体の材料とを別々に加熱蒸発する二元以上の多元の真空蒸着が好ましい。例えば、前記CsBr:Euの蛍光体層であれば、蛍光体成分の成膜材料として臭化セシウム(CsBr)を、付活剤成分の成膜材料として臭化ユーロピウム(EuBr(xは、通常、2〜3))を用い、多元の真空蒸着で成膜を行うのが好ましい。
さらに、本件出願人の検討によれば、ハロゲン化セシウム系蓄積性蛍光体、特にCsBr:Euを真空蒸着で成膜する場合には、一旦、系内を高い真空度に排気した後、アルゴンガスや窒素ガス等を系内に導入して、0.05Pa〜5Pa、特に0.1Pa〜2Pa程度の中真空度として、抵抗加熱によって成膜を行うのが好ましい。
【0027】
ここで、真空成膜法によって、前記測定条件下でのSIMSによるC/Csの二次イオン強度比が0.1以下である蛍光体層14を安定して成膜する方法として、以下の方法が好ましく例示される。
【0028】
前述のように、ハロゲン化セシウム系蓄積性蛍光体、特に、CsBr:Euを主成分とする蛍光体層14のSIMSによるC/Csの二次イオン強度比(層中の炭素量)は、成膜系内に残存する界面活性剤の量が多い程、高くなる。従って、この二次イオン強度比を0.1以下とするためには、成膜系内の界面活性剤の量を低減すればよく、従って、真空成膜装置の防着板に付着する界面活性剤を除去して蛍光体層14の成膜を行えばよい。
真空成膜装置の防着板に付着する界面活性剤の除去方法としては、酸を用いて防着板の極表面を溶解する方法や、無機研磨剤を用いて防着板を表面研磨する方法が例示される。何れの方法であっても処理を行った後に、純水および/またはアルコールによって防着板の表面を十分に洗浄するのが好ましい。なお、適正な洗浄を行えば、図2に示すような真空チャンバの側面を覆う防着板28に加えて、床面や天井面を覆って防着板を配置してもよい。
【0029】
以上、本発明の蓄積性蛍光体シートについて、詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の変更や改良を行ってもよいのは、もちろんである。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0031】
[実施例1]
多元の真空蒸着に対応可能な一般的な真空蒸着装置を用い、付活剤の成膜材料として臭化ユーロピウムを、蛍光体の成膜材料として臭化セシウムを、それぞれ用いる二元の真空蒸着によって、基板12の表面にCsBr:Euからなる蛍光体層14を成膜して、図1に示されるような蛍光体シート10を作成した。
【0032】
まず、防着板を非イオン界面活性剤を含む水溶液で洗浄した後、水洗を行い、次いで、フッ酸で洗浄して、さらに純水で洗浄して、真空チャンバ内の所定位置に装着した。
基板ホルダに450mm×450mmの板状の基板12(合成石英基板)を取り付け、臭化セシウム(CsBr)を充填したルツボ、および、臭化ユーロピウム(EuBr x≒2.2)を充填したルツボを真空チャンバ内の所定位置にセットした。なお、真空蒸着装置は、ルツボを抵抗加熱蒸発源とするものであり、かつ、基板回転機構およびシースヒータによる基板の加熱機構を有する。
【0033】
その後、真空チャンバを閉塞して、真空ポンプを駆動して排気を開始すると共に、基板回転機構を駆動して基板12を20rpmで回転し、さらに、シースヒータを駆動して、基板12を120℃に加熱した。
真空チャンバ内の真空度が8×10−4Paとなった時点で、真空チャンバ内にアルゴンガスを導入して、真空度を0.5Paに調整し、次いで、抵抗加熱用電源を駆動して両ルツボに通電し、シャッタを開放して、基板12の表面にCsBr:Euの蛍光体層を成膜した。
なお、蛍光体層におけるEu/Csのモル濃度比が0.003:1、かつ、成膜速度が10μm/minとなるように、抵抗加熱用電源の出力を調整した。この出力調整は、予め行った成膜実験に基づいて行った。
【0034】
蛍光体層の膜厚が500μmとなった時点で、シャッタを閉塞し、シースヒータおよび抵抗加熱用電源の駆動を停止し、基板12の回転を停止して、真空チャンバを開放して、蛍光体層を成膜された基板12すなわち作製した蛍光体シート10を取り出した。
【0035】
[実施例2]
防着板を前記実施例1と同じ非イオン界面活性剤を含む水溶液で洗浄し、水洗を行った後、無機研磨材による表面研磨を行い、次いでイソプロピルアルコールによる洗浄を行い、さらに、純水による洗浄を行って真空チャンバ内の所定位置に装着した。
これ以外は、前記実施例1と全く同様にして蛍光体シート10を作製した。
【0036】
[比較例]
防着板を前記実施例1と同じ非イオン界面活性剤を含む水溶液で洗浄して、純水で洗浄した後に、真空チャンバ内の所定位置に装着した。
これ以外は、前記実施例1と全く同様にして蛍光体シート10を作製した。
【0037】
[SIMS分析]
このようにして作製した各蛍光体シート10の蛍光体層14について、SIMSによるC/Csの二次イオン強度比を測定した。
その結果、実施例1はC/Cs二次イオン強度比=0.02; 実施例2はC/Cs二次イオン強度比=0.075; 比較例はC/Cs二次イオン強度比=0.2; であり、実施例1<実施例2<比較例の順で蛍光体層14中の相対的なC量が多いことが確認された。
なお、SIMSは、D−SIMSであるPHI社製のMODEL 6300を用い、測定モードはデプスプロファイル、一次イオン種はCs、一次イオンエネルギは5keV、一次イオン入射角は60°、一次イオン電流は150nA、ラスターサイズは200μm×400μm、分析領域は9%、帯電補償有の測定条件で、二次イオンとして12および 133Csを検出した。また、C/Cs二次イオン強度比は、二次イオン強度が安定した深さ20μmの点で算出した。
【0038】
[輝尽発光特性の測定]
各蛍光体シートについて、管電圧80VpのX線を照射した後、半導体レーザ(波長660nm)で励起して輝尽発光光を生じさせ、励起光をカットする光学フィルタを透過した光を光電子増倍管で測定することによって輝尽発光量を測定した。
その結果、C/Csの二次イオン強度比が0.1を超える比較例の輝尽発光量(本実施例における相対値 以下、同様)は10で、実用上問題が有った。これに対して、同二次イオン強度比が0.075である実施例2は輝尽発光量が80と良好な輝尽発光特性を有し、特に、同二次イオン強度比が0.02である実施例1は、輝尽発光量が150と優れた輝尽発光特性を発揮した。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【0039】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、良好な輝尽発光特性を有する高感度な蓄積性蛍光体シートを実現でき、例えば、FCRなどのCRシステムにおいて、X線の被爆量を減らして、被検者の負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蓄積性蛍光体シートの一例の概念図である。
【図2】真空蒸着装置の一例の概念図であって、(A)は上面図、(B)は正面断面図である。
【符号の説明】
10 (蓄積性)蛍光体シート
12 基板
14 (蓄積性)蛍光体層
20 真空チャンバ
22 ターンテーブル
24,26 加熱蒸発部
28 防着板

Claims (1)

  1. 真空成膜法による蓄積性蛍光体層を有する蓄積性蛍光体シートであって、
    前記蓄積性蛍光体層が、ハロゲン化セシウム系蓄積性蛍光体を主成分とするものであり、かつ、所定の条件で測定した2次イオン質量分析法による炭素/セシウムの二次イオン強度比が0.1以下であることを特徴とする蓄積性蛍光体シート。
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