JP2005023379A - 化学気相成長による薄膜の製造方法 - Google Patents

化学気相成長による薄膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ALD法を含むCVD法による酸化物又は複合酸化物からなる薄膜の製造方法において、前駆体にアルコキシドやβ−ジケトン錯体等の加水分解反応の遅い金属化合物を用いる場合に良好な薄膜の製造が可能となる薄膜の製造方法を与えること。
【解決手段】金属化合物を前駆体として使用し、水と酸とをそれぞれ気化させたガスを反応性ガスとして使用する化学気相成長法による酸化物又は複合酸化物からなる薄膜の製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物又は複合酸化物からなる薄膜を化学気相成長法により製造する方法に関し、詳しくは、水蒸気と酸性ガスとの混合ガスを反応性ガスとして使用する化学気相成長法による酸化物又は複合酸化物からなる薄膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
金属化合物を前駆体として用いた酸化物又は複合酸化物からなる薄膜を製造する化学気相成長(以下、CVDと記載することもある)法は、LSI等の電子部品や光学素子等の光通信部品の薄膜製造プロセスとして応用されている。一般的にCVD法において前駆体として用いられる金属化合物は、酸化分解温度が高いために、成膜には400℃以上の高い温度が必要であり、成膜温度の低温化に対応できないという問題を有している。
【0003】
上記の問題に対し、反応性ガスに水蒸気を用い、前駆体の加水分解反応を利用して低温成膜を行う方法が検討されている。例えば、下記特許文献1には、アルコキシタンタルを前駆体に用い、水蒸気を反応性ガスに用いたCVD法による酸化タンタル薄膜の製造方法が報告されており、また、下記特許文献2には、β−ジケトン錯体を前駆体に用い、水蒸気、酸素、過酸化水素、過酢酸等の酸素含有ラジカルを反応性ガスとして用いたCVD法の一種であるAtomic layer deposition(以下、ALDと記載することもある)法による薄膜の製造が報告されている。
【0004】
しかし、前駆体にアルコキシドやβ−ジケトン錯体等の加水分解反応の遅い金属化合物を用いる場合には、上記の方法でも十分に良好な薄膜の製造が可能でない場合がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、ALD法を含むCVD法による酸化物又は複合酸化物からなる薄膜の製造方法において、前駆体にアルコキシドやβ−ジケトン錯体等の加水分解反応の遅い金属化合物を用いる場合に良好な薄膜の製造が可能となる薄膜の製造方法を与えることにある。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−163519号公報(請求項4、実施例等)
【特許文献2】
特開2001−355070号公報(請求項7、14等)
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、検討を重ねた結果、反応性ガスとして、水と酸とをそれぞれ気化させたガスを使用することにより、上記の問題点を解決し得ることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、金属化合物を前駆体として使用し、水と酸とをそれぞれ気化させたガスを反応性ガスとして使用する化学気相成長法による酸化物又は複合酸化物からなる薄膜の製造方法に提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
まず、本発明の薄膜の製造方法において前駆体として用いられる金属化合物について説明する。
【0011】
上記の金属化合物を構成する金属原子は、特に制限されるものではなく、所望の酸化物又は複合酸化物を構成できるように任意の金属原子を選択することができる。該金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1族元素、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の2族元素、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド元素(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム)、アクチノイド元素等の3族元素、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムの4族元素、バナジウム、ニオブ、タンタルの5族元素、クロム、モリブデン、タングステンの6族元素、マンガン、テクネチウム、レニウムの7族元素、鉄、ルテニウム、オスミウムの8族元素、コバルト、ロジウム、イリジウムの9族元素、ニッケル、パラジウム、白金の10族元素、銅、銀、金の11族元素、亜鉛、カドミウム、水銀の12族元素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムの13族元素、ゲルマニウム、錫、鉛の14族元素、砒素、アンチモン、ビスマスの15族元素、ポロニウムの16族元素が挙げられる。
【0012】
本発明に係る金属化合物は、上記の金属原子及び上記の金属原子と結合する配位子によって構成され、CVD法に使用し得る揮発性を有するものであれば特に制限されることはない。上記の金属原子と結合し金属化合物を構成する配位子としては、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン化物、メタン、エタン、プロパン、2−プロパン、ブタン等のアルカン;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン等のモノアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ第三ブチルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルシリルアミン、トリエチルシリルアミン等のシリルアミン;メタンイミン、エタンイミン、プロパンイミン、2−プロパンイミン、ブタンイミン、2−ブタンイミン、イソブタンイミン、第三ブタンイミン、ペンタンイミン、第三ペンタンイミン等のアルカンイミン;シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、プロピルシクロペンタジエン、イソプロピルシクロペンタジエン、ブチルシクロペンタジエン、第三ブチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン等のシクロペンタジエン類;モノアルコール、ジオール等のアルコール;β−ジケトン;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸−2メトキシエチル等のβ−ケトエステル等が挙げられ、これらのうちの1種類が上記の金属原子に結合していてもよく、2種類以上が結合していてもよい。
【0013】
本発明の薄膜の製造方法が特に有効であるのは、前駆体として、金属原子に少なくとも1個のアルコール又はβ−ジケトンが配位子として結合した金属化合物を使用する場合であり、通常は、配位し得る最大数が配位した金属化合物が使用される。
【0014】
上記のアルコール及び/又はβ−ジケトンを配位子とした金属化合物の代表例としては、アルコールを配位子としたものとして下記一般式(I)又は(II)で表される金属化合物が挙げられ、アルコール及びβ−ジケトンを配位子としたものとして下記一般式(III)又は(IV)で表される金属化合物が挙げられ、β−ジケトンを配位子としたものとして下記一般式(V)で表される金属化合物が挙げられる。
【0015】
【化1】
Figure 2005023379
【0016】
【化2】
Figure 2005023379
【0017】
【化3】
Figure 2005023379
【0018】
上記の一般式(I)〜(III)において、Rで表される分岐していてもよく酸素原子で中断されてもよくハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、1−エチルペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロヘキシル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、1−メトキシ−1,1−ジメチルメチル、2−メトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−エトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−プロポキシ−1,1−ジメチルエチル、2−イソプロポキシ−1,1−ジメチルエチル、2−ブトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−第二ブトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−メトキシ−1,1−ジエチルエチル、2−エトキシ−1,1−ジエチルエチル、2−プロポキシ−1,1−ジエチルエチル、2−イソプロポキシ−1,1−ジエチルエチル、2−ブトキシ−1,1−ジエチルエチル、2−メトキシ−1−エチル−1−メチルエチル、2−プロポキシ−1−エチル−1−メチルエチル、2−(2−メトキシエトキシ)−1,1−ジメチルエチル、2−プロポキシ−1,1−ジエチルエチル、3−メトキシ−1,1−ジメチルプロピル等が挙げられる。
【0019】
また、上記一般式(III)〜(V)において、R及びRで表される分岐していてもよく酸素原子で中断されてもよくハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜12のアルキル基としては、上記Rと同様の基が挙げられる。
【0020】
また、上記一般式(IV)において、Rで表される炭素数2〜18のアルカンジイル基は、グリコールにより与えられる基であり、該グリコールとしては、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0021】
本発明に係る上記の一般式(I)で表される金属化合物の具体例としては、以下に示す化合物No.1〜24が挙げられる。
【0022】
【化4】
Figure 2005023379
【0023】
本発明に係る上記の一般式(II)で表される金属化合物の具体例としては、以下に示す化合物No.25〜63が挙げられる。
【0024】
【化5】
Figure 2005023379
【0025】
【化6】
Figure 2005023379
【0026】
本発明に係る上記の一般式(III)で表される金属化合物の具体例としては、以下に示す化合物No.64〜93が挙げられる。
【0027】
【化7】
Figure 2005023379
【0028】
【化8】
Figure 2005023379
【0029】
本発明に係る上記の一般式(IV)で表される金属化合物の具体例としては、以下に示す化合物No.94〜98が挙げられる。
【0030】
【化9】
Figure 2005023379
【0031】
本発明に係る上記の一般式(V)で表される金属化合物の具体例としては、以下に示す化合物No.99〜114が挙げられる。
【0032】
【化10】
Figure 2005023379
【0033】
本発明の薄膜の製造方法においては、上記の金属化合物をCVD用原料として用いるが、上記の金属化合物は単独で用いてもよく、二種類以上の混合物で用いてもよく、また、有機溶媒と混合した溶液として用いてもよい。
【0034】
CVD用原料に使用される上記の有機溶媒は、主にCVD用原料に流動性を与えるために一種類で又は二種類以上混合して使用される。上記の有機溶剤の使用量は、必要な流動性及び良好な操作性を与える範囲から選択され、通常、上記の金属化合物1質量部に対して、1〜100質量部である。
【0035】
本発明に係る有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;フラン、ピラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、エチルメチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、ジメチシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;アセトニトリル、1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する炭化水素類;ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン類、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ルチジン、ピラジン、ピリミジン、ピロリドン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン等の窒素含有環状化合物類等が挙げられ、溶質である金属化合物の溶解性、使用温度と沸点及び引火点との関係等によって適宜選択される。
【0036】
上記の有機溶媒の中で好ましいものは、後述する反応性ガスとして用いられる水及び/又は酸との親和性の大きいもの、特に親水性のものである。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、フラン、ピラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、エチルメチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、1−シアノプロパンが挙げられる。
【0037】
次に、本発明の薄膜の製造方法において用いられる反応性ガスについて説明する。
【0038】
本発明の薄膜の製造方法においては、反応性ガスとして水と酸とをそれぞれ気化させたガスを使用し、これらのガスは、反応堆積部に、別々の供給系によって同時或いは個々に導入してもよく、水と酸との混合ガスとして導入してもよい。水と酸との混合ガスを用いる方法が、供給系も少なくて済み、薄膜製造における操作性も容易になるので好ましい。
水を気化させたガスと酸を気化させたガスとの使用比率(モル基準、前者:後者)は、1:0.005〜1から選択されるのが好ましい。水と酸との混合ガスを用いる場合は、例えば、酸の種類等にもよるが、酸濃度0.1〜50質量%程度の水溶液をガス発生源として用いることにより、上記比率で水と酸との混合ガスを供給できる。
【0039】
本発明に係る反応性ガスに使用される酸としては、CVD法における気化供給に適する範囲の揮発性を有する酸であればよく、水と混合したときに水素イオン(オキソニウムイオン)のみを放出するもの、ブレンステッド酸、ルイス酸といずれの定義に当てはまるものでもよいが、水と混合したときに水素イオン(オキソニウムイオン)のみを放出するものが特に有効であり好ましい。
【0040】
上記の好ましい酸としては、塩酸、臭素酸、硝酸、過塩素酸オキソニウム、メタンスルホン酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0041】
また、本発明の薄膜の製造方法には、反応性ガスとして、上述した水と酸とをそれぞれ気化させたガスに加え、通常用いられる反応性ガスである酸素、一重項酸素、オゾン、二酸化炭素、二酸化窒素、一酸化窒素、過酸化水素等を更に用いてもよい。
【0042】
次に、本発明の薄膜の製造方法における化学気相成長(CVD)法について説明する。
【0043】
CVD法とは、気化させた前駆体である金属化合物と、反応性ガスとを基板上に導入し、前駆体である金属化合物を基板上で分解及び/又は反応させて薄膜を基板上に成長、堆積させる方法を指す。本発明の薄膜の製造方法は、CVD用原料の輸送供給方法、堆積方法、製造条件、製造装置等については、特に制限を受けるものではなく、周知一般の条件、方法等を用いることができる。
【0044】
上記の輸送供給方法としては、CVD用原料を原料容器中で加熱及び/又は減圧することにより気化させ、必要に応じて用いられるアルゴン、窒素、ヘリウム等のキャリアガスと共に堆積反応部へと導入する気体輸送法、CVD用原料を液体又は溶液の状態で気化室まで輸送し、気化室で加熱及び/又は減圧することにより気化させて、堆積反応部へと導入する液体輸送法がある。
【0045】
また、上記の堆積方法としては、原料ガス又は原料ガスと反応性ガスとを熱のみにより反応させセラミックスを堆積させる熱CVD、熱及びプラズマを使用するプラズマCVD、熱及び光を使用する光CVD、熱、光及びプラズマを使用する光プラズマCVD、CVDの堆積反応を素過程に分け、分子レベルで段階的に堆積を行うALD(Atomic Layer Deposition)が挙げられる。
【0046】
ALDは、CVD用原料及び反応性ガスの堆積部への供給を交互に行い、これを1サイクルとして薄膜の分子層を段階的に堆積させていく方法である。また、各サイクルにおいて、原料ガス又は反応性ガスを供給した後に、不活性ガスによるパージ及び/又は減圧による排気を行い、未反応の原料ガス及び/又は反応性ガスを除去する工程を任意に導入してもよい。ALDは、他のCVD法と比較して膜厚が薄く均一で良好な薄膜を得られるという特徴がある。また、その成膜メカニズムから薄膜堆積温度を低く抑えることが可能であり、基体の耐熱性、基体への元素拡散性等に左右されず広い応用が可能である。また、ALDは、熱、光、プラズマと併用することも可能である。
【0047】
また、上記の製造条件としては、反応温度(基板温度)、反応圧力、堆積速度等が挙げられる。反応温度については、前駆体である金属化合物が充分に反応する温度である200℃以上が好ましく、250〜600℃がより好ましい。また、反応圧力は、熱CVD又は光CVDの場合、大気圧〜10Paが好ましく、プラズマを使用する場合は、10〜2000Paが好ましい。また、堆積速度は、ALD以外のCVD法では、原料の供給条件(気化温度、気化圧力)、反応温度、反応圧力によりコントロールすることが出来る。堆積速度は、大きいと得られる薄膜の特性が悪化する場合があり、小さいと生産性に問題を生じる場合があるので、0.1〜1000nm/分が好ましく、1〜500nm/分がより好ましい。また、ALDの場合は、所望の膜厚が得られるようにサイクルの回数でコントロールされる。
【0048】
また、本発明の薄膜の製造方法においては、薄膜層堆積の後に、例えば、より良好な電気特性を得るためにアニール処理を行ってもよく、段差埋め込みが必要な場合には、リフロー工程を設けてもよい。この場合の温度は、通常500〜1000℃であり、550〜800℃が好ましい。
【0049】
本発明の薄膜の製造方法を用いて製造される薄膜を形成する酸化物又は複合酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム、酸化ゲルマニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化エルビウム、チタン酸鉛(PT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ランタン添加チタン酸ジルコン酸鉛(PLZT)、チタン酸ビスマス(BT)、珪素−BT複合酸化物(BTS)、ランタン添加チタン酸ビスマス(BLT)、珪素−BLT複合酸化物、タンタル酸ビスマスストロンチウム(SBT)、タンタル−ニオブ複合酸化物、チタン−タンタル複合酸化物、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸リチウム、YBaCu7−δ型酸化物(YBC)、YBCのYサイトをランタノイド元素で置換したREBC型酸化物、BiSrCaCu、BiSrCaCu10、ハフニウム−アルミニウム複合酸化物、珪素−チタン複合酸化物、珪素−ジルコニウム複合酸化物、珪素−ハフニウム複合酸化物、珪素−タンタル複合酸化物、希土類−珪素複合酸化物、希土類−アルミニウム複合酸化物、希土類−珪素−アルミニウム複合酸化物、希土類元素添加型光学ガラス等が挙げられる。
【0050】
上記の薄膜の用途としては、半導体素子の絶縁膜、強誘電体膜、高誘電体膜、導電膜、バリア膜;光通信素子の光導波路、光変調膜、光スイッチ膜、光増幅膜器;レーザ発信器;光ファイバ等が挙げられる。
【0051】
【実施例】
以下、評価例、実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0052】
[評価例1]
図1に示す試験装置を用いて、化合物No.17;2.0gとジエチレングリコールジメチルエーテル;2.0gとからなる溶液に、系内の温度を30℃に保ちながら、表1に記載のガス発生源から発生するガスをバブラーで導入した。化合物No.17の経時変化(残存率;質量%)をガスクロマトグラフィー(カラム:OV−17、1m;昇温10℃/分;導入部250℃、検出部300℃)で測定した。なお、系内に導入されるガスの供給量は、キャリアーであるアルゴンガスにより調節を行い3.5mg/分にコントロールした。測定結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
Figure 2005023379
【0054】
[評価例2]
図1に示す試験装置を用いて、化合物No.17;1.11gと化合物No.20;0.63gとジエチレングリコールジメチルエーテル;1.95gとからなる溶液に、表2に記載のガス発生源から発生するガスをバブラーで導入した。化合物No.17及び化合物No.20の経時変化をガスクロマトグラフィー(カラム:OV−17、1m;昇温10℃/分;導入部250℃、検出部300℃)で測定した。なお、系内に導入されるガスの供給量は、キャリアーであるアルゴンガスにより調節を行い21.2mg/分にコントロールした。測定結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
Figure 2005023379
【0056】
表1及び表2から明らかなように、アルコールを配位子とする加水分解反応の遅い金属化合物を、水と酸とをそれぞれ気化させたガスと接触させると、水を気化させたガスのみと接触させた場合に比べ、加水分解反応の進行を早めることができ、且つ、複数種の金属化合物を用いた場合には、それぞれの金属化合物の加水分解反応を、同程度の速度で進行させることができる。
【0057】
[実施例1]
ジエチレングリコールジメチルエーテルを金属ナトリウム線で乾燥した後、アルゴン気流下で、前留分10質量%及び釜残分10質量%をカットし、蒸留精製を行い水分量1ppm未満の溶媒を得た。この溶媒500mlに、化合物No.17を0.020mol及び化合物No.20を0.010molアルゴン気流下で配合してCVD用原料を得た。このCVD用原料を用いて図2に示すCVD装置により、以下の条件及び工程で薄膜を製造した。得られた薄膜の膜厚及び膜組成を、蛍光X線で測定した。測定結果を以下に示す。
【0058】
(条件)
気化室温度;170℃、反応温度(基板温度);400℃、反応性ガス;酢酸と水蒸気との混合ガス(20質量%酢酸水溶液の蒸気)
(工程)
下記▲1▼〜▲4▼からなる一連の工程を1サイクルとして、100サイクル繰り返し、最後に600℃で3分間アニール処理を行った。
▲1▼気化させたCVD用原料の蒸気を導入し、系圧力100Paで1秒間堆積させる。
▲2▼10秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
▲3▼反応性ガスを導入し、系圧力120Paで1秒間反応させる。
▲4▼10秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
(結果)
膜厚:28nm、組成:Hf/Al(モル)=2.00/1.04
【0059】
[実施例2]
テトラヒドロピランを金属ナトリウム線で乾燥した後、アルゴン気流下で、前留分10質量%及び釜残分10質量%をカットし、蒸留精製を行い水分量1ppm未満の溶媒を得た。この溶媒500mlに、化合物No.109を0.020molアルゴン気流下で配合してCVD用原料を得た。このCVD用原料を用いて図2に示すCVD装置により、以下の条件及び工程で薄膜を製造した。得られた薄膜の膜厚を、上記実施例1と同様にして測定した。測定結果を以下に示す。
【0060】
(条件)
気化室温度;190℃、反応温度(基板温度);400℃、反応性ガス;塩酸と水蒸気との混合ガス(15質量%塩酸水溶液の蒸気)
(工程)
下記▲1▼〜▲4▼からなる一連の工程を1サイクルとして、100サイクル繰り返し、最後に600℃で3分間アニール処理を行った。
▲1▼気化させたCVD用原料の蒸気を導入し、系圧力100Paで1秒間堆積させる。
▲2▼2秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
▲3▼反応性ガスを導入し、系圧力100Paで1秒間反応させる。
▲4▼2秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
(結果)
膜厚:15nm
【0061】
[実施例3]
化合物No.11を用いて図2に示すCVD装置により、以下の条件及び工程で薄膜を製造した。得られた薄膜の膜厚を、上記実施例1と同様にして測定した。測定結果を以下に示す。
【0062】
(条件)
気化室温度;150℃、反応温度(基板温度);350℃、反応性ガス;塩酸と水蒸気との混合ガス(15質量%塩酸水溶液の蒸気)
(工程)
下記▲1▼〜▲4▼からなる一連の工程を1サイクルとして、100サイクル繰り返し、最後に500℃で3分間アニール処理を行った。
▲1▼気化させたCVD用原料の蒸気を導入し、系圧力120Paで1秒間堆積させる。
▲2▼2秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
▲3▼反応性ガスを導入し、系圧力100Paで1秒間反応させる。
▲4▼2秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
(結果)
膜厚:41nm
【0063】
上記実施例1〜3において、反応性ガスとして水と酸とをそれぞれ気化させたガスを用いると、前駆体として加水分解反応の遅い金属化合物を用いた場合でも、反応性ガスとして水蒸気のみを用いた従来の製造方法とは異なり、均一で良好な薄膜を、良好な組成制御性で製造可能であることが確認された。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、ALD法を含むCVD法において、前駆体にアルコキシドやβ−ジケトン錯体等の加水分解反応の遅い金属化合物を用いる場合に適した酸化物薄膜の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、評価例に用いた試験装置を示す概要図である。
【図2】図2は、本発明の薄膜の製造方法に用いられるCVD装置の一例を示す概要図である。

Claims (8)

  1. 金属化合物を前駆体として使用し、水と酸とをそれぞれ気化させたガスを反応性ガスとして使用する化学気相成長法による酸化物又は複合酸化物からなる薄膜の製造方法。
  2. 上記金属化合物が、アルコール及び/又はβ−ジケトンを配位子とした金属化合物である請求項1記載の薄膜の製造方法。
  3. 上記反応性ガスが、水と酸との混合ガスである請求項1又は2に記載の薄膜の製造方法。
  4. 上記金属化合物が、3族元素の金属化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
  5. 上記金属化合物が、4族元素の金属化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
  6. 上記金属化合物が、5族元素の金属化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
  7. 上記前駆体を有機溶媒と混合して使用する請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
  8. 上記有機溶媒が、親水性である請求項7記載の薄膜の製造方法。
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