JP2005023263A - エネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション及び感熱記録体 - Google Patents

エネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション及び感熱記録体 Download PDF

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Abstract

【課題】人体および環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を使用することなく塗工でき、高光沢で記録走行性に優れた硬化被膜を与える、感熱記録体のオーバーコート層用に適した水性のエネルギー線硬化型樹脂組成物の開発。
【解決手段】分子中に少なくとも3個以上のアクリロイル基を有する化合物(A)、炭素数6以上の脂肪族(メタ)アクリレート(B)、式(1)又は式(2)で表わされる親水性樹脂(C)と、
【化1】
Figure 2005023263

(式(1)、式(2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜25のアルキル基を示し、nは平均値で1以上の数を示す。)
分子内にエチレン性不飽和基と(ポリ)エチレンオキシド鎖と硫酸エステルアンモニウム塩基とを有する親水性樹脂(D)と、フィラー(E)を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションを得、これを感熱発色層のオーバーコート剤として使用する。

Description

本発明は、エネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション、及び該エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化膜層をオーバーコート層として有する感熱記録体に関する。更に詳しくは、光沢が付与された高級感のある感熱記録体に関し、記録走行性、特に湿熱条件下での印字の際にスティキングが良好である感熱記録体を得るための水系のエネルギー線硬化型樹脂組成物に関するものである。
従来、無色又は淡色のロイコ染料と有機又は無機の顕色剤を熱により反応させて記録画像を得る感熱記録体は、比較的安価で、装置がコンパクトで且つメンテナンスフリーであるため、ファクシミリやプリンターの分野で近年急速に普及し、又POSラベル、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)、第2原図、カード類等、その使用分野も拡大している。
しかしながら、従来の感熱記録体は保存性に問題が有り(特に発色画像の可塑剤、油、水による退色)、又地肌かぶりなどの欠点が有る。この問題を解決する方法として、感熱発色層上にエネルギー線硬化型樹脂層を設ける方法や、感熱発色層の上に中間層を介してエネルギー線硬化型樹脂層を設けることにより、かぶりを伴うことなく保存性、記録特性に優れた感熱記録体を得る方法等が提案されている。
しかし、近年の感熱記録方式の多様化、高性能化に伴い、サーマルプリンターやファクシミリ等のハードが著しく進歩し、これらによる高速印字やビデオプリンターによる印字の場合、エネルギー線硬化型樹脂をオーバーコートしていてもサーマルヘッドへのかす付着、印字の際の音の発生(スティッキング音)などの問題を有しており、良好な感熱記録体は得られていない。また、エネルギー線硬化型樹脂としてTg点(ガラス転移点)が200℃以上のものを用いる方法や、樹脂中に15ミクロン以下の顔料を添加する方法なども提案されているが、いずれに於いても高速記録特性に優れ、かつ高光沢で感熱記録体自体及び発色画像の保存性に優れた感熱記録体を得るという目的は未だ充分には達成されていない。
又、エネルギー線硬化型樹脂は、硬化設備が簡便で、生産性が良い事から多くの分野で利用されているが、取扱上や塗工上の問題から反応性希釈剤や有機溶剤を使用しなければならない場合が多く、そのような有機溶剤を含む組成物は皮膚刺激性、臭気、有毒性の点から作業性、安全性に問題が有る。この問題を解決する試みの一つとしてエネルギー線硬化型樹脂組成物をエマルション化してオ−バ−コ−ト材として使用する方法がある。
しかし、樹脂組成物をエマルション化するためには通常使用される乳化剤を用いると、硬化皮膜に残った乳化剤の影響で、耐水性など感熱記録体の保存性や、印字の際の記録特性が低下するという問題がある。また、高速プリンターなどの印字に使用する場合は、エネルギー線硬化型樹脂のみをエマルション化した塗工液をオーバーコートしても記録特性が不十分となるため、硬化膜に耐熱性、摺動性の機能を付与する必要があり、かかる場合には無機または有機フィラーの添加が必要となる。その方法としては、エネルギー線硬化型樹脂をエマルション化するに先だって、樹脂中に予め無機または有機フィラーを分散させておき、これを水中に乳化分散してエマルションを製造する方法がある。しかし、無機または有機フィラーを添加すると水中油滴型エマルションの安定性が低下し、ひいてはエマルションの製造が困難になり、またかかるエマルションを用いた場合、オーバーコート層の塗膜の光沢が低下する等の問題を生じる。こうした問題を解決する方法として本発明者らは先に感熱記録体の保護層に適した水中油滴型放射線硬化性樹脂組成物のエマルションを提案している(特許文献1)(特許文献2)。しかしこれらの方法においてもエマルションの安定性や、近年のプリンターの高性能化に対応した印字性能などには未だ不十分な点もあった。
特許3139638号公報 特開2000−160060号公報
人体および環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を使用することなく水で希釈、塗工が可能で、これを感熱記録体のオーバーコート材として使用することにより、高エネルギーでの印字の際のサーマルヘッドとのマッチング性(スティッキング性、ヘッドへのかす付着の程度)が良好で、かつ高光沢で高級感がある感熱記録体を与える紫外線硬化性の水性樹脂組成物を開発すること。
本発明者らは、前記したような課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の組成を有する樹脂組成物の水中油滴型エマルションが前記課題を解決するものであることを見出し本発明を完成させた。
即ち本発明は、
(1)分子中に少なくとも3個以上のアクリロイル基を有する化合物(A)、炭素数6以上の脂肪族(メタ)アクリレート(B)、式(1)又は式(2)で表わされる親水性樹脂(C)と、
Figure 2005023263
(式(1)、式(2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜25のアルキル基を示し、nは平均値で1以上の数を示す。)
分子内にエチレン性不飽和基と(ポリ)エチレンオキシド鎖と硫酸エステルアンモニウム塩基とを有する親水性樹脂(D)と、フィラー(E)を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション、
(2)親水性樹脂(D)がフェノール残基を有し、エチレン性不飽和基が該フェノール残基又は(ポリ)エチレンオキシド鎖に結合する化合物である(1)に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション、
(3)フィラー(E)が無機フィラーで、その含有量がエネルギー線硬化型樹脂組成物中0.5〜50重量%である(1)又は(2)のいずれか一項に記載の水中油滴型エマルション、
(4)軟化点87〜100℃のワックス(F)を含有する(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の水中油滴型エマルション、
(5)(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の水中油滴型エマルションからなるオーバーコート剤、
(6)支持体上に感熱発色層及びオーバーコート層を有する感熱記録体において、オーバーコート層が(5)に記載のオーバーコート剤の硬化膜層からなることを特徴とする感熱記録体、
を提供するものである。
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションは、人体および環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を使用することなく水で希釈、塗工ができ、その際のエマルションの機械的な安定性も良好である。これを感熱記録体のオーバーコート材として使用することにより、高エネルギーでの印字の際のサーマルヘッドとのマッチング性(スティッキング性、ヘッドへのかす付着の程度)が良好で、かつ高光沢で高級感がある感熱記録体が得られ、耐折り曲げ性が良好である。特に湿熱条件下での印字の際のスティキング特性が良好であるという特徴がある。
本発明は、分子中に少なくとも3つ以上のアクリロイル基を有する化合物(A)、炭素数6以上の脂肪族アクリレート(B)、式(1)又は式(2)で表わされる親水性樹脂(C)と、分子内にエチレン性不飽和基と(ポリ)エチレンオキシド鎖と硫酸エステルアンモニウム塩基とを有する親水性樹脂(D)と、フィラー(E)を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションである。
本発明で使用する、分子内に少なくとも3個以上のアクリロイル基を有する化合物(A)としては常温で液状のものが好ましい。アクリレート類は、アクリロイル基を1つ有する単官能モノマー、アクリロイル基を2個有する2官能モノマー、アクリロイル基を有するオリゴマー、アクリロイル基を3個もしくは4個以上有する多官能モノマーに大別されるが、被膜形成能や被膜硬度の点から、アクリロイル基を3個もしくは4個以上有する常温で液状のオリゴマーや多官能モノマーを本発明では用いる。
かかる多官能モノマーの具体例としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクロイルオキシエチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
更に、オリゴマーとしては、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート等のうち、分子内に少なくとも3個以上のアクリロイル基を有する化合物として挙げられる。
分子中に少なくとも3個以上のアクリロイル基を有する化合物(A)の使用量は、成膜性や塗膜強度や光沢等の膜性能を考慮すると、エネルギー線硬化型樹脂組成物の全重量に対し、通常2〜80重量%、好ましくは10〜60重量%の範囲である。
次ぎに、炭素数6以上の脂肪族アクリレート(B)としては2官能あるいは単官能の直鎖または分岐した脂肪族アルコールのアクリレートが挙げられ、例えば1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,20−エイコサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソペンチルジオールジ(メタ)アクリレート、3−エチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が使用出来る炭素数6以上の脂肪族アクリレート(B)の例として挙げられる。
炭素数6以上の脂肪族アクリレート(B)の含有量は、印字の際のスティッキングやエマルションの安定性などを考慮すると、エネルギー線硬化型樹脂組成物の全重量(以下においてエネルギー線硬化型樹脂組成物の全重量とは本発明の水中油滴型エマルションの重量から水、溶媒を除いた成分の全重量をいう)、通常1〜7重量%、好ましくは2〜5重量%の範囲である。
本発明で用いられる式(1)又は式(2)の親水性樹脂(C)は、分子中に80重量%以上のエチレンオキサイド基を有するものが安定な水中油滴型エマルションを作る上で好ましい。尚、式(1)、式(2)におけるRは水素原子又は炭素数1〜25のアルキル基である。Rがアルキル基である場合、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ノニル基、ドデカニル基等のC1〜12のアルキル基が好ましい。また、式(1)又は式(2)におけるnは平均値として、1以上400以下程度が好ましく、より好ましくは30以上200以下である。式(1)で表される親水性樹脂(C)の例としては例えば第一工業製薬製のアクアロンRN−50(R=ノニル基、n=50)が、式(2)で表される親水性樹脂(C)の例としては例えば旭電化工業製のアデカリアソープNE−50(R=ノニル基、n=50)等が市場から入手出来る。
式(1)又は式(2)で表される親水性樹脂(C)の使用量は、エマルションの安定性や耐水性、耐熱性等の膜物性を考慮すると、エネルギー線硬化型樹脂組成物の全重量に対し、通常4〜30重量%、好ましくは8〜20重量%の範囲である。
本発明の水中油滴型エマルションに含有される親水性樹脂(D)はアニオン性乳化剤の一種であるが、得られるエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションの安定性や膜の耐水性、ヘッドマッチング適性を考慮すると分子内にエチレン性不飽和基と硫酸エステルアンモニウム塩基(−OSO3NH)とを有するものが使用される。ここでエチレン性不飽和基としては、例えばビニル基、プロペニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
この親水性樹脂(D)は分子内にフェノール残基を有しているものが好ましい。フェノール残基はアルキル基等の置換基を有していても良い。親水性樹脂(D)はフェノール残基とスルホン酸アンモニウム塩基の間に(ポリ)エチレンオキシド鎖を有するものが好ましい。また、親水性樹脂(D)はエチレン性不飽和基をフェノール残基上または(ポリ)エチレンオキシド鎖上に有するものが好ましい。また親水性樹脂(D)の中でも、分子中に2個以上のベンゼン環を有するものが好ましく、そのようなものとしてはフェノール残基とスルホン酸アンモニウム塩基の間に(ポリ)エチレンオキシド鎖を有する基と、フェノール残基とエチレン性不飽和基の間に(ポリ)エチレンオキシド鎖を有する基をメチレン鎖で結合した化合物などがある。フェノール残基と(ポリ)エチレンオキシド鎖はフェノールの水酸基を介して結合している。フェノール残基にはプロペニル基等のエチレン性不飽和基やアルキル基等の置換基が結合していても良い。(ポリ)エチレンオキシド鎖には、その末端に(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基や硫酸エステルアンモニウム塩基が結合しているものが挙げられる。また、硫酸エステルアンモニウム塩基が結合している(ポリ)エチレンオキシド鎖には、フェノール残基に結合するエチレン鎖にメチレン鎖を介してアリルオキシ基等のエチレン性不飽和基が結合していても良い。
この親水性樹脂(D)としては、例えば旭電化工業(株)製のアデカリアソープSE−10N(下記式(3))、第一工業製薬(株)製のアクアロンHS−20(下記式(4))、日本乳化剤(株)製の反応性乳化剤Antox MS−60等が市場から入手出来る。Antox MS−60は、[(1−フェニルエチル)フェノキシポリエトキシ]エチルメタクリレートを主成分とする、エチレングリコール、フェノール、スチレン、ホルムアルデヒド、硫化水素アンモニウム及びメタクリル酸の反応生成物であり、下記式(5)の基本構造を有すると考えられる。
Figure 2005023263
分子内にエチレン性不飽和基と硫酸エステルアンモニウム塩基とを有する親水性樹脂(D)の使用量は、エマルションの経時安定性や希釈したときの機械的な安定性、耐水性、耐熱性等の膜物性を考慮すると、エネルギー線硬化性樹脂組成物の全重量に対し、通常0.4〜5重量%、好ましくは0.7〜3重量%の範囲である。
本発明ではフィラー(E)を使用する。その粒径は、オーバーコート層の膜厚より小さいものが好ましく、より好ましくは平均粒径0.01〜5μmである(測定は、例えば1μm以下のような細かいものはBET法、それより大きいものは沈降法による)。又、その使用量は、エマルションの安定性や塗膜の光沢を考慮すると、エネルギー線硬化性樹脂組成物の全重量に対し、通常0.5〜50重量%、好ましくは5〜30重量%の範囲である。特に、高速印字プリンターなど印字エネルギーの高いプリンターで使用する場合は効果が顕著である。
フィラー(E)として、例えば無機フィラーや有機フィラーがあげられる。無機フィラーとしては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、タルク、クレイ、カオリン、コロイダルシリカ、金属粉末等の無機粉末やこれらの無機粉末を表面処理したフィラー等が挙げられる。又、有機フィラーとしては、例えばスチレンマイクロボール、ポリスチレン樹脂ビーズ、アクリル系樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、ポリカーボネート樹脂ビーズ、ベンゾグアナミン−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、尿素−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、アスパラギン酸エステル誘導体、四フッ化樹脂、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アマイド、エポキシ樹脂パウダー、ポリエチレンパウダー、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイド、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、芳香族ポリエステル等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上併用で使用される。これらのフィラー(E)は、主として高速印字でのヘッドへのかす付着の防止やスティッキングの防止を目的として使用され、耐熱性やコストの点で、無機フィラーが好ましい。
また、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物中には、サーマルヘッドへのかす付着をより低下させるためにワックス(F)を含有させることができる。ワックス(F)としては、例えばカルナバワックス、パラフィンワックス、合成ワックス等が挙げられるが、サンノプコ(株)製のスリップエイドSL−140(軟化点90.6〜93.3℃)等のアクリル系の重合(高分子)ワックスが好ましい。その軟化点は87〜100℃程度が好ましく、特に89〜95℃程度が好ましい。又、その使用量は、エネルギー線硬化型樹脂組成物の全重量に対し、それぞれ、通常0〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜1重量%の範囲である。ワックス(F)の含有量が多すぎると光沢低下等の問題が生じる虞がある。
本発明においては前記した各成分の他に、単官能モノマー、2官能モノマー、先に挙げたオリゴマーのうち分子内に2個以下のアクリレートを有するもの等を、エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度調整を目的として使用しても良い。
単官能モノマーとしては、例えばN,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等があげられる。
又、2官能モノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、等があげられる。
オリゴマーのうち分子内に2個以下のアクリレートを有するオリゴマ−としては、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート等のうち、分子内に23個以下のアクリロイル基を有する化合物等が挙げられる。
これらの単官能モノマー、2官能モノマー、2個以下のアクリレートを有するオリゴマ−は、必要に応じて、エネルギー線硬化型樹脂組成物全重量中、0〜40重量%の範囲で含有される。
本発明において、エネルギー線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて感熱記録体表面の滑り性を向上させる目的で、流動パラフィン、植物油、動物油、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等を添加することができる。また、滑り性に加えて塗液のレベリング性を向上させる目的で、アクリル共重合体、シリコーンオイル、アルキル基、アミノ基、エポキシ基、フッ素基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、アクリル基、メタクリル基等で変性したシリコーンオイル、フッ素系界面活性剤等を添加することができる。また、乳化力を向上させる目的で、乳化・分散剤を少量添加することもできる。これらは単独あるいは併用で含有させることができる。
これらの成分は、エネルギー線硬化型樹脂組成物全重量中、それぞれ通常0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5%重量の範囲で必要に応じて含有される。
本発明において、エネルギー線硬化型樹脂組成物には、電子線で硬化させる場合は使用しなくてもよいが、紫外線で硬化させる場合は光重合開始剤を、又必要に応じ、光重合促進剤を使用する。使用しうる光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、ベンジルメチルケタール、チオキサントン、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、ベンジルなどが挙げられる。同じく、光重合促進剤としてはN−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアモン、ジエタノールアミン、P−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、N,N−ジエチル−P−アミノベンゾニトリル等のアミン系化合物や、トリ−n−ブチルホスフィン等のリン化合物、ヘキサクロロエタン等の塩素化合物、ミヒラーケトン等が挙げられ、これらは単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの重合開始剤および促進剤の含有割合は、エネルギー線硬化型樹脂組成物の全重量に対して、それぞれ通常0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
さらに、本発明において、エネルギー線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて、ポリマー、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤、蛍光染料などの添加剤を、その種類、使用量を適宜選択して併用することができる。
本発明のエマルションは、例えば次のようにして製造される。
すなわち、まず、式(1)及び/又は式(2)で表される親水性樹脂(C)と、分子内にエチレン性不飽和基と硫酸エステルアンモニウム塩基とを有する親水性樹脂(D)を水に溶解又は分散させ分散液又は溶液(a)を得る。他方、フィラー(E)は、分子中に少なくとも3個以上のアクリロイル基を有する化合物(A)および炭素数6以上の脂肪族(メタ)アクリレート(B)の中にボールミル、ロールミル、サンドミル、ディゾルバー等の分散機 により分散させて分散液(b)を得る。尚、必要に応じ光重合開始剤、光重合促進剤、その他の添加剤等も一緒に添加して分散液(b)を調製する。この際分散剤として、ポリカルボン酸系の分散剤やシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、変性シリコーンオイル等のシリコーン系分散剤や有機共重合体系の分散剤などを用いることは、フィラー(E)の分散状態を向上させる上で好ましい。こうして得られた(b)と前記(a)を混合し、ホモミキサー 、サンドミル等の高速撹拌機又はマイクロフルイダイザーを用いて乳化・分散させることにより本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションが得られる。ワックス(F)を使用する場合、その形態により、フィラー(E)と一緒に分子中に少なくとも3個以上のアクリロイル基を有する化合物(A)及び炭素数6以上の脂肪族(メタ)アクリレート(B)に添加するか、又ワックス(F)がその懸濁液で得られる場合は、前記(a)及び(b)と一緒に混合し、乳化、分散化の処理に供しても良い。
このようにして得られた本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション中、固形分重量が通常20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%含有されるように調製される。このエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションは経時的に安定であり、又、塗工に際し必要に応じて水で希釈した場合もエマルションは安定である。
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションの硬化膜を形成させる方法としては、バーコーター塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などによりそれ自体公知の方法で、紙、合成紙又はフィルム上に塗工し、乾燥し、次いで紫外線や電子線等のエネルギー線を照射して塗膜を硬化させる。その際、電子線により硬化させる場合、100〜500eVのエネルギーを有する電子線加速装置が好ましい。一方、紫外線により硬化させる場合、光源としてキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが決定されるが、高圧水銀灯を用いる場合、80〜120W/cmの光量を有したランプにより搬送速度20〜60m/分、1〜4回照射して硬化させるのが好ましい。
本発明の感熱記録体は、支持体上に設けられた感熱発色層の上に上記のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションを、オーバーコート剤として、オーバーコートしたものである。本発明において感熱発色層には通常無色ないし淡色の発色性化合物(ロイコ染料)及び熱時発色させうる顕色性化合物を主要な成分とし、以下に示すような結合剤及び必要に応じ増感剤、充填剤、その他の添加物等を含有する。
本発明における感熱発色層を形成するに当たっては、発色性化合物が1〜50重量%、顕色性化合物が5〜80重量%、結合剤が1〜90重量%、充填剤及び熱可融性化合物(増感剤)が各々0〜80重量%、その他滑剤、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤等が各々任意の割合で、例えば各々0〜30重量%使用される。尚、重量%は感熱発色層中に占める各成分の重量比である。
感熱発色層に使用する発色性化合物の例としては、一般に感圧記録紙や感熱記録紙に用いられているものであればよく、特に制限されない。具体例としては、例えばフルオラン系化合物、トリアリールメタン系化合物、スピロ系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、ラクタム系化合物、フルオレン系化合物等が挙げられる。
フルオラン系化合物としては、例えば3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−イソブチルエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−エチル−N−(3−エトキシプロピル)アミノ]−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−ヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(p−トルイジノエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−エトキシエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−(p−トルイジノエチルアミノ)−6−メチル−7−フェネチルフルオラン等が挙げられる。
トリアリールメタン系化合物としては、例えば3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名:クリスタルバイオレットラクトン又はCVL)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルアミノインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等が挙げられる。
スピロ系化合物としては、例えば3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3’−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、1,3,3−トリメチル−6−ニトロ−8’−メトキシスピロ(インドリン−2,2’−ベンゾピラン)等が、ジフェニルメタン系化合物としては、例えばN−ハロフェニル−ロイコオーラミン、4,4−ビス−ジメチルアミノフェニルベンズヒドリルベンジルエーテル、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等が、チアジン系化合物としては、例えばベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等が、ラクタム系化合物としては、例えばローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム等が、フルオレン系化合物としては、例えば3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)−6’−ジメチルアミノフタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)−6’−ピロリジノフタリド、3−ジメチルアミノ−6−ジエチルアミノフルオレンスピロ(9,3’)−6’−ピロリジノフタリド等が挙げられる。これらの発色性化合物は単独もしくは混合して用いられる。
顕色性化合物も一般に感圧記録紙や感熱記録紙に用いられているものであればよく、特に制限されない。具体例としては、例えばα−ナフトール、β−ナフトール、p−オクチルフェノール、4−t−オクチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA又はBPA)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−チオビスフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、2,2’−(2,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−クロロェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシ−4’−メトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−エトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−ブトキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、2,4−ジヒドロキシ−2’−メトキシベンズアニリド等のフェノール性化合物、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシフタル酸ジベンジル、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、5−ヒドロキシイソフタル酸エチル、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸等の芳香族カルボン酸誘導体、芳香族カルボン酸又はその金属塩等が挙げられる。
用いうる結合剤の例としては、例えばメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、デンプン及びその誘導体、カゼイン、ゼラチン、水溶性イソプレンゴム、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソ(又はジイソ)ブチレン/無水マレイン酸共重合体塩等の水溶性のもの或は、スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、カルボキシル化スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル酸系共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリル樹脂、アクリル/スチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリブチラール、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ビニルトルエン樹脂、ロジンエステル樹脂、コロイダルシリカとアクリル共重合体の複合体粒子等の疎水性高分子化合物又はそれらのエマルジョン等が挙げられる。
用いうる充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、クレー、アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂等がある。
用いうる熱可融性化合物の例としては、動植物性ワックス、合成ワックスなどのワックス類や高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸アニリド、芳香族アミンのアセチル化物、ナフタレン誘導体、芳香族エーテル、芳香族カルボン酸誘導体、芳香族スルホン酸エステル誘導体、炭酸又はシュウ酸ジエステル誘導体、ビフェニル誘導体、ターフェニル誘導体等、常温で固体であり約70℃以上の融点を有するものを使用することができる。この熱可融性化合物は、通常、発色感度を高める増感剤として作用する。
ワックス類としては、例えば木ろう、カルナウバろう、シェラック、パラフィン、モンタンろう、酸化パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン等が、高級脂肪酸としては、例えばステアリン酸、ベヘン酸等が、高級脂肪酸アミドとしては、例えばステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N−メチルステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等が、高級脂肪酸アニリドとしては、例えばステアリン酸アニリド、リノール酸アニリド等が、芳香族アミンのアセチル化物としては、例えばアセトトルイジド等が、ナフタレン誘導体としては、例えば1−ベンジルオキシナフタレン、2−ベンジルオキシナフタレン、1−ヒドロキシナフトエ酸フェニルエステル等が、芳香族エーテルとしては、例えば1,2−ジフェノキシエタン、1,4−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メトキシフェノキシ)エタン、1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、1−フェノキシ−2−(4−クロロフェノキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(4−メトキシフェノキシ)エタン等が、芳香族カルボン酸誘導体としては、例えばp−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジルエステル、テレフタル酸ジベンジルエステル等が、芳香族スルホン酸エステル誘導体としては、例えばp−トルエンスルホン酸フェニルエステル、フェニルメシチレンスルホナート、4−メチルフェニルメシチレンスルホナート等が、炭酸又はシュウ酸ジエステル誘導体としては、例えば炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジルエステル、シュウ酸ジ(4−メチルベンジル)エステル、シュウ酸ジ(4−クロロベンジル)エステル等が、ビフェニル誘導体としては、例えばp−ベンジルビフェニル、p−アリルオキシビフェニル等が、ターフェニル誘導体としては、例えばm−ターフェニル等が、各々例示される。
その他ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等の滑剤、各種の界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤等が必要に応じて加えられる。
前記材料を用いて例えば次のような方法によって、感熱発色層が調製される。即ち、常法によりまず発色性化合物、顕色性化合物をそれぞれ別々に結合剤あるいは必要に応じてその他の添加物と共にボールミル、アトライター、サンドミルなどの分散機にて粉砕、分散した後(粉砕、分散を湿式で行うときは通常水を媒体として用いる)、混合して感熱発色層塗布液を調製し、紙、プラスチックシート、合成紙等の支持体上に通常、乾燥時の重量で1〜20g/m2になるようにバーコーター、ブレードコーター等により塗布(発色性化合物と顕色性化合物の比は、通常乾燥重量比で2:1〜1:10である)、乾燥すればよい。
本発明において、感熱発色層とオーバーコート層の間もしくは感熱発色層と支持体の間に中間層を設けてもよい。中間層を設ける場合にはポリビニルアルコール、デンプン、スチレン・ブタジエンラテックス・アクリル樹脂エマルションなどの親水性または水分散性樹脂、さらにはポリエステル樹脂、アクリル樹脂と酢酸ビニル樹脂の共重合体などの溶剤可溶型樹脂を主成分とし、必要に応じて炭酸カルシウム、酸化亜鉛、タルク、カオリン、クレー、コロイダルシリカなどの充填剤、各種界面活性剤などの助剤を添加した塗工液を常法により塗工することにより設けることが出来る。
中間層を形成させる方法としては、例えば前記親水性樹脂、水分散性樹脂あるいは溶剤可溶型樹脂等を水あるいは必要に応じてその他の充填剤、界面活性剤と共にボールミル、アトライター、サンドミル等の分散機により分散した後(通常樹脂成分は分散に供される系の5〜80重量%含有せしめて分散が行われる)前記のようにして得られた感熱発色層の上に塗布量で2〜40g/m2になるようにバーコーター塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、ロールコーティング塗工等により塗工し、乾燥させることにより中間層が設けられる。
本発明の感熱記録体は、上記の方法により得られる感熱発色層又は中間層上に本発明の水中油滴型エマルションを、オーバーコート剤として、バーコーター塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの塗工方法で塗布し、乾燥し、次いで紫外線や電子線等のエネルギー線を照射して塗膜を硬化させ、オーバーコート層を形成させることにより得られる。オーバーコート層の厚さは1〜10μm程度(重さにすると1〜10g/m2)が好ましい。塗膜の硬化を電子線により行う場合、100〜500eVのエネルギーを有する電子線加速装置が好ましい。一方、紫外線により行う場合、光源としてキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが決定されるが、高圧水銀灯を用いる場合、80〜120W/cmの光量を有したランプにより搬送速度20〜60m/分、1〜4回照射して硬化させるのが好ましい。
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。尚、実施例において部は重量部を意味する。
実施例1
(1)感熱記録層の形成
下記組成の混合物をサンドグラインダーを用いて平均粒径が2μm以下になるように粉砕、分散化してそれぞれ[A]液、[B]液を調製した。
[A]液:3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン
25部
25%PVA水溶液 20部
水 55部
[B]液:2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン 25部
25%PVA水溶液 20部
水 55部
次いで各調製液を下記の割合で混合して感熱発色層塗布液を調製し、市販の合成紙(ユポFPG−80;王子油化合成紙)上に乾燥時の重量が約10g/m2となるように塗布、乾燥して感熱発色層の設けられた感熱記録シ−トを得た。
[A]液 8部
[B]液 16部
50%炭酸カルシウム分散液 20部
50%カルボキシル化スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス
6部
水 20部
(2)中間層の形成
PVA 25部
水 74部
コロイド性硅酸塩 1部
上記の組成物を混合して中間層用塗工液を調製し、(1)で得られた上記感熱記録シートの上に、乾燥塗工量が2g/m2 となる様に塗工、乾燥して中間層を有する感熱記録シートを得た。
(3)オーバーコート層の形成
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 26部
1,9−ノナンジオールジアクリレート 10部
光開始剤(イルガキュアー184;チバガイギー社) 4部
炭酸カルシウム(平均粒子径0.5μm以下) 4部
親水性樹脂(B)(アクアロンRN−50;第一工業製薬製
式(1)でR=ノニル基、n=50) 5部
親水性樹脂(C)(アクアロンHS−20;第一工業製薬製) 1部
水 50部
先ず、炭酸カルシウムをジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと1,9−ノナンジオールジアクリレートの混合液中に分散させ、次いで光開始剤を添加混合した。次に、アクアロンRN−50とアクアロンHS−20を溶解した水溶液を添加し、乳化分散して、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションを得た。この水中油滴型エマルションを、(2)で得られた中間層を有する感熱記録シートの上に、バーコーターにより乾燥塗工量が3g/m2 (膜厚3μm)となる様に塗工、乾燥した後に、80W/cmの高圧水銀灯を有する紫外線照射装置(GS ASE−20;日本電池社製)によりコンベアー速度20m/minで1回照射させることによりエネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させて、本発明のオーバーコート層の設けられた感熱記録体を得た。
実施例2
実施例1において、1,9−ノナンジオールジアクリレートの代わりにラウリルアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にして本発明の水中油滴型エマルション及び感熱記録体を得た。
実施例3
実施例2において、アクアロンRN−50の代わりに式(2)でR=ノニル基、n=80の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明の水中油滴型エマルション及び感熱記録体を得た。
実施例4
実施例2において、アクアロンHS−20の代わりにAntox MS−60(日本乳化剤(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明の水中油滴型エマルション及び感熱記録体を得た。
実施例5
実施例1において、重合ワックスエマルション(商品名;スリップエイドSL−140、サンノプコ株式会社製)を1部併用した以外は、実施例1と同様にして本発明の水中油滴型エマルション及び感熱記録体を得た。
比較例1 (特許文献2の実施例1)
実施例1において、1,9−ノナンジオールジアクリレートの代わりにEO変性ビスフェノールAジアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にして比較用の水中油滴型エマルション及び感熱記録体を得た。
この様にして得られた各感熱記録体を用い、市販のビデオグラフィックプリンター(UP−850;SONY製)で印字することにより、記録走行性を評価し、それぞれの結果を表1および表2に示した。また、評価基準は別記したものを採用した。
評価結果
表1
(1)エマルションの (2)エマルションの (3)光沢
安定性 機械的安定性
実施例1 ◎ ○ 79
〃 2 ◎ ○ 78
〃 3 ◎ ○ 80
〃 4 ◎ ○ 81
〃 5 ◎ ○ 79
比較例1 ◎ ○ 80


表2
(4)折り曲げ (5)スティッキング (6)ヘッドかす付着 (7)湿熱スティッキング
実施例1 ○ ◎ ○ ◎
〃 2 ○ ◎ ○ ○
〃 3 ○ ◎ ○ ○
〃 4 ○ ◎ ○ ◎
〃 5 ○ ◎ ○ ◎
比較例1 △ ○ △ △
評価基準
(1)エマルションの安定性
得られたエマルション組成物を室温にて1ヶ月間静置し、粒度分布(大塚電子(株)製LPA−3100)、離水状態および塗工膜の光沢の観察により安定性を評価した。
◎:粒度、液の状態、光沢ともに殆んど変化が無い。
○:若干の離水がみられるが再分散性が良好であり、粒度、光沢ともに殆んど変化が無い。
△:再分散性は良好であるが、粒度の変化、光沢の低下などが観られる。
×:油相と水相の分離がみられる。
(2)機械的安定性評価
得られたエマルション組成物を水で1:1に希釈し、ホモミキサーにて10000rpm/分の高速で処理し、エマルションの状態を観察して評価した。
○:処理後もエマルションの状態に変化がなかった。
△:処理後のエマルションに凝集物が僅かにみられた。
×:処理後にエマルションが壊れ分離した。
(3)光沢
得られた感熱記録体の光沢を測定した。測定はJIS Z8741に準じた60度鏡面光沢度をグロスチェッカーIR−320((株)堀場製作所製)を用いた。
(4)耐折り曲げ性
得られた感熱記録体を塗工面を外側にして折り曲げ、表面の割れを目視により観察した。
○:割れがなく良好
△:部分的に割れあり
×:全体に割れあり
(5)スティッキング評価基準
◎:全く音が無く円滑に記録が行えた。
○:音があるが円滑に記録が行えた。
△:ごく僅かに記録不良を起こした。
×:感熱記録体が円滑に走行せず記録不良を起こした。
(6)ヘッドかす評価基準
○:ヘッドかすが原因によるプリント抜けおよびカス付着が全くなかった。
△:連続印字の際のみプリント抜けおよびカス付着がごくたまに見られた。
×:プリント抜けおよびカス付着がみられた。
(7)湿熱スティッキング評価
得られた感熱記録体を40℃、80%RHに24時間保存し、直後に印字を行った。評価基準は(5)と同様とした。
表1および表2から明らかなように、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルションは安定性が良好である。これを感熱記録体のオーバーコート剤として使用した場合、得られたオーバーコート層つき感熱記録体は高光沢で耐折り曲げが良好で、高エネルギーでの印字の際のスティッキング、ヘッドへのかす付着が良好である。特に湿熱条件下での印字の際にスティキングが良好であることがわかる。

Claims (6)

  1. 分子中に少なくとも3個以上のアクリロイル基を有する化合物(A)、炭素数6以上の脂肪族(メタ)アクリレート(B)、式(1)又は式(2)で表わされる親水性樹脂(C)、
    Figure 2005023263
    (式(1)、式(2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜25のアルキル基を示し、nは平均値で1以上の数を示す。)
    分子内にエチレン性不飽和基と(ポリ)エチレンオキシド鎖と硫酸エステルアンモニウム塩基とを有する親水性樹脂(D)及びフィラー(E)を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション。
  2. 親水性樹脂(D)がフェノール残基を有し、エチレン性不飽和基が該フェノール残基又は(ポリ)エチレンオキシド鎖に結合する化合物である請求項1に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物の水中油滴型エマルション。
  3. フィラー(E)が無機フィラーで、その含有量がエネルギー線硬化型樹脂組成物中0.5〜50重量%である請求項1又は2に記載の水中油滴型エマルション。
  4. 軟化点87〜100℃のワックス(F)を含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の水中油滴型エマルション。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水中油滴型エマルションからなるオーバーコート剤。
  6. 支持体上に感熱発色層及びオーバーコート層を有する感熱記録体において、該オーバーコート層が請求項5に記載のオーバーコート剤の硬化膜層からなる前記感熱記録体。
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