JP2005020453A - 送信装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】直交ウェーブレット変換を用いた送信装置において、伝送効率の増大および通信容量の拡大を実現すること。
【解決手段】ウェーブレット変換によってツリー構造に表現された送信シンボルをウェーブレット変換に規定される所定の関数を用いて生成したウェーブレットパケットを利用して信号伝送を行う送信装置において、ウェーブレットパケットを同相成分とし、ウェーブレットパケットのヒルベルト変換対を直交成分とする信号を用いて変調信号を生成する。
【選択図】 図1
【解決手段】ウェーブレット変換によってツリー構造に表現された送信シンボルをウェーブレット変換に規定される所定の関数を用いて生成したウェーブレットパケットを利用して信号伝送を行う送信装置において、ウェーブレットパケットを同相成分とし、ウェーブレットパケットのヒルベルト変換対を直交成分とする信号を用いて変調信号を生成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、送信装置に関するものであり、特に、伝送効率の増加と通信容量の拡大とを実現する送信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディジタル通信技術の中でも、スペクトル拡散の技術を用いた符号分割多元接続(CDMA:Code Division Multiple Access)方式が脚光を浴びている。特に、このCDMA方式は、周波数分割多元接続(FDMA:Frequency Division Multiple Access)方式や、時分割多元接続(TDMA:Time Division Multiple Access)方式などに比べて、フェージングやマルチパスに対する耐性に優れており、また、通信容量の拡大が可能であるといった特性を有していることから、今後のさらなる発展が期待されている。
【0003】
一方、信号解析や信号処理の分野においては、この分野でよく用いられるウェーブレット変換という技術が存在する。このウェーブレット変換は、ウェーブレット関数と呼ばれる時間的にも周波数的にも局所化された相似関数を基底として用いることにより信号成分を階層的に表現するための技術である(詳細は、非特許文献1を参照)。
【0004】
このウェーブレット変換は、その性質上、一種のサブバンド符号化としての特徴を有しているので、マルチキャリア通信などのディジタル通信技術との親和性が高く、実際に、ディジタル通信に適用した公報等も幾つか存在する(例えば、特許文献1〜3など)。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−106920号公報(第2−6頁、図1など)
【特許文献2】
特開平8−126380号公報(第3−6頁、図1など)
【特許文献3】
WO99−4524号公報(第6−27頁、図7など)
【非特許文献1】
「Jiangfeng Wu, “Wavelet Packet Divition Multiplexing and Wavelet Packet Design Under Timing Error Effects,” IEEE Trans. Signal Processing, vol.45, no.12, pp.2877−2890, 1997」
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の各特許文献に開示されている直交ウェーブレット変換を用いた信号処理では、同相成分と直交成分とが完全に分離された形に変換される。すなわち、これらの同相成分および直交成分が周波数軸上でそれぞれ偶関数となり、アナログ変調におけるダブルサイドバンド(DSB)信号と同様な特性を有するものとみなされる。したがって、これらの特許文献に示された信号処理では、必ずしも周波数利用効率の高い伝送が行われているとは言い難かった。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであり、直交ウェーブレット変換を用いた送信装置において、変調信号の周波数占有率を低下させることで伝送効率の増大および通信容量の増加を実現する送信装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる送信装置にあっては、ウェーブレット変換によってツリー構造に表現された送信シンボルを該ウェーブレット変換に規定される所定の関数を用いて生成したウェーブレットパケットを利用して信号伝送を行う送信装置において、前記ウェーブレットパケットを同相成分とし、該ウェーブレットパケットのヒルベルト変換対を直交成分とする信号を用いて変調信号を生成することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、ウェーブレットパケットを同相成分とし、該ウェーブレットパケットのヒルベルト変換対を直交成分とする信号を用いて変調信号を生成することで、周波数成分の片側伝送を実現することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる送信装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる送信装置の主要部の構成を示すブロック図である。同図に示す送信装置は、情報源1に接続されるシンボルマッピング処理部2と、シンボルマッピング処理部2の出力が伝送される直並列変換器3と、直並列変換器3の出力が伝送される複数の関数選択部4と、直並列変換器3の出力と関数選択部4の個々の出力が伝送される複数の乗算器5と、これらの複数の乗算器5の出力がそれぞれ伝送される信号合成部6とを備えている。
【0012】
つぎに、この送信装置(主要部)の動作について説明する。図1において、シンボルマッピング処理部2には情報源1から一連のシンボルデータd(t)が送信される。シンボルマッピング処理部2は、例えば、QPSKや16QAMなどの変調方式によって決定される複素平面上にシンボルデータd(t)のマッピング処理を行う。直並列変換器3は、シンボルマッピング処理部2によって生成されたマッピング処理データdpmを複数の乗算器5にそれぞれ出力する。
【0013】
一方、直並列変換器3は、マッピング処理データdpmからウェーブレット変換によって生成される関数(以下、この関数を「ウェーブレットパケット」という。)の一つを特定するためのレベル情報(p)およびポジション情報(m)とを抽出し、パラレルに配置された関数選択部4に、これらのレベル情報(p)およびポジション(m)情報をそれぞれ出力する。なお、ウェーブレットパケットの生成には、「Harrの基底関数」や「Daubechiesの基底関数」と呼ばれる基底関数(直交関数)が用いられる。
【0014】
関数選択部4は、直並列変換器3から送信された関数(ツリー構造)のレベル情報(p)および関数のポジション情報(m)によって決定される基底関数を選択する。また、関数選択部4は、この選択された基底関数(一般的に偶関数である)に対して対称形を成す奇関数を生成し、さらに、この選択された基底関数を実数部とし、生成された奇関数を虚数部とする複素関数φC pm(t)を生成する。いま、このφC pm(t)の実数部、虚数部をそれぞれ、φI pm(t)、φQ pm(t)とすれば、φC pm(t)は次式で表すことができる。
φC pm(t)=φI pm(t)+jφQ pm(t) ・・・・・(1)
なお、φI pm(t)からφQ pm(t)を求める手法としては、ヒルベルト変換などを用いて行うのが好適である。
【0015】
乗算器5では、関数選択部4において選択された複素関数φC pm(t)と直並列変換器3から送信されたマッピング処理データdpmが複素乗算される。信号合成部6では、複数の乗算器5からそれぞれ出力された複素乗算信号が合成され、変調信号SW(t)が生成される。
【0016】
なお、上述の処理の中で、基底関数を選択する場合の関数のレベル情報(p)および関数のポジション情報(m)の選択は、伝送路の状態に応じて任意に決定することができ、選択の仕方を変化させることで柔軟な伝送レートを実現することができる。
【0017】
一方、図2は、実施の形態1にかかる受信装置の主要部の構成を示すブロック図である。この受信装置は、上述の送信装置から送信された変調信号SW(t)を受信してシンボルデータd(t)を再生するものである。同図に示す受信装置は、変調信号SW(t)を実数部と虚数部とにそれぞれ分離する信号分離部7、8と、信号分離部7、8のそれぞれ2つの分岐出力が伝送される相関処理部9と、相関処理部9の実数部出力および虚数部出力がそれぞれ伝送される複素合成部11と、複素合成部11の2つの出力が伝送される信号合成部12と、信号合成部12の出力が伝送され、シンボルデータd(t)を生成する復調器13とを備えている。
【0018】
つぎに、この受信装置の動作について説明する。図2において、信号分離部7、8は、入力された変調信号SW(t)を実数部と虚数部とにそれぞれ分離し、これらの分離出力をそれぞれ2つに分岐して相関処理部9に出力する。実数部側の一方の相関処理部9は、入力された変調信号SW(t)の実数部出力と送信側で用いられた複素関数φC pm(t)の実数部との間で内積などの相関処理を行い、実数部側の他方の相関処理部9は、入力された変調信号SW(t)の実数部出力と送信側で用いられた複素関数φC pm(t)の虚数部との間で相関処理を行う。これらの相関処理部9の出力は、複素合成部11で合成された後、信号合成部12に出力される。なお、虚数部側でも同様な処理が行われる。
【0019】
信号合成部12は、複素合成部11から出力された実数部および虚数部の複素合成出力を、等利得合成(EGC:Equall Gain Combining)や最大比合成(MRC:Maximum Ratio Combining)などの合成手段を用いて生成し、復調器13に出力する。復調器13は、この合成出力d’pmを復調して、シンボルデータd(t)を生成する。
【0020】
このシンボルデータd(t)の生成原理は、つぎのように説明することができる。送信装置から送信される変調信号SW(t)は、複素送信シンボルd=a+jbと式(1)とから、以下のように表すことができる。
【0021】
このように、変調信号における同相・直交成分である実数部/虚数部の両者ともに、d=a+jbの成分が含まれることになる。したがって、受信装置側では、これらの同相・直交成分から得られる受信信号を合成処理することにより、受信シンボルd’pmを得ることができる。
【0022】
ところで、本願発明のポイントは、ウェーブレット変換を用いた送受信において、正負片側の周波数成分のみを用いた伝送を行うことで、周波数の利用効率を拡大することにある。周波数スペクトルの正負いずれかの除去を行うためには、周波数軸上で奇関数成分を含んでいることが必要となるが、そのためには時間軸上では複素関数となる必要がある。そこで、この実施の形態の送信装置では、図1に示す関数選択部4において、複素関数φC pm(t)を生成するようにしている。また、関数選択部4では、複素関数φC pm(t)の実数部をウェーブレット変換によって生成されたウェーブレットパケットとし、虚数部をウェーブレットパケットのそれぞれのヒルベルト変換対とすることで、周波数成分の片側伝送を実現し、伝送効率の増大および通信容量の拡大を図っている。
【0023】
なお、低周波領域におけるヒルベルト変換の非完全直交性の影響を考え、低周波領域でのウェーブレットパケットと、そのヒルベルト変換対によって生成される複素関数(複素変調波)を用いないようにすることもできる。
【0024】
つぎに、上述した「周波数成分の片側伝送」がどのような原理で実現されているのかについて、ウェーブレット変換の原理を含め、具体的な例を用いて説明する。
【0025】
まず、ウェーブレット変換の原理等について説明する。ウェーブレット変換は、一種のサブバンド符号化であり、高周波域側から低周波域側への分解/合成の処理をツリー状に繰り返すオクターブ分割と呼ばれる処理を行っている。図3は、ウェーブレット変換によって生成されたウェーブレットパケットのツリー構造(3階層)の一例を示す図である。ところで、図3に例示されるようなツリー構造の各関数は、次式によって表すことができる。
【0026】
【数1】
【0027】
式(3)において、左辺左側の添字は、図3に示すツリー構造での「レベル(Level)」を示し、左辺右側の添字は、そのレベルでの「ポジション」を示している。また、φp,1(t)、 φp,2(t)は、それぞれレベルpにおける「スケーリング関数」および「ウェーブレット関数」である。また、h[n]、g[n]は長さLのQMF(Quadrature Mirror Filter)のペアであり、それぞれローパスフィルタ、ハイパスフィルタである。なお、このg[n]は、h[n]を用いて、以下のように表すことができる。
【0028】
【数2】
【0029】
また、φ0,1(t)のサポート長をTSとするとき、T0は、iを自然数として、以下のように表すことができる。
【0030】
【数3】
【0031】
ここで、図3に例示されているように、ツリー構造の各終端の関数φpm(t)は、式(1)の実数部でもある「ウェーブレットパケット」と呼ばれる関数であり、これらの関数同士は互いに直交関係にある。
【0032】
また、一般に、等価低域系における変調信号S(t)は、以下のように表すことができる。
【0033】
【数4】
【0034】
ここで、TSは1シンボルの長さであり、dnは一般的には複素送信シンボルを表している。特に、マルチキャリア信号でない場合には、式(6)においてN=1となる。
【0035】
いま、この実施の形態における変調信号SW(t)を、図3に示すツリー構造に則した形で表現するために、式(6)を、以下のように書き換える。
【0036】
【数5】
【0037】
ここで、Lは終端の関数を含むレベルであり、Mpはレベルpにおける終端であり、dpmはレベルp、ポジションmの関数に対応する送信シンボルを示している。
【0038】
式(7)に示されるdpm[k]、φC pm(t)は、それぞれ複素数の信号であり、図1の送信装置における直並列変換器3および関数選択部4の出力にそれぞれ対応している。また、式(7)そのものは変調信号SW(t)であり、図1の送信装置の信号合成部6の出力に対応している。
【0039】
図4は、一般的なウェーブレット変換によって生成された変調波の時間波形の一例を示す図であり、図5は、図4に示す変調波の周波数スペクトルを示す図である。特に、図4および5に示す波形は、Daubechiesの基底(N=8)を用いたときの、レベル3の階層での時間波形と周波数波形とをそれぞれ示している。また、図中の番号は各レベルにおけるポジションを示している。図4の各ポジションの波形に対応する図5の波形から明らかなように、各ポジションの波形の周波数成分には、正・負双方の成分が含まれている。
【0040】
一方、図6は、実施の形態1の送信装置において生成された変調波の時間波形(実数部)の一例を示す図であり、図7は、図6と同一の変調波の時間波形(虚数部)の一例を示す図である。また、図8は、図6および7に示す波形を複素合成した複素変調波の周波数スペクトルを示す図である。図4および5と同様に、図6〜図8に示す波形は、Daubechiesの基底(N=8)を用いたときの、レベル3の階層での時間波形および周波数波形をそれぞれ示している。なお、図6および7に示すように、「Pos.1」の波形が含まれていないのは、上述しているように、低周波領域でのヒルベルト変換の非完全直交性の影響を取り除くため、意図的に「Pos.1」の信号を用いないようにしているからである。このとき、図6および図7の各ポジションの波形に対応する図8の波形から明らかなように、各ポジションの波形の周波数成分には、正の周波数成分のみが含まれていることが分かる。
【0041】
図9は、従来技術からの改善点を模式的に説明するための図であり、同図(a)は従来技術によって生成された変調信号の周波数スペクトルを示す図であり、同図(b)は実施の形態1の変調信号の周波数スペクトルを示す図である。図5にも例示しているように、従来技術での周波数スペクトルは、正・負の両側に同等の周波数成分を有するのに対して、実施の形態1による周波数スペクトルは、図8にも例示しているように、正側の周波数スペクトルのみを有している。したがって、周波数成分の片側伝送を実現することができ、伝送効率の増大と通信容量の拡大とを図ることができる。
【0042】
つぎに、実施の形態1の送信装置により生成された変調信号と、一般的なマルチキャリア変調であるOFDM信号との周波数占有率を比較することを試みる。図10は、ウェーブレットパケットおよびOFDM信号の1サブキャリアの周波数占有率を比較するための図であり、図11は、ウェーブレットパケットおよびOFDM信号の1シンボルの時間占有率および周波数占有率を比較するための図である。
【0043】
図10において、OFDM信号に関しては、シンボル長をTSとすると、1サブキャリアあたりの周波数スペクトルはsinc関数となり、その主成分は[−1/TS,1/TS]の間に存在する。さらにOFDM信号のサブキャリアは、1/TSの間隔で配置されるので、OFDM信号のサブキャリアの周波数分解能は1/TSと見ることができる。
【0044】
一方、ウェーブレットパケットに関しては、1サブキャリア(一般的にはサブバンドと表現しているが、ここではOFDM信号の表現法と整合させている。)あたり、周波数軸上で[−16/TS,16/TS]の間に存在するので、周波数分解能は15/TSである。よって、同じシンボル長で考えた場合、ウェーブレットパケットはOFDM信号よりも15倍の帯域を占めることになる。ただし、以上の考察は、Daubechies(N=8)の場合の考察であり、一般的にはQMFの長さ(length)によって依存した周波数分解能となる。
【0045】
ところが、ウェーブレットパケットにおいては、一般的に、以下に示す式が成立する。
【0046】
【数6】
【0047】
ここで、<,>は関数の内積を示し、δはクロネッカーのデルタを示している。式(8)と式(5)とから明らかなように、ウェーブレットパケットではTS/Lの倍数の時間差においては時間軸上での重複を許されることが分かる。すなわち、図11にも示しているように、Daubechies(N=8)の場合では、OFDM信号の1シンボル区間に、ウェーブレットパケットの15シンボルを多重して送信することができる。
【0048】
以上の考察により、OFDM信号とウェーブレットパケットとでは、1シンボルあたりの時間占有率および周波数占有率は同等とみなすことができる。この事実と、実施の形態1で生成された変調信号がウェーブレットパケットのみを用いた従来技術による変調信号よりも1/2の周波数占有率を有するという事実とを合わせて考慮すれば、この実施の形態の送信装置によって生成された変調信号は、OFDM信号と比較しても、1/2の周波数占有率であることが明らかとなる。
【0049】
なお、上記の説明では、ディジタル変調の変調方式を特に規定していないことからも明らかなように、QAM変調、PSK変調などの変調方式に依存することもない。また、周波数占有帯域を中心に信号伝送に関する技術として説明してきたが、これに限定されるものではなく、例えば、多元接続方式の技術としても適用することができ、この場合においても同様な効果を得ることができる。
【0050】
また、ウェーブレット変換は、高周波域側から低周波域側への分解/合成の処理をツリー状に繰り返す処理であることは上述したとおりである。すなわち、一般的なウェーブレット変換は、分解/合成の操作を低周波成分に適用することを意味している。その理由は、ウェーブレット変換が画像処理などの分野で発展してきた経緯もあり、高周波域で生ずるブロック歪みや、モスキート雑音を防止する観点に起因している。しかしながら、この実施の形態の送信装置においては、この制限を受けるものではなく、分解/合成の操作を高周波成分に適用することも可能である。
【0051】
以上説明したように、この実施の形態の送信装置によれば、ウェーブレットパケットを同相成分とし、ウェーブレットパケットのヒルベルト変換対を直交成分とする信号を用いて変調信号を生成するようにしているので、変調信号の周波数占有率を低下させることができ、伝送効率の増大と通信容量の増加とを実現することができる。
【0052】
また、この実施の形態の送信装置によれば、ウェーブレット変換の分解/合成の処理を送信シンボルに含まれる高周波成分にも適用するようにしているので、変調信号の周波数占有率を低下させることができ、伝送効率の増大と通信容量の増加とを実現することができる。
【0053】
また、この実施の形態の送信装置によれば、ウェーブレットパケットを実数部に有し、ウェーブレットパケットをヒルベルト変換することによって周波数軸上に奇関数として得られる関数を虚数部に有する複素関数に基づいて複素変調信号を生成するようにしているので、変調信号の周波数占有率を低下させることができ、伝送効率の増大と通信容量の増加とを実現することができる。
【0054】
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1の送/受信装置を図1におよびを多元接続方式の送/受信装置として用いるものである。したがって実施の形態2の送信装置と受信装置の構成は、それぞれ、図1に示す送信装置法および図2に示す受信装置の構成と同一である。
【0055】
図1に示す送信装置法および図2に示す受信装置では、変調信号とする複素関数を選択する際、「p」と「m」とが与えられるが、この2つの値をユーザの固有の値として用いるとともに、これらの「p」および「m」の値をどのユーザに対して割り振るのかを受信装置との間で取り決めておくだけで、「p」と「m」の組合わせの数だけの同時通信が可能となる。
【0056】
なお、この場合においても実施の形態1と同一の送信装置および受信装置を用いているので、多元接続数の拡大を図ることができる。
【0057】
以上説明したように、この実施の形態の送信装置によれば、実施の形態1の送信装置を用い、さらに関数選択部に与える関数選択信号を任意に変化させることで柔軟な伝送レートを実現するようにしているので、周波数利用効率のよい多元接続を実現することができる。
【0058】
実施の形態3.
図12は、実施の形態3にかかる送信装置の主要部の構成を示すブロック図である。同図に示す送信装置は、図1に示す実施の形態1の送信装置に、多元接続を実現するための拡散部20および拡散符号生成器21をさらに備えている。なお、その他の構成は図1に示す各処理部と同一または同等の構成であり、これらの部分には同一符号を付している。
【0059】
また、図13は、実施の形態3にかかる受信装置の主要部の構成を示すブロック図である。同図に示す受信装置は、図2に示す実施の形態1の受信装置に、この実施の形態の送信装置で実現する多元接続のための機能を付加するものであり、実施の形態1の構成に加えて逆拡散部22および拡散符号生成器23を備えている。なお、その他の構成は図2に示す各処理部と同一または同等の構成であり、これらの部分には同一符号を付している。
【0060】
送信装置側では、直並列変換器3入力される前に入力シンボルは全サブキャリア上、すなわち周波数上に拡散される。よって、各ユーザが用いる変調信号の複素関数を決定する「p」および「m」は、同一ユーザでは同一のものを用い、これらの「p」および「m」によって決定される拡散符号の系列を用いてユーザ識別を行うことができる。つまり、この実施の形態は、実施の形態1による信号変調方式に符号分割多重多元接続(CDMA)を適用した場合の形態と捉えることができる。
【0061】
以上説明したように、この実施の形態の送信装置によれば、実施の形態1の送信装置を用い、さらに拡散符号の系列を用いてユーザ識別を行うようにしているので、周波数利用効率のよい多元接続を実現することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明によれば、ウェーブレットパケットを同相成分とし、ウェーブレットパケットのヒルベルト変換対を直交成分とする信号を用いて変調信号を生成するようにしているので、変調信号の周波数占有率を低下させることができ、伝送効率の増大と通信容量の増加とを実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1にかかる送信装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる受信装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】ウェーブレット変換によって生成されたウェーブレットパケットのツリー構造(3階層)の一例を示す図である。
【図4】一般的なウェーブレット変換によって生成された変調波の時間波形の一例を示す図である。
【図5】図4に示す変調波の周波数スペクトルを示す図である。
【図6】実施の形態1の送信装置において生成された変調波の時間波形(実数部)の一例を示す図である。
【図7】図6と同一の変調波の時間波形(虚数部)の一例を示す図である。
【図8】図6および7に示す波形を複素合成した複素変調波の周波数スペクトルを示す図である。
【図9】従来技術からの改善点を模式的に説明するための図であり、(a)は従来技術によって生成された変調信号の周波数スペクトルを示す図であり、(b)は実施の形態1の変調信号の周波数スペクトルを示す図である。
【図10】ウェーブレットパケットおよびOFDM信号の1サブキャリアの周波数占有率を比較するための図である。
【図11】ウェーブレットパケットおよびOFDM信号の1シンボルの時間占有率および周波数占有率を比較するための図である。
【図12】実施の形態3にかかる送信装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図13】実施の形態3にかかる受信装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 情報源、2 シンボルマッピング処理部、3 直並列変換器、4 関数選択部、5 乗算器、6 信号合成部、7,8 信号分離部、9 相関処理部、11 複素合成部、12 信号合成部、13 復調器、20 拡散部、21 拡散符号生成器、22 逆拡散部、23 拡散符号生成器。
【発明の属する技術分野】
この発明は、送信装置に関するものであり、特に、伝送効率の増加と通信容量の拡大とを実現する送信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディジタル通信技術の中でも、スペクトル拡散の技術を用いた符号分割多元接続(CDMA:Code Division Multiple Access)方式が脚光を浴びている。特に、このCDMA方式は、周波数分割多元接続(FDMA:Frequency Division Multiple Access)方式や、時分割多元接続(TDMA:Time Division Multiple Access)方式などに比べて、フェージングやマルチパスに対する耐性に優れており、また、通信容量の拡大が可能であるといった特性を有していることから、今後のさらなる発展が期待されている。
【0003】
一方、信号解析や信号処理の分野においては、この分野でよく用いられるウェーブレット変換という技術が存在する。このウェーブレット変換は、ウェーブレット関数と呼ばれる時間的にも周波数的にも局所化された相似関数を基底として用いることにより信号成分を階層的に表現するための技術である(詳細は、非特許文献1を参照)。
【0004】
このウェーブレット変換は、その性質上、一種のサブバンド符号化としての特徴を有しているので、マルチキャリア通信などのディジタル通信技術との親和性が高く、実際に、ディジタル通信に適用した公報等も幾つか存在する(例えば、特許文献1〜3など)。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−106920号公報(第2−6頁、図1など)
【特許文献2】
特開平8−126380号公報(第3−6頁、図1など)
【特許文献3】
WO99−4524号公報(第6−27頁、図7など)
【非特許文献1】
「Jiangfeng Wu, “Wavelet Packet Divition Multiplexing and Wavelet Packet Design Under Timing Error Effects,” IEEE Trans. Signal Processing, vol.45, no.12, pp.2877−2890, 1997」
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の各特許文献に開示されている直交ウェーブレット変換を用いた信号処理では、同相成分と直交成分とが完全に分離された形に変換される。すなわち、これらの同相成分および直交成分が周波数軸上でそれぞれ偶関数となり、アナログ変調におけるダブルサイドバンド(DSB)信号と同様な特性を有するものとみなされる。したがって、これらの特許文献に示された信号処理では、必ずしも周波数利用効率の高い伝送が行われているとは言い難かった。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであり、直交ウェーブレット変換を用いた送信装置において、変調信号の周波数占有率を低下させることで伝送効率の増大および通信容量の増加を実現する送信装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる送信装置にあっては、ウェーブレット変換によってツリー構造に表現された送信シンボルを該ウェーブレット変換に規定される所定の関数を用いて生成したウェーブレットパケットを利用して信号伝送を行う送信装置において、前記ウェーブレットパケットを同相成分とし、該ウェーブレットパケットのヒルベルト変換対を直交成分とする信号を用いて変調信号を生成することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、ウェーブレットパケットを同相成分とし、該ウェーブレットパケットのヒルベルト変換対を直交成分とする信号を用いて変調信号を生成することで、周波数成分の片側伝送を実現することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる送信装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる送信装置の主要部の構成を示すブロック図である。同図に示す送信装置は、情報源1に接続されるシンボルマッピング処理部2と、シンボルマッピング処理部2の出力が伝送される直並列変換器3と、直並列変換器3の出力が伝送される複数の関数選択部4と、直並列変換器3の出力と関数選択部4の個々の出力が伝送される複数の乗算器5と、これらの複数の乗算器5の出力がそれぞれ伝送される信号合成部6とを備えている。
【0012】
つぎに、この送信装置(主要部)の動作について説明する。図1において、シンボルマッピング処理部2には情報源1から一連のシンボルデータd(t)が送信される。シンボルマッピング処理部2は、例えば、QPSKや16QAMなどの変調方式によって決定される複素平面上にシンボルデータd(t)のマッピング処理を行う。直並列変換器3は、シンボルマッピング処理部2によって生成されたマッピング処理データdpmを複数の乗算器5にそれぞれ出力する。
【0013】
一方、直並列変換器3は、マッピング処理データdpmからウェーブレット変換によって生成される関数(以下、この関数を「ウェーブレットパケット」という。)の一つを特定するためのレベル情報(p)およびポジション情報(m)とを抽出し、パラレルに配置された関数選択部4に、これらのレベル情報(p)およびポジション(m)情報をそれぞれ出力する。なお、ウェーブレットパケットの生成には、「Harrの基底関数」や「Daubechiesの基底関数」と呼ばれる基底関数(直交関数)が用いられる。
【0014】
関数選択部4は、直並列変換器3から送信された関数(ツリー構造)のレベル情報(p)および関数のポジション情報(m)によって決定される基底関数を選択する。また、関数選択部4は、この選択された基底関数(一般的に偶関数である)に対して対称形を成す奇関数を生成し、さらに、この選択された基底関数を実数部とし、生成された奇関数を虚数部とする複素関数φC pm(t)を生成する。いま、このφC pm(t)の実数部、虚数部をそれぞれ、φI pm(t)、φQ pm(t)とすれば、φC pm(t)は次式で表すことができる。
φC pm(t)=φI pm(t)+jφQ pm(t) ・・・・・(1)
なお、φI pm(t)からφQ pm(t)を求める手法としては、ヒルベルト変換などを用いて行うのが好適である。
【0015】
乗算器5では、関数選択部4において選択された複素関数φC pm(t)と直並列変換器3から送信されたマッピング処理データdpmが複素乗算される。信号合成部6では、複数の乗算器5からそれぞれ出力された複素乗算信号が合成され、変調信号SW(t)が生成される。
【0016】
なお、上述の処理の中で、基底関数を選択する場合の関数のレベル情報(p)および関数のポジション情報(m)の選択は、伝送路の状態に応じて任意に決定することができ、選択の仕方を変化させることで柔軟な伝送レートを実現することができる。
【0017】
一方、図2は、実施の形態1にかかる受信装置の主要部の構成を示すブロック図である。この受信装置は、上述の送信装置から送信された変調信号SW(t)を受信してシンボルデータd(t)を再生するものである。同図に示す受信装置は、変調信号SW(t)を実数部と虚数部とにそれぞれ分離する信号分離部7、8と、信号分離部7、8のそれぞれ2つの分岐出力が伝送される相関処理部9と、相関処理部9の実数部出力および虚数部出力がそれぞれ伝送される複素合成部11と、複素合成部11の2つの出力が伝送される信号合成部12と、信号合成部12の出力が伝送され、シンボルデータd(t)を生成する復調器13とを備えている。
【0018】
つぎに、この受信装置の動作について説明する。図2において、信号分離部7、8は、入力された変調信号SW(t)を実数部と虚数部とにそれぞれ分離し、これらの分離出力をそれぞれ2つに分岐して相関処理部9に出力する。実数部側の一方の相関処理部9は、入力された変調信号SW(t)の実数部出力と送信側で用いられた複素関数φC pm(t)の実数部との間で内積などの相関処理を行い、実数部側の他方の相関処理部9は、入力された変調信号SW(t)の実数部出力と送信側で用いられた複素関数φC pm(t)の虚数部との間で相関処理を行う。これらの相関処理部9の出力は、複素合成部11で合成された後、信号合成部12に出力される。なお、虚数部側でも同様な処理が行われる。
【0019】
信号合成部12は、複素合成部11から出力された実数部および虚数部の複素合成出力を、等利得合成(EGC:Equall Gain Combining)や最大比合成(MRC:Maximum Ratio Combining)などの合成手段を用いて生成し、復調器13に出力する。復調器13は、この合成出力d’pmを復調して、シンボルデータd(t)を生成する。
【0020】
このシンボルデータd(t)の生成原理は、つぎのように説明することができる。送信装置から送信される変調信号SW(t)は、複素送信シンボルd=a+jbと式(1)とから、以下のように表すことができる。
【0021】
このように、変調信号における同相・直交成分である実数部/虚数部の両者ともに、d=a+jbの成分が含まれることになる。したがって、受信装置側では、これらの同相・直交成分から得られる受信信号を合成処理することにより、受信シンボルd’pmを得ることができる。
【0022】
ところで、本願発明のポイントは、ウェーブレット変換を用いた送受信において、正負片側の周波数成分のみを用いた伝送を行うことで、周波数の利用効率を拡大することにある。周波数スペクトルの正負いずれかの除去を行うためには、周波数軸上で奇関数成分を含んでいることが必要となるが、そのためには時間軸上では複素関数となる必要がある。そこで、この実施の形態の送信装置では、図1に示す関数選択部4において、複素関数φC pm(t)を生成するようにしている。また、関数選択部4では、複素関数φC pm(t)の実数部をウェーブレット変換によって生成されたウェーブレットパケットとし、虚数部をウェーブレットパケットのそれぞれのヒルベルト変換対とすることで、周波数成分の片側伝送を実現し、伝送効率の増大および通信容量の拡大を図っている。
【0023】
なお、低周波領域におけるヒルベルト変換の非完全直交性の影響を考え、低周波領域でのウェーブレットパケットと、そのヒルベルト変換対によって生成される複素関数(複素変調波)を用いないようにすることもできる。
【0024】
つぎに、上述した「周波数成分の片側伝送」がどのような原理で実現されているのかについて、ウェーブレット変換の原理を含め、具体的な例を用いて説明する。
【0025】
まず、ウェーブレット変換の原理等について説明する。ウェーブレット変換は、一種のサブバンド符号化であり、高周波域側から低周波域側への分解/合成の処理をツリー状に繰り返すオクターブ分割と呼ばれる処理を行っている。図3は、ウェーブレット変換によって生成されたウェーブレットパケットのツリー構造(3階層)の一例を示す図である。ところで、図3に例示されるようなツリー構造の各関数は、次式によって表すことができる。
【0026】
【数1】
【0027】
式(3)において、左辺左側の添字は、図3に示すツリー構造での「レベル(Level)」を示し、左辺右側の添字は、そのレベルでの「ポジション」を示している。また、φp,1(t)、 φp,2(t)は、それぞれレベルpにおける「スケーリング関数」および「ウェーブレット関数」である。また、h[n]、g[n]は長さLのQMF(Quadrature Mirror Filter)のペアであり、それぞれローパスフィルタ、ハイパスフィルタである。なお、このg[n]は、h[n]を用いて、以下のように表すことができる。
【0028】
【数2】
【0029】
また、φ0,1(t)のサポート長をTSとするとき、T0は、iを自然数として、以下のように表すことができる。
【0030】
【数3】
【0031】
ここで、図3に例示されているように、ツリー構造の各終端の関数φpm(t)は、式(1)の実数部でもある「ウェーブレットパケット」と呼ばれる関数であり、これらの関数同士は互いに直交関係にある。
【0032】
また、一般に、等価低域系における変調信号S(t)は、以下のように表すことができる。
【0033】
【数4】
【0034】
ここで、TSは1シンボルの長さであり、dnは一般的には複素送信シンボルを表している。特に、マルチキャリア信号でない場合には、式(6)においてN=1となる。
【0035】
いま、この実施の形態における変調信号SW(t)を、図3に示すツリー構造に則した形で表現するために、式(6)を、以下のように書き換える。
【0036】
【数5】
【0037】
ここで、Lは終端の関数を含むレベルであり、Mpはレベルpにおける終端であり、dpmはレベルp、ポジションmの関数に対応する送信シンボルを示している。
【0038】
式(7)に示されるdpm[k]、φC pm(t)は、それぞれ複素数の信号であり、図1の送信装置における直並列変換器3および関数選択部4の出力にそれぞれ対応している。また、式(7)そのものは変調信号SW(t)であり、図1の送信装置の信号合成部6の出力に対応している。
【0039】
図4は、一般的なウェーブレット変換によって生成された変調波の時間波形の一例を示す図であり、図5は、図4に示す変調波の周波数スペクトルを示す図である。特に、図4および5に示す波形は、Daubechiesの基底(N=8)を用いたときの、レベル3の階層での時間波形と周波数波形とをそれぞれ示している。また、図中の番号は各レベルにおけるポジションを示している。図4の各ポジションの波形に対応する図5の波形から明らかなように、各ポジションの波形の周波数成分には、正・負双方の成分が含まれている。
【0040】
一方、図6は、実施の形態1の送信装置において生成された変調波の時間波形(実数部)の一例を示す図であり、図7は、図6と同一の変調波の時間波形(虚数部)の一例を示す図である。また、図8は、図6および7に示す波形を複素合成した複素変調波の周波数スペクトルを示す図である。図4および5と同様に、図6〜図8に示す波形は、Daubechiesの基底(N=8)を用いたときの、レベル3の階層での時間波形および周波数波形をそれぞれ示している。なお、図6および7に示すように、「Pos.1」の波形が含まれていないのは、上述しているように、低周波領域でのヒルベルト変換の非完全直交性の影響を取り除くため、意図的に「Pos.1」の信号を用いないようにしているからである。このとき、図6および図7の各ポジションの波形に対応する図8の波形から明らかなように、各ポジションの波形の周波数成分には、正の周波数成分のみが含まれていることが分かる。
【0041】
図9は、従来技術からの改善点を模式的に説明するための図であり、同図(a)は従来技術によって生成された変調信号の周波数スペクトルを示す図であり、同図(b)は実施の形態1の変調信号の周波数スペクトルを示す図である。図5にも例示しているように、従来技術での周波数スペクトルは、正・負の両側に同等の周波数成分を有するのに対して、実施の形態1による周波数スペクトルは、図8にも例示しているように、正側の周波数スペクトルのみを有している。したがって、周波数成分の片側伝送を実現することができ、伝送効率の増大と通信容量の拡大とを図ることができる。
【0042】
つぎに、実施の形態1の送信装置により生成された変調信号と、一般的なマルチキャリア変調であるOFDM信号との周波数占有率を比較することを試みる。図10は、ウェーブレットパケットおよびOFDM信号の1サブキャリアの周波数占有率を比較するための図であり、図11は、ウェーブレットパケットおよびOFDM信号の1シンボルの時間占有率および周波数占有率を比較するための図である。
【0043】
図10において、OFDM信号に関しては、シンボル長をTSとすると、1サブキャリアあたりの周波数スペクトルはsinc関数となり、その主成分は[−1/TS,1/TS]の間に存在する。さらにOFDM信号のサブキャリアは、1/TSの間隔で配置されるので、OFDM信号のサブキャリアの周波数分解能は1/TSと見ることができる。
【0044】
一方、ウェーブレットパケットに関しては、1サブキャリア(一般的にはサブバンドと表現しているが、ここではOFDM信号の表現法と整合させている。)あたり、周波数軸上で[−16/TS,16/TS]の間に存在するので、周波数分解能は15/TSである。よって、同じシンボル長で考えた場合、ウェーブレットパケットはOFDM信号よりも15倍の帯域を占めることになる。ただし、以上の考察は、Daubechies(N=8)の場合の考察であり、一般的にはQMFの長さ(length)によって依存した周波数分解能となる。
【0045】
ところが、ウェーブレットパケットにおいては、一般的に、以下に示す式が成立する。
【0046】
【数6】
【0047】
ここで、<,>は関数の内積を示し、δはクロネッカーのデルタを示している。式(8)と式(5)とから明らかなように、ウェーブレットパケットではTS/Lの倍数の時間差においては時間軸上での重複を許されることが分かる。すなわち、図11にも示しているように、Daubechies(N=8)の場合では、OFDM信号の1シンボル区間に、ウェーブレットパケットの15シンボルを多重して送信することができる。
【0048】
以上の考察により、OFDM信号とウェーブレットパケットとでは、1シンボルあたりの時間占有率および周波数占有率は同等とみなすことができる。この事実と、実施の形態1で生成された変調信号がウェーブレットパケットのみを用いた従来技術による変調信号よりも1/2の周波数占有率を有するという事実とを合わせて考慮すれば、この実施の形態の送信装置によって生成された変調信号は、OFDM信号と比較しても、1/2の周波数占有率であることが明らかとなる。
【0049】
なお、上記の説明では、ディジタル変調の変調方式を特に規定していないことからも明らかなように、QAM変調、PSK変調などの変調方式に依存することもない。また、周波数占有帯域を中心に信号伝送に関する技術として説明してきたが、これに限定されるものではなく、例えば、多元接続方式の技術としても適用することができ、この場合においても同様な効果を得ることができる。
【0050】
また、ウェーブレット変換は、高周波域側から低周波域側への分解/合成の処理をツリー状に繰り返す処理であることは上述したとおりである。すなわち、一般的なウェーブレット変換は、分解/合成の操作を低周波成分に適用することを意味している。その理由は、ウェーブレット変換が画像処理などの分野で発展してきた経緯もあり、高周波域で生ずるブロック歪みや、モスキート雑音を防止する観点に起因している。しかしながら、この実施の形態の送信装置においては、この制限を受けるものではなく、分解/合成の操作を高周波成分に適用することも可能である。
【0051】
以上説明したように、この実施の形態の送信装置によれば、ウェーブレットパケットを同相成分とし、ウェーブレットパケットのヒルベルト変換対を直交成分とする信号を用いて変調信号を生成するようにしているので、変調信号の周波数占有率を低下させることができ、伝送効率の増大と通信容量の増加とを実現することができる。
【0052】
また、この実施の形態の送信装置によれば、ウェーブレット変換の分解/合成の処理を送信シンボルに含まれる高周波成分にも適用するようにしているので、変調信号の周波数占有率を低下させることができ、伝送効率の増大と通信容量の増加とを実現することができる。
【0053】
また、この実施の形態の送信装置によれば、ウェーブレットパケットを実数部に有し、ウェーブレットパケットをヒルベルト変換することによって周波数軸上に奇関数として得られる関数を虚数部に有する複素関数に基づいて複素変調信号を生成するようにしているので、変調信号の周波数占有率を低下させることができ、伝送効率の増大と通信容量の増加とを実現することができる。
【0054】
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1の送/受信装置を図1におよびを多元接続方式の送/受信装置として用いるものである。したがって実施の形態2の送信装置と受信装置の構成は、それぞれ、図1に示す送信装置法および図2に示す受信装置の構成と同一である。
【0055】
図1に示す送信装置法および図2に示す受信装置では、変調信号とする複素関数を選択する際、「p」と「m」とが与えられるが、この2つの値をユーザの固有の値として用いるとともに、これらの「p」および「m」の値をどのユーザに対して割り振るのかを受信装置との間で取り決めておくだけで、「p」と「m」の組合わせの数だけの同時通信が可能となる。
【0056】
なお、この場合においても実施の形態1と同一の送信装置および受信装置を用いているので、多元接続数の拡大を図ることができる。
【0057】
以上説明したように、この実施の形態の送信装置によれば、実施の形態1の送信装置を用い、さらに関数選択部に与える関数選択信号を任意に変化させることで柔軟な伝送レートを実現するようにしているので、周波数利用効率のよい多元接続を実現することができる。
【0058】
実施の形態3.
図12は、実施の形態3にかかる送信装置の主要部の構成を示すブロック図である。同図に示す送信装置は、図1に示す実施の形態1の送信装置に、多元接続を実現するための拡散部20および拡散符号生成器21をさらに備えている。なお、その他の構成は図1に示す各処理部と同一または同等の構成であり、これらの部分には同一符号を付している。
【0059】
また、図13は、実施の形態3にかかる受信装置の主要部の構成を示すブロック図である。同図に示す受信装置は、図2に示す実施の形態1の受信装置に、この実施の形態の送信装置で実現する多元接続のための機能を付加するものであり、実施の形態1の構成に加えて逆拡散部22および拡散符号生成器23を備えている。なお、その他の構成は図2に示す各処理部と同一または同等の構成であり、これらの部分には同一符号を付している。
【0060】
送信装置側では、直並列変換器3入力される前に入力シンボルは全サブキャリア上、すなわち周波数上に拡散される。よって、各ユーザが用いる変調信号の複素関数を決定する「p」および「m」は、同一ユーザでは同一のものを用い、これらの「p」および「m」によって決定される拡散符号の系列を用いてユーザ識別を行うことができる。つまり、この実施の形態は、実施の形態1による信号変調方式に符号分割多重多元接続(CDMA)を適用した場合の形態と捉えることができる。
【0061】
以上説明したように、この実施の形態の送信装置によれば、実施の形態1の送信装置を用い、さらに拡散符号の系列を用いてユーザ識別を行うようにしているので、周波数利用効率のよい多元接続を実現することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明によれば、ウェーブレットパケットを同相成分とし、ウェーブレットパケットのヒルベルト変換対を直交成分とする信号を用いて変調信号を生成するようにしているので、変調信号の周波数占有率を低下させることができ、伝送効率の増大と通信容量の増加とを実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1にかかる送信装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる受信装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】ウェーブレット変換によって生成されたウェーブレットパケットのツリー構造(3階層)の一例を示す図である。
【図4】一般的なウェーブレット変換によって生成された変調波の時間波形の一例を示す図である。
【図5】図4に示す変調波の周波数スペクトルを示す図である。
【図6】実施の形態1の送信装置において生成された変調波の時間波形(実数部)の一例を示す図である。
【図7】図6と同一の変調波の時間波形(虚数部)の一例を示す図である。
【図8】図6および7に示す波形を複素合成した複素変調波の周波数スペクトルを示す図である。
【図9】従来技術からの改善点を模式的に説明するための図であり、(a)は従来技術によって生成された変調信号の周波数スペクトルを示す図であり、(b)は実施の形態1の変調信号の周波数スペクトルを示す図である。
【図10】ウェーブレットパケットおよびOFDM信号の1サブキャリアの周波数占有率を比較するための図である。
【図11】ウェーブレットパケットおよびOFDM信号の1シンボルの時間占有率および周波数占有率を比較するための図である。
【図12】実施の形態3にかかる送信装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図13】実施の形態3にかかる受信装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 情報源、2 シンボルマッピング処理部、3 直並列変換器、4 関数選択部、5 乗算器、6 信号合成部、7,8 信号分離部、9 相関処理部、11 複素合成部、12 信号合成部、13 復調器、20 拡散部、21 拡散符号生成器、22 逆拡散部、23 拡散符号生成器。
Claims (7)
- ウェーブレット変換によってツリー構造に表現された送信シンボルを該ウェーブレット変換に規定される所定の関数を用いて生成したウェーブレットパケットを利用して信号伝送を行う送信装置において、
前記ウェーブレットパケットを同相成分とし、該ウェーブレットパケットのヒルベルト変換対を直交成分とする信号を用いて変調信号を生成することを特徴とする送信装置。 - ウェーブレット変換によってツリー構造に表現された送信シンボルを該ウェーブレット変換に規定される所定の関数を用いて生成したウェーブレットパケットを利用して信号伝送を行う送信装置において、
前記ウェーブレット変換の分解/合成の処理を前記送信シンボルに含まれる高周波成分にも適用することを特徴とする送信装置。 - ウェーブレット変換によってツリー構造に表現された送信シンボルを該ウェーブレット変換に規定される所定の関数を用いて生成したウェーブレットパケットを利用して信号伝送を行う送信装置において、
前記ウェーブレットパケットを実数部に有し、該ウェーブレットパケットをヒルベルト変換することによって周波数軸上に奇関数として得られる関数を虚数部に有する複素関数に基づいて複素変調信号を生成することを特徴とする送信装置。 - 関数選択信号に基づいて前記複素関数を生成する1〜複数の関数選択部と、
前記1〜複数の関数選択部からそれぞれ出力された複素関数と複素表現された送信シンボルとをそれぞれ複素乗算する1〜複数の乗算器と、
を備え、
前記1〜複数の乗算器の出力の合成信号を複素変調信号とすることを特徴とする請求項3に記載の送信装置。 - 前記関数選択部に与える関数選択信号を任意に変化させることで柔軟な伝送レートを実現することを特徴とする請求項3または4に記載の送信装置。
- 前記複素関数をユーザごとに異ならせることを特徴とする請求項3または4に記載の送信装置。
- 拡散符号を用いて送信シンボルの拡散処理を行う拡散部と、
前記拡散符号を生成して前記拡散部に付与する拡散符号生成器と、
をさらに備え、
前記拡散符号の系列を用いてユーザ識別を行うことを特徴とする請求項3または4に記載の送信装置。
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A762 | Written abandonment of application |
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