JP2005019337A - 放電灯点灯装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】放電ランプの光束の立ち上がり特性のばらつきに関係なく、光束が立ち上がる時間のばらつきを抑制することができる放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】制御回路6は、放電ランプLaの点灯からの経過時間に目標電力値を対応付けて記憶した電力目標記憶部11と、点灯からの経過時間に基準ランプの目標電圧値を対応付けて記憶した基準ランプ電圧記憶部14と、電圧検出部4で検出した電圧と基準ランプ電圧記憶部14から読み出した目標電圧値との比較により決定される電力補正値を用いて、目標電力値を補正した補正目標電力値を出力する電力目標値制御部16と、放電ランプLaに供給する電力が補正目標電力値に保たれるようにDC−DCコンバータ1の出力を制御する誤差増幅器13とを備える。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタルハライドランプのような高輝度放電ランプを点灯させる放電灯点灯装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の前照灯やプロジェクタの光源として、メタルハライドランプのような高輝度放電ランプ(以下、放電ランプと略称する)が用いられるようになってきている。この種の用途では、始動時に光束を急速に立ち上げる必要があり、とくに車載用途では点灯の指示から短時間で光束を立ち上げることが要求される。始動時間(点灯から所定の光出力に達するまでの時間)を短縮する技術としては、点灯直後に定格電力を超える電力を放電ランプに供給する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
始動時間を短縮する技術について、さらに詳しく説明する。一般にこの種の放電灯点灯装置は、図17に示すように、直流電源Eが電源スイッチSWを介してDC−DCコンバータ1に接続され、DC−DCコンバータ1により直流電源Eの電圧が放電ランプLaの点灯に必要な電圧に電圧変換される。DC−DCコンバータ2の出力電圧はインバータ3により低周波(100Hz程度)の矩形波交番電圧に変換され、この矩形波交番電圧が放電ランプLaに印加されることによって放電ランプLaが点灯する。また、放電ランプLaの始動には数十kVの始動用高電圧が必要であるから、始動用高電圧を発生させるためにイグナイタ3が設けられる。DC−DCコンバータ1の出力端間には一対の抵抗R1,R2の直列抵抗を用いて構成された電圧検出部4が設けられ、DC−DCコンバータ1とインバータ2との間には抵抗R3からなる電流検出部5が設けられる。電圧検出部4はインバータ2の入力電圧に相当する電圧を抵抗R2の両端電圧として出力し、電流検出部5はインバータ2に供給された電流に比例する電圧を抵抗R3の両端電圧として出力する。つまり、電圧検出部4と電流検出部5との出力値の積はインバータ2で生じる損失をほぼ一定とみなせば、放電ランプLaへの供給電力を反映していることになる。DC−DCコンバータ1は図示しないスイッチング素子を備え、スイッチング素子のオンオフの時間が制御回路6により制御される。制御回路6は、電圧検出部4と電流検出部5との出力値を用いて、DC−DCコンバータ1の出力電力が目標電力になるように、DC−DCコンバータ1のスイッチング素子のオンオフを制御する。
【0004】
制御回路6は、電圧検出部4および電流検出部5の出力を用いて放電ランプLaの動作状態を検出し、放電ランプLaの動作状態に応じてDC−DCコンバータ1の出力電圧を制御するものであって、放電ランプLaの定常点灯時には定電力が供給されるようにDC−DCコンバータ1を制御する。また、初始動(コールドスタート)あるいは再始動(ホットスタート)の際には、始動時間を短縮するように定格電力を超える電力が供給されるようにDC−DCコンバータ1を制御するのである。
【0005】
制御回路6の動作には種々動作が知られており、たとえば、ランプ電圧−ランプ電流の関係を図18のように設定することが考えられている。図示例では、ランプ電圧が低い領域D1において定格電力を超える電力(定格電力の2倍以上の電力)が放電ランプLaに供給されるような定電流を供給する制御を行い、ランプ電圧が比較的高い領域(定格電圧付近の領域)D3では放電ランプLaに定格電力が供給されるように定電力を供給する制御を行い、領域D1と領域D3との間の領域D2ではランプ電圧−ランプ電流の関係が滑らかに移行するような制御を行う。以下では、領域D1を定電流領域、領域D2を移行領域、領域D3を定電力領域と呼ぶ。
【0006】
一方、初始動時のランプ電圧は図19のように時間経過に伴って増加することが知られているから、図18に示す関係でDC−DCコンバータ1を制御すれば、始動直後におけるランプ電圧の低い期間には定電流領域D1で動作し、ランプ電圧が上昇すると定電力領域D3で動作させることが可能になる。すなわち、始動直後の定電流領域D1では定格電力よりも大きい電力を放電ランプLaに供給することによって光束の立ち上がりに要する時間を短くすることが可能になる。
【0007】
ところで、上述のように移行領域D2を設けているのは、ランプ電圧の増加に対してランプ電流が減少する割合を調節することによってランプ電力の変化を緩和し、光束が立ち上がる際のオーバーシュートやアンダーシュートを防止するためであって、放電ランプLaの始動後に移行領域D2に対応する期間において定格光束に漸近させることにより、光束のオーバシュートやアンダーシュートを抑制している。
【0008】
上述した制御は放電ランプLaが周囲温度程度に冷えた状態から始動(初始動)する場合の例であり、点灯していた放電ランプLaの消灯直後に再点灯させる場合(再始動)のように、放電ランプが温かい状態において同じ制御を行うと、ランプ電圧の立ち上がりの変化率が大きくなるものであるから、定電力領域D3に近付いたときに放電ランプLaに過剰な電力が供給され、光束にオーバーシュートを生じることになる。ここに、始動からの時間経過に応じた供給電力の目標値を設定し、この目標値で放電ランプLaへの供給電力を制御したとすると、放電ランプLaの点灯後に数V〜30V程度まで低下したランプ電圧を上昇させる速度は、光束の立ち上がりの速い放電ランプLaほど速い傾向にある。
【0009】
特許文献1に記載の技術では、ランプ電圧の時間変化を検出し、移行領域D2において、ランプ電圧の変化率の増大に対して放電ランプへの供給電力を抑制することによって、再始動時の過剰発光を防止している。
【0010】
【特許文献1】
特許第2946384号公報(第0016段落、図1)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、放電ランプLaは製造上の誤差による個体差や経年変化によって、光束の立ち上がり特性にばらつきが生じる。したがって、放電ランプLaの光束の立ち上がり特性が図20に曲線αで示す特性になるように移行領域D2の制御特性を設定したとしても、光束の立ち上がり特性が速い放電ランプLaでは図20に曲線βで示すようにオーバーシュートするから定格光束F1で安定するまでの時間が設計値よりも長くなり、また、光束の立ち上がり特性が遅い放電ランプLaでは図20に曲線γで示すように定格光束F1に到達するまでの時間が設計値よりも長くなるという問題が生じる。
【0012】
ちなみに、車載用途の放電ランプLaでは、始動(点灯)から3分後の光束を100%とするときに、点灯から1秒後に25%、4秒後に80%に達することが要求される。
【0013】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、放電ランプの光束の立ち上がり特性のばらつきに関係なく、光束が立ち上がる時間のばらつきを抑制することができる放電灯点灯装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、高輝度放電ランプである放電ランプに供給する電力および電流を制御可能とした電源回路と、ランプ電圧に相当する電圧を検出する電圧検出部と、ランプ電流に相当する電流を検出する電流検出部と、電圧検出部と電流検出部との出力を監視し放電ランプに供給する電力が規定した電力値になるように電源回路を制御する制御回路とを備え、制御回路は、放電ランプの点灯からの経過時間に目標電力値を対応付けて記憶した電力目標記憶部と、点灯からの経過時間に基準ランプの目標電圧値を対応付けて記憶した基準ランプ電圧記憶部と、電圧検出部で検出した電圧と基準ランプ電圧記憶部から読み出した目標電圧値との比較により決定される電力補正値を用いて、目標電力値を補正した補正目標電力値を出力する電力目標値制御部と、放電ランプに供給する電力が補正目標電力値に保たれるように電源回路を制御する出力回路部とを備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、点灯からの経過時間に基準ランプの目標電圧値を対応付けて記憶した基準ランプ電圧記憶部を設けてあり、電圧検出部で検出した検出電圧値を目標電圧値と比較することによって、目標電力値を補正するから、放電ランプの光束の立ち上がり特性のばらつきに関係なく、光束が立ち上がる時間のばらつきを抑制することが可能になる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記制御回路が、前記電圧検出部の出力の所定時間毎の変化量と前記基準ランプ電圧記憶部から所定時間毎に読み出した目標電圧値の変化量との差分を積算するとともに積算値から電力補正値を決定する電圧傾き誤差積算部を備えることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、電圧検出部で検出される検出電圧値の絶対値によらず、変化率によって電力補正値を求めるから、放電ランプが寿命末期になるなどしてランプ電圧が全体に上昇しても適切な電力補正値を求めることが可能になる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記制御回路が、前記電圧検出部から得られる情報と前記基準ランプ電圧記憶部から得られる情報とを用いて前記電力補正値を決定するにあたって、電圧検出部と基準ランプ電圧記憶部とから得られる情報の差異が大きいほど電力補正値の変化率を小さくしていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、電力補正値が大きく低減されるのを防止することができ、放電ランプへの供給電力の絞り込みすぎを防止することができる。
【0020】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記電力目標記憶部および前記基準ランプ電圧記憶部には、適合させる放電ランプのうち光出力の立ち上がりがもっとも遅い放電ランプに対して設定される目標電力値および目標電圧値をそれぞれ記憶させていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、放電ランプへの供給電力が目標電力値よりも大きくなることがないから回路部品の定格を含めて設計が容易になり、制御回路の動作も比較的簡単になる。
【0022】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4の発明において、前記制御回路が、点灯から規定時間が経過した後に、電力補正値の絶対値を時間の経過とともに減少させることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、光束が立ち上がった後に定格電力での定常点灯状態への移行を滑らかに行うことができる。
【0024】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記制御回路が、点灯から規定時間が経過した後に、放電ランプに供給する電力を増加させないことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、放電ランプに供給する電力が過剰にならないように制限できるから、放電ランプからの光束の過剰出力を防止することができる。
【0026】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6の発明において、前記制御回路が、点灯から規定時間までは放電ランプに供給する電力を定格電力より大きくするように最小値を規定していることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、点灯直後に供給する電力の最小値を定格電力により制限しているから、供給電力の絞り込みすぎて立ち消えすることを防止できる。
【0028】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項6の発明において、前記制御回路が、放電ランプに供給する電力の最大値を規定していることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、最大電力を制限しているから、とくに車載用途において過剰な光出力による眩惑を防止することが可能になる。
【0030】
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項6の発明において、前記制御回路が、前記電力目標値制御部に与える電力補正値が規定した最大変化電力値を越えないように規制していることを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、ノイズなどによって目標電力値に対する補正値が急変するのを防止することができ、結果的に放電ランプへの供給電力の急変による光出力のちらつきを防止することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
本実施形態は、図1に示すように、DC−DCコンバータ1とインバータ2とからなる電源回路を備え、さらにイグナイタ3と電圧検出部4と電流検出部5と制御回路6とを備える。制御回路6を除く構成は従来構成と同様であって、DC−DCコンバータ1は直流電源Eを電圧変換し、インバータ2ではDC−DCコンバータ1の出力電圧を矩形波交番電圧に変換する。さらに、インバータ2の出力にはイグナイタ3が接続され、イグナイタ3から放電灯Laに始動用高電圧を印加することによって放電灯Laを始動する。具体構成を図示していないが、電圧検出部4および電流検出部5は、従来構成と同様に抵抗R1〜R3を用いて構成すればよい。
【0033】
DC−DCコンバータ1は、直流電源Eの両端間に接続される、トランスT1の1次巻線n1とMOSFETからなるスイッチング素子Q1との直列回路を備え、トランスT1の2次巻線n2にダイオードD1を介して平滑コンデンサC1を接続した構成を有する。ダイオードD1は、スイッチング素子Q1のオン時には平滑コンデンサC1に充電電流を流さず、スイッチング素子Q1のオフ時に巻線n1から平滑コンデンサC1に充電電流を流す極性に接続される。つまり、DC−DCコンバータ1はフライバック形であって、スイッチング素子Q1のオンオフの時間を制御することによって、直流電源Eの端子電圧に対して平滑コンデンサC1の両端電圧の昇圧と降圧とが可能になっている。
【0034】
すなわち、電源スイッチSW(図17参照)を投入して直流電源EからDC−DCコンバータ1に電源を供給すると、DC−DCコンバータ1ではスイッチング素子Q1のオン期間に、トランスT1の1次巻線n1とスイッチング素子Q1とを通して電流が流れる。ただし、この期間においてトランスT1の2次側に生じる誘起電圧はダイオードD1の逆方向になるから、平滑コンデンサC1に充電電流を流すことはできず、1次巻線n1に流れる電流のエネルギはトランスT1に蓄積される。その後、スイッチング素子Q1がオフになると、トランスT1に蓄積されていたエネルギによって、2次巻線n2−平滑コンデンサC1−ダイオードD1−2次巻線n2の経路で電流が流れ、トランスT1に蓄積されていたエネルギが平滑コンデンサC1に移される。
【0035】
インバータ2は、それぞれMOSFETからなる4個のスイッチング素子Q2〜Q5をブリッジ接続したフルブリッジ回路であって、各2個ずつのスイッチング素子Q2〜Q5からなる一対の直列回路が、DC−DCコンバータ1の出力端に設けた平滑コンデンサC1にそれぞれ並列接続されている。スイッチング素子Q2,Q3の接続点とスイッチング素子Q4,Q5の接続点との間にはイグナイタ3に設けたトランスT2の2次巻線n2を介して放電ランプLaが接続される。つまり、インバータ2の出力端間にトランスT2の2次巻線n2と放電ランプLaとの直列回路が接続される。スイッチング素子Q2〜Q5は図示しない制御回路によりオンオフが制御される。通常の制御では、放電ランプLaに低周波の矩形波交番電圧が印加されるように、スイッチング素子Q2,Q5の組とスイッチング素子Q3,Q4の組とが交互にオンオフを繰り返すように制御される。
【0036】
イグナイタ3は、インバータ2の出力端間に接続されたコンデンサC2と、1次巻線n1の一端がコンデンサC2の一端に接続されたトランスT2と、トランスT2の1次巻線n1の他端とコンデンサC2の他端との間に接続されたスパークギャップSGとにより構成される。したがって、コンデンサC2の両端電圧がスパークギャップSGのブレークオーバ電圧に達するまでコンデンサC2を充電すると、スパークギャップSGのブレークダウンによってコンデンサC2からトランスT2の1次巻線n1に電流が流れ、トランスT2の2次巻線n2に高電圧が発生する。トランスT2の2次巻線n2は放電ランプLaに接続されているから、2次巻線n2に発生した高電圧は放電ランプLaに印加され、放電ランプLaを始動することができる。
【0037】
ここで、始動時におけるインバータ2の動作を説明する。放電ランプLaの始動前には放電ランプLaが導通していないから、インバータ2は無負荷状態に近く、DC−DCコンバータ1は軽負荷になるから平滑コンデンサC1の電圧が上昇する。ここで、インバータ2のスイッチング素子Q2,Q5をオンに保つとともに、スイッチング素子Q3,Q4をオフに保っておけば、平滑コンデンサC1の両端電圧がコンデンサC2の両端電圧にそのまま反映され、コンデンサC2の両端電圧が上昇する。コンデンサC2の両端電圧がスパークギャップSGのブレークオーバ電圧に達すると、スパークギャップSGががレークダウンし、上述したようにトランスT2の1次巻線n1に瞬時に電流が流れて、トランスT2の2次巻線n2に高電圧(数10kV程度)が誘起され、放電ランプLaが始動される。このようにして放電ランプLaが始動されると、その瞬間にDC−DCコンバータ1から放電ランプLaに電流が流れ、放電ランプLaはアーク放電に移行する。放電ランプLaの始動後(点灯後)は、インバータ2のスイッチング素子Q2〜Q5を上述したようにオンオフさせることにより、放電ランプLaに矩形波交番電圧を印加する。
【0038】
ところで、制御回路6は、電圧検出部4で検出されるDC−DCコンバータ1の出力電圧(ランプ電圧に相当)と、電流検出部5で検出されるインバータ2への供給電流(ランプ電流に相当)とを用いて、DC−DCコンバータ1の出力電力が電力目標値になるように、DC−DCコンバータ1に設けたスイッチング素子Q1のオンオフを制御する。
【0039】
以下に制御回路6についてさらに具体的に説明する。制御回路6は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと略称する)を主構成要素に用いたものであって、制御回路6において設定されている電力目標値Pdと電圧検出部4で検出した検出電圧値Vsとを用いて目標電流値Idを決定し、電流検出部5で検出した検出電流値Isが目標電流値Idに近付くようにスイッチング素子Q1のオンオフを制御するように構成されている。電力目標値Pdは、ROMからなる電力目標記憶部11に格納されており、後述するように電力目標記憶部11に格納された電力目標値Pdを補正した補正目標電力値Peを求め、電流目標演算部12において補正目標電力値Peを検出電圧値Vsで除算することにより電流目標値Idが求められる。電流目標演算部12で求めた電流目標値Idは出力回路部としての誤差増幅器13において電流検出部5で求めた検出電流値Isと比較され、電流目標値Idと検出電流値Isとの差が小さくなるようにスイッチング素子Q1のオンオフのタイミングが設定される。ここに、電圧検出部4および電流検出部5の出力はアナログ信号であって、制御回路6にはマイコンを用いているから、検出電圧値Vsおよび検出電流値Isは、図示しないA/D変換器を用いてデジタル信号に変換される。電力目標記憶部11は始動からの経過時間に対応付けて電力目標値Pdを設定してある。なお、図における誤差増幅器13は、検出電流値Isと目標電流値Idとの差分に応じてスイッチング素子Q1のオンオフのタイミングを決めるPWM信号であるパルス信号Sgを発生する機能を含んでいる。したがって、検出電流値Isが目標電流値Idよりも小さいときにはスイッチング素子Q1のオン期間を長くするようなパルス信号Sgが誤差増幅器13が出力される。
【0040】
本実施形態の制御回路6は、検出電圧値Vsに基づいて目標電力値Pdを補正した補正目標電力値Peを生成する点が特徴であって、補正目標電力値Peを生成するために、以下の構成を有している。すなわち、制御回路6には、標準値を持つ放電ランプLaを基準ランプと想定し、電力目標値記憶部11に記憶した電力目標値Pdを用いて時間経過とともに光出力を立ち上げたときの出力電圧の時間変化が、目標電圧値Vdの時間変化としてあらかじめ記憶されているROMからなる基準ランプ電圧記憶部14が設けられ、基準ランプ電圧記憶部14から出力される目標電圧値Vdは電圧誤差演算部15において検出電圧値Vsと比較される。電圧誤差演算部15では、目標電圧値Vdと検出電圧値Vsとの差から電力補正値Pcを求める。つまり、電力補正値Pcは、基準ランプについて設定した目標電圧値Vdを予測される電圧値とし、検出電圧値Vsと予測された電圧値(目標電圧値Vd)との誤差を用いて、目標電力値Pdを補正するための電力補正値Pcを求めるのである。電力補正値Pcは電力目標値Pdとともに電力目標値制御部16に入力され、電力目標値制御部16では電力目標値Pdを電力補正値Pcで補正した補正目標電力値Peを求める。このようにして得られた補正目標電力値Peを、DC−DCコンバータ1の出力電力の目標値に用いることによって、放電ランプLaの光出力の立ち上がり特性を、基準ランプにおける光出力の立ち上がり特性に近付けることが可能になる。なお、図示していないが、始動からの時間は制御回路6に内蔵したタイマにより計時される。
【0041】
制御回路6の動作について図2を用いて説明する。図2(a)は電力目標記憶部11に格納された目標電力値Pdであって、目標電力値Pdは始動からの時間変化として規定される。また、基準ランプ電圧記憶部14には図2(c)のような目標電圧値Vdが格納される。基準ランプとしては、始動からの光束の立ち上がり特性が図2(b)に曲線αで示す特性である放電ランプLaを想定している。図2(c)において曲線β,γは図2(b)における曲線β,γのような立ち上がり特性を有する放電ランプLaを、補正しない目標電力値Pdに従って制御した場合の検出電圧値Vsの変化を表している。
【0042】
以下では、放電ランプLaの特性が曲線βである場合を例として説明する。曲線βの特性を有する放電ランプLaでは、放電ランプLaを点灯させると、図2(c)に示すように検出電圧値Vsが目標電圧値Vdよりも速く立ち上がる。したがって、検出電圧値Vsは目標電圧値Vdに対して図2(d)のような誤差を生じる。電圧誤差演算部15では、図2(d)のような誤差電圧を求め、さらに求めた誤差電圧を図2(e)のような電力補正値Pcに変換し、電力目標値制御部16に与える。電力目標値制御部16では、電力目標記憶部11から出力された目標電力値Pdから電力補正値Pcを減算することにより、図2(f)のような補正目標電力値Peを求める。
【0043】
上述した動作によって、図2(a)に示す目標電力値Pdの時間変化が図2(f)に示す補正目標電力値Peに補正され、結果的に始動時間の短い放電ランプLaに対してはオーバーシュートを抑制することが可能になる。
【0044】
一方、曲線γで示すように基準ランプに比較して光出力の立ち上がりが遅い放電ランプLaについては、図2(a)の目標電力値Pdが図2(f)の補正目標電力値Peに補正され、結果的に光出力の立ち上がりが速められる。
【0045】
なお、曲線αで示す特性の放電ランプLaは基準ランプであるから、目標電圧値Vdの時間変化と検出電圧値Vsの時間変化とが一致し、電力補正値Pcが0になるから、補正目標電力値Peは目標電力値Pdと一致することになる。
【0046】
上述したように制御回路6はマイコンを主構成要素として構成されているから、図3に制御回路6の動作をマイコンの処理手順として示す。上述した制御回路6の動作は、放電ランプLaの始動から光出力が安定するまでの期間の動作であるから、まず放電ランプLaが始動すると時間の計時を開始する(S1)。電力目標記憶部11から単位時間ごとに目標電力値Pdを読み出すとともに(S2)、検出電圧値Vsと検出電流値Isを読み込み(S3)、さらに基準ランプ電圧記憶部14から単位時間ごとに目標電圧値Vdを読み出す(S4)。
【0047】
次に、検出電圧値Vsの目標電圧値Vdに対する誤差(Vs−Vd)を求め(S5)、誤差(Vs−Vd)を用いて電力補正値Pcを決定する(S6)。誤差(Vs−Vs)と電力補正値Pcとの関係は適宜の演算式またはテーブルにより、あらかじめ規定しておく。求めた電力補正値Pcは目標電力値Pdから減算され、減算結果が補正目標電力値Pe(=Pd−Pc)になる(S7)。さらに、補正目標電力値Peを検出電圧値Vsで除算することにより目標電流値Id(=Pe/Vs)を求め(S8)、求めた目標電流値Idに検出電流値Isを近付けるようにパルス信号を生成してスイッチング素子Q1のオンオフを制御する(S9)。
【0048】
上述した動作を繰り返すことによって、放電ランプLsの特性によらず、光出力の立ち上がり特性(始動から光出力が安定するまでの時間)のばらつきを低減することができる。つまり、光出力の立ち上がりが速い放電ランプLaに対しては目標電力値Pdを速くから低減でき、光出力の立ち上がりが遅い放電ランプLaに対しては比較的大きい電力を長時間与えることができる。その結果、光出力の立ち上がりが速い放電ランプLaではオーバーシュートが防止され、光出力の立ち上がりが遅い放電ランプLaでは立ち上がりを速めることが可能になる
本実施形態では、目標電力値Pdを電力補正値Pcで補正することにより光束の立ち上がり特性のばらつきを低減しているが、電圧誤差演算部15の出力をDC−DCコンバータ1の出力電圧や出力電流の補正値に用い、DC−DCコンバータ1の検出電圧値Vsや検出電流値Isを補正するようにしても同様に機能させることが可能である。
【0049】
(実施形態2)
本実施形態は、検出電圧値Vsと目標電圧値Vdとの時間に対する変化率(傾き)を用いて電力補正値Pcを求める点が実施形態1と相違する。すなわち、図4に示すように、図1に示した実施形態との相違点は、制御回路6において電圧誤差演算部15に代えて電圧傾き誤差積算部17を設けている点であって、他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【0050】
電圧傾き誤差積算部17には、電圧誤差演算部15と同様に、目標電圧値Vdと検出電圧値Vsとが入力されるが、電圧傾き誤差積算部17では、目標電圧値Vdと検出電圧値Vsとの瞬時値の差を求めるのではなく、それぞれの変化率(傾き)を求め、傾きの差の積算値を用いて電力補正値Pcを決める。
【0051】
制御回路6の動作について、図5を用いてさらに詳しく説明する。図3と図5とを比較するとわかるように、図5におけるステップS1〜S3は図3におけるステップS1〜S3に相当し、図5におけるステップS4〜S6は図3におけるステップS7〜S9に相当する。ただし、本実施形態では図3におけるステップS4〜S6に代えて、電圧傾き誤差積算部17が、図6に示す割込処理を行う点が相違する。
【0052】
図6に示す割込処理は一定時間毎に行われ、まず単位時間毎に基準ランプ電圧記憶部14から目標電圧値Vdの変化率(傾き)を読み出す(S11)。たとえば、単位時間毎に読み出した目標電圧値Vdの差分を求めることによって、変化率を求めることができる。また、単位時間毎に求めた検出電圧値Vsの差分(今回値と前回値との差分)を求め、この差分を検出電圧値Vsの傾きとする(S12)。
【0053】
目標電圧値Vdの傾きと検出電圧値Vsの傾きとが求められると両者の差を求めて積算する(S13)。つまり、検出電圧値Vsの傾きをTsとし、目標電圧値Vdの傾きをTdとすれば、両者の差(Ts−Td)を求めて、差(Ts−Td)を積算する。この積算値を用いて電力補正値Pcを決める(S14)。つまり、積算値と電力補正値Pcとの間に適宜の関数またはテーブルによる関係付けを行っておき、積算値を電力補正値Pcに変換する。検出電圧値Vsの今回値は次回に検出電圧値Vsの傾きを求める際に用いるから、これをバッファに保存する(S15)。このようなステップS11〜S15の処理を割込処理として電圧傾き誤差積算部17において一定時間毎に行い、求めた電力補正値Pcを目標電力値Pdに適用して補正目標電力値Peを求めるのである。
【0054】
他の構成および動作は実施形態1と同様であって、実施形態1の動作では、放電ランプLaの寿命末期等において始動する際に、ランプ電圧の絶対値が大きくなっていると、出力電力を絞りすぎる可能性があるのに対して、本実施形態では検出電圧値Vsと目標電圧値Vdとの傾きの積算値を用いて電力補正値Pcを決定しているから、寿命末期等においてランプ電圧の絶対値が変化した場合(つまり、目標電圧値Vdにオフセットがのった場合)でも、供給電力を絞り過ぎることなく光束の立ち上がり特性を良好に保つことが可能になる。
【0055】
なお、近年、無水銀化された高輝度放電ランプが提供されており、この種の放電ランプLaでは点灯から定格電圧までのランプ電圧の変化幅が小さいから、目標電圧値Vdと検出電圧値Vsとの傾き差のみで光出力の立ち上がり特性を判断するのは困難であるが、本実施形態では目標電圧値Vdと検出電圧値Vsとの傾きの差の積算値を用いていることによって、電力補正値Pcを決定する際に比較的大きい値を用いることが可能になっており、立ち上がり特性の判断が容易になっている。
【0056】
なお、検出電圧値Vsの傾きと目標電圧値Vdとの傾きとの差を単位時間毎に積算する代わりに、単位時間毎に目標電圧値Vdの差を積算しておき、異なる単位時間毎に目標電圧値Vdの傾きを積算値から減算してもよい。
【0057】
(実施形態3)
実施形態1において、検出電圧値Vsと目標電圧値Vdとの差(Vs−Vd)から電力補正値Pcを求めるにあたって、両者の関係を基本的には線形関係と想定しており、電力補正値Pcを差(Vs−Vd)に比例する値として求めている。これに対して本実施形態は、差(Vs−Vd)に対する電力補正値Pcの関係を図7のように設定している。つまり、差(Vs−Vd)の絶対値が大きい領域では、電力補正値Pcの変化を小さくしているのである。
【0058】
一般に、光出力の立ち上がりが速い放電ランプLaは光出力が立ち上がり始めると光出力が急速に上昇するから、検出電圧値Vsと目標電圧値Vdとに差が生じたときに、DC−DCコンバータ1の出力電力を大きく低減させることが必要である。一方、出力電力を低減させすぎると光出力が大きく低下してアンダーシュートを生じることになる。
【0059】
これに対して、本実施形態では、差(Vs−Vd)が正かつ小さい場合(光束が急速に立ち上がり始めるタイミング)には、差(Vs−Vd)に対する電力補正値Pcの変化率を大きくすることによって、検出電圧値Vsが目標電圧値Vdに対して変化し始めるとすぐにDC−DCコンバータ1の出力電力を大きく絞るようにしてある。また、差(Vs−Vd)が大きい場合には、差(Vs−Vd)に対する電力補正値Pcの変化率を小さくすることによって、補正目標電力値Peが目標電力値Pdに対して大きく低減されるのを防止し、出力電力の絞りすぎを防止することができる。
【0060】
上述の説明では、実施形態1に対して図7に示す関係を適用する例を説明したが、実施形態2の構成において、検出電圧値Vsの傾きと目標電圧値Vdの傾きとの差分の積算値から電力補正値Pcを求める際に、図7に示す関係を適用することによっても同様の効果が得られる。他の構成および動作は実施形態1または実施形態2と同様である。
【0061】
(実施形態4)
実施形態1では基準ランプ電圧記憶部14において標準的な特性を有する放電ランプLaを基準ランプに用いており、また電力目標記憶部11にも標準的な放電ランプLaに対する目標電力値Pdを設定しているが、本実施形態は種々の放電ランプLaから立ち上がり特性がもっとも悪い(始動から定格光束に達するまでの時間がもっとも長い)放電ランプLaを選択し、この放電ランプLaを基準ランプに用いて、電力目標記憶部11における目標電力値Pdおよび基準ランプ電圧記憶部14における目標電圧値Vdを設定しているものである。
【0062】
本実施形態では、電力目標記憶部11において、光出力の立ち上がりがもっとも遅い放電ランプLaを用いた場合に、所望の立ち上がり特性で放電ランプLaの光出力が立ち上がるように設定した目標電力値Pdを時間経過に対応付けて格納してある。電力目標記憶部11に格納された目標電力値Pdは図8(a)のようになる。このような目標電力値Pdを設定しているから、他の放電ランプLaを用いると、図8(b)のように、光束がオーバーシュートすることになる。また、図8(c)のように、基準ランプ電圧記憶部14には、光出力の立ち上がり特性がもっとも悪い(曲線γで示す)放電ランプLaに対応付けて目標電圧値Vdを設定しているから、曲線α,βに対応する他の放電ランプLaではランプ電圧も短時間で上昇する。
【0063】
上述の動作によって、図8(d)のように、検出電圧値Vsと目標電圧値Vdとの電圧誤差(Vs−Vd)は、つねに正の値になり、図8(e)のように、電力補正値Pcもつねに正の値になる。言い換えると、図8(f)のように、補正目標電力値Peは基準ランプに対して必ず減少することになる。したがって、DC−DCコンバータ1の出力電力が、電力目標記憶部11に設定された目標電力値Pdよりも大きくなることがないから、回路部品の定格を含めて設計が容易になる。また、光出力の立ち上がり特性について最悪の場合の動作を決めているから、放電ランプLaのばらつきを含めてすべての放電ランプLaで所望の立ち上がり特性を満たすことが可能になる。さらに、制御回路6の動作を決めるプログラムが実施形態1、2に比較して簡単になるから、マイコンの負荷の低減につながる。他の構成および動作は実施形態1、2と同様である。
【0064】
(実施形態5)
本実施形態は、図9に示すように、基本的な構成は図4に示した実施形態2と同様であって、制御回路6において放電ランプLaの点灯(始動)からの経過時間を計時する時間測定部18を付加したものである。時間計測部18は電圧傾き誤差積算部17と電力目標値制御部16との動作の切替時点を決定するために用いられる。すなわち、電圧傾き誤差積算部17と電力目標値制御部16とは、時間計測部18で計時された時間が放電ランプLaの点灯から規定時間Tpに達するまでは実施形態2と同様に動作し(つまり、目標電力値Pdから電力補正値Pcを減算した結果を補正電力目標値Peとして電流目標演算部12に与える)、規定時間Tpに達した後には、電圧傾き誤差積算部17から電力目標値制御部16に入力される電力補正値Pcを時間経過に伴って減少させることによって、時間経過に伴って補正目標電力値Peを目標電力値Pdに漸近させる。
【0065】
すなわち、電力目標値記憶部11に図10(a)のように目標電力値Pdが設定され、目標電力値Pdをそのまま用いて種々の放電ランプLaを制御したときに図10(b)のように光束が変化するものすると、各放電ランプLaごとに検出電圧値Vsは図10(c)のように変化する。放電ランプLaの点灯から規定時間Tpまでの制御は実施形態2と同様であり、電圧傾き誤差積算部17において図10(d)のように検出電圧値Vsの傾きと目標電圧値Vdの傾きとの差が積算され、図10(e)のように積算値に基づいて決定した電力補正値Pcが出力される。ただし、規定時間Tpが経過した後は電圧傾き誤差積算部17では傾きの差を求める動作を停止し、電力補正値Pcを時間経過ととともに0に近付ける。このような動作によって、放電ランプLaの点灯から規定時間Tpが経過すると、補正目標電力値Peは時間経過に伴って目標電力値Pdに漸近することになる。
【0066】
上述したように、本実施形態の制御回路6は基本的な動作は実施形態2と同様であって、図6に示した割込処理に代えて、図11に示す割込処理を一定時間毎に行う点で実施形態2と相違する。すなわち、一定時間毎に割込処理を行うたびに時間測定部18において規定時間Tpが経過したか否かを判断し(S10)、規定時間Tpが経過するまでは図6に示した実施形態2と同様の割込処理を行うことで電力補正値Pcを求める(S11〜15)。一方、規定時間Tpの経過後には、電力補正値Pcが0か正か負かを判断し(S16,S17)、電力補正値Pcが0であるときには割込処理を終了する。また、電力補正値Pcが正であるときには電力補正値Pcを規定した一定の補正量だけ減少させ(S18)、逆に電力補正値Pcが負であるときには電力補正値Pcを規定した一定の補正量だけ増加させる(S19)。
【0067】
本実施形態の動作では、光束の立ち上がり特性のばらつきを抑制することができるのはもちろんのこと、光束が立ち上がった後に定格電力での定常点灯状態に滑らかに移行させることができる。また、無水銀ランプは光束の立ち上がり後(点灯から約10秒程度以降)にフリッカなどによってランプ電圧が急激に減少する時点があり(dV/dt<−10V/sで電圧が低下する)、実施形態2の制御をその時点まで継続していると、制御回路6にランプ電圧の急激な変化が入力されることによって誤動作する場合がある。そこで、上述した規定時間Tpを、ランプ電圧の急激な変化が生じる時点よりも前の時間とすることによって誤動作を回避することができる。
【0068】
なお、放電ランプLaの動作状態(初始動または再始動)に応じて点灯後の目標電力値Pdを設定している場合には、放電ランプLaの動作状態に応じて規定時間Tpを可変に設定しておくのが望ましい。他の構成および動作は実施形態2と同様である。
【0069】
(実施形態6)
本実施形態は、図12に示すように、図11に示した実施形態5の処理に対して、規定時間Tpが経過した後の処理を変更したものである。すなわち、規定時間Tpの経過後に、まず目標電力値Pdの前回値から今回値を減算することにより目標電力値Pdの時間当たりの減少量を求めている(S16)。電力補正値Pcが正のときの補正量と減少量とを比較し(S17)、補正量が減少値以下であれば目標電力値Pdの減少量を補正量に用いる(S18)。減少値よりも補正量が大きいときには、補正量をそのまま用いる。補正量が決まると、電力補正値Pcが0か正か負かを判断し(S19,S20)、電力補正値Pcが0であるときには目標電力値Pdの今回値をバッファに格納して割込処理を終了する(S23)。また、電力補正値Pcが正であるときには電力補正値Pcを上述のようにして決定した補正量だけ減少させ(S21)、逆に電力補正値Pcが負であるときには電力補正値Pcを補正量だけ増加させる(S22)。補正目標電力値Peを求めた後には目標電力値Pdの今回値をバッファに保存して割込処理を終了する(S23)。
【0070】
上述の処理によって、規定時間Tpが経過した後に、電力補正値Pcが正であるときに電力補正値Pcを減少させるための補正量を、目標電力値Pdの時間当たりの減少量よりも小さくし、補正目標電力値Peが上昇するのを防止しているのである。本実施形態では、規定時間Tpの経過後に目標電力値Pdが再上昇するのを防止することができ、光束の過剰出力の発生を防止することができる。他の構成および動作は実施形態5と同様である。
【0071】
(実施形態7)
本実施形態は、図13に示すように、図9に示した実施形態5の構成において、電力目標値制御部16と電流目標演算部13との間に補正目標電力値Peに対する制限を加える電力目標値制限部19を付加したものである。電力目標値制限部19は補正目標電力値Peにおける最大値と最小値とを規定するものであり、電力目標値制限部19から出力される制限目標電力値Pfは、最大値と最小値との間の値になる。
【0072】
すなわち、図14に示すように、まず放電ランプLaの電源が投入されると、初期設定を行った後(S1)、電力目標記憶部11から単位時間ごとに目標電力値Pdを読み出すとともに(S2)、検出電圧値Vsと検出電流値Isを読み込み(S3)、電力補正値Pcを決定する(S4)。ここで、電流目標値Idを求める前に(S9)前に、補正目標電力値Peの上限(最大電力)と下限(定格電力)を規定する(S5〜S8)点が本実施形態の特徴である。
【0073】
電力目標値制限部19では、まず補正目標電力値Peが定格電力より大きいか否かを判断し(S5)、F10:補正目標電力値Peが定格電力より大きいか否かを判断し(S5)、補正目標電力値Peが定格電力より小さいときには補正目標電力値Peを定格電力に設定する(S7)。また、補正目標電力値Pde規定した最大電力より小さいか否かを判断し(S6)、補正目標電力値Peが最大電力より大きいときには補正目標電力値Peを最大電力に設定する(S8)。このような処理によって、制限目標電力値Pfは定格電力と最大電力との間の値に制限される。この制限目標電力値Pfを用いて電流目標演算部12において目標電流値Idを生成し(S9)、検出電流値Isを目標電流値Idに近付けるようにスイッチング素子Q1を制御する(S10)。
【0074】
本実施形態の制御によれば、ノイズによるランプ電圧の後読み込みなどによる出力電力の絞り込みすぎによる立ち消えや出力電力の過剰出力による眩惑を防止することができる。なお、補正目標電力値Peの下限を定格電力ではなく、時間を変数とする関数によって規定すれば、さらにノイズに強い制御が実現できる。他の構成および動作は実施形態5と同様である。
【0075】
(実施形態8)
本実施形態は、図15に示すように、図13に示した実施形態7の構成において、電圧傾き誤差積算部17と電力目標値制御部16との間に補正値変化規制部20を設けた点で相違する。補正値変化規制部20では、電圧傾き誤差積算部17の出力である電力補正値Pcの変化幅を制限し、規制電力補正値Pbを求める。求めた規制電力補正値Pbは電力目標値制限部16に入力され、目標電力値Pdが規制電力補正値Pbにより補正される(目標電力値Pd−規制電力補正値Pbになる)。
【0076】
制御回路6の動作のうち、電圧傾き誤差積算部17において電力補正値Pcを求める処理および制限目標電力値Pfを求める処理を図16に示す。ただし、図16におけるステップS22〜S29の処理は、図12に示したステップS16〜S23の処理と同処理であるから、ここでは説明を省略し、ステップS11〜S21の処理について説明する。図16に示す割込処理は一定時間毎に行われ、規定時間Tpの経過前では(S10)、単位時間毎に基準ランプ電圧記憶部14から目標電圧値Vdの変化率(傾き)を読み出す(S11)。たとえば、単位時間毎に読み出した目標電圧値Vdの差分を求めることによって、変化率を求めることができる。また、単位時間毎に求めた検出電圧値Vsの差分(今回値と前回値との差分)を求め、この差分を検出電圧値Vsの傾きとする(S12)。
【0077】
目標電圧値Vdの傾きと検出電圧値Vsの傾きとが求められると両者の差を求めて積算する(S13)。つまり、検出電圧値Vsの傾きをTsとし、目標電圧値Vdの傾きをTdとすれば、両者の差(Ts−Td)を求めて、差(Ts−Td)を積算する。この積算値を用いて電力補正値Pcを決める(S14)。
【0078】
次に、補正値変化規制部20に格納されている規制電力補正値Pbと電力補正値Pcとの大小を比較し(S15)、規制電力補正値Pbが電力補正値Pc以上であれば、既定した最大変化電力値Pmを減算して、あらたな規制電力補正値Pbとして格納する(S16)。一方、規制電力補正値Pbが電力補正値Pcよりも小さいときには、規制電力補正値Pbに最大変化電力値Pmを加算して、あらたな規制電力補正値Pbとして格納する(S17)。
【0079】
ステップS16,S17において規制電力補正値Pbに最大変化電力値Pmを加減算することによって、規制電力補正値Pbが電力補正値Pcよりも大きくなるかまたは小さくなることが考えられるから、ステップS16,S17で求めた規制電力補正値Pbを電力補正値Pcと比較し(S18,S19)、最大変化電力値Pmの減算によって規制電力補正値Pbが電力補正値Pcより小さくなった場合、あるいは最大変化電力値Pmの加算によって規制電力補正値Pbが電力補正値Pc以上になった場合には、電力補正値Pcを規制電力補正値Pbとして用いる(S20)。なお、最大変化電力値Pmの加減算によってステップS18,S19の条件が満たされない場合には、最大変化電力値Pmの加減算を行った後の規制電力補正値Pbを規制電力補正値Pbを用いる。
【0080】
以上説明した処理によって、規制電力補正値Pbの最大変化幅を最大変化電力値Pmとして規制電力補正値Pbを電力補正値Pcへと近付けていくことができる。その結果、電圧傾き誤差積算部17の出力である電力補正値Pcが急変(ノイズ等で検出電圧値Vsが異常な値をとると発生)した場合などに、目標電流値Idが急変して放電ランプLaの光出力がちらつくのを防止することが可能となり、より安定な制御を実現することができる。
【0081】
【発明の効果】
本発明の構成によれば、点灯からの経過時間に基準ランプの目標電圧値を対応付けて記憶した基準ランプ電圧記憶部を設けてあり、電圧検出部で検出した検出電圧値を目標電圧値と比較するから、目標電力値を補正するから、放電ランプの光束の立ち上がり特性のばらつきに関係なく、光束が立ち上がる時間のばらつきを抑制することが可能になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1を示す回路図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】実施形態2を示す回路図である。
【図5】同上の動作説明図である。
【図6】同上の動作説明図である。
【図7】実施形態3の動作説明図である。
【図8】実施形態4の動作説明図である。
【図9】実施形態5を示す回路図である。
【図10】同上の動作説明図である。
【図11】同上の動作説明図である。
【図12】実施形態6の動作説明図である。
【図13】実施形態7を示す回路図である。
【図14】同上の動作説明図である。
【図15】実施形態8を示す回路図である。
【図16】同上の動作説明図である。
【図17】従来例を示すブロック図である。
【図18】同上の動作説明図である。
【図19】同上の動作説明図である。
【図20】同上の動作説明図である。
【符号の説明】
1 DC−DCコンバータ
2 インバータ
3 イグナイタ
4 電圧検出部
5 電流検出部
6 制御回路
11 電力目標記憶部
12 電流目標演算部
13 誤差増幅器
14 基準ランプ電圧記憶部
15 電圧誤差演算部
16 電力目標値制御部
17 電圧傾き積算部
18 時間測定部
19 電力目標値制限部
20 補正値変化規制部
E 直流電源
La 放電ランプ

Claims (9)

  1. 高輝度放電ランプである放電ランプに供給する電力および電流を制御可能とした電源回路と、ランプ電圧に相当する電圧を検出する電圧検出部と、ランプ電流に相当する電流を検出する電流検出部と、電圧検出部と電流検出部との出力を監視し放電ランプに供給する電力が規定した電力値になるように電源回路を制御する制御回路とを備え、制御回路は、放電ランプの点灯からの経過時間に目標電力値を対応付けて記憶した電力目標記憶部と、点灯からの経過時間に基準ランプの目標電圧値を対応付けて記憶した基準ランプ電圧記憶部と、電圧検出部で検出した電圧と基準ランプ電圧記憶部から読み出した目標電圧値との比較により決定される電力補正値を用いて、目標電力値を補正した補正目標電力値を出力する電力目標値制御部と、放電ランプに供給する電力が補正目標電力値に保たれるように電源回路を制御する出力回路部とを備えることを特徴とする放電灯点灯装置。
  2. 前記制御回路は、前記電圧検出部の出力の所定時間毎の変化量と前記基準ランプ電圧記憶部から所定時間毎に読み出した目標電圧値の変化量との差分を積算するとともに積算値から電力補正値を決定する電圧傾き誤差積算部を備えることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
  3. 前記制御回路は、前記電圧検出部から得られる情報と前記基準ランプ電圧記憶部から得られる情報とを用いて前記電力補正値を決定するにあたって、電圧検出部と基準ランプ電圧記憶部とから得られる情報の差異が大きいほど電力補正値の変化率を小さくしていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の放電灯点灯装置。
  4. 前記電力目標記憶部および前記基準ランプ電圧記憶部には、適合させる放電ランプのうち光出力の立ち上がりがもっとも遅い放電ランプに対して設定される目標電力値および目標電圧値をそれぞれ記憶させていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
  5. 前記制御回路は、点灯から規定時間が経過した後に、電力補正値の絶対値を時間の経過とともに減少させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
  6. 前記制御回路は、点灯から規定時間が経過した後に、放電ランプに供給する電力を増加させないことを特徴とする請求項5記載の放電灯点灯装置。
  7. 前記制御回路は、点灯から規定時間までは放電ランプに供給する電力を定格電力より大きくするように最小値を規定していることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
  8. 前記制御回路は、放電ランプに供給する電力の最大値を規定していることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
  9. 前記制御回路は、前記電力目標値制御部に与える電力補正値が規定した最大変化電力値を越えないように規制していることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
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