JP2005015438A - 植物体内糖の転流促進剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メチオニンおよび/またはトリプトファンを必須成分として含有する植物体内糖の転流促進剤であって、前記メチオニンおよび/またはトリプトファンによりスクロースリン酸合成酵素活性を向上させて植物体内における糖の転流を促進させる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は植物体内糖の転流促進剤に関するものであり、さらに詳しくは植物、特に果菜類の糖の転流を向上させることができる植物体内糖の転流促進剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
植物の転流促進剤としては、植物のカリウムイオン吸収を促進し、植物の光合成産物の転流を促進する転流促進剤をはじめ、いくつかの転流促進剤が提案されている。
具体的には、例えばカリウムイオン吸収促進を利用した転流促進剤の利用が提案されている(特許文献1参照)。
また、有機物であるビタミン類と含硫アミノ酸と糖類を利用した転流促進剤が提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
スクロースリン酸合成酵素の利用としては、いくつかの利用法が提案されている。それらの提案のほとんどがスクロースリン酸合成酵素遺伝子を利用したものである。具体的には、例えばスクロースリン酸合成酵素遺伝子を導入することによりスクロース合成能を高め、貯蔵組織に輸送されるスクロースを増加させることが提案されている(特許文献3参照)。
また、スクロースリン酸合成酵素を多量に発現するように構築した人口遺伝子をイネの核ゲノムに組み込みイネを形質転換させることによりイネのスクロース合成能高め、イネの生育向上および米の収量増加をさせることが提案されている(特許文献4参照)。
また、スクロースリン酸合成酵素遺伝子を導入することにより植物の草丈を制御することが提案されている(特許文献5参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平13−151618号公報
【特許文献2】特開平12−159591号公報
【特許文献3】特開平06−277068号公報
【特許文献4】特開平09−248084号公報
【特許文献5】特開平12−262283号公報
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来技術のいずれにも、メチオニンおよび/またはトリプトファンを利用することによりスクロースリン酸合成酵素活性を向上させることに関する記載はない。
また、これまで植物体内糖の転流を促進させるためにスクロースリン酸合成酵素遺伝子を導入したり、スクロースリン酸合成酵素を多量に発現するように構築した人口遺伝子を核ゲノムに組み込み形質転換させるなどの手法が用いられてきた。しかし、現在遺伝子組換え作物などの安全性が問題となっている。
本発明の目的は、スクロースリン酸合成酵素遺伝子を導入したり、スクロースリン酸合成酵素を多量に発現するように構築した人口遺伝子を核ゲノムに組み込み形質転換させるなどの手法を用いることなく、植物のスクロースリン酸合成酵素活性を向上させて、貯蔵組織に輸送されるスクロースを増加できる植物体内糖の転流促進剤を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究に努めた結果、メチオニンおよび/またはトリプトファンを含有する資材を植物に、例えば、葉面散布することにより、スクロースリン酸合成酵素活性を向上させることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
前記課題を解決するための本発明の請求項1の植物体内糖の転流促進剤は、メチオニンおよび/またはトリプトファンを必須成分として含有する植物体内糖の転流促進剤であって、前記メチオニンおよび/またはトリプトファンによりスクロースリン酸合成酵素活性を向上させて植物体内における糖の転流を促進させることを特徴とする。
【0008】
本発明の植物体内糖の転流促進剤を用いることにより、特に葉面散布剤として用いて適量を葉面に散布すると、スクロースリン酸合成酵素遺伝子を導入したり、スクロースリン酸合成酵素を多量に発現するように構築した人口遺伝子を核ゲノムに組み込み形質転換させるなどの手法を用いることなく、スクロースリン酸合成酵素活性を向上でき、葉における光合成により良好に形成されたグルコースが植物体内でスクロースに容易に良好に変換されるとともに、スクロースの植物体内での転流が促進され、植物の全ての貯蔵組織に輸送されるスクロースが増加する。
【0009】
本発明の請求項2の植物体内糖の転流促進剤は、請求項1記載の転流促進剤において、さらに、肥料成分、微量要素成分およびキレート剤から選ばれる少なくとも1つを含有することを特徴とする。
【0010】
メチオニンおよび/またはトリプトファンとともに肥料成分や微量要素成分などと混用することにより、植物体内糖の転流促進効果と肥料効果および微量要素成分効果の両面を兼ね備えた施用を行うことができ、それにより植物全体の栄養成分を高め、全ての貯蔵組織への転流を促進することができ、また、キレート剤を混用することにより、さらに、製剤の沈殿や変質を防ぐことができる。
【0011】
本発明の請求項3の植物体内糖の転流促進剤は、請求項1あるいは請求項2記載の転流促進剤において、使用に際して、水で希釈してメチオニンおよび/またはトリプトファンが転流促進剤全体に対して10〜200ppm(質量)含有したことを特徴とする。
【0012】
使用に際して、水で希釈してこの範囲内にすることにより、植物に害を与えることなく、より確実に植物体内糖の転流促進効果を向上できる。
【0013】
本発明の請求項4の植物体内糖の転流促進剤は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の転流促進剤において、葉面散布剤であることを特徴とする。
【0014】
本発明の転流促進剤を葉面散布剤として用いると、取り扱い、植物への適用が容易となる上、適量を葉面に散布すると、植物にある種のストレスを容易に与えることができ、ストレスを植物が感じた際に種子および/または果実などを早く成熟させるために、糖の転流が向上し、植物体内糖の転流促進効果がより容易に確実に得られる。
さらに、葉面散布は葉の表裏のどちらでもよいが、葉の裏には多数の気孔があるため裏葉の表よりも裏の方が吸収が良いため、主として葉の裏面に散布すると効果的である。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に本発明の内容を詳細に説明する。
図1は、本発明の転流促進剤の植物体内糖の転流促進向上を摸式的に説明する説明図である。
図1に示したように、本発明の植物体内糖の転流促進剤1を葉面散布剤として用いて適量を植物2の葉面3に散布すると、スクロースリン酸合成酵素活性を向上できるとともに葉3における光合成が良好に行われてグルコースが形成され、形成されたグルコースが植物体内でスクロースに容易に良好に変換される。そして、スクロースの植物体内での転流が促進され、植物2の全ての貯蔵組織に輸送され、貯蔵されるスクロースが増加し、植物全体の栄養成分を高めることができる。
【0016】
本発明は、前記のようにメチオニンおよび/またはトリプトファンを含有する資材を植物に葉面散布することにより、スクロースリン酸合成酵素活性を向上させることができるという新しい機能を有することを初めて見いだしたことに基づいて成されたものである。
【0017】
本発明で用いるメチオニンおよび/またはトリプトファンは水溶性を有するメチオニンおよび/またはトリプトファン含有物であれば特に限定されるものではない。
本発明で用いるメチオニンおよび/またはトリプトファンとしては、具体的には、例えばメチオニンおよび/またはトリプトファンを含むトウモロコシの硫酸による分解物、鰹からの抽出物、食品加工中の副産物など魚、牛、植物などの有機物の抽出物を挙げることができる。これらの有機物の抽出物は安定的に容易に入手でき、かつ安価であり、製剤化も容易で利用しやすい資材であるので本発明において好ましく使用できる。
【0018】
本発明の植物体内糖の転流促進剤が植物自体のスクロースリン酸合成酵素活性を向上させる作用機作の解明はできていないが、植物は次のような場合に糖の転流が向上すると考えられている。
すなわち、水分ストレス、塩類ストレス、低温ストレス等のストレスを植物が感じた際に種子および/または果実を早く成熟させるために糖の転流が向上すると考えられている。
本発明の植物体内糖の転流促進剤の必須有効成分であるメチオニンおよびトリプトファンは、植物にある種のストレスを与え植物体内糖の転流を促進すると考えられる。
【0019】
本発明においては、メチオニンおよびトリプトファンは単独使用でも2種の混用でも良い。そして、本発明の植物体内糖の転流促進剤に、植物の栄養に有効とされる硝酸塩などの窒素源、燐酸源、カリ塩、苦土源などの多量肥料成分の他に、マンガン、ホウ素、亜鉛、鉄、銅、モリブデンなど微量要素成分などとの混用も必要に応じて適宜行うことができる。
メチオニンおよびトリプトファンとともに前記多量肥料成分や微量要素成分などと混用することにより、果菜類など植物の収穫前に転流促進効果と肥料効果の両面を兼ね備えた施用を行うことができ、それにより植物全体の栄養成分を高め、全ての貯蔵組織への転流を促進することができる。
【0020】
本発明の植物体内糖の転流促進剤には、さらに、製剤の沈殿や変質を防ぐためにエチレンジアミン四酢酸・四ナトリウムなどのキレート剤を必要に応じて、適宜加えることができる。
さらに、製剤を植物の葉に展着、浸透させ、吸収しやすくするために、糖や界面活性剤を必要に応じて、適宜加えることができる。
また、製剤の腐敗を抑制するためにラウリルベタインなどの防腐剤を必要に応じて、適宜加えることができる。
【0021】
本発明の植物体内糖の転流促進剤の使用方法は特に限定されないが、転流促進の向上および適用のし易さの観点から、植物の地上部、特に葉面に散布することが好ましい。
その濃度は、使用に際して、水で希釈してメチオニンおよび/またはトリプトファンの濃度が植物の転流促進剤全体に対して10〜200ppm(質量)、好ましくは15〜100ppm(質量)になるように調整して、植物に葉面散布することが好ましい。
10ppm未満であると植物体内糖の転流促進効果が出ない恐れがあり、200ppmを越えると植物に害を与える恐れがあるので好ましくない。
【0022】
本発明の植物体内糖の転流促進剤の使用時期は特に限定されないが、例えば果菜類の果実の着果時期から肥大時期の終わりまでに1回以上、好ましくは3回以上使用できる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお以下の実施例および比較例に記載の%、ppmは、質量%、質量ppmをそれぞれ示す。
【0024】
(実施例1)
(本発明の植物体内糖の転流促進剤の調製)
メチオニンを0.5%になるように水溶液を作り、この水溶液を腐りにくくするためにラウリルベタインを適量加え、本発明の植物の転流促進剤1を作成した。
【0025】
このようにして調整した植物体内糖の転流促進剤1を300倍に希釈(メチオニン濃度は16ppm)した水溶液を、ミニトマト(品種はココ)に3日間隔で3回葉面散布した。ミニトマトはガラスハウス内で栽培し、最後の葉面散布から3日後にミニトマトの葉を採集し、下記のスクロースリン酸合成酵素活性測定法により、スクロースリン酸合成酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0026】
(スクロースリン酸合成酵素活性測定法)
試料は、あらかじめ冷却しておいた乳鉢に入れ、酵素抽出液5mL、石英砂1g、牛血清アルブミン(BSA)25mg、ポリクラール30mgを加え磨砕した。磨砕された試料は38,000Gで10分間遠心分離した。上澄液20μLを酵素液とし、基質を含む酵素反応液50μLと混合し、25℃で10分間インキユべートして酵素を反応させた後、1規定の水酸化ナトリウム70μLによって素早く反応を止めた。
反応終了後、反応に用いられなかった前記酵素反応液中の基質を分解するために、沸騰水で10分間煮沸した。室温に戻した後、95%エタノールに0.1%(V/V)になるようにレゾルシノールを溶かした発色液1mlを加え、80℃で8分間インキユべートした。室温に戻した後、分光光度計で520nmの吸光度を測定し、酵素活性を求めた。
そして測定した結果は、転流促進剤無散布の比較例のスクロースリン酸合成酵素活性を100とした場合に、この比較例に対応する実施例のスクロースリン酸合成酵素活性を求めて指数として示した。
【0027】
(比較例1)
本発明の転流促進剤1を葉面散布しないミニトマトを実施例1と同様にしてスクロースリン酸合成酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0028】
表1に示したように、本発明の植物体内糖の転流促進剤1を用いた場合、比較例1の無散布に比べ、ミニトマトのスクロースリン酸合成酵素活性を向上できることが判る。
【0029】
(実施例2)
(本発明の植物体内糖の転流促進剤の調製)
トリプトファンを0.5%、になるように水溶液を作り、この水溶液を腐りにくくするためにラウリルベタインを適量加え、本発明の植物体内糖の転流促進剤2を作成した。
【0030】
このようにして調整した植物体内糖の転流促進剤2を300倍に希釈(トリプトファン濃度は16ppm)した水溶液を、ミニトマト(品種はココ)に3日間隔で3回葉面散布した。ミニトマトはガラスハウス内で栽培し、最後の葉面散布から3日後にミニトマトの葉を採集し、実施例1と同様にしてスクロースリン酸合成酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0031】
(比較例2)
本発明の転流促進剤2を葉面散布しないミニトマトを実施例2と同様にスクロースリン酸合成酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0032】
表1に示したように、本発明の植物体内糖の転流促進剤2を用いた場合、比較例2の無散布に比べ、ミニトマトのスクロースリン酸合成酵素活性を向上できることが判る。
【0033】
(実施例3)
(本発明の植物体内糖の転流促進剤の調製)
メチオニンを0.5%、マグネシウムをMgOとして6.0%、銅をCuとして0.13%、鉄をFeとして0.14%、マンガンをMnOとして0.12、ホウ素をB2O3として0.5%になるように水溶液を作り、この水溶液を安定 させるためにエチレンジアミン四酢酸・四ナトリウムを適量加え、さらに腐りにくくするためにラウリルベタインを適量加え、本発明の植物体内糖の転流促進剤3を作成した。
【0034】
このようにして調整した植物体内糖の転流促進剤3を300倍に希釈(メチオニン濃度は16ppm)した水溶液を、ミニトマト(品種はココ)に3日間隔で3回葉面散布した。ミニトマトはガラスハウス内で栽培し、最後の葉面散布から3日後にミニトマトの葉を採集し、実施例1と同様にしてスクロースリン酸合成酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0035】
(比較例3)
本発明の転流促進剤3を葉面散布しないミニトマトを実施例3と同様にスクロースリン酸合成酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0036】
(比較例4)
マグネシウムをMgOとして6.0%、銅をCuとして0.13%、鉄をFeとして0.14%、マンガンをMnOとして0.12、ホウ素をB2O3として 0.5%になるように水溶液を作り、この水溶液を安定させるためにエチレンジアミン四酢酸・四ナトリウムを適量加え、さらに腐りにくくするためにラウリルベタインを適量加えた水溶液を300倍に希釈(メチオニン濃度は16ppm)し、ミニトマト(品種はココ)に3日間隔で3回葉面散布した。ミニトマトはガラスハウス内で栽培し、最後の葉面散布から3日後にミニトマトの葉を採集し、実施例3と同様にスクロースリン酸合成酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0037】
表1に示したように、比較例4の多量肥料成分、微量要素成分水溶液を葉面散布したミニトマトは、比較例3の無散布に比べスクロースリン酸合成酵素活性をあまり向上しないことが判る。
一方、本発明の植物体内糖の転流促進剤3を用いた場合、比較例3の無散布に比べ、ミニトマトのスクロースリン酸合成酵素活性を向上できることが判る。さらに、比較例4の多量肥料成分、微量要素成分水溶液を葉面散布したミニトマトに比べても、明らかに転流酵素活性を向上できることが判る。
【0038】
(実施例4)
(本発明の植物体内糖の転流促進剤の調製)
トリプトファンを0.5%、マグネシウムをMgOとして6.0%、銅をCuとして0.13%、鉄をFeとして0.14%、マンガンをMnOとして0.12、ホウ素をB2O3として0.5%になるように水溶液を作り、この水溶液を 安定させるためにエチレンジアミン四酢酸・四ナトリウムを適量加え、さらに腐りにくくするためにラウリルベタインを適量加え、本発明の植物体内糖の転流促進剤4を作成した。
【0039】
このようにして調整した植物体内糖の転流促進剤4を300倍に希釈(トリプトファン濃度は16ppm)した水溶液を、ミニトマト(品種はココ)に3日間隔で3回葉面散布した。ミニトマトはガラスハウス内で栽培し、最後の葉面散布から3日後にミニトマトの葉を採集し、実施例1と同様にしてスクロースリン酸合成酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0040】
(比較例5)
本発明の植物体内糖の転流促進剤4を葉面散布しないミニトマトを実施例4と同様にスクロースリン酸合成酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
(比較例6)
マグネシウムをMgOとして6.0%、銅をCuとして0.13%、鉄をFeとして0.14%、マンガンをMnOとして0.12、ホウ素をB2O3として 0.5%になるように水溶液を作り、この水溶液を安定させるためにエチレンジアミン四酢酸・四ナトリウムを適量加え、さらに腐りにくくするためにラウリルベタインを適量加えた水溶液を300倍に希釈(メチオニン濃度は16ppm)し、ミニトマト(品種はココ)に3日間隔で3回葉面散布した。ミニトマトはガラスハウス内で栽培し、最後の葉面散布から3日後にミニトマトの葉を採集し、実施例4と同様にスクロースリン酸合成酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0042】
表1に示したように、比較例6の多量肥料成分、微量要素成分水溶液を葉面散布したミニトマトは、比較例5の無散布に比べスクロースリン酸合成酵素活性をあまり向上しないことが判る。
一方、本発明の植物体内糖の転流促進剤4を用いた場合、比較例5の無散布に比べ、ミニトマトの転流酵素活性を向上できることが判る。さらに、比較例6の多量肥料成分、微量要素成分水溶液を葉面散布したミニトマトに比べても、明らかにスクロースリン酸合成酵素活性を向上できることが判る。
【0043】
(実施例5)
(本発明の植物体内糖の転流促進剤の調製)
メチオニンを0.5%、マグネシウムをMgOとして6.0%、銅をCuとして0.13%、鉄をFeとして0.14%、マンガンをMnOとして0.12、ホウ素をB2O3として0.5%になるように水溶液を作り、この水溶液を安定 させるためにエチレンジアミン四酢酸・四ナトリウムを適量加え、さらに本水溶液の腐敗防止のためにラウリルベタインを適量加え、本発明の植物体内糖の転流促進剤5を作成した。
【0044】
(実施例6)
(本発明の植物体内糖の転流促進剤の調製)
トリプトファンを0.5%、マグネシウムをMgOとして6.0%、銅をCuとして0.13%、鉄をFeとして0.14%、マンガンをMnOとして0.12、ホウ素をB2O3として0.5%になるように水溶液を作り、この水溶液を 安定させるためにエチレンジアミン四酢酸・四ナトリウムを適量加え、さらに腐りにくくするためにラウリルベタインを適量加え、本発明の植物体内糖の転流促進剤6を作成した。
【0045】
(実施例7)
(本発明の植物体内糖の転流促進剤の調製)
メチオニンを0.5%、トリプトファンを0.5%、マグネシウムをMgOとして6.0%、銅をCuとして0.13%、鉄をFeとして0.14%、マンガンをMnOとして0.12、ホウ素をB2O3として0.5%になるように水溶 液を作り、この水溶液を安定させるためにエチレンジアミン四酢酸・四ナトリウムを適量加え、さらに腐りにくくするためにラウリルベタインを適量加え、本発明の植物体内糖の転流促進剤7を作成した。
【0046】
このようにして調整した植物体内糖の転流促進剤5、転流促進剤6、転流促進剤7を300倍に希釈(メチオニン濃度は16ppm、トリプトファン濃度は16ppm)した水溶液を、ミニトマト(品種はココ)に3日間隔で3回葉面散布した。ミニトマトはガラスハウス内で栽培し、最後の葉面散布から3日後にミニトマトの葉を採集し、実施例1と同様にしてスクロースリン酸合成酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0047】
(比較例7)
本発明の植物体内糖の転流促進剤を葉面散布しないミニトマトを実施例5と同様にスクロースリン酸合成酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示したように、本発明の植物体内糖の転流促進剤5を用いた場合、比較例7の無散布に比べスクロースリン酸合成酵素活性を向上できることが判る。また、本発明の植物体内糖の転流促進剤6を用いた場合、比較例7の無散布に比べスクロースリン酸合成酵素活性を向上できることが判る。
一方、本発明の植物体内糖の転流促進剤7を用いた場合、比較例5の無散布に比べ、ミニトマトのスクロースリン酸合成酵素活性を向上できることが判る。さらに、本発明の植物体内糖の転流促進剤5、本発明の植物体内糖の転流促進剤6を葉面散布したミニトマトに比べても、明らかにスクロースリン酸合成酵素活性を向上できることが判る。
【0050】
【発明の効果】
本発明の請求項1の植物体内糖の転流促進剤は、メチオニンおよび/またはトリプトファンを必須成分として含有する植物体内糖の転流促進剤であって、前記メチオニンおよび/またはトリプトファンによりスクロースリン酸合成酵素活性を向上させて植物体内における糖の転流を促進させることを特徴とするものであり、本発明の植物体内糖の転流促進剤を用いることにより、特に葉面散布剤として用いて適量を葉面に散布すると、スクロースリン酸合成酵素遺伝子を導入したり、スクロースリン酸合成酵素を多量に発現するように構築した人口遺伝子を核ゲノムに組み込み形質転換させるなどの手法を用いることなく、スクロースリン酸合成酵素活性を向上でき、葉における光合成により良好に形成されたグルコースが植物体内でスクロースに容易に良好に変換されるとともに、スクロースの植物体内での転流が促進され、植物の貯蔵組織輸送されるスクロースが増加するという顕著な効果を奏する。
【0051】
本発明の請求項2の植物体内糖の転流促進剤は、請求項1記載の転流促進剤において、さらに、肥料成分、微量要素成分およびキレート剤から選ばれる少なくとも1つを含有することを特徴とするものであり、メチオニンおよび/またはトリプトファンとともに肥料成分や微量要素成分などと混用することにより、植物体内糖の転流促進効果と肥料効果および微量要素成分効果の両面を兼ね備えた施用を行うことができ、それにより植物全体の栄養成分を高め、全ての貯蔵組織への転流を促進することができ、また、キレート剤を混用することにより、さらに、製剤の沈殿や変質を防ぐことができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0052】
本発明の請求項3の植物体内糖の転流促進剤は、請求項1あるいは請求項2記載の転流促進剤において、使用に際して、水で希釈してメチオニンおよび/またはトリプトファンが転流促進剤全体に対して10〜200ppm(質量)含有したことを特徴とするものであり、この範囲内にすることにより、植物に害を与えることなく、より確実に植物体内糖の転流促進効果を向上できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0053】
本発明の請求項4の植物体内糖の転流促進剤は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の転流促進剤において、葉面散布剤であることを特徴とするものであり、本発明の転流促進剤を葉面散布剤として用いると取り扱い、植物への適用が容易となる上、適量を葉面に散布すると、植物にある種のストレスを容易に与えることができ、ストレスを植物が感じた際に種子および/または果実などを早く成熟させるために、糖の転流が向上し、植物体内糖の転流促進効果がより容易に確実に得られるというさらなる顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転流促進剤の植物体内糖の転流促進向上を摸式的に説明する説明図である。
【符号の説明】
1 本発明の植物体内糖の転流促進剤
2 植物
3 葉面
Claims (4)
- メチオニンおよび/またはトリプトファンを必須成分として含有する植物体内糖の転流促進剤であって、前記メチオニンおよび/またはトリプトファンによりスクロースリン酸合成酵素活性を向上させて植物体内における糖の転流を促進させることを特徴とする植物体内糖の転流促進剤。
- さらに、肥料成分、微量要素成分およびキレート剤から選ばれる少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項1記載の転流促進剤。
- 使用に際して、水で希釈してメチオニンおよび/またはトリプトファンが転流促進剤全体に対して10〜200ppm(質量)含有したことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の転流促進剤。
- 葉面散布剤であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の転流促進剤。
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Cited By (5)
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