JP2005015269A - 発泡性多孔質部材の製造方法 - Google Patents

発泡性多孔質部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】発泡成分の発泡条件に左右されることなく焼成体の体積膨張を抑制することができる発泡性多孔質部材の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の発泡性多孔質部材の製造方法は、加熱によって発泡する発泡成分を含む発泡性多孔質部材の製造方法であって、主として加熱によって消失する消失材を造粒して得られた消失造粒粉末と、成形原料粉末2と、前記発泡成分と、を含む多孔質成形原料からなる成形体を焼成することにより、前記消失造粒粉末が消失して気孔3を形成し、該気孔が前記発泡成分1の発泡による前記成形体の体積増加を抑制することを特徴とする。すなわち、本発明の発泡性多孔質部材の製造方法によれば、加熱により消失材が消失して形成された気孔が、発泡成分が発泡することにより増加した体積増加分を吸収することにより、焼成前後の成形体の体積変化を抑制することができる。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は発泡性多孔質部材の製造方法に関する。より詳しくは、発泡成分の発泡による体積増加を抑制する発泡性多孔質部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
発泡性多孔質部材は、原料中に発泡性の成分を含んでいる。そして、その発泡成分がある焼成温度で発泡して体積が増加することにより、焼成後の嵩比重を小さくして軽量化した部材である。特にセラミックスの分野においては広く知られている(例えば、特許文献1など)。当該文献では、原料中に焼成を経たセラミックス質廃材と、粘土質及び/又は長石質を含み、焼成により発泡して、焼成後の嵩比重が0.3〜2.0の範囲である軽量発泡セラミックスについて開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−290083号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようにして形成される発泡性セラミックスは、焼成温度や、焼成雰囲気などの僅かな変化によって発泡成分の発泡の程度が大きく変化するために、焼成後の焼成体の形状が不安定となる。このため、タイルなどのように、寸法や形状に要求される精度が厳しい窯業製品へはあまり適用されていなかった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、発泡成分の発泡条件に左右されることなく焼成体の体積膨張を抑制することができる発泡性多孔質部材の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の発泡性多孔質部材の製造方法は、加熱によって発泡する発泡成分を含む発泡性多孔質部材の製造方法であって、主として加熱によって消失する消失材を造粒して得られた消失造粒粉末と、成形原料粉末と、前記発泡成分と、を含む多孔質成形原料からなる成形体を焼成することにより、前記消失造粒粉末が消失して気孔を形成し、その気孔が前記発泡成分の発泡による前記成形体の体積増加を抑制することを特徴とする。すなわち、本発明の発泡性多孔質部材の製造方法によれば、加熱により消失材が消失して形成された気孔が、発泡成分が発泡することにより増加した体積増加分を吸収することにより、焼成前後の成形体の体積変化を抑制することができる。
【0007】
本発明の発泡性多孔質部材の製造方法において、消失材は有機物であるのが好ましく、さらに、前記有機物は、紙であることが好ましい。紙を用いると、加熱よって消失する際に、有毒ガスや可燃ガスなどを放出することがないので、無毒、無害である。
【0008】
また、前記消失造粒粉末は、該消失造粒粉末の中心部を通る厚さにおいて、最も薄い部分を1としたときに最も厚い部分が3以下の粒状であるのが好ましい。消失造粒粉末の厚さがこの範囲にないと、消失造粒粉末同士が集積しやすく、成形原料粉末中に消失造粒粉末を混合する際、均一に分散させることが難しい。
【0009】
また、消失造粒粉末は、水などの極性溶媒を適度に含むことにより、成形原料粉末中に均一に分散させやすくなる。そして、消失材をさらに造粒したことにより、乾式プレス成形法で成形した場合に発生するラミネーションを防止できる。
【0010】
本発明の発泡性多孔質部材の製造方法において、前記成形原料粉末は、セラミックス原料粉末、金属粉末の少なくとも1種であることが望ましい。また、前記セラミックス原料粉末は、粘土、陶石、蝋石、珪石、石灰、長石、滑石、窒化珪素および炭化珪素の少なくとも1種であることが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の発泡性多孔質部材の製造方法は、加熱によって発泡する発泡成分を含む発泡性多孔質部材の製造方法であって、主として加熱によって消失する消失材を造粒して得られた消失造粒粉末と、成形原料粉末と、前記発泡成分と、を含む多孔質成形原料からなる成形体を焼成することにより、前記消失材が消失して気孔を形成し、その気孔が前記発泡成分の発泡による前記成形体の体積増加を抑制することを特徴とする。すなわち、本発明の発泡性多孔質部材の製造方法は、加熱により消失材が消失して形成された気孔が、発泡成分が発泡することにより増加した体積増加分を吸収することにより、焼成前後の成形体の体積変化を抑制しようとするものである。
【0012】
本発明の製造方法による焼成前後の発泡性多孔質部材の体積変化を抑制する作用は明らかではないが、概ね以下の通りであると推察される。図1および図2によって説明する。
【0013】
消失造粒粉末は、発泡成分が発泡するよりも低温で消失するので、焼成途中の焼成体の内部は、図1に模式的に示すように発泡成分1を含む成形原料2の中に消失造粒粉末が消失して形成された気孔3が多数分散した状態となっている。
【0014】
この状態でさらに焼成を続けて成形体の温度が発泡成分の発泡温度に到達すると、図2に示すように発泡成分1の体積a1(●で表す)は膨張して体積a2(矢印方向に膨張した点線の円で示す)となる。すなわち、発泡前の全発泡成分の体積をA1として、発泡後の全発泡成分の体積をA2とすると、A=A2−A1が全発泡成分の体積増加量である。
【0015】
一方、消失造粒粉末が消失して形成された気孔3の体積b1(○で表す)は発泡成分の発泡によって増加した体積増加分を吸収して体積b2(矢印方向に縮小した点線の円で示す)となる。
【0016】
すなわち、発泡前の全気孔の体積をBとして、A<Bの場合(発泡成分の体積増加量が、発泡前の気孔の全体積よりも小さい)には、発泡成分による焼成体の体積増加は発生しない。つまり、発泡成分の体積増加量以上の体積の気孔を形成するようにすれば、焼成後の焼成体の体積増加は成形原料の体積増加量だけとなる。この結果、焼成体(発泡性多孔質部材)の嵩比重は、気孔量の増加に伴って小さくなる。
【0017】
発泡性成分としては加熱によって発泡する発泡性を有するものであれば特に限定されるものではない。火山灰などに含まれる真珠岩や黒曜石などの天然ガラス成分、あるいはフライアッシュや廃ガラス等の人工ガラス成分などを例示することができる。
【0018】
発泡成分は、発泡成分を含む発泡材を単独で配合してもよいが、発泡成分を含む発泡材と成形原料粉末とを、ある温度で発泡するように予め調整した発泡性成形原料粉末を用いることが好ましい。これは部材の焼成温度に合わせて耐火度を調整して、発泡現象をある程度調節することができるからである。
【0019】
消失造粒粉末は、主として加熱によって消失する消失材を造粒して得られる。消失材は、加熱によって消失するものであり、消失材としては、有機物が好ましく、より好ましくは、でんぷん等の多糖類、有機質繊維、セルロース、紙、おが屑などである。特に、古新聞、古雑誌などの古紙を用いると、資源の有効利用、再利用が可能となる。上記の消失材であれば、加熱によって消失する際に、有毒ガス、可燃性ガスを放出することがなく、無毒、無害である。
【0020】
消失材は、造粒する前に粉砕し粉砕物とするのが好ましい。消失材が糸状の繊維質であれば、繊維質を細かく切断し粉砕するのが良い。消失材が粉砕されず糸状であると、消失材が絡み合うため、望ましい造粒をすることができない。粉砕は、糸状のものがなくなる程度まで行うのが好ましい。造粒に用いられる粉砕物は、造粒する消失造粒粉末の粒子径に応じて、その大きさを決定する必要がある。消失造粒粉末の粒子径が小さくなる程、消失材の粉砕物の大きさが小さくなるように粉砕する必要がある。消失材を粉砕する際には、通常の粉砕機やカッターを用いることができ、所望の大きさに粉砕できるものであれば、特に限定するものではない。
【0021】
消失造粒粉末の造粒は、従来の造粒方法で行うことができる。具体的には、転動型、振動型、圧縮成形型、噴射型等の各造粒形式の造粒方法が好ましい。造粒により得られた消失造粒粉末は、粒状であるのが好ましい。消失造粒粉末は、その中心部を通る厚さにおいて、最も薄い部分の厚さを1としたときに最も厚い部分の厚さが3以下が好ましく、球形に近いほど、より好ましい。この比が1:1〜1:3にないと、消失造粒粉末同士が集積し易くなり、消失造粒粉末を成形原料粉末中に均一に分散させることが困難となり、発泡成分の膨張による体積増加量を吸収する独立した多数の気孔を得られなくなる。
【0022】
また、消失造粒粉末の粒径には、特に限定はなく、発泡成分の含有量や目的とする気孔の大きさに応じて適宜決定すればよい。
なお、消失造粒粉末の粒径は、消失造粒粉末の粒子径に加え、造粒条件、具体的には、添加物の量、造粒に使用するミキサーの種類や回転速度等によっても決定される。造粒条件を適宜選択することにより、所望のサイズの消失造粒粉末が得られる。
【0023】
さらに、消失造粒粉末は、極性溶媒をバインダーとして含んでも良い。粉砕した消失材に添加するバインダーの添加量が多いと、消失造粒粉末の粒子径は大きくなる。極性溶媒は、水が好ましく、アルコール、アセトン等の有機溶媒でも良い。また、水などにでんぷん、CMC等を溶解した水溶液を用いても良い。消失造粒粉末にバインダーを含ませることにより、消失造粒粉末の嵩密度が増し、その結果、成形原料粉末中に消失造粒粉末を分散させる際、均一に分散させることが可能となる。また、適度に極性溶媒を含んだ消失造粒粉末は、乾式プレス成形法でセラミックス等の多孔質部材を成形した場合に発生するラミネーションを防止できる。消失造粒粉末の含水率は、造粒直後は造粒の際に使用した極性溶媒の割合にほぼ等しくなるが、乾燥後の含水率は10〜70wt%が好ましく、より好ましくは、40〜50wt%である。
【0024】
また、消失造粒粉末の嵩比重は、0.1g/cm以上が好ましく、より好ましくは、0.25g/cm以上である。嵩比重が0.25g/cm未満であると、焼成途中の成形体にラミネーションなどの不具合を生じることがある。
【0025】
成形原料粉末は、セラミックス原料粉末、金属粉末、の少なくとも1種であることが望ましい。通常の粉末冶金・粉末成形に用いられる成形原料粉末であれば、特に限定はない。
【0026】
セラミックス原料粉末は、粘土、陶石、蝋石、珪石、石灰、滑石、長石、珪砂等、および、窒化珪素、炭化珪素等の少なくとも1種であるのが望ましい。上記以外にも、シャモット、釉原料、顔料などを必要に応じて添加しても良い。これらの成形原料粉末の配合率は、製造するセラミックスの種類、成形方法、焼成温度等に依存するものである。成形原料粉末の粒径に特に限定はなく、一次粒子をさらに造粒した二次粒子を用いても良い。
【0027】
また、成形原料粉末に発泡成分を配合した発泡性成形原料粉末に対する消失造粒粉末の好ましい配合率は、使用する成形原料粉末の種類やサイズ、発泡成分の種類や配合量、さらに、発泡性多孔質部材の形状や用途にも依るが、50wt%以下が好ましく、より好ましくは30wt%以下である。配合率がこの範囲であれば、不具合なく成形し、かつ、焼成体の体積膨張を抑制することができる。
【0028】
発泡性成形原料粉末に消失造粒粉末を混合する際には、通常使用されるコンクリートミキサー、高速流動式ミキサー(フルダイズドミキサー)等のミキサーを用いるのが望ましい。混合条件としては、消失造粒粉末の粒状の形状が大きく崩れない程度である必要がある。消失材を造粒した消失造粒粉末の表面積は、造粒前の消失材の表面積よりも小さくなるため、消失造粒粉末同士が集積し難い。また、成形原料粉末との親和性も良好となるため、混合により消失造粒粉末が発泡性成形原料粉末中に均一に分散した発泡性多孔質原料を得ることができる。
【0029】
上記のように混合された発泡性多孔質成形原料を成形し焼成することにより、粒状で、隣接する他の気孔とは連続しない気孔をもつ発泡性多孔質部材が得られる。
【0030】
発泡性多孔質成形体は、乾式製法、湿式製法のどちらでも成形可能である。したがって、金型プレス成形法、ラバープレス法、押出成形法など、選択した発泡性成形原料粉末に適した方法であれば、いずれの製造法も適用できる。
【0031】
また、発泡性多孔質成形体の焼成についても特に限定することはなく、通常の方法で焼成することができる。例えば、乾燥した成形体をトンネルキルンで最高温度が1100〜1300℃となるように酸化焼成すればよい。
【0032】
このようにして形成される気孔は、粒状で、さらに、隣接する他の気孔とは連続しないことが好ましい。気孔が均一に分散し単独で存在すると、気孔が連続して存在するものに比べ、成形原料粉末が連続して存在する部分が多い。成形原料粉末は焼成後の多孔質部材中で柱(または壁)の役割を果たすので、互いに連続しない粒状の気孔をもつ多孔質部材は、成形原料粉末がもつ収縮率や強度といった特性を維持することができる。
【0033】
本発明による発泡性多孔質部材では、発泡成分の発泡による体積増加量を形成された気孔によって吸収するので、焼成後の収縮率は、発泡成分を配合しない多孔質部材とほぼ同程度であり、大差はない。その結果、本発明になる発泡性多孔質部材を生産するに当たっては、既存の生産設備、例えば、金型、口金等が使用できるという利点がある。
【0034】
また、互いに連続しない粒状の気孔を適度に持つ発泡性多孔質部材は、発泡により増加した体積は気孔によって吸収されているので、発泡しない場合に比べてその強度が僅かに劣るのみで、実用に十分耐えうる強度を有する。従って、発泡性多孔質部材でありながら高い強度を持つ部材を得ることができる。
【0035】
【試験例】
本発明の発泡多孔質部材の製造方法を以下の試験例によってさらに具体的に説明する。
(試験例1)
回転歯式粉砕機を用いて、古新聞紙を粉砕した。その後、JIS標準ふるいにより0.5mm以下の大きさをもつ粉砕物を得た。この粉砕物に水を添加し、高速流動式ミキサー(三井鉱山(株)製 ヘンシェルミキサー)を用いて造粒し、造粒時65%、自然乾燥後46%の含水率の消失造粒粉末(以下、気孔材と称する)を得た。得られた気孔材の粒度分布を表1に示す。
【0036】
【表1】
Figure 2005015269
【0037】
成形原料粉末に発泡性成分を配合した発泡性成形原料粉末として、発泡性セラミックス原料A(丸美陶料(株)製 KEI−06)、および、発泡性セラミックス原料B(丸美陶料(株)製 C−1451)に、上記で得られた気孔材である消失造粒粉末を配合してミキサーで均一に混合分散させ、発泡性多孔質成形原料を得た。なお、気孔材の配合割合は、発泡性セラミックス原料Aでは、0,10,25,30,35重量%の5水準とし、発泡性セラミックス原料Bでは、0,10,25,30重量%の4水準とした。また、ミキサーは、(株)カワタ スーパミキサー(SMV−20)を用いて、回転数:500rpmで30秒間の混合分散を施した。
【0038】
得られた各発泡性多孔質成形原料を油圧プレスを用いて一定圧力で75mm×75mm(金型寸法82.5mm×82.5mm)に成形し各水準につき4枚の成形体を得た。得られた成形体を110℃で3時間乾燥後、トンネルキルンにて最高温度を1230℃として酸化焼成を施し、焼成体(発泡性多孔質部材)となし、寸法および重量を測定して嵩比重と寸法変化率を求めた。結果を表2(発泡性セラミックス原料A)および表3(発泡性セラミックス原料B)に示す。なお、寸法変化率は金型寸法に対する焼成体の寸法変化率であり、プラスは金型寸法に対する増加率を、マイナスは減少率を示す。
【0039】
【表2】
Figure 2005015269
【0040】
【表3】
Figure 2005015269
【0041】
表2および表3から、気孔材の配合割合の増加とともに、得られた焼成体の寸法は直線的に小さくなるが、嵩比重はわずかに変化しているにすぎないことが分かる。これは、焼成によって気孔材が消失することで形成された気孔が、発泡成分の発泡による体積増加を吸収し、発泡性セラミックス原料中の発泡成分以外の成分(セラミックス原料)の収縮を促進しているためと推測される。
【0042】
気孔材を配合することによって発泡性セラミックスの発泡による体積増加が抑制され、従来(気孔材配合割合:0%の場合)と同様の成形方法で、形状の良好な発泡性セラミックスを得ることができた。
(試験例2)
気孔材を発泡性セラミックス原料C((株)ヤマセ社製 G−510F)に試験例1と同様の気孔材を30重量%配合し、試験例1と同様の方法で均一に混合分散して、発泡性多孔質成形原料を得た。なお、気孔材を配合しない(配合割合:0%)の発泡性セラミックス原料Cを比較材とした。
【0043】
得られた発泡性多孔質成形原料と比較材とを油圧プレスを用い一定圧力で45mm×95mm(金型寸法50mm×105.5mm)に成形し、各々4枚ずつの成形体を得た。これらの成形体を110℃で3時間乾燥後、トンネルキルンにて最高温度を1240℃として酸化焼成を施して焼成体(発泡性多孔質部材)となし、試験例1と同様に、寸法および重量を測定して嵩比重と寸法変化率とを求めた。結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
Figure 2005015269
【0045】
表4より気孔材を配合することによって、焼成体(発泡性多孔質部材)の嵩比重は低下し、さらに寸法変化率は−6%前後と焼成体の体積膨張が大きく抑制されていることが分かる。
(試験例3)
試験例1と同様の発泡性セラミックス原料Aおよび発泡性セラミックス原料Bに、各々30重量%の気孔材を配合して試験例1と同様の方法で均一に混合分散し、発泡性多孔質成形原料となした。
【0046】
この発泡性多孔質成形原料を油圧プレスを用いて一定圧力で50mm×50mm(金型寸法50mm×50mm)に成形し、各原料について12枚ずつの成形体を得た。得られた成形体を110℃で3時間乾燥後、電気炉(共栄電気炉製作所製)中で最高温度が1185℃、1220℃、1240℃の3水準となるように酸化焼成して、各最高温度で原料毎に各々4枚ずつの焼成体(発泡性多孔質部材)を得た。これらの焼成体の寸法および重量を測定して嵩比重と寸法変化率とを求めた。結果を表5(発泡性セラミックス原料A)および表6(発泡性セラミックス原料B)に示す。
【0047】
【表5】
Figure 2005015269
【0048】
【表6】
Figure 2005015269
【0049】
一般的に、発泡性セラミックス原料からなる成形体を焼成する場合には、焼成温度が異なると、発泡性セラミックス原料中の発泡成分の発泡程度が異なるために、焼成体の寸法変化率はプラス側(体積増加)で大きく異なる。しかし、本試験例では、焼成温度が異なっても焼成によって形成された気孔が、発泡成分の体積増加分を吸収したために、焼成体の寸法変化率は焼成温度に係わらずマイナス(体積減少)となった。すなわち、焼成温度の変動による焼成体の寸法変化率の変動は極めて小さいことが分かる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の発泡性多孔質部材の製造方法によれば、焼成の温度条件に影響されることが小さく性状の安定した発泡性多孔質部材を得ることができる。従って、焼成後の寸法などの製品品質について精度の高い設計が可能となり、狙い通りの品質を得ることができる。このため、発泡性多孔質部材の品質を向上するとともに生産性をも高めることができる。
【0051】
従来の発泡性多孔質部材では、発泡成分の不安定な体積膨張により形状安定性に問題があった。しかし、本発明においては、寸法が収縮する発泡性多孔質部材を得ることができるので、製品の形状安定性が大きく向上する。
【0052】
また、消失造粒粉末の配合割合を変化させることで、発泡性多孔質部材の収縮率を調整することができる。従って、従来製品と寸法変化率の等しい発泡性多孔質部材を得ることができ、既存の設備や釉薬などをそのまま適用することができて効率的である。
【0053】
本発明の発泡性多孔質部材の製造方法は、大型の複合タイル、あるいは、断熱レンガや軽量ブロックなど断熱性や軽量性に優れた建築材料等の製造に特に好適に適用することができ、品質の安定化や生産性の向上に多大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱により消失造粒粉末が消失して気孔が形成された様子を示す模式図である。
【図2】発泡成分が発泡して体積増加しても、気孔が縮小することでこの増加体積を吸収する様子を説明する説明図である。
【符号の説明】
1:発泡成分 2:成形原料 3:気孔

Claims (8)

  1. 加熱によって発泡する発泡成分を含む発泡性多孔質部材の製造方法であって、主として加熱によって消失する消失材を造粒して得られた消失造粒粉末と、成形原料粉末と、前記発泡成分と、を含む発泡性多孔質成形原料からなる成形体を焼成することにより、前記消失造粒粉末が消失して気孔を形成し、該気孔が前記発泡成分の発泡による前記成形体の体積増加を抑制することを特徴とする発泡性多孔質部材の製造方法。
  2. 前記消失材は有機物である請求項1に記載の発泡性多孔質部材の製造方法。
  3. 前記有機物は紙である請求項2に記載の発泡性多孔質部材の製造方法。
  4. 前記消失造粒粉末は、該消失造粒粉末の中心部を通る厚さにおいて、最も薄い部分を1としたときに最も厚い部分が3以下の粒状である請求項1記載の発泡性多孔質部材の製造方法。
  5. 前記消失造粒粉末は、極性溶媒を含む請求項1に記載の発泡性多孔質部材の製造方法。
  6. 前記極性溶媒は、水である請求項5に記載の発泡性多孔質部材の製造方法。
  7. 前記成形原料粉末は、セラミックス原料粉末、金属粉末の少なくとも1種である請求項1に記載の発泡性多孔質部材の製造方法。
  8. 前記セラミックス原料粉末は、粘土、陶石、蝋石、珪石、石灰、長石、滑石、窒化珪素及び炭化珪素の少なくとも1種である請求項7に記載の発泡性多孔質部材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021065879A (ja) * 2019-10-17 2021-04-30 家庭化学工業株式会社 飲用水改質用粘土組成物

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