JP2005009029A - ポリビニルアルコール系繊維 - Google Patents

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Riyoukei Endou
了慶 遠藤
Tetsuya Hara
哲也 原
Nobuyuki Sano
信幸 佐野
Akio Omori
昭夫 大森
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Abstract

【課題】室温から高温に至る広い温度領域での強度、弾性率などの機械的特性及び耐熱性、耐湿熱性、寸法安定性等に優れたPVA系繊維を提供する。
【解決手段】PVA系ポリマーと、ポリマー中に微細に分散した層状ケイ酸塩からなり、広角X線回折で測定した層状ケイ酸塩の平均層間距離が20Å以上であり、かつ結晶化度が40%以上、配向度が60%以上であることを特徴とするPVA系繊維。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、室温から高温に至る広い温度領域での強度、弾性率などの機械的特性及び耐熱性、耐湿熱性、寸法安定性等に優れたポリビニルアルコール系繊維(以下PVA系繊維と略す)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、PVA系繊維は、機械的特性、耐候性、耐アルカリ性等の諸性能に優れることから、水硬性材料、ゴム等の補強材料等に代表される産業分野をはじめとして広く使用されている。
しかしながら、従来のPVA系繊維は一般的に耐熱性がそれほど高くなく、例えば室温における弾性率と100℃における弾性率とを比較すると高温では大きく低下することが知られている。また、一般にPVA系繊維は耐湿熱性に乏しく、湿潤環境下で機械物性が大きく低下したり、収縮することも知られており、これらの性能の不足を改善することが強く求められている。
【0003】
近年になって、ポリマーに層状ケイ酸塩をナノメートルレベルで複合(以下ナノ分散)させる、いわゆるナノコンポジット化技術が盛んに研究されており、当技術により繊維の性能向上を図ることが検討されている。例えば層状ケイ酸塩を含有させたポリアミド樹脂組成物およびフィラメントが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、膨潤性フッ素雲母系化合物を含有させた強化ポリアミドで構成されたフィラメントが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。さらには膨潤性フッ素雲母系化合物を均一に分散させた強化ポリアミド樹脂で構成された人工芝生用ヤーンが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。これら特許文献には、ポリアミド系樹脂に層状ケイ酸塩を均一にナノ分散させることにより、繊維の機械特性や耐熱性、耐熱水性、繊維化工程性が改善されることが記載されている。
【0004】
上記技術では、層状ケイ酸塩をポリマー中にナノ分散させる為に、アミノカルボン酸を層状ケイ酸塩にインターカレーションする事で層間の間隔を予め開いておき、次いでポリアミドを形成するモノマーを層間に挿入させると同時に重縮合させる事によりポリアミド樹脂中に層状ケイ酸塩をナノ分散させ、さらに紡糸、延伸して繊維を製造する方法が開示されているが、ポリアミドの替わりにPVA系ポリマーを用い、上記製造方法にて層状ケイ酸塩をポリマー中にナノ分散させようとする場合、重合後のケン化工程などで化学反応を伴うため化学反応中にケイ酸塩の再凝集などの問題点があった。
【0005】
また、ポリアミドを重合後、層状ケイ酸塩と共に溶融混錬することで層状ケイ酸塩をポリマー中に分散する事も行われているが、混錬時の溶融粘度が高く十分なせん断を与える事ができないため、層状ケイ酸塩をナノ分散させることは困難であった。さらにこの方法では、成形性などの点から、層状ケイ酸塩の添加量を増やす事は困難であった。
【0006】
一方、層状ケイ酸塩を含有させたPVA系繊維に関しては、水膨潤性の層状ケイ酸塩を含有させた、異形断面を有するPVA系繊維が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、含有される層状ケイ酸塩の繊維中における存在形態に関しては記載がなく、また本発明者らの検討結果によれば、層状ケイ酸塩のナノ分散に必要なせん断応力が不十分なため、層状ケイ酸塩の層剥離が起こっておらず、平均層間距離は殆ど拡大していない為か、繊維の機械的特性、耐熱性、耐湿熱性の改善度合いは前記した要求を満たすものではなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−81364号公報
【特許文献2】
特開平8−3818号公報
【特許文献3】
特開平10−130956号公報
【特許文献4】
特開平10−53918号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、層状ケイ酸塩を、繊維を構成するPVA系ポリマー中にナノ分散させることにより、強度、弾性率等の機械的特性、更には耐熱性、耐湿熱性が改善されたPVA系繊維を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、PVA系ポリマーと、ポリマー中に微細に分散した層状ケイ酸塩よりなり、広角X線回折で測定した層状ケイ酸塩の平均層間距離が20Å以上であり、かつ結晶化度が40%以上、配向度が60%以上であることを特徴とするPVA系繊維であり、好ましくはPVA系ポリマー100質量部に対して、層状ケイ酸塩が0.1〜30質量%含有されていることを特徴とする上記のPVA系繊維であり、より好ましくは層状ケイ酸塩がスメクタイト系粘土化合物または合成フッ素雲母である上記のPVA系繊維に関する。
さらに本発明は、溶液粘度が10から700ポイズであるPVA系ポリマーと層状ケイ酸塩を含む溶液にせん断応力を付与して、PVA系ポリマーを前記層状ケイ酸塩の層間にインターカレーションして作成した原液を、紡糸、延伸して製糸することを特徴とするPVA系繊維の製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について具体的に説明する。まず本発明のPVA系繊維を構成するPVA系ポリマーについて説明する。本発明に用いるPVA系ポリマーの重合度は特に限定されるものではないが、得られる繊維の機械的特性や寸法安定性等を考慮すると30℃水溶液の粘度から求めた平均重合度が1200〜20000のものが望ましい。高重合度のものを用いると、強度、耐湿熱性等の点で優れるので好ましいが、ポリマー製造コストや繊維化コストなどの観点から平均重合度が1500〜5000のものが特に好ましい。
【0011】
用いるPVA系ポリマーのけん化度も特に限定されるものではないが、得られる繊維の結晶性及び配向性の点で98モル%以上が好ましく、99モル%以上であると更に好ましい。99.7モル%以上であると耐熱水性が優れるので特に好ましい。
【0012】
また本発明の繊維を構成するPVA系ポリマーは、ビニルアルコールユニットを主成分とするものであれば特に限定されず、他の構成単位を有していてもかまわない。このような構造単位としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類、アクリル酸及びその塩とアクリル酸メチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、ポリアルキレンオキシドを側鎖に有するアリルエーテル類、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル等のニトリル類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル、マレイン酸およびその塩またはその無水物やそのエステル等の不飽和ジカルボン酸等がある。このような変性ユニットの導入法は共重合による方法でも、後反応による方法でもよい。
【0013】
本発明の繊維は上記PVA系ポリマー以外の構成成分として、層状ケイ酸塩を含有する。用いる層状ケイ酸塩としては、その層電荷が0.2〜2.0であり、また陽イオン交換量が50〜200meq/100gであるような陽イオン交換能力を有するものが好ましい。具体的にはモンモリロナイト、サポナイト、ハイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、バイロサイト及びステイブンサイト等のスメクタイト系粘土化合物や、ジ−バーミキュライト、トリ−バーミキュライト、フッ素バーミキュライト等のバーミキュライト系粘土化合物、白雲母、パラゴナイト、イライト等の雲母系粘土化合物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、合成フッ素雲母(Li型四珪素フッ素雲母、Na型四珪素フッ素雲母等)等を例示することができ、これらは、天然物であっても合成物であってもよい。さらに本発明では、これらの層状ケイ酸塩を単独または2種以上組み合わせて用いることができる。この中でも、スメクタイト系粘土化合物または合成フッ素雲母が繊維の機械特性、耐熱性の観点から特に好ましい。
【0014】
また、上記に示した層状ケイ酸塩は、本発明の繊維を溶液紡糸するにあたっての溶媒に対する膨潤性の付与、及びPVA系ポリマーが層間にインターカレーションされ易くなるように層状ケイ酸塩の層間を大きくする目的で、有機化処理等により層状ケイ酸塩の層間がカチオン変性されていても良い。この場合、層間に挿入されるカチオン種は特に限定されるものではないが、特開平2002−3608号公報や特開2001−316551号公報に示されているような、モノアルキル、ジアルキル、トリアルキル、テトラアルキルのアンモニウムイオン等を挙げる事ができる。また、アルキル鎖以外にもエチレンオキサイドを構成単位とする、ポリエチレングリコール鎖を持つ1級〜4級のアンモニウムイオンでも良く、或いは高級脂肪酸の1級〜4級のアンモニウムイオン、高級脂肪酸エステルの1級〜4級のアンモニウムイオン、高級アルコールの1級〜4級のアンモニウムイオンを例示することができる。
【0015】
本発明のPVA系繊維では、層状ケイ酸塩の層と層の間にPVA系ポリマーがインターカレーションされて層間を広げ、平均層間距離を20Å以上となるようにナノ分散されていることが本発明技術のキーポイントである。平均層間距離が20Å未満の場合は、ポリマーの層間へのインターカレーションが不十分であり、従って、ナノ分散も期待できず所望の物性を得ることは出来ない。好ましくは23Å以上であり、より好ましくは27Å以上である。ここで、層間距離とは層状ケイ酸塩の平板の重心間の距離をいい、具体的には、広角X線回折で検出される層状ケイ酸塩の(001)面反射のピーク位置より決定できる。また、ナノ分散とは、層状ケイ酸塩の層一枚、若しくは平均的には10層以下の多層物が、平行またはランダムに、若しくは平行とランダムとが混在した状態で局所的な塊を形成することなく超微細に分散する状態を言う。一方、目視や実体顕微鏡レベルで確認できる1μm以上の大きさの層状ケイ酸塩が多く存在する繊維は本発明のPVA系繊維の範囲外であり、目的である機械特性が発揮されない。本発明の繊維は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて初めてその存在形態を確認する事が出来る。
【0016】
前記した層状ケイ酸塩をPVA系ポリマー中にナノ分散させるには、予め調製しておいたPVAの紡糸原液に層状ケイ酸塩を直接添加した後、攪拌によるせん断応力付与により紡糸原液中で微細に且つ均一に分散させる方法や、予め調製したPVAの紡糸原液と、層状ケイ酸塩分散液をそれぞれ調製し、その後、高速攪拌等によるせん断応力を付与することで達成できる。しかしながら、攪拌能力が低く十分なせん断応力が溶液に付与されない場合は、ポリマー中への層状ケイ酸塩のナノ分散は達成できず、従って、所望の物性を期待することは出来ない。このように、ポリマー中に層状ケイ酸塩をナノ分散させる方法として溶液を用いる事は、紡糸方法に応じ任意の溶媒を選択できること、層状ケイ酸塩のナノ分散が確実かつほぼ完全に行われ、PVA系ナノ分散繊維の性能を引き出しうること、単独溶液の溶液安定性が優れており、また容易に相互に混合しうるため、工程性、コストなど工業的な面で優れるなど種々の長所を有し、実用上最も好ましい。
【0017】
本発明におけるPVA系繊維の製造方法は、比較的粘度の低い溶液状態でのせん断応力付与がキーポイントであり、この手段によってポリマー層状ケイ酸塩へのインターカレーションや、層状ケイ酸塩のナノ分散が効率的に行われる。そのためには、PVA系ポリマーと層状ケイ酸塩混合溶液の90℃における溶液粘度が10〜700ポイズであることが好ましく、50〜500ポイズであることがさらに好ましい。700ポイズ以上の粘度の場合、攪拌効率が悪くなり、溶液全体に均一なせん断応力付与が困難となる。また、溶液粘度を下げる手段として、PVA系ポリマーと層状ケイ酸塩混合溶液を予め加熱しておき、それを攪拌してせん断応力付与を行っても良い。一方、溶液粘度が10ポイズよりも低い場合、紡糸が困難となる。なお、後述するが、攪拌処理を90℃にて行ったため、溶液粘度も90℃で測定した値を示す事にする。
【0018】
本発明のPVA系繊維に含まれる層状ケイ酸塩の含有量は、PVA系繊維を構成するPVA系ポリマー質量に対して、0.1〜30質量%が好ましく、特に好ましくは2〜20質量%である。添加量が0.1質量%未満の場合には、所望の物性を十分に発揮し難く、また添加量が30質量%を越えると、紡糸工程性における曵糸性低下等の問題が生じ、更には繊維自体が脆くなるなど、結果として所望の物性を有する繊維が得難い。
【0019】
本発明のPVA系繊維は、上述のように層状ケイ酸塩がナノ分散しており、且つPVA系ポリマーの結晶化度が40%以上、配向度が60%以上であることが極めて重要である。結晶化度が40%に満たない場合には、繊維の機械特性、耐湿熱性に乏しいものとなり好ましくない。また配向度が60%に満たない場合にも耐熱性、機械特性、耐湿熱性に劣るので好ましくない。結晶化度が60%以上、配向度が80%以上、更に好ましくは結晶化度が70%以上、配向度が90%以上であると機械特性が向上するのでさらに好ましい。なお、ここでいう結晶化度、配向度とは後述する方法により測定した値をいう。
【0020】
何故、本発明のPVA系繊維が、機械特性、耐熱性、耐湿熱性などの諸特性に優れているかは不明であるが、繊維を構成するナノ分散した層状ケイ酸塩とPVA系ポリマーとの相互作用が強く、高温、高湿下のような条件で、諸物性低下を引き起こす分子の運動を抑制するものと推定される。従って、層状ケイ酸塩をナノ分散させることで繊維を構成するPVA系ポリマーとの接触表面積を大きくすることが最も重要である。これは、単にPVA系ポリマーと層状ケイ酸塩を混合しただけでは達成できず、溶液に十分なせん断応力を付与する事で初めて達成できる。
【0021】
本発明のPVA系繊維は、PVA系ポリマー及び層状ケイ酸塩を含む紡糸原液を溶液紡糸、具体的には湿式紡糸、乾湿式紡糸、乾式紡糸して製造される。紡糸原液に用いる溶媒としては、PVA系繊維の製造に際して従来から用いられている溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水、またはグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類、ジエチレントリアミン、ロダン塩などの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、供給性、環境負荷への影響の観点から、DMSO及び水が特に好ましい。紡糸原液中のポリマー濃度は、PVA系ポリマーの組成や重合度、溶媒によって異なるが、6〜60質量%の範囲が一般的である。本発明の効果を損なわない範囲であれば、紡糸原液にはPVA系ポリマー及び層状ケイ酸塩以外にも、目的に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤などの添加剤などが含まれていてもよい。
【0022】
前記した溶液紡糸により得られた本発明のPVA系繊維は、結晶化度40%以上、配向度60%とするための延伸熱処理する事が重要である。このための延伸熱処理条件は、一般的には210℃以上の温度、好ましくは220℃〜260℃の温度で行うのがよく、8倍以上の全延伸倍率、好ましくは10〜25倍の全延伸倍率で延伸すると、繊維の結晶化度と配向度があがり、繊維の機械特性が著しく向上するので好ましい。
【0023】
本発明のPVA系繊維では、用途や目的に応じ、耐熱水性を向上させることを目的としてPVA系繊維で一般的に行われているアセタール化処理やその他の架橋処理を施すこともできる。すなわち、PVA系繊維をPVA系ポリマーの水酸基と反応するホルムアルデヒド等の架橋剤を含む水溶液中で処理して、水酸基を封鎖することで繊維を疎水化することができる。
【0024】
本発明の繊維は、ステープルファイバー、ショートカットファイバー、フィラメントヤーン、紡績糸などのあらゆる繊維形態で用いることができる。その際の繊維の断面形状に関しても特に制限はなく、円形、中空、あるいは星型等異型断面であってもかまわない。さらには、本発明の繊維を他の繊維と混合・併用してもよい。この時、併用しうる繊維として特に限定はないが、層状粘土化合物を含有しないPVA系繊維や、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、セルロース系繊維等を挙げることができる。
【0025】
本発明の繊維は産業資材用、衣料用、医療用等あらゆる用途に好適に使用でき、例えば、各種フィルター、断熱材、高保温性衣料品、ハウスラッピングペーパー、清掃用モップ材、補強用(セメント、ゴム、樹脂等)などに広く使用することができる。特に、力学物性、耐熱性、耐湿熱性に優れることから、セメント、ゴム、樹脂等の補強用繊維として適している。
【0026】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例中、特に断りがない限り、%、部、量比は質量に基づく値である。また本発明におけるPVAと層状ケイ酸塩混合溶液の溶液粘度、ポリマー中の層状ケイ酸塩の平均層間距離及び、繊維の配向度、結晶化度、力学物性、熱水収縮は、以下の方法で測定するものとする。
【0027】
(1)PVA溶液の溶液粘度(poise)
紡糸に用いるPVAと層状ケイ酸塩混合溶液の溶液粘度は、株式会社トキメック製B型粘度計にて、温度90℃の条件下において、No.3のローターを用いて、6〜60rpmの回転数にて測定した。
【0028】
(2)平均層間距離(d)
ポリマー中の層状ケイ酸塩の平均層間距離の測定は、理学電気社製RINT2400を用いて行った。グラファイトモノクロメーターで単色化されたCuKα線を用い、40mV−100mAの条件で測定を行った。スキャンスピードは2θ=1°/min、ステップ幅は0.01°、走査角2°≦2θ≦10°の条件で、繊維軸に対して垂直方向の回折強度の角度依存性を測定した。層状ケイ酸塩の(001)面からの回折ピーク位置を平均層間距離とし、以下のブラッグの式より算出した。
d=λ/2sinθ
λ:X線波長(1.5142Å)
θ:回折角度
【0029】
(3)配向度(fc)
繊維の配向度の測定は、上記(1)と同様、理学電気社製RINT2400を用いて行った。その際、分子鎖方向の結晶回折ピーク(002)面の方位角方向の回折強度分布を測定し、得られた回折強度分布から配向度(fc)より算出した。
fc(%)=(3cosφ−1)/2×100
φ:(002)面の方位各方向の広がり。
(完全配向でfc=100%)
【0030】
(4)結晶化度(Xc)
Perkin Elmer社製Pyris−1型示査走査型熱量型を用いて、試料の融解エンタルーピーを測定した。測定条件は、昇温速度80℃/分で行い、以下の式より重量結晶化度を算出した。なお、標準物質として、インジウム及び鉛を用いて、融点、融解熱の補正を行った。
Xc(%)=ΔHobs/ΔHcal×100
ΔHobs:実測融解熱(J/g)
ΔHcal:完全結晶の融解熱(174.5J/g)
【0031】
(5)ヤーンの引張強度及び初期ヤング率、高温での物性保持率
JISL−1013に準じ、予め調湿されたヤーンを試長20cm、初荷重0.25g/d及び引張速度50%/分の条件で測定し、n=20の平均値を採用した。また、高温でのヤーン物性は、引張り試験機に空気高温槽を取り付け、100℃での物性を測定し、室温での物性で規格化することで、保持率を求めた。なお、繊維太さ(dtex)は質量法により求めた。
【0032】
(6)熱水収縮率
デシテックス当たり2mgのおもりを一端に取り付け、目盛板上に他端を固定して、繊維の長さAoを測定する。これを100℃の熱水中に垂直になるように入れて浸漬させ、30分間放置し、その後熱水中での繊維の長さBoを目盛りから読み取り、以下の式より収縮率を算出した。
熱水収縮率(%)=(Ao−Bo)/Ao×100
【0033】
実施例1
粘度平均重合度1700、けん化度99.9モル%のPVAを濃度23質量%となるようにDMSOに添加し、80℃にて窒素雰囲気下で溶解した(A)。一方、(株)コープケミカル社製合成マイカ(商品名:MEE3000S)をDMSOに10質量%になるように添加し、混合攪拌し層状粘土鉱物分散溶液を得た(B)。(A)中のポリマー100質量部に対して、層状ケイ酸塩が6%になるように、(B)の溶液を加えた。得られたPVAと層状ケイ酸塩の混合溶液を、大阪ケミカル株式会社製オスターブレンダーで90℃、30分高速攪拌(13100rpm)する事で高せん断応力を加え、PVA紡糸原液とした。
【0034】
得られた紡糸原液を、孔径0.08mm、ホール数108のノズルを通して−5℃のメタノール/DMSO=70/30(質量比)よりなる固化浴中に乾湿式紡糸した。
【0035】
得られた固化糸を固化浴と同じメタノール/DMSO組成の第2浴に浸漬した。次いで40℃のメタノール浴中にて4倍の湿延伸を行い、さらに20℃のメタノール浴でDMSOを抽出後、120℃の熱風で乾燥し、紡糸原糸を得た。
【0036】
得られた紡糸原糸を、第一炉180℃、第2炉235℃の熱風延伸炉中で総延伸倍率(湿延伸倍率×熱風炉延伸倍率)が15倍になるように延伸した。性能評価の結果を表1及び2に示す。また典型的な例として、繊維のTEM写真を図1に示す。
【0037】
比較例1
層状ケイ酸塩を添加しない以外は、実施例1と同じ条件で紡糸、延伸し、PVA単独の延伸繊維を得た。性能評価の結果を表1及び2に示す。
【0038】
実施例2〜3
層状ケイ酸塩を3及び10%とした以外は、実施例1と同じ条件で紡糸、延伸し、延伸繊維を得た。性能評価の結果を表1及び2に示す。
【0039】
実施例4
層状粘土化合物を(株)コープケミカル社製合成スメクタイト(商品名:SEN3000S)に変更した以外は、実施例1の方法で紡糸、延伸し延伸繊維を得た。性能評価の結果を表1及び2に示す。
【0040】
実施例5
粘度平均重合度1700、けん化度99.9モル%のPVAを濃度20質量%となるように水添加し、90℃にて窒素雰囲気下で溶解した(A)。一方、(株)コープケミカル社製合成マイカ(商品名:ME100)を水10質量%になるように添加し、混合攪拌し層状粘土鉱物分散溶液を得た(B)。(A)中のポリマー100質量部に対して、層状ケイ酸塩が6%になるように、(B)の溶液を加えた。得られたPVAと層状ケイ酸の混合溶液を、オスターブレンダーで90℃、30分高速攪拌(13100rpm)する事で高せん断応力を加え、PVA紡糸原液とした。
【0041】
得られた紡糸原液を、孔径0.08mm、ホール数108のノズルを通して常温の飽和芒硝浴中に湿式紡糸した。
【0042】
得られた固化糸を90℃の芒硝濃度350g/l浴中に浸漬し、1.5倍の湿延伸を行い、さらに120℃の熱風で乾燥し、紡糸原糸を得た。
【0043】
得られた紡糸原糸を、第一炉180℃、第2炉235℃の熱風延伸炉中で総延伸倍率(湿延伸倍率×熱風炉延伸倍率)が10倍になるように延伸した。性能評価の結果を表1及び2に示す。また典型的な例として、繊維のTEM写真を図2に示す。
【0044】
比較例2
層状ケイ酸塩を添加しない以外は、実施例5の方法で紡糸、延伸し、繊維を得た。性能評価の結果を表1及び2に示す。
【0045】
比較例3
攪拌処理を100rpmの、せん断応力付与が小さくなるような低速回転で行った以外は、実施例5の方法で紡糸、延伸し、延伸繊維を得た。性能評価の結果を表1及び2に示す。また、繊維のTEM写真を図3に示す。
【0046】
比較例4
総延伸倍率を6倍とし、延伸温度を120℃とした以外は、実施例1と同じ条件で紡糸、延伸し、繊維を得た。性能評価の結果を表1及び2に示す。
【0047】
比較例5
湿延伸を1倍とし、総延伸倍率を3倍とした以外は、実施例1と同じ条件で紡糸、延伸し、繊維を得た。その後、その繊維を200℃で10分間熱処理する事で、延伸熱処理繊維を得た。性能評価の結果を表1及び2に示す。
【0048】
実施例6
層状ケイ酸塩をクニミネ工業株式会社製モンモリロナイト(商品名:クニピアF)にした以外は、実施例6の方法で紡糸、延伸し、繊維を得た。性能評価の結果を表1及び2に示す。
【0049】
【表1】
Figure 2005009029
【0050】
【表2】
Figure 2005009029
【0051】
表1、2及び図1、2より、実施例1〜6においては、何れの場合も、層状ケイ酸塩の平均層間距離が20Å以上で、かつ結晶化度が40%以上、配向度が60%以上であるため、比較例1、2で示した層状ケイ酸塩が含有されていないPVA繊維に比べて、高温での強度、弾性率等の機械的特性及び耐湿熱性が優れていた。
【0052】
これに対して、比較例3及び図3で示したように、溶液に十分なせん断応力が付与されていない場合は、層状ケイ酸塩の平均層間距離が20Å未満となり、ナノ分散されているとはいえず、したがって実施例1〜6と比較して、所望の性能を付与することは出来なかった。
【0053】
更には、比較例4及び5で示したように、層状ケイ酸塩の平均層間距離が20Å以上であっても、結晶化度が40%未満や配向度が60%未満の場合には、繊維としての性能が低く、その物性は実施例1〜6と比較しても極めて劣るものであった。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、層状ケイ酸塩を、繊維を構成するPVA系ポリマー中にナノ分散させる事で、従来のPVA系繊維本来の性能を損なうことなく、機械的特性、高温での強度、弾性率の保持率、熱水での寸法安定性が良好なPVA系繊維を得る事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、層状ケイ酸塩がナノ分散したPVA繊維のTEM写真。
【図2】本発明の、層状ケイ酸塩がナノ分散したPVA繊維のTEM写真。
【図3】比較例3の、層状ケイ酸塩がナノ分散されていないPVA繊維のTEM写真。

Claims (4)

  1. ポリビニルアルコール系ポリマーと、ポリマー中に微細に分散した層状ケイ酸塩よりなり、広角X線回折で測定した層状ケイ酸塩の平均層間距離が20Å以上であり、結晶化度が40%以上、配向度が60%以上であることを特徴とするポリビニルアルコール系繊維。
  2. ポリビニルアルコール系ポリマー100質量部に対して、層状ケイ酸塩が0.1〜30質量%含有されていることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系繊維。
  3. 層状ケイ酸塩がスメクタイト系粘土化合物または合成フッ素雲母である請求項1または請求項2記載のポリビニルアルコール系繊維。
  4. 溶液粘度が10から700ポイズであるポリビニルアルコール系ポリマーと層状ケイ酸塩を含む溶液にせん断応力を付与して、ポリビニルアルコール系ポリマーを前記層状ケイ酸塩の層間にインターカレーションして作成した原液を、紡糸、延伸して製糸することを特徴とするポリビニルアルコール系繊維の製造方法。
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