JP2005008906A - 高周波磁気特性の優れた高強度無方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.02%以下、P:0.2%以下、Si:4.5%以下、Mn:3%以下、Al:3%以下およびCu:0.5〜4%を含み、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有し、板厚が0.05〜0.34mmの範囲にあり、引張強さが550MPa以上にあるものとする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無方向性電磁鋼板、特に高速回転モータのロータを典型例とする、大きな応力がかかる部品に用いて好適な、高強度でかつ低鉄損の特性を有する無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気自動車(EV)やハイブリット電気自動車(HEV)の駆動用モータでは、その小型化および高効率化が強く要望されている。そして、これらの要望に答えるために、ロータの回転数を現状の数千回転から数万回転に高めることが指向されている。従って、この高回転型のモータに使用されるロータには、大きな遠心力が作用することとなる。
【0003】
特に、近年、高効率モータの主流となっている永久磁石をロータ内部に埋め込んだ、埋め込み磁石式(IPM)モータでは、高速回転時に磁石が半径方向に飛び出そうとする力が働くため、コア材の強度が低い場合にはコアが半径方向に変形し、極端な場合には、ロータとステータとが接触したり、磁石が飛散するという問題が生じる。このロータの変形を抑制するため、コア材料には強度の優れた材料が要望されている。
【0004】
一方、モータを高速回転する場合は、コア材の励磁周波数が高くなるため、コア材料には、モータの発熱防止の観点から、高周波鉄損の低い材料が強く要望され、通常は電磁鋼板が使用されている。従って、高周波磁気特性に優れ、かつ高強度の電磁鋼板がモータ用素材として要望されているのである。
【0005】
このような高速回転機に使用される高強度の電磁鋼板として、例えば特許文献1には、Si:2〜3.5%を含む鋼にMnを0.1〜6%およびNiを0.3〜6%添加し、結晶粒径を30μm以下とする技術が開示されている。しかし、この技術では、強度は高いものの、結晶粒の微細化に起因して、鉄損W15/50が6W/kg程度と非常に高いという問題を有している。
【0006】
また、特許文献2には、Si:0.05〜3.2%の鋼にTiおよびVを添加し、TiおよびV系の炭窒化物を利用して高強度化を図る技術が開示されている。この技術では、引張強さ590MPa以上の強度が得られているものの、炭窒化物が比較的粗大に析出しているために、鉄損が高いという問題を有している。
【0007】
一方、高周波用途の低鉄損材料として、例えば特許文献3には、Si:1〜4%を含み、板厚が0.1〜0.25mmの薄電磁鋼板の技術が開示されている。この技術では、高周波鉄損は低いものの、強度は考慮されておらず、高速回転機のコア材料としては、強度面からその適用に限界があった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭64−226号公報
【特許文献2】
特開平10−18005号公報
【特許文献3】
特開平8−60311号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来の技術は、高強度と低鉄損とを両立するという観点からは、いずれも満足できるものでは無かった。
そこで、本発明は、良好な磁気特性、とりわけ高周波磁気特性と高強度とを両立した無方向性電磁鋼板について提案することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記の課題を解決するために、Cuを含んだ鋼の時効硬化現象に着目して種々の検討を行った結果、良好な鉄損と高強度とを両立するための手段を確立するに到った。すなわち、鋼中の析出物は高強度化に寄与すると同時に、磁壁移動を抑制して鉄損を増大させるという、従来の知見に反して、鋼中にCuを適量添加して時効処理を行うことにより、極微細にCuを析出させた場合には、強度上昇は大きいものの、鉄損(履歴損)はほとんど劣化しないことを、新規に知見した。さらに、Cuを添加してCu系の微細析出物を析出させた上で、板厚を低減することにより、磁気特性を損なうことなく高強度化が達成されることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)質量%で、
C:0.02%以下、
P:0.2%以下、
Si:4.5%以下、
Mn:3%以下、
Al:3%以下および
Cu:0.5〜4%
を含み、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有し、板厚が0.05〜0.34mmの範囲にあり、引張強さが550MPa以上であることを特徴とする高周波磁気特性の優れた高強度無方向性電磁鋼板。
【0012】
(2)板厚が0.27mm以下である上記(1)に記載の高周波磁気特性の優れた高強度無方向性電磁鋼板。
【0013】
(3)鉄損W5/1kが20W/kg以下、そして周波数50Hzおよび磁束密度1.7Tにおける励磁実効電流Iが4500A/m以下であり、さらに鉄損W5/1kと励磁実効電流Iとが下記式の関係を満足する上記(1)または(2)に記載の高周波磁気特性の優れた高強度無方向性電磁鋼板。
記
I×W5/1k≦5.5×104
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を導くに到った実験結果について詳細に説明する。なお、本明細書において鋼組成を表す%は、特にことわらない限り質量%を意味するものである。
最初に、高強度電磁鋼板の強度と磁気特性との関係を調査するため、以下の4種類の鋼板を用意した。
鋼種1:固溶強化タイプの電磁鋼板として、C:0.002%、Si:4.5%、Mn:1%、P:0.01%、Al:0.6%およびMo:1.5%を含む鋼を溶製し、熱間圧延し、900℃で30sの熱延板焼鈍を行った後、400℃で温間圧延して0.20mm厚に仕上げ、950℃×30sの仕上げ焼鈍を行った。
【0015】
鋼種2:結晶粒微細化タイプの電磁鋼板として、C:0.005%、Si:3.5%、Mn:1%およびP:0.05%を含む鋼を溶製し、熱間圧延し、850℃で30sの熱延板焼鈍を行った後、冷間圧延して0.20mm厚としたのち、800℃で30sの仕上げ焼鈍を行った。
【0016】
鋼種3:析出強化タイプの電磁鋼板として、C:0.031%、Si:2.6%、Mn:0.2%、P:0.02%、Al:0.65%、N:0.003%、Nb:0.018%およびZr:0.022%を含む鋼を溶製し、熱間圧延後0.20mm厚に冷間圧延し、750℃×30sの仕上げ焼鈍を施した。
以上の鋼種1〜3については、時効処理を行わなかった。
【0017】
鋼種4:Cuの析出強化を利用した電磁鋼板として、C:0.002%、Si:3.2%、Mn:0.18%、P:0.01%、Al:0.55%およびCu:1.1%を含む鋼を溶製し、熱間圧延後900℃で30sの熱延板焼鈍を行い、0.20mm厚に冷間圧延し、900℃×30sの仕上げ焼鈍を施し、さらに550℃×1hの時効処理を施した。
【0018】
このようにして得られた材料の磁気特性および機械特性について調査した結果を、表1に示す。なお、磁気特性は、25cmエプスタイン法により、磁束密度0.5Tおよび周波数1kHzでの鉄損W5/1kと、1.7Tおよび50Hzでの励磁実効電流Iとを評価した。また、引張試験はJIS 13号B試験片を用いて行った。
【0019】
ここで、W5/1kと1.7Tおよび50Hzの励磁実効電流とを評価した理由は、以下の通りである。
すなわち、上述したEVやHEV等の高周波モータは、50Hz程度の低周波域から高周波域まで広い周波数域で駆動される。そして、低周波域では、特に高トルクの観点から高磁束密度で使用され、一方、高周波域では、誘起電圧を抑えるため比較的低磁場域で駆動される。なぜなら、高トルク域では励磁電流が多く必要となるため、励磁実効電流の高い材料は銅損が大きくなり、一方、W5/1kが高い材料は高周波域の鉄損が大きくなるためである。このため、高周波モータ用材料としては、両者の低い材料が好ましい。
【0020】
【表1】
【0021】
表1より、従来の固溶強化、細粒強化および析出強化を利用した鋼種1〜3では、引張強さ700MPa以上の高い強度が得られているが、周波数1kHzでの鉄損W5/1kは20W/kgを超えており、励磁実効電流も高い値となっている。
これに対して、Cuの析出強化を利用した材料では、鉄損、励磁実効電流および強度共に良好な値を示している。この理由は、時効処理を経て析出した数nm〜数10nm程度の非常に微細なCu析出物は、転位をピン止めすることにより高強度化に寄与するものの、磁壁の移動はほとんど妨げないため、良好な鉄損が得られたものと考えられる。
すなわち、Cu析出を利用した本発明では、従来の高強度電磁鋼板で達成することができなかったレベルの、強度−磁気特性バランスが得られることがわかる。
【0022】
次に、高強度化に必要なCu添加量を調査するための実験を行った。すなわち、C:0.0020%、Si:3.0%、Mn:0.18%、P:0.01%およびAl:0.60%を含み、Cuを0.01〜5%の範囲で変化させた鋼スラブを、熱間圧延後900℃で30sの熱延板焼鈍を行い、0.20mm厚に冷間圧延し、900℃×30sの仕上げ焼鈍を施し、さらに550℃×1hの時効処理を施した。かくして得られた鋼板について、JIS Z2241に準拠した引張試験により引張強さを調査した。
【0023】
その調査結果を、Cu添加量と引張強さとの関係として、図1に示す。図1から、強度を向上させるためにはCu添加量を0.5%以上とする必要があることがわかる。すなわち、Cuが0.5%未満では、時効処理を行ったとしても十分なCu析出が得られないためである。一方、4%を超えてCuを添加すると、逆に強度は低下する。これは粗大な析出物が形成されるためである。従って、Cuの添加量は、0.5%以上4%以下とする。
【0024】
ここで、本発明において、Cuはモータコアの状態で微細に析出していることが特徴であり、この点から従来の集合組織制御等の目的から、Cu添加を行った電磁鋼板とは全く異なるものである。
【0025】
なお、Cuを析出させるための時効処理は、400℃〜650℃にて10min〜1000hとすることが推奨される。
【0026】
製品板の板厚は0.05〜0.34mm、好ましくは上限を0.27mmとする。これは、板厚0.34mm以下とすることにより高周波鉄損が低下し、特に0.27mm以下では、I×W5/1k≦5.5×104となりモータ効率が向上するためである。さらに、YS≧550MPaの材料で板厚が0.34mm超の場合には打ち抜きが困難であるが、板厚0.34mm以下の場合には高強度化により打ち抜き作業性が向上するためである。一般に、高強度材料で板厚が薄い場合にはチッピング等が懸念されるが、Cu添加により強化を図った本材料ではCu析出粒子が軟質でチッピング等は生じないため、むしろ薄手材を打ち抜きの際に問題となる鋼板のたわみ等が抑制でき、打ち抜き作業が容易となる、ということを新たに知見した。しかし、板厚が0.05mm未満では積層枚数が増大し、作業工数が増えるため下限を0.05mmとする。
【0027】
また、高強度材における励磁実効電流および鉄損とモータ効率との関係を調査するため、8極のIPMモータを試作した。モータは、ロータ外径110 mm、ステータ外径160 mmおよび固定子スロット数は24とし、永久磁石はNeFeB系の磁石を用いた。そして、コア材料として、種々の高強度材料(TS>550MPa)を適用してモータを試作し、この試作モータにおける効率を調査した。ここで、モータ効率は、トルクの要求される周波数50Hzではティース磁束密度1.7Tで測定し、トルクがそれほど要求されない周波数1kHzではティース磁束密度0.5Tでの効率を評価し、その平均値とした。
【0028】
図2に、このモータ効率と鋼板における励磁実効電流および鉄損との関係を示す。図2から、励磁実効電流4500A/m以下および鉄損20W/kg以下で、かつI×W5/1k≦5.5×104の場合に90%以上の効率が得られていることがわかる。すなわち、励磁実効電流Iが4500A/m超の材料では、高トルク域で駆動した場合に銅損の上昇が大きいために効率が低下し、一方、鉄損20W/kg超では高周波駆動時の鉄損が大きいために効率が低下したものと考えられる。さらに、I×W5/1kが5.5×104超の領域では、鉄損および銅損の両者が増大したことにより、効率が低下したものと考えられる。
【0029】
従って、電磁鋼板をモータに適用した際の効率を考慮する場合は、周波数1kHzでの鉄損W5/1kは20W/kg以下、1.7Tおよび50Hzでの励磁実効電流Iは4500A/mとし、さらにI×W5/1k≦5.5×104とする。
【0030】
以下に、本発明について、その構成要件毎に詳述する。
(鋼板の成分組成)
まず、成分組成範囲およびその限定理由を説明する。
C:0.02%以下
Cは、磁気時効の問題があるため、0.02%以下とした。
P:0.2%以下、
Pは、鋼板の高強度化に有効な元素であるが、0.2%を超えて添加すると鋳造時の中央偏析が生じやすく、また鋼板が脆化し冷間圧延性が著しく低下するため、0.2%以下とした。
【0031】
Si:4.5%以下、
Siは、鋼板の固有抵抗を上げるために有効な元素であるが、4.5%を超えると冷間圧延性および温間圧延性が著しく低下するため、上限を4.5%、望ましくは飽和磁化の観点から4.0%未満とする。
【0032】
Mn:3%以下、
Mnは、熱間圧延時の赤熱脆性を防止するために有効な元素であり、好ましくは0.05%以上で含有させるが、3%を超えると磁束密度を低下させるため、上限を3%とした。
【0033】
Al:3%以下
Alは、Siと同様、固有抵抗を上げるために有効な元素であり、好ましくは0.1%以上で含有させるが、3%を超えると飽和磁化が低下するとともに、鋳造性等も著しく低下するため上限を3%とした。
【0034】
Cu:0.5〜4%
Cuは、磁気特性を損なうことなく強度を上昇するために添加する成分であり、その上、下限を設定した理由は、上述した通りである。
【0035】
本発明に係わる無方向性電磁鋼板の基本組成は以上の通りであるが、上記成分に加えて、磁気特性の改善元素として知られるSb、Sn、B、Ni、Cr、CoおよびREMを単独または複合で添加することが出来る。しかし、その添加量は本発明の目的を害さない程度にすべきである。具体的には、
Sb:0.005〜0.05%、
Sn:0.005〜0.1%、
B:0.0002〜0.002%、
Ni:0.1〜5%、
Co:0.2〜3%および
REM:0.001〜0.01%
である。また、Crに関しては、飽和磁化を低下させるため、添加する場合には0.8%以下とすることが望ましい。
【0036】
引張強さは550MPa以上とし、より望ましくは600MPa以上とする。これは、550MPa未満の強度では高速回転時にローターが変形するためである。
【0037】
(製造方法)
本発明に係わる鉄損に優れた高強度無方向性電磁鋼板を製造するには、まず、転炉あるいは電気炉などにて、前記した所定成分に溶製された鋼を、連続鋳造あるいは造塊後の分塊圧延により鋼スラブとする。次いで、得られたスラブを熱間圧延し、必要に応じて熱延坂焼鈍を施し、一回あるいは中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延あるいは温間圧延を施して製品板厚とし、仕上げ焼鈍を施し、その後時効処理を施す。さらに、仕上げ焼鈍後のいずれかの段階において、必要に応じて絶縁被膜の塗布および焼き付け処理を行う。
【0038】
引き続き行われる時効処理は、400℃以上650℃以下の温度で行うことが好ましい。すなわち、400℃未満の場合には、微細Cuの析出が不十分となり、高強度が得られない、おそれがある。一方、650℃を超えると、Cu析出物が粗大化して鉄損が劣化し強度上昇量も減少するため、良好な強度−鉄損バランスを有する電磁鋼板が得られない、おそれがある。さらに、適切な時効時間としては、処理温度にも依存するが、10min〜1000hが好適である。
なお、この時効処理の実施時期は、絶縁被膜の塗布焼付け前、焼付け後、プレス打ち抜きなどの加工後、などのいずれのタイミングで実施してもよいが、薄手材の打ち抜き時のたわみを防止するためには、打ち抜き前の時効が好ましい。
【0039】
【実施例】
実施例1
転炉で吹練した後に脱ガス処理を行うことにより、表2に示す成分組成に調整した溶鋼から鋼スラブを鋳造し、このスラブを1140℃で1h加熱した後、板厚2.0mmまで熱間圧延を行った。熱延仕上げ温度は800℃とした。巻取り温度は600℃とし、900℃×30sの熱延板焼鈍を施した。その後、0.18mm厚まで冷間圧延を行い、950℃×30sの仕上焼鈍を行い、種々の条件で時効処理を行った。
【0040】
かくして得られた鋼板から採取した、25cmエプスタイン試験片を用いて磁気測定を行うとともに、JIS 13号B試験片を用いて引張試験を行った。各鋼板の磁気特性および引張強さを、表2に併せて示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2から、成分および時効処理条件を適切な範囲内としたものは、鉄損および強度に優れていることがわかる。
これに対し、Cuを添加しない場合(鋼板1および2)では、時効処理により強度が上昇しないことがわかる。また、時効処理時間が短い場合(鋼板3)や、時効処理温度が低い場合(鋼板9)ではCuが十分に析出しておらず、必要な強度レベルが得られていない。さらに、析出時間が長すぎる場合(鋼板8)や、時効温度が高すぎる場合(鋼板12)にはCuの析出物サイズが粗大となっており、鉄損が増大するとともに、強度上昇も小さくなっている。
【0043】
実施例2
転炉で吹練した後に脱ガス処理を行うことにより、表3に示す成分組成に調整後鋳造して得た鋼スラブを、1140℃で1h加熱した後、板厚2.0mmまで熱間圧延を行った。熱延仕上げ温度は800℃とした。巻取り温度は600℃とし、900℃×30sの熱延板焼鈍を施した。その後、表3に示す種々の板厚まで冷間圧延もしくは温間圧延を行い、表3に示す仕上焼鈍条件で焼鈍を行い、550℃×1hの時効処理を行った。
【0044】
かくして得られた鋼板から採取した、25cmエプスタイン試験片を用いて磁気測定を行うとともに、JIS 13号B試験片を用いて引張試験を行った。各鋼板の磁気特性および引張強さを、表3に併せて示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3より、本発明に従う成分組成および板厚とした場合に、高周波磁気特性並びに強度に優れた電磁鋼板が得られることがわかる。
これに対し、Cuを添加していない場合(鋼板13)では強度が低く、細粒化により高強度化を図った場合(鋼板14)では、強度は高いものの鉄損が高くなっている。また、固溶強化により高強度化を図った場合(鋼板15)では、励磁実効電流が高くなっている。Cuが本発明範囲以上である鋼板20では、Cuが粗大化したため、鉄損が増大し、強度が低下している。
【0047】
一方、板厚が本発明範囲をはずれている鋼板24では、鉄損が高くなっている。さらに、Siが本発明範囲を外れた鋼板29では励磁実効電流が高く、Pが本発明範囲を外れた鋼板30では、圧延時に鋼板が破断し、製品を得ることができなかった。また、AlおよびMnが本発明を外れた鋼板32および33では、励磁実効電流が高くなった。
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば鉄損、強度バランスに優れ、励磁実効電流の低い材料を得ることができる。従って、本発明の無方向性電磁鋼板は、EVやHEVモータ、高速発電機、大型発電機のロータ材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cu添加量と引張強さとの関係を示す図である。
【図2】鉄損および励磁実効電流とモータ効率との関係を示す図である。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.02%以下、
P:0.2%以下、
Si:4.5%以下、
Mn:3%以下、
Al:3%以下および
Cu:0.5〜4%
を含み、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有し、板厚が0.05〜0.34mmの範囲にあり、引張強さが550MPa以上であることを特徴とする高周波磁気特性の優れた高強度無方向性電磁鋼板。 - 板厚が0.27mm以下である請求項1に記載の高周波磁気特性の優れた高強度無方向性電磁鋼板。
- 鉄損W5/1kが20W/kg以下、そして周波数50Hzおよび磁束密度1.7Tにおける励磁実効電流Iが4500A/m以下であり、さらに鉄損W5/1kと励磁実効電流Iとが下記式の関係を満足する請求項1または2に記載の高周波磁気特性の優れた高強度無方向性電磁鋼板。
記
I×W5/1k≦5.5×104
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