JP2005008670A - 発泡性スチレン系樹脂粒子及びその製造方法 - Google Patents

発泡性スチレン系樹脂粒子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた難燃性能を有し,かつ強度に優れた発泡成形体を得ることができるとともに,有機添加剤等の含有量が少ない発泡性スチレン系樹脂粒子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】発泡剤と難燃剤と芳香族炭化水素類とを含有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法である。上記製造方法においては,密閉容器内の水性媒体中に,原料モノマーと,難燃剤とともに,重合開始剤として,第一有機過酸化物及び第二有機過酸化物を添加して分散させる。その後,上記密閉容器内を70〜100℃にて加熱し,次いで100〜130℃にて加熱して,重合反応をおこなう。上記第一有機過酸化物の原料モノマー中における活性酸素濃度をO(%),上記第二有機過酸化物の原料モノマー中における活性酸素濃度O(%)とすると,活性酸素濃度比O/Oが1以上となるように,第一有機過酸化物及び第二有機過酸化物を添加する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,難燃性能及び成形したときの強度に優れ,かつ有機添加剤の含有量の少ない発泡性スチレン系樹脂粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
発泡性スチレン系樹脂粒子から得られるスチレン系樹脂発泡成形体は,その優れた断熱性能により住宅用断熱材や保冷箱等に使用されている。
特に,住宅用断熱材等の用途には,難燃剤等が添加された,自己消火性能を有するスチレン系樹脂発泡成形体が好適に用いられている。また,近年,化学物質過敏症,いわゆるシックハウス症候群に対応するため,有機溶剤等の有機添加剤の含有量が少ない住宅用断熱材が求められている。
【0003】
上記スチレン系樹脂発泡成形体に用いられる難燃剤としては,臭素含有炭化水素が一般的である。このような難燃剤を用いるときには,その難燃性能を充分なものにするために,ジクミルパーオキサイド等のような難燃助剤を併用しなければならないことが多い。
【0004】
一方,アリル構造を有する臭素含有炭化水素等の難燃剤は,難燃性能が非常に高く難燃剤の添加量が少なくて済み,難燃助剤も必要としない。
ところが,スチレンモノマーにアリル構造を有する臭素含有炭化水素を溶解させて重合を行うと,得られるスチレン系樹脂の分子量が小さくなったり,未反応のスチレンモノマーが多く残留した発泡性スチレン系樹脂粒子しか得られない場合がある。そして,このような発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して成形体を作製した場合には,得られる成形体の強度が低くなってしまうという問題があった。また,残留したスチレンモノマー等の有害な芳香族炭化水素類が成形体から飛散してしまうおそれがあった。
【0005】
そこで,このような問題を回避する方法として,あらかじめ重合させたスチレン系樹脂粒子を,密閉容器中,水性媒体に分散させ,アリル構造を有する臭素含有炭化水素を難燃剤として添加し,トルエンのような有機溶剤及び発泡剤とともに含浸させる方法がある(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−130898号公報
【0007】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来の方法においては,トルエンのような有機溶剤を用いて難燃剤を含浸させているため,得られる樹脂粒子中に含まれる有機溶剤の含有量が多くなってしまうという問題があった。その結果,このような樹脂粒子を成形して得られる成形体においても多くの有機溶剤が含まれるため,特に住宅用断熱材等の用途に適したものを得ることはできなかった。
【0008】
本発明は,かかる従来の問題に鑑みてなされたもので,優れた難燃性能を有し,かつ強度に優れた発泡成形体を得ることができるとともに,有機添加剤等の含有量が少ない発泡性スチレン系樹脂粒子及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
第1の発明は,発泡剤と難燃剤と芳香族炭化水素類とを含有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法において,
密閉容器内に水性媒体を入れ,該水性媒体中に,芳香族ビニルモノマーを含有してなる原料モノマー100重量部と,上記難燃剤としてのアリル構造を有する臭素有機化合物0.3〜3重量部とともに,重合開始剤として,10時間半減期温度が60〜85℃である第一有機過酸化物及び10時間半減期温度が85〜110℃である第二有機過酸化物を添加して分散させる原料分散工程と,
上記原料分散工程後に,上記密閉容器内を70〜100℃にて加熱し,次いで100〜130℃にて加熱して,重合反応をおこなう重合工程と,
上記密閉容器内に発泡剤を添加する発泡剤含浸工程とを有し,
上記原料分散工程においては,上記第一有機過酸化物の上記原料モノマー中における活性酸素濃度をO(%)とし,上記第二有機過酸化物の上記原料モノマー中における活性酸素濃度をO(%)としたとき,Oに対するOの比である活性酸素濃度比O/Oが1以上となるように,上記第一有機過酸化物及び上記第二有機過酸化物を添加することを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法にある(請求項1)。
【0010】
上記第1の発明の製造方法においては,上記原料分散工程と,上記重合工程と,上記発泡剤含浸工程とを行う。そして,上記重合開始剤として,上記第一有機過酸化物及び上記第二有機過酸化物を用い,上記原料分散工程においては,上記活性酸素濃度比O/Oが1以上となるように,上記第一有機過酸化物及び上記第二有機過酸化物を上記水性媒体中に添加する。
【0011】
そのため,本発明の製造方法においては,上記難燃剤として,アリル構造を有する臭素有機化合物を用いているにも拘わらず,上記重合工程において,上記原料モノマーが充分に重合することができ,未反応のモノマーはほとんど残らない。
それ故,本発明の製造方法にて得られる上記発泡性スチレン系樹脂粒子においては,上記原料モノマーが残留することによって生じる芳香族炭化水素類を,例えば0.2重量%以下という極めて少量に抑えることができる。このような発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して得られる発泡成形体は,優れた強度を有するものとなる。また,発泡成形体から飛散する有害な芳香族炭化水素類の量を大幅に減らすことができる。
【0012】
また,本発明の製造方法においては,上記難燃剤として,アリル構造を有する臭素有機化合物を用いている。
そのため,上記発泡性スチレン系樹脂粒子は,難燃助剤等を用いることなく優れた断熱性能を発揮することができ,かつ,難燃剤の含有量を低減させることができる。
【0013】
また,本発明の製造方法においては,例えばトルエンなどような有機溶剤を用いることなく上記発泡性スチレン系樹脂粒子を作製することができる。そのため,上記発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して得られる成形体においては,該成形体からの有機溶剤等の化学物質の飛散量を大幅に低減させることができ,成形体を住宅用断熱材等の用途に適したものとすることができる。
【0014】
このように,上記第一の発明によれば,優れた難燃性能を有し,かつ強度に優れた発泡成形体を得ることができるとともに,有機添加剤等の含有量が少ない発泡性スチレン系樹脂粒子及びその製造方法を提供することができる。
【0015】
第2の発明は,上記第一の発明(請求項1)の製造方法により得られた発泡性スチレン系樹脂粒子にある(請求項5)。
【0016】
上記第2の発明の発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は,上記第1の発明の製造方法により得られたものである。
そのため,上記発泡性スチレン系樹脂粒子は,優れた難燃性能を有し,かつ強度に優れた発泡成形体を得ることができるとともに,有機添加剤等の含有量が少ないものとなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明において,上記原料分散工程においては,例えば撹拌装置の付いた密閉容器内に,例えば水等の水性媒体を入れ,該水性媒体に上記原料モノマーと,上記難燃剤と,上記重合開始剤とを添加し分散させる。上記原料モノマーと,上記難燃剤と,上記重合開始剤とは,それぞれ別々に上記水性媒体中に分散させることができる。また,上記難燃剤及び上記重合開始剤は,上記原料モノマー中に予め溶融させた状態で,上記水性媒体中に添加することもできる。
【0018】
また,上記原料モノマーは,芳香族ビニルモノマーを含有してなる。
芳香族ビニルモノマーとしては,例えばスチレン,α−メチルスチレン,o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−エチルスチレン,2,4−ジメチルスチレン,p−メトキシスチレン,p−n−ブチルスチレン,p−t−ブチルスチレン,o−クロロスチレン,m−クロロスチレン,p−クロロスチレン,2,4,6−トリブロモスチレン,スチレンスルホン酸,スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。上記芳香族ビニルモノマーは単独で用いても,2種類以上混合して用いても良い。
芳香族ビニルモノマーとしては,スチレンを主成分として用いることが製造コストの点,得られる発泡成形体の成形加工のしやすさの点で好ましい。
【0019】
また,上記原料分散工程においては,上記原料モノマー100重量部に対して,上記難燃剤を0.3〜3重量部添加する。
上記難燃剤の添加量が0.3重量部未満の場合には,難燃性能を充分に発揮できず,自己消火性が発現しないおそれがある。一方,3重量部を超える場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子中のスチレン系樹脂の分子量が低下し,発泡成形体としたときの強度が低下するおそれがある。
【0020】
上記難燃剤は,アリル構造を有する臭素有機化合物である。
このような臭素有機化合物としては,例えば2,2−ビス(4−(2−アリルオキシ)−3,5−ジブロモフェニル)プロパン,及び2,4,6−トリブロモフェノールアリルエーテル等が挙げられる。
【0021】
また,上記原料モノマーとしては,上記の芳香族ビニルモノマーと,該芳香族ビニルモノマーと共重合可能なビニルモノマーとを併用しても良い。
このようなビニルモノマーとしては,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸プロピル,アクリル酸ブチル,アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸プロピル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル;ヒドロキシエチルアクリレート,ヒドロキシプロピルアクリレート,ヒドロキシエチルメタクリレート,ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基を含有するビニルモノマー;アクリロニトリル,メタクリロニトリル等のニトリル基を含有のビニルモノマー;酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル等の有機酸ビニル化合物;エチレン,プロピレン,1−ブテン,2−ブテン等のオレフィン化合物;ブタジエン,イソプレン,クロロプレン等のジエン化合物,塩化ビニル,臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン化合物;N−フェニルマレイミド,N−メチルマレイミド等のマレイミド化合物などが挙げられる。
【0022】
また,上記原料モノマーには,気泡核剤,可塑剤,連鎖移動剤,ハロゲン系難燃剤,非ハロゲンリン系難燃剤,含ハロゲンリン系難燃剤,無機系難燃剤,難燃助剤,帯電防止剤,酸化防止剤,紫外線吸収材,光安定剤,導電性フィラー,有機系抗菌剤,及び無機系抗菌剤等の添加剤を添加することができる。また,ゴム成分を添加することもできる。また,これらの添加剤は,上記発泡性スチレン系樹脂粒子を製造した後に,該発泡性スチレン系樹脂粒子に塗布することにより,含有させることもできる。
【0023】
上記気泡核剤としては,例えばポリエチレンワックス,タルク,シリカ,エチレンビスステアリルアミド,メタクリル酸メチル系共重合体,及びシリコーン等がある。
上記可塑剤としては,例えば流動パラフィン,グリセリンジアセトモノラウレート,グリセリントリステアレート,フタル酸ジ−2−エチルヘキシル,及びアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル等がある。
上記連鎖移動剤としては,例えばドデシルメルカプタン,及びα−メチルスチレンダイマー等がある。
【0024】
上記ハロゲン系難燃剤としては,例えばヘキサブロモベンゼン,テトラブロモシクロオクタン,ヘキサブロモシクロドデカン,テトラブロモブタン,ヘキサブロモシクロヘキサン,トリブロモフェノール,テトラブロモビスフェノールA,エチレンビスブロマイド・2,2−ビス(4−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン縮合物,2,2−ビス(4−(2,3−ジブロモプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル)プロパン,デカブロモジフェニルエーテル,オクタブロモジフェニルエーテル,パークロロシクロペンタデカン,及び塩素化ポリエチレン等がある。
【0025】
上記非ハロゲンリン系難燃剤としては,例えばトリメチルホスフェート,トリエチルホスフェート,トリブチルホスフェート,トリオクチルハスフェート,トリブトキシエチルホスフェート,トリフェニルホスフェート,及びトリクレジルホスフェート等がある。
上記含ハロゲンリン系難燃剤としては,例えばトリス(クロロエチル)ホスフェート,トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート,トリス(クロロプロピル)ホスフェート,トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート,及びトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等がある。
【0026】
上記無機系難燃剤としては,例えば水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウム,炭酸カルシウム,アルミン酸カルシウム,三酸化アンチモン,膨張性黒鉛,及び赤リン等がある。
上記難燃助剤としては,例えばジクミルパーオキサイド,及び2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等がある。
【0027】
上記帯電防止剤としては,例えばアルキルジエタノールアミン,グリセリン脂肪酸エステル,及びアルキルスルホン酸ナトリウム等がある。
上記酸化防止剤としては,例えばフェノール系,リン系,及びイオウ系などの酸化防止剤がある。
上記紫外線吸収剤としては,例えばベンゾトリアゾール系及びベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤がある。
上記光安定剤としては,例えばヒンダードアミン系等の光安定剤がある。
上記導電性フィラーとしては,例えば導電性カーボンブラック,黒鉛粉,銅亜鉛合金粉,銅粉,銀粉,及び金粉等がある。
【0028】
上記有機系抗菌剤としては,例えばIPBC,TBZ,BCM,TPN等がある。
上記無機系抗菌剤としては,例えば銀系,銅系,亜鉛系,酸化チタン系等の無機系抗菌剤がある。
また,上記のゴム成分としては,ブタジエンゴム,スチレン−ブタジエンゴム,イソプレンゴム,エチレン−プロピレンゴム等がある。
【0029】
また,上記重合開始剤としては,10時間半減期温度が60〜85℃である上記第一有機過酸化物及び10時間半減期温度が85℃〜110℃である第二有機過酸化物を用いる。
10時間半減期温度は,例えば次のようにして測定することができる。
即ち,まず,0.1mol/リットルになるように有機過酸化物をベンゼンに溶解し,これを窒素置換を行ったガラス管に封入して所定温度にセットした恒温槽に浸し,熱分解させる。
【0030】
ここで,分解速度定数をk,時間をt,有機過酸化物の初期濃度を[PO],時間t後の濃度を[PO]とすると,kt=ln[PO]/[PO]で表されるので,時間tとln[PO]/[PO]の関係をプロットし,その傾きから分解速度定数kを求める。
【0031】
半減期時間t1/2で,[PO]/[PO]=2となるので,t1/2=ln2/kの関係式より,ある温度での半減期時間t1/2を求めることができる。数点の温度について同様に半減期時間t1/2を求め,Lnt1/2と1/Tの関係をプロットすることで,10時間半減期温度を得ることができる。なお,Tは絶対温度(K)である。
また,有機過酸化物の製造メーカーが発行しているカタログや技術資料に記載されている有機過酸化物の10時間半減期温度のデータを利用しても良い。
【0032】
上記第一有機過酸化物としては,例えば過酸化ベンゾイル,ステアロイルパーオキサイド,t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート,t−ブチルパーオキシイソブチレート,t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート,t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート,1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート,1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート,2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサンなどが挙げられる。上記第一有機過酸化物は単独で用いても,2種類以上混合して用いても良い。
【0033】
上記第一有機過酸化物の添加量は,上記原料モノマーに対して0.01〜1重量部であることが好ましい。さらに好ましくは0.1〜0.5重量部である。0.01重量部未満では重合速度が遅くなって生産性が低下し,逆に1重量部を超えると製造コストが高くなる恐れがある。
【0034】
また,上記第二有機過酸化物としては,例えばt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート,t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート,t−ブチルパーオキシベンゾエート,t−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート,t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート,t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート,t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート,1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン,1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン,1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン,1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン,2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン,1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン,1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン,2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンなどが挙げられる。上記第二有機過酸化物は単独で用いても,2種類以上混合して用いても良い。
【0035】
上記第二有機過酸化物の添加量は,上記原料モノマーに対して0.01〜1重量部であることが好ましい。さらに好ましくは0.1〜0.5重量部である。0.01重量部未満では重合速度が遅くなって生産性が低下したり,未反応の芳香族ビニルモノマーの量が増加して上記発泡性スチレン系樹脂粒子中の芳香族炭化水素類の含有量が多くなるおそれがある。その結果,芳香族炭化水素類の含有量が,例えば0.2重量%以下という,非常に低い発泡性スチレン系樹脂粒子が得られないおそれがある。一方,1重量部を超えると製造コストが高くなるおそれがある。
【0036】
また,上記原料分散工程においては,上記第一有機過酸化物の原料モノマー中における活性酸素濃度をO(%)とし,上記第二有機過酸化物の原料モノマー中における活性酸素濃度をO(%)としたとき,Oに対するOの比である活性酸素濃度比O/Oが1以上となるように,上記第一有機過酸化物及び上記第二有機過酸化物を添加する。
【0037】
上記活性酸素濃度比O/Oが1未満の場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子中のスチレン系樹脂の分子量が低下して,発泡成形体としたときの強度が低下するおそれがある。また,未反応の芳香族ビニルモノマーが増加して芳香族炭化水素類の含有量が増加し,芳香族炭化水素類の含有量が例えば0.2重量%以下という低い値の発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることができないおそれがある。
【0038】
上記原料モノマー中における上記第一有機過酸化物及び第二有機過酸化物の活性酸素濃度(O及びO)は,第一有機過酸化物及び第二有機過酸化物の添加量(重量)を原料モノマー量(重量)で除した値に,上記有機過酸化物の活性酸素濃度(%)を乗じた値とした。
上記第一有機過酸化物又は上記第二有機過酸化物として,2種類以上の有機過酸化物を使用する場合には,それぞれの有機過酸化物について原料モノマー中における活性酸素濃度をそれぞれ求め,上記第一有機過酸化物の活性酸素濃度はOに合計し,上記第二有機過酸化物の活性酸素濃度はOに合計する。
【0039】
なお,有機過酸化物の活性酸素濃度は,例えばヨウ化物イオンによる還元滴定法により求めることができる。すなわち,有機過酸化物は酢酸溶液中でヨウ化物イオンI により還元されヨウ素Iを生じるので,生じたヨウ素Iをチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定し活性酸素濃度を求めることができる。
【0040】
また,上記原料分散工程においては,上記水性媒体中に懸濁剤を添加することができる。
このような懸濁剤としては,例えばポリビニルアルコール,メチルセルロース,ポリビニルピロリドンなどの親水性高分子や,第3リン酸カルシウム,ピロリン酸マグネシウム,ヒドロキシアパタイト,酸化アルミニウム,タルク,カオリン,ベントナイトなどの難水溶性無機塩などを用いることができ,必要に応じて界面活性剤を併用しても良い。
なお,難水溶性無機塩を使用する場合は,アルキルスルホン酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤を併用することが好ましい。
【0041】
上記懸濁剤の添加量は,上記原料モノマー100重量部に対して,0.01〜5重量部が好ましい。
上記懸濁剤の添加量が0.01重量部未満の場合あるいは5重量部を超える場合には,水性媒体中に分散している原料モノマーの油滴が不安定となり,密閉容器内で系全体が固化するおそれがある。
【0042】
また,上記の難水溶性無機塩とアニオン性界面活性剤を併用する場合には,上記原料モノマー100重量部に対して,難水溶性無機塩を0.05〜3重量部,アニオン性界面活性剤を0.0001〜0.5重量部用いることが好ましい。
難水溶性無機塩及びアニオン性界面活性剤の量が上記の範囲から外れる場合には,水性媒体中に分散している原料モノマーの油滴が不安定となり,密閉容器内で系全体が固化するおそれがある。
【0043】
次に,上記重合工程においては,上記原料分散工程後に,上記密閉容器内を70〜100℃にて加熱(第一段階加熱)し,次いで100〜130℃にて加熱(第二段階加熱)して,重合反応をおこなう。
上記第一段階加熱の温度が70℃未満の場合には,重合速度が遅くなり生産性が低下するおそれがある。一方,100℃を超える場合には,スチレン系樹脂の分子量が低下し,上記発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて発泡成形体を作製したときの発泡成形体の強度が低下するおそれがある。
上記第一段階加熱の温度は,80〜95℃であることがより好ましい。
【0044】
また,上記第二段階加熱の温度が100℃未満の場合には,未反応の原料モノマーの残留量が多くなるおそれがある。一方,130℃を超える場合には,スチレン系樹脂の分子量が低下し,上記発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて発泡成形体を作製したときの発泡成形体の強度が低下するおそれがある。
上記第二段階加熱の温度は,110〜130℃であることがより好ましい。
【0045】
次に,上記発泡剤含浸工程においては,上記密閉容器内に発泡剤を添加する。
上記発泡剤含浸工程は,上記重合工程前,上記重合工程中,あるいは上記重合工程完了後に行うことができる。
【0046】
上記発泡剤としては,例えばプロパン,n−ブタン,イソブタン,n−ペンタン,イソペンタン,シクロペンタン,n−ヘキサン,シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素,ジメチルエーテル,ジエチルエーテル,フラン等のエーテル類,メチルアルコール,エチルアルコール,プロピルアルコール等のアルコール類,HCFC−141b,HCFC−142,HCFC−124,HFC−152a,HFC−134a等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの発泡剤は単独で,あるいは2種類以上を併用することができる。
【0047】
上記発泡剤は,上記発泡性スチレン系樹脂粒子中の発泡剤の含有量が1〜20重量%になる程度の量を上記密閉容器内に供給することができる。
上記発泡剤の量が1重量%未満の場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子がその成形時に充分に発泡できず,所望の強度及び重量の発泡成形体を得ることができないおそれがある。一方,20重量%を超える場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形体の気泡サイズが大きくなり,所望の強度及び断熱性の発泡成形体を得ることができないおそれがある。より好ましくは2〜10重量%がよい。
【0048】
また,上記発泡剤の添加時期は,上記したごとく,重合反応前,重合反応中,重合完了後のいずれでも良いが,原料モノマーの重合転化率が70%以上のときに添加する方が好ましい。より好ましくは,重合転化率80%以上で添加することがよい。
原料モノマーの重合転化率が70%未満で発泡剤を添加した場合には,未反応の芳香族ビニルモノマーが増加し,上記発泡性スチレン系樹脂粒子中の芳香族炭化水素類の含有量が,例えば0.2重量%を超え,非常に高くなってしまうおそれがある。
【0049】
本発明により得られる上記発泡性スチレン系樹脂粒子の分子量は,重量平均分子量(Mw)で150,000〜350,000の範囲にあることが好ましい。
Mwが150,000未満の場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡成形して得られる発泡成形体の強度が低下する恐れがある。一方,Mw350,000を超える場合には,発泡性が低下し,目標の発泡倍率(例えば50〜60倍)まで発泡させることが困難になったり,成形時に発泡粒子同士が融着しにくくなり,成形品強度が低下する恐れがある。より好ましくは,Mwは180,000〜300,000がよい。
【0050】
重量平均分子量としては,例えばスチレン系樹脂粒子をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させ,GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法により測定し,標準ポリスチレンで校正した値を採用することができる。
【0051】
次に,上記活性酸素濃度比O/Oが1.2以上であることが好ましい(請求項2)。
この場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子中のスチレン系樹脂の分子量を高くすることができる。そして,このような発泡性スチレン系樹脂粒子を用いると,さらに強度が高い発泡成形体を得ることができる。より好ましくは,上記活性酸素濃度比O/Oは1.5以上がよい。
【0052】
また,上記第一有機過酸化物は2官能性であることが好ましい(請求項3)。
この場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子中のスチレン系樹脂の分子量を高くすることができる。そして,このような発泡性スチレン系樹脂粒子を用いると,より強度が高い発泡成形体を得ることができる。2官能性の上記第一有機過酸化物としては,例えば2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン,ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレートなどが挙げられる。
【0053】
次に,上記原料モノマーには,上記芳香族ビニルモノマー100重量部に対して,多官能性のビニルモノマーが0.0001〜0.1重量部添加されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子中のスチレン系樹脂の分子量を高くすることができる。そして,このような発泡性スチレン系樹脂粒子を用いると,より強度が高い発泡成形体を得ることができる。
【0054】
多官能性のビニルモノマーの量が0.0001重量部未満の場合には,上記のように分子量を高くできるという効果を得ることができないおそれがある。一方,0.1重量部を超える場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子中のスチレン系樹脂が架橋により不溶化したり、懸濁系が不安定になって重合中にスチレン系樹脂粒子が合一し,異形粒子や系全体が固化するおそれがある。
【0055】
上記多官能性ビニルモノマーとしては,ジビニルベンゼン,ブタンジオールジアクリレート等の2官能性ビニルモノマーや,トリメチロールトリメタクリレート,トリアリルイソシヌレート等の3官能性ビニルモノマー等が挙げられる。
【0056】
また,本発明の製造方法により得られる発泡性スチレン系樹脂粒子においては,上記原料モノマーが残留すること等によって生じる上記芳香族炭化水素類を,例えば0.2重量%以下という極めて少量に抑えることができる。
上記芳香族炭化水素類の含有量が0.2重量%を超える場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して得られる発泡成形体を例えば住宅用断熱材等の用途に用いたときに,芳香族炭化水素の放出量を低減することができないおそれがある。
【0057】
ここで,芳香族炭化水素類の含有量は,スチレン,トルエン,ベンゼン,m−キシレン,p−キシレン,o−キシレン,エチルベンゼン,n−プロピルベンゼン,i−プロピルベンゼンそれぞれの含有量を合計した値であり,上記発泡性スチレン系樹脂粒子をジメチルホルムアミドに溶解させガスクロマトグラフにより求めることができる。
【0058】
また,上記発泡性スチレン系樹脂粒子においては,これを予備発泡させて予備発泡粒子とし,その後,予備発泡粒子を金型内に充填し,加熱発泡させて,予備発泡粒子同士を融着させることにより,発泡成形体を得ることができる。
【0059】
予備発泡の方法としては,例えば撹拌装置の付いた円筒形の予備発泡機を用いてスチーム等で加熱し発泡させる方法などがある。
また,予備発泡粒子を発泡成形体とする方法としては,例えば,金型内に予備発泡粒子を充填しスチーム等で加熱するという型内成形法等がある。
このようにして得られた発泡成形体の密度は,密度が低いと強度が不足し,逆に密度が高いと不経済であるため,10〜100kg/mであることが好ましい。
【0060】
【実施例】
(実施例1)
次に,本発明の実施例につき,説明する。
本例は,発泡剤と難燃剤と芳香族炭化水素類とを含有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造し,該発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて発泡成形体を作製する例である。
本例の製造方法においては,原料分散工程と,重合工程と,発泡剤含浸工程とをおこなう。
【0061】
原料分散工程においては,密閉容器内に水性媒体を入れ,該水性媒体中に,芳香族ビニルモノマーを含有してなる原料モノマー100重量部と,上記難燃剤としてのアリル構造を有する臭素有機化合物0.3〜3重量部とともに,重合開始剤として,10時間半減期温度が60〜85℃である第一有機過酸化物及び10時間半減期温度が85〜110℃である第二有機過酸化物を添加して分散させる。
また,重合工程においては,上記原料分散工程後に,上記密閉容器内を70〜100℃にて加熱し,次いで100〜130℃にて加熱して,重合反応をおこなう。
また,発泡工程においては,上記密閉容器内に発泡剤を添加する。
【0062】
また,上記原料分散工程においては,上記第一有機過酸化物の原料モノマー中における活性酸素濃度をO(%)とし,上記第二有機過酸化物の原料モノマー中における活性酸素濃度をO(%)としたとき,Oに対するOの比である活性酸素濃度比O/Oが1以上となるように,上記第一有機過酸化物及び上記第二有機過酸化物を添加する。
【0063】
以下,本例の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法につき,詳細に説明する。
まず,撹拌装置の付いた内容積が50Lのオートクレーブに,脱イオン水16kg,懸濁剤として,第3リン酸カルシウム20g,界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8gを投入した。
【0064】
次いで,重合開始剤として,10時間半減期温度が74℃の第一有機過酸化物である過酸化ベンゾイル34g(日本油脂株式会社製 ナイパーBW,水希釈粉体品),及び10時間半減期温度が99℃の第二有機過酸化物であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート51g(日本油脂株式会社製パーブチルE),難燃剤として2,2−ビス(4−(2−アリルオキシ)−3,5−ジブロモフェニル)プロパン170g(帝人化成株式会社製 ファイヤガード3200),可塑剤として流動パラフィン(株式会社松村石油研究所製 モレスコホワイトP60)130gを溶解させたスチレンモノマー17kgを,230rpmで撹拌しながらオートクレーブに投入し,水中にスチレンモノマーを油滴状に分散させた(原料分散工程)。
【0065】
次に,オートクレーブ内を窒素置換した後,昇温を開始し,1時間半かけて90℃まで昇温した。
90℃到達後,90℃で7時間保持した後,120℃まで3時間かけて昇温し,そのまま120℃で5時間保持した後,30℃まで約6時間かけて冷却した(重合工程)。
【0066】
90℃から120℃への昇温途中,100℃到達時に発泡剤としてペンタン(n−ペンタン80%とイソペンタン20%の混合物)340g,ブタン(n−ブタン70%とイソブタン30%の混合物)1200gを30分かけオートクレーブ内に圧入した(発泡剤含浸工程)。
【0067】
冷却後,内容物を取り出し,発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に付着した第3リン酸カルシウムを除去するため,硝酸を添加し第3リン酸カルシウムを溶解させた後,遠心分離機で脱水し,流動乾燥装置で表面に付着した水分を除去し,平均粒径が約1mmの発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0068】
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を篩いにかけて0.7〜1.4mmの粒子を取り出し,発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して,帯電防止剤であるN,N―ビス(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン0.005重量部を添加し,さらにステアリン酸亜鉛0.1重量部,グリセリントリステアレート0.05重量部,グリセリンモノステアレート0.05重量部の混合物で被覆した。
このようにして得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を試料E1とした。
【0069】
次に,上記試料E1としての発泡性スチレン系樹脂粒子4kgを加圧バッチ発泡機(株式会社ダイセン工業製,DYHL500U)内で,缶内圧力が0.01MPaになるようにスチームを供給し,約90秒間加熱した後,60秒間乾燥させて,嵩密度が約20kg/m(発泡倍率50倍)の予備発泡粒子を得た。
続いて,得られた予備発泡粒子を室温で1日熟成後,型物成形機(株式会社ダイセン工業製,VS500)の金型に充填し,0.07MPaのスチーム圧力で20秒間加熱し,所定時間冷却後,金型から取り出し,発泡成形体を得た。
【0070】
(実施例2)
難燃剤として2,4,6−トリブロモフェノールアリルエーテル170g(第一エフアール社製 ピロガード FR−100)を用いた以外は,実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。これを試料E2とした。また,試料E2の発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて,実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。
【0071】
(実施例3)
重合開始剤として10時間半減期温度が74℃の第一有機過酸化物である過酸化ベンゾイル51g(日本油脂株式会社製 ナイパーBW,水希釈粉体品)及び,10時間半減期温度が99℃の第二有機過酸化物であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート43g(日本油脂株式会社製 パーブチルE),難燃剤として2,2−ビス(4−(2−アリルオキシ)−3,5−ジブロモフェニル)プロパン136g(帝人化成株式会社製 ファイヤガード3200)用いた以外は実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。これを試料E3とした。また,試料E3の発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて,実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。
【0072】
(実施例4)
重合開始剤として10時間半減期温度が74℃の第一有機過酸化物である過酸化ベンゾイル34g(日本油脂株式会社製 ナイパーBW,水希釈粉体品)及び,10時間半減期温度が99℃の第二有機過酸化物であるt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート51g(アトフィナ吉富株式会社製 ルパゾールTAEC)を用いた以外は,実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。これを試料E4とした。また,試料E4の発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて,実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。
【0073】
(実施例5)
重合開始剤として10時間半減期温度が64℃の2官能性の第一有機過酸化物である2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン43g(化薬アクゾ株式会社製 トリゴノックス141)及び,10時間半減期温度が99℃の第二有機過酸化物であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート60g(日本油脂株式会社製 パーブチルE)を用いた以外は,実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。これを試料E5とした。また,試料E5の発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて,実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。
【0074】
(実施例6)
2官能性ビニルモノマーとして,ジビニルベンゼン5g(東京化成社製 試薬1級)をスチレンに添加して用いた以外は,実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。これを試料E6とした。また,試料E6の発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて,実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。
【0075】
また,本発明の製造方法によって得られる発泡性スチレン系樹脂粒子の優れた特性を明らかにするため,以下のようにして,比較用の発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。
(比較例1)
重合開始剤として10時間半減期温度が74℃の第一有機過酸化物である過酸化ベンゾイル43g(日本油脂社株式会社製 ナイパーBW,水希釈粉体品),及び10時間半減期温度が99℃の第二有機過酸化物であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート26g(日本油脂株式会社製 パーブチルE)用いた以外は,実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。これを試料C1とした。また,試料C1の発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて,実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。
【0076】
(比較例2)
重合開始剤として10時間半減期温度が74℃の第一有機過酸化物である過酸化ベンゾイル34g(日本油脂株式会社製 ナイパーBW,水希釈粉体品),及び10時間半減期温度が99℃の第二有機過酸化物であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート51g(日本油脂社製 パーブチルE),難燃剤として2,2−ビス(4−(2−アリルオキシ)−3,5−ジブロモフェニル)プロパン600g(帝人化成社製 ファイヤガード3200)用いた以外は,実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。これを試料C2とした。また,試料C2の発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて,実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。
【0077】
(比較例3)
重合開始剤として10時間半減期温度が74℃の第一有機過酸化物である過酸化ベンゾイル34g(日本油脂社製 ナイパーBW,水希釈粉体品),及び10時間半減期温度が99℃の有機過酸化物であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート51g(日本油脂社製 パーブチルE),難燃剤として2,2−ビス(4−(2−アリルオキシ)−3,5−ジブロモフェニル)プロパン34g(帝人化成社製 ファイヤガード3200)用いた以外は,実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。これを試料C3とした。また,試料C3の発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて,実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。
【0078】
(実験例)
次に,上記試料E1〜試料E6及び試料C1〜試料C3の発泡性スチレン系樹脂粒子について,第一及び第二有機過酸化物の活性酸素濃度,芳香族炭化水素類の含有量,重量平均分子量を以下のようにして調べた。
また,上記試料E1〜試料E6及び試料C1〜試料C3の発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られた各発泡成形体について,燃焼試験及び曲げ試験を以下のようにして行った。その結果を後述する表1に示す。
【0079】
「活性酸素濃度比(O/O)」
10時間半減期温度が85〜110℃である有機過酸化物(第二有機過酸化物)の原料モノマー中における活性酸素濃度O,10時間半減期温度が60〜85℃である有機過酸化物(第一有機過酸化物)の原料モノマー中における活性酸素濃度Oを求め,活性酸素濃度比O/Oを算出した。原料モノマー中における有機過酸化物の活性酸素濃度は有機過酸化物の添加量(重量)を原料モノマーの量(重量)で除した値にそれぞれの有機過酸化物の活性酸素濃度(%)を乗じた値とした。
【0080】
なお,有機過酸化物の活性酸素濃度(%)はヨウ化物イオンによる還元滴定法により求めた。すなわち,共栓付き三角フラスコに,秤量した有機過酸化物 約0.3g入れ,クロロホルム15mlを入れ溶解させた後,酢酸5ml,ヨウ化カリウム飽和溶液2ml,メタノール20mlを加え,よく混合した後10分間放置した。1/10Nのチオ硫酸ナトリウム溶液で無色になるまで滴定した。次式より,有機過酸化物の活性酸素濃度を求めた。
活性酸素濃度(%)=(Va−Vb)×f×0.008/W
ここで,
Va:1/10Nチオ硫酸ナトリウム溶液の滴定量(ml)
Vb:空実験における1/10Nチオ硫酸ナトリウム溶液の滴定量(ml)
f:1/10Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター
W:試料重量(g)
【0081】
「芳香族炭化水素類の含有量」
上記各試料の発泡性スチレン系樹脂粒子をジメチルホルムアミドに溶解させ,ガスクロマトグラフィーにて,スチレン,トルエン,ベンゼン,m−キシレン,p−キシレン,o−キシレン,エチルベンゼン,n−プロピルベンゼン,i−プロピルベンゼンそれぞれの含有量を測定し,各成分の含有量を合計して求めた。
【0082】
「重量平均分子量」
各試料の発泡性スチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに溶解させ,ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し,標準ポリスチレンで校正して求めた。
【0083】
「燃焼試験」
JIS A 9511の燃焼試験(A法)準拠して燃焼試験を行い,3秒以内に消火し残塵がなく,限界線を越えて燃焼が継続しなかった場合を自己消火性があると判断し,合格とした。一方,3秒以内に消火せず,残塵がある,あるいは限界線を越えて燃焼が継続した場合を自己消火性がないと判断して,不合格とした。
【0084】
「曲げ試験」
発泡成形体を切断して,縦300mm×横75mm×厚さ25mmの試験片を作成し,JIS K 7221−2 附属書1に準拠して,3点曲げ試験を行い,曲げ強度を測定した。
【0085】
【表1】
Figure 2005008670
【0086】
表1より知られるごとく,上記試料E1〜試料E6の発泡性スチレン系樹脂粒子は,発泡性スチレン系樹脂粒子の芳香族炭化水素類の含有量が少なく,自己消火性及び曲げ強度がいずれも優れていた。
【0087】
一方,試料C1においては,上記活性酸素比O/Oが1.0未満であり,そのため,上記芳香族炭化水素類の含有量が高くなった。このような発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形体からは,芳香族炭化水素類が飛散するおそれがある。
また,試料C2においては,3.5重量部という多量の難燃剤を添加した。その結果,この試料C2を用いて得られた発泡成形体の強度が低くなるという不具合を生じた。
また,試料C3においては,0.2重量部という少量の難燃剤を添加した。その結果,この試料C3を用いて得られた発泡成形体の自己消化性が不充分なものとなった。

Claims (5)

  1. 発泡剤と難燃剤と芳香族炭化水素類とを含有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法において,
    密閉容器内に水性媒体を入れ,該水性媒体中に,芳香族ビニルモノマーを含有してなる原料モノマー100重量部と,上記難燃剤としてのアリル構造を有する臭素有機化合物0.3〜3重量部とともに,重合開始剤として,10時間半減期温度が60〜85℃である第一有機過酸化物及び10時間半減期温度が85〜110℃である第二有機過酸化物を添加して分散させる原料分散工程と,
    上記原料分散工程後に,上記密閉容器内を70〜100℃にて加熱し,次いで100〜130℃にて加熱して,重合反応をおこなう重合工程と,
    上記密閉容器内に発泡剤を添加する発泡剤含浸工程とを有し,
    上記原料分散工程においては,上記第一有機過酸化物の上記原料モノマー中における活性酸素濃度をO(%)とし,上記第二有機過酸化物の上記原料モノマー中における活性酸素濃度をO(%)としたとき,Oに対するOの比である活性酸素濃度比O/Oが1以上となるように,上記第一有機過酸化物及び上記第二有機過酸化物を添加することを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  2. 請求項1において,上記活性酸素濃度比O/Oが1.2以上であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  3. 請求項1及び2において,上記第一有機過酸化物は2官能性であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  4. 請求項1〜3において,上記原料モノマーには,上記芳香族ビニルモノマー100重量部に対して,多官能性のビニルモノマーが0.0001〜0.1重量部添加されていることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  5. 請求項1〜4記載の製造方法により得られた発泡性スチレン系樹脂粒子。
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