JP2005005606A - 巻線型電子部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】インダクタンス値が向上された巻線型電子部品を提供する。
【解決手段】フェライト材料から構成されるコア1にコイル導体2を巻き回す工程と、磁性粉末及び溶剤を含む樹脂組成物をコイル導体2の周囲に塗布する工程と、樹脂組成物を電磁誘導加熱により乾燥する工程と、樹脂組成物を硬化する工程と、を備えたことを特徴とする巻線型電子部品10の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】フェライト材料から構成されるコア1にコイル導体2を巻き回す工程と、磁性粉末及び溶剤を含む樹脂組成物をコイル導体2の周囲に塗布する工程と、樹脂組成物を電磁誘導加熱により乾燥する工程と、樹脂組成物を硬化する工程と、を備えたことを特徴とする巻線型電子部品10の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インダクタ、トランス、チョークコイルなどの巻線型電子部品の製造方法に関し、詳しくは、巻線部分を封止する樹脂組成物の乾燥方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
巻線型電子部品の一例を図1に示す。図1に示すように、巻線型電子部品10は、両端部にフランジ1a、1bを有するコア1と、コア1の外周に巻き回されるコイル導体2とを有している。コア1はフェライトなどの磁性材料によって通常は一体として形成されており、コイル導体2とともに巻芯を構成している。コア1のフランジ1a、1bの外側の側面及び端面には、第1層目の電極3a、3bが形成されている。
コイル導体2の両端の引出線2a、2bが、フランジ1a、1bの側面部分で電極3a、3bにそれぞれ接合している。フランジ1a、1b間に挟まれた凹部には、コイル導体2を被覆するように封止部4が配設されている。引出線2a、2bが接続された電極3a、3bの外周には、更に第2層目の電極5a、5bが施してある。
【0003】
封止部4としては、例えばフェライト粉末が分散されたエポキシ樹脂が用いられている。フェライト粉末を樹脂中に分散させることにより、磁束が封止部4内を通過しやすくなって磁気シールド性が向上し、隣接部品に対する磁気的影響を低減し、又は巻線型電子部品10自身のインダクタンス値の向上を図ることができる。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−20453号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
電子機器の小型化に伴い、巻線型電子部品にも小型化の要求が当然の如くなされている。そして、小型化しても特性、具体的には所定のインダクタンス値を確保することが必要である。
したがって、本発明は、インダクタンス値が向上された巻線型電子部品の製造方法の提供を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
図1に示した巻線型電子部品10は、一般に、巻芯を作成した後に、フェライト粉末及び溶剤を含み塗料化された樹脂組成物を所定位置に塗布、乾燥後、樹脂組成物の硬化処理を行うことにより製造されていた。
ここで、塗布後の樹脂組成物の乾燥(溶剤の除去)は、従来オーブンを用いた熱風乾燥により行われていた。熱風乾燥によると、樹脂組成物はその周囲から加熱されるため、樹脂組成物の乾燥、固化はその周囲から進行する。そのため、乾燥後のコア1には、相当の残留応力が付与されたものと解される。したがって、後述する実施例に示すように、オーブンによる従来の乾燥を経た巻線型電子部品は、低いインダクタンス値しか得ることができない。
【0007】
そこで本発明者は、コア1がフェライトで構成され、かつ封止部4中にフェライト粉末が存在していることから、このフェライトを電磁誘導加熱(IH:Inductive Heating)の加熱対象とすることにより、樹脂組成物の内部から乾燥、固化することを検討した。その結果、従来の乾燥方法で得られた巻線型電子部品に比べて、高いインダクタンス値が得られることを知見した。
ところで、樹脂組成物をその内部から乾燥、固化することのできる他の方法としては、例えば特許文献1(特開2002−20453号公報)に開示されているマイクロ波(300MHz〜30GHz)を照射する方法もありえる。ところが、マイクロ波を照射する場合、マイクロ波の漏洩を防止するためにその環境を外部から遮蔽する必要があり、作業性の点で劣る。また、巻線型電子部品10を構成するコイル導体2にマイクロ波が照射されるとスパークが生じて、コイル導体2を断線させるおそれがある。したがって、巻線型電子部品10に対してはマイクロ波照射を適用することはできない。
【0008】
本発明はこの知見に基づくものであり、フェライト材料から構成されるコアにコイルを巻き回す工程と、磁性粉末及び溶剤を含む樹脂組成物を前記コイルの周囲に塗布する工程と、前記樹脂組成物を電磁誘導加熱により乾燥する工程と、前記樹脂組成物を硬化する工程と、を備えたことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法である。
本発明の電磁誘導加熱は10〜80kHzの周波数の磁力線によって生じるものであり、特開2002−20453号公報とは用いる周波数帯域が相違する。
本発明によれば、電磁誘導加熱により前記コア及び前記磁性粉末が発熱するため、樹脂組成物の内部から乾燥が進行する。
本発明において、樹脂組成物を硬化させるための手法は問わないが、乾燥と同様に電磁誘導加熱を用いることが望ましい。必要な部分のみを加熱することができる電磁誘導加熱は、例えばオーブンによる加熱に比べて加熱効率が高い。
本発明が対象とする巻線型電子部品は、フェライト材料から構成されるコアにコイル導体が巻き回され、かつ少なくとも巻き回されたコイル導体の周囲に封止部が配設された形態を有しているが、最も典型的には、コアの両端に一対のフランジが形成され、一対のフランジ間にコイル導体が巻き回された形態の電子部品に適用することができる。その場合、コアの両端に形成された一対のフランジ間にコイル導体を巻き回し、一対の前記フランジ間であってかつ前記コイル導体の外周に樹脂組成物を塗布した後に、電磁誘導加熱により乾燥を行うことになる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における巻線型電子部品10を示す断面図である。
巻線型電子部品10の構成は、先に説明しているので、以下では各構成部分の望ましい形態について説明する。
コア1は、フェライト材料から構成されている。フェライト材料としては、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn系フェライト等の公知の物質を広く適用することができる。
コア1は、以上のフェライト粉末を例えば乾式成形、焼成することにより得ることができる。
【0010】
コア1の形状は、両端部にフランジ1a、1bが形成されていれば特に限定されるものではなく、フランジ1a、1bを除く部分も円柱状、楕円状、角柱状など任意である。フランジ1a、1bも同様であるが、一般的には矩形断面を有する形状とする。
コア1を製造するためには、フェライト粉末を金型でコア1の形状に成形することもできるし、例えば角柱状のコア素材を得た後に機械加工を施すことによりコア1の形状に成形することもできる。
【0011】
コイル導体2は、丸線、平角線、箔状線など、構造、用途、必要とされるインダクタンス値や抵抗値に応じて適宜選定すればよい。コイル導体2の材質は、低抵抗値であることが望ましいので、銅または銀、特に銅を用いるのが望ましい。その表面は絶縁性樹脂で被覆されていることが望ましい。
【0012】
封止部4を構成する樹脂としては、その機械的な強度の観点から熱硬化性樹脂を用いる。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等、公知の材質を広く適用することができる。もちろん、これら樹脂を複合して用いることも可能である。添加される磁性粉末との分散性を改善するために、分散剤等を微量添加することができる。また、適宜、少量の可塑剤等を添加することもできる。
【0013】
封止部4中に分散される磁性粉末としては、フェライト粉末のほかに、金属磁性粉末を用いることができる。この磁性粉末は、前述したように、磁束が封止部4内を通過しやすくなって磁気シールド性が向上することにより、隣接部品に対する磁気的影響を低減し、又は巻線型電子部品10自身のインダクタンス値を向上させるために添加される。本発明においてはさらに、電磁誘導加熱における発熱源としての機能を果たす。
【0014】
フェライト粉末としては、コア1を構成するものと同様に、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn系フェライト等の公知の物質を広く適用することができる。
また、金属磁性粉末としては、Fe、Ni及びCoの1種以上を主成分とする金属磁性粉末が使用できる。具体的には、純Fe粉、Fe−Si系合金、Fe−Si−Al系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Mo−Ni系合金等が使用できる。金属磁性粉末としては、結晶質金属のほか、非晶質金属及び微結晶金属を用いることもできる。
なお、磁性粉末の粒径は特に限定されるものではないが、1〜100μm程度、望ましくは10〜50μm程度の範囲から適宜選択すればよい。ただし、封止部4における磁性粉末の充填率を向上することによる耐熱衝撃性向上のために、その粒度分布は少なくとも2つのピーク値を持つことが望ましい。粒度分布の2つのピーク値は、ピークの比が10:1〜10:3の範囲にあることが望ましい。例えば、平均粒径20μmの磁性粉末の場合、27μm及び3μmに粒度分布のピーク値を有していることが望ましい。
【0015】
樹脂と磁性粉末の混合比(重量比)は、熱硬化性樹脂:磁性粉末=10〜90:90〜10の範囲で、得たい特性に応じて適宜定めるとよい。磁性粉末の量が不足すると磁気シールドとしての効果及び電磁誘導加熱源としての効果が不十分となる一方、樹脂の量が不足すると封止部4としての強度が不足するので、この点をも考慮して樹脂と磁性粉末の混合比を決定するのが望ましい。
【0016】
<製造工程>
以下、図2及び図3に基づいて、巻線型電子部品10の製造方法について説明する。なお、図2は巻線型電子部品10の製造方法の主要工程を示すフローチャート、図3は図2の各工程における巻線型電子部品10の状態を示す図である。
まず、図3(a)に示すように、四角柱状のコア素材20を作成する(図2 S101)。コア素材20は、例えばフェライト材を乾式成形することで得ることができる。
次に、図3(b)に示すように、コア素材20の両端部を除いて円柱状、楕円状あるいは角柱状などに研削加工し、フランジ1a、1bを有するコア1の形態を有する成形体に加工する。この成形体を焼成することによりコア1が得られる(図2 S103)。
次に、図3(c)に示すように、フランジ1a、1bの側面及び端面に、浸漬法などによって第1層目の電極3a,3bを形成する(図2 S105)。
電極3a、3bを形成した後に、図3(d)のように、コア1にコイル導体2を巻き回すとともに、コイル導体2の引出線2a、2bをフランジ1a、1bにおいて電極3a,3bに熱圧着などの方法で接続する(図2 S107)。
【0017】
次に、図3(e)に示すように、フランジ1a、1bに挟まれたコア1の凹部に封止部4を形成するための樹脂組成物を塗布し、コイル導体2からなる巻線部分を封止する(図2 S109)。通常は、素子全体が四角柱状となるように成形する。
塗布する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物、磁性粉末及び溶剤を含み塗料化されたものである。樹脂組成物を塗布した後に、溶剤を除去するために乾燥に共される(図2 S111)。しかる後に、樹脂組成物の硬化処理を行う(図2 S113)。乾燥及び硬化処理ともに、各々所定の温度に加熱することにより実行される。乾燥における加熱温度は、50〜100℃の温度で行うことが望ましい。また、硬化処理は、用いた樹脂組成物の種類に応じて定められるが、通常、100〜200℃の温度範囲で実行される。樹脂組成物を硬化した後に、さらに、図3(f)に示すように第2層目の電極5a,5bを形成する(図2 S115)。
【0018】
上述した乾燥工程において、本発明は電磁誘導加熱(IH)を適用する。なお、電磁誘導加熱の実施前に、自然乾燥を行うこともできる。塗料化された樹脂組成物を塗布した直後から電磁誘導加熱を行うと、樹脂中に発泡が発生するおそれがあるからである。
ここで、渦巻状に巻き回された磁力発生コイルから発生する高周波(例えば、10〜80kHz)の磁力線内に導電体を配設した場合に、導電体内に渦電流が生ずる。渦電流は導電体の表面に集中して流れる特性を有しており、電流が流れることにより発生するジュール熱により、導電体自身が発熱するのが電磁誘導加熱である。
【0019】
電磁誘導加熱にとって、磁性体であってかつ電気抵抗の高い導電体が被加熱対象として望ましい。ここで、本発明が適用される巻線型電子部品10は、前述のように、コア1がフェライトから構成されており、また、封止部4中に磁性粉末が含まれている。したがって、乾燥工程において電磁誘導加熱を施すことにより、コア1及び封止部4中含まれる磁性粉末が発熱して乾燥が促進される。特にフェライトは抵抗が高いことから、効率的な電磁誘導加熱を行うことができる。
このように、コア1及び封止部4の内部から乾燥が均一に行われるため、オーブンによる加熱のように封止部4の周囲から乾燥が進行するものと異なり、乾燥後の封止部4に残留する応力は低い。したがって、後述する実施例で述べるように、オーブン加熱による乾燥を経た巻線型電子部品に比べて、電磁誘導加熱を経る本発明の巻線型電子部品10は高いインダクタンス値を得ることができる。
【0020】
また、電磁誘導加熱は、電磁調理器の例から明らかなように、遮蔽を行う必要がない。さらに、コイル導体2が存在していても、マイクロ波加熱のようにスパークの生ずるおそれが無いばかりか、磁力発生コイルに流す電流の周波数を例えば60kHz程度に高くすれば、コイル導体2をも加熱することが可能となり、乾燥工程の短縮を図ることができる。なお、磁力発生コイルに流す電流の周波数を高くすると、その損失が大きくなる傾向にあるが、磁力発生コイルの線径を細くした素線を多数束ねることにより表面積を拡大して損失を低減することができる。
【0021】
乾燥工程の後の硬化処理は、電磁誘導加熱を適用することができるし、オーブン加熱を適用することもできる。乾燥工程で溶媒が除去された状態であれば、オーブン加熱のように封止部4の外周から加熱する方式を採用しても、収縮量が少ないために、インダクタンス値にほとんど悪影響を与えないからである。ただし、電磁誘導加熱の方が、オーブン加熱に比べて加熱効率が高い。
【0022】
樹脂の硬化処理を施した後に、図3(f)に示すように、電極3a,3b及び引出線2a,2bの接合部分に第2層目の電極5a,5bを形成する。電極5a,5bの周囲にメッキを施すこともできる。このようにして、巻線型電子部品10が製造される。なお、図1に示した巻線型電子部品10はあくまで一例であって、他の形態とすることを何ら否定するものではない。
【0023】
(実験例)
Ni−Zn−Cuフェライトにより構成されたコア1(サイズ:2518)を作成した。
また、平均粒径が20μmで、27μm及び3μmに2つの粒度分布のピーク値を持つNi−Zn−Cuフェライト粉末及び熱硬化性樹脂とを用意し、このフェライト粉末を81wt%、熱硬化性樹脂を19wt%となるように混合した。なお、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート1009)を70wt%、フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製PL−2407)を30wt%混合したものを用いた。
さらに、アセトン、メチルエチルケトン及びメタノールをアセトン:メチルエチルケトン:メタノール=6:2:2の比率で混合した溶剤を、フェライト粉末と熱硬化性樹脂とからなる組成物に対して15wt%になるように添加して塗料を得た。
【0024】
図2及び図3に示す手順で樹脂組成物を塗布した実験用サンプルに対して、電磁誘導加熱による乾燥を施した後に、オーブンによる硬化処理(150℃で60分保持)を施した。比較として、同一の実験用サンプルに対してオーブンによる乾燥(オーブン加熱)を施した後に、オーブンによる硬化処理(150℃で60分保持)を施した。なお、電磁誘導加熱には三菱電機株式会社製の加熱装置(CS−K2,周波数:20kHz)を用いた。また、乾燥の条件は以下のとおりである。なお、以下の条件中の温度は、電磁誘導加熱はサンプルの温度、オーブン加熱は加熱雰囲気の温度である。
電磁誘導加熱:50〜55℃×30分+55〜57℃×20分
オーブン加熱:自然乾燥×30分+60℃×30分+80℃×30分
【0025】
電磁誘導加熱及びオーブン加熱ともに、上記乾燥条件によりサンプルのハンドリングが可能となった。硬化処理後に封止部4内部の観察を行ったところ、電磁誘導加熱によるものは20個のサンプルのいずれにも発泡が観察されなかったのに対して、オーブン加熱によるものは20個のサンプルのうち5個のサンプルに発泡が確認された。
【0026】
樹脂組成物塗布前及び硬化処理後のサンプルのインダクタンス値を測定した。その結果を表1に示す。乾燥を電磁誘導加熱で行ったサンプルの方が、乾燥をオーブン加熱で行ったサンプルよりもインダクタンス値が高いことが分る。これは、オーブン加熱によるサンプルよりも電磁誘導加熱によるサンプルの残留応力が小さいためと解される。
【0027】
【表1】
【0028】
次に、電磁誘導加熱乾燥とオーブン加熱乾燥による残留応力の差異を確認するための他の実験として、樹脂組成物硬化後のサンプルに対して熱衝撃試験、高温耐熱試験を行った。熱衝撃試験は、硬化処理後のサンプルについて、−50℃で30分保持後に125℃まで昇温して30分保持するというサイクルを繰り返す試験である。また、高温耐熱試験は、硬化処理後のサンプルについて、常温から260℃まで昇温するサイクルを繰り返す試験である。試験結果を表2に示す。なお、判定は、樹脂部分にクラックが観察されるか、コア1と樹脂部分との界面に剥離が観察されたときにNGとした。
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示すように、電磁誘導加熱による乾燥を採用すると、オーブン加熱による乾燥に比べて、熱衝撃試験、高温加熱試験ともに樹脂部分へのクラック又はコア1との界面剥離の発生が抑制されており、電磁誘導加熱による乾燥によって残留応力が低減されていることが推認できた。
【0031】
以上本発明の実施の形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記の構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、インダクタンス値が向上された巻線型電子部品が提供される。これは、電磁誘導加熱方式により樹脂を含むスラリの乾燥を行ったことによる封止部の残留応力低減が理由と解される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における巻線型電子部品の構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態における巻線型電子部品の製造方法の主要工程を示すフローチャートである。
【図3】図2の各工程における巻線型電子部品の状態を示す図である。
【符号の説明】
1…コア、1a,1b…フランジ、2…コイル導体、2a,2b…引出線、3a,3b,5a,5b…電極、4…封止部、10…巻線型電子部品、20…コア素材
【発明の属する技術分野】
本発明は、インダクタ、トランス、チョークコイルなどの巻線型電子部品の製造方法に関し、詳しくは、巻線部分を封止する樹脂組成物の乾燥方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
巻線型電子部品の一例を図1に示す。図1に示すように、巻線型電子部品10は、両端部にフランジ1a、1bを有するコア1と、コア1の外周に巻き回されるコイル導体2とを有している。コア1はフェライトなどの磁性材料によって通常は一体として形成されており、コイル導体2とともに巻芯を構成している。コア1のフランジ1a、1bの外側の側面及び端面には、第1層目の電極3a、3bが形成されている。
コイル導体2の両端の引出線2a、2bが、フランジ1a、1bの側面部分で電極3a、3bにそれぞれ接合している。フランジ1a、1b間に挟まれた凹部には、コイル導体2を被覆するように封止部4が配設されている。引出線2a、2bが接続された電極3a、3bの外周には、更に第2層目の電極5a、5bが施してある。
【0003】
封止部4としては、例えばフェライト粉末が分散されたエポキシ樹脂が用いられている。フェライト粉末を樹脂中に分散させることにより、磁束が封止部4内を通過しやすくなって磁気シールド性が向上し、隣接部品に対する磁気的影響を低減し、又は巻線型電子部品10自身のインダクタンス値の向上を図ることができる。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−20453号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
電子機器の小型化に伴い、巻線型電子部品にも小型化の要求が当然の如くなされている。そして、小型化しても特性、具体的には所定のインダクタンス値を確保することが必要である。
したがって、本発明は、インダクタンス値が向上された巻線型電子部品の製造方法の提供を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
図1に示した巻線型電子部品10は、一般に、巻芯を作成した後に、フェライト粉末及び溶剤を含み塗料化された樹脂組成物を所定位置に塗布、乾燥後、樹脂組成物の硬化処理を行うことにより製造されていた。
ここで、塗布後の樹脂組成物の乾燥(溶剤の除去)は、従来オーブンを用いた熱風乾燥により行われていた。熱風乾燥によると、樹脂組成物はその周囲から加熱されるため、樹脂組成物の乾燥、固化はその周囲から進行する。そのため、乾燥後のコア1には、相当の残留応力が付与されたものと解される。したがって、後述する実施例に示すように、オーブンによる従来の乾燥を経た巻線型電子部品は、低いインダクタンス値しか得ることができない。
【0007】
そこで本発明者は、コア1がフェライトで構成され、かつ封止部4中にフェライト粉末が存在していることから、このフェライトを電磁誘導加熱(IH:Inductive Heating)の加熱対象とすることにより、樹脂組成物の内部から乾燥、固化することを検討した。その結果、従来の乾燥方法で得られた巻線型電子部品に比べて、高いインダクタンス値が得られることを知見した。
ところで、樹脂組成物をその内部から乾燥、固化することのできる他の方法としては、例えば特許文献1(特開2002−20453号公報)に開示されているマイクロ波(300MHz〜30GHz)を照射する方法もありえる。ところが、マイクロ波を照射する場合、マイクロ波の漏洩を防止するためにその環境を外部から遮蔽する必要があり、作業性の点で劣る。また、巻線型電子部品10を構成するコイル導体2にマイクロ波が照射されるとスパークが生じて、コイル導体2を断線させるおそれがある。したがって、巻線型電子部品10に対してはマイクロ波照射を適用することはできない。
【0008】
本発明はこの知見に基づくものであり、フェライト材料から構成されるコアにコイルを巻き回す工程と、磁性粉末及び溶剤を含む樹脂組成物を前記コイルの周囲に塗布する工程と、前記樹脂組成物を電磁誘導加熱により乾燥する工程と、前記樹脂組成物を硬化する工程と、を備えたことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法である。
本発明の電磁誘導加熱は10〜80kHzの周波数の磁力線によって生じるものであり、特開2002−20453号公報とは用いる周波数帯域が相違する。
本発明によれば、電磁誘導加熱により前記コア及び前記磁性粉末が発熱するため、樹脂組成物の内部から乾燥が進行する。
本発明において、樹脂組成物を硬化させるための手法は問わないが、乾燥と同様に電磁誘導加熱を用いることが望ましい。必要な部分のみを加熱することができる電磁誘導加熱は、例えばオーブンによる加熱に比べて加熱効率が高い。
本発明が対象とする巻線型電子部品は、フェライト材料から構成されるコアにコイル導体が巻き回され、かつ少なくとも巻き回されたコイル導体の周囲に封止部が配設された形態を有しているが、最も典型的には、コアの両端に一対のフランジが形成され、一対のフランジ間にコイル導体が巻き回された形態の電子部品に適用することができる。その場合、コアの両端に形成された一対のフランジ間にコイル導体を巻き回し、一対の前記フランジ間であってかつ前記コイル導体の外周に樹脂組成物を塗布した後に、電磁誘導加熱により乾燥を行うことになる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における巻線型電子部品10を示す断面図である。
巻線型電子部品10の構成は、先に説明しているので、以下では各構成部分の望ましい形態について説明する。
コア1は、フェライト材料から構成されている。フェライト材料としては、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn系フェライト等の公知の物質を広く適用することができる。
コア1は、以上のフェライト粉末を例えば乾式成形、焼成することにより得ることができる。
【0010】
コア1の形状は、両端部にフランジ1a、1bが形成されていれば特に限定されるものではなく、フランジ1a、1bを除く部分も円柱状、楕円状、角柱状など任意である。フランジ1a、1bも同様であるが、一般的には矩形断面を有する形状とする。
コア1を製造するためには、フェライト粉末を金型でコア1の形状に成形することもできるし、例えば角柱状のコア素材を得た後に機械加工を施すことによりコア1の形状に成形することもできる。
【0011】
コイル導体2は、丸線、平角線、箔状線など、構造、用途、必要とされるインダクタンス値や抵抗値に応じて適宜選定すればよい。コイル導体2の材質は、低抵抗値であることが望ましいので、銅または銀、特に銅を用いるのが望ましい。その表面は絶縁性樹脂で被覆されていることが望ましい。
【0012】
封止部4を構成する樹脂としては、その機械的な強度の観点から熱硬化性樹脂を用いる。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等、公知の材質を広く適用することができる。もちろん、これら樹脂を複合して用いることも可能である。添加される磁性粉末との分散性を改善するために、分散剤等を微量添加することができる。また、適宜、少量の可塑剤等を添加することもできる。
【0013】
封止部4中に分散される磁性粉末としては、フェライト粉末のほかに、金属磁性粉末を用いることができる。この磁性粉末は、前述したように、磁束が封止部4内を通過しやすくなって磁気シールド性が向上することにより、隣接部品に対する磁気的影響を低減し、又は巻線型電子部品10自身のインダクタンス値を向上させるために添加される。本発明においてはさらに、電磁誘導加熱における発熱源としての機能を果たす。
【0014】
フェライト粉末としては、コア1を構成するものと同様に、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn系フェライト等の公知の物質を広く適用することができる。
また、金属磁性粉末としては、Fe、Ni及びCoの1種以上を主成分とする金属磁性粉末が使用できる。具体的には、純Fe粉、Fe−Si系合金、Fe−Si−Al系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Mo−Ni系合金等が使用できる。金属磁性粉末としては、結晶質金属のほか、非晶質金属及び微結晶金属を用いることもできる。
なお、磁性粉末の粒径は特に限定されるものではないが、1〜100μm程度、望ましくは10〜50μm程度の範囲から適宜選択すればよい。ただし、封止部4における磁性粉末の充填率を向上することによる耐熱衝撃性向上のために、その粒度分布は少なくとも2つのピーク値を持つことが望ましい。粒度分布の2つのピーク値は、ピークの比が10:1〜10:3の範囲にあることが望ましい。例えば、平均粒径20μmの磁性粉末の場合、27μm及び3μmに粒度分布のピーク値を有していることが望ましい。
【0015】
樹脂と磁性粉末の混合比(重量比)は、熱硬化性樹脂:磁性粉末=10〜90:90〜10の範囲で、得たい特性に応じて適宜定めるとよい。磁性粉末の量が不足すると磁気シールドとしての効果及び電磁誘導加熱源としての効果が不十分となる一方、樹脂の量が不足すると封止部4としての強度が不足するので、この点をも考慮して樹脂と磁性粉末の混合比を決定するのが望ましい。
【0016】
<製造工程>
以下、図2及び図3に基づいて、巻線型電子部品10の製造方法について説明する。なお、図2は巻線型電子部品10の製造方法の主要工程を示すフローチャート、図3は図2の各工程における巻線型電子部品10の状態を示す図である。
まず、図3(a)に示すように、四角柱状のコア素材20を作成する(図2 S101)。コア素材20は、例えばフェライト材を乾式成形することで得ることができる。
次に、図3(b)に示すように、コア素材20の両端部を除いて円柱状、楕円状あるいは角柱状などに研削加工し、フランジ1a、1bを有するコア1の形態を有する成形体に加工する。この成形体を焼成することによりコア1が得られる(図2 S103)。
次に、図3(c)に示すように、フランジ1a、1bの側面及び端面に、浸漬法などによって第1層目の電極3a,3bを形成する(図2 S105)。
電極3a、3bを形成した後に、図3(d)のように、コア1にコイル導体2を巻き回すとともに、コイル導体2の引出線2a、2bをフランジ1a、1bにおいて電極3a,3bに熱圧着などの方法で接続する(図2 S107)。
【0017】
次に、図3(e)に示すように、フランジ1a、1bに挟まれたコア1の凹部に封止部4を形成するための樹脂組成物を塗布し、コイル導体2からなる巻線部分を封止する(図2 S109)。通常は、素子全体が四角柱状となるように成形する。
塗布する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物、磁性粉末及び溶剤を含み塗料化されたものである。樹脂組成物を塗布した後に、溶剤を除去するために乾燥に共される(図2 S111)。しかる後に、樹脂組成物の硬化処理を行う(図2 S113)。乾燥及び硬化処理ともに、各々所定の温度に加熱することにより実行される。乾燥における加熱温度は、50〜100℃の温度で行うことが望ましい。また、硬化処理は、用いた樹脂組成物の種類に応じて定められるが、通常、100〜200℃の温度範囲で実行される。樹脂組成物を硬化した後に、さらに、図3(f)に示すように第2層目の電極5a,5bを形成する(図2 S115)。
【0018】
上述した乾燥工程において、本発明は電磁誘導加熱(IH)を適用する。なお、電磁誘導加熱の実施前に、自然乾燥を行うこともできる。塗料化された樹脂組成物を塗布した直後から電磁誘導加熱を行うと、樹脂中に発泡が発生するおそれがあるからである。
ここで、渦巻状に巻き回された磁力発生コイルから発生する高周波(例えば、10〜80kHz)の磁力線内に導電体を配設した場合に、導電体内に渦電流が生ずる。渦電流は導電体の表面に集中して流れる特性を有しており、電流が流れることにより発生するジュール熱により、導電体自身が発熱するのが電磁誘導加熱である。
【0019】
電磁誘導加熱にとって、磁性体であってかつ電気抵抗の高い導電体が被加熱対象として望ましい。ここで、本発明が適用される巻線型電子部品10は、前述のように、コア1がフェライトから構成されており、また、封止部4中に磁性粉末が含まれている。したがって、乾燥工程において電磁誘導加熱を施すことにより、コア1及び封止部4中含まれる磁性粉末が発熱して乾燥が促進される。特にフェライトは抵抗が高いことから、効率的な電磁誘導加熱を行うことができる。
このように、コア1及び封止部4の内部から乾燥が均一に行われるため、オーブンによる加熱のように封止部4の周囲から乾燥が進行するものと異なり、乾燥後の封止部4に残留する応力は低い。したがって、後述する実施例で述べるように、オーブン加熱による乾燥を経た巻線型電子部品に比べて、電磁誘導加熱を経る本発明の巻線型電子部品10は高いインダクタンス値を得ることができる。
【0020】
また、電磁誘導加熱は、電磁調理器の例から明らかなように、遮蔽を行う必要がない。さらに、コイル導体2が存在していても、マイクロ波加熱のようにスパークの生ずるおそれが無いばかりか、磁力発生コイルに流す電流の周波数を例えば60kHz程度に高くすれば、コイル導体2をも加熱することが可能となり、乾燥工程の短縮を図ることができる。なお、磁力発生コイルに流す電流の周波数を高くすると、その損失が大きくなる傾向にあるが、磁力発生コイルの線径を細くした素線を多数束ねることにより表面積を拡大して損失を低減することができる。
【0021】
乾燥工程の後の硬化処理は、電磁誘導加熱を適用することができるし、オーブン加熱を適用することもできる。乾燥工程で溶媒が除去された状態であれば、オーブン加熱のように封止部4の外周から加熱する方式を採用しても、収縮量が少ないために、インダクタンス値にほとんど悪影響を与えないからである。ただし、電磁誘導加熱の方が、オーブン加熱に比べて加熱効率が高い。
【0022】
樹脂の硬化処理を施した後に、図3(f)に示すように、電極3a,3b及び引出線2a,2bの接合部分に第2層目の電極5a,5bを形成する。電極5a,5bの周囲にメッキを施すこともできる。このようにして、巻線型電子部品10が製造される。なお、図1に示した巻線型電子部品10はあくまで一例であって、他の形態とすることを何ら否定するものではない。
【0023】
(実験例)
Ni−Zn−Cuフェライトにより構成されたコア1(サイズ:2518)を作成した。
また、平均粒径が20μmで、27μm及び3μmに2つの粒度分布のピーク値を持つNi−Zn−Cuフェライト粉末及び熱硬化性樹脂とを用意し、このフェライト粉末を81wt%、熱硬化性樹脂を19wt%となるように混合した。なお、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート1009)を70wt%、フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製PL−2407)を30wt%混合したものを用いた。
さらに、アセトン、メチルエチルケトン及びメタノールをアセトン:メチルエチルケトン:メタノール=6:2:2の比率で混合した溶剤を、フェライト粉末と熱硬化性樹脂とからなる組成物に対して15wt%になるように添加して塗料を得た。
【0024】
図2及び図3に示す手順で樹脂組成物を塗布した実験用サンプルに対して、電磁誘導加熱による乾燥を施した後に、オーブンによる硬化処理(150℃で60分保持)を施した。比較として、同一の実験用サンプルに対してオーブンによる乾燥(オーブン加熱)を施した後に、オーブンによる硬化処理(150℃で60分保持)を施した。なお、電磁誘導加熱には三菱電機株式会社製の加熱装置(CS−K2,周波数:20kHz)を用いた。また、乾燥の条件は以下のとおりである。なお、以下の条件中の温度は、電磁誘導加熱はサンプルの温度、オーブン加熱は加熱雰囲気の温度である。
電磁誘導加熱:50〜55℃×30分+55〜57℃×20分
オーブン加熱:自然乾燥×30分+60℃×30分+80℃×30分
【0025】
電磁誘導加熱及びオーブン加熱ともに、上記乾燥条件によりサンプルのハンドリングが可能となった。硬化処理後に封止部4内部の観察を行ったところ、電磁誘導加熱によるものは20個のサンプルのいずれにも発泡が観察されなかったのに対して、オーブン加熱によるものは20個のサンプルのうち5個のサンプルに発泡が確認された。
【0026】
樹脂組成物塗布前及び硬化処理後のサンプルのインダクタンス値を測定した。その結果を表1に示す。乾燥を電磁誘導加熱で行ったサンプルの方が、乾燥をオーブン加熱で行ったサンプルよりもインダクタンス値が高いことが分る。これは、オーブン加熱によるサンプルよりも電磁誘導加熱によるサンプルの残留応力が小さいためと解される。
【0027】
【表1】
【0028】
次に、電磁誘導加熱乾燥とオーブン加熱乾燥による残留応力の差異を確認するための他の実験として、樹脂組成物硬化後のサンプルに対して熱衝撃試験、高温耐熱試験を行った。熱衝撃試験は、硬化処理後のサンプルについて、−50℃で30分保持後に125℃まで昇温して30分保持するというサイクルを繰り返す試験である。また、高温耐熱試験は、硬化処理後のサンプルについて、常温から260℃まで昇温するサイクルを繰り返す試験である。試験結果を表2に示す。なお、判定は、樹脂部分にクラックが観察されるか、コア1と樹脂部分との界面に剥離が観察されたときにNGとした。
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示すように、電磁誘導加熱による乾燥を採用すると、オーブン加熱による乾燥に比べて、熱衝撃試験、高温加熱試験ともに樹脂部分へのクラック又はコア1との界面剥離の発生が抑制されており、電磁誘導加熱による乾燥によって残留応力が低減されていることが推認できた。
【0031】
以上本発明の実施の形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記の構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、インダクタンス値が向上された巻線型電子部品が提供される。これは、電磁誘導加熱方式により樹脂を含むスラリの乾燥を行ったことによる封止部の残留応力低減が理由と解される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における巻線型電子部品の構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態における巻線型電子部品の製造方法の主要工程を示すフローチャートである。
【図3】図2の各工程における巻線型電子部品の状態を示す図である。
【符号の説明】
1…コア、1a,1b…フランジ、2…コイル導体、2a,2b…引出線、3a,3b,5a,5b…電極、4…封止部、10…巻線型電子部品、20…コア素材
Claims (5)
- フェライト材料から構成されるコアにコイル導体を巻き回す工程と、
磁性粉末及び溶剤を含む樹脂組成物を前記コイル導体の周囲に塗布する工程と、
前記樹脂組成物を電磁誘導加熱により乾燥する工程と、
前記樹脂組成物を硬化する工程と、
を備えたことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法。 - 10〜80kHzの周波数の磁力線によって前記電磁誘導加熱を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の巻線型電子部品の製造方法。
- 前記コア及び前記磁性粉末が前記電磁誘導加熱により発熱することによって前記乾燥が行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の巻線型電子部品の製造方法。
- 前記樹脂組成物を硬化する工程を前記電磁誘導加熱により行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の巻線型電子部品の製造方法。
- 前記コアの両端に形成された一対のフランジ間に前記コイル導体を巻き回し、一対の前記フランジ間であってかつ前記コイル導体の外周に前記樹脂組成物を塗布することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の巻線型電子部品の製造方法。
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JP2008135549A (ja) * | 2006-11-28 | 2008-06-12 | Denso Corp | リアクトル |
CN108511149A (zh) * | 2017-02-28 | 2018-09-07 | 株式会社村田制作所 | 电感器 |
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-
2003
- 2003-06-13 JP JP2003169779A patent/JP2005005606A/ja not_active Withdrawn
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