JP2005005607A - 巻線型電子部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コアと封止部の密着性が向上された巻線型電子部品を提供する。
【解決手段】フェライト材料から構成されるコア1をシランカップリング剤で表面処理する工程と、コア1にコイル導体2を巻き回す工程と、磁性粉末を含む樹脂組成物をコイル導体2の周囲に塗布する工程と、樹脂組成物を硬化する工程と、を備えた巻線型電子部品10の製造方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】フェライト材料から構成されるコア1をシランカップリング剤で表面処理する工程と、コア1にコイル導体2を巻き回す工程と、磁性粉末を含む樹脂組成物をコイル導体2の周囲に塗布する工程と、樹脂組成物を硬化する工程と、を備えた巻線型電子部品10の製造方法である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インダクタ、トランス、チョークコイルなどの巻線型電子部品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
巻線型電子部品の一例を図1に示す。図1に示すように、巻線型電子部品10は、両端部にフランジ1a、1bを有するコア1と、コア1の外周に巻き回されるコイル導体2とを有している。コア1はフェライトなどの磁性材料によって通常は一体として形成されており、コイル導体2とともに巻芯を構成している。コア1のフランジ1a、1bの外側の側面及び端面には、第1層目の電極3a、3bが形成されている。
コイル導体2の両端の引出線2a、2bが、フランジ1a、1bの側面部分で電極3a、3bにそれぞれ接合している。フランジ1a、1b間に挟まれた凹部には、コイル導体2を被覆するように封止部4が配設されている。引出線2a、2bが接続された電極3a、3bの外周には、更に第2層目の電極5a、5bが施してある。
【0003】
封止部4としては、例えばフェライト粉末が分散されているエポキシ樹脂が用いられている。フェライト粉末を樹脂中に分散させることにより、磁束が封止部4内を通過しやすくなって磁気シールド性が向上し、隣接部品に対する磁気的影響を低減し、又は巻線型電子部品10自身のインダクタンス値の向上を図ることができる(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭63−236305号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
巻線型電子部品10は、他の電子部品と電気的に接続する場合には、はんだ付けされている。近時、融点の低い鉛(Pb)フリーのはんだが用いられるようになってきており、巻線型電子部品10は、はんだ付け時に従来よりも高い温度に加熱されるために、耐熱衝撃性が要求される。特に、コア1を構成しているフェライト材料と封止部4の線膨張率が相当程度異なるために、はんだ付け時にコア1と封止部4との界面に剥離が生ずるおそれがある。したがって、コア1と封止部4との界面の密着力が高いことが要求される。コア1と封止部4との界面の密着力が高ければ、当該界面への水分の侵入を阻止できるので、巻線型電子部品10の特性を安定させる。
そこで本発明は、コア1と封止部4との界面の密着性を向上できる巻線型電子部品の製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フェライト材料から構成されるコアをシランカップリング剤で表面処理する工程と、前記コアにコイル導体を巻き回す工程と、磁性粉末を含む樹脂組成物を前記コイル導体の周囲に塗布した後に前記樹脂組成物を硬化する工程と、を備えたことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法により上記課題を解決した。
本発明によれば、コアをシランカップリング剤で表面処理するので、コアと封止部との接触界面における密着性が向上する。
【0007】
本発明が対象とする巻線型電子部品は、フェライト材料から構成されるコアにコイル導体が巻き回され、かつ少なくとも巻き回されたコイル導体の周囲に封止部が配設された形態を有していればよいが、最も典型的には、コアの両端に一対のフランジが形成され、一対のフランジ間にコイル導体が巻き回された形態の電子部品に適用することができる。その場合、封止部とコアとはフランジ面において接触するので、少なくとも当該フランジ面をシランカップリング剤で表面処理する必要がある。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における巻線型電子部品10を示す断面図である。
巻線型電子部品10の構成は、先に説明しているので、以下では各構成部分の望ましい形態について説明する。
コア1は、フェライト材料から構成されている。フェライト材料としては、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn系フェライト等の公知の物質を広く適用することができる。
コア1は、以上のフェライト粉末を例えば乾式成形、焼成することにより得ることができる。
【0009】
コア1の形状は、両端部にフランジ1a、1bが形成されていれば特に限定されるものではなく、フランジ1a、1bを除く部分も円柱状、楕円状、角柱状など任意である。フランジ1a、1bも同様であるが、一般的には矩形断面を有する形状とする。フランジ1a、1bのフランジ面は、シランカップリング剤により表面処理が施されている。封止部4を構成する熱硬化性樹脂とコア1との密着性を向上するためである。
コア1を製造するためには、フェライト粉末を金型でコア1の形状に成形することもできるし、例えば角柱状のコア素材を得た後に機械加工を施すことによりコア1の形状に成形することもできる。
【0010】
コイル導体2は、丸線、平角線、箔状線など、構造、用途、必要とされるインダクタンス値や抵抗値に応じて適宜選定すればよい。コイル導体2の材質は、低抵抗値であることが望ましいので、銅または銀、特に銅を用いるのが望ましい。その表面は絶縁性樹脂で被覆されていることが望ましい。
【0011】
封止部4を構成する樹脂としては、その機械的な強度の観点から熱硬化性樹脂を用いる。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等、公知の材質を広く適用することができる。もちろん、これら樹脂を複合して用いることも可能である。添加される磁性粉末との分散性を改善するために、分散剤等を微量添加することができる。また、適宜、少量の可塑剤等を添加することもできる。
【0012】
封止部4中に分散される磁性粉末としては、フェライト粉末のほかに、金属磁性粉末を用いることができる。この磁性粉末は、前述したように、磁束が封止部4内を通過しやすくなって磁気シールド性が向上することにより、隣接部品に対する磁気的影響を低減し、又は巻線型電子部品10自身のインダクタンス値を向上させるために添加される。
【0013】
フェライト粉末としては、コア1を構成するものと同様に、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn系フェライト等の公知の物質を広く適用することができる。
また、金属磁性粉末としては、Fe、Ni及びCoの1種以上を主成分とする金属磁性粉末が使用できる。具体的には、純Fe粉、Fe−Si系合金、Fe−Si−Al系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Mo−Ni系合金等が使用できる。金属磁性粉末としては、結晶質金属のほか、非晶質金属及び微結晶金属を用いることもできる。
なお、磁性粉末の粒径は特に限定されるものではないが、1〜100μm程度、望ましくは10〜50μm程度の範囲から適宜選択すればよい。ただし、封止部4における磁性粉末の充填率を向上することによる耐熱衝撃性向上のために、その粒度分布は少なくとも2つのピーク値を持つことが望ましい。粒度分布の2つのピーク値は、ピークの比が10:1〜10:3の範囲にあることが望ましい。例えば、平均粒径20μmの磁性粉末の場合、27μm及び3μmに粒度分布のピーク値を有していることが望ましい。
【0014】
樹脂と磁性粉末の混合比(重量比)は、熱硬化性樹脂:磁性粉末=10〜90:90〜10の範囲で、得たい特性に応じて適宜定めるとよい。磁性粉末の量が不足すると磁気シールドとしての効果及び電磁誘導加熱源としての効果が不十分となる一方、樹脂の量が不足すると封止部4としての強度が不足するので、この点をも考慮して樹脂と磁性粉末の混合比を決定するのが望ましい。
【0015】
以下、図2及び図3に基づいて、巻線型電子部品10の製造方法について説明する。なお、図2は巻線型電子部品10の製造方法の主要工程を示すフローチャート、図3は図2の各工程における巻線型電子部品10の状態を示す図である。
まず、図3(a)に示すように、四角柱状のコア素材20を作成する(図2 S101)。コア素材20は、例えばフェライト材を乾式成形することで得ることができる。
次に、図3(b)に示すように、コア素材20の両端部を除いて円柱状、楕円状あるいは角柱状などに研削加工し、フランジ1a、1bを有するコア1の形態を有する成形体に加工する。この成形体を焼成することによりコア1が得られる(図2 S103)。
【0016】
得られたコア1をシランカップリング剤を含む液に浸漬した後に乾燥することにより、コア1の表面をシランカップリング剤で被覆する処理を行う(図2 S105)。
シランカップリング剤は、1つの分子中に反応性の異なる2種類の官能基を持った物質である。この2種類の官能基の1つは有機質材料と化学結合し、他の1つは無機質材料と化学結合する。シランカップリング剤は、水により加水分解されてシラノールとなり、部分的に縮合してオリゴマー状態となる。次いで、無機質表面に水素結合的に吸着する。
本発明で用いるシランカップリング剤は、封止部4を構成する樹脂の材質に応じて、官能基がビニル基、エポキシ基、アミノ基等のいずれかのものを用いることができる。
【0017】
次に、図3(c)に示すように、フランジ1a、1bの側面及び端面に、浸漬法などによって第1層目の電極3a,3bを形成する(図2 S107)。
電極3a、3bを形成した後に、図3(d)のように、コア1にコイル導体2を巻き回すとともに、コイル導体2の引出線2a、2bをフランジ1a、1bにおいて電極3a,3bに熱圧着などの方法で接続する(図2 S109)。
【0018】
次に、図3(e)に示すように、フランジ1a、1bに挟まれたコア1の凹部に封止部4を形成するための樹脂組成物を塗布し、コイル導体2からなる巻線部分を封止する(図2 S111)。通常は、素子全体が四角柱状となるように成形する。
塗布する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物、磁性粉末、溶融シリカ粉末及び溶剤を含み塗料化されたものである。樹脂組成物を塗布した後に、溶剤を除去するために乾燥に供される(図2 S113)。しかる後に、樹脂組成物の硬化処理を行う(図2 S115)。乾燥及び硬化処理ともに、各々所定の温度に加熱することにより実行される。乾燥における加熱温度は50〜100℃の範囲で行うことが望ましい。また、硬化処理は、用いた樹脂組成物の種類に応じて定められるが、通常、100〜200℃の温度範囲で実行される。乾燥及び硬化には、例えばオーブンを用いた加熱、あるいは電磁誘導加熱を適用することができる。ここで、電磁誘導加熱にとっては、磁性体であってかつ電気抵抗の高い導電体が被加熱対象として望ましい。巻線型電子部品10は、前述のように、コア1がフェライトから構成されており、また、封止部4中に磁性粉末が含まれている。したがって、乾燥工程において電磁誘導加熱を施すことにより、コア1及び封止部4に含まれる磁性粉末が発熱して乾燥が促進される。特にフェライトは抵抗が高いことから、効率的な電磁誘導加熱を行うことができる。
樹脂組成物を硬化した後に、さらに、図3(f)に示すように第2層目の電極5a,5bを形成する(図2 S117)。
【0019】
樹脂の硬化処理を施した後に、図3(f)に示すように、電極3a,3b及び引出線2a,2bの接合部分に第2層目の電極5a,5bを形成する。電極5a,5bの周囲にメッキを施すこともできる。このようにして、巻線型電子部品10が製造される。なお、図1に示した巻線型電子部品10はあくまで一例であって、他の形態とすることを何ら否定するものではない。
【0020】
(実験例)
Ni−Zn−Cuフェライトにより構成されたコア1(サイズ:2518)を作成した。このコア1を、シランカップリング剤を含む処理液の中に浸漬した。処理液からコア1を引き上げた後に、30分間自然乾燥し、さらにオーブンにおいて120℃で20分間維持する乾燥を施してサンプル(サンプルA)得た。なお、処理液は、水を5〜10wt%含むアセトン溶液にシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製:KBN403)を0.5〜1.0wt%添加したものである。
また、平均粒径が20μmで27μm及び3μmに2つの粒度分布のピークを持つNi−Zn−Cuフェライト粉末及び熱硬化性樹脂とを用意した。上記フェライト粉末を82wt%、熱硬化性樹脂を18wt%とを混合した樹脂組成物を作成した。なお、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート1009)を70wt%、フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製PL−2407)を30wt%混合したものを用いた。
さらに、アセトン、メチルエチルケトン及びメタノールをアセトン:メチルエチルケトン:メタノール=6:2:2の比率で混合した溶剤を、樹脂組成物A、樹脂組成物Bに対して各々15wt%になるように添加して塗料を得た。
【0021】
図2及び図3に示す手順で樹脂組成物を塗布した実験用サンプルに対して、電磁誘導加熱による乾燥を施した後に、オーブンによる硬化処理(150℃で60分保持)を施した。なお、シランカップリング剤で表面処理をしないサンプル(サンプルB)についても同様の手順で硬化処理まで行った。
サンプルA及びサンプルB(各々30個)について、熱衝撃試験を行った。熱衝撃試験は、硬化処理後のサンプルについて、−50℃で30分保持後に125℃まで昇温して30分保持するというサイクルを繰り返す試験である。熱衝撃試験の過程で、コア1と封止部4の界面の剥離、クラックの有無を観察した。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示すように、シランカップリング剤で表面処理を施したサンプルAは、350サイクルの熱衝撃試験を経ても剥離、クラックは観察されなかった。これに対して、シランカップリング剤で表面処理を施していないサンプルBは、290サイクルの熱衝撃試験を経た時点で5個のサンプルに剥離、クラックが観察された。
【0024】
以上本発明の実施の形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記の構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、コアと封止部の密着性が向上された巻線型電子部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における巻線型電子部品の構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態における巻線型電子部品の製造方法の主要工程を示すフローチャートである。
【図3】図2の各工程における巻線型電子部品の状態を示す図である。
【符号の説明】
1…コア、1a,1b…フランジ、2…コイル導体、2a,2b…引出線、3a,3b,5a,5b…電極、4…封止部、10…巻線型電子部品、20…コア素材
【発明の属する技術分野】
本発明は、インダクタ、トランス、チョークコイルなどの巻線型電子部品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
巻線型電子部品の一例を図1に示す。図1に示すように、巻線型電子部品10は、両端部にフランジ1a、1bを有するコア1と、コア1の外周に巻き回されるコイル導体2とを有している。コア1はフェライトなどの磁性材料によって通常は一体として形成されており、コイル導体2とともに巻芯を構成している。コア1のフランジ1a、1bの外側の側面及び端面には、第1層目の電極3a、3bが形成されている。
コイル導体2の両端の引出線2a、2bが、フランジ1a、1bの側面部分で電極3a、3bにそれぞれ接合している。フランジ1a、1b間に挟まれた凹部には、コイル導体2を被覆するように封止部4が配設されている。引出線2a、2bが接続された電極3a、3bの外周には、更に第2層目の電極5a、5bが施してある。
【0003】
封止部4としては、例えばフェライト粉末が分散されているエポキシ樹脂が用いられている。フェライト粉末を樹脂中に分散させることにより、磁束が封止部4内を通過しやすくなって磁気シールド性が向上し、隣接部品に対する磁気的影響を低減し、又は巻線型電子部品10自身のインダクタンス値の向上を図ることができる(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭63−236305号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
巻線型電子部品10は、他の電子部品と電気的に接続する場合には、はんだ付けされている。近時、融点の低い鉛(Pb)フリーのはんだが用いられるようになってきており、巻線型電子部品10は、はんだ付け時に従来よりも高い温度に加熱されるために、耐熱衝撃性が要求される。特に、コア1を構成しているフェライト材料と封止部4の線膨張率が相当程度異なるために、はんだ付け時にコア1と封止部4との界面に剥離が生ずるおそれがある。したがって、コア1と封止部4との界面の密着力が高いことが要求される。コア1と封止部4との界面の密着力が高ければ、当該界面への水分の侵入を阻止できるので、巻線型電子部品10の特性を安定させる。
そこで本発明は、コア1と封止部4との界面の密着性を向上できる巻線型電子部品の製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フェライト材料から構成されるコアをシランカップリング剤で表面処理する工程と、前記コアにコイル導体を巻き回す工程と、磁性粉末を含む樹脂組成物を前記コイル導体の周囲に塗布した後に前記樹脂組成物を硬化する工程と、を備えたことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法により上記課題を解決した。
本発明によれば、コアをシランカップリング剤で表面処理するので、コアと封止部との接触界面における密着性が向上する。
【0007】
本発明が対象とする巻線型電子部品は、フェライト材料から構成されるコアにコイル導体が巻き回され、かつ少なくとも巻き回されたコイル導体の周囲に封止部が配設された形態を有していればよいが、最も典型的には、コアの両端に一対のフランジが形成され、一対のフランジ間にコイル導体が巻き回された形態の電子部品に適用することができる。その場合、封止部とコアとはフランジ面において接触するので、少なくとも当該フランジ面をシランカップリング剤で表面処理する必要がある。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における巻線型電子部品10を示す断面図である。
巻線型電子部品10の構成は、先に説明しているので、以下では各構成部分の望ましい形態について説明する。
コア1は、フェライト材料から構成されている。フェライト材料としては、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn系フェライト等の公知の物質を広く適用することができる。
コア1は、以上のフェライト粉末を例えば乾式成形、焼成することにより得ることができる。
【0009】
コア1の形状は、両端部にフランジ1a、1bが形成されていれば特に限定されるものではなく、フランジ1a、1bを除く部分も円柱状、楕円状、角柱状など任意である。フランジ1a、1bも同様であるが、一般的には矩形断面を有する形状とする。フランジ1a、1bのフランジ面は、シランカップリング剤により表面処理が施されている。封止部4を構成する熱硬化性樹脂とコア1との密着性を向上するためである。
コア1を製造するためには、フェライト粉末を金型でコア1の形状に成形することもできるし、例えば角柱状のコア素材を得た後に機械加工を施すことによりコア1の形状に成形することもできる。
【0010】
コイル導体2は、丸線、平角線、箔状線など、構造、用途、必要とされるインダクタンス値や抵抗値に応じて適宜選定すればよい。コイル導体2の材質は、低抵抗値であることが望ましいので、銅または銀、特に銅を用いるのが望ましい。その表面は絶縁性樹脂で被覆されていることが望ましい。
【0011】
封止部4を構成する樹脂としては、その機械的な強度の観点から熱硬化性樹脂を用いる。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等、公知の材質を広く適用することができる。もちろん、これら樹脂を複合して用いることも可能である。添加される磁性粉末との分散性を改善するために、分散剤等を微量添加することができる。また、適宜、少量の可塑剤等を添加することもできる。
【0012】
封止部4中に分散される磁性粉末としては、フェライト粉末のほかに、金属磁性粉末を用いることができる。この磁性粉末は、前述したように、磁束が封止部4内を通過しやすくなって磁気シールド性が向上することにより、隣接部品に対する磁気的影響を低減し、又は巻線型電子部品10自身のインダクタンス値を向上させるために添加される。
【0013】
フェライト粉末としては、コア1を構成するものと同様に、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn系フェライト等の公知の物質を広く適用することができる。
また、金属磁性粉末としては、Fe、Ni及びCoの1種以上を主成分とする金属磁性粉末が使用できる。具体的には、純Fe粉、Fe−Si系合金、Fe−Si−Al系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Mo−Ni系合金等が使用できる。金属磁性粉末としては、結晶質金属のほか、非晶質金属及び微結晶金属を用いることもできる。
なお、磁性粉末の粒径は特に限定されるものではないが、1〜100μm程度、望ましくは10〜50μm程度の範囲から適宜選択すればよい。ただし、封止部4における磁性粉末の充填率を向上することによる耐熱衝撃性向上のために、その粒度分布は少なくとも2つのピーク値を持つことが望ましい。粒度分布の2つのピーク値は、ピークの比が10:1〜10:3の範囲にあることが望ましい。例えば、平均粒径20μmの磁性粉末の場合、27μm及び3μmに粒度分布のピーク値を有していることが望ましい。
【0014】
樹脂と磁性粉末の混合比(重量比)は、熱硬化性樹脂:磁性粉末=10〜90:90〜10の範囲で、得たい特性に応じて適宜定めるとよい。磁性粉末の量が不足すると磁気シールドとしての効果及び電磁誘導加熱源としての効果が不十分となる一方、樹脂の量が不足すると封止部4としての強度が不足するので、この点をも考慮して樹脂と磁性粉末の混合比を決定するのが望ましい。
【0015】
以下、図2及び図3に基づいて、巻線型電子部品10の製造方法について説明する。なお、図2は巻線型電子部品10の製造方法の主要工程を示すフローチャート、図3は図2の各工程における巻線型電子部品10の状態を示す図である。
まず、図3(a)に示すように、四角柱状のコア素材20を作成する(図2 S101)。コア素材20は、例えばフェライト材を乾式成形することで得ることができる。
次に、図3(b)に示すように、コア素材20の両端部を除いて円柱状、楕円状あるいは角柱状などに研削加工し、フランジ1a、1bを有するコア1の形態を有する成形体に加工する。この成形体を焼成することによりコア1が得られる(図2 S103)。
【0016】
得られたコア1をシランカップリング剤を含む液に浸漬した後に乾燥することにより、コア1の表面をシランカップリング剤で被覆する処理を行う(図2 S105)。
シランカップリング剤は、1つの分子中に反応性の異なる2種類の官能基を持った物質である。この2種類の官能基の1つは有機質材料と化学結合し、他の1つは無機質材料と化学結合する。シランカップリング剤は、水により加水分解されてシラノールとなり、部分的に縮合してオリゴマー状態となる。次いで、無機質表面に水素結合的に吸着する。
本発明で用いるシランカップリング剤は、封止部4を構成する樹脂の材質に応じて、官能基がビニル基、エポキシ基、アミノ基等のいずれかのものを用いることができる。
【0017】
次に、図3(c)に示すように、フランジ1a、1bの側面及び端面に、浸漬法などによって第1層目の電極3a,3bを形成する(図2 S107)。
電極3a、3bを形成した後に、図3(d)のように、コア1にコイル導体2を巻き回すとともに、コイル導体2の引出線2a、2bをフランジ1a、1bにおいて電極3a,3bに熱圧着などの方法で接続する(図2 S109)。
【0018】
次に、図3(e)に示すように、フランジ1a、1bに挟まれたコア1の凹部に封止部4を形成するための樹脂組成物を塗布し、コイル導体2からなる巻線部分を封止する(図2 S111)。通常は、素子全体が四角柱状となるように成形する。
塗布する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物、磁性粉末、溶融シリカ粉末及び溶剤を含み塗料化されたものである。樹脂組成物を塗布した後に、溶剤を除去するために乾燥に供される(図2 S113)。しかる後に、樹脂組成物の硬化処理を行う(図2 S115)。乾燥及び硬化処理ともに、各々所定の温度に加熱することにより実行される。乾燥における加熱温度は50〜100℃の範囲で行うことが望ましい。また、硬化処理は、用いた樹脂組成物の種類に応じて定められるが、通常、100〜200℃の温度範囲で実行される。乾燥及び硬化には、例えばオーブンを用いた加熱、あるいは電磁誘導加熱を適用することができる。ここで、電磁誘導加熱にとっては、磁性体であってかつ電気抵抗の高い導電体が被加熱対象として望ましい。巻線型電子部品10は、前述のように、コア1がフェライトから構成されており、また、封止部4中に磁性粉末が含まれている。したがって、乾燥工程において電磁誘導加熱を施すことにより、コア1及び封止部4に含まれる磁性粉末が発熱して乾燥が促進される。特にフェライトは抵抗が高いことから、効率的な電磁誘導加熱を行うことができる。
樹脂組成物を硬化した後に、さらに、図3(f)に示すように第2層目の電極5a,5bを形成する(図2 S117)。
【0019】
樹脂の硬化処理を施した後に、図3(f)に示すように、電極3a,3b及び引出線2a,2bの接合部分に第2層目の電極5a,5bを形成する。電極5a,5bの周囲にメッキを施すこともできる。このようにして、巻線型電子部品10が製造される。なお、図1に示した巻線型電子部品10はあくまで一例であって、他の形態とすることを何ら否定するものではない。
【0020】
(実験例)
Ni−Zn−Cuフェライトにより構成されたコア1(サイズ:2518)を作成した。このコア1を、シランカップリング剤を含む処理液の中に浸漬した。処理液からコア1を引き上げた後に、30分間自然乾燥し、さらにオーブンにおいて120℃で20分間維持する乾燥を施してサンプル(サンプルA)得た。なお、処理液は、水を5〜10wt%含むアセトン溶液にシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製:KBN403)を0.5〜1.0wt%添加したものである。
また、平均粒径が20μmで27μm及び3μmに2つの粒度分布のピークを持つNi−Zn−Cuフェライト粉末及び熱硬化性樹脂とを用意した。上記フェライト粉末を82wt%、熱硬化性樹脂を18wt%とを混合した樹脂組成物を作成した。なお、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート1009)を70wt%、フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製PL−2407)を30wt%混合したものを用いた。
さらに、アセトン、メチルエチルケトン及びメタノールをアセトン:メチルエチルケトン:メタノール=6:2:2の比率で混合した溶剤を、樹脂組成物A、樹脂組成物Bに対して各々15wt%になるように添加して塗料を得た。
【0021】
図2及び図3に示す手順で樹脂組成物を塗布した実験用サンプルに対して、電磁誘導加熱による乾燥を施した後に、オーブンによる硬化処理(150℃で60分保持)を施した。なお、シランカップリング剤で表面処理をしないサンプル(サンプルB)についても同様の手順で硬化処理まで行った。
サンプルA及びサンプルB(各々30個)について、熱衝撃試験を行った。熱衝撃試験は、硬化処理後のサンプルについて、−50℃で30分保持後に125℃まで昇温して30分保持するというサイクルを繰り返す試験である。熱衝撃試験の過程で、コア1と封止部4の界面の剥離、クラックの有無を観察した。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示すように、シランカップリング剤で表面処理を施したサンプルAは、350サイクルの熱衝撃試験を経ても剥離、クラックは観察されなかった。これに対して、シランカップリング剤で表面処理を施していないサンプルBは、290サイクルの熱衝撃試験を経た時点で5個のサンプルに剥離、クラックが観察された。
【0024】
以上本発明の実施の形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記の構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、コアと封止部の密着性が向上された巻線型電子部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における巻線型電子部品の構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態における巻線型電子部品の製造方法の主要工程を示すフローチャートである。
【図3】図2の各工程における巻線型電子部品の状態を示す図である。
【符号の説明】
1…コア、1a,1b…フランジ、2…コイル導体、2a,2b…引出線、3a,3b,5a,5b…電極、4…封止部、10…巻線型電子部品、20…コア素材
Claims (2)
- フェライト材料から構成されるコアをシランカップリング剤で表面処理する工程と、
前記コアにコイル導体を巻き回す工程と、
磁性粉末を含む樹脂組成物を前記コイル導体の周囲に塗布した後に前記樹脂組成物を硬化する工程と、
を備えたことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法。 - 前記巻線型電子部品は、前記コアの両端に形成された一対のフランジ間に前記コイル導体が巻き回されており、少なくとも前記フランジ面を前記シランカップリング剤で表面処理することを特徴とする請求項1に記載の巻線型電子部品の製造方法。
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JP2010238853A (ja) * | 2009-03-31 | 2010-10-21 | Denso Corp | リアクトル及びその製造方法 |
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JP2018046264A (ja) * | 2016-09-16 | 2018-03-22 | 株式会社東芝 | モールドコイル、変圧器及びリアクタンス |
-
2003
- 2003-06-13 JP JP2003169780A patent/JP2005005607A/ja not_active Withdrawn
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