JP2005004985A - 高周波誘電体材料および電子部品 - Google Patents

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水緒 小澤
Tomohiro Sogabe
智浩 曽我部
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Abstract

【課題】高周波用共振器の共振周波数の温度特性を改善した、有機高分子樹脂およびセラミックスを複合した高周波誘電体材料と、このような高周波誘電体材料を用いた電子部品である共振器とを提供すること。
【解決手段】樹脂セラミックス複合体誘電率の温度係数を調整するために、誘電率の温度係数τεが負である有機高分子樹脂と、誘電率の温度係数を正とするために、元素を置換したセラミックスとを混合し、温度係数τεの小さい高周波誘電体材料とする。このような材料を用いることにより温度変化による共振周波数の変動が小さい高周波用共振器が実現する。

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、特に高周波領域での使用に好適な樹脂セラミックス複合高周波誘電体材料及びこれを用いた電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報通信の手法として無線通信があるが、INS(高度情報化社会)への移行とともに無線通信は使用周波数帯がますます高周波帯域に移行している。特に発展が期待されている衛星放送、衛星通信や、携帯電話、自動車電話等の移動体通信にはギガヘルツ(GHz)帯の高周波が使用されている。
【0003】
そのため、これらの送受信機に使用される回路基板の材料はGHz帯に於いて高周波伝送特性が優れた(誘電損失が小さい)ものでなければならない。
【0004】
ここで、誘電損失は周波数と基板の誘電率εr と誘電正接(以下tanδと記載する)の積に比例することより、誘電損失を小さくするためには基板のtanδを小さくしなければならない。又、基板中では電磁波の波長が1/√εr に短縮されるため、誘電率εrが大きい程基板の小型化が可能である。
【0005】
以上のことから高周波領域で使用される小型の電子機器、情報機器に用いる回路基板としては、誘電率εrが高く、かつtanδが小さい材料特性が要求されている。
【0006】
このような回路基板の材料としては、無機材料として誘電体セラミックス、有機材料としてフッ素樹脂等が用いられている。さらに、有機材料と無機材料の複合体として熱硬化性樹脂とチタン酸バリウム等の誘電体セラミックスを混合してなる複合基板も用いられている(例えば特開平8−67712号公報等参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−67712号公報
【特許文献2】
特開平5−211006号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記の高周波誘電体材料を用いて形成した誘電体層を積層し、この誘電体層間にストリップ線路を形成してトリプレート回路とし、高周波用共振器を試作した。
【0009】
しかし、上記の高周波誘電体材料を用いて形成した誘電体層の誘電率は、温度により変化し、例えば周波数2GHzにおける誘電率の温度係数τεは、130ppm/℃程度ある。このため、高周波領域、例えば周波数0.5GHz以上で使用すると、温度変化により共振周波数が大幅に変化してしまい、実用化が困難であることが判明した。
【0010】
そこで、本発明の目的は、高周波用共振器の共振周波数の温度特性を改善した高周波誘電体材料と、このような高周波誘電体材料を用いた共振器等の電子部品とを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、請求項1〜5の本発明により達成される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明では、誘電率の温度係数τεが正のセラミックスと、τεが負の有機高分子樹脂とを所定の配合比に混合して高周波誘電体材料を構成し、高周波誘電体材料のτεを零に近づける。このような高周波誘電体材料を用いることにより共振器の共振周波数の温度係数τfを零に近づけることができる。このため、高周波領域、例えば周波数0.5GHz以上で使用しても温度変化による共振周波数の変動が小さい高周波用共振器が実現する。
【0013】
以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
【0014】
本発明の高周波誘電体材料は、例えば0.5GHz〜2GHzの高周波領域で使用される共振器の基板材料であり、高誘電率かつ低誘電損失でさらに誘電率温度変化率の符号が有機高分子樹脂と逆であるBaO−Sm−Bi−TiO系誘電体セラミックスを用いて有機高分子樹脂−セラミックス複合材を作製し、高周波誘電体材料の電気特性の温度依存性τεを小さくする。
【0015】
一般に、有機高分子樹脂のτεは負のものが多く、例えばビニルベンジルは−40.4ppm/℃、ポリフェニレンエーテルは−92ppm/℃、ポリオレフィン−151ppm/℃などである。
【0016】
一方、セラミックスも、特に高誘電率かつ低損失のものはτεが負のものが多い。例えば、特許文献2に示される高誘電率かつ低誘電損失であるBaO−Nd−Bi−TiO−Mn系誘電体セラミックスはτεが、−149ppm/℃である。また、BaO−Sm−TiO系誘電体セラミックスも−22.8ppm/℃と負の値を示すが、これを、Biで10〜30mol%置換することにより、τεの符号が樹脂と逆の正であるBaO−Sm−Bi−TiO系誘電体セラミックスを得ることができる。
【0017】
これらの場合、セラミックスはτεが正であればよく、鉛系の誘電体材料のなかにも数種みられるが、上記、BaO−Sm−Bi−TiO系誘電体セラミックスであれば、環境対策にもなる。なお、この出願と同一の出願人の「特許文献1」には、有機高分子樹脂およびセラミックスを複合することは記載されているが、τε等の温度特性については記載されていない。
【0018】
また、温度特性の異なるセラミックスを混合し、温度特性を補償することは「特許文献2」に示されているが、用いられるセラミックスの誘電率が低く、混合媒体はガラスである。
【0019】
本発明において、τεが負の有機高分子樹脂と、τεが正のセラミックスとの混合比には特に制限がなく、用いるセラミックスの含有比等に応じ、高周波誘電体材料のεおよびτεが所定値に近づくように、すなわち共振器の共振周波数の温度係数τf が零に近づくように適宜決定すればよい。
【0020】
セラミックスの平均粒径には特に制限はないが、0.1〜3μm程度が好ましい。この範囲未満では複合材のシート形成が困難となり、この範囲を超えると回路パターンの緻密化の障害となってくる。
【0021】
また、τεは、実際に誘電体共振器を作製し、共振周波数の温度係数τfを求め、式(1)から算出して求める。
【0022】
τε=−2(τf+α) …(1)
α:試料の線膨張率
この場合、τfは、恒温槽を用い、−30℃〜+85℃、で共振周波数を測定して求める。これらの場合、セラミックスや有機高分子樹脂およびこれらの高分子誘電体材料の熱膨張係数は示差熱膨張計を用いて測定すればよい。
【0023】
この他、例えば、1.4mm角、長さ60mm程度の所定形状の試料としたのち、試料の有無による微少な共振周波数の変化から摂動法で誘電率を求め、これからτεを算出してもよい。
【0024】
資料を空洞共振器に挿入したときの共振周波数をfrs、空洞共振器そのものの共振周波数をfroとすると、誘電率は式2により求められる。
【0025】
ε=1+V/βv・(frs−fro)/fro …(2)
V:空洞全体の体積
β:共振器のモードによって決まる定数
(円形導波管TMoでは1.855)
v:試料の体積
このように本発明では、セラミックスおよび有機高分子樹脂のτεおよびεr等に応じて、τεが正のセラミックスと、τεが負の有機高分子樹脂との体積比を所定の値に調整することにより、高周波誘電体材料のτεを所定値に近づけ、共振器のτfを小さなものとするのである。
【0026】
この場合、高周波誘電体材料の周波数2GHz、−30〜85℃における誘電率の温度係数τεを−100〜100ppm/℃、特に−25〜+5ppm/℃とすることが好ましく、理想的には、τε=−2(τf+α)の式に従ってτf=0になるτεが好ましい。例えば、高周波誘電体材料のαが6.0ppm/℃程度の場合、τεは−12ppm/℃程度が好ましい。
【0027】
なお、τfとしては−15〜+15ppm/℃、特に−10〜+10ppm/℃、さらには−5〜+5ppm/℃とすることができる。また、本発明の高周波誘電体材料基板の40〜290℃における平均熱膨張係数αは38ppm/℃程度、比誘電率は12程度である。
【0028】
以下、図1に示す実施の形態に基づいてこの発明を説明する。
【0029】
本発明の共振器を用いた電圧制御発振器1は、周波数0.5fGHz以上、特に0.5〜2GHzで使用されるものであり、図示されるように誘電体層21、23、25、27を積層一体化した積層体2を有し、少なくともこの積層体2の誘電体層23、25間にストリップ線路3を有する。ストリップ線路の形状、寸法、数等には特に制限がなく、目的等に応じて適宜決定すればよい。
【0030】
また、誘電体層23、25間には、必要に応じて内部導体7が形成される。この場合内部導体7は、例えば、コイルの導体、コンデンサの電極等種々の目的や用途に応じて所望のパターンに形成される。
【0031】
また、誘電体層23、21間および誘電体層27の表面上にはグランドプレーン4aが形成されている。この場合、グランドプレーン4a、4b間にストリップ線路3を位置させる。
【0032】
また、積層体2上には外部導体6が形成され、この外部導体6と、前記ストリップ線路3、グランドプレーン4a、4bおよび内部導体7とがそれぞれスルホール5内の導体を介して電気的に接続される。
【0033】
ストリップ線路3、グランドプレーン4a、4b内部導体7およびスルーホール5内の導体には、それぞれ、導電性が良いこと等を優先させる点からAg、Cu、またはそれらを主体とする導体が好ましい。また、外部導体6には、耐マイグレーション性、半田喰われ性、半田濡れ性等の点からAgまたはCuを主体とする導体を用いることが好ましい。
【0034】
このような共振器は、例えば以下のようにして製造する。まず、内部導体用ペーストおよび外部導体用ペーストをそれぞれ作製する。これらのペーストは、導電粒子と、導電粒子に対し、1〜5重量%程度のガラスフリットと、ビヒクルとを含有する。次いで、誘電体層材料となるグリーンシートを作製する。
【0035】
次いで、グリーンシート上にパンチングマシーンや金型プレスを用いてスルーホール5を形成し、その後、内部導体用ペーストを各グリーンシート上に、例えばスクリーン印刷法により印刷し、所定のパターンの内部導体7、ストリップ線路3、およびグランドプレーン4a、4bを形成するとともにスルーホール5内に充填する。
【0036】
次いで、各グリーンシートを重ね合せ、熱プレス(約40〜120℃、50〜1000kgf/cm)を加えてグリーンシートの積層体とし、必要に応じて脱溶剤処理、切断用溝の形成等を行なう。
【0037】
次いで、グリーンシートの積層体を通常空気中で、300℃程度以下の温度で60分間程度硬化、一体化し、誘電体層23、25間にストリップ線路3が形成された共振器を得る。そして、外部導体用ペーストをスクリーン印刷法等により印刷し、焼付けて外部導体6を形成する。この場合、好ましくは、これら外部導体6を誘電体層21、23、25、27と同時硬化して一体に形成する。
【0038】
図2に共振器を用いた電圧制御発振器の斜視図を示す。
本発明の積層体2の上に外部導体を介して表面実装部品8を配して、発振器を構成する。
【0039】
上述した共振器は、本発明の1例であり、少なくとも誘電体層間にTEM線路等のストリップ線路を有し、周波数0.5GHz以上で使用されるものであれば特に制限がなく種々のものであってよい。この場合共振周波数は通常0.5〜5GHz程度とする。具体的には、本発明の共振器は、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタ等の各種フィルタ、これらのフィルタを組み合わせた分波フィルタ、ディプレクサ、電圧制御発振器等の電子部品に応用が可能である。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0041】
実施例1
BaO(15.66mol%)、Sm(12.47〜8.73mol%)、Bi(0mol%〜3.74mol%)およびTiO(69.67mol%)となるように、BaO、SmCO、Bi、TiOを秤量し、ボールミルで混合した。これを乾燥し、(1300℃で2時間)仮焼きした後、平均粒径2μmになるまで粉砕して、BaO−Sm−Bi−TiO系組成粉を得た。
【0042】
次に、バインダー2wt%を混合し、さらに、円板状に3000kgf/cmの圧力で成形し、仮焼き温度1350℃、4時間で焼成した。
【0043】
こうしていられた誘電体円版の比誘電率εおよびεの温度依存性を共振器法で測定した。温度依存性を示す温度係数τεは式3に従って算出した。
【0044】
τε=(ε85−ε )/ε (85−20) …(3)
但し
ε85は85℃における比誘電率
ε20は20℃における比誘電率
である。
【0045】
上述した誘電体円板のSmに対するBi置換量および比誘電率とその温度係数を表1に示す。
【0046】
【表1】
Figure 2005004985
【0047】
混合する有機高分子樹脂ビニルベンジルのτεは−40.4であるので、これと符号の反対のBi置換量が15%の組成を有する誘電体セラミックス粉体を用いて、下記に示すように複合誘電体基板を作成した。
【0048】
有機高分子樹脂としてビニルベンジルと、セラミックス粉末として、仮焼き後本焼成した上記15%Bi置換BaO−Sm−TiO誘電体セラミックス粉末40vol%を、ポットミルにて混練し、両粉末の混合物を作成した。この混合物を150℃で熱間成形し、金型から取りだした後180℃で樹脂を硬化させ高周波複合誘電体基板1を作成した。
【0049】
比較例1
また、比較用にBaO(14.22mol%)Nd(17.56mol%)TiO(68.22mol%)Bi(2.39mol%)を100wt%としてMn(0.15wt%)を混合した誘電体セラミックス粉を用意し、上記と同様にビニルベンジルと混合した高周波複合誘電体基板2を作成した。
【0050】
得られた基板より、2×2×60mmの棒状試料を切り出し摂動共振器法により、比誘電率εおよび20〜85℃の温度係数τεを求めたところ表2に示されるとおりであった。また、両者の平均熱膨張計数は38×10−6であった。
【0051】
また、τf=−τε/2−αであるから、表2のようにτfを求めることができる。このように、異符号の温度特性を持つ樹脂とセラミックスを用いて、τfが小さい誘電体誘電体材料を得ることができた。
【0052】
【表2】
Figure 2005004985
【0053】
実施例2、比較例2
高周波複合誘電体基板の電極パターンが微細になると、微細なセラミックス粉を用いることが必要になる。実施例1および比較例1のセラミックス粉を粉砕し、空気中に放置したところ水分を含有した。これをそれぞれ実施例1と同様に樹脂と混合して実施例2、比較例2とする。水を含有する複合誘電体材料の温度係数も対数混合則を用いて計算することができる。水の誘電率は20℃で80.1、85℃で59.7である。
20℃および85℃の比誘電率εを有機高分子樹脂、セラミックスおよび水の比誘電率を用いて、対数混合則により計算した値を表3に示す。このときの、実施例2のセラミックスの水分は0.10vol%、比較例2のセラミックスの水分は0.05vol%であった。
【0054】
【表3】
Figure 2005004985
【0055】
表4にそれぞれの計算値と実測値を比較する。
【0056】
【表4】
Figure 2005004985
【0057】
有機高分子樹脂とセラミックスを複合した高周波誘電体材料の、有機高分子樹脂とセラミックスの比率等により熱膨張係数は変化するが、適正なBi置換量のセラミックス粉を用いることにより、高周波誘電体材料のτεの値をτf=0になるように近づけることができる。
【0058】
【発明の効果】本発明の高周波誘電体材料は、有機高分子樹脂とセラミックスの比率を変化させることによりτεを0に近づけることができ、これを用いた電子部品は、温度変化による共振周波数の変動が小さい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の共振器を用いた電圧制御電子部品が示される部分断面図である。
【図2】本発明の共振器を用いた電圧制御電子部品が示される斜視図である。
【符号の説明】
1 電圧制御電子部品
2 積層体
21,23,25,27 誘電体層
3 ストリップ線路
4a、4b グランドプレーン
5 スルーホール
6 外部導体
7 内部導体
8 表面実装部品

Claims (5)

  1. 誘電率の温度係数τεが負の有機高分子樹脂と、誘電率の温度係数τεが正のセラミックスとを混合してなる高周波誘電体材料。
  2. 前記τεが正のセラミックスがxBaO−ySm−zTiO(10<x<25,10<y<25,60<z<75)のSmをBiで置換したセラミックスである請求項1に記載の高周波誘電体材料。
  3. 前記τεが負の有機高分子樹脂がビニルベンジルである請求項1および2のいずれかに記載の高周波誘電体材料。
  4. 前記τεが正のセラミックスのSmをBiで置換する量が10〜30mol%である請求項1〜3のいずれかに記載の高周波誘電体材料。
  5. 前記請求項1〜4のいずれかに記載の高周波誘電体材料を用いた電子部品。
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