JP2005003605A - 米麹の品質評価用バイオセンサー装置及び該装置による米麹の品質評価方法 - Google Patents

米麹の品質評価用バイオセンサー装置及び該装置による米麹の品質評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】測定・評価した米麹品質から醗酵途中の清酒醪の状態を事前に予測したり、清酒の商品開発において目標とする品質(清酒成分)を得るため様々な醸造条件を設定する。
【解決手段】表面光電位デバイスを用いた清酒酵母の代謝活性の変化を捉えるためのセンサーシステムにおいて、フローセル内のセンサーチップ上に清酒酵母をアクリルアミドゲルで包埋し酵母固定化ゲルを形成して取り付け、該酵母固定化ゲルに導入する試料液の標準物質をグルコースとして、該グルコースに対する清酒酵母の代謝を前記表面光電位デバイスで定量的に測定して基準値となし、該基準値を表すセンサー応答測定値に対して米麹抽出液試料に対する清酒酵母の代謝を表すセンサー応答測定値の比で米麹の品質評価を行う。
【選択図】 図14

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は清酒の醸造工程で用いられる米麹の品質評価用バイオセンサー装置及び該装置による米麹の品質評価方法に関するものである。
【0002】
本発明の表面光電位デバイスを利用した米麹の品質評価用バイオセンサー装置及び該装置による米麹の品質評価方法は、清酒醸造において重要な原材料である米麹の品質差を捉えることができ、該品質差は清酒醪の醗酵指標として重要な留添後10日目における、清酒醪のアルコール度数や日本酒度と高い相関を示すことを明らかにして、本発明の装置及び方法にて測定・評価した米麹品質から醗酵途中の清酒醪の状態を事前に予測することを可能とするものである。
【0003】
また、本発明は、単に清酒醪の醗酵状態を予測する用途だけに利用するものではない。清酒の商品開発においては、目標とする品質(清酒成分)を得るために醗酵状体を左右する様々な醸造条件を設定する。その条件とは、例えば原料米、使用清酒酵母、仕込配合、温度経過等である。本発明を利用することにより、米麹から醗酵状態を予測できるということは、目標とする醗酵状態にするための米麹の品質を提案することができ、清酒の商品開発において設定する新たな醸造条件に米麹の品質を加えることが可能となった。
【0004】
更に、本発明の技術分野は、清酒醸造に限らず、醗酵を利用した食品産業に幅広く応用できる。アルコール飲料であればビール(発泡酒を含む)、焼酎、ワイン等が挙げられるし、その他の食品であればヨーグルト、味噌、醤油等、微生物の発酵を利用した食品は多様にあり、本発明の表面光電位デバイスを利用したセンサーによる発酵プロセス制御装置及び発酵プロセス制御方法を用いれば、醗酵に使用する微生物をセンサーチップに取り付け、醗酵に利用する原料(または醗酵させる原料)の品質評価を行うもので、センサーチップに取り付ける微生物と測定対象を少し変えるだけで、様々な応用が可能である。
【0005】
【従来の技術】
清酒醸造工程で米麹の品質が清酒の品質を大きく左右することが古くから経験的に知られており、そのことを示す言葉として「一麹、二もと、三造り」が現代にまで伝わっている。
【0006】
その重要な原材料である米麹の製造過程や品質の判断は、経験を積んだ杜氏をはじめとする蔵人によって行われていることが多い。しかし近年、蔵人の高齢化に伴い、このような経験に基づく伝統的技術が失われつつあるため、その伝統的技術の継承と、それによる若手酒造技術者の育生が急務となっている。米麹製造における技術者の育生も例外でなく、そのための米麹の品質評価法に関しても様々な研究がなされている。
【0007】
米麹には黄麹菌であるAspergillus oryzae が生産する酵素、ビタミン等多くの物質が含まれている。そうした物質には清酒酵母の発酵に欠くことのできない成分もあり、清酒の味や香りに影響を与える成分もあることは良く知られている。
【0008】
ところが、上述の米麹中の成分やその組成の差によって生じる清酒酵母の代謝の変化を直接捉えることに関する従来技術の資料はあまり見つからない。清酒は清酒酵母の代謝の結果として得られるものであるので、清酒醪中の清酒酵母の代謝と直接関係つけられる品質評価法があれば、米麹の品質評価に最適であると考えられる。
【0009】
一方、味、匂い、鮮度等の食品品質を管理するためのバイオセンサーには、グルコース、ガラクトース、脂肪等の化学物質を測定するセンサーがある。このようなセンサーの一部は、既に清酒や清酒醪の品質管理にも用いられている。
【0010】
しかし、上記センサーは測定対象となる物質の定量測定をするだけのものであって、その組成が清酒醸造、つまりは清酒酵母の代謝へ与える影響を示すものではない。
【0011】
而して、従来技術として、醸造関連の専門誌「日本醸造協会誌」第95巻 第11号 平成12年11月15日発行 財団法人日本醸造協会・日本醸造学会、頁785〜頁790「醸造センサーの開発」には、従来例として、表面光電位デバイスの1種であるLAPS(Light−Addressable Potentiometric Sensor)に酵母を固定化したバイオセンサーにおいて酵母の代謝活性をLAPSで測定することによって有機物質が定量測定できたとの報告がなされている。
【0012】
上記、研究報告は、LAPSを用いたバイオセンサーシステムで、固定化する酵母に清酒酵母、測定する有機物質として米麹抽出液を与えれば、清酒酵母の代謝活性を定量的に測定することができる可能性を示唆しており、その結果として米麹が清酒酵母に与える影響を評価することが可能であることを示している。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
斯くして、本発明は、上記研究報告が示唆した表面光電位デバイス上に清酒酵母を固定化した、米麹の品質評価をするバイオセンサー装置を具体的に提供し、該バイオセンサーを用いた清酒酵母の代謝活性を定量的に測定する方法を確立することにより、米麹製造に関わる伝統的品質評価の数値化と、該品質評価の数値を用いた伝統的技術の若手酒造技術者への継承を図ることを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、表面光電位デバイスを用いた清酒酵母の代謝活性の変化を捉えるためのセンサーシステムにおいて、フローセル内のセンサーチップ上に清酒酵母をアクリルアミドゲルに包埋して酵母固定化ゲルを形成して取り付け、該フローセルに試料液を導入する方式は一定量の試料液を短時間だけ送液するパルス型試料導入方式とし、該導入する試料液の標準物質をグルコースとして、該グルコースに対する清酒酵母の代謝を前記表面光電位デバイスで定量的に測定して基準値となし、該基準値を表すセンサー応答値で米麹抽出液試料に対する清酒酵母の代謝を表すセンサー応答値を除した比で米麹の品質評価を行う米麹の品質評価用バイオセンサー装置及び該装置による米麹の品質評価方法を提供した。
【0015】
また、本発明は、前記表面光電位デバイスを用いた清酒酵母の代謝活性の変化を捉えるためのセンサーシステムにおいて、フローセル内のセンサーチップ上に取り付けられる複数個の種類の異なる酵母を個別に包埋した酵母固定化ゲルを取り付けて、該センサーシステムにて異なる清酒酵母の代謝を同時に測定可能な米麹の品質評価用バイオセンサー装置及び該装置による米麹の品質評価方法を確立した。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる表面光電位デバイスは、測定デバイスの表面電位を検出するデバイスで、特にデバイス表面近辺のpHやイオン濃度に対して感受性が高い。
【0017】
その性質を利用して微生物や細胞の代謝を測定することが可能で、DNAの定量、抗原/抗体の定量、レセプターとホルモンや神経伝達物質等のリガンドとの相互作用、細胞内信号伝達に関する情報を被破壊的、リアルタイムに測定できる。
【0018】
このデバイスはn型またはp型半導体の片面に二酸化珪素やちっ化珪素による絶縁膜を形成させてセンサー面としたもので、ISFETのような複雑な製作工程を必要とせず、生体試料中でも長期間安定な応答を示す。
【0019】
従って、前記デバイスのセンサー面とその裏面の間にバイアス電圧をかけておき、裏面から断続光を当てることでフォトキャリアの生成と再結合を生じさせ、その結果生じる交流電流(以下、「光電流」という)を生じさせる。
【0020】
前記、光電流量はバイアス電位に依存し、バイアス電圧を固定しておいた場合にはセンサー面の表面電位に依存する。センサー面を生体試料に接触させた場合には、生体試料の変化によって表面電位が変化することになり、その変化を光電流量の変化として検出することが可能になる。
【0021】
そして、センサー面の裏面から当てる断続光の位置を光源として発光ダイオード等を使って複数にすることで、センサー面上の測定可能な点(測定点)を複数にすることが可能である。
【0022】
斯くして、本発明の実施例は、複数の清酒酵母を固定化した表面光電位デバイスが、固定化した各清酒酵母の代謝を定量的に捉えることが出来るようにすることを目的に装置の具体化を図った。
【0023】
従来の技術を示す前記公知文献では、表面光電位デバイスに酵母を固定化することで、試料液中の有機物の量を固定化した酵母の代謝で定量できる可能性は示唆されていたが、本発明の課題は、米麹の成分の差異によって生じる清酒酵母内の代謝変化を捉えることができるように最適化する必要性があるので、前記公知文献に示された従来例の測定方法を実施検証して、該測定結果を基に検討した。
【0024】
【実施例1】
図1は公知文献に示されたセンサーシステムを実施検証するための概略図を示し、図2は図1に示されたフローセルの拡大概略図、図3はフローセル内に組み込まれる酵母固定化膜の概略図を示している。
【0025】
図1乃至図3において、1は記録用コンピュータ、2は表面光電位デバイスコントローラー、3はフローセル、4はポンプ、5は試料液、6は緩衝液、7は廃液、8は参照電極である。
【0026】
図2は上記フローセル3の拡大概略図であり、上部に緩衝液6並びに試料液5の導入口9と廃液7の排出口10を有している。11及び12は有孔シリコーンゴムからなるタックシートであり、該タックシート11、12に覆われ、センサーチップ(作用電極)13上に酵母固定化膜14が載置されている。尚、15は発光ダイオード、16は対極を示している。
【0027】
図3は図2にて示した酵母固定化膜14の形状を示しており、該酵母固定化膜14は、直径6.0mmの円盤形状で厚さ0.5mmの紙製両面テープ17に3.0mmφの孔18を空け、該紙性両面テープ17をメンブランフイルター20上に接着し、前記孔18の中に清酒酵母19を導入して、メンブランフィルター20,21(孔径0.2μm)を用いて挟み込み形成されている。尚、メンブランフィルター20,21は親水性のテフロン(登録商標)膜にて構成されている。
【0028】
而して、図1乃至図3において、清酒酵母19を挿入して固定化した酵母固定化膜14をセンサーチップ13上に設置しフローセル3内に組み込み、リン酸塩とNaClからなる緩衝液6でセンサー応答を定常化させた後、緩衝液6から測定試料液5に切り換えて定常になるまで待つ。そして、試料液5に切り換える前の光電流値と切り換えた後の光電流値の差をセンサー応答値としている。このセンサーシステムの概略図が図1である。
【0029】
固定化する清酒酵母19の清酒酵母固定化膜14には清酒酵母協会701号(以下清酒酵母K701Fという)を、酵母エキス2.0g/L、ポリペプトン5.0g/L、グルコース20g/Lからなる培地を用いて30℃下36〜40時間静置培養し、3000rpm(1100×g)で集菌したものを用いた。集菌の際には0.9%(w/v)Naclを含む、ph5.0の0.5M Na2HPO4−H3PO4緩衝液6(以下、「緩衝液」という)による撹拌と遠心分離で清酒酵母を2回洗浄した。以下、特記しない限り、清酒酵母は上記の方法で培養、集菌するものとする。
【0030】
この清酒酵母19、即ち前記清酒酵母K701Fを固定化した酵母固定化膜14を製造元(株)テクノローグ製の表面光電位デバイスセンサーシステム図1中の図2に示す表面光電位デバイスのフローセル3内のセンサーチップ13上に取り付けた。
【0031】
測定ではポンプ4で200μL/分の流速で送液している緩衝液6を、測定開始から10〜15分後に緩衝液6に試料液5となるグルコースを溶解したグルコース/緩衝液溶液(以下、「グルコース溶液」という)に切り換えて、その切り換え前後の光電流値の変化を記録用コンピュータ1で記録した。
【0032】
その際、121℃、15分間滅菌処理を行った清酒酵母を固定化した酵母固定化膜14と、滅菌処理をしていない生菌体を固定化した酵母固定化膜14’で応答を比較した。測定した光電流の変化は表面電位の変化に換算し、それをセンサー応答値とした。
【0033】
測定結果を図4に生菌体と滅菌体のセンサー応答の比較として、表にて示している。図4中にて●は生菌体固定化膜を示し、□は滅菌体固定化膜をを示している。●□とも清酒酵母K701Fの酵母固定化膜で1%(w/v)のグルコース溶液(試料液)を測定したもので、滅菌体は滅菌処理したK701Fを使用した。試料導入は緩衝液から、試料液へ測定後10分後または15分後に切り換えるステップ型導入法を用いた。
【0034】
図4の測定結果を見て分かるように、滅菌処理した清酒酵母の酵母固定膜では小さな応答しか得られず、生菌体の酵母固定化膜では大きな応答をえることができた。これはセンサーがグルコース溶液ではなく、主にグルコース溶液に対する生菌体の代謝応答を測定していることを示しており、表面光電位デバイスを用いて清酒酵母の代謝を測定するセンサーが構築できることを示している。
【0035】
但し、実施例1と公知文献が示唆した結果とが異なるのは、グルコース溶液を導入し続けるとセンサーの光電流値は定常値に近づくのではなく、不安定に波打つことが解った。これは酵母固定化膜が長時間試料液に接し続けることで、酵母の代謝に何らかの変化を起こしているものと考えられ、その結果、酵母の代謝が不安定になったものと考えられる。
【0036】
これらの事から、実施例1の結論として、清酒酵母を固定化した表面光電位デバイスで清酒酵母の代謝を測定するセンサーを構築することはできるが、測定方法として試料液をセンサーへ導入し続ける測定方法では、代謝を定量的に測定することが困難であることが示された。
【0037】
【実施例2】
而して上記公知文献に示された従来例の検証を目的とした実施例1にあたっては、測定の途中で緩衝液から試料液に切り換えるステップ型導入法を行ったが、該方法は本発明の目的には適さないであろうことが示された。
【0038】
従って、本発明の実施例2では、一定量の試料液を短時間だけ導入するパルス型導入方法を実施した。これは長時間試料液を導入し続けることで固定化した清酒酵母の代謝が不安定になるのであれば、試料液に接する時間を短時間にすることで、その代謝の変化を起こり難くし、再現性のある測定値が得られると考えたからである。
【0039】
実施例2では、前記測定システムをそのまま引き継ぎ、試料液の導入方法だけを変更した。光電流の測定開始から5−10分間に1.0mMのグルコース溶液を注入し、注入前後の光電流値の変化を測定した。
【0040】
またこの測定に加えて、パルス型導入方法のセンサー応答の再現性を検討するために、濃度の違うグルコース溶液を交互に繰り返し測定する実験も行った。その結果を図5、図6に示している。
【0041】
図5は、パルス型導入法によるセンサーの応答を示し、清酒酵母K701Fの酵母固定化膜で1%(w/v)のグルコース溶液(測定試料液)を測定したもので、試料導入は緩衝液から試料液へ,測定後10〜15分後に切り換えるパルス型導入法を用いた。
【0042】
まず、図5を見るとセンサー応答の波形は試料導入後5〜10分後に変化始め、25〜30分後に応答の最大値を示した後、1〜2時間ほどかけて試料導入前のの応答値に戻る。これは試料導入によって清酒酵母の代謝に変化が生じたが、その時間が短時間であったため、試料導入前後における代謝の変化が生じなかったと考えられる。
【0043】
而して、図6ではセンサー応答の再現性を確認した測定結果を示すもので清酒酵母K701Fの酵母固定化膜で100mMと50mMのグルコース溶液(測定試料液)を交互に測定したもので、試料導入は緩衝液から、試料液へ測定後10分後または15分後に切り換えるパルス型導入法を用いた。
【0044】
前記、図6では、100mMと50mMのグルコース溶液を交互に測定した結果を示しているが、最初と最後の100mMグルコース溶液の測定結果を除いては、100mMと50mMの各濃度に対してほぼ一定のセンサー応答値を示していると言える。
【0045】
最初の測定値は酵母固定化膜を取り付けた直後で酵母固定化膜が安定していなかったため、また最後の測定結果は累積測定時間が長くなったことで、清酒酵母の代謝に変化が生じたためと理解すれば、その他の測定値は再現性が高いと言える、この結果から、本発明で清酒酵母の代謝を測定するには、パルス型導入方法が適しているとの結論に達した。
【0046】
【実施例3】
これまでの実施例1及び2では、センサーチップ13上に固定化する酵母の種類は1種類のみで、1回の測定で得られるセンサーの応答はその1種類の酵母のセンサー応答のみであった。しかし、米麹の品質評価を行うためには、単一酵母のセンサー応答のみであるより、複数の酵母センサー応答を得られた方が情報量が多く、品質評価には適している。
【0047】
更に、センサーチップ上に複数の酵母が固定化されていれば、1度の測定で複数の酵母のセンサー応答が得られ、測定時間を短縮することができる。
上記のことを踏まえて、本発明のセンサーチップ上には複数の測定点ができるような設計が施されている。
【0048】
ところが、本発明の実施例で用いられる表面光電位デバイスでは、センサーチップとなる半導体の質によって発生しうる誤差を避けるため、測定点同士を出来るだけ近接させている。
【0049】
この場合、上記実施例1及び2の清酒酵母の固定化方法として採用してきた親水性テフロン(登録商標)膜で清酒酵母を挟み込む方法は、測定点が近接すると紙製両面テープ等からなる酵母固定化膜の加工が難しくなる点や、毛細管現象による測定点同士の相互作用が危惧される。
【0050】
そこで、実施例3では、実施例1及び2の酵母固定化膜に加えて、アクリルアミドゲル内へ酵母を包埋する方法について検証した。上記方法では、測定点同士を不透水性のシリコンタックシートで分割し測定点に酵母固定化ゲルを取り付けることになる。
【0051】
酵母固定化ゲルは清酒酵母K701Fを用いて、2mmφ、厚さ1mmの円柱形に形成し、基準としてK701Fの酵母固定化膜も前記実施例の方法で形成した。
上記のようにして固定化した清酒酵母をセンサーシステム製造元(株)テクノローグのバッチ式セル図7内の半導体チップ上に取り付けた。
【0052】
図7のバッチ式セルのセンサー構造は、センサー台座22にセンサーカバー取り付けネジ23,24を介して取り付けられるセンサーカバー25間にセンサーチップ26と酵母固定化膜または酵母固定化ゲル27を挟み込んで支持し、該センサーカバー25に穿たれた小孔28を介して緩衝液29及び試料液30を供給し、参照電極31とPt電極32にて前記酵母固定化膜または酵母固定化ゲル27のセンサー応答を測定するものである。
【0053】
従って、バッチ式セルのセンサーは酵母固定化膜でも酵母固定化ゲルでも取り付け可能であることから、始めに上記セルに酵母固定化膜を取り付け、100μLの緩衝液29を満たしておき、センサー応答を安定させた後、50mMグルコース溶液を5μL与えた時(グルコース終濃度約2.4mM)のセンサー応答を測定した。
【0054】
この場合、既に酵母固定化膜27での結果から、長く測定し続けると清酒酵母K701Fの代謝が変化することが考えられるので、測定は60分でうち切った。バッチ式セルで実験を行ったのは、固定化した清酒酵母からしみ出る代謝物質が緩衝液29の置換でセル外に流れ出ることを防ぎ、代謝物質の液中での拡散による影響、つまり測定点間の相互作用をセンサーで捉えやすくするためである。
【0055】
而して、グルコース溶液に対する応答を酵母固定化膜と酵母固定化ゲルで比較するため、まず図8に示す場合では、上記バッチセルを取り付けたセンサーに清酒酵母K701Fの酵母固定化膜を単独で取り付けたセンサーの応答を測定した。試料導入は100μLの緩衝液を満たしたバッチセルに、5μLの50mMグルコース溶液を測定開始5分後に添加して行った。
【0056】
図8において、酵母固定化膜では、清酒酵母K701Fを固定化した測定点で応答が得られ始めると同時に、基準となるK701Fを固定化していない測定点でも非結果的応答が得られ始めている。これは酵母固定化膜において当初の予測通り、膜を構成するメンブランフィルターや両面テープを介して、K701Fの代謝物質が拡散した結果と考えることができる。
【0057】
上記測定結果に対して清酒酵母K701Fの酵母固定化ゲルを取り付けた図9での応答は、清酒酵母K701Fの固定化部位で応答が得られ始めても酵母固定化ゲルのない測定点では非結果的応答がほとんど現れていない。酵母固定化ゲルを取り付けた場合でも、測定点はシリコーンタックシートで分断されているとはいえ、代謝物質の拡散は緩衝液を介して生じているはずである。しかし、この実施例3での測定結果が示すように、その影響は小さく緩やかであるといえる。
【0058】
従って、実施例3の測定結果は、拡散の影響を大きくするためにバッチ式のセルを用いていたが、これをフロー式のセルにすることで、代謝物質がセルの中に滞留する時間を減らすことができると考えられる。つまり、前記のようにフロー式のセルにすれば、酵母固定化ゲルを使った場合における緩衝液の代謝物質の拡散の影響は、本実施例3で検討したバッチ式セルのものよりも、更に小さくすることができるとの結論に達した。
【0059】
即ち、本発明においては、酵母固定化ゲルをこれまで用いてきた酵母固定化膜の代わりに用いることで、酵母固定化膜では1つしか利用出来なかった測定点を複数利用できるようになることが、実施例3で示された。
【0060】
【実施例4】
実施例3にて酵母固定化ゲルをフローセルに組み込むことで、センサーチップ上に準備してある測定点を複数利用した測定が可能であることが解った。そこで本実施例4では、実際に複数の測定点にそれぞれ異なる種類の清酒酵母の酵母固定化ゲルを取り付け、センサー応答を酵母別に同時に得ることができるか検討した。
【0061】
測定及び検証は、実施例3における清酒酵母K701F固定化ゲルを取り付けてグルコース溶液に対する応答を測定したときと同じ条件で行った。酵母固定化ゲルに包埋する酵母として、これまで使っていた清酒酵母K701F固定化ゲルに加えて清酒酵母協会9号(以下、「清酒酵母K9B」という)固定化ゲルを新たにセンサーチップへ取り付けて測定を行った。
【0062】
測定は、まず、清酒酵母K701F固定化ゲルを単独でセンサーチップに取り付けた測定に続いて、清酒酵母K9B固定化ゲルを単独でセンサーチップへ取り付けて、グルコース溶液に対する応答を測定し,続いて両方の酵母固定化ゲルを取り付けたセンサーチップで同じくグルコース溶液に対する応答を測定した。
【0063】
次に、上記測定と同じ手順で、バッチ式セルバッチ式のセルに送液チューブと排液チューブを取り付け、簡易フローセルとしたバッチセルにおいてグルコースに対する応答を測定した。
【0064】
而して、清酒酵母K701F、K9Bそれぞれの単独の時のセンサー応答を見ると、前記実施例3の図9のように、●印で示した清酒酵母K701F固定ゲルを取り付けた測定点では、グルコース溶液を添加して約3分で大きな応答が出始め、25分付近で応答が定常値に達したように見える。
【0065】
これは約3分ほどでグルコースに対する清酒酵母K701Fの代謝が始まり、その代謝物質の変化をセンサーが捉えていると考えれれる。この測定は60分で測定を打ち切っているが、このまま測定を続ければ実施例1の酵素固定化膜の時と同様に不安定な応答曲線を示すものと考えられる。
【0066】
この時、基準となるK701F固定化ゲルを取り付けていない測定点×印ではK701F固定化ゲルが或る測定点に比べると小さく穏やかな応答曲線を描いている。
【0067】
清酒酵母K701F固定化ゲルを取り付けた測定点のような急激な変化が見られないところから、この測定点では代謝の応答は捉えていないと考えられる。その代わりに、清酒酵母K701F固定化ゲルで生じた代謝物質が、緩衝液中を拡散することによって生じる影響をゆっくりと受けているために緩やかなセンサー応答曲線を描いていると考えられる。
【0068】
図10は、清酒酵母K9B固定化ゲルを取り付けて測定した場合を示すもので、該センサーの応答曲線△印は、清酒酵母K701F固定化ゲルの時と同様に、清酒酵母K9B固定化ゲルが取り付けられている測定点では酵母代謝の応答がとらえられており、その応答はグルコース溶液添加後約5分で一旦定常値を示している。基準の測定点×印では清酒酵母K701F固定化ゲルの測定の時と同様に、代謝物質の拡散の影響以外は捉えられていない。
【0069】
続いて、実施例4は、上記測定で使用した清酒酵母K701FとK9Bの2種類の酵母固定化ゲルをセンサーチップに両方とも取り付け、単独で取り付けた時と同じ実験並びに測定を行った。
【0070】
図11は複数の酵母固定化ゲルを取り付けたセンサーの応答を示すもので、該測定条件は清酒酵母K701F(●印)、K9B(△印)の2つの酵母固定ゲルを両方とも取り付けた以外は前述の単一酵母固定化ゲルを取り付けた時と同じで、グルコース溶液に対するセンサーの応答測定したものである。
【0071】
試料導入も前述と同じく、100μLの緩衝液を満たしたバッチセルに、5μLの50mMグルコース溶液を測定開始5分後に添加して行った。
【0072】
図11の測定結果は、前述の単一酵母固定化ゲルを用いた測定の時と同様に、酵母固定化ゲルを取り付けた部分では、グルコース溶液を添加してから約3分以内に大きなセンサー応答が認められ始め、基準とする酵母固定化ゲルを取り付けなかった測定点×印では、代謝物質の拡散によると思われる緩やかな応答が認められたのみであった。
【0073】
上記測定で注目したのは酵母固定化ゲルを取り付けた測定点でのセンサー応答が定常値に至るまでの時間と、該センサー応答値の変化量である。単一酵母固定化ゲルをセンサーチップに取り付けた場合は、グルコース溶液を添加してから、清酒酵母K701Fが約25分後、清酒酵母K9Bが約15分後に定常値を示している。
【0074】
このことは、清酒酵母K701FとK9Bの両方の酵母固定化ゲルをセンサーチップに取り付けた場合にも変わらず、同じ時間で定常値に至っていることが、図9乃至図11から見て取れる。
【0075】
更にグルコース溶液添加前のセンサー応答値と定常値を示した時のセンサーの応答値までの変化量を比べてみても、単一酵母固定化ゲルで測定した場合の清酒酵母K701Fが約80mV、K9Bが約55mVという値は、2種類の酵母固定化ゲルが両方ともセンサーチップに取り付けられてもほとんど変化していないことが解る。
【0076】
即ち2種類の内、一方の酵母固定化ゲルを単独で取り付けたセンサーチップでも、両方とも取り付けたセンサーチップでも、それぞれの酵母固定化ゲルにおける代謝で生じるセンサー応答には差は生じないと言える。
【0077】
斯くして、上記の測定結果による事実から実施例3で予測した通り、清酒酵母K701FまたはK9Bの酵母固定化ゲルを取り付けた測定点間における代謝物質の拡散が互いの測定点に与える影響は全くないか、無視できるほど小さいと考えることができる。
【0078】
もしどちらか一方の清酒酵母の代謝産物が他方の清酒酵母の代謝に影響を与えていたならば、K701F、K9B固定化ゲル両方をセンサーチップへ取り付けたときのどちらかの清酒酵母の応答が、単独で取り付けたときのセンサー応答と異なっていたはずである。
【0079】
【実施例5】
実施例5は、上記実施例4において、センサーチップへの酵母固定化ゲルをとりつけることで、同時に使用できる測定点が複数にできることを確認した結果を受けて、前記実施例2で検討したパルス型導入法でのセンサー応答を確認する実験をおこなった。
【0080】
パルス型導入法を用いるにあたって、実施例4で測定に使用していたバッチ式のセルに送液チューブと排液チューブを簡易的に取り付け、測定開始から5分後に50mMのグルコース溶液を5μL注入し、注入前後の光電位値の変化を測定した。また、パルス型試料導入実験においても、清酒酵母K701F、K9B固定化ゲル単独センサー応答と、両方の酵母固定化ゲルを取り付けたセンサー応答の測定をおこなった。
【0081】
まず、図12は清酒酵母K701F、K9Bの酵母固定化ゲル単独センサー応答の測定結果を示している。図12において清酒酵母K701Fのセンサー応答は測定開始から15分近辺で最大応答値を示し、その後約40−50分で測定開始応答にまで回復する。清酒酵母K701Fのセンサー応答の特徴として、最大応答値はバッチ式ほどではないが大きく(約60mV)、ピークの形も鋭いことがあげられる。
【0082】
それに対して清酒酵母K9Bはピークの現れる時間はK701Fとほぼ同じだが、最大応答値がK701Fに比べて小さく、ピークの形状も穏やかで幅が広いという特徴を持っている。これは両者をみくらべて一目でわかる特徴の差である。
【0083】
図13に示す清酒酵母K701FとK9Bの酵母固定ゲルを両方を取り付けた場合の応答曲線にて、センサー応答の測定結果を検討すると、図12で示した、それぞれ単独でセンサーに取り付けられた場合と同じ傾向を示していることが分かる。
【0084】
従って、バッチ式の場合と同じく、酵母固定化ゲルを取り付けた測定点同士の相互作用を無視してセンサー応答を評価できることが実施例5にて示された。
【0085】
【実施例6】
斯くして、実施例6では米麹に含まれる様々な物質から一つを選び、その物質を標準物質とする。そして該物質に対してセンサーの応答が定量性のあることを示せば本発明の目的である米麹の品質評価用バイオセンサー装置及び該装置による米麹の品質評価方法が提供できる。
【0086】
そこで、実施例6は米麹含有成分の1つであり、生体代謝に重要な物質であるグルコースを標準物質として選び、該溶液中の濃度に対するセンサー応答の定量性を示すことにした。
【0087】
実施例6はセンサーに図14乃至図16に示すセンサーシステムを用い測定した。このセンサーシステムは前記実施例に使用していたものとは基本的に変わらないが、プローブ部分の配線や表面光電位デバイスコントローラー等、
本発明に関連する重要な要件を改善したものである。
【0088】
図14乃至図16において、33は制御用パソコン、34は表面光電位デバイスコントローラー、35は恒温槽36の温度調節機、該恒温槽36内にはセンサープローブ37が設置されており、該センサープローブ37には緩衝液38、インジェクター39を介して測定液を送り込むためのポンプ40が接続された導入管41が前記センサープローブ37内に配管されている。尚、42は排送管であり、センサープローブ37内の廃液43を送液するものである。
【0089】
図15及び図16は、上記センサープローブ37を拡大してフローセル44を説明する。図15及び図16において、41は試料液・緩衝液の導入管、42は廃液の排送管、45はセンサーチップ、46はビニールカバー、47はシリコンゴムからなるスペーサー、48は白金電極、49は参照電極であり、センサーチップ45上には複数の酵母固定化ゲル50、50、50,50がマウントされ前記導入管41より試料液・緩衝液が酵母固定化ゲル50、・・・に供給されるように構成されている。
【0090】
而して、実施例6は上記酵母固定化LAPSセンサーを用いて、該測定はパルス型試料導入法の実施例2にて検討した方法と同じく、緩衝液38をポンプ40で200μL/minの流速で送液しているセンサープローブ37内のフローセル44に、測定開始から5〜10分後にインジェクター39から試料液となるグルコース溶液を1.0mL注入し、その間のセンサー応答変化を記録した。
【0091】
この測定のために清酒酵母にはK701Fを用いて、10〜50mMグルコース溶液を測定した時の応答をグルコース溶液中のグルコース濃度に対してプロットし、センサーのグルコースに対する定量性を検討した。図17はその結果を示している。実施例6の測定は酵母固定化ゲルとグルコース濃度範囲を変えて行った。
【0092】
初めに10,25,50mMグルコース溶液を測定した結果が図17の中の●印である。この図中の●印が示す通り酵母固定化ゲルを用いた場合、センサー応答はグルコース濃度が25mMを越えると飽和していくようにみえる。
【0093】
そこで25mM近辺から下の濃度範囲での応答を測定するため、続いて10〜30mMグルコース溶液を測定した結果が図17の中の△印である。この濃度範囲では検量線の直線性が非常に高い。
【0094】
つまり、酵母固定化ゲルを用いたセンサーはグルコースを標準物質とした時、グルコース濃度が10〜30mMの範囲で定量性がある。そこで、本実施例6のセンサーでは、標準物質をグルコースとし、その定量可能な濃度範囲10〜30mMにて米麹抽出液を測定して、米麹の品質評価を行うことにした。
【0095】
【実施例7】
実施例7は、米麹の品質評価用バイオセンサー装置及び該装置による米麹の品質評価方法に関するものである。
【0096】
前記実施例において、酵母固定化ゲルを表面光電位デバイスに取り付けることで、標準物質をグルコースとしたとき、清酒酵母代謝を本発明のセンサーで定量的に測定して示すことが出来るようになった。
【0097】
そこで、グルコースに対する清酒酵母の代謝を表すセンサー応答(検量線)を基準にして、米麹抽出液を清酒酵母に与えた時のセンサー応答を評価することにした。
【0098】
具体的には、任意の清酒酵母Xの酵母固定化ゲルを取り付けた測定点における米麹試料のセンサー応答値を次のように測定した。
初めに10〜30mMの濃度の異なるグルコース溶液を標準液として測定し、その最大センサー応答値から検量線を作成した。
【0099】
続いて米麹試料を測定し、標準液と同じく酵母固定化ゲルの最大応答値(米麹応答値:Rx[mV](x:清酒酵母名))を得た。そして、米麹応答値と検量線から米麹中のグルコース濃度(算出濃度;Csx[mV])を算出する。その一方で、米麹試料はグルコースセンサー(TOA−DKK製、GLU−11)で正確なグルコース濃度(測定濃度;Cox[mV])を測定した。
【0100】
こうして得られた各酵母の算出濃度の測定濃度に対する比を各酵母の米麹試料に対するセンサー応答値(Sx(x;清酒酵母名))として得た。つまり、酵母Xのグルコース濃度Cox[mM]の米麹試料に対するセンサー応答値Sx[−]は最大応答値から算出したグルコース濃度Csx[mM]を使って次のように表すことができる。
Sx=Csx/Cox(x;清酒酵母名)−(a)
【0101】
このセンサー応答値Sxは標準物質グルコースに対する代謝を1とした時の、米麹抽出液に対する代謝の大きさ(比)を表している。実施例7はこの応答値が試料とする米麹によってどの様な差を示すか、また、その差と米麹の品質差との関係を検討した。
【0102】
上記構築したセンサーシステムで最初に検討したのが、吟醸酒用の米麹と普通酒用の米麹である。この2種類の米麹には通常、精米歩合、黄麹菌の菌糸の分布状態などに大きな差がある。例えば精米歩合は、玄米を元の重量の何%まで精米するかということを表す指標だが、酒税法上吟醸酒には60%以下の原料米を使用する事が定められているが、普通酒には規制がない。
【0103】
また、黄麹菌の菌糸の分布状態には「突き破精(はぜ)」、「総破精」といった酒造用語で表される状態があり、吟醸酒では「突き破精」と呼ばれる麹米表面における菌糸の育生は部分的であるが内部に深く菌糸を伸ばした米麹が使われることが多いのに対して、普通酒では米麹の表面と内部に充分菌糸を伸ばした「総破精」の米麹が使われることが多い。この菌糸分布の差は製麹方法の違いによる。
【0104】
この様な違いがあるため、吟醸酒用と普通酒用の米麹は含有成分の組成、つまりは米麹の品質が大きく異なることが予想される。そこで、その大きく異なると考えられる品質差を本発明で捉えられるか検証した。
【0105】
試料となる米麹は酒造現場から採取してきたものを用いた。共に原料米が「山田錦」の吟醸酒用米麹(精米歩合40%、蓋製麹)と、普通酒用米麹(精米歩合65%、通風製麹)の2種類を用いた。これらの米麹は図18が示すように、見た目で明らかにその差がわかる米麹で、図18において、写真左側が精米歩合40%で蓋製麹の米麹。写真右が精米歩合65%で通風製麹の米麹で共に原料米は山田錦を使用している。
【0106】
実施例7は上記米麹をそれぞれ粉砕した後、その10gを50mLの蒸留水に懸濁し、25℃で3時間、100rpmで振とうしながら米麹中の成分を抽出する。抽出後、ろ過してグルコース濃度を20〜25mMになるように希釈する。この希釈の際に、リン酸イオン濃度、Nacl濃度、及びphが緩衝液と同じになるように、Na2HPO4、H3PO4、Naclを添加した。
【0107】
最後に滅菌済みの孔径0.2μmのセルロースアセテートメンブランフィルターカートリッジでろ過滅菌し、測定用の米麹抽出液(試料液)として調製した。センサーチップには清酒醸造によく使われる清酒酵母K701Fに加え、吟醸酒用清酒酵母として有名なK9Bの2種類の酵母固定化ゲルを取り付けて測定した。
【0108】
上記測定結果を吟醸酒米麹と普通酒用米麹の比較として図19に示した。図19を見ると清酒酵母K701F、K9Bどちらでも吟醸酒用米麹よりも普通酒用米麹の方が大きな応答を示していることが分かる。
【0109】
米麹の原料米は普通酒用よりも吟醸酒用の方が精米歩合が低く米の中心部のみを利用しているため、ほとんど純粋なデンプン質となっている。従って普通酒用が吟醸酒用よりもタンパク質、脂肪、ビタミンなどに由来する栄養素を多く含んでいると考えられる。そのため、酵母固定化ゲルに普通酒用米麹の試料液を与えると代謝が活発になり、その結果としてセンサー応答も吟醸酒用米麹の試料液より大きくなったものとして考えられる。
【0110】
次に清酒酵母K701FとK9Bの応答を比較すると、吟醸酒用と普通酒用のどちらでの場合でも常にK9Bの酵母固定化ゲルの方が小さな応答を示している。またここには示していないが、K9Bは検量線の傾きもK701Fに比べて小さい。
【0111】
これらの事実と表面光電位デバイスがpHやイオン濃度に感受性が高いという性質から、K9Bの酵母固定化ゲルにおける酸性物質の生成が少なかったと考えることができる。一方K9Bは協会7号系酵母(K701Fも含まれる)と同様に醗酵力が強い酵母であるが、酸量が少なく香気が高いという醸造特性を持っており、その特性のため、酸量が少なく、香気が高いものが好まれる傾向にある吟醸酒向きの清酒酵母とされている。こうした既に知られている清酒酵母の特性と今回の結果を比較すると、どちらもK9Bが生成する酸性物質の量(酸量)がK701Fより少ないという点で一致している。
【0112】
こうしたことから、本発明の実施例が清酒酵母K701FとK9Bの間の細胞内代謝の差を捉えているということを示しており、更に、その差は酒造現場における醸造特性と一致していることを示している。本実施例7において検出される差が醸造特性による差と一致したことは、この段階で本発明のセンサーシステムに依る品質評価結果が、酒造現場において有用な情報になり得る可能性を示していると言える。
【0113】
而して、前項で本発明のセンサーシステムが、清酒酵母を固定化した複数のゲルをセンサーチップに取り付けることで、センサー応答値から酒造現場での米麹の品質評価に有効な様々な情報を得ることができる可能性を示した。
【0114】
しかし、酒造現場において、前項で評価した吟醸酒用米麹と普通酒用米麹ほど明らかな差は、本発明のセンサーシステムで検討するまでもないほど大きな差である。本発明に求められるのは、製造条件が同じ米麹間の所謂、ロット差になると考える。そうした米麹試料間の差は、製造条件が同じであるため、試料間の差が前述の場合よりも小さくなると考えられる。
【0115】
従って、そうした試料間の小さな差を検出するには、検量線はより傾きが大きく、一定濃度のグルコース標準液に対するセンサーの最大応答値が大きなものが望まれる。例えば、前項で用いた清酒酵母K9Bでは、そのセンサーの最大応答値が小さく、検量線の傾きも少ないため、評価するセンサー応答値((a)式におけるSx)の誤差が大きくなり、米麹の品質評価には適さないと考えられる。
【0116】
そこで、検量線の傾き、センサーの最大応答値の大きさの両方の条件が適した酵母を、これまで充分であると判断してきたK701Fを基準として探すことにした。斯くして、特徴的な醸造特性を持つ清酒酵母の中から、K701Fと同程度かそれ以上のセンサーの最大応答値と検量線の傾きを持つ酵母を選定し、それを米麹の品質評価に用いることにした。
【0117】
検討する清酒酵母には一般的によく使用されているK701Fと醸造特性の似ている清酒酵母K7E、吟醸酒に使用されるK9B、福光屋6号(以下、F6Bという)、福光屋10号(以下、F10Bという)、醸造特性に特徴のある福光屋3号(以下、F3Aという)福光屋15号(以下、F15Bという)の計7種類を用いた。前記7種類を図20に一覧表で示し従来から知られているそれぞれの酵母の特性を備考欄に記載してある。
【0118】
選択検討のための実験では、清酒酵母K701Fと6種類の酵母(K7E、K9B、F3A、F6B、F10B、F15B)の内から2つを選択してセンサーの測定点に取り付けた。続いてグルコース濃度10、20、30mMの標準液を測定し各酵母で検量線を作成した。その上でK701Fの検量線を基準とし、その他の酵母の検量線について、定量性(検量線の傾き)とグルコース20mMの時の最大応答値の大きさを検討した。上記実験の測定結果を図21に酵母選定試験結果として示している。
【0119】
酵母がセンサーに適しているかどうかはK701Fによる検量線の傾きと([mV/mM])、検量線から算出したグルコース濃度20mMの時の応答値([mV])の大きさを比較して、どちらの値もK701Fの検量線と同程度以上である酵母を適していると判断することにした。
【0120】
而して、K9Bはこの試験の結果、検量線の傾き・応答値の大きさ両方とも、今回試験した酵母の中で最も適していないことがわかった。F3A、F6Bの2種類は応答の大きさは充分であるものの、検量線の傾きが足りないためセンサーに適していないと言える。その他のK7E、F10B、F15Bの3種類はK701Fとほぼ同じ形状の検量線が作成できたので、これらはセンサーに適していると判断できた。
【0121】
しかし、センサーチップ上の4測定点の内、1点は応答異常を感知するために使用するので、同時に使用できる酵母は3種類である。そこで、K701FはK7Eを元に分離された株でK7Eと醸造特性が似通っていること、これまでの測定実績がK701Fにあることの2点を踏まえて、K7E、とK701FからはK701Fを選択することにし、センサーにはK701F、F10B、F15Bの3種類を取り付けることにした。
【0122】
【実施例8】
次に、本発明の実施例8として普通酒用米麹のロット差の評価を行う。
これまでに本発明の実施例を用いればセンサーシステムの応答値で、製造方法の異なる米麹試料間の差を捉える事が可能になった。
【0123】
しかし、前項でも触れたが、その実験測定値の差は、酒造現場では誰でも一目で分かるほどの大きな差であり、センサーシステムを用いてまで計測する必要性がない。必要とされているのは、同じように造った米麹の間に、清酒醪の醗酵経過へ重要な影響を及ぼす差があるかどうかを検出することである。
【0124】
その差を検出することによって、事前に清酒醸造中の醪における醗酵への影響を予測出来るようにすることが本発明の目的であり、該予測ができれば清酒の醗酵管理に大きく寄与できる発明となる。
【0125】
そこで原料米、製造方法などの条件が同じで、品質差が少ないと予想される米麹試料を用いてセンサー応答値がどの様な差を示すか検討する。その際センサーチップ上には実施例7にて選択した3種類の清酒酵母を包埋した酵母固定化ゲルを取り付け、それらに存在するであろう酵母代謝の差を用いて米麹に対するセンサー応答値の差を得られやすくした。そして、その結果を解析して米麹の品質を示す情報がセンサー応答値から得られないか検討した。
【0126】
本実施例では、同一条件で製麹された米麹試料を得るために原料米品質、製造方法の条件が同じ米麹から試料を採取した。酒造現場では酒造条件(目標品質、仕込配合、醗酵温度経過など)によって米麹の原料米品種や製造方法以外に、製造過程の条件(温度、湿度)を変えることがあるため、試料とする米麹の用途も同じ醸造条件の仕込、図22に限定することで、同一条件の米麹を得られるようにした。
【0127】
また、醸造条件を限定することで、米麹に対するセンサー応答とその米麹を使用した仕込の醗酵経過との関係を検討することもできる。尚、米麹は酒母、初添、仲添、留添と呼ばれる醸造過程で用いられるが、測定試料には留添で使用した米麹を測定した。これは留添で使用する米麹の数量が最も多く、影響が大きいと考えられるためである。
【0128】
而して、図23は測定に供した米麹のセンサー測定値(SK701F、SF10B、SF15B)とその米麹とK701Fを用いた仕込の清酒醪の一般成分(以下、「一般成分値」)との関係を示している。尚、一般成分値は、日本酒度(液体の密度を表す指標)、アルコール度数、総酸度、アミノ酸度、pHで表し、測定方法は国税庁所定分析法に準じて分析を行った。
【0129】
図23の中の幾つかの応答値については別にレーダーチャートで図24に表示した。図24を見ると、任意の米麹試料における各酵母のセンサー応答値はそれぞれ異なることが多い。これは、その米麹試料をそれぞれの酵母に単独で与えたとき酵母内での代謝がそれぞれ異なっていることを示しており、その性質を用いて米麹の品質差を表現できることを示している。
【0130】
そして、各酵母のセンサー応答反応値の関係は常に一定であるわけでない。前記図24のレーダーチャートの三角形のパターンを見て分かるように様々である。こうしたパターンの変化は、各酵母のセンサー応答値によって米麹の品質差を表現できることを裏付けていると言える。
【0131】
そこで、米麹の品質差によって変化すると考えられる一般成分値と、センサー応答値との対比を、前記図23を基に行ってみた。図23において対比を行う一般成分値としては留添後10日目の一般成分値を使用した。
【0132】
留添後10日目という時期は約20日間の清酒醪の醗酵日数の中で後半の醗酵経過を予測、判断する重要な時期であるため、米麹品質との相関を調べる意義がある。
【0133】
また、10日目より前の時期では醪(米)の液化が進んでおらず分析値に誤差が生じやすいことや、10日目より後では上槽目標(製品目標)に合わせて経過温度の調節や追水(水を加えることで醪濃度調節を行うこと)が行われるため、米麹以外の環境変数が多くなりすぎることも10日目の一般成分値を、センサー応答との対比を行う対象とした理由に挙げられる。
【0134】
まずセンサー応答値(SK701F、SF10B、SF15B)の標本標準偏差を比較すると、SF10B、SF15Bに比べてSK701Fは約半分である。この理由としては次のことが考えられる。第一に分析した米麹試料はK701Fを使用した醪の仕込に使う目的で造られたもので、K701F用に最適化された米麹であるため、差が出にくかったと考えられる。
【0135】
第二にK701Fは醗酵能が高いために醗酵初期で定常状態に近いところまで醗酵が進む性質をもっているため、応答値の差が出難くなったことが考えられる。そのことを示すため、図25には平成13年10月から平成14年5月までの1酒造年度内に当社で様々な条件下で製造された清酒醪の留添後10日目の一般成分値の内、醗酵指標として使用されるアルコール度数に対する日本酒度のプロットを示してあるが、この図25のようにK701F(●印)は多少醸造条件が違っても、比較的10日目の一般成分値が一定の範囲に集まる傾向がある。こうした性質が作用して、今回測定したK701F用に製麹された米麹ではSK701Fに差がでにくかったとも考えられる。
【0136】
そこで、標本標準偏差の小さいSK701F以外の2つのセンサー応答値SF10B、SF15Bと一般成分値の相関係数を比較することにした。するとSF10Bはアルコール度数と、SF15Bは日本酒度と相関が高いことがわかった。図26はこのセンサー応答値と清酒醪の一般成分値の相関を示している。
【0137】
続いて、上記の結果を図27に示した杜氏の評価と組み合わせて比較した。図27は杜氏の各酵母に対する評価をまとめたもので、この表によると杜氏の評価ではF10Bは醗酵期間中ほぼ一定の速度で醗酵する性質をもっている。そのため、米麹、蒸米、温度などの差が微小であっても、長い醗酵期間において大きな影響を受けて一般分析値に差が出て来やすいと考えられる。
【0138】
実際に図25からもF10Bアルコール度数の分析に大きな広がりを確認出来る。こうしたF10Bの性質によって、米麹に依存する微小な差が醗酵(アルコール度数)の差として表れたと考えられ、SF10Bがアルコール度数と相関が高かったと考えることができる。
【0139】
一方、F15Bは、杜氏の評価によると醗酵能が弱く、特徴となる有機酸(リンゴ酸)生成能や組成は、外部の日本酒度の影響を受けやすい傾向がある(図27参照)。つまり杜氏の評価からは、F15Bを使用した清酒醪の日本酒度とF15Bの代謝活性には何らかの相関が有ると考えることができる。
【0140】
そしてセンサー応答値(SF15B)が日本酒度と相関が高かったことは、このことを示していると考えることができる。勿論、比較した一般成分値はK701Fによる醗酵の結果であるから、単純にSF10B、SF15BとK701Fを用いた清酒醪の一般成分値を比較する訳にはいかない値であるが、SF10B、SF15Bに現れる差によって、SK701F単独では表しにくい米麹の品質を表すことが示されたといえる。
【0141】
斯くして、本発明は、まず表面光電位デバイスのフローセル内に清酒酵母をメンブランフィルターで固定化したセンサーシステムを構築した。そして、このシステムで生菌体の清酒酵母を固定化したときのみセンサー応答が得られるように構成して本システムで清酒酵母の代謝を捉えられることを示した。
【0142】
また、試料の導入方法を一定量の試料が短時間に導入するパルス型導入方式を取ることで、再現性が高いセンサー応答を得られるようにした。
【0143】
しかし清酒酵母の酵母固定化膜にはセンサーチップ上に用意した複数の測定点を同時に利用しようとすると、加工が困難で測定点間の相互作用が大きいといった短所があった。そこで、固定化方法をアクリルアミドゲルを用いた方法に変えることで、こうした短所を克服した。
【0144】
また、センサーシステムが固定化した複数の酵母の代謝を、独立して同時に、再現性良く捉えられるようにした。そして、定量性の検討では、標準物質をグルコースとした時10〜30mMの濃度範囲で検量線の直線性が高く定量性があることを確認した。
【0145】
斯くして、本発明は、上記グルコース溶液を用いた本発明のセンサーシステムの基本性能に関する検討結果を受けて米麹試料の実測を行い、以後の測定では、グルコース標準溶液のセンサー応答測定値に対する米麹試料のセンサー応答測定値の比で品質評価を行うことを検討した。
【0146】
まず、K701FとK9Bを取り付けたセンサーチップによる、米麹製造方法に大きな違いのある吟醸酒用米麹と普通酒用米麹の比較測定は、2つの清酒酵母の酵母代謝による差と、米麹に含まれる栄養物の差によると思われる差を捉えることができた。このことから固定化する酵母の代謝の差を利用して、米麹の品質を評価できる可能性が示された。
【0147】
続いて、試料を製造方法と使用用途が同じ普通酒用米麹に限定し、K701F、F10B、F15Bの3種類の酵母固定化ゲルを用いて測定を行った。センサー応答値と測定した米麹を使用した清酒醪の留添後10日目の一般成分値との比較を行ったところ、F10BとF15Bの応答値はそれぞれアルコール度数と日本酒度との相関関係があることを確認した。また、その結果は杜氏の酵母に対する評価とほぼ一致した。
【0148】
【発明の効果】
斯くして、本発明は清酒酵母代謝を測定するセンサー装置及びその測定方法として確立でき、取り付ける清酒酵母の種類の違いによる酵母代謝の差を捉えることで、米麹の品質差を捉える事が可能となった。
【0149】
前記、捉えた米麹の品質差は製造条件の差から生じて一目で分かる大きな差だけでなく、原料・製造条件・使用用途が同じという品質差が小さいと考えられる米麹間の小さな差(ロット差)も評価可能であることを示した。
【0150】
この様な本発明の効果はセンサーシステムの酒造現場への導入に大きく影響し、長い間経験を積んだ杜氏をはじめとする蔵人に託されてきた伝統技術をセンサーによって定量的に捉え測定・評価を可能とした。また、その測定した米麹品質から醗酵途中の清酒醪の状態を事前に予測することが可能となった。
【0151】
本発明は、単に清酒醪の醗酵状態を予測する用途だけに利用するものではない。清酒の商品開発においては、目標とする品質(清酒成分)を得るために様々な醸造条件を設定する。その条件とは、例えば原料米、使用清酒酵母、仕込配合、温度経過等である。本発明を利用することにより、米麹から醗酵状態を予測することができるということは、目標とする醗酵状態にするための米麹の品質を提案することができるということである。即ち、清酒の商品開発において設定する新たな醸造条件に米麹の品質を加えることが可能となった。
【0152】
更に、本発明の技術分野は、清酒は清酒醸造に限らず、醗酵を利用した食品産業に幅広く応用できる。アルコール飲料であればビール(発泡酒を含む)、焼酎、ワイン等が挙げられるし、その他の食品であれば、ヨーグルト、味噌、醤油等、微生物の発酵を利用した食品は多様にある。本発明の表面光電位デバイスを利用したセンサーによる発酵プロセス制御装置及び発酵プロセス制御方法は、醗酵に使用する微生物をセンサーチップに取り付け、醗酵に利用する原料(または醗酵させる原料)の品質評価を行うもので、センサーチップに取り付ける微生物と測定対象を少し変えるだけで、様々な応用が可能であり、産業上極めて有効な発明を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面光電位デバイスを利用したセンサー概略説明図である。
【図2】フローセル説明図である。
【図3】酵母固定化膜の構造説明図である。
【図4】生菌体と滅菌体センサー応答の比較図である。
【図5】パルス型導入法によるセンサー応答を示す図である。
【図6】センサー応答の再現性を示す図である。
【図7】簡易バッチセルの構成図である。
【図8】酵母固定化膜を用いた場合のセンサー応答を示す図である。
【図9】K701F酵母固定化ゲルを用いた場合のセンサー応答を示す図である。
【図10】K9B酵母固定化ゲルを用いた場合のセンサー応答を示す図である。
【図11】酵母固定化ゲルを複数取り付けたセンサーの応答を示す図である。
【図12】酵母固定化ゲルを単独で取り付けた場合のセンサー応答を示す図である。
【図13】酵母固定化ゲルを複数取り付けたセンサー応答を示す図である。
【図14】酵母固定化LAPSセンサーシステム概略図である。
【図15】センサープローブ拡大説明図である。
【図16】図15をセンサーチップ側から見た見上げ図である。
【図17】酵母固定化ゲルを用いた場合のセンサー応答の定量性を示す図である。
【図18】製造法の違いに依る米麹の外見の違いを示す図である。
【図19】吟醸酒用米麹と普通酒用米麹の比較を示す図である。
【図20】研究に用いた清酒醸造用酵母を示す表である。
【図21】酵母選定試験評価を示す表である。
【図22】(a)(b)酵母固定化センサーで評価した米麹の製造・用途条件を示す表である。
【図23】米麹試料液測定結果を示す表である。
【図24】米麹抽出液測定結果のレーダーチャートである。
【図25】平成13年酒造年度に醸造した清酒醪の傾向を示すグラフである。
【図26】センサー応答値と清酒醪の一般成分値の相関を示す表である。
【図27】杜氏の酵母に対する評価を示す表である。
【符号の説明】
1 記録用コンピュータ
2 表面光電位デバイスコントローラー
3 フローセル
4 ポンプ
5 試料液
6 緩衝液
7 廃液
8 参照電極
9 導入口
10 排出口
11 タックシート
12 タックシート
13 センサーチップ
14 酵母固定化膜
15 発光ダイオード
16 対極
17 紙製両面テープ
18 孔
19 清酒酵母
20 メンブランフィルター
21 メンブランフィルター
22 センサー台座
23 センサーカバー取付ネジ
24 センサーカバー取付ネジ
25 センサーカバー
26 センサーチップ
27 酵母固定化膜または酵母固定化ゲル
28 小孔
29 緩衝液
30 試料液
31 参照電極
32 白金電極
33 制御用パソコン
34 表面光電位デバイスコントローラー
35 温度調節機
36 恒温槽
37 センサープローブ
38 緩衝液
39 インジェクター
40 ポンプ
41 導入管
42 排送管
43 廃液
44 フローセル
45 センサーチップ
46 ビニールカバー
47 スペーサー
48 白金電極
49 参照電極
50 酵母ゲル

Claims (7)

  1. 表面光電位デバイスを用いた清酒酵母の代謝活性の変化を捉えるためのセンサーシステムにおいて、フローセル内のセンサーチップ上に清酒酵母をアクリルアミドゲルに包埋し酵母固定化ゲルを形成して取り付け、該酵母固定化ゲルに導入する試料液の標準物質をグルコースとして、該グルコースに対する清酒酵母の代謝を前記表面光電位デバイスで定量的に測定して基準値となし、該基準値を表すセンサー応答測定値に対して米麹抽出液試料に対する清酒酵母の代謝を表すセンサー応答測定値の比で米麹の品質評価を行うことを特徴とした米麹の品質評価用バイオセンサー装置。
  2. 表面光電位デバイスを用いた清酒酵母の代謝活性の変化を捉えるためのセンサーシステムを用い、フローセル内のセンサーチップ上に清酒酵母をアクリルアミドゲルに包埋し酵母固定化ゲルを形成して取り付け、該酵母固定化ゲルに導入する試料液の標準物質をグルコースとして、該グルコースに対する清酒酵母の代謝を前記表面光電位デバイスで定量的に測定して基準値となし、該基準値を表すセンサー応答測定値に対して米麹抽出液試料に対する清酒酵母の代謝を表すセンサー応答測定値の比で米麹の品質評価を行うことを特徴とした米麹の品質評価用バイオセンサー装置を用いた米麹の品質評価方法。
  3. 前記表面光電位デバイスを用いた清酒酵母の代謝活性の変化を捉えるためのセンサーシステムにおいて、フローセル内のセンサーチップ上に複数個の種類の異なる酵母を個別に包埋した酵母固定化ゲルを取り付け、前記センサーシステムにて異なる清酒酵母の代謝を同時に測定可能な請求項1及び請求項2記載の米麹の品質評価用バイオセンサー装置及び該装置による米麹の品質評価方法。
  4. 前記フローセル内のセンサーチップ上に取り付けられた酵母固定化ゲルに導入する試料液は一定量の試料液を短時間だけ送液するパルス型試料導入方式とした請求項1及び請求項2記載の米麹の品質評価用バイオセンサー装置。
  5. 前記表面光電位デバイスを用いた清酒酵母の代謝活性の変化を捉えるためのセンサーシステムにおいて、フローセル内のセンサーチップ上に取り付けられる酵母固定化ゲルは複数個設置可能とし複数の測定点を同時に利用可能に形成した請求項1及び請求項2記載の米麹の品質評価用バイオセンサー装置。
  6. 前記表面光電位デバイスを用いた清酒酵母の代謝活性の変化を捉えるためのセンサーシステムにおいて、フローセル内のセンサーチップ上に取り付けられる酵母固定化ゲルに導入する標準物質は濃度範囲を10〜30mMのグルコースとした請求項1及び請求項2記載の米麹の品質評価用バイオセンサー装置。
  7. 表面光電位デバイスを用いた清酒酵母の代謝活性の変化を捉えるためのセンサーシステムにおいて、米麹試料の測定はグルコース標準溶液のセンサー応答値に対する米麹試料のセンサー応答値の比で品質評価をする請求項1及び請求項2記載の米麹の品質評価用バイオセンサー装置及び該装置による米麹の品質評価方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006191877A (ja) * 2005-01-14 2006-07-27 Fujitsu Ltd 物質導入装置および物質導入方法
WO2008155279A1 (de) * 2007-06-18 2008-12-24 Siemens Aktiengesellschaft Sterilisierbarer sensor zur überwachung von biochemischen prozessen in fermentern
CN107102086A (zh) * 2017-06-24 2017-08-29 深圳源广安智能科技有限公司 一种啤酒生产原料质量评价系统
CN109556992A (zh) * 2018-11-27 2019-04-02 中国水稻研究所 一种稻米胶稠度标准物质的制备方法

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