JP2005003074A - ばね及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼製で、表面から50μmの深さの圧縮残留応力が700MPa以上であり、該表面から深さ3μm以下の最表層部に硬さ800HV以上の微細結晶相を有し、かつ、該表面の表面粗さRmaxが30以下であることを特徴とする。表面から深さ3μm以下の最表層部に硬さ800HV以上の微細結晶相を有していることから、Rmaxが15を超えるような粗い表面粗さであっても、疲労強度を十分に向上させることができる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はばね及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関等に用いられるコイルばねや板ばね等の鋼製ばねには、耐摩耗性、耐食性や疲労強度等の特性が求められる。鋼製ばねにおけるこれらの特性を向上させるための手法として、ばねの表面をショットピーニング処理することが従来より行われている。
【0003】
この鋼製ばねのショットピーニング処理は、一般に、粒径がφ0.3〜0.8mm程度の投射材(鋼球やカットワイヤ等)をばねの表面に投射して、ばねの比較的内部まで圧縮残留応力を付与することにより、ばね表面の硬さや疲労強度を向上させるものである。
【0004】
一方、化学プラントや原子力プラントのような厳しい腐食環境で使用される金属構造物の施工面に対して、粒径がφ0.3〜1.5mmの金属又はセラミックスからなる投射材を所定角度から所定の衝突頻度で投射することにより、金属構造物の耐食性を向上させる表面改質方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
腐食環境で用いられる金属構造物の粒界腐食や応力腐食割れの発生においては、腐食環境に接する結晶粒界が優先的発生サイトになる。そこで、上記表面改質方法では、金属構造物の施工面に対して、施工面の法線方向となす投射角度が30度以上という低い角度で、比較的長い時間(全体の施工時間が1〜2分間)投射することによって、圧縮応力が付与された、塑性流動層及びこの塑性流動層の上層の最も表層に著しい塑性変形による微細結晶相を金属構造物の表面に形成する。このような塑性流動層と微細結晶相とからなる多層構造の金属組織を表面に形成することにより、母材の結晶粒界が腐食環境に接することを阻止することができ、したがって金属の粒界腐食や応力腐食割れの発生を抑制して粒界腐食が主因となって起こる損傷を抑制することが可能となる。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−90830号公報(第3頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、鋼製ばねの分野においては、表面粗さRmaxが20程度を超えるようなばねは、表面や表面近傍で疲労折損が起こりやすく十分な疲労強度が得られないという認識があった。このため、疲労折損防止の観点より、表面粗さRmaxが15程度以下となるような厳しい管理の下でショットピーニング処理が施されていた。
【0008】
しかしながら、このような表面粗さの制御をすると処理工程が複雑になり、鋼製ばねのコストの高騰化にもつながる。
【0009】
一方、上記従来の表面改質方法を鋼製ばねに適用して、上記塑性流動層及び微細結晶相とからなる多層構造の金属組織が形成されるようなショットピーニング処理を鋼製ばねの表面に施すと、この最表層の微細結晶相は比較的長時間のショットピーニング処理により形成されることから、オーバーピーニングにより鋼製ばねの表面の凹凸(表面粗さ)が大きくなって表面や表面近傍で疲労折損が起こり易くなると考えられる。このため、鋼製ばねの分野においては、このような微細結晶相が最表層に形成されるようなショットピーニング処理は従来行われていなかった。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、表面粗さの厳密な管理を不要にして比較的低コストで鋼製ばねの疲労強度を十分に向上させることを解決すべき技術課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべき鋭意研究の結果、微細結晶相が最表層部に形成された鋼製ばねであっても十分な耐疲労特性を実現できることを発見して本発明を完成した。
【0012】
すなわち、上記課題を解決する本発明のばねは、鋼製で、表面から50μmの深さの圧縮残留応力が700MPa以上であり、該表面から深さ3μm以下の最表層部に硬さ800HV以上の微細結晶相を有し、かつ、該表面の表面粗さRmaxが30以下であることを特徴とするものである。
【0013】
好適な態様において、前記表面の表面粗さRmaxが15以下である。
【0014】
本発明のばねは、好適な態様において、オイルテンパー線、ピアノ線又は硬鋼線よりなる。
【0015】
好適な態様において、前記表面から100μmの深さの硬さは500HV以上である。
【0016】
本発明のばねは、好適な態様において、コイルばね又は板ばねである。
【0017】
上記課題を解決する本発明のばねの製造方法は、鋼材を所定のばね形状に成形してばね成形体を得る成形工程と、粒径がφ0.2〜0.6mmの投射材を用い、前記ばね成形体の表面から深さ3μm以下の最表層部に硬さ800HV以上の微細結晶相を形成するエネルギーを該投射材に与えて該表面をショットピーニング処理するショットピーニング工程と、を行い、該最表層部に該微細結晶相を有しかつ該表面の表面粗さRmaxが30以下であるばねを製造することを特徴とするものである。
【0018】
ここに、上記粒径とは、平均粒径のことをいう(以下、同様)。
【0019】
本発明のばねの製造方法は、好適な態様において、前記ショットピーニング工程の後に、前記表面の表面粗さRmaxを15以下とする表面平滑化ショットピーニングを行う平滑化工程を含む。
【0020】
好適な態様において、前記表面平滑化ショットピーニングでは、前記ショットピーニング工程で用いた投射材の粒径と同等以上の粒径をもつ投射材を用いる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係るばねは、鋼製で、表面から50μmの深さの圧縮残留応力が700MPa以上であり、該表面から深さ3μm以下の最表層部に硬さ800HV以上の微細結晶相を有し、かつ、該表面の表面粗さRmaxが30以下であるから、耐摩擦性、耐食性及び疲労強度が向上する。特に、表面から深さ3μm以下の最表層部に硬さ800HV以上の微細結晶相を有していることから、Rmaxが15を超えるような粗い表面粗さであっても、疲労強度を十分に向上させることができる。これは、微細結晶相が表面硬化層として機能し、クラックの発生を抑制しているからと考えられる。
【0022】
したがって、本発明によれば、表面粗さを厳密に管理することなく、鋼製ばねの疲労強度を十分に向上させることができ、ばねの低コスト化に貢献しうる。
【0023】
ここに、表面から50μmの深さの圧縮残留応力が700MPa未満になると、圧縮残留応力の付与が不足して、疲労強度を十分に向上させることができない。疲労強度向上の観点より、表面から50μmの深さの圧縮残留応力は、800MPa以上であることが好ましく、900MPa以上であることがより好ましい。同様の観点より、表面から100μmの深さの圧縮残留応力は、700MPa以上であることが好ましい。
【0024】
本発明に係るばねにおいては、表面から深さ3μm以下の最表層部が上記微細結晶相よりなる。表面から深さ3μm以下の最表層部とは、例えば、表面から深さ3μm位置までの最表層部(この場合、最表層部すなわち微細結晶相の厚さは3μmとなる。)、表面から深さ2μm位置までの最表層部(この場合、最表層部すなわち微細結晶相の厚さは2μmとなる。)や表面から深さ1.5μm位置までの最表層部(この場合、最表層部すなわち微細結晶相の厚さは1.5μmとなる。)を意味する。
【0025】
なお、ばね表面の表面粗さRmaxが30を超えると、表面や表面近傍の疲労折損が起こりやすくなって疲労強度を十分に向上させることができない。このため、ばね表面の表面粗さRmaxは15以下とすることが好ましく、10以下とすることがより好ましい。
【0026】
また、本発明に係るばねは、表面から100μmの深さの硬さが500HV以上であることが好ましい。ばね表面から100μmの深さの硬さが500HV未満になると、耐へたり性が低下するとともに、疲労強度を十分に向上させることができない。なお、表面から100μmの深さの硬さは600HV以上とすることがより好ましい。
【0027】
本発明に係るばねの素材としては、特に限定されるものではないが、好適にはオイルテンパー線、ピアノ線又は硬鋼線等を用いることができる。
【0028】
また、本発明に係るばねの種類としては、特に限定されるものではないが、好適にはコイルばねや板ばね等とすることができる。
【0029】
上記構成を有する本発明に係るばねは、以下のように製造することができる。
【0030】
すなわち、本発明に係るばねの製造方法は、鋼材を所定のばね形状に成形してばね成形体を得る成形工程と、粒径がφ0.2〜0.6mmの投射材を用い、前記ばね成形体の表面から3μm以下の最表層部に硬さ800HV以上の微細結晶相を形成するエネルギーを該投射材に与えて該表面をショットピーニング処理するショットピーニング工程と、を行い、該最表層部に該微細結晶相を有しかつ該表面の表面粗さRmaxが30以下であるばねを製造することを特徴とする。
【0031】
上記成形工程では、オイルテンパー線、ピアノ線又は硬鋼線等の鋼材を冷間コイリング等により所定のばね形状に成形してばね成形体を得る。得られたばね成形体は、必要に応じて、成形時の残留応力を除去するための低温焼鈍や座面研削を施したり、さらに窒化処理等を施したりすることができる。なお、ショットピーニング工程の後(後述する平滑化工程を行う場合は平滑化工程の後)に、必要に応じて、2次低温焼鈍を行ってもよい。
【0032】
上記ショットピーニング工程では、粒径がφ0.2〜0.6mmの投射材を用い、前記ばね成形体の表面から3μm以下の最表層部に硬さ800HV以上の微細結晶相を形成するエネルギーを該投射材に与えて該表面をショットピーニング処理することにより、該最表層部に該微細結晶相を有しかつ該表面の表面粗さRmaxが30以下であるばねとする。これにより、前述したように耐摩擦性、耐食性及び疲労強度が向上したばねを得ることができる。また、かかるショットピーニング処理により、成形工程でばね成形体に付いた20μm程度の小さな伸線傷やコイリング傷を消すことができる。なお、30μm以上の大きな伸線傷やコイリング傷は多少残る。
【0033】
このショットピーニング工程で用いる投射材の粒径がφ0.6mmを超えると表面粗さが増大し、ばねの早期破損につながる。ばね寿命の信頼性の観点より、投射材の粒径はφ0.5mm以下とすることが好ましく、φ0.3mm以下とすることがより好ましい。一方、この投射材の粒径がφ0.2mm未満になるとインペラ式での投射が困難となり、投射方法がエアー式に限定される。このため、製造コスト低減の観点より、投射材の粒径はφ0.2mm以上としている。
【0034】
ここに、上記最表層部に所定の上記微細結晶相を形成するためには、投射材からばね成形体の表面に所定のエネルギーを付与すべく、投射材の種類、投射材の硬さ、投射速度、投射頻度(単位面積当たりの投射材個数)、投射時間や被投射材(被処理面)の温度等のピーニング条件を適宜調整する必要がある。このピーニング条件は、例えば以下のようにすることができる。
【0035】
投射時間 :5〜30分
投射材 :CW(カットワイヤ)、RCW(角を丸めたカットワイヤ)、SB(スチールボール)
投射材の硬さ :650〜750HV
投射速度 :70〜100m/s
エア式の場合の投射圧力:0.3〜0.5MPa
投射頻度(カバレージ):300〜1500%
被投射材の温度 :室温
本発明に係るばねの製造方法において、好適には、前記ショットピーニング工程の後に、前記表面の表面粗さRmaxを15以下とする表面平滑化ショットピーニングを行う平滑化工程を行うことができる。このように最表層部の微細結晶相の表面をさらに表面平滑化ショットピーニング処理することにより、微細結晶相の表面粗さを改善するとともに、前記ショットピーニング工程で残った伸線傷やコイリング傷を完全に消すことができるので、ばねの疲労強度をさらに向上させることが可能となる。
【0036】
この平滑化工程の表面平滑化ショットピーニングで用いる投射材の粒径としては、表面粗さRmaxを15以下とすることができれば特に限定されない。例えば、前記ショットピーニング工程で用いた投射材の粒径よりも小さな粒径の投射材を該平滑化工程で用いることも可能である。しかし、この場合、前記ショットピーニング工程でのショットピーニングによるうねり(表面粗さの成分の一つ)が残る不都合がある。そこで、この平滑化工程の表面平滑化ショットピーニングでは、前記ショットピーニング工程で用いた投射材の粒径と同等以上の(より好ましくは前記ショットピーニング工程で用いた投射材の粒径よりも大きな)粒径の投射材を用いることが好ましい。このように1段目のショットピーニングで用いた投射材の粒径と同等以上の(より好ましくは前記ショットピーニング工程で用いた投射材の粒径よりも大きな)粒径の投射材を用いることにより、表面粗さを均一化するのに有利となり、従って疲労強度を安定に向上させることができる。
【0037】
すなわち、この表面平滑化ショットピーニングでは、前記ショットピーニング工程で用いた投射材の粒径と同等以上の(より好ましくは前記ショットピーニング工程で用いた投射材の粒径よりも大きな)粒径であって、しかもφ0.3〜1.0mm(より好ましくはφ0.5〜0.8mmで、最適にはφ0.6mm程度)の投射材を用いることが好ましい。この投射材の粒径がφ1.0mmを超えると、ばねの表面粗さが大きくなりすぎる。一方、φ0.3mm未満になると、前記ショットピーニング工程で用いた投射材の粒径と同等もしくはそれよりも小さくなり、表面平滑化の効果が低下する。
【0038】
また、この表面平滑化ショットピーニングでは、前記ショットピーニング工程で用いた投射材よりも硬さの低い投射材を用いることが好ましい。こうすることで、必要以上の微細結晶相を発生させず、従って疲労強度を安定に向上させることができる。具体的には、前記ショットピーニング工程では硬さ600〜1000HV(より好ましくは650〜750HV)の投射材を用い、かつ、平滑化工程では硬さ400〜700HV(より好ましくは550〜650HV)の投射材を用いることが好ましい。
【0039】
この平滑化工程の表面平滑化ショットピーニングにおけるピーニング条件は、例えば以下のようにすることができる。
【0040】
投射時間 :10〜30分
投射材 :CW、RCW、SB
投射材の硬さ :550〜650HV
投射速度 :60〜80m/s
投射頻度(カバレージ):100〜300%
被投射材の温度 :室温
なお、前記ショットピーニング工程及び前記平滑化工程において、ショットピーニングの方式としては特に限定されず、圧縮空気によって投射材を加速するエアー式、高圧水によって投射材を加速する高圧水式や高速回転する羽根車によって遠心力を利用して投射材を加速するインペラ等の機械式のショットピーニングを採用することができる。但し、コスト低減の観点からは、一度に広い面積を処理可能なインペラ等の機械式のショットピーニングを採用することが好ましい。また、投射材としても、インペラ等の機械式のショットピーニングに適用可能な投射材、具体的には粒径がφ0.2mm以上の投射材とすることが好ましい。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0042】
(実施例1)
本実施例は、請求項1、3、4、5又は6に係る発明を具現化したものである。本実施例では、ばね素材としてオイルテンパー線(ばね用合金鋼(SWOSC−V)、合金組成:0.57C−1.43Si−0.68Cr−0.7Mn、残部Fe及び不純物(wt%))を用いて、コイルばねを製造した。
【0043】
<成形工程>
上記オイルテンパー線を冷間コイリングすることにより所定のばね形状に成形してばね成形体を得た。
【0044】
<低温焼鈍工程・座面研削工程>
上記ばね成形体を425℃で低温焼鈍した後、研削機を用いて座面研削した。
【0045】
<ショットピーニング工程>
その後、RCW(角を丸めたカットワイヤ)よりなり、粒径がφ0.25mm、硬さが700HVである投射材を用いて、所定のエネルギーを該投射材に与えて上記ばね成形体の表面をショットピーニング処理した。このショットピーニング処理は、以下に示す条件でエアー式により行った。
【0046】
投射時間 :30分
投射材 :RCWφ0.25
投射材の硬さ :700HV
投射速度 :100m/s以下
投射圧力 :0.4MPa
投射頻度(カバレージ):1500%
被投射材の温度 :室温
こうして、前記ばね成形体の表面から深さ2μm位置までの最表層部に、ビッカース硬さ1080HV(測定荷重は5kgf)の微細結晶相を形成した。なお、この表面の表面粗さRmaxは後述するように25.8であった。また、表面から深さ30μm位置における母層部分のビッカース硬さは620HV(測定荷重は5kgf)であった。
【0047】
<2次低温焼鈍工程>
最後に、上記ばね成形体を225℃、30分の条件で2次低温焼鈍して、本実施例のばねを完成した。
【0048】
(実施例2)
本実施例は、請求項1乃至8に係る発明を具現化したものである。
【0049】
本実施例では、前記ショットピーニング工程の後に、以下に示す平滑化工程を実施すること以外は、前記実施例1と同様にしてばねを完成した。
【0050】
<平滑化工程>
前記ショットピーニング工程を経た前記ばね成形体について、CW(ワイヤを長手方向に切断したもの)よりなり、粒径がφ0.6mm、硬さが600HVである投射材を用いて、表面平滑化ショットピーニング処理を施した。この表面平滑化ショットピーニング処理は、以下に示す条件でインペラ式により行った。
【0051】
投射時間 :30分
投射材 :CWφ0.6
投射材の硬さ :600HV
投射速度 :73m/s
投射頻度(カバレージ):300%
被投射材の温度 :室温
(比較例1)
この比較例では、前記ショットピーニング工程において、CWよりなり、粒径がφ0.6mm、硬さが600HVである投射材を用いて、以下に示す条件でショットピーニング処理を施すこと以外は、前記実施例1と同様にしてばねを完成した。
【0052】
投射時間 :30分
投射材 :CWφ0.6
投射材の硬さ :600HV
投射速度 :73m/s
投射頻度(カバレージ):300%
被投射材の温度 :室温
(比較例2)
この比較例では、前記ショットピーニング工程において、CWよりなり、粒径がφ0.8mm、硬さが600HVである投射材を用いて、以下に示す条件でショットピーニング処理を施すこと以外は、前記実施例1と同様にしてばねを完成した。
【0053】
投射時間:40分
投射材 :CWφ0.8
投射材の硬さ :600HV
投射速度 :73m/s
投射頻度(カバレージ):300%
被投射材の温度 :室温
(評価)
前記実施例1、2及び前記比較例1、2で得られたばねについて、表面粗さ、疲労強度及び圧縮残留応力を調べた。表面粗さの結果を表1に、疲労強度の試験結果を図1に、残留応力分布を図2にそれぞれ示す。
【0054】
なお、疲労強度は、星型試験機(東海試験機社製)を用いて、以下の条件で評価した。
【0055】
試験応力 :τm=600MPa
試験応力繰り返し回数 :1×107 回
試験サンプル数 :各応力段階8個ずつ
また、圧縮残留応力は、X線応力測定装置(リガク社製のPSPC型)を用いて、Cr管球、30kV、30mAの条件で評価した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1、図1及び図2から明らかなように、表面粗さと残留応力分布については、実施例2のばねと比較例1のばねとが、実施例1のばねと比較例2のばねとがそれぞれ対応していた(値がほぼ同等である)。
【0058】
しかし、疲労強度については、実施例2のばねがτm±τa=600±545MPaであり、τm±τa=600±480MPaである比較例1のばねと比べて著しく向上していた。また、実施例1のばねがτm±τa=600±540MPaであり、やはり比較例2のばねと比べて著しく向上していた。
【0059】
さらに、前記実施例2及び前記比較例1で得られたばねについて、光学顕微鏡及び電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、表層部の断面金属組織を観察した。その結果を図3及び図4に示す。なお、各写真において、白色又は黒色で示す横線は、表面からその横線の位置までの深さを示すものである。図3(A)に示す白い横線は表面から深さ20μm位置を示し、図3(B)に示す黒い横線は表面から深さ2μm位置を示し、図3(C)に示す黒い横線は表面から深さ100nm位置を示し、図4(A)に示す白い横線は表面から深さ20μm位置を示し、図4(B)に示す黒い横線は表面から深さ2μm位置を示す。
【0060】
実施例2のばねの断面金属組織写真を図3に示すように、ばねの表面から深さ約2μm位置までの最表層部に、均一な微細結晶相が形成されていた。なお、この実施例2のばねにおいては、表面から深さ約6μm位置までの表層部(該最表層部を除く)に塑性流動層(メタルフロー層)が形成されていた。
【0061】
一方、比較例1のばねの断面金属写真を図4に示すように、表面から深さ約4μm位置までの表層部に塑性流動層(メタルフロー層)が形成されていたが、微細結晶相は認められなかった。
【0062】
なお、前記実施例1、2及び前記比較例1、2のばねにおいて、表面から100μmの深さの硬さはほぼ同等であり、実施例1のばねが575HV、実施例2のばねが580HV、比較例1のばねが570HV、比較例2のばねが580HVであった。
【0063】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、表面粗さを厳密に管理することなく、鋼製ばねの疲労強度を十分に向上させることができ、ばねの低コスト化に貢献しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】疲労強度の試験結果を示すばねのS−N線図である。
【図2】ばねの残留応力分布を示す線図である。
【図3】実施例2に係るばねの表層部の断面金属組織を示し、(A)は1000倍の光学顕微鏡写真、(B)は2万倍のFE−SEM(電子顕微鏡)写真、(C)は10万倍のFE−SEM(電子顕微鏡)写真である。
【図4】比較例1に係るばねの表層部の断面金属組織を示し、(A)は1000倍の光学顕微鏡写真、(B)は2万倍のFE−SEM(電子顕微鏡)写真である。
Claims (8)
- 鋼製で、表面から50μmの深さの圧縮残留応力が700MPa以上であり、該表面から深さ3μm以下の最表層部に硬さ800HV以上の微細結晶相を有し、かつ、該表面の表面粗さRmaxが30以下であることを特徴とするばね。
- 前記表面の表面粗さRmaxが15以下であることを特徴とする請求項1記載のばね。
- オイルテンパー線、ピアノ線又は硬鋼線よりなることを特徴とする請求項1記載のばね。
- 前記表面から100μmの深さの硬さは500HV以上であることを特徴とする請求項1記載のばね。
- コイルばね又は板ばねであることを特徴とする請求項1記載のばね。
- 鋼材を所定のばね形状に成形してばね成形体を得る成形工程と、
粒径がφ0.2〜0.6mmの投射材を用い、前記ばね成形体の表面から深さ3μm以下の最表層部に硬さ800HV以上の微細結晶相を形成するエネルギーを該投射材に与えて該表面をショットピーニング処理するショットピーニング工程と、を行い、該最表層部に該微細結晶相を有しかつ該表面の表面粗さRmaxが30以下であるばねを製造することを特徴とするばねの製造方法。 - 前記ショットピーニング工程の後に、前記表面の表面粗さRmaxを15以下とする表面平滑化ショットピーニングを行う平滑化工程を含むことを特徴とする請求項6記載のばねの製造方法。
- 前記表面平滑化ショットピーニングでは、前記ショットピーニング工程で用いた投射材の粒径と同等以上の粒径をもつ投射材を用いることを特徴とする請求項7記載のばねの製造方法。
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