JP2005002476A - 溶接継手 - Google Patents

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健次 大井
Yasushi Kitani
靖 木谷
Toshiyuki Hoshino
俊幸 星野
Koichi Yasuda
功一 安田
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Abstract

【課題】 鋼板の大入熱溶接部の溶接金属、溶接熱影響部及びボンド部のすべてが高靭性を確保している溶接継手を提供する。
【解決手段】 溶接入熱200kJ/cm以上、板厚30mm以上の鋼板中には靭性に悪影響を与えない程度のB添加とし、溶接金属部にはオーステナイト粒界から生成するフェライトサイドプレートの析出を抑えられるだけの十分なB添加を行い、溶接熱影響部にはTiNの固溶によって生成される固溶Nを固定するのに必要最小限のB量を溶接金属部からのBの拡散によってまかなうようにした。
【選択図】 図1

Description

本発明は、板厚30mm以上の鋼板の大入熱溶接継手に関するものである。本継手は溶接入熱200kJ/cm以上の大入熱溶接部に適用されるものである。
構造物や船舶の大型化が進むにつれて、使用鋼材の高強度・厚肉化が求められ、それらの施工に高能率の溶接が適用されてきた。この施工コスト削減のために、たとえばサブマージアーク溶接、エレクトロガス溶接及びエレクトロスラグ溶接などの大入熱溶接方法の適用があげられる。一般に溶接入熱が大きくなると溶接熱影響部の組織が粗大化し靭性が低下することが知られており、その対策として鋼板中のTiNの微細分散によるオーステナイトの粗大化抑制や、フェライト変態核としての利用技術が実用化されている。
また、Tiの酸化物を分散させる技術(例えば、特許文献1参照。)やBNのフェライト核生成能を組み合わせる技術(例えば、特許文献2参照。)も開発されている。さらにはCa(例えば、特許文献3参照。)やREM(例えば、特許文献4参照。)を添加することによって硫化物の形態を制御し、より高い靭性が得られることが明らかにされている。
また大入熱影響部において靱性向上に有効な元素であるボロンを溶接金属の靭性確保のために添加する技術がある(例えば、特許文献5参照。)。
この技術では、ボロンの添加、発現効果は溶接金属のみに限定されており、また、対象とする板厚レベルが25mm以下、溶接入熱も140kJ/cmのレベルである。
一方、溶接金属では大入熱による緩冷却速度においても強度・靭性を確保するために合金元素の適正添加によってミクロ組織をアシキュラーフェライトに調整する溶接材料の設計が各溶接方法ごとになされている。
特開昭57−51243号公報 特開昭62−170459号公報 特開昭60−204863号公報 特公平4−14180号公報 特開昭52−002848号公報
従来の溶接継手は鋼板と溶接金属が別々に開発されてきた。鋼板と溶接金属の相互関係としては継手の引張強度において硬さのマッチングが検討されたのみである。靭性に関しては鋼板、溶接金属それぞれが高靭性を達成するように検討されてきた。しかし、融点近傍の熱サイクルを受ける鋼板溶接部領域では、溶接金属と組成の異なる金属(鋼板)が高温で溶融金属と接触しており、その相互関係については明らかにされていない。溶接入熱が小さい場合は溶融金属と鋼板との界面における元素の移動を考慮する必要はないが、大入熱になると、溶融金属と鋼板との高温における接触時間が長くなり、溶融金属と鋼板との界面における影響を無視することができなくなり、溶接熱影響部の靭性に大きく影響を与える問題が生じる。よって溶接金属及び鋼板の溶接熱影響部が単独では良好な靭性を示す場合においても、実継手での溶接熱影響部が必ずしも良好な靭性を示さない場合があるという問題があった。
大入熱溶接では従来から鋼板中に微細なTiNを分散させてオーステナイト粒のピンニングによる粗大化抑制能を利用して、継手部の高靭性を確保する技術がある。さらに、高温にさらされる部位でのTiNの溶解によって増加する固溶Nによる靭性の低下を抑えるために、Bの添加によってBNとしてNを固定するか、あるいはそれをフェライト生成核として利用する技術もある。しかし、多量のBを鋼板に添加するとTiNが溶解しない領域ではかえって靭性の低下をもたらすことから、余分な量を添加することができないという問題があった。また、固溶Nを固定するためにBを適正量添加した場合でも、溶接金属中に高B添加を行うと溶接熱影響部の靭性が急激に低下したり、溶接金属中のB量を低減すると溶接金属の靭性を確保することができないという問題があった。
本発明は上記問題点を解決し、溶接金属及び鋼板の溶接熱影響部が優れた靭性を有する大入熱溶接継手を提供することを目的とするもので、対象とする板厚は30mm以上、溶接入熱は200kJ/cm以上、1100kJ/cmに及ぶものである。
発明者らは種々検討を重ねた結果、入熱が200kJ/cm以上、板厚30mm以上の大入熱溶接継手において、溶接金属中に鋼板への添加量以上のBが存在する場合、高温での鉄中の拡散速度が速いBが溶接時に鋼板側の溶接熱影響部へ拡散浸透することを新たに知見した。この知見を利用し、鋼板、溶接金属に添加するB量をコントロールすることによって、溶接継手全体の高靭性を確保できる技術を確立した。すなわち、鋼板中には靭性に悪影響を与えない程度のB添加とし、溶接金属部にはオーステナイト粒界から生成するフェライトサイドプレートの析出を抑えられるだけの十分なB添加を行い、溶接熱影響部にはTiNの固溶によって生成される固溶Nを固定するのに必要最小限のB量を溶接金属部からのBの拡散によってまかなうことによりこの技術が可能となった。また鋼板と溶接金属部のB量を制御することによって大入熱によってBの拡散距離が変化するものの、TiNの溶解する領域とのマッチングによって200〜1100kJ/cmの入熱範囲において良好な靭性が得られることも新たに見出した。すなわち本発明は、溶接人熱200kJ/cm以上の大入熱溶接継手において
C:0.03〜0.15質量%
Si:0.05〜0.70質量%
Mn:0.5〜2.0質量%
P:0.03質量%以下
S:0.0005〜0.0050質量%
Al:0.005〜0.1質量%
Ti:0.004〜0.02質量%
N:0.0020〜0.0070質量%
B:10ppm以下
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物よりなる板厚30mm以上の大入熱溶接用鋼板と
C:0.03〜0.12質量%
Si:0.10〜0.80質量%
Mn:0.8〜2.5質量%
Al:0.02質量%以下
Ni:0.5〜4.0質量%
Ti:0.005〜0.10質量%
を含有し、選択元素として
Cu:0.8質量%以下
Cr:1.5質量%以下
Mo:1.0質量%以下
V:0.10質量%以下
Nb:0.10質量%以下
から選ばれた1種又は2種以上を含有し、残部鉄及び不可避的不純物よりなる溶接金属とが、次の(1)〜(2)式によって規定されるB量を鋼板及び溶接金属に含有することを特徴とする溶接継手を提供する。
15≦BW≦55 ……(1)
20≦BW+3BP≦60 ……(2)
但し、 BW=溶接金属中のB量(ppm)
P=鋼板中のB量(ppm)
である。
前記大入熱用鋼板がさらに選択元素として
Nb:0.0510質量%以下
V:0.2質量%以下
Cu:1.0質量%以下
Ni:1.5質量%以下
Cr:0.7質量%以下
Mo:0.7質量%以下
Ca:0.0005〜0.0030質量%
REM:0.0010〜0.00150質量%
から選ばれた1種又は2種以上を含有すると好適である。
次に鋼板の各成分の限定理由について説明する。
C量は構造用鋼として必要な強度を得るために下限を0.03質量%とし、溶接割れ性の観点から上限を0.15質量%とした。
Siは製鋼上0.05質量%以上が必要であり、0.7質量%を超えると母材の靭性を劣化させるとともに大入熱溶接熱影響部における島状マルテンサイトの生成による靭性の劣化が顕著になるので限定した。
Mnは母材の強度を確保するために0.5質量%以上は必要であり、2.0質量%を超えると溶接部の靭性を著しく劣化させるのでこれ以下とした。
Pは0.03質量%を超えると溶接部の靭性を劣化させるので限定される。
Sは0.0005質量%未満では溶接熱影響部においてフェライトの生成核となるMnSの析出量が不足して靭性が低下する。0.0050質量%を超えて添加すると固溶S量の増加によってかえって靭性の低下を招く。
Alは鋼の脱酸上0.005質量%以上は必要であり、0.1質量%を超えて添加すると母材の靭性を低下させると同時に溶接金属部への希釈によって溶接金属部の靭性を劣化させるので上限を0.1質量%とした。
Tiは凝固時にTiNとなって析出し、溶接熱影響部でのオ〜ステナイトの粗大化抑制やフェライト変態核となって高靭性化に寄与する。0.004質量%未満ではその絶対量が不足し、0.02質量%を超えるとTiN粒子の粗大化によって期待する効果は得られない。従って0.004〜0.02質量%とする。
Nは必要TiN量確保にとって重要な元素であり、0.0020質量%未満では十分なTiN量が不足し、0.0070質量%を超えると溶接熱サイクルによってTiNが溶解する領域での固溶N量の増加によって靭性を著しく低下させるので不可である。
Bは鋼板の焼入れ性の向上に有効であるが10ppmを越えると靭性が劣化するので10ppmを上限とする。
さらに上記の基本成分系の他にフェライト生成核として効果を発揮するB、Vあるいはそれに加えて高張力化・厚肉化ないしはその他の効果を達成するためにNb、Ni、Cr、Mo、Cuのうち少なくとも1種を含有させることが好ましい。
Nbは母材の強度・靭性及び継手の強度確保のために添加するが、0、05質量%を超えて添加すると溶接熱影響部の靭性を劣化するので制限する。
Vは母材の強度靭性の向上及びVNとしてのフェライト生成核として働くが、0、2質量%を超えるとかえって靭性の低下を招く。
Niは母材の高靭性を保ちつつ強度を上昇するが、高価であるため上限を1.5質量%とした。
CuはNiと同様の働きがあるが、1、0質量%を超えると熱間脆性を生じ、鋼板の表面性状を劣化させる。
Cr、Moは母材の高強度化に有効な元素であるが、多量に添加すると靭性に悪影響を与えるために上限を0.7質量%とした。
次に溶接金属組成の限定理由を示す。
Cは溶接金属の強度を確保するために0.03質量%以上添加する必要があり、012質量%を超えて添加すると高温割れの発生や焼入れ性過多による靭性の低下を招く恐れがある。
Siは脱酸及び強度確保のために添加されるが、0.10質量%未満では溶融金属の湯流れ性が低下し、溶接欠陥が発生しやすくなる、また、0.80質量%を超えると溶接金属の強度が過剰となり割れの発生や靭性の低下を招く恐れがある。
Mnは溶接金属の強度を確保するために0.8質量%以上の添加が必要で、2.5質量%を超えると焼入れ性が過多となり靭性の低下を起こす。
Alは脱酸のために必要であるが0.02質量%を超えると介在物が多くなり靭性の低下を招くので制限する。
Niは溶接金属の強度靭性を確保するために添加が必要で、0.5質量%未満では効果がなく、4.0質量%を超えると湯流れ性を著しく低下させる。
Tiは溶接金属中のNをTiNとして固定したり、酸化物を形成してアシキュラーフェライトの生成核として重要な働きをする。0.005質量%未満ではその効果は十分に得られず、0.10質量%を超えると固溶Tiの増加によって著しく靭性を低下させる。
また、溶接入熱によって焼入れ性を調整するための選択元素としてCu、Cr、Mo、V、Nbが必要に応じて単独あるいは複合で利用できる。それぞれ過剰に添加すると著しく靭性を低下させる恐れがあるため添加量を
Cu:0.8質量%以下
Cr:1.5質量%以下
Mo:1.0質量%以下
V:0.10質量%以下
Nb:0.10質量%以下
に限定した。
Bは本発明で最も重要な添加元素である。溶接金属中に添加したBは溶接金属の冷却中にオーステナイト粒界に偏析する。このことによって粒界のエネルギーを下げ、オーステナイト粒界から生成するフェライトサイドプレートの析出を抑制する。フェライトサイドプレートが析出すると靭性が劣化する。この析出を抑制した結果、分散されたTiの酸化物からアシキュラーフェライトが生成し、高靭性を確保する。これらの働きに必要なB量は15ppm以上であり、55ppmを超えて添加するとFe23(C,B)6のような鉄と炭素との化合物を生成して靭性を著しく低下させる。一方、鋼板には最大で10ppmのBが添加可能である。鋼板へのB添加は焼入れ性の向上には有効であるものの、10ppmを超えると、溶接金属と同様に鉄と炭素との化合物を生成したり、島状マルテンサイトの生成量が増加するなどのため、靭性が極めて劣化する。ただし、溶接熱影響部においては、BはBNを形成し、固溶Nを低減し、また、フェライト変態核として働く。溶接熱影響部の靭性を高めるためには、鋼板への添加量の最大値である10ppm以上のBが必要であり、本発明ではBが溶接金属側から溶接熱影響部に拡散し、靭性向上に有効に寄与する。すなわち、鋼板に10ppm以下のBを添加し、溶接金属と鋼板中に以下に示した下記の(1)、(2)式を満足する組み合わせになるようにBを添加すると、溶接金属、鋼板、溶接熱影響部ともに最適なB量が確保され、継手として高靭性を達成することが可能である。
15≦BW≦55 ……(1)
20≦BW+3BP≦60 ……(2)
但し、 BW=溶接金属中のB量(ppm)
P=鋼板中のB量(ppm)
である。
ここで、式(2)でBW+3BPを規定した理由は、次の通りである。溶接熱影響部のB量は鋼板中のB量と溶接金属中からの拡散分の加算によって決定され、その拡散分は溶接入熱により変化する。そこで、実験によって靭性に影響を与えるB量を検討した結果、上記(2)式の範囲が好適であることを知見した。溶接熱影響部のB量が不足した場合は固溶Nの十分な固定ができないため、溶接熱影響部は靭性が劣化するとともに、BNの不足によってフェライト生成核が少なく、靭性にすぐれたフェライトパーライト組織に均質化することができない。また、溶接熱影響部でBが過剰になった場合は、焼入れ性が過多となり、組織がフェライトパーライトから上部ベイナイトとなり靭性を劣化させる。
以上のように鋼板及び溶接金属の化学組成が限定された範囲において、B量をコントロールして溶接金属中に添加することによって、大入熱溶接継手のすべての部位で高靭性を確保することが可能である。
なお、本発明の鋼は銑鉄を転炉で鋼とした後、RHで脱ガスを行い、連続鋳造又は造塊・分塊工程を経て鋼片とする。これを再加熱し熱間圧延、あるいは圧延後に加速冷却、直接焼入れ焼戻し、再加熱焼入れ焼戻し、焼準、焼戻し処理して製造する。
以上の説明の通り、本発明によれば、一定の成分範囲の鋼板および溶接金属からなる大入熱溶接継手に、適正なB量を添加し、溶接熱影響部にも拡散させて成分調整することにより、極めて良好な靭性を有する大入熱溶接継手を得ることができ、寄与するところが非常に大である。
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は溶接継手を示す説明図である。2枚の母材(鋼板)1は溶接金属2によって接続され、溶接継手を形成している。溶接金属に隣接する母材は溶接熱影響部3を形成しており、溶接金属と熱影響部の境界はボンド部4と呼ばれている。図中に記載したシャルピー試験片5は、この溶接継手部から切り出してシャルピー試験に用いるテストピースの切り出し位置を示す例で、図示のシャルピー試験片5はノッチ6がボンド部4の部分に位置しており、ボンド部の衝撃エネルギーを測定する試験片である。図2は通常の溶接金属と大入熱溶接の場合の冷却曲線の説明図である。温度上昇曲線11のように温度上昇し、溶融点12に達した溶接金属は、通常は冷却曲線14のように短時間に急激に温度低下するが、大入熱溶接では、冷却曲線13に示すように冷却時間が長い。図2に示すような800〜500℃における冷却時間が長いと、溶接金属中の拡散しやすい成分が熱影響部に拡散する。本発明はこの拡散を利用して溶接部の靭性を向上させる点に特徴がある。
大入熱溶接では、冷却速度が遅いために、制御圧延および制御冷却により微細化したフェライト・パーライト微細のミクロ組織が粗大化する。このため破壊する単位大きさが大きくなり、靭性が低下し、靭性の確保が困難になる。そこで本発明では、大入熱溶接の冷却速度が遅いことによってBが拡散する時間を確保することができることに着目し、これを利用することとした。通常の溶接ではBの拡散は殆ど起こらず、溶接熱影響部にBの影響が生じない。大入熱の場合は、オーステナイト粒の成長を抑制して粒内組織を微細化するためにTiN粒子を分散させて高靭性を図るのが有効な手段の一つであるが、TiNは1400〜1500℃近傍に加熱されると溶け出し、フリーNの増加を来すことが問題である。そこで本発明では、溶接熱影響部で固溶したTiNから生じたフリーNを溶接金属から拡散するBを使って、BNの形で固定し、それによって靭性を向上させる。また、このBNはフェライト変態の核になるので、微細フェライトが析出しやすくなり高靭性を達成する。
図3は本発明の範囲を示すグラフで、横軸に鋼板中のB量BP(ppm)を、縦軸に溶接金属中のB量BW(ppm)をとって示したものである。本発明の範囲は15≦BW≦55及びBP≦10の範囲で、かつBW+3BP=60の線より下側、BW+3BP=20の線より上側の領域である。図中に後述の好適な実施例を●印で、比較例を×印で示してある。これらの点の近傍に記載されている数字は、各点のBW及びBPを示すもので、例えば45.3は、BW=45,BP=3である。
図3のBW+BP=60の線より上方の領域は熱影響部のBの値が高くなりボンド部の靭性が低くなるので不適である。またBW+BP=20の線より下方の領域では、Bの値が低く靭性改善の効果がない。
次に、具体的な例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。表1に示す組成の鋼を100kgの高周波溶解炉にて溶製し、熱間圧延により150mmのスラブを作製した。このスラブを用いて1150℃に1時間加熱後、930℃以上で全圧下量の50%を圧延し、その後、900℃から700℃の温度域にて30〜100mm厚の鋼板に仕上げたものを用い、3〜20℃/sの冷却速度にて加速冷却し、冷却停止温度を650℃から300℃とした。
作製した鋼板を用いて大入熱溶接継手を製作した。入熱量が200〜600kJ/cmの範囲はエレクトロガス溶接、それ以上の入熱量の場合はエレクトロスラグ溶接を用いて、立て向きの突合せ溶接にて溶接を行った。表2に作製した溶接金属の化学組成を示す。
溶接金属中に含まれるB量は、溶接材料中から所定量を添加した結果であり、本実施例ではフラックス入り溶接ワイヤのフラックス中にB23を添加することによって、溶接金属中のB量を調整した。Bの添加手段としてはこのほかに溶接ワイヤー中に所定量を含有させてもよく、サブマージアーク溶接の場合にはワイヤあるいはフラックス中にB23を添加することによって溶接金属中のB量を容易に目標値に合致するように調整することができる。
作製した継手の溶接金属部、母材部、ボンド部の靭性をマイナス40℃シャルピー吸収エネルギーにて評価した結果を表3に示した。同時に鋼板の強度および継手の引張強度も示した。本発明で最も重要な因子である鋼板中及び溶接金属中のB量が適正な範囲にある発明例No.1〜10では、溶接金属部、母材部、ボンド部のいずれも良好な靭性を示している。一方、B量が本発明の適正範囲を外れた比較例No.11〜15については低靭性部が認められる。比較例No.11では溶接金属中のB量が過剰であり、溶接金属で低値を示し、ボンド部においても溶接金属と鋼板金属とがそれぞれ50質量%含まれることにより低値となっている。No.12は、溶接金属は良好であるが、鋼板の靭性が発明例に比べて約半分となっており、ボンド部の靭性にも若干影響し、良好な靭性は得られない。No.13はボンド部でのB量が不足しているため、ボンド部の靭性が著しく低下している。No.15では溶接金属、鋼板ともにB添加範囲を逸脱しており、その結果として、継手全体が低値を示している。
No.14、16、17、18は鋼板、溶接金属ともに適正B量が添加されており良好な靭性を示しているが、ボンド部ではB量が過剰となりボンド部の靭性は著しく低くなっている。
Figure 2005002476
Figure 2005002476
Figure 2005002476
溶接継手を示す断面図である。 冷却曲線の説明図である。 本発明の範囲を示すグラフである。
符号の説明
1 母材(鋼板)
2 溶接金属
3 熱影響部
4 ボンド部
5 シャルピー試験片
6 ノッチ
11 温度上昇曲線
12 最高温度点
13 冷却曲線
14 冷却曲線

Claims (2)

  1. 溶接入熱200kJ/cm以上の大入熱溶接継手において
    C:0.03〜0.15質量%
    Si:0.05〜0.70質量%
    Mn:0.5〜2.0質量%
    P:0.03質量%以下
    S:0.0005〜0.0050質量%
    Al:0.005〜0.1質量%
    Ti:0.004〜0.02質量%
    N:0.0020〜0.0070質量%
    B:10ppm以下
    を含有し、残部鉄及び不可避的不純物よりなり、板厚30mm以上の大入熱溶接用鋼板と
    C:0.03〜0.12質量%
    Si:0.10〜0.80質量%
    Mn:0.8〜2.5質量%
    Al:0.02質量%以下
    Ni:0.5〜4.0質量%
    Ti:0.005〜0.10質量%
    を含有し、選択元素として
    Cu:0.8質量%以下
    Cr:1.5質量%以下
    Mo:1.0質量%以下
    V:0.10質量%以下
    Nb:0.10質量%以下
    から選ばれた1種又は2種以上を含有し、残部鉄及び不可避的不純物よりなる溶接金属とが、下記式によって規定されるB量を鋼板及び溶接金属に含有することを特徴とする溶接継手。
    15≦BW≦55 ……(1)
    20≦BW+3BP≦60 ……(2)
    但し、 BW=溶接金属中のB量(ppm)
    P=鋼板中のB量(ppm)
  2. 前記大入熱用鋼板がさらに選択元素として
    Nb:0.05質量%以下
    V:0.2質量%以下
    Cu:1.0質量%以下
    Ni:1.5質量%以下
    Cr:0.7質量%以下
    Mo:0.7質量%以下
    Ca:0.0005〜0.0030質量%
    REM:0.0010〜0.0150質量%
    から選ばれた1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の溶接継手。
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